JP2012052895A - フローインジェクション分析装置及び分析方法 - Google Patents

フローインジェクション分析装置及び分析方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2012052895A
JP2012052895A JP2010195196A JP2010195196A JP2012052895A JP 2012052895 A JP2012052895 A JP 2012052895A JP 2010195196 A JP2010195196 A JP 2010195196A JP 2010195196 A JP2010195196 A JP 2010195196A JP 2012052895 A JP2012052895 A JP 2012052895A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
reaction
solution
reaction tube
microwave irradiation
microwave
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2010195196A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2012052895A5 (ja
Inventor
Masateru Nishioka
将輝 西岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2010195196A priority Critical patent/JP2012052895A/ja
Publication of JP2012052895A publication Critical patent/JP2012052895A/ja
Publication of JP2012052895A5 publication Critical patent/JP2012052895A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Automatic Analysis And Handling Materials Therefor (AREA)

Abstract

【課題】フローインジェクション分析においてマイクロ波照射を、反応管流路の内部の所定長さの部分に制御することを可能にすることで反応溶液を目的温度に短時間で昇温、到達させ、制御することができるシステムを提供する。
【解決手段】マイクロ波照射装置と、反応管流路に反応器としてのシングルモードキャビティおよび、分析対象である溶液系の流体を流通させ反応をさせるシングルモードキャビティ反応管を有し、マイクロ波発振装置により前記反応器内のサンプル溶液と反応溶液に300MHzから30GHzの範囲のマイクロ波を照射して、両溶液の加温または化学反応を促進し、サンプル溶液の反応時間を短縮する。
【選択図】図1

