JP3786629B2 - 作業車の走行制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの動力にて駆動される左右一対の走行装置の走行速度を各別に無段階に変速する一対の無段変速装置と、その一対の無段変速装置を各別に変速操作する一対のアクチュエータと、 走行停止を指令する停止指令位置を含む所定操作範囲内で移動操作自在で、且つ、停止指令位置からの移動操作量が大きくなるほど高速を指令する車速指令手段と、旋回を指令する旋回指令手段と、前記車速指令手段にて指令される車速指令情報に対応する速度で車体を直進走行させるべく前記一対のアクチュエータを作動させる直進制御、及び、前記旋回指令手段にて指令された旋回を行うべく前記一対のアクチュエータを作動させる旋回制御を実行する制御手段とが備えられている作業車の走行制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記構成の作業車の走行制御装置は、例えばコンバイン等の作業車に適用されるものであり、従来では、前記直進制御として、次のような制御を実行する構成となっていた。
つまり、前記車速指令手段が停止指令位置に操作されると停止状態になり、車速指令手段が停止指令位置から移動操作されると、その移動操作量が大きくなるに伴って高速側に変化するように、指令位置に対応する車体の目標走行速度を設定するよう構成され、一対の変速出力検出手段にて検出される前記一対の無段変速装置夫々の出力速度が、共に前記目標走行速度になるように一対のアクチュエータを作動させるようになっており、このように、一対の無段変速装置夫々の出力速度を検出して、それらが共に前記目標走行速度になるようにフィードバック制御することで、車速指令手段の指令状態に対応する速度で、且つ、左右走行装置が速度差のない同じ速度で走行することで車体が斜行したりすることなく良好に直進走行できるようになっていた。
【0003】
そして、車速指令手段にて所定操作範囲の上限値が指令されたときに設定される目標走行速度は、エンジンの出力回転速度が予め定められた作業用の設定値に調整された状態で前記一対の無段変速装置を最大変速位置に変速させたときの走行速度に対応する走行速度に設定されていた。
説明を加えると、コンバイン等の作業車においては、作業車に搭載されてエンジンにて駆動される作業装置が所望の回転速度で駆動されるように、作業開始前にエンジンの出力回転速度を上述したような設定値に予め調整して、その設定状態を維持したまま作業を行う構成となっており、作業中はエンジンの出力回転速度は前記設定値に維持されるようになっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来構成においては、エンジンの出力回転速度を上述したような予め定めた設定値に維持しているときは問題はないが、作業装置を駆動しない状態で走行するような場合等において、エンジンの出力回転速度を前記設定値から低速側に減速させた状態で車体を直進走行させるようにすると、次のような不利な点があり、改善の余地があった。
【0005】
つまり、車速指令手段にて所定操作範囲の上限値が指令された状態で車体を走行させるとき、その車速指令手段の操作に伴って指令される目標走行速度は、上述したようにエンジンの出力回転速度が設定値であり且つ一対の無段変速装置を最大変速位置に変速させたときの走行速度(最高速度)であるが、エンジンの出力回転速度を前記設定値から低速側に減速させた状態であれば、車速指令手段にて所定操作範囲の上限値が指令された場合であっても、車体の走行速度は上記したような走行速度(最高速度)にならずそれよりも低い中間速度になる。その結果、作業者が車速指令手段を増速側へ移動操作している場合、車速指令手段を所定操作範囲のうち前記中間速度に対応する位置に操作するまでは、車速指令手段の移動操作に対応して走行速度が増速されることになるが、その位置を越えて更に高速側に操作してもそれ以上増速が行われないものとなる。
その結果、作業者が手動操作により車速指令手段を移動操作しているときに、車速指令手段を所定操作範囲のうち前記中間速度に対応する位置よりも高速側の範囲において、速度を増速させるために車速指令手段を高速側に移動操作しているにもかかわらず車体の走行速度が増速しないものとなり、作業者が操作しにくいものと感じたり、変速系の故障であると誤って認識してしまう等の不利な点があった。
【0006】
本発明はかかる点に着目してなされたものであり、その目的は、エンジンの出力回転速度が変更設定されることがあっても、上述したような不利がなく、車速指令操作を良好に行うことが可能であり、しかも、車体が斜行せずに良好に直進走行することが可能となる作業車の走行制御装置を提供する点にある。
【0007】
請求項1に記載の作業車の走行制御装置は、エンジンの動力にて駆動される左右一対の走行装置の走行速度を各別に無段階に変速する一対の無段変速装置と、
その一対の無段変速装置を各別に変速操作する一対のアクチュエータと、
走行停止を指令する停止指令位置を含む所定操作範囲内で移動操作自在で、且つ、停止指令位置からの移動操作量が大きくなるほど高速を指令する車速指令手段と、
旋回を指令する旋回指令手段と、
前記車速指令手段にて指令される車速指令情報に対応する速度で車体を直進走行させるべく前記一対のアクチュエータを作動させる直進制御、及び、前記旋回指令手段にて指令された旋回を行うべく前記一対のアクチュエータを作動させる旋回制御を実行する制御手段とが備えられている作業車の走行制御装置であって、
前記一対の無段変速装置の夫々における変速用の被操作体の変速位置を各別に検出する一対の変速位置検出手段と、
前記一対の無段変速装置の出力速度を各別に検出する一対の変速出力検出手段とが備えられ、
前記制御手段が、前記直進制御として、
前記車速指令手段が停止指令位置に操作されると停止用変速位置になり、前記車速指令手段が停止指令位置から移動操作されると、その移動操作量が大きくなるに伴って高速側に変化し、且つ、所定操作範囲の上限値が指令されたときに上限変速位置となるように、指令位置に対応する前記一対の被操作体の目標変速位置を設定する目標変速位置設定処理、
前記一対の変速位置検出手段にて検出される前記一対の被操作体の変速位置夫々が前記目標変速位置に近づくように、前記一対のアクチュエータを作動させる変速位置調整処理、及び、
