JP2012052895A - フローインジェクション分析装置及び分析方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】マイクロ波照射装置と、反応管流路に反応器としてのシングルモードキャビティおよび、分析対象である溶液系の流体を流通させ反応をさせるシングルモードキャビティ反応管を有し、マイクロ波発振装置により前記反応器内のサンプル溶液と反応溶液に300MHzから30GHzの範囲のマイクロ波を照射して、両溶液の加温または化学反応を促進し、サンプル溶液の反応時間を短縮する。
【選択図】図1
Description
この中で、分析時間や分解能は、反応管流路の長さに起因し、この流路が短い方が短時間で分析でき、高い分解能を得ることが出来る。しかし、通常、反応管は1mから20m程度の長さを必要とする。そのため、恒温槽内にコンパクトに収納するために、コイル状に束ねている。コイル状に束ねた場合、管内の内周側と外周側では流速に分布ができるが、これも分解能を悪くする要因となる。
さらに、フローインジェクション分析装置は、化学プロセスのオンラインモニターとしても用いられている。オンラインモニターには、繰り返し分析時の分析間隔が短いことや、消費電力が小さいこと、高温部分が少ないことが望まれている。
また、反応溶液は、外部からの熱伝導により加熱されるため、反応管外壁の熱が反応溶液に伝わるのに時間遅れが生じる。特に反応溶液が高速に流れている場合は、恒温槽の温度と反応管温度に差が生じる。このような場合、反応管流路を長くすることで、反応溶液が恒温槽を通過する時間を長くし、熱伝導に必要な時間を確保することが多いが、これは分析時間が長くなり、分解能の低下につながる。この対策として、恒温槽の設定温度を、反応溶液の目標温度より高く設定することで、反応溶液を短時間に加熱することも可能であるが、反応管の耐熱温度や、装置全体の耐熱や安全性など、考慮に入れる必要があった。
(1)所定量のサンプル溶液を反応溶液に同伴させ、所定温度に保った反応管流路内を流通させたのち、検出器に置いて反応生成物の濃度を測定する、サンプル溶液内の目的物質の濃度を分析する分析装置であって、マイクロ波照射装置と、反応管流路に反応器としてのシングルモードキャビティおよび、分析対象である溶液系の流体を流通させ反応をさせるシングルモードキャビティ反応管を有し、マイクロ波発振装置により前記反応器内のサンプル溶液と反応溶液に300MHzから30GHzの範囲のマイクロ波を照射して、両溶液の加温または化学反応を促進し、サンプル溶液の反応時間を短縮する反応流路を備えたフローインジェクション分析装置。
(2)マイクロ波照射装置が、シングルモードキャビティ内にTEm0(mは1以上の整数)もしくはTMnm0(nは0以上、mは1以上の整数)モードの定在波を形成できるマイクロ波照射空間(キャビティ)と、キャビティの外周の、分析対象である溶液系の流体を流通させ反応をさせるシングルモードキャビティ反応管を有し、シングルモードキャビティがマイクロ波による電界もしくは磁界集中部分となるように、反応管を配置した反応管流路を有する、(1)に記載のフローインジェクション分析装置。
(3)前記のマイクロ波照射空間において、目的のモードの定在波が反応管の軸方向に安定化して形成されるよう、マイクロ波照射空間の構造を微調整するか、または/同時に、照射するマイクロ波の周波数を調節する反応管流路を備えた(1)または(2)記載のフローインジェクション分析装置。
(4)前記マイクロ波照射空間内に、マイクロ波吸収が小さく誘電率が1より大きな物質を挿入することで、マイクロ波照射空間の寸法を小さくし、装置の省スペース化を可能とした反応管流路を具備した(1)から(3)のいずれかに記載のフローインジェクション分析装置。
(5)所定量のサンプル溶液を反応溶液に同伴させ、所定温度に保った反応管流路内を流通させたのち、検出器に置いて反応生成物の濃度を測定する、サンプル溶液内の目的物質の濃度を分析するに当たり、反応管流路の前記反応器内のサンプル溶液と反応溶液に、300MHzから30GHzの範囲のマイクロ波を照射しシングルモードキャビティを形成し、両溶液の加温または化学反応を促進し、サンプル溶液の反応時間を短縮するフローインジェクション分析方法。