Description

本発明は、マイクロ波を利用したフローインジェクション分析装置と分析方法に関する。
従来のフローインジェクション分析装置は、内径が250μm〜1mm程度で長さが1m〜20mのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)チューブからなる反応管流路を有している。この流路に、インジェクターを介し、サンプル溶液を断続的に導入する。反応管流路は、恒温槽内にコイル状に収納され、一定の反応温度を保たれている(リアクションコイル)。サンプル溶液はインジェクターにより、反応管流路に断続的に導入されリアクションコイルを通過する間に、化学反応が進むが、リアクションコイル通過後の検出器により反応生成物の濃度を分析することで、サンプル溶液内の目的物質の濃度を測定するものである(たとえば、特許文献1、2、非特許文献1)。
フローインジェクション分析装置の装置性能は、分析に必要な時間(分析時間)、検出範囲(ダイナミックレンジ)、検出下限濃度(検出限界)、夾雑物が存在する場合の分離性能(分離能)などであり、いずれの性能も高いものが望まれている。
この中で、分析時間や分解能は、反応管流路の長さに起因し、この流路が短い方が短時間で分析でき、高い分解能を得ることが出来る。しかし、通常、反応管は1mから20m程度の長さを必要とする。そのため、恒温槽内にコンパクトに収納するために、コイル状に束ねている。コイル状に束ねた場合、管内の内周側と外周側では流速に分布ができるが、これも分解能を悪くする要因となる。
また、フローインジェクション分析装置は従来の分析装置と比べ装置全体をコンパクトにできるため、携帯用分析装置としての用途も広がりつつある。携帯用分析装置としては、装置がより軽量でコンパクトであることと、より短時間に起動できることと、装置の消費電力が小さいこと、高温部分の露出がないことなどが望まれている。
さらに、フローインジェクション分析装置は、化学プロセスのオンラインモニターとしても用いられている。オンラインモニターには、繰り返し分析時の分析間隔が短いことや、消費電力が小さいこと、高温部分が少ないことが望まれている。
従来のフローインジェクションにおいて、反応管流路における反応溶液(サンプル溶液、試薬溶液)の温度制御は、これまで電気抵抗加熱による恒温槽を用いて行うことが多かった。恒温槽は抵抗発熱体と断熱材とで構成され、その中に反応管流路を形成することで、溶液温度を制御するものである。この場合、温度を一定にするためには断熱材を多く入れる必要があり、この結果、恒温槽温度を所定温度に加熱するためには、短くても20分以上、望ましくは2時間以上かかるものもあった。
また、反応溶液は、外部からの熱伝導により加熱されるため、反応管外壁の熱が反応溶液に伝わるのに時間遅れが生じる。特に反応溶液が高速に流れている場合は、恒温槽の温度と反応管温度に差が生じる。このような場合、反応管流路を長くすることで、反応溶液が恒温槽を通過する時間を長くし、熱伝導に必要な時間を確保することが多いが、これは分析時間が長くなり、分解能の低下につながる。この対策として、恒温槽の設定温度を、反応溶液の目標温度より高く設定することで、反応溶液を短時間に加熱することも可能であるが、反応管の耐熱温度や、装置全体の耐熱や安全性など、考慮に入れる必要があった。
さらに、恒温槽は断熱材を含むため、容積が大きくまた重くなりやすい。また、高温部分が占める割合が多いため、検出器などの温度の影響を受ける機材を近くに配設することが難しく、装置全体の容積が大きくなってしまうなどの課題があった。従来では、恒温槽と検出器を別筐体に納め、その間をチューブ配管などで接続することが多く、分析時間の増大や分解能の低下につながっている。
マイクロ波加熱は、材料の誘電損率の大きいものを選択的に加熱することができるため、たとえば反応管にテフロン(登録商標)などの誘電損率の小さい材料を用い、反応溶液に水などの誘電損率の大きい溶液を選ぶと、反応管内部の溶液のみを選択的に短時間に加熱できることが知られている。これまでにも、フローインジェクション分析にマイクロ波照射を併用の一般的なアイデアがなされているが(たとえば、特許文献3)、具体的な方法は、記載されておらず、実施例もない。また、非特許文献2ではフローインジェクション分析において、マイクロ波を照射することで、分析速度の向上について記載がなされている。紹介されている技術は家庭用電子レンジを用いるものであり、細い反応管流路内を集中して加熱するものではなく、ただ反応管を含めての周囲全体を加熱しており、分析再現性や小型化など分析装置に要求されるより高い要求水準を満たすものではなかった。
実際において、フローインジェクション分析に用いられるような、内径1mm以下の細い反応管の場合は、マイクロ波を吸収する断面積が小さいため、十分に加熱することができない。このため、反応管の周りにマイクロ波の吸収の良い発熱体を取りつけるなどの工夫が必要であった。このような発熱体を取り付けた場合は、抵抗体加熱による恒温槽と同様な問題の発生が懸念される。
