JP3786776B2 - フローインジェクション分析装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願の発明は、各種の無機物や有機物の同時定量分析に使用されるフローインジェクション分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
送液管内にキャリヤー液を流しながら、そのキャリヤー液中に注入された試料の成分を分析するフローインジェクション分析装置は、各種の無機物や有機物の定量分析に多く使用されている。図6は、フローインジェクション分析装置の最もシンプルな構成を示す概略図である。
フローインジェクション分析装置は、キャリヤー液を送出して流すポンプ1と、流されるキャリヤー液に試料を注入する試料注入部2と、注入された試料に所定の反応を生じさせる反応部3と、反応生成物を検出する検出部4とから主に構成されている。
【0003】
キャリヤー液は、試料を検出部4まで運ぶ役目が主であるが、多くの場合、反応部2で試料に反応する反応試薬の導入の役目も兼ねている。
試料注入部2には、ロータリーバルブが多く使用される。通常はキャリヤー液はバイパス路を流れて反応部3や検出部4に送られている。ロータリーバルブが回転すると、試料の流路とキャリヤー液の流路とが重なり、キャリヤー液中に試料が注入される。
反応部3は、送液管をコイル状に形成した構成のものが多く使用される。反応部3における送液管の長さは、キャリヤー液中の反応試薬と試料とが適切に混合・反応するのに要する滞留時間により決定される。
【0004】
検出部4は、吸光度等の光学的性質によって試料中の成分の定量を行うよう構成されている。図7を使用して吸光度により検出を行う場合の構成について説明する。図7は、図6に示すフローインジェクション分析装置の検出部の構成を示す概略図である。
この図7に示すフローセル室は、Z形と呼ばれるものである。具体的には、セル室形成具41には、図7に示すような「Z」字状の貫通路が形成され、この貫通路がフローセル室40を形成している。そして、「Z字」の真ん中の直線上の部分の流路を挟むようにして一対の光学窓42が設けられている。光学窓42は、固定具43によってセル室形成具41に固定されている。
【0005】
図7に示すように、一対の光学窓42で挟まれた流路に沿って光学系5の光軸50が設定されている。光学系5は、光源51からの光を分光する分光器52と、光源51からの光を分光器52に入射させる反射ミラー53等から構成されている。
光源51からの光は分光器52により分光され、フローセル室40に設定された光軸50に沿って進んで一方の光学窓42を通過してフローセル室40内に入射するようになっている。そして、入射した光は、フローセル室40内を通過して他方の光学窓42から出射する。
出射側の光軸50上には、検出器54が設けられている。検出器54は、フローセル室40を透過した光を受光して電気信号に変換する。この電気信号は、増幅器55で増幅されて記録計56で記録されるようになっている。
【0006】
分析の一例として、塩化物イオンの定量を行う場合について説明する。キャリヤー液としては、発色試薬であるHg(SCN)2-Fe3+の溶液が使用され、ポンプ1によって一定の流量で送液管に流される。塩化物イオンを含む試料が試料注入部2でキャリヤー液に注入され、反応部3に送られると、以下の式のような反応が生ずる。
【数1】
検出部4では、分光器52により波長480nmの光が選択されてフローセル室40に入射している。反応部3での反応による生成物Fe(SCN)2 +がフローセル室40に到達すると、この生成物は480nmの光を吸収するため、フローセル室40から出射する480nmの光が一時的に弱くなる。検出器54は、この一時的な光強度の低下をオペアンプ等で検出信号に変換し、記録計56に記録させる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したフローインジェクション分析装置は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)やイオンクロマトグラフィ(IC)に比べて、多数のサンプルを短時間に分析できることから、サンプル数の多い環境試料や生体試料等の分析に威力を発揮している。また、分析精度や再現性の点でもかなり優れており、試薬消費量や廃液量が低減されることから、実用的に高い評価を得ている。
【0008】
しかしながら、従来のフローインジェクション分析装置では、HPLCやIC等のように多成分の同時分析ができない。即ち、従来の装置では、セル室は一つであり、このフローセル室に検出用の光を入出射させる光学系の光軸も一つである。フローセル室中に検出可能な複数の試料成分が流れていたとしても、検出器に生ずる光強度の変化は各々の試料成分による変化の総量なので、検出器の検出信号からは二つの試料成分の定量を行うことはできない。
