JP3790185B2 - 温度制御方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、室内の温度制御方法及びその装置の改良に関するもので、特にクリーンルーム等の精密な温度制御を必要とする室内の温度制御方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
クリーンルーム内の温度を一定に、かつ精密に保つために、従来、冷房専用機と再熱用電気ヒータを用いて、一度冷凍機で空気を冷やした後に電気ヒータの出力を比例制御して温度コントロールする方法が実施されていた。
【0003】
これに対して、本発明者等が提案した特願平2001−169147号に開示される技術により、制御精度は同等であるものの省エネルギーが可能となった。
【0004】
その制御方法の概略を図5乃至図8に示す。温度制御装置50は、温度制御機構2と、温度調整機構3とを備える。温度制御機構2は冷凍機5に接続される冷却コイル6と冷媒レヒートコイル7、及び加熱器51とを備える。9は空気吸込み口、10は温度検出器、Fは送風ファンを示す。
温度調整機構3は、上記温度検出器10よりの信号を受け入れる指示調節計11と、検索を行うシーケンサ12とを備える。
【0005】
次にその制御要領を図7に基づいて説明する。図は温度制御として複数の温度制御範囲(以下単にレベルという)を組み合わせたステップサーモ方式を利用とたもので、横方向に温度を示す。
まずレベル1は基準値Aを設定し、ディファレンシャル(動作すきま)を定め上限値Bとする。このレベル1は冷凍機5の運転・停止の指令を出す温度を示すもので、高い空気温度からA点に到達したとき停止(OFF)し、低い空気温度からB点に到達したとき起動(ON)する。
【0006】
次に、レベル2はC点を基準とし、ディファレンシャルを定め上限値Dとする。このレベル2は加熱器51の運転・停止の指令を出す温度を示すもので、高い空気温度からC点に到達したとき起動(ON)し、低い空気温度からD点に到達したとき停止(OFF)する。
【0007】
同様に、レベル3はE点を基準とし、ディファレンシャルを定め上限値Fとする。このレベル3は冷媒レヒートの運転・停止の指令を出す温度を示すもので、高い空気温度からE点に到達したとき起動(ON)し、低い空気温度からF点に到達したとき停止(OFF)する。
【0008】
同様に、レベル4はG点を基準とし、ディファレンシャルを定め上限値Hとする。このレベル4は冷凍機のアンロード(冷媒の容量制御)の運転・停止の指令を出す温度を示すもので、高い空気温度からG点に到達したとき起動(ON)し、低い空気温度からH点に到達したとき停止(OFF:フルロード運転)する。
【0009】
次に、この温度調整機構の動作について説明する。まず初期状態ではレベル1の設定値になっているものとする。この状態で温度がB点より低い場合には、加熱器51のみONにして、温度が上昇する。そしてB点まで温度が上昇すると、冷凍機5はONになりアンロード状態にて冷媒レヒートがONの状態になる。それでも温度が上昇する場合は、D点まで温度が上昇し、加熱器51がOFFして冷媒レヒート7のみの運転状態になる。
【0010】
そこで、温度が下がってC点まで温度が下降してきた場合、再び加熱器8がONとなり、温度は上昇する。これによりレベル2で温度は循環することになる。
【0011】
これらの信号は温度検出器10により温度を検出し、温度調整機構3内の指示調節計11に信号が送られる。指示調節器11は、該信号から各レベルの運転・停止を判断し、各装置に動作信号を送ると共に、シーケンサ12にも同じ信号を送り、該シーケンサ12は指示調節計11から送られてくる信号の内容から、同じ信号が繰り返し送られてきた場合は、いずれかのレベルにて運転が安定していると判断し、指示調節計11に該レベルの中心の値が目標とする設定温度となるように各基準設定温度の値を送る。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記方法によるときは、温度制御を±1℃に制御することが可能であるものの、図8に示す様に、±1℃の範囲で温度に振れが生じ、精密な温度制御を行いたい場合においては温度の振れが問題になる場合があった。
【0013】
また、上記方法によるときは、冷凍機と比較的大型の加熱器が必要となり消費電力量は大きくなる等の問題があった。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑み、上記従来の方式を改良し、各ステップにおける温度制御をPID制御方式を用い、温度振れの少ない制御方法でかつ、大幅な省電力を可能とするクリーンルーム等の温度制御方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本第1発明の温度制御方法は、基準温度とその上限値、下限値を複数設定したステップサーモ式温度制御方法において、各ステップでの温度制御にPID制御方式を採用し、各ステップの許容範囲を越えたときは温度検出器から印加される信号によりステップの移行を図るとともに、基準温度を変更し、これを基準として温度制御を行うことを特徴とする。
ここで、「PID制御方式」とは、設定された目標値に対して、比例、積分、微分による制御を行う制御方式であって、比例制御による残留偏差を積分制御によって解消するとともに、負荷の変動による目標値からのズレに対し、微分制御によって修正し制御応答の迅速性を確保する方式をいう。
