JP3787551B2 - 金型 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば合成樹脂材料を所定の形状に射出成形するための金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、図21に示すように、複数の成形部300(1つのみ図示)と、材料を注入する入り口部311を有し入り口部311から複数の成形部300に材料を供給するための岐路301を有する材料供給路312と、岐路301に設けられた流量調節部313とを備えた金型があった。
【0003】
この金型によれば、一度の型締めで複数の成形品を同時に成形することができる。
【0004】
ここで、岐路301に流量調節部313を設けたのはつぎの理由による。すなわち、一つの金型に同一形状、対称形状または別形状の複数の成形部300を形成した場合、材料供給路312の岐路301の流量を調節しないと、全ての成形部300に同時にかつ均一に材料が流れ込まないことがある。極端な場合、例えば太い岐路の付いた成形部300のみに材料が先に流れ込んだ後、細い岐路の付いた他の成形部に樹脂が流れ込むことがあり、成形能率が悪くなる。また一つの金型に同一形状の成形部と対称または別の形状の成形部を形成した場合で、成形すべき成形品数が異なるとき、最小成形品数まで成形した段階で、少なくてよい方の成形部には樹脂が流れ込まないように調節しないと無駄が生じる。
【0005】
そこで、従来の流量調節部313は、入り口部311につながる共通岐路314から成形部300に至る岐路301に横切りかつ岐路301を遮断するように調整部材303を移動自在に設け、調整部材303に岐路301をつなぐように連通する溝304を形成し、調整部材303が移動することにより溝304と岐路301がずれるので、これにより岐路301の流量を調整している。調整部材303の移動量は調整部材303に長孔305を形成し、長孔305にボルト306を挿通し金型に締付けている。成形後金型を開いたときに、ボルト306を若干緩め調整部材303を移動すると、岐路301を連通する溝304が岐路301から横方向にずれ岐路301と溝304との隙間が移動量に応じて変化し、これによって流量が調整される。
【0006】
【特許文献】
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、調整部材303が岐路301から横方向に大きくはみ出した構成となるので、成形部300の形状や大きさが制約され、または金型が大型化するという欠点があった。岐路301の流量の微調整がしにくいという欠点があった。
【0008】
したがって、この発明の目的は、金型が大型化せず、また微調整が容易な金型を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の金型は、複数の成形部と、材料を注入する入り口部を有し前記入り口部から前記複数の成形部に材料を供給するための岐路を有する材料供給路と、前記岐路に設けられた流量調節部とを備えた金型において、
前記流量調節部は、前記岐路に回動可能に設けられて前記岐路断面積を調節する回動弁と、リング状の回り止め部材と、前記岐路に交差して形成された孔に非回転嵌着した保持部材とを備え、
前記回動弁は、前記孔内に位置する円柱状本体と、この円柱状本体の端部の一直径線上より軸方向に立設されて前記岐路内に位置する弁板と、前記円柱状本体の前記弁板と反対側の端部に形成されたつば状の支持部とを有し、
前記リング状の回り止め部材は、前記円柱状本体に嵌合するとともに前記支持部に密着し、
前記保持部材は、前記円柱状本体を嵌合する第1外筒部と、この第1外筒部に連続して前記支持部および前記回り止め部材に嵌合する第2外筒部とを有して、前記円柱状本体を回転可能に保持するとともに、前記第1外筒部の前記第2外筒部と反対側の端部に前記岐路に連通する切欠き部を形成したものである。
【0010】
請求項1記載の金型によれば、回動弁が岐路内で回動することにより流量を調節することができる。この場合、回動弁が岐路に回動可能に設けられたため、従来と比べて岐路に直角な方向に移動しないので成形部が制約されず、また金型が大型化しない。さらに回動弁を回動することにより流量を調節するため流量が少ない範囲での微調整が従来の移動と比べて容易になる。
【0012】
また、弁板に冠合させる溝をもった治具で回動弁を容易に回動することができる。
【0014】
また、回り止め部材の密着による材料の回り止めと同時に摩擦抵抗により型閉時に回動弁の回動状態を保持することができる。