マイクロ波照射にTM010モードの定在波を形成できる共振空胴(キャビティ)を用いることで、従来マイクロ波加熱が難しかった、内径1mm以下の反応管内部の溶液の温度制御が可能となる。
本発明のフローインジェクション分析装置は、キャリア溶液を送液するための第1ポンプと、キャリア溶液中に所定量のサンプル溶液を注入するためのインジェクター、サンプルと反応することにより反応物が発色や発光するような反応溶液を送液する第2ポンプ、所定量のサンプル溶液を含むキャリア溶液と反応溶液を混合し、混合溶液を調製するミキサーを備えている。
ここで、第2ポンプにより送液する反応溶液は、第1ポンプにより送液するキャリア溶液に予め混合しておいてもよい。もしくは、反応溶液をサンプル溶液にあらかじめ混合しておいてもよく、これらの場合は、第2ポンプを用いる必要はない。
ここでシングルモードキャビティとは、特定の定存波を安定に形成することができるマイクロ波照射空間内のことをいう。定在波とは、波形が進行せずに止まって振動していうように見える波動のことで、電界強度が0の場所と、電界強度の強い場所の位置が変化しない状態が作られる。特に円筒型の共振空胴(キャビティ)により、TMnm0モード(nは0以上、mは1以上の整数)の定在波を形成した場合、円筒中心軸に配置した反応管流路部分に、マイクロ波を集中して照射することができるうえ、中心軸の軸方向には電界強度の分布が一様にとなり、反応溶液は常に制御された電界強度のマイクロ波を照射させることができる。このとき、反応管流路をマイクロ波を透過しやすい材料で構成することで、マイクロ波は内部の溶液に直接到達し、反応溶液を直接誘電加熱することができる。誘電加熱は、従来の伝熱による加熱よりきわめて短時間に発熱させることができるため、所定の反応温度になるよう溶液を迅速に加熱できる。また、サンプル溶液と反応溶液の化学反応が、マイクロ波照射により促進される場合もある。この場合は、加熱に必要な時間だけでなく、反応時間の短縮も期待できる。なお、マイクロ波を透過しやすい材料としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、石英などが好ましく、その他PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)など多くのプラスチック材料やガラス材料を用いることができるが、これに制限されるものではない。
実施の形態において反応管流路の反応管の管径(内径)はマイクロ波の波長、キャリア溶液や反応溶液、サンプル溶液の誘電率や誘電損率や、反応管材質などによって定まり、一義的に定めることはできないが、マイクロ波波長として2.45GHzを使用し、キャリア溶液、反応溶液に水を使用する場合においては好ましくは1.5mm以下であり、より好ましくは200μm〜1mmである。この反応管の内径が大きすぎると定在波を形成することができずマイクロ波で加熱することができない。反応管の内径が小さすぎるとキャリア溶液や反応溶液の送液時に圧力損失が大きくなり、高性能の送液ポンプや耐圧配管が必要となり適切でない。このマイクロ波吸収のよい溶液にマイクロ波を照射すると、溶液を非接触に直接発熱させることが出来るため、短時間に加熱できることが知られている。しかしながら、フローインジェクション分析に用いられるような、内径の細い反応管の場合、マイクロ波を吸収する断面積が小さくなるため、十分な温度に加熱することができていなかった。また、マイクロ波を照射した部分にだけ昇温し反応管流路の一定の長さにわたる均一な加温ができなかった。これに対し本発明の実施の形態では上記の構成により反応管流路の所定長さの部分を均一にマイクロ波加熱することができる。
本発明の別の実施形態としては前記マイクロ波照射空間内に、マイクロ波吸収が小さく誘電率が1より大きな物質を挿入することで、マイクロ波照射空間の寸法を小さくし、装置の省スペース化を可能とした反応管流路を具備する形態がある。この態様は具体的には図9に示すように、TM010シングルモードキャビティの外壁内側に円筒型のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの誘電体10を取り付けることによって実施できる。