特開56−36053公報 特開平7−20113号公報 特開2008−119678公報
小熊幸一他監修、役にたつフローインジェクション分析、みみずく舎発行、2009 Huaiwen Wang他,"Kinetic determination of ruthenium by on-line microwave flow injection analysis",Analytical letter,vol.33,No.10. pp.2075-2089, 2000
フローインジェクション分析においてマイクロ波照射を、反応管流路の内部の所定長さの部分に制御することを可能にすることで反応溶液を目的温度に短時間で昇温、到達させ、制御することができるシステムを提供することを課題とする。またこのシステムを利用することでフローインジェクション分析装置をコンパクト化することを課題とする。さらに起動時間を短くし分析に必要な時間を短縮化し得るフローインジェクション分析装置を提供することを課題とする。
本発明の課題は下記の技術手段により実現される。
(1)所定量のサンプル溶液を反応溶液に同伴させ、所定温度に保った反応管流路内を流通させたのち、検出器に置いて反応生成物の濃度を測定する、サンプル溶液内の目的物質の濃度を分析する分析装置であって、マイクロ波照射装置と、反応管流路に反応器としてのシングルモードキャビティおよび、分析対象である溶液系の流体を流通させ反応をさせるシングルモードキャビティ反応管を有し、マイクロ波発振装置により前記反応器内のサンプル溶液と反応溶液に300MHzから30GHzの範囲のマイクロ波を照射して、両溶液の加温または化学反応を促進し、サンプル溶液の反応時間を短縮する反応流路を備えたフローインジェクション分析装置。
(2)マイクロ波照射装置が、シングルモードキャビティ内にTEm0(mは1以上の整数)もしくはTMnm0(nは0以上、mは1以上の整数)モードの定在波を形成できるマイクロ波照射空間(キャビティ)と、キャビティの外周の、分析対象である溶液系の流体を流通させ反応をさせるシングルモードキャビティ反応管を有し、シングルモードキャビティがマイクロ波による電界もしくは磁界集中部分となるように、反応管を配置した反応管流路を有する、(1)に記載のフローインジェクション分析装置。
(3)前記のマイクロ波照射空間において、目的のモードの定在波が反応管の軸方向に安定化して形成されるよう、マイクロ波照射空間の構造を微調整するか、または/同時に、照射するマイクロ波の周波数を調節する反応管流路を備えた(1)または(2)記載のフローインジェクション分析装置。
(4)前記マイクロ波照射空間内に、マイクロ波吸収が小さく誘電率が1より大きな物質を挿入することで、マイクロ波照射空間の寸法を小さくし、装置の省スペース化を可能とした反応管流路を具備した(1)から(3)のいずれかに記載のフローインジェクション分析装置。
(5)所定量のサンプル溶液を反応溶液に同伴させ、所定温度に保った反応管流路内を流通させたのち、検出器に置いて反応生成物の濃度を測定する、サンプル溶液内の目的物質の濃度を分析するに当たり、反応管流路の前記反応器内のサンプル溶液と反応溶液に、300MHzから30GHzの範囲のマイクロ波を照射しシングルモードキャビティを形成し、両溶液の加温または化学反応を促進し、サンプル溶液の反応時間を短縮するフローインジェクション分析方法。
本発明のフローインジェクション分析(FIA)装置は、恒温槽を用いる代わりにマイクロ波加熱を用いることで、反応溶液を短時間に目的温度に到達させることができ、また分析に必要な時間を短縮することができる。この結果として、検出されるスペクトル幅が短くなり、分解能の向上につながる。
マイクロ波照射にTM010モードの定在波を形成できる共振空胴(キャビティ)を用いることで、従来マイクロ波加熱が難しかった、内径1mm以下の反応管内部の溶液の温度制御が可能となる。
本発明の一実施例の装置を示す説明図である。 反応生成物の吸光スペクトルを示す。 マイクロ波加熱によるFIAスペクトル(制御温度 170℃)を示す。 ブロックヒータ式恒温槽加熱によるFIAスペクトル(制御温度 170℃)を示す。 サンプル濃度を段階的に変えたときのFIAスペクトルを示す。 サンプル中のRu濃度とFIAスペクトル強度の関係を示す。 円筒型の空胴共振器内の電界強度分布を示す説明図である。 本発明装置と市販装置のマイクロ波加熱による上昇温度の比較を示す。 本発明の別の実施例の装置を示す説明図である。
本発明のフローインジェクション分析装置の好ましい実施の形態を述べる。
本発明のフローインジェクション分析装置は、キャリア溶液を送液するための第1ポンプと、キャリア溶液中に所定量のサンプル溶液を注入するためのインジェクター、サンプルと反応することにより反応物が発色や発光するような反応溶液を送液する第2ポンプ、所定量のサンプル溶液を含むキャリア溶液と反応溶液を混合し、混合溶液を調製するミキサーを備えている。