【0016】
さらに、保持部材を金型に形成した取付孔に嵌着することにより回動弁を金型に設けることができるので、回動弁が取付け容易である。
【0017】
請求項記載の金型は、請求項において、前記弁板が前記円柱状本体の直径方向の両端が細く中央部が厚い形状を有し、前記中央部に回動操作用非円形孔を形成したものである。
【0018】
請求項記載の金型によれば、請求項と同様な効果のほか、回動操作用非円形孔に嵌合する例えば棒体で弁板を回動することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施の形態の金型を図1から図11に基づいて説明する。すなわち、この金型は、複数の成形部1〜4と、材料供給路5と、流量調節部6〜9を有する。
【0020】
複数の成形部1〜4は、実施の形態において、相互に異なる形状になっている。これらの成形部1〜4は、キャビティ17aを有するキャビティ型17とコア18aを有するコア型18により構成されている。19はキャビティ型17とコア型18をガイドするガイドピン、20、21は各金型を保持する型板、22、23は取付板、24はノックアウトピン、25はノックアウトピン受け板、26はノックアウトピン保持板である。
【0021】
材料供給路5は、材料を注入する入り口部であるスプルー10を有し、スプルー10から複数の成形部1〜4に材料を供給するための岐路であるランナを有する。このランナはコア型18に凹設され、スプルー10に連通する一対の共通岐路11と、共通岐路11より分岐した分岐路12〜15からなっている。16は分岐路12〜15と成形部1〜4を接続するゲート、27はランナのノックアウトピン、28はロケーションリングである。
【0022】
流量調節部6〜9はランナに設けられ、実施の形態では分岐路12〜15に設けられている。この流量調節部6〜9は、分岐路12〜15に回動可能に設けられて岐路断面積を調節する回動弁30を有する。すなわち、分岐路12〜15に平行な姿勢で通路断面積が最大となる平行な姿勢から、分岐路12〜15に直角な方向の回動量に応じて通路断面積が漸次小さくなる。回動弁30は円柱状本体31と、この円柱状本体31の端部の一直径線上より軸方向に立設された弁板33からなり、円柱状本体31が分岐路12〜15に交差して形成された孔32に回転自在に嵌合され、弁板33が分岐路12〜15内に位置する。
【0023】
この場合、円柱状本体31の弁板33と反対側の端部につば状の支持部34を有する。また流量調節部6〜9は、円柱状本体31に嵌合するとともに支持部34に密着して摩擦抵抗により回転止めする例えばパッキン、Oリングなどのリング状の回り止め部材35を設けている。さらに円柱状本体31を嵌合する保持部材36を有し、保持部材36を孔32に非回転嵌着している。保持部材36は円柱状本体31を嵌合する第1外筒部37と、この第1外筒部37に連続して支持部34および回り止め部材35に嵌合する第2外筒部38を有して、円柱状本体31を回転可能に保持する。また第1外筒部37の第2外筒部38と反対側の端部に分岐路12〜15に連通する切欠き部39を形成している。孔32はコア型18に貫通され、保持部材36の第1外筒部37に嵌合する第1孔部52および第2外筒部38に嵌合する第2孔部53からなり、第2外筒部38および支持部34の端面がコア型18を収納する型板21の収納凹部21aの底面に支持されている。さらに保持部材36を孔32に非回転嵌着するため、第2外筒部38の外周面に一対の平面部50を形成し、孔32の内周面に平面部50に当接する平面部51を形成している。
【0024】
弁板32の回動は、図11に示すような治具42により行われる。この治具42は棒状部43とその一端に取付けたハンドル44からなる。棒状部43の先端には弁板33が嵌合する溝45を形成している。溝45を弁板33に嵌めハンドル44を把持して回転すると、例えば図7から図8のように分岐路12〜15に平行な姿勢から略90°回動したときは完全に分岐路12〜15を遮断する。その間で弁板33の回動量を調節すると分岐路断面積の大きさを調節することができ、したがって流量を調節することができる。弁板33の姿勢はパッキン等の回り止め部材33の摩擦抵抗により保持される。
【0025】