【0009】
このため、フローインジェクション分析装置は、上記のようなメリットがあるものの、複雑な分析を行うのにはあまり適さないという課題があった。本願の発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、多成分の同時分析が可能なフローインジェクション分析装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、送液管内にキャリヤー液を流しながら、そのキャリヤー液中に注入された試料の成分を分析するフローインジェクション分析装置であって、
流されるキャリヤー液に試料を注入する試料注入部と、注入された試料の成分を検出する検出部とが設けられており、
検出部は、キャリヤー液の一つの流路上に設けられているとともに光学窓を有する第一第二の複数のフローセル室と、各フローセル室に所定の波長の光を照射して光学的性質により所定の成分の検出を行う光学系とを備えており、
試料注入部と第一のフローセル室の間の流路上には、試料に第一の反応試薬を混合する第一の混合器が設けられているとともに、第一のフローセル室と第二のフローセル室の間の流路上には、試料に第二の反応試薬を混合する第二の混合器が設けられており、
前記複数のフローセル室は、パラレルに配置されており、前記光学系は、同一の光源からの光を分割して各フローセル室に光を入射させるものであり、
各フローセルを出射した光を受光する位置に検出器が設けられており、少なくとも二つのフローセル室で異なる成分の検出が可能なものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、送液管内にキャリヤー液を流しながら、そのキャリヤー液中に注入された試料の成分を分析するフローインジェクション分析装置であって、
流されるキャリヤー液に試料を注入する試料注入部と、注入された試料の成分を検出する検出部とが設けられており、
検出部は、キャリヤー液の一つの流路上に設けられているとともに光学窓を有する第一第二の複数のフローセル室と、各フローセル室に所定の波長の光を照射して光学的性質により所定の成分の検出を行う光学系とを備えており、
試料注入部と第一のフローセル室の間の流路上には、試料に第一の反応試薬を混合する第一の混合器が設けられているとともに、第一のフローセル室と第二のフローセル室の間の流路上には、試料に第二の反応試薬を混合する第二の混合器が設けられており、
前記複数のフローセル室は、一つの光源からの光の光軸上にシリアルに配置されており、この光軸上には、各フローセル室を出射した光を測定光として受光する検出器が設けられていて、少なくとも二つのフローセル室で異なる成分の検出が可能であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、送液管内にキャリヤー液を流しながら、そのキャリヤー液中に注入された試料の成分を分析するフローインジェクション分析装置であって、
流されるキャリヤー液に試料を注入する試料注入部と、注入された試料の成分を検出する検出部とが設けられており、
検出部は、キャリヤー液の一つの流路上に設けられているとともに光学窓を有する第一第二の複数のフローセル室と、各フローセル室に所定の波長の光を照射して光学的性質により所定の成分の検出を行う光学系とを備えており、
試料注入部と第一のフローセル室の間の流路上には、試料に第一の反応試薬を混合する第一の混合器が設けられているとともに、第一のフローセル室と第二のフローセル室の間の流路上には、試料に第二の反応試薬を混合する第二の混合器が設けられており、
前記光学系は、同一の光源からの光を分割して各フローセル室に入射させるものであって、分岐した一方の光軸上にシリアルに前記各フローセル室が配置されており、
この一方の光軸上には、各フローセル室を出射した光を測定光として受光する検出器が設けられていて、少なくとも二つのフローセル室で異なる成分の検出が可能であり、
分岐した他方の光軸上には、空気中を通過した光を参照光として受光する第二の検出器が設けられていて、参照光に対する測定光の相対的な強度変化に従って測定が行えるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、送液管内にキャリヤー液を流しながら、そのキャリヤー液中に注入された試料の成分を分析するフローインジェクション分析装置であって、
流されるキャリヤー液に試料を注入する試料注入部と、注入された試料の成分を検出する検出部とが設けられており、
検出部は、キャリヤー液の一つの流路上に設けられているとともに光学窓を有する複数のフローセル室と、各フローセル室に所定の波長の光を照射して光学的性質により所定の成分の検出を行う光学系とを備えており、