その変速位置調整処理の実行により、前記一対の無段変速装置の少なくともいずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が前記目標変速位置との関連で定めた制御状態切換用位置としての、前記目標変速位置又は前記目標変速位置に対して設定量だけ手前側の位置になると、前記一対の無段変速装置の出力速度が同期用目標速度としての、いずれか一方の無段変速装置における出力速度又は前記一対の無段変速装置の出力速度を平均した出力速度になるように、前記一対の変速出力検出手段の検出情報に基づいて前記一対のアクチュエータを作動させる速度同期処理の夫々を実行するよう構成されていることを特徴とする。
【0008】
すなわち、旋回指令手段にて直進が指令されて制御手段が直進制御を実行するときは、制御手段は、先ず前記目標変速位置設定処理を実行する。つまり、車速指令手段が停止指令位置から移動操作されると、その移動操作量が大きくなるに伴って高速側に変化し、且つ、所定操作範囲の上限値が指令されたときに上限変速位置となるように、指令位置に対応する一対の被操作体の目標変速位置を設定する。換言すると、車速指令手段の所定操作範囲の全範囲にわたる移動操作と、一対の被操作体の全操作範囲にわたる変速操作とを対応付けた状態で、車速指令手段の指令位置から一対の被操作体の目標変速位置が設定されることになる。
【0009】
次に、制御手段は前記変速位置調整処理を実行する。つまり、一対の変速位置検出手段にて検出される一対の被操作体の変速位置夫々が前記目標変速位置になるように一対のアクチュエータを作動させるのである。この変速位置調整処理を実行することによって、一対の無段変速装置は車速指令手段の移動操作位置に対応させて一対の走行装置の夫々の走行速度を各別に無段階に変速することになる。このとき、車速指令手段により所定操作範囲の上限値が指令されたときには、一対の被操作体の目標変速位置は共に上限変速位置となるから、一対の無段変速装置の変速出力は変速可能範囲の最大値になる。尚、このときの速度は、エンジンの出力回転速度が変化していればその出力回転速度に応じて変速調整可能な速度の最大値に対応するものとなる。
【0010】
更に、制御手段は速度同期処理を実行する。つまり、前記変速位置調整処理の実行により、前記一対の無段変速装置の少なくともいずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が前記目標変速位置との関連で定めた制御状態切換用位置になると、一対の無段変速装置の出力速度が同期用目標速度になるように、一対の変速出力検出手段の検出情報に基づいて一対のアクチュエータを作動させるのである。その結果、前記変速位置調整処理において一対の無段変速装置を各別に制御した結果、左右一対の走行装置の走行速度に個体差に起因したわずかな誤差が生じることがあっても、この誤差を修正して左右の走行装置の走行速度を同じ又はほぼ同じ値にすることができ直進状態を維持できるのである。
【0011】
前記制御状態切換用位置としては、前記目標変速位置と同じ値に設定したり、その目標変速位置に対して設定量低速側又は設定量高速側の値として設定する等、各種の形態で実施することができる。
【0012】
又、前記速度同期処理は、前記変速位置調整処理を実行した後において、一対の無段変速装置の出力速度が同じになるように速度同期させるべく各アクチュエータを作動させる処理であり、その具体構成としては、次のような各種の構成で実施することが可能である。
つまり、前記変速位置調整処理において、いずれかの無段変速装置における被操作体の変速位置が前記目標変速位置になると、前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置を基準側の無段変速装置として定めて、その基準側の無段変速装置は被操作体の変速位置をその位置に保持させるようにして、その基準側の無段変速装置における出力速度を同期用目標速度として設定して、他方の無段変速装置の出力速度が同期用目標速度になるように速度調整する構成としてもよい。
又、このような構成に代えて、前記変速位置調整処理において、いずれかの無段変速装置における被操作体の変速位置が前記目標変速位置になると、その無段変速装置における出力速度を前記変速出力検出手段にて検出してその検出値を目標速度として設定した後に、一対の変速出力検出手段の検出値が共に目標速度になるように、一対のアクチュエータを作動させる構成としてもよい。
【0013】
このようにして前記目標変速位置設定処理及び前記変速位置調整処理夫々を実行することで、エンジンの出力回転速度の変化にかかわらず、車速指令手段により所定操作範囲の上限値が指令されたときには、その出力回転速度に応じて変速調整可能な速度の最大値に対応するものとなるので、所定操作範囲のうちの設定速度よりも高速側の範囲において車速指令手段を移動操作しても走行速度が変化しないといった不利がなく、所定操作範囲の全領域を有効に利用して車速指令手段を操作することで車速指令操作を良好に行うことが可能となる。しかも、前記速度同期処理を実行することで、左右の走行装置の走行速度を同じ又はほぼ同じ値にして直進状態を維持することができる。
【0014】
従って、エンジンの出力回転速度が変更設定されることがあっても、従来のように、車速指令手段を高速側に移動操作しているにもかかわらず車体の走行速度が増速しないものとなって作業者が操作しにくいものと感じたり、変速系の故障であると誤って認識するといった不利がなく、車速指令操作を良好に行うことが可能であり、しかも、車体が斜行せずに良好に直進走行することが可能となる作業車の走行制御装置を提供できるに至った。
【0015】
請求項2に記載の作業車の走行制御装置は、請求項1において、前記制御状態切換用位置が、前記目標変速位置に定められていることを特徴とする。
【0016】
すなわち、前記変速位置調整処理の実行により、前記一対の無段変速装置の少なくともいずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が前記制御状態切換用位置としての前記目標変速位置になると、一対の無段変速装置の出力速度が同期用目標速度になるように一対の変速出力検出手段の検出情報に基づいて一対のアクチュエータを作動させる構成となっている。前記目標変速位置は車速指令手段による指令位置に対応する変速位置であることから、いずれか一方の無段変速装置が車速指令手段による指令位置に対応する目標変速位置になったのちに一対の無段変速装置の出力速度が同期用目標速度になる状態で速度同期処理が実行されることになる。従って、この速度同期処理を実行することにより、車速指令手段による指令位置に対応する速度又はその速度とほぼ同じ速度で適切に直進走行させることが可能となり、請求項1を実施するのに好適な手段が得られる。
【0017】
