JP3788276B2 - 誘導加熱調理器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導加熱調理器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的な誘導加熱調理器の構成を図6に示す。図6において、1は、商用交流電源、2は交流を直流に変換する整流器、3は入力される電流を測定することにより加熱電力を測定する入力電力測定回路、4は整流器2によって整流された直流を平滑する平滑コンデンサ、5は共振コンデンサ、6は加熱コイル、7はスイッチング素子で一般的にはIGBT(ゲート絶縁型トランジスタ)が用いられる。
【0003】
この整流器2と平滑コンデンサ4と共振コンデンサ5と加熱コイル6とIGBT7が高周波電源を構成している。8はIGBT7を駆動する駆動回路で、この駆動回路8によりIGBT7を約22kHz〜約40kHzでON/OFFすることにより、加熱コイル6と共振コンデンサ5間に共振電流が流れ加熱コイル6から磁束が発生し、負荷の鍋9に渦電流が発生して負荷の鍋9を加熱する。
【0004】
またIGBT7の発振周期により加熱電力が異なり、その周期は入力電力測定回路3の測定結果を受けた小物判別手段10がその発振周期を決定しIGBT駆動回路8をその発振周期で駆動しているものである。
【0005】
このとき、IGBT7のコレクタ−エミッタ間には約500〜約800V以上の電圧が発生するがその電圧をVce電圧測定手段11で測定しその結果に基づいてIGBT7のコレクタ−エミッタ間電圧がそのIGBT7の電気的耐圧の上限(一般的には900V)を越えないようにしているのが小物判別手段10である。
【0006】
使用者は、報知手段12に表示される火力を参考に選択手段13により、火力を調節しながら調理を行ったり、また選択手段13により自動調理を選んで炊飯等の自動調理を行っている。
【0007】
図4に加熱中の入力電力とIGBT7のコレクタ−エミッタ間電圧Vceの関係を示す。通常の鍋位置であれば、入力を機器最大の1350Wと設定した場合でも、IGBT7に約500V〜600Vの電圧が加わっているのみである。
【0008】
ところが、鍋9をずらすと加熱コイル6から発生した磁束が鍋9に吸収される量が少なくなるためその分を補おうとして磁束を多く出すためにIGBT7をオンさせる時間が増加する。この結果IGBT7に加わる電圧Vceが上昇していく。この電圧VceがIGBT7の耐圧900Vより下に設けられた上限の800Vに達すると、これ以上は火力が入らず入力電力測定回路3の測定結果による電流制御ではなく、Vceを一定以下に抑えるVce電圧制限制御に切り替わっている。ここでさらに鍋9をずらしていくとおよそ10cmで約500Wの電力しか得られなくなるため、機器の加熱動作を停止している。
【0009】
また、通常食卓上で使用する誘導加熱調理器で使用される鍋は内径がφ180mm〜φ240mmであるが、φ100mm程度の小さな鍋を使用された場合にも、加熱コイル6から発生した磁束が小さなに吸収される量が少なくなるためその分を補おうとして磁束を多く出すためにIGBT7をオンさせる時間が増加し、鍋9をずらした場合と同様に火力が充分入らず入力電力測定回路3の測定結果による電流制御ではなく、Vceを一定以下に抑えるVce電圧制限制御に切り替わって火力が落ちながら調理を継続している。
【0010】
図5においては負荷の鍋9を加熱しながらずらした場合や、鍋9をずらしたまま加熱を開始した場合の鍋ずらし距離−入力電力の関係を示す。およそ2cmのずれで電流制御から電圧制限制御に切り替わっている。そして約10cmずらすと、加熱の入力は500W程度になり、天板14上になにも加熱できる物がないと判断している。この500W程度の入力は、小さめの鍋が使用された際に調理可能な最低の火力として設定されている電力値である。
【0011】
また近年の誘導加熱調理器では、その熱応答性の良さに着目され自動で炊飯やピラフ調理や煮物を行う機能を搭載した機器も増えている。これらの機能においては、電力調節が微妙であり、商用交流電源の増減にも対応して電力を一定に保つようにしているものが多い。
【0012】
図7にその自動調理の例としてピラフの調理工程を示す。まず最初に1000Wの火力で沸騰させ、その後800Wにて沸騰を維持しながら米を炊きあげ、最後の300Wで蒸らして調理を終了する。
【0013】
このとき最初の1000Wが大きいと吹きこぼれるためやや火力を落としながら調理を実行しているが、鍋がずれて火力が足らないと沸騰まで達せずにできあがりの米に芯が残ってしまい調理を失敗する。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前記従来の誘導加熱調理器の構成では、自動調理を行う際に鍋9がずれていても、500W程度の入力までは動作し続けるため、自動調理に必要な高火力が得られず、調理を失敗することがある、という課題があった。
【0015】
また鍋9が天板14の概略中央からずれていた場合には、加熱コイル6の中心と鍋9の中心がずれてしまい鍋9を均一に加熱できず加熱むらができて調理が上手くできないという課題があった。
【0016】