ここで、第2ポンプにより送液する反応溶液は、第1ポンプにより送液するキャリア溶液に予め混合しておいてもよい。もしくは、反応溶液をサンプル溶液にあらかじめ混合しておいてもよく、これらの場合は、第2ポンプを用いる必要はない。
本発明のフローインジェクション分析装置において、上記混合溶液はマイクロ波照射部分に導入される。マイクロ波照射は、反応管部に集中してマイクロ波を照射するために、シングルモードの定在波を形成できる空胴共振器(キャビティ)を有するものが望ましい。
図7に、代表的なシングルモードキャビティの構造として、円筒の中心軸に沿って均一な電磁界分布(TM010モード)が形成されるように設計した、円筒型TM010キャビティ及びその電界強度分布を示す。円筒型TM010では、円筒の中心軸部分に電界集中部位がある。この他にも、多くの形式のシングルモードキャビティがあり、本発明は、いずれの形式のシングルモードキャビティについても使用可能である。図中11は空胴共振器、12がマイクロ波照射口である。下のグラフは空胴共振器11の半径方向に対する電界強度を示す(横軸が空胴共振器11の半径と対応している)。空胴共振器11の、グラフで電界の強くなっている位置に対応する部分に、触媒物質を担持した支持体を配置することにより、触媒物質の選択的な加熱が可能になる。図5では電界で説明したが、電磁波は磁界による加熱作用もあるため、磁界が強くなる部分を利用しても同様な効果を得ることができる。
ここでシングルモードキャビティとは、特定の定存波を安定に形成することができるマイクロ波照射空間内のことをいう。定在波とは、波形が進行せずに止まって振動していうように見える波動のことで、電界強度が0の場所と、電界強度の強い場所の位置が変化しない状態が作られる。特に円筒型の共振空胴(キャビティ)により、TMnm0モード(nは0以上、mは1以上の整数)の定在波を形成した場合、円筒中心軸に配置した反応管流路部分に、マイクロ波を集中して照射することができるうえ、中心軸の軸方向には電界強度の分布が一様にとなり、反応溶液は常に制御された電界強度のマイクロ波を照射させることができる。このとき、反応管流路をマイクロ波を透過しやすい材料で構成することで、マイクロ波は内部の溶液に直接到達し、反応溶液を直接誘電加熱することができる。誘電加熱は、従来の伝熱による加熱よりきわめて短時間に発熱させることができるため、所定の反応温度になるよう溶液を迅速に加熱できる。また、サンプル溶液と反応溶液の化学反応が、マイクロ波照射により促進される場合もある。この場合は、加熱に必要な時間だけでなく、反応時間の短縮も期待できる。なお、マイクロ波を透過しやすい材料としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、石英などが好ましく、その他PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)など多くのプラスチック材料やガラス材料を用いることができるが、これに制限されるものではない。
反応管流路としては、マイクロ波の吸収のよいものを利用することも出来る。この場合は、反応管がマイクロ波吸収により発熱し、反応溶液は反応管からの熱伝導により加熱される。この場合、反応管流路の内径が小さいものを用いれば、反応溶液を短時間に加熱することが可能である。ただし、反応溶液に到達するマイクロ波強度は弱くなるため、マイクロ波による反応促進の効果は小さくなる。
本発明のフローインジェクション分析装置の好ましい実施の形態において、マイクロ波照射により加熱された混合溶液は、マイクロ波照射部通過後、分析部に導入され反応生成物の濃度を検出する装置(検出器)を備えている。マイクロ波照射部出口から、検出器の距離を短くすることで、分析時間の短縮や、分解能向上が期待できる。検出器は、たとえば吸光スペクトルメータや、蛍光スペクトルメータ、電気伝導度メータなどを用いることができる。
本発明の好ましい実施形態において、反応管流路の温度制御部分にマイクロ波加熱を用いることで、迅速な温度制御(加温)を可能にすることで起動時間の短縮と、マイクロ波照射による化学反応促進による反応時間の短縮や、分離性能の向上、高温部分の最小化、消費電力の低減を実現するものである。すなわち、通常リアクションコイル状にした反応管を1〜20m必要としていたのに対し、反応管流路はコイル状にする必要がなく1cm〜10cm程度にすることができる。