請求項3記載の作業車の走行制御装置は、請求項1又は2において、前記制御手段が、前記速度同期処理として、前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置を基準側の無段変速装置として定めて、その基準側の無段変速装置における前記被操作体の変速位置をその位置に保持させるように、その無段変速装置に対応する前記アクチュエータを作動させ、且つ、その基準側の無段変速装置における出力速度を前記同期用目標速度として設定して、他方の無段変速装置の出力速度が前記同調用目標速度になるように、前記変速出力検出手段の検出情報に基づいて前記他方の無段変速装置に対応する前記アクチュエータを作動させるように構成されていることを特徴とする。
【0018】
すなわち、前記変速位置調整処理の実行により、前記一対の無段変速装置の少なくともいずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が前記制御状態切換用位置になると、一対の無段変速装置のうちのいずれか一方の無段変速装置を基準側の無段変速装置として定める。このとき、一対の無段変速装置のうちどちらの無段変速装置を基準側の無段変速装置として選択するかについての条件は適宜設定することができる。例えば、被操作体の変速位置が中立位置から遠い側にある無段変速装置を選択してもよく、被操作体の変速位置が中立位置から近い側にある無段変速装置を選択してもよい。
【0019】
このようにして定めた基準側の無段変速装置においては、いずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が前記制御状態切換用位置になると、基準側の無段変速装置における被操作体の変速位置をその位置に保持させるようにその無段変速装置に対応するアクチュエータを作動させることになる。そして、基準側の無段変速装置における出力速度を同期用目標速度として設定して、他方の無段変速装置の出力速度がその同期用目標速度になるように、変速出力検出手段の検出情報に基づいて他方の無段変速装置に対応するアクチュエータを作動させるのである。
【0020】
このような構成に代えて、例えば、一対の無段変速装置の夫々について、出力速度が同期用目標速度になるように各アクチュエータを作動させる構成とすることも考えられるが、このように構成した場合には、2つのアクチュエータが同時に作動することになるので、それだけ余分の駆動エネルギーが必要でありエネルギーロスとなるおそれがあるが、上記構成によれば、基準側の無段変速装置においては被操作体の変速位置をその位置に保持させておき、他方の無段変速装置においては、出力速度がその同期用目標速度になるようにアクチュエータを作動させる構成とすることにより、無用なエネルギーの消費を極力抑制しながら、適正な直進走行を行うことが可能となるのである。従って、請求項1又は2を実施するのに好適な手段が得られる。
【0021】
請求項4記載の作業車の走行制御装置は、請求項3において、前記制御手段が、前記変速位置調整処理の実行により、前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が前記制御状態切換用位置になると、その無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定めるよう構成されていることを特徴とする。
【0022】
すなわち、前記変速位置調整処理の実行により被操作体の変速位置が制御状態切換用位置になった側の無段変速装置を基準側の無段変速装置として定めるので、例えば、そのときに一対の無段変速装置の被操作体のうちどちらが停止用変速位置から遠いのか、あるいは、どちらが停止用変速位置に近いのか等の判断処理を行い、停止用変速位置から遠い側のものを選定したり、停止用変速位置に近い側のものを選定するような構成であれば、処理に時間がかかる不利があるが、上記構成によれば、このような不利がなく、基準側の無段変速装置を定める処理を迅速に行えることになり、請求項3を実施するのに好適な手段が得られる。
【0023】
請求項5記載の作業車の走行制御装置は、請求項3において、前記制御手段が、前記変速位置調整処理の実行により、前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が前記制御状態切換用位置になると、一対の無段変速装置のうち前記被操作体の変速位置が前記停止用変速位置から遠い側に位置する無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定めるよう構成されていることを特徴とする。
【0024】
すなわち、一対の無段変速装置のうち前記被操作体の変速位置が前記停止用変速位置から遠い側に位置する無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定めるので、その無段変速装置における被操作体の変速位置がそのときの位置に保持され、停止用変速位置に近い側に位置する無段変速装置はその出力速度が前記同調用目標速度になるように対応するアクチュエータが作動されることになる。
【0025】
被操作体の変速位置が停止用変速位置から遠い側に位置する無段変速装置においては、被操作体の変速位置が上限変速位置に近づいた位置になっており、そのときの位置から高速側への移動操作に制約を受けるおそれがあるが、被操作体の変速位置が停止用変速位置に近い側に位置する無段変速装置においては、このような移動操作に制限を受けるおそれが少ないものとなる。
【0026】
従って、移動操作に制約を受けるおそれが大きい無段変速装置においては被操作体の変速位置が保持され、移動操作に制約を受けるおそれが少ない無段変速装置の出力速度が前記同調用目標速度になるように対応するアクチュエータが作動される構成とすることで、速度同期用のアクチュエータの作動に制約を受けるおそれが少なく良好な車速同期処理が可能となり、請求項3を実施するのに好適な手段が得られる。
【0027】
請求項6記載の作業車の走行制御装置は、請求項5において、前記制御手段が、前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が前記制御状態切換用位置になったときに、
前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が設定位置よりも低速側に位置しているときは、一対の無段変速装置のうち前記被操作体の変速位置が前記停止用変速位置から遠い側に位置する無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定め、