(参考例)
図8に、溶液として水を用い、送液ポンプにより送液したときの、マイクロ波を照射してからの温度上昇の時間変化を示す。図には、本発明装置による結果と、比較のため、市販のマイクロ波加熱装置((株)IDX製グリーンモチーフ)に、同様の反応管を取り付けた装置(市販装置)による結果を示す。
Psolvent=Cw×ΔT×F (式2)
と表すことができる。
η=Psolvent/Pmw (式3)
を算出した。
(実施例1)
図1に本発明のフローインジェクション分析装置の一実施例を示す。図1の装置は大別して、送液部1とマイクロ波照射部2と分析部3から構成されている。送液部1は、さらに、キャリア溶液を保持する容器4aと送液ポンプ4bおよび、反応溶液を保持する容器5aと送液ポンプ5bからなっている。キャリア溶液は、途中でインジェクター4cにより、所定量のサンプル溶液をキャリア溶液中に注入することができる。本実施例では、注入するサンプル溶液量を10μLとした。サンプル溶液は次いでミキサー6に送られる。反応溶液は容器5aから送液ポンプ5bを経てミキサー6に送られる。サンプル溶液を含むキャリア溶液と、反応溶液は、ミキサー6により混合され、マイクロ波照射部2に供給される。
マイクロ波照射部は、TM010モードの定在波を形成することができる、内部が円筒型にくり抜かれた空胴共振器7を有する。この実施例において空胴共振器7はアルミニウム製のマイクロ波照射空間7aを備えている。この中心軸に沿うように、反応管として内径0.8mm外径3mmの石英ガラス管8を配置し、マイクロ波照射部分は100mmとした。反応管の中心部分の温度は、マイクロ波照射空間7aの外部に取り付けた放射温度計7bにより計測した。また、同様にマイクロ波照射空間7aの外部に取り付けた、電界メータ7cにより、照射空間内のマイクロ波強度を計測している。マイクロ波は、インピーダンス整合器7dを介し、マイクロ波照射空間7aに取り付けた、マイクロ波照射口7fより供給する。
マイクロ波は、放射温度計7bの測定結果をもとに、制御装置7eによりマイクロ波強度を調整し、つねに目的の温度になるように制御している。また、制御装置7eは、電界メータ7cの計測結果をもとに、常にTM010モードの定在波が形成できるよう、マイクロ波周波数を制御している。
分析部3においては、マイクロ波照射空間の石英ガラス管8の出口側端縁に対向して、光ファイバー式の吸光スペクトルメータ9a(ラムダビジョン製 SA−100s)を直接配設し、反応直後の溶液の210nmから1000nmの吸光スペクトルを0.1秒間隔で測定し、このデータをコンピュータやデータレコーダなどの記録装置9bにより記録することができる。
そこで、2.45GHz付近のマイクロ波を照射し反応溶液の加熱を行った。マイクロ波の周波数は、TM010モードの定在波が常に維持できるよう、自動調整されている。マイクロ波加熱により反応した生成物は検出器9aにより反応生成物の452nmの吸光度を0.1秒間隔で測定し、サンプル注入後の反応生成物の時間変化を記録装置9bにより計測した。図3にその結果を示す。サンプル注入後、5秒後に452nmの吸光度が上昇し、30秒後には注入前と同じレベルに戻っていることがわかる。このことから、本装置は、最短30秒間隔で分析が可能であることがわかる。同様の実験を、ヒートブロック式恒温槽で行った。ヒートブロックにより加熱した場合の反応溶液の温度が安定するまでの時間を表2に示すが、23分間かかっており、分析開始までに時間がかかっている。次にRuを2mol/Lの濃度でエチレングリコールに溶かした溶液をサンプルとして、ヒートブロック式恒温槽加熱により分析を行った結果を図4に示す。信号のピーク高さが、マイクロ波加熱に対してシグナルの強度が小さく、感度が低くなっていることが判る。これは、ヒートブロック式恒温槽では、反応溶液の温度は恒温槽の設定温度より低い温度であったため、反応管長さ100mmでは十分な温度に達していなかったためと考えられる。このため、通常の恒温槽では反応管を長くし、溶液が加熱され反応が進行するのに十分な時間をとるようにする。このため従来は分析時間が長くなっていた。