前記光学系は、同一の光源からの光を分割して複数の光軸に沿って進ませるものであり、これら複数の各々の光軸上には、シリアルに配置された複数のフローセル室が設けられており、
各光軸上には、各フローセルを出射した光を受光する位置に検出器が設けられており、少なくとも四つのフローセル室で異なる成分の検出が可能なものであるという構成を有する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。
図1は、本願発明の実施形態に係るフローインジェクション分析装置の概略構成を示す図である。また、図2は図1に示すフローインジェクション分析装置の検出部の構成を示す概略図である。
図1に示すフローインジェクション分析装置は、概略的には、キャリヤー液を送液する第一のポンプ11と、流されるキャリヤー液に試料を注入する試料注入部2と、注入された試料に所定の反応を生じさせる反応部31,32と、注入された試料の成分を検出する検出部4とから主に構成されている。
【0012】
本実施形態の装置では、キャリヤー液に第一第二の二つの反応試薬溶液を混合するよう構成されている。具体的には、第一の反応試薬溶液は、キャリヤー液とともに第一のポンプ11によって送液され、第一の混合器61で混合されるようになっている。尚、試料注入部2は、第一の混合器61の手前の流路上に設けられている。従って、第一の反応試薬溶液が混合される段階では、試料は既にキャリヤー液に注入されている。
また、第二の反応試薬溶液は、第二のポンプ12によって送液され、第二の混合器62によってキャリヤー液に混合されるようになっている。尚、第二の混合器62は、第一の混合器61よりも下流側の流路上に設けられている。
【0013】
本実施形態の装置の大きな特徴点は、試料の成分を検出する検出部4が二つのフローセル室401,402を備え、それぞれのフローセル室401,402に流れる試料の成分を検出できるようになっている点である。この点を図2を使用して詳しく説明する。
【0014】
フローセル室401,402は、セル形成具43によって形成されている。セル室形成具43には、図2に示すような二つのほぼ「π」字状の貫通路が向かい合わせて形成され、この貫通路がフローセル室401,402になっている。尚、セル形成具の材質はダイフロンである。そして、二つのフローセル室401,402の向かい合った横に長い部分の流路を挟むようにして一対の光学窓44が設けられている。光学窓44は、不図示の固定具によってセル室形成具43に固定されている。つまり、二つのフローセル室401,402がパラレルに配置されている。尚、セル室形成具43の材質としては、前述したダイフロンの他、テフロン等のフッ素樹脂やポリエーテルケトン(PEEK)等の合成樹脂又はステンレス等の金属が使用されることがある。
【0015】
この二つのフローセル室401,402に所定の波長の光を照射して光学的性質により所定の成分の検出を行う光学系5は、光源51からの光を分光する分光器52と、分光器52からの光を二つに分けるビームスプリッタ57と、ビームスプリッタ57からの光を各フローセル室401,402に導く反射ミラー53等から構成されている。そして、各フローセル室401,402から出射した光を受光して吸光度などの光学的性質を検出する検出器54と、検出器54の検出結果に従って分析結果を記録する記録計56とが設けられている。
【0016】
また、図1に示す通り、第一のフローセル室401と第二のフローセル室402とは送液管によって繋がっており、第一のフローセル室401を流れたキャリヤー液が第二のフローセル室402に流れるようになっている。そして、第一のフローセル室401と第二のフローセル室402との間に、上述した第二の混合器62が設けられている。
【0017】
さらに、本実施形態の装置では、第一,第二の二つの反応部31,32が設けられている。第一の反応部31は、第一の混合器61と第一のフローセル室401との間の流路上にあり、第二の反応部32は、第二の混合器62と第二のフローセル室402との間の流路上にある。従って、まず、第一の混合器61によって第一の反応試薬溶液が混合されたキャリヤー液が第一の反応部31に達して試料中に所定の反応が生じ、その後、この試料の成分が第一のフローセル室401で検出される。そして次に、第二の混合器62によって第二の反応試薬溶液が混合されたキャリヤー液が第二の反応部32に達して試料中に所定の反応が生じ、その後、この試料の成分が第二のフローセル室402で検出されるようになっている。
【0018】
尚、各反応部31,32の構成は、従来と同様であり、送液管をコイル状に形成したものが使用されている。また、第二のフローセル室402の下流側には、背圧用コイル33が設けられている。背圧用コイル33は、ポンプ1による送液圧力に対して適当な背圧を加え、反応によって生ずる可能性のある気泡の発生を抑えるものである。
【0019】