前記一対の無段変速装置夫々の被操作体の変速位置が共に前記設定位置よりも高速側に位置しているときは、前記一対の無段変速装置のうち前記被操作体の変速位置が前記停止用変速位置から近い側に位置する無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定めるよう構成されていることを特徴とする。
【0028】
すなわち、いずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が前記制御状態切換用位置になったときに、いずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置、つまり、停止用変速位置に近い側の被操作体の変速位置が設定位置よりも低速側に位置していれば、その無段変速装置は被操作体の変速位置が上限変速位置から離れており被操作体の移動操作に制約を受けるおそれが少ないものとなる。そこで、停止用変速位置から遠い側に位置する無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定めて、停止用変速位置から遠い側に位置する無段変速装置、つまり、上述したように移動操作に制約を受けるおそれが少ない無段変速装置が出力速度が前記同調用目標速度になるように対応するアクチュエータが作動される構成とすることで、速度同期用のアクチュエータの作動に制約を受けるおそれが少なく良好な車速同期処理を行うことが可能となる。
【0029】
又、いずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が前記制御状態切換用位置になったときに、一対の無段変速装置夫々の被操作体の変速位置が共に前記設定位置よりも高速側に位置しているときにも、停止用変速位置から遠い側に位置する無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定める構成とすると、次のような不利な点がある。つまり、各無段変速装置夫々の被操作体が共に設定位置よりも高速側に位置しており上限変速位置に近い位置にあるので、例えば、被操作体の変速位置に個体差に起因した誤差が生じているような場合であれば、実際には停止用変速位置に近い側に位置しているにもかかわらず、遠い側に位置しているものと誤判別してしまうおそれがあるが、そのとき、停止用変速位置から遠い側に位置している被操作体が、前記同調用目標速度になるように対応するアクチュエータにて操作される場合がある。そうすると、上限変速位置に近づいて移動操作に制約を受けることにより、車速同期処理を良好に行えないものになるおそれがある。
【0030】
そこで、一対の無段変速装置夫々の被操作体の変速位置が共に設定位置よりも高速側に位置しているときは、停止用変速位置に近い側に位置する無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定めて、反対側の無段変速装置の被操作体が前記同調用目標速度になるように対応するアクチュエータを作動させる構成とすることで、上述したような不利のない良好な状態で車速同期処理を行えるものとなり、請求項5を実施するのに好適な手段が得られる。
【0031】
請求項7記載の作業車の走行制御装置は、エンジンの動力にて駆動される左右一対の走行装置の走行速度を各別に無段階に変速する一対の無段変速装置と、
その一対の無段変速装置を各別に変速操作する一対のアクチュエータと、
走行停止を指令する停止指令位置を含む所定操作範囲内で移動操作自在で、且つ、停止指令位置からの移動操作量が大きくなるほど高速を指令する車速指令手段と、
旋回を指令する旋回指令手段と、
前記車速指令手段にて指令される車速指令情報に対応する速度で車体を直進走行させるべく前記一対のアクチュエータを作動させる直進制御、及び、前記旋回指令手段にて指令された旋回を行うべく前記一対のアクチュエータを作動させる旋回制御を実行する制御手段とが備えられている作業車の走行制御装置であって、
前記エンジンの出力回転速度を検出するエンジン出力検出手段と、
前記一対の無段変速装置の夫々における出力速度を検出する一対の変速出力検出手段と、
前記一対の無段変速装置から前記一対の走行装置への伝動機構中に設けられた副変速装置の変速状態を検出する変速状態検出手段とが備えられ、
前記制御手段が、前記直進制御として、
前記エンジン出力検出手段並びに前記変速状態検出手段の検出情報に基づいて、前記一対の無段変速装置にて変速可能な上限車速を求める上限車速設定処理、前記車速指令手段が停止指令位置に操作されると停止状態になり、前記車速指令手段が停止指令位置から移動操作されると、その移動操作量が大きくなるに伴って高速側に変化し、且つ、所定操作範囲の上限値が指令されたときに前記上限車速となるように、指令位置に対応する目標出力速度を設定する目標出力設定処理、及び、
前記一対の変速出力検出手段にて検出される前記一対の無段変速装置の夫々における出力速度が前記目標出力速度になるように、前記一対のアクチュエータを作動させる出力調整処理の夫々を実行するように構成されていることを特徴とする。
【0032】
すなわち、旋回指令手段にて直進が指令されて制御手段が直進制御を実行するときは、制御手段は、先ず前記上限車速設定処理を実行する。つまり、前記エンジン出力検出手段にて検出されるエンジンの出力回転速度の検出情報に基づいて、前記一対の無段変速装置にて変速可能な上限車速を求める。エンジンの出力回転速度が変更調整されると、一対の無段変速装置にて変速可能な上限車速は変化するので、そのときのエンジンの出力回転速度を実際に検出して、前記上限車速を演算にて求めるのである。
【0033】
そして、制御手段は、前記目標車速設定処理を実行する。つまり、車速指令手段が停止指令位置から移動操作されると、その移動操作量が大きくなるに伴って高速側に変化し、且つ、所定操作範囲の上限値が指令されたときに前記上限車速となるように、指令位置に対応する車体の目標走行速度を設定する。説明を加えると、車速指令手段が所定操作範囲の停止指令位置から上限値までの全範囲にわたる移動操作によって、車体の目標走行速度が、零速から、エンジンの出力回転速度に応じて定まる一対の無段変速装置にて変速可能な上限車速にまで変更調整させることができるように対応付けた状態で、車速指令手段の指令位置から目標走行速度が設定されることになる。
【0034】
制御手段は、前記目標車速設定処理を実行した後に出力調整処理を実行する。つまり、一対の変速出力検出手段にて検出される一対の無段変速装置の夫々における出力速度が前記目標走行速度になるように、一対のアクチュエータを作動させるのである。この出力調整処理を実行することにより、左右の走行装置の走行速度を同じ又はほぼ同じ値にして直進状態を維持できる。
【0035】