成形方法について説明する。図2の型閉じ状態で加熱された金型にスプルー10より流動性のある軟化した合成樹脂材料を注入すると、ランナを流れゲート16を通って成形部1〜4に材料が充填される。この場合、分岐路12の流量調節部6の弁板33が分岐路12を閉じ、分岐路13〜15の流量調節部7〜9の弁板33が開いているので、成形部2〜4のみに材料が充填される。しかも分岐路13、15の流量調節部7、9の弁板33は分岐路13、15に平行になっており、岐路断面積が最大で最大流量が流れるのに対して、分岐路14の流量調節部8の弁板33は分岐路14に平行ではなく傾斜しており岐路断面積は小さくなっており流量が抑えられている。その調節は成形部3の形状や大きさに合わせ、各成形部2〜4にほぼ同時に充填が完了するように行われる。
【0026】
充填が完了し冷却後取付板23を移動すると、図3に示すように型開きされる。成形品40はコア型18側に残り成形品40およびランナ上の残留物41は受け板25を押し上げると、図4に示すようにノックアウトピン24、27により図6に示すように取り出される。その後受け板25および取付板23を元の位置に戻し、再度型閉じし材料を充填すると、再び上記と同様に成形が行われ、成形品が取り出される。この場合、例えば成形部4の成形品の成形数が予定数に到達すると、流量調節部9の回動弁30を分岐路15に平行な姿勢から回動して分岐路15を遮断し、残りの成形部2、3のみについて成形を続行する。
【0027】
この発明の第2の実施の形態を図12から図17に示す。すなわち、この金型は、第1の実施の形態と比較して、キャビティ側型板20のキャビティ型17のある面と反対側すなわち取付板22側に共通岐路11および分岐路12〜15からなるランナを形成している点が異なる。各分岐路12〜15は型板20を貫通し、さらに先端がキャビティ型17のキャビティ17aの底面中央付近に設けたゲートに延びる連絡部12a〜15aを有する。またキャビティ型17と取付板22との間にランナ側型板56を介在し、スプルー10の先端がランナ側型板56を貫通してランナ内に位置し、また取り出しピン57が取付板22およびランナ側型板56を貫通してその先端が分岐路12〜15に位置している。図13は分岐路12〜15を含むランナ位置の平面図、図14は成形部1〜4の位置の平面図である。また流量調節部6〜9は第1の実施の形態と同構成であるが、孔32はキャビティ側型板20に貫通形成され、下端はキャビティ型17の収納凹部20aの底面に開口し、回動弁30および保持部材36の下面がキャビティ型17の上面に支持される。その他第1の実施の形態との共通部分は同一符号を付している。
【0028】
図12の型閉じ状態で加熱された金型に流動性のある軟化状態の合成樹脂材料をスプルー10より射出すると、共通岐路11および分岐路12〜15のランナおよびゲート16を経由して成形部1〜4に充填される。この場合、成形部1は第1の実施の形態と同様に回動弁30が閉じられているので、成形部2〜4のみに材料が充填される。冷却後取付板23を移動すると、図15に示すようにキャビティ型17とコア型18が開き、キャビティ型17とランナ側型板56とが開く。成形品40はコア型18側に残り、ランナで固まった残留物41は最初はランナ側型板56のピン57につき、ランナ側型板56をスプルー10およびピン57に対して取付板22から離れるように移動させると残留物41が取れる。また図16に示すようにノックアウトピン受け板25を押してノックアウトピン24を突き出し、成形品40を取り出す。再び成形する場合は、ランナ側型板56および受け板25の復帰、型閉じ、加熱、材料充填、冷却を順次繰り返す。このとき、流量調節部6〜9の回動弁30を調節することにより全ての成形部1〜4に均一かつ同時に材料を流し込むことができ、また成形不要な一部の成形部の分岐路を遮断することができる。
【0029】
この発明の第3の実施の形態を図18および図19に示す。すなわち、弁板33は円柱状本体31の直径方向の両端が細く中央部が厚い形状を有し、中央部に回動操作用非円形孔60を形成したものである。
【0030】
この実施の形態の場合、非円形孔60は六角形にしており、図11に示す治具に代えて断面六角形の部材例えば六角レンチを使用して、回動弁30を任意角度に回動することができる。非円形孔60は上記六角形に限らず、断面円形の一部が非円形になっていて、例えば棒体を非円形孔60に嵌合したとき棒体により弁板33を回動できる構成であればよい。途中その他は第1の実施の形態および第2の実施の形態と同様である。
【0031】
この発明の第4の実施の形態を図20に示す。すなわち、第1の実施の形態において、保持部材36を除去し、回動弁30を孔32に直接回動自在に嵌合したものである。この場合、部品点数が少なくなる利点がある。
【0032】
なお回り止め部材35は漏れ防止を兼ねる。
【0033】
【発明の効果】