次に、火力発電所のボイラー給水中の鉄及び銅の同時定量を行う場合を例に採り、上記構成に係る本実施形態のフローインジェクション分析装置の動作を説明する。火力発電所のボイラー給水中の鉄や銅は、ボイラーチューブやタービンに析出し発電の支障となる。このため、ボイラー給水中の鉄や銅の量は厳しい管理基準で管理されており、この鉄や銅の定量はボイラー水質管理上極めて重要である。
【0020】
上記構成に係るフローインジェクション分析装置を使用してボイラー給水中の鉄及び銅の定量を行う場合、より具体的には、二価の鉄イオンと二価の銅イオンの定量を行う場合には、以下のような条件とする。
まず、キャリヤー液としては純水を使用する。第一の反応試薬溶液としては、2−(5−ブロモ−2−ピリジールアゾ)−5−(N−プロピル−N−3−スルホプロピルアミノ)アニリンナトリウム塩(以下、5−Br−PSAA)の溶液(pH値4.5)を用いる。また、第二の反応試薬溶液としては、L−アスコルビン酸の溶液を用いる。第一のポンプ11の流量は0.9ml/分、第二のポンプ12の流量は0.4ml/分程度である。また、検出部4の二つのフローセル室401,402に入射する光の波長は585nmに設定されている。さらに、第一の反応部31の送液管の長さは20cm、第二の反応部32の送液管の長さは9mである。
【0021】
キャリヤー液及び第一の反応試薬溶液が第一のポンプ11によって送出され、第一の混合器61で混合される。そして、このキャリヤー液は、第一のフローセル室401を通って第二の混合器62に達し、第二の反応試薬溶液が混合される。さらに、この際、鉄及び銅を含むボイラー給水が試料として試料注入部2から所定のタイミングで注入される。そしてこのキャリヤー液が第一の反応部31に達すると、試料中の二価の銅イオンが5−Br−PSAAと反応して発色する。発色したキャリヤー液が第一のフローセル室401に達すると、吸光度が変化し、この変化が検出器54で検出される。尚、試料中の三価の鉄イオンは5−Br−PSAAとは反応しない。
【0022】
発色したキャリヤー液には、第一のフローセル室401の下流側に設けられた第二の混合器62において第二の反応試薬溶液が混合される。そして、このキャリヤー液が第二の反応部32に達すると、以下のような反応が生ずる。即ち、L−アスコルビン酸との反応によって銅イオンは二価から一価に変わり、二価の銅イオンとの反応による5−Br−PSAAの発色は消える。その一方で、L−アスコルビン酸により三価の鉄イオンを二価に還元すると、5−Br−PSAA−Fe(Feは二価)錯体となってと発色する。このため、このキャリヤー液が第二のフローセル室402に達すると、5−Br−PSAA−Fe錯体の光吸収が生じ、この変化が検出器54で検出される。尚、第二のフローセル室402を通過したキャリヤー液は、廃液となる。
【0023】
図3は、上述した鉄イオンと銅イオンの同時定量を行った実験の結果を示す図である。図3中の縦軸は吸光度の大きさを示し、横軸は時間である。この実験では、1回の注入で3〜10ppbの二価の鉄イオンと二価の銅イオンとを5分毎に検出することができた。尚、この実験では、二価の銅イオンの出力が+側に、二価の鉄イオンの出力が−側に記録される。この図3に示すように、銅イオン及び鉄イオンとも再現性のよい分析結果が得られており、本実施形態の装置によれば、異なる試料成分が精度よく分析が行えることが分かる。
【0024】
上記説明から分かるように、本実施形態のフローインジェクション分析装置では、第一,第二の二つのフローセル室401,402を有している。このため、この二つのフローセル室401,402の前後で適当な反応試薬溶液を混合することで、二価の銅イオンと二価の鉄イオンの二つの試料成分の同時定量が可能になっている。このため、二つの試料成分を別々に定量する場合に比べ、測定が短時間に済む。このようなことから、本実施形態のフローインジェクション分析装置は、多数のサンプルを精度良く、分析できる実用的なメリットに加え、異種成分の同時分析という複雑な分析も容易に可能になるというメリットを有している。
【0025】
次に、本願発明の他の実施形態について説明する。
図4は、本願発明の第二の実施形態の要部を説明する図であり、第二の実施形態のフローインジェクション分析装置における検出部の構成を示す概略図である。第二の実施形態における検出部4は、同様にダイフロンで形成されたセル室形成具43を横に並べて縦設している。各々のセル室形成具43には、片側に前述の同様のほぼ「π」字状の貫通路が形成されており、この貫通路がセル室401,402になっている。つまり、二つのフローセル室401,402がシリアルに配置されている。
【0026】