このようにして前記上限車速設定処理及び前記目標車速設定処理の夫々を実行することにより、車速指令手段により所定操作範囲の上限値が指令されたときは、常に、一対の無段変速装置にて変速可能な上限車速が目標走行速度として指令されることになり、所定操作範囲のうちの設定速度よりも高速側の範囲において車速指令手段を移動操作しても走行速度が変化しないといった不利がなく、所定操作範囲の全領域を有効に利用して車速指令手段を操作することで車速指令操作を良好に行うことが可能となる。しかも、前記出力調整処理を実行することで、左右の走行装置の走行速度を同じ又はほぼ同じ値にして直進状態を維持することができる。
【0036】
従って、エンジンの出力回転速度が変更設定されることがあっても、従来のように、車速指令手段を高速側に移動操作しているにもかかわらず車体の走行速度が増速しないものとなって作業者が操作しにくいものと感じたり、変速系の故障であると誤って認識するといった不利がなく、車速指令操作を良好に行うことが可能であり、しかも、車体が斜行せずに良好に直進走行することが可能となる作業車の走行制御装置を提供できるに至った。
【0037】
請求項8記載の作業車の走行制御装置は、エンジンの動力にて駆動される左右一対の走行装置の走行速度を各別に無段階に変速する一対の無段変速装置と、
その一対の無段変速装置を各別に変速操作する一対のアクチュエータと、
走行停止を指令する停止指令位置を含む所定操作範囲内で移動操作自在で、且つ、停止指令位置からの移動操作量が大きくなるほど高速を指令する車速指令手段と、
旋回を指令する旋回指令手段と、
前記車速指令手段にて指令される車速指令情報に対応する速度で車体を直進走行させるべく前記一対のアクチュエータを作動させる直進制御、及び、前記旋回指令手段にて指令された旋回を行うべく前記一対のアクチュエータを作動させる旋回制御を実行する制御手段とが備えられている作業車の走行制御装置であって、
前記一対の無段変速装置の夫々における変速用の被操作体の変速位置を各別に検出する一対の変速位置検出手段と、
前記一対の無段変速装置の出力速度を各別に検出する一対の変速出力検出手段とが備えられ、
前記制御手段が、前記直進制御として、
前記車速指令手段が停止指令位置に操作されると停止用変速位置になり、前記車速指令手段が停止指令位置から移動操作されると、その移動操作量が大きくなるに伴って高速側に変化し、且つ、所定操作範囲の上限値が指令されたときに上限変速位置となるように、指令位置に対応する前記被操作体の目標変速位置を設定する目標変速位置設定処理、及び、
前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置を主変速側とし、他方の無段変速装置を追従側として設定し、主変速側の無段変速装置の前記被操作体の変速位置が前記目標変速位置に近づくように、その無段変速装置に対応する前記アクチュエータを作動させるとともに、その主変速側の無段変速装置の出力速度を追従用目標速度として、追従側の無段変速装置の出力速度が前記追従用目標速度になるように、前記変速出力検出手段の検出情報に基づいて、その追従側の無段変速装置に対応する前記アクチュエータを作動させる変速作動処理の夫々を常に実行するよう構成されていることを特徴とする。
【0038】
すなわち、旋回指令手段にて直進が指令されて制御手段が直進制御を実行するときは、制御手段は、前記目標変速位置設定処理及び変速作動処理の夫々を常に実行することになる。
前記目標変速位置設定処理について説明すると、車速指令手段が停止指令位置から移動操作されると、その移動操作量が大きくなるに伴って高速側に変化し、且つ、所定操作範囲の上限値が指令されたときに上限変速位置となるように、指令位置に対応する一対の被操作体の目標変速位置を設定する。換言すると、車速指令手段の所定操作範囲の全範囲にわたる移動操作と、一対の被操作体の全操作範囲にわたる変速操作とを対応付けた状態で、車速指令手段の指令位置から一対の被操作体の目標変速位置が設定されることになる。
【0039】
次に、変速作動処理について説明する。
つまり、一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置を主変速側とし、他方の無段変速装置を追従側として設定する。このとき、一旦設定した後はその設定状態を作業終了まで維持させるようにしたり、あるいは、作業状況に応じて適宜変更させるようにしてもよく、いずれか一方の無段変速装置が常に主変速側として設定され、他方側が追従側として設定されるものであればよい。そして、主変速側の無段変速装置の被操作体の変速位置が前記目標変速位置に近づくようにその無段変速装置に対応するアクチュエータを作動させ、一方、その主変速側の無段変速装置の出力速度を追従用目標速度として、追従側の無段変速装置の出力速度がその追従用目標速度になるように、その追従側の無段変速装置に対応するアクチュエータを作動させるのである。その結果、左右の走行装置の走行速度を同じ又はほぼ同じ値にすることができ、直進状態を維持できるのである。
【0040】
このようにして、制御手段は、前記目標変速位置設定処理及び変速作動処理の夫々を常に実行することにより、エンジンの出力回転速度の変化にかかわらず、車速指令手段により所定操作範囲の上限値が指令されたときには、その出力回転速度に応じて変速調整可能な車速の最大値に対応するものとなるので、所定操作範囲のうちの設定速度よりも高速側の範囲において車速指令手段を移動操作しても走行速度が変化しないといった不利がなく、所定操作範囲の全領域を有効に利用して車速指令手段を操作することで車速指令操作を良好に行うことが可能となり、しかも、左右の走行装置の走行速度を同じ又はほぼ同じ値にして直進状態を維持することができる。
【0041】
従って、エンジンの出力回転速度が変更設定されることがあっても、従来のように、車速指令手段を高速側に移動操作しているにもかかわらず車体の走行速度が増速しないものとなって作業者が操作しにくいものと感じたり、変速系の故障であると誤って認識するといった不利がなく、車速指令操作を良好に行うことが可能であり、しかも、車体が斜行せずに良好に直進走行することが可能となる作業車の走行制御装置を提供できるに至った。
【0042】
請求項9記載の作業車の走行制御装置は、請求項1〜8において、前記一対の無段変速装置の夫々が、静油圧式無段変速装置にて構成されていることを特徴とする。
【0043】