実施の形態において反応管流路の反応管の管径(内径)はマイクロ波の波長、キャリア溶液や反応溶液、サンプル溶液の誘電率や誘電損率や、反応管材質などによって定まり、一義的に定めることはできないが、マイクロ波波長として2.45GHzを使用し、キャリア溶液、反応溶液に水を使用する場合においては好ましくは1.5mm以下であり、より好ましくは200μm〜1mmである。この反応管の内径が大きすぎると定在波を形成することができずマイクロ波で加熱することができない。反応管の内径が小さすぎるとキャリア溶液や反応溶液の送液時に圧力損失が大きくなり、高性能の送液ポンプや耐圧配管が必要となり適切でない。このマイクロ波吸収のよい溶液にマイクロ波を照射すると、溶液を非接触に直接発熱させることが出来るため、短時間に加熱できることが知られている。しかしながら、フローインジェクション分析に用いられるような、内径の細い反応管の場合、マイクロ波を吸収する断面積が小さくなるため、十分な温度に加熱することができていなかった。また、マイクロ波を照射した部分にだけ昇温し反応管流路の一定の長さにわたる均一な加温ができなかった。これに対し本発明の実施の形態では上記の構成により反応管流路の所定長さの部分を均一にマイクロ波加熱することができる。
本発明の別の実施形態としては前記マイクロ波照射空間内に、マイクロ波吸収が小さく誘電率が1より大きな物質を挿入することで、マイクロ波照射空間の寸法を小さくし、装置の省スペース化を可能とした反応管流路を具備する形態がある。この態様は具体的には図9に示すように、TM010シングルモードキャビティの外壁内側に円筒型のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの誘電体10を取り付けることによって実施できる。
次に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
(参考例)
図8に、溶液として水を用い、送液ポンプにより送液したときの、マイクロ波を照射してからの温度上昇の時間変化を示す。図には、本発明装置による結果と、比較のため、市販のマイクロ波加熱装置((株)IDX製グリーンモチーフ)に、同様の反応管を取り付けた装置(市販装置)による結果を示す。
本発明装置では、出力14Wのマイクロ波電力の投入により、20秒で70℃の温度上昇がみられたが、市販装置では、送液速度0.5cc/min、マイクロ波電力200Wの条件でも、26℃にしか到達していないことが分かる。これは、本発明では、反応管部分にマイクロ波が集中し照射されているため、マイクロ波電力を、効率よく熱に変換できていることを示すものと考えられる。
本発明装置で、加熱に使われた単位時間あたりのエネルギーは、水の比熱をCw、温度変化をΔT、流速をFとするとの温度上昇から、
solvent=Cw×ΔT×F (式2)
と表すことができる。
このエネルギーに対して照射したマイクロ波電力Pmwと比較し、マイクロ波エネルギー利用効率
η=Psolvent/Pmw (式3)
を算出した。
表1に、各種溶媒の加熱効率について、電子レンジの場合と本発明装置(開発品)を比較した結果を示す。
Figure 2012052895
以上の参考例により、マイクロ波を集中させ、表面積が多くなるように工夫した流通管に液体を流通させることで、マイクロ波エネルギーを、効率よく加熱に利用できることが示された。特に、これまで、マイクロ波加熱が難しいとされていた、非極性溶媒のマイクロ波加熱も可能であることが示された。
(実施例1)
図1に本発明のフローインジェクション分析装置の一実施例を示す。図1の装置は大別して、送液部1とマイクロ波照射部2と分析部3から構成されている。送液部1は、さらに、キャリア溶液を保持する容器4aと送液ポンプ4bおよび、反応溶液を保持する容器5aと送液ポンプ5bからなっている。キャリア溶液は、途中でインジェクター4cにより、所定量のサンプル溶液をキャリア溶液中に注入することができる。本実施例では、注入するサンプル溶液量を10μLとした。サンプル溶液は次いでミキサー6に送られる。反応溶液は容器5aから送液ポンプ5bを経てミキサー6に送られる。サンプル溶液を含むキャリア溶液と、反応溶液は、ミキサー6により混合され、マイクロ波照射部2に供給される。
マイクロ波照射部は、TM010モードの定在波を形成することができる、内部が円筒型にくり抜かれた空胴共振器7を有する。この実施例において空胴共振器7はアルミニウム製のマイクロ波照射空間7aを備えている。この中心軸に沿うように、反応管として内径0.8mm外径3mmの石英ガラス管8を配置し、マイクロ波照射部分は100mmとした。反応管の中心部分の温度は、マイクロ波照射空間7aの外部に取り付けた放射温度計7bにより計測した。また、同様にマイクロ波照射空間7aの外部に取り付けた、電界メータ7cにより、照射空間内のマイクロ波強度を計測している。マイクロ波は、インピーダンス整合器7dを介し、マイクロ波照射空間7aに取り付けた、マイクロ波照射口7fより供給する。
マイクロ波は、放射温度計7bの測定結果をもとに、制御装置7eによりマイクロ波強度を調整し、つねに目的の温度になるように制御している。また、制御装置7eは、電界メータ7cの計測結果をもとに、常にTM010モードの定在波が形成できるよう、マイクロ波周波数を制御している。