【0016】
この温度制御方法は、各ステップでの温度制御にPID制御方式を採用し、各ステップの許容範囲を越えたときにステップの移行と設定温度を変化させるから温度振れの少ない温度制御方法を提供することができる。
【0017】
また、本第2の発明は、上記温度制御方法を実施する装置に係り、温度制御機構と、温度調整機構とよりなり、制御機構は冷却コイル、冷媒レヒートコイル及び加熱器を備え、温度調整機構は室内よりの受け入れ空気の温度検出器及び該温度検出器よりの信号を検出する指示調節計を備えた制御部からなり、基準温度を設定し、その上限値、下限値を複数設定したステップサーモ方式における各ステップでの温度制御はPID制御方式により制御される加熱器を用い、各ステップの許容範囲を越えたときはそれを温度検出器により検出し、上記冷却コイルと冷媒レヒートコイルを選択作動せしめ、ステップの移行を図るとともに、基準温度を変更し、これを基準として温度制御を行うことを特徴とする。
【0018】
この温度制御装置は、ステップサーモ方式において、冷却、加熱手段として冷媒レヒートコイル並びに加熱器を備え、各ステップでの温度制御にPID制御方式を採用した各ステップ間の負荷をまかなえる程度の容量を有する加熱器を用いるから、温度振れの少ない制御を行うとともに、省エネ運転を可能とする温度制御装置を提供することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の温度制御装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
従来例と同様の構成については同様の符号を付し説明を省略する。
【0020】
図1乃至図3は、本発明の一実施例を示すもので、温度制御装置1は、温度制御機構2と、温度調整機構3とを備える。温度制御機構2は冷凍機5に接続される冷却コイル6及び冷媒レヒートコイル7と、加熱器8とを備える。9は空気吸込み口、10は温度検出器、Fは送風ファンを示す。
冷凍機5、加熱器8の容量は、温度制御を行う部屋の広さ、目標温度によって定められるものである。
【0021】
次に、その制御要領を図3に基づいて説明する。
図は温度制御として複数の温度制御範囲(以下単にレベルという)を組み合わせたステップサーモ方式を利用とたもので、横方向に温度、縦軸に室内の負荷を示す。まずレベル1は基準値Aを設定し、ディファレンシャルa(動作すきま)を定め上限値Cとする。このレベル1は従来例と同様、冷凍機5の運転・停止の指令を出す温度を示すもので、高い空気温度からA点に到達したとき停止(OFF)し、低い空気温度からB点に到達したとき起動(ON)する。
【0022】
次に、レベル2はD点を基準とし、レベル1と同じディファレンシャルaより上限値Fを決定する。このレベル2は冷媒レヒートの運転・停止の指令を出す温度を示すもので、高い空気温度からD点に到達したとき起動(ON)し、低い空気温度からF点に到達したとき停止(OFF)する。
【0023】
同様にしてレベル3はG点を基準とし、レベル1と同じディファレンシャルaより上限値Iを決定する。このレベル3は冷凍機のアンロード(冷媒の容量制御)の運転・停止の指令を出す温度を示すもので、高い空気温度からG点に到達したとき起動(ON)し、低い空気温度からI点に到達したとき停止(OFF:フルロード運転)する。
【0024】
次に、この温度調整機構の動作について説明する。
室内の目標温度が23℃、ディファレンシャルaを0.4℃、ステップbを0.3℃とする。
【0025】
まず、温度制御装置1の起動時は、冷凍機5及び加熱器8は停止状態であり、冷凍機5の排熱を利用する冷媒レヒートも当然に作動していないが、温度検出器10より印可される信号によって温度調整機構3は即座に室内温度を判断し、冷凍機5及び加熱器8のON・OFF信号を各機器に印可する。
【0026】
運転時室温が目標温度を下回っていた場合には冷凍機5はOFF状態のまま加熱器8がONとなる。この加熱器8はPID制御される。
【0027】
このときの温度制御は、ステップ1の状態でB点が23℃、A点は22.95℃、C点は23.35℃に設定される。室内の負荷に変動がない場合このままPID制御による加熱器8のみによって室温は制御される。
なお、B点はステップ1での室内温度の目標値となる点で、C点から、ディファレンシャルa(0.4℃)とステップb(0.3℃)を加算した値の半分((a+b)÷2)だけ低温側へ移行した値となるように設定する。
【0028】
次に室内の負荷が変動し(室内への入室者があった場合等)、室温が上昇傾向に転じ、加熱器8の出力を最低限まで低下させてもなお温度が上昇しC点に達したときに冷凍機5がONとなり、アンロード状態にて冷媒レヒートがONの状態になる。
このステップ2の状態では、冷凍機はアンロード状態(フルロード状態に比して70%程度の冷却性能)で冷却コイル6を介して空気を冷却し、冷凍機5の排熱を利用した冷媒レヒートが作動し冷媒レヒートコイル7によって空気を加熱するとともに、PID制御される加熱器8によって室内温度が制御される。
【0029】
ステップ2へ移行してもE点(冷凍機OFF:A点と冷媒レヒートOFF:F点の中間点)が即座に目標温度の23℃に切り替わるのではなく温度検出器10からの室温の印可信号の傾向が下降傾向にあり、E点付近で安定したときにE点が23℃、A点が22.65℃、F点は23.35℃の設定に切り替わる。