前記無段変速装置として、例えばベルト式無段変速装置等を使用する場合には、走行方向を前進と後進とに切り換えるための前後進切換機構等を別途設ける必要があり、例えば、旋回走行中に片側の無段変速装置を前進走行状態から後進走行状態に切り換えるような場合には、無段変速装置の変速操作とは別に前後進切換機構の切り換え操作等も同時に行う必要があり、前後進切り換え時に変速ショックが発生するおそれもあるが、一対の静油圧式無段変速装置にて構成されると、左右一対の走行装置夫々を、各別に、前進方向並びに後進方向の夫々に対して走行速度を無段階に変速することができ、旋回時における前後進切り換え操作等を極力滑らかに行うことが可能となり、請求項1〜8のいずれかを実施するのに好適な手段が得られる。
【0044】
【発明の実施の形態】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る作業車の走行制御装置の第1実施形態を、作業車の一例としてのコンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
【0045】
図1に作業車の一例であるコンバインの全体側面が示されており、このコンバインは、走行装置の一例である左右一対のクローラ式走行装置1R、1Lの駆動で走行する走行機体2の前部に、植立穀稈を刈り取って後方に向けて搬送する刈取搬送装置3を昇降可能に連結し、走行機体2に、刈取搬送装置3からの刈取穀稈を受け取って脱穀・選別処理を施す脱穀装置4と、脱穀装置4からの穀粒を貯留する穀粒タンク5とを搭載するとともに、穀粒タンク5の前方箇所に搭乗運転部6を形成することによって構成されている。
【0046】
図2〜4に示すように、このコンバインは、エンジン7からの動力を、ベルトテンション式の主クラッチ8を介してミッションケース9の入力軸10に伝達し、この入力軸10から走行用の一対の無段変速装置11R、11Lに分配伝達し、走行用の一方の無段変速装置11Lによる変速後の動力を左側のギヤ式の副変速装置13Lを介して左側のクローラ式走行装置1Lに伝達し、走行用の他方の無段変速装置11Rによる変速後の動力を、右側のギヤ式の副変速装置13Rを介して右側のクローラ式走行装置1Rに伝達するようにして走行駆動用の伝動機構を構成している。一方、エンジン7からの動力が作業用の無段変速装置12にも供給され、その作業用の無段変速装置12による変速後の動力を、ベルトテンション式の刈取クラッチ14を介して刈取搬送装置3に伝達するようにして刈取作業用の伝動機構を構成している。左右のギヤ式の副変速装置13R、13Lは、前記各無段変速装置11R、11Lの変速後の動力を高低2段に切り換え自在に構成されている。 又、搭乗運転部6には、前後方向に揺動操作可能な単一の副変速レバー25が設けられ、この副変速レバー25は、図示しない連係機構を介してギヤ式副変速機構13R、13Lに連係されており、副変速レバー25の操作によって、走行用の各無段変速装置11R、11Lによる変速後の動力を高低2段に変速できるようになっている。
【0047】
図4に示すように、ミッションケース9は、左右に分離可能な2分割構造で、左右のギヤ式の副変速装置13R、13Lなどを内装するとともに、その左側の側壁17の一部が外方に向けて膨出することによって、走行用の各無段変速装置11R、11Lと作業用の無段変速装置12とを収納する凹部18を有するように形成されている。
走行用の各無段変速装置11R、11Lは、アキシャルプランジャ形式で可変容量型のピストンポンプ19とピストンモータ20とを夫々備えて静油圧式無段変速装置として構成され、作業用の無段変速装置12も同様に、アキシャルプランジャ形式で可変容量型のピストンポンプ21とピストンモータ22とを備えて静油圧式無段変速装置として構成され、左右のクローラ式走行装置1R、1L夫々の走行方向を前進方向並びに後進方向に切り換え且つ走行速度を無段階に変速することができる構成となっている。
又、前記ピストンポンプ19とそれに対応する前記ピストンモータ20とを接続する油路、及び、前記ピストンポンプ21とピストンモータ22とを接続する油路の夫々が形成されたポートブロック23を左側の側壁17に連結して凹部18を閉塞する構成となっている。
【0048】
つまり、ミッションケース9の側壁17を各無段変速装置11R、11L、12のケーシングに有効利用することから、部品点数や製造コストの削減を図れるようになり、又、側壁17の凹部18を利用して各無段変速装置11R、11L、12を構成することで、各無段変速装置11R、11L、12がミッションケース9の内方に大きく入り込むようになって、それらの配設に要する空間が小さくなることから、コンバイン全体としての小型化を図れるようになっている。
尚、図2は展開した状態でのコンバイン全体の伝動構造を示す系統図であり、図3はミッションケース9内部に配備された複数の伝動軸の配置構成を示す縦断側面図であり、図4はミッションケース9内部に配備された伝動機構を示す縦断背面図である。
【0049】
そして、図5に示すように、走行用の各無段変速装置11R、11Lを各別に変速操作する油圧式の走行用操作機構30と、作業用の無段変速装置12を変速操作する油圧式の作業用操作機構36とが夫々備えられている。 前記走行用操作機構30は、走行用の各無段変速装置11R、11Lの夫々におけるトラニオン軸29(被操作体の一例)に連動連結された一対の複動型の油圧シリンダ33R、33L(アクチュエータの一例)と、これらの各油圧シリンダ33R、33Lに対する正逆方向夫々の操作に対応する一対の油室に作動油を供給する状態と供給を停止する状態とに切り換え自在な一対の2位置切換式の給油用電磁弁34Aと、前記一対の油室から作動油を排出する状態と排出を停止する状態とに切り換え自在な一対の2位置切換式の排油用電磁弁34Bとを備えて構成されている。前記各油圧シリンダ33R、33Lは、内装されるバネの付勢力により中立位置に復帰付勢される構成となっている。
【0050】
前記作業用操作機構36も同様に、作業用の無段変速装置12におけるトラニオン軸37に連動連結されるとともに、内装されるバネの付勢力により中立位置に復帰付勢される構成の複動型の油圧シリンダ40と、この油圧シリンダ40に対する正逆方向夫々の操作に対応する一対の油室に作動油を供給する状態と供給を停止する状態とに切り換え自在な一対の2位置切換式の給油用電磁弁41Aと、前記一対の油室から作動油を排出する状態と排出を停止する状態とに切り換え自在な一対の2位置切換式の排油用電磁弁41Bとを備えて構成されている。
【0051】
前記各給油用電磁弁34A、41Aは、バネの付勢力によってスプールを給油停止状態に移動付勢する構成となっており、ソレノイドによる電磁力によってバネの付勢力に抗してスプールを移動操作して作動油を供給する状態に切り換える構成となっており、又、前記各排油用電磁弁34B、41Bは、バネの付勢力によってスプールを排出状態に移動付勢される構成となっており、ソレノイドによる電磁力によってバネの付勢力に抗してスプールを移動操作して作動油の排出を停止する状態に切り換わる構成となっている。