分析部3においては、マイクロ波照射空間の石英ガラス管8の出口側端縁に対向して、光ファイバー式の吸光スペクトルメータ9a(ラムダビジョン製 SA−100s)を直接配設し、反応直後の溶液の210nmから1000nmの吸光スペクトルを0.1秒間隔で測定し、このデータをコンピュータやデータレコーダなどの記録装置9bにより記録することができる。
上記のフローインジェクション分析では送液ポンプ4bから、キャリア溶液として、エチレングリコール溶液を0.25mL/min、送液ポンプ5bから反応溶液として、2−2‘ビピリジル(以降bpy)2mmol/Lの濃度でエチレングリコールに溶かした溶液を、0.25mLで供給し、ミキサー6で混合後、合計0.5mL/minの流速で、空胴共振器7の反応管8に導入した。反応管8を、所定温度の170℃になるよう制御装置7eを介しマイクロ波を供給した。このとき、反応溶液の170℃に安定するまでにかかった時間を表2に示す。マイクロ波照射後28秒後に目的の温度に安定させることができており、短時間に分析を開始できている。なお、このときのマイクロ波強度は、20W程度であった。
Figure 2012052895
この実施例1のフローインジェクション分析装置を用いルテニウム溶液の分析を行った。サンプル溶液として、ルテニウム濃度が0.05〜2mmol/Lとなるように塩化ルテニウムをエチレングリコールに溶かした溶液を用いた。石英ガラス管8の内径は1mmである。これをインジェクターにより、10uL供給することができる。反応溶液として上記のビピリジル(bpy)溶液を用いた。図2は、Ru濃度 2mMのルテニウムを導入したとき、吸光スペクトルメータ9aで測定された、反応生成物の吸収スペクトルを示す。452nm付近に吸収ピークを持つスペクトルが観察されている。これは、ルテニウムとbpyが反応し、反応生成物である[Ru(bpy)3]2+による吸収スペクトルである。
そこで、2.45GHz付近のマイクロ波を照射し反応溶液の加熱を行った。マイクロ波の周波数は、TM010モードの定在波が常に維持できるよう、自動調整されている。マイクロ波加熱により反応した生成物は検出器9aにより反応生成物の452nmの吸光度を0.1秒間隔で測定し、サンプル注入後の反応生成物の時間変化を記録装置9bにより計測した。図3にその結果を示す。サンプル注入後、5秒後に452nmの吸光度が上昇し、30秒後には注入前と同じレベルに戻っていることがわかる。このことから、本装置は、最短30秒間隔で分析が可能であることがわかる。同様の実験を、ヒートブロック式恒温槽で行った。ヒートブロックにより加熱した場合の反応溶液の温度が安定するまでの時間を表2に示すが、23分間かかっており、分析開始までに時間がかかっている。次にRuを2mol/Lの濃度でエチレングリコールに溶かした溶液をサンプルとして、ヒートブロック式恒温槽加熱により分析を行った結果を図4に示す。信号のピーク高さが、マイクロ波加熱に対してシグナルの強度が小さく、感度が低くなっていることが判る。これは、ヒートブロック式恒温槽では、反応溶液の温度は恒温槽の設定温度より低い温度であったため、反応管長さ100mmでは十分な温度に達していなかったためと考えられる。このため、通常の恒温槽では反応管を長くし、溶液が加熱され反応が進行するのに十分な時間をとるようにする。このため従来は分析時間が長くなっていた。
(実施例2)
図1の装置を用いサンプル溶液中のRu濃度を0.05mM、0.25mM、0.5mM、1mM、2mMの順に、3から4回ずつ注入したときの、452nmの吸光度の時間変化を測定した。結果を図5に示す。0.25mM以上の濃度では、Ruの濃度に比例しシグナル強度が強くなっていることがわかる。また、同じ濃度における、繰り返し再現性も高いことがわかる。図6には、サンプル溶液中のRu濃度に対する、452nmの吸光度のピーク強度をまとめたものを示す。0.25mM〜2mMの範囲では直線性が良いことがわかる。
以上のことより、本発明の方式による、マイクロ波加熱によるフローインジェクション分析装置は、従来の恒温槽による加熱方式より、短い起動時間で分析を開始することがでるうえ、分析に必要な時間も短縮することが出来ることがわかる。また、同じ感度を得ようとした場合、反応管の長さを短くすることができるため、分解能の向上が期待できる。
本発明は、水中の不純物検出の高速化や、製薬等合成プロセスのモニタリングなどにも利用することができる。
1 送液部
2 マイクロ波照射部
3 分析部
4a キャリア溶液容器
4b キャリア溶液送液ポンプ
4c インジェクタ(サンプル注入部)
5a 反応溶液容器
5b 反応溶液送液ポンプ
6 ミキサー(混合器)
7 空胴共振器
7a マイクロ波照射空間
7b 放射温度計
7c 電界センサー
7d インピーダンス整合器
7e 制御装置
7f マイクロ波照射口
8 反応管
9a 検出器
9b 記録装置
10 誘電体

