JP3789697B2 - フローインジェクション分析装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フローインジェクション方式を使用した分析装置において、1回のサンプル溶液導入で異なる複数の成分を同時に分析できるようにする技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
発電施設のボイラー給水系等では、その給水中に鉄や銅等の金属成分が析出又は溶存していると、それらがボイラー、タービン、配管等に付着してそれらを劣化させ、発電に支障を来す場合があるところから、そのボイラ給水中の金属成分の量は厳しく管理しなければならない。
【0003】
そこで、この銅や鉄等の金属成分の量を検出する手法のひとつとして、フローインジェクション分析が使用されている。
【0004】
このフローインジェクション分析は、検出すべき成分を含むサンプル溶液を細管中に一定流量で流し、そこに薬液をセグメント状に注入してその細管内での両者の接触部分で例えば発色反応させ、その発色度合を下流の分光検出器等で検出してサンプル溶液の成分濃度分析を行うものである。
【0005】
図6はその原理を説明するための図である。採取したサンプル溶液はまず前処理部Aに給送され、そこでそのサンプル溶液中に析出している懸濁成分の溶解によるイオン化、還元や酸化による調整等の処理が行われた後、分析部Bに送られる。この分析部Bでは、サンプル切取部51において一定量が切り取られて細管52に給送される。この細管52にはキャリアポンプ53によってキャリア溶液が一定流量で供給されており、その流れの中にサンプル溶液がセグメント状に注入される。そして、この細管52の途中には1又は複数の薬液注入ポンプ54a,54b,54c,・・・によりPH調整用、発色反応用等その他の薬液が間欠的に注入されるようになっており、これらの薬液がサンプル溶液中にセグメント状に注入される。55は吸光度計等からなる検出器であり、発色反応したサンプル溶液に特定波長光を透過させてその吸収程度をみることによりその成分の濃度等が検出される。そして、その検出内容は電気データ信号として取り出され、図示しない後段の演算処理部で処理されて表示/記録に供される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のフローインジェクション分析では、サンプル溶液中に2以上の成分が含まれていてこれらを分析する場合、1台の装置でこれを行うときは、サンプル溶液を複数回に分けて採取すると共に、分析対象を変更する毎に薬液の切り替え、検出器の光の波長の切り替え等を行うことが必要になり、非能率であった。また、同時に分析する場合には同様の分析装置を複数用意する必要があった。
【0007】
本発明の目的は、サンプル溶液を1台の装置に1回導入することで複数の成分の同時分析が可能となるようにして、上記した問題を解決したフローインジェクション分析装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、第1の発明は、導入したサンプル溶液を所定量づつ切り取り複数系統の細管に順次振り分ける切取振分け手段と該各系統の細管中のサンプル溶液を独立してフローインジェクション方式により分析する手段を有する分析部と
該分析部の上流に設けられ、導入したサンプル溶液に溶解、酸化、還元等の処理を加える前処理部と、を具備し、
該前処理部が前記サンプル溶液を所定量切り取り第1キャリア溶液により押送する切取手段を具備し、前記分析部の前記切取振分け手段が前記前処理部から給送された前記切り取られたサンプル溶液及び該サンプル溶液の上流の一部と下流の一部を含むように切り取り第2のキャリア溶液により前記各系統の細管に順次振り分けることを特徴とするフローインジェクション分析装置である。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記分析部において、薬液注入用ポンプとしてダブルプランジャ型レシプロポンプを使用し、前記細管に異なる薬液を180度位相差で注入するよう構成した。