【0052】
上記したような無段変速装置11R、11Lの変速動作について説明を加えると、例えば図6に示すように、トラニオン軸29の変速位置が停止用変速位置としての中立位置にあれば変速出力(走行速度)は零となり、トラニオン軸29の変速位置がその中立位置から所定方向に回動操作されると前進方向への走行速度が無段階に増速操作され、トラニオン軸29が中立位置から所定方向と反対方向に回動操作されると後進方向への走行速度が無段階に増速操作される構成となっている。
【0053】
搭乗運転部6には、前後方向に沿って所定の前後操作範囲にわたり揺動操作可能な車速指令手段としての単一の主変速レバー24、及び、左右方向に沿って所定の左右操作範囲にわたり揺動操作可能な旋回指令手段としての単一の旋回レバー26などが装備されている。そして、図5に示すように、主変速レバー24の操作位置を検出する変速レバーセンサ27と、旋回レバー26の操作位置を検出する操作位置検出手段としての旋回レバーセンサ28とが夫々設けられ、それらは共に回転式のポテンショメータにて構成されている。
【0054】
前記旋回レバー26は、左右操作範囲の略中間に位置する直進指令位置に操作されると、左右のクローラ走行装置1R、1Lが同速度で駆動される直進走行状態となり、この直進指令位置から左右いずれかの方向に位置する旋回指令範囲に揺動操作すると、前記旋回指令範囲のうちの前記直進指令位置から離れる側に操作されるほど旋回半径が小さくなるように旋回走行を指令する構成となっている。
【0055】
又、走行用の一対の無段変速装置11R、11Lには、それらの出力回転速度を各別に検出する変速出力検出手段としての回転速度センサ44、45と、夫々の無段変速装置11R、11Lの変速位置、すなわち、一対の油圧シリンダ33R、33Lによる夫々のトラニオン軸29の操作角度を検出する変速位置検出手段としての変速位置センサ46、47とが夫々備えられている。
【0056】
そして、前記油圧シリンダ33R、33L、40の動作を制御する制御手段としてのマイクロコンピュータ利用の制御装置31が備えられ、この制御装置31は、車速指令手段にて指令される車速指令情報に対応する速度で車体を直進走行させるべく一対の油圧シリンダ33R、33Lを作動させる直進制御、及び、旋回指令手段にて指令された旋回を行うべく前記一対の油圧シリンダ33R、33Lを作動させる旋回制御を夫々実行する構成となっている。
【0057】
詳述すると、旋回レバー26が直進指令位置に操作されて直進が指令されている状態で、主変速レバー24が操作可能範囲のほぼ中間に位置する中立位置に操作されると走行停止状態となり、中立位置から前進側へ揺動操作されるとそれに伴って前進側への走行速度が無段階で増速され、中立位置から後進側へ操作されるとそれに伴って後進側への走行速度が無段階で増速されるように、一対の油圧シリンダ33R、33Lの作動を制御する構成となっており、主変速レバー24が所定位置で固定されると、その位置にて指令される目標走行速度で車体が直進走行するように、一対の油圧シリンダ33R、33Lの作動を制御する直進制御を実行するのである。
【0058】
又、制御装置31は、主変速レバー24が操作されて所定速度で走行しているときに、旋回レバー26が直進指令位置から左右いずれかの旋回指令範囲に揺動操作されると、前記直進指令位置から離れる側に操作されるほど旋回半径が小さくなる旋回状態となるように、走行用の各油圧シリンダ33R、33Lの作動を制御する旋回制御を実行する。
【0059】
次に、制御装置31による旋回制御の具体的な制御動作について説明する。
この旋回制御においては、旋回レバー26が、旋回指令範囲のうちの直進指令位置から離れる側に操作されるほど旋回半径を小さくする旋回状態となるように制御が実行されるが、その旋回操作を行うときの旋回レバー26の前記旋回指令範囲での操作位置と目標とする旋回状態との関係を、基本的には3種類の異なる旋回モードに切り換えることができる構成となっている。
【0060】
詳述すると、上記したような旋回モードを、緩旋回モード、信地旋回モード、超信地旋回モードの3つ旋回モードに切り換えるための3接点式のモード切換スイッチ42が設けられており、このモード切換スイッチ42による切換指令が制御装置に与えられて、制御装置31は、その切換指令に基づいて、次のように旋回モードを切り換えるように構成されている。
すなわち、緩旋回モードにおいては、旋回側のクローラ走行装置の走行速度が、反対側のクローラ走行装置の走行速度より減速させることで車体を旋回させる旋回状態となり、この旋回状態では、旋回側の走行装置の走行速度を他方の走行装置の走行速度より減速させるときの減速量を、旋回レバー26が直進指令位置から離れるほど大きくする形態に設定してある。そして、旋回レバー26を旋回側の最大操作位置にまで操作したときに、旋回側のクローラ走行装置の走行速度が、反対側のクローラ走行装置の走行速度の約1/3の速度にまで減速される旋回状態となる。
【0061】
具体的に説明すると、図8のラインL1に示すように、旋回側とは反対側のクローラ走行装置の走行速度が主変速レバー24にて指令された目標走行速度で一定に維持されるのに対して、ラインL2に示すように、旋回レバー26の操作位置が直進指令位置から旋回側に離れるほど、旋回側のクローラ走行装置の走行速度が徐々に減速され、旋回レバー26が最大操作位置にまで操作されると、反対側のクローラ走行装置の走行速度Vの約1/3の速度にまで減速されるように、旋回レバー26の操作位置に対する、左右のクローラ走行装置1R、1Lの速度比率の変化特性が予め設定されている。そして、この速度比率の特性と、そのときの旋回側とは反対側のクローラ走行装置に対する無段変速装置のトラニオン軸の変速位置の検出値とから、旋回レバー26の操作位置に対応する速度比率になるように、旋回側のクローラ走行装置に対する無段変速装置のトラニオン軸の目標変速位置を定めて、変速位置センサにて検出されるトラニオン軸の変速位置が前記目標変速位置になるように、対応する油圧シリンダ33を制御するのである。
【0062】
次に、信地旋回モードにおいては、旋回側のクローラ走行装置の走行速度が、反対側のクローラ走行装置の走行速度より減速させることで車体を旋回させ、しかも、旋回側のクローラ走行装置の走行速度を他方のクローラ走行装置の走行速度より減速させるときの減速量を、旋回レバー26が直進指令位置から離れるほど大きくする形態に設定してある点では、緩旋回モードと同じであるが、この信地旋回モードでは、旋回レバー26が最大操作位置にまで操作されると、旋回側のクローラ走行装置の走行速度が零となり、走行を停止する状態になる。しかも、このとき、図示しない制動機構によって旋回側のクローラ走行装置が制動するように構成されている。