Claims (5)

  1. 所定量のサンプル溶液を反応溶液に同伴させ、所定温度に保った反応管流路内を流通させたのち、検出器に置いて反応生成物の濃度を測定する、サンプル溶液内の目的物質の濃度を分析する分析装置であって、
    マイクロ波照射装置と、反応管流路に反応器としてのシングルモードキャビティおよび、分析対象である溶液系の流体を流通させ反応をさせるシングルモードキャビティ反応管を有し、マイクロ波発振装置により前記反応器内のサンプル溶液と反応溶液に300MHzから30GHzの範囲のマイクロ波を照射して、両溶液の加温または化学反応を促進し、サンプル溶液の反応時間を短縮する反応流路を備えたフローインジェクション分析装置。
  2. マイクロ波照射装置が、シングルモードキャビティ内にTEm0(mは1以上の整数)もしくはTMnm0(nは0以上、mは1以上の整数)モードの定在波を形成できるマイクロ波照射空間(キャビティ)と、キャビティの外周の、分析対象である溶液系の流体を流通させ反応をさせるシングルモードキャビティ反応管を有し、シングルモードキャビティがマイクロ波による電界もしくは磁界集中部分となるように、反応管を配置した反応管流路を有する、請求項1に記載のフローインジェクション分析装置。
  3. 前記のマイクロ波照射空間において、目的のモードの定在波が反応管の軸方向に安定化して形成されるよう、マイクロ波照射空間の構造を微調整するか、または/同時に、照射するマイクロ波の周波数を調節する反応管流路を備えた請求項1または2記載のフローインジェクション分析装置。
  4. 前記マイクロ波照射空間内に、マイクロ波吸収が小さく誘電率が1より大きな物質を挿入することで、マイクロ波照射空間の寸法を小さくし、装置の省スペース化を可能とした反応管流路を具備した請求項1から3のいずれか1項に記載のフローインジェクション分析装置。
  5. 所定量のサンプル溶液を反応溶液に同伴させ、所定温度に保った反応管流路内を流通させたのち、検出器に置いて反応生成物の濃度を測定する、サンプル溶液内の目的物質の濃度を分析するに当たり、
    反応管流路の前記反応器内のサンプル溶液と反応溶液に、300MHzから30GHzの範囲のマイクロ波を照射しシングルモードキャビティを形成し、両溶液の加温または化学反応を促進し、サンプル溶液の反応時間を短縮するフローインジェクション分析方法。
JP2010195196A 2010-08-31 2010-08-31 フローインジェクション分析装置及び分析方法 Pending JP2012052895A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010195196A JP2012052895A (ja) 2010-08-31 2010-08-31 フローインジェクション分析装置及び分析方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010195196A JP2012052895A (ja) 2010-08-31 2010-08-31 フローインジェクション分析装置及び分析方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2012052895A true JP2012052895A (ja) 2012-03-15
JP2012052895A5 JP2012052895A5 (ja) 2013-10-10