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の原理説明用のフローインジェクション分析装置の系統図である。ここでは、前処理部Aで処理したサンプル溶液を分析部Bに導入してフローインジェクション分析を行う。この分析部Bは2系統の反応分析部を具備し、各系統の細管11,12にはサンプル切取振分け部13によって交互に一定量だけ切り取ったサンプル溶液をセグメント状にしてキャリア溶液(図示せず)によって押送する。一方の細管11には薬液注入ポンプ14a,14b,14c,・・・によって各種薬液が間欠的に注入され、他方の細管12には別の薬液注入ポンプ15a,15b,15c,・・・によって別の各種薬液が間欠的に注入される。16は検出器であり、両細管11,12を流れるサンプル溶液の特定波長の吸収程度から目的成分の分析を行う。このとき異なる波長が要求されるときは、1個の光源から所望の波長の光を2種取り出して使用する。
【0013】
このように本実施形態では、サンプル溶液を一定間隔で2系統の細管11,12に交互に振り分けて給送しているので、1回サンプル溶液を導入して異なる成分を独立し同時に分析できる。このとき、各系統の相互間で影響を及ぼすことはない。
【0014】
図2は本発明をボイラ給水中に析出している銅と鉄を分析するフローインジェクション分析装置に適用した系統図である。前処理部Aにおいて、21は第1キャリア溶液供給ポンプであり、2系統の配管から供給される第1キャリア溶液(例えば純水)aを給送する。22はボイラ給水から採取したサンプル溶液bを切り取ってキャリア溶液aにセグメント状にはめ込むためのサンプル切取弁であり、一定量の切り取りのためのサンプルループ22aを有する。23は溶解液ポンプであり、2系統の配管から供給される溶解液(例えば塩酸)cをサンプル切取弁22の下流に注入する。24はマイクロ波を加熱エネルギーとして利用した溶解部であり、マイクロ波空胴共振器内の電界エネルギー集中部を溶液が通過するように構成されている。25は溶解部24の下流に設けた冷却部であり、所定温度に冷却管理した溶液dを配管26に給送する。
【0015】
分析部Bにおいて、31は前処理部Aから給送される溶液dのうちのサンプル溶液部分を完全に含む領域を一定量だけ切り取り、第2キャリア溶液(例えば、0.18モルの塩酸)e1,e2により第1細管32と第2細管33に交互に振り分けて押送する16弁型のサンプル切取振分け弁であり、一定量の切取用のサンプルループ31a,31bを有する。34はその第2キャリア溶液eをサンプル切取振分け弁31にe1,e2に分けて給送する第2キャリア溶液供給ポンプである。35は銅発色用薬液f(例えばDTCS)と鉄マスク用薬液g(例えば酒石酸)を第1細管32に交互に間欠的に供給する薬液注入ポンプ、36は鉄還元用薬液h(例えば塩酸ヒドロキシルアミン)と鉄発色用薬液i(例えばTPTZ)を第2細管32に交互に間欠的に供給する薬液注入ポンプ、37はPH調整用薬液j(例えば酢酸アンモニウム緩衝液)を第1配管32と第2配管33に交互に間欠的に供給する薬液注入ポンプである。
【0016】
第1配管32には、PH調整用薬液j、鉄マスク用薬液g、銅発色用薬液fの順序で下流方向に向けて注入点が設けられ、銅発色用薬液fの注点の下流に反応コイル38、検出器39、背圧コイル40が順次設けられている。また、第2配管33には、鉄還元用薬液h、鉄発色用薬液i、PH調整用薬液jの順序で下流方向に向けて注入点が設けられ、そのPH調整用jの注入点の下流に検出器41、背圧コイル42が順次設けられている。
【0017】
なお、以上において、ポンプ21,23,34〜37は、すべてダブルプランジャ型レシプロポンプであり、入力側に2系統で供給される溶液を180度の位相差で2系統の出力側に交互に間欠的に供給する。また、検出器39,41は共通の光源から出射した光から所定の同一又は異なる波長の光を選択してそれを検出光としたものであり、ここでは反応溶液を透過させてその吸収程度により成分分析を行う。この検出器39,41で検出された信号は図示しない演算処理部で処理され、表示/記録に供される。