反対にステップ2への移行後、温度検出器10からの室温の印可信号の傾向が上昇傾向の場合には、温度設定はE点が23.3℃、A点は22.95℃、F点は23.65℃の設定のままで室温がF点まで上昇したとき、冷媒レヒートの運転を停止せしめる。
【0030】
ステップ2への移行後も室の上昇傾向が止まることなく、室温がF点に到達したとき、冷媒レヒートの運転を停止しステップ3に移行する。
【0031】
ステップ3における温度設定の変更はステップ2の場合と同様であり冷媒レヒートの運転を停止してもなお室温の上昇が止まらずI点(この際I点の設定は23.95℃)に達したときは、冷凍機のアンロードをOFFにし冷凍機5をフルロードで運転するステップ4へ移行する。
【0032】
次に、運転時室温が目標温度を上回っていた場合には冷凍機5はON状態のまま加熱器8がONとなり、このときの温度制御は、ステップ4の状態でJ点が23.0℃、G点が22.65℃、I点が23.05℃となる。
なお、J点はステップ4での室内温度の目標値となる点で、G点から、ディファレンシャルa(0.4℃)とステップb(0.3℃)を加算した値の半分((a+b)÷2)だけ高温側へ移行した値となるように設定する。
温度が上位ステップから下位ステップに移行するときの設定温度の変更は上述した場合と反対で、更に温度が下降傾向にあるときは設定温度は変更されず、上昇かつ安定傾向にあるときに設定温度が変動する。
なお、いずれのステップにおいてもPID制御される加熱器8は停止することなく温度制御を行うものである。
【0033】
なお、H点は、B点、E点、J点と同様、ステップ3で室温が安定したときの目標値となる点で、I点から、ディファレンシャルa(0.4℃)とステップb(0.3℃)を加算した値の半分((a+b)÷2)だけ低温側又はD点から同じ値だけ高温側へ移行した点である。
【0034】
図4は、本発明の温度制御方法によるときの室内温度の変動を示すもので、その振れが従来の温度制御方法による温度の振れと比して極めて小さいことが分かる。
【0035】
以上、本発明の温度制御方法及びその装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0036】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、各ステップでの温度制御にPID制御方式を採用したので、温度振れの少ない温度制御を行うことができるとともに、各ステップの許容範囲を越えたときにステップを移行し、更に移行後の温度変化の傾向によって設定温度を変化させるか否か判断するから無駄のない温度制御を実現することができる。
【0037】
また、請求項2記載の発明によれば、温度制御機構は冷凍機に接続される冷却コイルと冷媒レヒートコイル及び加熱器とを備え、各ステップでの温度制御にPID制御方式を採用した加熱器を用いたから加熱器は各ステップ間の負荷に対応できる程度の小型な加熱器にすることができ、従来型(冷房専用機と再熱用加熱器)に比べて消費電力量は熱負荷の大きな夏季において約66.5%、熱負荷の小さな冬季においては約38.1%の年間にして約54.6%の省エネルギーが可能である等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の温度制御装置の一実施例を示し、縦断説明図である。
【図2】温度調整機構の説明図である。
【図3】ステップサーモ方式の説明図である。
【図4】本発明の温度制御方法によるときの室温の変動を示すグラフである。
【図5】従来の温度制御装置の一実施例を示す縦断説明図である。
【図6】従来の温度制御装置の他の実施例を示す説明図である。
【図7】従来の方式によるステップサーモ方式の説明図である。
【図8】従来の温度制御方法によるときの室温の変動を示すグラフである。
【符号の説明】
1 温度制御装置
2 温度制御機構
3 温度調整機構
5 冷凍機
6 冷却コイル
7 冷媒レヒートコイル
8 加熱器
10 温度検出器
11 指示調節計
12 シーケンサ

Claims (2)

  1. 基準温度とその上限値、下限値を複数設定したステップサーモ式温度制御方法において、各ステップでの温度制御にPID制御方式を採用し、各ステップの許容範囲を越えたときは温度検出器から印加される信号によりステップの移行を図るとともに、基準温度を変更し、これを基準として温度制御を行うことを特徴とする温度制御方法。
  2. 温度制御機構と、温度調整機構とよりなり、制御機構は冷却コイル、冷媒レヒートコイル及び加熱器を備え、温度調整機構は室内よりの受け入れ空気の温度検出器及び該温度検出器よりの信号を検出する指示調節計を備えた制御部からなり、基準温度を設定し、その上限値、下限値を複数設定したステップサーモ方式における各ステップでの温度制御はPID制御方式により制御される加熱器を用い、各ステップの許容範囲を越えたときはそれを温度検出器により検出し、上記冷却コイルと冷媒レヒートコイルを選択作動せしめ、ステップの移行を図るとともに、基準温度を変更し、これを基準として温度制御を行うことを特徴とする温度制御装置。
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