各々のフローセル室401,402の横に長い部分の流路を挟むようにして、一対の光学窓44が設けられている。光学窓44は、不図示の固定具によってセル室形成具43に固定されている。また、各々のフローセル室401,402を貫通するようにして光学系5の光軸50が共通して設定されている。尚、二つのセル室形成具43は、スペーサ45を介在させて光軸50が共通するように互いに固定されている。このような構成の検出部4によっても、前記と同様に鉄イオンと銅イオンのような二つの試料成分の同時定量が可能である。この場合いずれのシグナルも図3に示す+側に記録される。
【0027】
また、本実施形態においても、光源51からの光はビームスプリッタ57に分割され、別々の光軸50に沿って進むようになっている。そして、各々のセル室形成具43の他の片側にはフローセル室401,402は形成されていない。従って、ビームスプリッタ57で分割されたもう一方の光は、フローセル室401,402とは反対側の空気中を通過するようになっている。そして、この空気中を通過した光も、検出器542によって受光され、その強度が検出されるようになっている。
【0028】
この空気中を通過する光は、参照光として利用される。即ち、フローセル室401,402中を通過する光(以下、測定光)を受光する検出器(以下、第一検出器)541の出力と、空気中を通過する光を受光した検出器(以下、第二検出器)542の出力とが、差動増幅器58に入力される。差動増幅器58は、第一検出器541と第二検出器542との差に応じた出力信号を発生させ、この信号が処理されて記録計56に記録される。このような検出系によると、参照光に対する測定光の相対的な強度変化に従ってフローセル室401,402中の液体の光学的性質の変化が検出されるので、より精度の高い分析が行える。尚、一つの光源51からの光を分割する構成は、二つの光源を用いる場合に比べ、光源の出力変動の影響を受けない長所がある。
【0029】
また、図5は、本願発明の第三の実施形態の要部を説明する図であり、第三の実施形態のフローインジェクション分析装置における検出部の構成を示す概略図である。第三の実施形態における検出部4は、図2に示すものと同様の構成のセル室形成具43及び光学窓44の組を横に並べて縦設している。つまり、本実施形態では、四つのセル室401,402がパラレル及びシリアルに配置されている。尚、二つのセル室形成具43は、スペーサ45を介在させて光軸50が共通するように互いに固定されている。
【0030】
また、本実施形態においても、図4に示すのと同様に、光源51からの光はビームスプリッタ57に分割され、別々の光軸50に沿って進むようになっている。各々の光軸50に沿って進む光は、両側のフローセル室401,402中をそれぞれ通ってそれぞれの検出器541,542で受光されるようになっている。
【0031】
このような四つのフローセル室40を備えた検出部4は、色々な使い方ができる。例えば、適当な反応試薬を選択して選択的に反応を生じさせることで四つのフローセル室40の各々で異なる試料成分の光学的性質が検出されるようにすれば、四つの試料成分の同時分析が可能である。また、四つのフローセル室40のうち、例えば上側の二つのフローセル室40には、流路をバイパスして未反応のキャリヤー液のみを流すようにしておき、このフローセル室40を通過する光を参照光として利用することもできる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明した通り、本願発明のフローインジェクション分析装置によれば、複数のフローセル室を有しているので1回の試料注入で、異なる試料成分の同時分析が可能になる。このため、多数のサンプルを精度良く、分析できる実用的なメリットに加え、異種成分の同時分析という複雑な分析も容易であるという新たなメリットを備えたフローインジェクション分析装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明の実施形態に係るフローインジェクション分析装置の概略構成を示す図である。
【図2】 図1に示すフローインジェクション分析装置の検出部の構成を示す概略図である。
【図3】 鉄イオンと銅イオンの同時定量を行った実験の結果を示す図である。
【図4】 本願発明の第二の実施形態の要部を説明する図であり、第二の実施形態のフローインジェクション分析装置における検出部の構成を示す概略図である。
【図5】 本願発明の第三の実施形態の要部を説明する図であり、第三の実施形態のフローインジェクション分析装置における検出部の構成を示す概略図である。
【図6】 フローインジェクション分析装置の主な構成を示す概略図である。
【図7】 図6に示すフローインジェクション分析装置の検出部の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
11 第一のポンプ
12 第二のポンプ
2 試料注入部
31 第一の反応部
32 第二の反応部
4 検出部
40 フローセル室
401 第一のフローセル室
402 第二のフローセル室
43 セル室形成具