Family

ID=45906378

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010195196A Pending JP2012052895A (ja) 2010-08-31 2010-08-31 フローインジェクション分析装置及び分析方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2012052895A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018173404A (ja) * 2017-03-30 2018-11-08 キヤノンメディカルシステムズ株式会社 検体検査装置
JP2020041011A (ja) * 2018-09-06 2020-03-19 国立研究開発法人産業技術総合研究所 有機顔料処理装置及び有機顔料処理方法
CN111149428A (zh) * 2017-11-28 2020-05-12 国立研究开发法人产业技术综合研究所 微波处理装置、微波处理方法以及化学反应方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001133465A (ja) * 1999-11-05 2001-05-18 Nikkiso Co Ltd フローインジェクション分析装置
JP2005322582A (ja) * 2004-05-11 2005-11-17 Idx Corp マイクロ波加熱装置

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001133465A (ja) * 1999-11-05 2001-05-18 Nikkiso Co Ltd フローインジェクション分析装置
JP2005322582A (ja) * 2004-05-11 2005-11-17 Idx Corp マイクロ波加熱装置

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018173404A (ja) * 2017-03-30 2018-11-08 キヤノンメディカルシステムズ株式会社 検体検査装置
JP7109945B2 (ja) 2017-03-30 2022-08-01 キヤノンメディカルシステムズ株式会社 検体検査装置
CN111149428A (zh) * 2017-11-28 2020-05-12 国立研究开发法人产业技术综合研究所 微波处理装置、微波处理方法以及化学反应方法
JPWO2019107402A1 (ja) * 2017-11-28 2020-11-19 国立研究開発法人産業技術総合研究所 マイクロ波処理装置、マイクロ波処理方法及び化学反応方法
EP3720248A4 (en) * 2017-11-28 2021-08-25 National Institute Of Advanced Industrial Science MICROWAVE TREATMENT DEVICE, MICROWAVE TREATMENT PROCESS AND CHEMICAL REACTION PROCESS
JP7236739B2 (ja) 2017-11-28 2023-03-10 国立研究開発法人産業技術総合研究所 マイクロ波処理装置、マイクロ波処理方法及び化学反応方法
JP2020041011A (ja) * 2018-09-06 2020-03-19 国立研究開発法人産業技術総合研究所 有機顔料処理装置及び有機顔料処理方法
JP7177637B2 (ja) 2018-09-06 2022-11-24 国立研究開発法人産業技術総合研究所 有機顔料処理装置及び有機顔料処理方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6112725B2 (ja) 物質の状態の測定、検出方法及び検出装置
Barham et al. Microwave Flow: A Perspective on Reactor and Microwave Configurations and the Emergence of Tunable Single‐Mode Heating Toward Large‐Scale Applications
JP5300014B2 (ja) 流体へのマイクロ波連続照射方法及び装置
JP4425133B2 (ja) 高出力マイクロ波支援化学技法のための反応及び温度制御
Hoffmann et al. Ionic liquids and their heating behaviour during microwave irradiation–a state of the art report and challenge to assessment
JP5107278B2 (ja) マイクロ波加熱装置および加熱方法
JP5342097B2 (ja) 低温マイクロ波支援有機化学合成のための方法及び器具
US6867400B2 (en) Method and apparatus for continuous flow microwave-assisted chemistry techniques
JP2005322582A (ja) マイクロ波加熱装置
EP1214867A2 (en) System and method for microwave cell lysing of small samples
WO2010025010A2 (en) Microwave heater and method of heating
JP2012052895A (ja) フローインジェクション分析装置及び分析方法
Ragaini et al. Simultaneous ultrasound and microwave new reactor: detailed description and energetic considerations
Koyama et al. A continuous-flow resonator-type microwave reactor for high-efficiency organic synthesis and Claisen rearrangement as a model reaction
Fanti et al. Design and optimization of a microwave irradiated and resonant continuous biochemical reactor
US20210392723A1 (en) Microwave processing apparatus, microwave processing method, and chemical reaction method
US20120108818A1 (en) Microwave apparatus
Amore et al. Microwave‐Promoted Esterification Reactions: Optimization and Scale‐Up
JP5408566B2 (ja) 導電性薄膜のマイクロ波加熱
Liu et al. Development of a novel MW-VLE model for calculation of vapor–liquid equilibrium under microwave irradiation
US20140117008A1 (en) Pressure Vessel
JP2012052895A5 (ja)
Longo et al. Chemical activation using an open-end coaxial applicator
JP2007326063A (ja) マイクロ化学反応装置
CN117607058B (zh) 近红外双光源光热分析传感成像装置

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130823

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130823

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20131206

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20131217

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140217

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20140520