本発明は上記課題を解決するもので、天板上に設置された被加熱物の有無や天板上での被加熱物の位置ずれを判断する小物判別手段とを備え、この小物判別手段の判別敷居値を選択手段にて選択されたコースによって変更し、自動調理の場合には少しの鍋ずれも検知して、調理を中止したり使用者に知らせたりするようにし、また自動調理ではなく通常使用者が任意の火力調節で行う調理の場合には、鍋がずれたりした場合でもなるべく調理を継続するようにした誘導加熱調理器を提供することが目的である。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の誘導加熱調理器は、天板上に設置された被加熱物の有無や天板上での被加熱物の位置ずれを判断する小物判別手段とを備え、この小物判別手段の判別敷居値を前記選択手段にて選択されたコースによって変更し、自動調理の場合には少しの鍋ずれも検知して、調理を中止したり使用者に知らせたりするようにし、また自動調理ではなく通常使用者が任意の火力調節で行う調理の場合には、鍋がずれたりした場合でもなるべく調理を継続するようにしたものである。
【0018】
これにより、通常使用者が任意に火力を設定して調理を行う場合には、鍋の大きさが変わっていたり等いろいろな使用場面を考慮して、なるべく加熱を継続する様にし、あらかじめ決められた調理工程を実施する自動調理においては、鍋ずれによる火力の変化を検知して、加熱を停止する、あるいは使用者に鍋が少しずれていることを報知した後に、さらに鍋がずれた場合には加熱を停止する、または、自動調理の途中の低火力で調理を実施している場合でも、鍋ずれが判別できる高火力を短時間入力することによって鍋ずれを判断して、使用者が自動調理を失敗しないように使用者に知らせたり、加熱を停止したりすることができるという作用を得ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、入力電力測定回路と前記VCE電圧測定手段の測定結果より、前記天板上に設置された被加熱物の有無や天板上での被加熱物の位置ずれを判断する小物判別手段とを備え、この小物判別手段の判別敷居値を選択手段にて選択されたコースによって変更するようにしたことにより、任意の火力設定の場合にはなるべく加熱を停止せず、自動調理の場合には、少しの鍋ずれでも検知することができるものである。
【0020】
請求項2に記載の発明は、天板上に設置された被加熱物の有無や天板上での被加熱物の位置ずれを判断する小物判別手段とを備え、選択手段にて自動調理コースが選択された場合には、この小物判別手段の判別を、少しの鍋ずれの場合には使用者報知し、それよりも鍋ずれが大きかった場合には加熱停止する2段階で行うようにしたことにより、任意の火力設定の場合にはなるべく加熱を停止せず、自動調理の場合には、少しの鍋ずれの場合に一旦使用者に報知し、それよりも鍋ずれが大きかった場合には加熱を停止することができるものである。
【0021】
請求項3に記載の発明は、自動調理コースの自動加熱工程の途中に、該工程の火力より大きな所定の火力を短時間入力し小物検知手段にて、被加熱物の有無もしくは天板上での被加熱物の位置ずれを判断するようにしたものであり、自動調理の途中で鍋がずれてしまった場合にも間違いなく鍋ずれを検知することができるものである。
【0022】
【実施例】
以下、その実施例を図面を参照して説明する。
【0023】
(実施例1)
本発明の第1の実施例の構成図は従来例と同じであり図6に示す。次に図1に本発明の第1の実施例の動作を示す。図1は、加熱中の入力電力とIGBT7のコレクタ−エミッタ間電圧Vceの関係を示す。
【0024】
通常の鍋位置で任意の火力設定により調理を開始した場合には、入力を機器最大の1350Wと設定した場合でも、IGBT7に約500V〜600Vの電圧が加わっているのみである。
【0025】
ところが、鍋9をずらすと加熱コイル6から発生した磁束が鍋9に吸収される量が少なくなるためその分を補おうとして磁束を多く出すためにIGBT7をオンさせる時間が増加する。この結果IGBT7に加わる電圧Vceが上昇していく。この電圧VceがIGBT7の耐圧900Vより下に設けられた上限の800Vに達すると、これ以上は火力が入らず入力電力測定回路3の測定結果による電流制御ではなく、Vceを一定以下に抑えるVce電圧制限制御に切り替わっている。ここでさらに鍋9をずらしていくとおよそ10cmで約500Wの電力しか得られなくなるため、機器の加熱動作を停止している物である。
【0026】
次に、選択手段13によって自動調理を選択してピラフ調理を開始した場合には、図1に示すように、小物検知の境界を変更しているため、鍋9が天板14の概略中央からが約5cmずれてしまって、1000Wしか入らなかった時点で小物検知し加熱を停止している。使用者はそのとき鍋9を天板14の概略中央に戻すことにより自動調理を継続することができる。
【0027】
図2に負荷の鍋9を加熱しながらずらした場合や、鍋9をずらしたまま加熱を開始した場合の鍋ずらし距離−入力電力の動作を示す。
【0028】
およそ2cmのずれで電流制御から電圧制限制御に切り替わっている。そして約5cmずらすと、自動調理においては1000W以下にならないようにしているものである。
【0029】
(実施例2)
本発明の第2の実施例においては、図1に示すような鍋ずれ2cmで電流測定による電力調節制御から、IGBT7のVceの測定によるVce電圧制限制御に切り替わった点で、一旦報知手段12によって使用者に報知を行い鍋9がずれていることをお知らせしながら、さらに鍋9がずれてしまった場合には、再度使用者に報知を行った後に、加熱を停止しているものである。