44 光学窓
5 光学系
51 光源
52 分光器
54 検出器
541 第一の検出器
542 第二の検出器
56 記録計
61 第一の混合器
62 第二の混合器
Claims (4)
- 送液管内にキャリヤー液を流しながら、そのキャリヤー液中に注入された試料の成分を分析するフローインジェクション分析装置であって、
流されるキャリヤー液に試料を注入する試料注入部と、注入された試料の成分を検出する検出部とが設けられており、
検出部は、キャリヤー液の一つの流路上に設けられているとともに光学窓を有する第一第二の複数のフローセル室と、各フローセル室に所定の波長の光を照射して光学的性質により所定の成分の検出を行う光学系とを備えており、
試料注入部と第一のフローセル室の間の流路上には、試料に第一の反応試薬を混合する第一の混合器が設けられているとともに、第一のフローセル室と第二のフローセル室の間の流路上には、試料に第二の反応試薬を混合する第二の混合器が設けられており、
前記複数のフローセル室は、パラレルに配置されており、前記光学系は、同一の光源からの光を分割して各フローセル室に光を入射させるものであり、
各フローセルを出射した光を受光する位置に検出器が設けられており、少なくとも二つのフローセル室で異なる成分の検出が可能なものであることを特徴とするフローインジェクション分析装置。 - 送液管内にキャリヤー液を流しながら、そのキャリヤー液中に注入された試料の成分を分析するフローインジェクション分析装置であって、
流されるキャリヤー液に試料を注入する試料注入部と、注入された試料の成分を検出する検出部とが設けられており、
検出部は、キャリヤー液の一つの流路上に設けられているとともに光学窓を有する第一第二の複数のフローセル室と、各フローセル室に所定の波長の光を照射して光学的性質により所定の成分の検出を行う光学系とを備えており、
試料注入部と第一のフローセル室の間の流路上には、試料に第一の反応試薬を混合する第一の混合器が設けられているとともに、第一のフローセル室と第二のフローセル室の間の流路上には、試料に第二の反応試薬を混合する第二の混合器が設けられており、
前記複数のフローセル室は、一つの光源からの光の光軸上にシリアルに配置されており、この光軸上には、各フローセル室を出射した光を測定光として受光する検出器が設けられていて、少なくとも二つのフローセル室で異なる成分の検出が可能であることを特徴とするフローインジェクション分析装置。 - 送液管内にキャリヤー液を流しながら、そのキャリヤー液中に注入された試料の成分を分析するフローインジェクション分析装置であって、
流されるキャリヤー液に試料を注入する試料注入部と、注入された試料の成分を検出する検出部とが設けられており、
検出部は、キャリヤー液の一つの流路上に設けられているとともに光学窓を有する第一第二の複数のフローセル室と、各フローセル室に所定の波長の光を照射して光学的性質により所定の成分の検出を行う光学系とを備えており、
試料注入部と第一のフローセル室の間の流路上には、試料に第一の反応試薬を混合する第一の混合器が設けられているとともに、第一のフローセル室と第二のフローセル室の間の流路上には、試料に第二の反応試薬を混合する第二の混合器が設けられており、
前記光学系は、同一の光源からの光を分割して各フローセル室に入射させるものであって、分岐した一方の光軸上にシリアルに前記各フローセル室が配置されており、
この一方の光軸上には、各フローセル室を出射した光を測定光として受光する検出器が設けられていて、少なくとも二つのフローセル室で異なる成分の検出が可能であり、
分岐した他方の光軸上には、空気中を通過した光を参照光として受光する第二の検出器が設けられていて、参照光に対する測定光の相対的な強度変化に従って測定が行えるものであることを特徴とするフローインジェクション分析装置。 - 送液管内にキャリヤー液を流しながら、そのキャリヤー液中に注入された試料の成分を分析するフローインジェクション分析装置であって、
流されるキャリヤー液に試料を注入する試料注入部と、注入された試料の成分を検出す る検出部とが設けられており、
検出部は、キャリヤー液の一つの流路上に設けられているとともに光学窓を有する複数のフローセル室と、各フローセル室に所定の波長の光を照射して光学的性質により所定の成分の検出を行う光学系とを備えており、
前記光学系は、同一の光源からの光を分割して複数の光軸に沿って進ませるものであり、これら複数の各々の光軸上には、シリアルに配置された複数のフローセル室が設けられており、
各光軸上には、各フローセルを出射した光を受光する位置に検出器が設けられており、少なくとも四つのフローセル室で異なる成分の検出が可能なものであることを特徴とするフローインジェクション分析装置。
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