請求項1記載の金型によれば、回動弁が岐路内で回動することにより流量を調節することができる。この場合、回動弁が岐路に回動可能に設けられたため、従来と比べて岐路に直角な方向に移動しないので成形部が制約されず、また金型が大型化しない。さらに回動弁を回動することにより流量を調節するため流量が少ない範囲での微調整が従来の移動と比べて容易になる。
【0034】
また、弁板に冠合させる溝をもった治具で回動弁を容易に回動することができる。
【0035】
さらに、回り止め部材の密着による材料の回り止めと同時に摩擦抵抗により型閉時に回動弁の回動状態を保持することができる。
【0036】
また、保持部材を金型に形成した取付孔に嵌着することにより回動弁を金型に設けることができるので、回動弁が取付け容易である。
【0037】
請求項記載の金型によれば、請求項と同様な効果のほか、回動操作用非円形孔に嵌合する例えば棒体で弁板を回動することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態による成形部の概略平面図である。
【図2】型閉じ状態の概略断面図である。
【図3】型開き状態の概略断面図である。
【図4】成形品をコア型から取り出した状態の要部断面図である。
【図5】流量調節部の概略断面図である。
【図6】成形品およびランナ残留物を示し、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【図7】流量調節部の弁板が分岐路に平行な姿勢の状態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図8】流量調節部の弁板が分岐路に平行な姿勢から回動した状態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図9】保持部材を示し、(a)は(b)のA−A線断面図、(b)は側面図である。
【図10】回動弁を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図11】回動弁を回動操作する治具の正面図である。
【図12】第2の実施の形態の型閉じ状態の概略断面図である。
【図13】ランナの位置の概略平面図である。
【図14】成形部の位置の概略平面図である。
【図15】型開き状態の概略断面図である。
【図16】成形品をコア型から取り出した状態の要部断面図である。
【図17】ランナ残留物の平面図である。
【図18】第3の実施の形態の要部斜視図である。
【図19】(a)はその平面図、(b)はその正面図である。
【図20】第4の実施の形態を示し、(a)は回動弁の箇所の部分断面図、(b)はその回動弁を回した状態の平面図である。
【図21】従来例の金型の成形部の部分平面図である。
【符号の説明】
1〜4 成形部
5 材料供給部
6〜9 流量調節部
10 スプルー(入り口部)
11 共通岐路
12〜15 分岐路(ランナ)
16 ゲート
17 キャビティ型
18 コア型
19 ガイドピン
30 回動弁
31 円柱状本体
32 孔
33 弁板
34 支持部
35 回り止め部材
36 保持部材
37 第1外筒部
38 第2外筒部
39 切欠き部
60 角孔

Claims (2)

  1. 複数の成形部と、材料を注入する入り口部を有し前記入り口部から前記複数の成形部に材料を供給するための岐路を有する材料供給路と、前記岐路に設けられた流量調節部とを備えた金型において、
    前記流量調節部は、前記岐路に回動可能に設けられて前記岐路断面積を調節する回動弁と、リング状の回り止め部材と、前記岐路に交差して形成された孔に非回転嵌着した保持部材とを備え、
    前記回動弁は、前記孔内に位置する円柱状本体と、この円柱状本体の端部の一直径線上より軸方向に立設されて前記岐路内に位置する弁板と、前記円柱状本体の前記弁板と反対側の端部に形成されたつば状の支持部とを有し、
    前記リング状の回り止め部材は、前記円柱状本体に嵌合するとともに前記支持部に密着し、
    前記保持部材は、前記円柱状本体を嵌合する第1外筒部と、この第1外筒部に連続して前記支持部および前記回り止め部材に嵌合する第2外筒部とを有して、前記円柱状本体を回転可能に保持するとともに、前記第1外筒部の前記第2外筒部と反対側の端部に前記岐路に連通する切欠き部を形成した金型。
  2. 前記弁板は前記円柱状本体の直径方向の両端が細く中央部が厚い形状を有し、前記中央部に回動操作用非円形孔を形成した請求項記載の金型。
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