【0030】
これにより、少しだけ鍋9が天板14の概略中央からずれた位置にあり自動調理に必要な火力が得られている場合に置いても、鍋9がずれていて、調理物に加熱むらができるような場合には、使用者に報知を行っている。
【0031】
(実施例3)
図3に本発明の第3の実施例の動作を示す。図3では例としてピラフの自動調理を行っている場合の、調理物の温度変化と加える電力量を示している。
【0032】
このように、自動調理の途中に1000Wを2秒〜3秒程度の短時間加えることにより、鍋9がどれだけずれているかを確認している。
【0033】
そして鍋9がたとえば水滴が鍋9の底についていたまま調理を開始し、調理の進行に従い蒸発した鍋9の底の水滴の圧力により鍋が浮き上がり、当初調理開始時に設置していた天板14の概略中央から鍋9がずれてしまった時にも、使用者に鍋9の位置ずれを知らせることができる。
【0034】
また使用者が誤って鍋9の位置をずらしてしまった場合などにも検知し知らせることができる。
【0035】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の発明によれば、自動調理の際には必要な火力が必ず得られ、調理を失敗することがないという効果を得ることができる。
【0036】
請求項2記載の発明によれば、自動調理の際には必要な火力が必ず得られ、かつ、鍋ずれによる調理物の加熱むらをも解消することができるという効果を得ることができる。
【0037】
請求項3記載の発明によれば、調理開始時に設置していた天板の概略中央から鍋がずれてしまった時にも、使用者に鍋の位置ずれを知らせることができるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1と第2の実施例における誘導加熱調理器の動作を示す入力電力とIGBTのコレクタ−エミッタ間電圧の相関図
【図2】 本発明の第1と第2の実施例における誘導加熱調理器の動作を示す入力電力と鍋ずれ距離の相関図
【図3】 本発明の第3の実施例における誘導加熱調理器の動作を示す自動調理中の入力電力の変化と調理物の温度変化を示すタイムチャート
【図4】 従来例の誘導加熱調理器の動作を示す入力電力とIGBTのコレクタ−エミッタ間電圧の相関図
【図5】 従来例の誘導加熱調理器の動作を示す入力電力と鍋ずれ距離の相関図
【図6】 本発明および従来例の誘導加熱調理器の構成図
【図7】 従来例の誘導加熱調理器の動作を示す自動調理中の入力電力の変化と調理物の温度変化を示すタイムチャート
【符号の説明】
1 商用交流電源
2 整流器
3 入力電力測定回路
4 平滑コンデンサ
5 共振コンデンサ
6 加熱コイル
7 IGBT
8 IGBT駆動回路
9 鍋
10 小物判別手段
11 Vce電圧測定回路
12 報知手段
13 選択手段

Claims (3)

  1. 加熱コイル、スイッチング素子を含む高周波電源と、複数の自動加熱工程からなる自動調理コースと使用者が設定した火力で加熱を継続するコースとを選択する選択手段と、加熱コイルの上方に設置され被加熱物を搭載する天板と、前記スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間に加わる電圧を測定するVCE電圧測定手段と、誘導加熱による加熱の火力を測定する入力電力測定回路と、この入力電力測定回路と前記VCE電圧測定手段の測定結果より、前記天板上に設置された被加熱物の有無や天板上での被加熱物の位置ずれを判断する小物判別手段とを備え、前記小物判別手段の判別敷居値を前記選択手段にて選択されたコースによって変更し、自動調理の場合には少しの鍋ずれも検知して、調理を中止したり使用者に知らせたりするようにし、また自動調理ではなく通常使用者が任意の火力調節で行う調理の場合には、鍋がずれたりした場合でもなるべく調理を継続するようにした誘導加熱調理器。
  2. 加熱コイル、スイッチング素子を含む高周波電源と、複数の自動加熱工程からなる自動調理コースと、使用者が設定した火力で加熱を継続するコースとを選択する選択手段と、加熱コイルの上方に設置され被加熱物を搭載する天板と、前記スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間に加わる電圧を測定するVCE電圧測定手段と、誘導加熱による加熱の火力を測定する入力電力測定回路と、この入力電力測定回路と前記VCE電圧測定手段の測定結果より、前記天板上に設置された被加熱物の有無や天板上での被加熱物の位置ずれを判別する小物判別手段とを備え、前記選択手段にて自動調理コースが選択された場合には、前記小物判別手段は判別結果に応じて、少しの鍋ずれの場合には使用者報知し、それよりも鍋ずれが大きかった場合には加熱停止する2段階の制御を行う誘導加熱調理器。
  3. 自動調理コースの自動加熱工程の途中に、該工程の火力より大きな所定の火力を短時間入力し小物検知手段にて、被加熱物の有無もしくは天板上での被加熱物の位置ずれを判断するようにした請求項1または2に記載の誘導加熱調理器。
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