【0018】
さて、前処理部Aのサンプル切取弁22は、図3(a)に示すように第1の切替状態では開口部2−3,4−5,6−1が各々連通しており、サンプル溶液bがサンプルループ22aを経由してドレインに排出されている。ここで、図3(b)に示すような第2の切替状態に切り替えると、開口部1−2,3−4,5−6が各々連通してサンプルループ22a内に一定量貯蔵されているサンプル溶液bがそのまま第1キャリア溶液aによって下流に押し出される。
【0019】
したがって、サンプル切取弁22を所定の周期で第1と第2の切替状態に交互に切り替えることによって、第1キャリア溶液a内に所定のピッチで所定の長さ(量)のサンプル溶液bがセグメントの形で押し込まれて給送される。
【0020】
このサンプル溶液bはポンプ23で給送される溶解液cと混入されてから溶解部24の方向の押送され、そこでマイクロ波加熱により溶解される。これによって、切り取られたサンプル溶液b中に析出していた鉄成分や銅成分の懸濁物がイオン化される。そして、この後に冷却部25で後段での化学反応に適した所定温度にまで冷却されてから、配管26により分析部Bに給送される。
【0021】
分析部Bのサンプル切取振分け弁31は、図4(a)に示すように第1の切替状態では開口部1−2,3−4,5−6,7−8,9−10,11−12,13−14,15−16が連通しており、溶液dがサンプルループ31bを介してドレインに排出され、第2キャリア溶液ポンプ34から供給される第2キャリア溶液e1が第1細管32に給送され、第2キャリア溶液e2がサンプルループ31a内の溶液dを第2細管33に押送している。
【0022】
ここで、図4(b)に示すような第2の切替状態に切り替えると、開口部16−1,2−3,4−5,6−7,8−9,10−11,12−13,14−15が連通して、溶液dがサンプルループ31aを介してドレインに排出され、第2キャリア溶液ポンプ34から供給される第2キャリア溶液e1がサンプルループ31b内のサンプル溶液dを第1細管32に押送し、第2キャリアe2が第2配管33に給送される。
【0023】
したがって、サンプル切取振分け弁31を第1と第2の切替状態に一定の周期で切り替えれば、第1細管32と第2細管33に第2キャリア溶液eによって交互に溶液dがセグメント状に押し込まれて給送されるようになる。
【0024】
ここで、サンプル切取振分け弁31でのサンプル切取量(サンプルループ31a,31bの長さや関連する配管長によって決まる)を前記サンプル切取弁22でのサンプル切取量(サンプルループ22aの長さや関連する配管長によって決まる)の2倍(例えば400μl用)に設定しておけば、サンプル切取弁22の切り替えタイミングとサンプル切取振分け弁31の切り替えタイミングを調整することによって、配管26の溶液d内のサンプル溶液b’(サンプル溶液bを溶解液cで溶解したもの)の長さ(例えば200μl相当)の前後の長さ(例えば100μl相当)を含む2倍の長さ(例えば400μl相当)をサンプル切取振分け弁31で切り取って、第1,第2の細管32,33に交互に押送することができる。すなわち、図5に示すように、サンプル切取弁22で切り取られたサンプル溶液bの部分b’を完全に含む形のサンプル溶液b”をサンプル切取振分け弁31で切り取ることができる。図5中のa’は第1キャリア溶液aに溶解液cを混入した領域部である。
【0025】
以上のようにして、第1の細管32に振り分けられたサンプル溶液b”は、薬液jの注入によってPH調整され、その下流での薬液gの注入によって鉄イオンがマスキングされ、その下流で銅発色用薬液fが注入されてから、反応コイル38に至ってそこで反応が促進され、検出器39で発色部分での特定波長の吸収程度が検出される。
【0026】
一方、第2の細管33に振り分けられたサンプル溶液b”は、薬液hの注入によって鉄イオンFe2+、Fe3+等が全てFe2+に統一還元され、その下流で鉄発色用薬液iが注入され、最後に薬液jの注入によってPH調整されてから、検出器41で発色部分での特定波長の吸収程度が検出される。
【0027】