(実施例2)
図1の装置を用いサンプル溶液中のRu濃度を0.05mM、0.25mM、0.5mM、1mM、2mMの順に、3から4回ずつ注入したときの、452nmの吸光度の時間変化を測定した。結果を図5に示す。0.25mM以上の濃度では、Ruの濃度に比例しシグナル強度が強くなっていることがわかる。また、同じ濃度における、繰り返し再現性も高いことがわかる。図6には、サンプル溶液中のRu濃度に対する、452nmの吸光度のピーク強度をまとめたものを示す。0.25mM〜2mMの範囲では直線性が良いことがわかる。
以上のことより、本発明の方式による、マイクロ波加熱によるフローインジェクション分析装置は、従来の恒温槽による加熱方式より、短い起動時間で分析を開始することがでるうえ、分析に必要な時間も短縮することが出来ることがわかる。また、同じ感度を得ようとした場合、反応管の長さを短くすることができるため、分解能の向上が期待できる。
2 マイクロ波照射部
3 分析部
4a キャリア溶液容器
4b キャリア溶液送液ポンプ
4c インジェクタ(サンプル注入部)
5a 反応溶液容器
5b 反応溶液送液ポンプ
6 ミキサー(混合器)
7 空胴共振器
7a マイクロ波照射空間
7b 放射温度計
7c 電界センサー
7d インピーダンス整合器
7e 制御装置
7f マイクロ波照射口
8 反応管
9a 検出器
9b 記録装置
10 誘電体
Claims (5)
- 所定量のサンプル溶液を反応溶液に同伴させ、所定温度に保った反応管流路内を流通させたのち、検出器に置いて反応生成物の濃度を測定する、サンプル溶液内の目的物質の濃度を分析する分析装置であって、
マイクロ波照射装置と、反応管流路に反応器としてのシングルモードキャビティおよび、分析対象である溶液系の流体を流通させ反応をさせるシングルモードキャビティ反応管を有し、マイクロ波発振装置により前記反応器内のサンプル溶液と反応溶液に300MHzから30GHzの範囲のマイクロ波を照射して、両溶液の加温または化学反応を促進し、サンプル溶液の反応時間を短縮する反応流路を備えたフローインジェクション分析装置。 - マイクロ波照射装置が、シングルモードキャビティ内にTEm0(mは1以上の整数)もしくはTMnm0(nは0以上、mは1以上の整数)モードの定在波を形成できるマイクロ波照射空間(キャビティ)と、キャビティの外周の、分析対象である溶液系の流体を流通させ反応をさせるシングルモードキャビティ反応管を有し、シングルモードキャビティがマイクロ波による電界もしくは磁界集中部分となるように、反応管を配置した反応管流路を有する、請求項1に記載のフローインジェクション分析装置。
- 前記のマイクロ波照射空間において、目的のモードの定在波が反応管の軸方向に安定化して形成されるよう、マイクロ波照射空間の構造を微調整するか、または/同時に、照射するマイクロ波の周波数を調節する反応管流路を備えた請求項1または2記載のフローインジェクション分析装置。
- 前記マイクロ波照射空間内に、マイクロ波吸収が小さく誘電率が1より大きな物質を挿入することで、マイクロ波照射空間の寸法を小さくし、装置の省スペース化を可能とした反応管流路を具備した請求項1から3のいずれか1項に記載のフローインジェクション分析装置。
- 所定量のサンプル溶液を反応溶液に同伴させ、所定温度に保った反応管流路内を流通させたのち、検出器に置いて反応生成物の濃度を測定する、サンプル溶液内の目的物質の濃度を分析するに当たり、
反応管流路の前記反応器内のサンプル溶液と反応溶液に、300MHzから30GHzの範囲のマイクロ波を照射しシングルモードキャビティを形成し、両溶液の加温または化学反応を促進し、サンプル溶液の反応時間を短縮するフローインジェクション分析方法。
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