背圧コイル40,42は、第1,第2の細管32,33の送液圧力に対して所定の背圧を与えて、反応によって生じる可能性のある気泡の発生を抑制する。
【0028】
以上のように、ここでは前処理部Aで前処理したサンプル溶液dを分析部Bにおいて銅分析用と鉄分析用の2系統に振り分けて分析しているので、1台の装置にサンプル溶液を1回導入することで、銅と鉄を同時に分析することができる。また、薬液注入用ポンプとしてダブルプランジャ型レシプロポンプを使用しているので、2種の薬液を1個のポンプで供給することができ必要ポンプ台数を半減できることは勿論、送られる液が180度位相差を持つので同一細管に注入するときは無脈流化を図ることができ、さらに、サンプル溶液を薬液でサンドイッチ状に挟むことができるので、両者を確実に接触させることができる。
【0029】
なお、以上では銅と鉄を同時分析する例について説明したが、これに限られるものではなく、検出器39,41の波長を変更し、薬液を変更することにより、シリカとリン酸、亜鉛と鉄、亜鉛と銅、その他の2種の成分を同時に分析することができる。また、サンプル切取振分弁31を3系統以上の系統に振り分ける弁に交換すれば、3種以上の成分を同時に分析することができる。
【0030】
【発明の効果】
以上から本発明によれば、1台の装置に対する1回のサンプル溶液の取り込みによって複数の成分の分析を同時に実現することができる。このとき、個々の成分分析用のサンプル溶液は独立した別系統に分離されるので、薬液の選定に系統相互間の干渉について特別の注意を払う必要はない。また、薬液注入用ポンプとしてダブルプランジャ型レシプロポンプを使用しているので、必要ポンプ台数を半減でき、同一細管に注入するときは無脈流化を図ることができ、さらに、サンプル溶液を薬液でサンドイッチ状に挟むことができるので、両者を確実に接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の原理説明用のフローインジェクション分析装置の系統図である。
【図2】 具体例のフローインジェクション分析装置の系統図である。
【図3】 (a)、(b)は図2のサンプル切取弁22の切替説明図である。
【図4】 (a)、(b)は図2のサンプル切取振分け弁31の切替説明図である。
【図5】 サンプル切取振分け弁31の切取振分けの説明図である。
【図6】 従来のフローインジェクション分析装置の原理説明図である。
【符号の説明】
A:前処理部、B:分析部
11,12:細管、13:サンプル切取振分け部、14a,14b,14c,15a,15b,15c:薬液注入ポンプ、16:検出器
21:第1キャリア溶液供給ポンプ、22:サンプル切取弁、23:溶解液供給ポンプ、24:溶解部、25:冷却部、26:配管
31:サンプル切取振分け弁、32,33:細管、34:第2キャリア溶液供給ポンプ、35,36,37:薬液注入ポンプ、38:反応コイル、39:検出器、40:背圧コイル、41:検出器、42:背圧コイル。

Claims (2)

  1. 導入したサンプル溶液を所定量づつ切り取り複数系統の細管に順次振り分ける切取振分け手段と該各系統の細管中のサンプル溶液を独立してフローインジェクション方式により分析する手段を有する分析部と
    該分析部の上流に設けられ、導入したサンプル溶液に溶解、酸化、還元等の処理を加える前処理部と、を具備し、
    該前処理部が前記サンプル溶液を所定量切り取り第1キャリア溶液により押送する切取手段を具備し、前記分析部の前記切取振分け手段が前記前処理部から給送された前記切り取られたサンプル溶液及び該サンプル溶液の上流の一部と下流の一部を含むように切り取り第2のキャリア溶液により前記各系統の細管に順次振り分けることを特徴とするフローインジェクション分析装置。
  2. 前記分析部において、薬液注入用ポンプとしてダブルプランジャ型レシプロポンプを使用し、前記細管に異なる薬液を180度位相差で注入することを特徴とする請求項1に記載のフローインジェクション分析装置。
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