【0063】
具体的に説明すると、図8のラインL3に示すように、旋回レバー26の操作位置が直進指令位置から旋回側に離れるほど、旋回側のクローラ走行装置の走行速度が徐々に減速され、旋回レバー26が最大操作位置にまで操作されると、旋回側のクローラ走行装置の走行速度が零となるまで減速されるように、旋回レバー26の操作位置に対する、左右のクローラ走行装置1R、1Lの速度比率が予め設定されている。そして、この速度比率の特性と、そのときの旋回側とは反対側のクローラ走行装置に対する無段変速装置のトラニオン軸の変速位置の検出値とから、旋回レバー26の操作位置に対応する速度比率になるように、旋回側のクローラ走行装置に対する無段変速装置のトラニオン軸の目標変速位置を定めて、変速位置センサにて検出されるトラニオン軸の変速位置が前記目標変速位置になるように、対応する油圧シリンダ33を制御するのである。
【0064】
又、超信地旋回モードにおいては、旋回側のクローラ走行装置の走行速度を他方のクローラ走行装置の走行速度より減速させるときの減速量を、旋回レバー26が直進指令位置から離れるほど大きくする形態に設定して、旋回側のクローラ走行装置の走行速度を反対側のクローラ走行装置の走行速度より減速させることで車体を旋回させる旋回状態、及び、旋回側のクローラ走行装置の走行速度が零になるまで減速されて走行を停止する旋回状態に切り換わる点は、信地旋回モードと同じであるが、この超信地旋回モードでは、旋回側の走行装置を他方の走行装置の走行方向とは逆方向に走行させる旋回状態にも切り換わる構成となっており、より小さい旋回半径で旋回させることができるようになっている。
【0065】
具体的に説明すると、図8のラインL4に示すように、前記第1旋回状態においては、旋回レバー26の操作位置が直進指令位置から旋回側に離れるほど、旋回側のクローラ走行装置の走行速度が徐々に減速され、旋回レバー26が途中の所定操作位置にまで操作されると第2旋回状態となって旋回側のクローラ走行装置の走行速度が零となり、しかも、旋回レバー26がその所定操作位置よりも更に旋回側に操作されると第3旋回状態に切り換わり、旋回側のクローラ走行装置を他方のクローラ走行装置の走行方向とは逆方向に走行させるときの走行速度を、前記旋回レバー26が前記直進指令位置から離れるほど大きくする形態となるように、旋回レバー26の操作位置に対する、左右のクローラ走行装置の速度比率が予め設定されている。
【0066】
そして、この速度比率の特性と、そのときの旋回側とは反対側のクローラ走行装置に対する無段変速装置のトラニオン軸の変速位置の検出値とから、旋回レバー26の操作位置に対応する速度比率になるように、旋回側のクローラ走行装置に対する無段変速装置のトラニオン軸の目標変速位置を定めて、変速位置センサにて検出されるトラニオン軸の変速位置が前記目標変速位置になるように、対応する油圧シリンダ33を制御するのである。
【0067】
つまり、モード切換スイッチ42の切り換え操作に基づく制御装置31の制御作動で、旋回モードを、所望の旋回状態の現出が可能な旋回モードに切り換えることができるようになっている。又、いずれの旋回状態においても、旋回側とは反対側のクローラ式走行装置1の駆動速度を主変速レバー24にて指令された目標走行速度に維持する状態で一定とし、旋回側のクローラ式走行装置1の駆動速度を上記したように変更させることにより機体を滑らかに旋回させることができるようになっている。
【0068】
次に、前記直進制御について説明する。
制御装置31は、前記直進制御として、次の各処理を実行するよう構成されている。
つまり、主変速レバー24が中立位置(停止指令位置)に操作されると停止用変速位置としての中立位置になり、主変速レバー24が中立位置から移動操作されると、その移動操作量が大きくなるに伴って高速側に変化し、且つ、所定操作範囲の上限値が指令されたときに上限変速位置となるように、指令位置に対応する左右一対のトラニオン軸29の目標変速位置を設定する目標変速位置設定処理、
一対の変速位置センサ46、47にて検出される一対のトラニオン軸29、29の変速位置夫々が目標変速位置になるように、一対の油圧シリンダ33R、33Lを作動させる変速位置調整処理、及び、
その変速位置調整処理の実行により、前記一対の無段変速装置11R、11Lの少なくともいずれか一方の無段変速装置におけるトラニオン軸29の変速位置が前記目標変速位置との関連で定めた制御状態切換用位置になると、前記一対の無段変速装置11R、11Lの出力速度が同期用目標速度になるように、前記一対の回転速度センサ44、45の検出情報に基づいて前記一対の油圧シリンダ33R、33Lを作動させる速度同期処理の夫々を実行するよう構成されている。尚、この実施形態では、前記制御状態切換用位置が前記目標変速位置に定められる構成となっている。
【0069】
又、前記速度同期処理として、前記一対の無段変速装置11R、11Lのいずれか一方の無段変速装置を基準側の無段変速装置として定めて、その基準側の無段変速装置におけるトラニオン軸29の変速位置をその位置に保持させるように、その無段変速装置に対応する油圧シリンダ(33R又は33L)を作動させ、且つ、その基準側の無段変速装置における出力速度を回転速度センサ(44又は45)にて検出して前記同期用目標速度として設定し、他方の無段変速装置の出力速度が前記同期用目標速度になるように、回転速度センサ(44又は45)の検出情報に基づいて他方の無段変速装置に対応する油圧シリンダ(33R又は33L)を作動させるように構成されている。
【0070】
更に、この速度同期処理において、前記変速位置調整処理の実行により、前記一対の無段変速装置11R、11Lのいずれか一方の無段変速装置におけるトラニオン軸29の変速位置が前記制御状態切換用位置になると、一対の無段変速装置のうちトラニオン軸29の変速位置が停止用変速位置としての中立位置から遠い側に位置する無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定めるよう構成されている。
【0071】
具体的に説明すると、図7に示すように、直進走行状態における、主変速レバー24の操作位置に対する、左右の走行用の各無段変速装置11R、11Lのトラニオン軸29、29の目標変速位置が予め設定されて記憶されている。
そして、制御装置31は、図9に示すように、変速レバーセンサ27にて検出される主変速レバー24の操作位置の検出結果に基づいて、そのときの目標変速位置を設定する(ステップ1、2)。これが目標変速位置設定処理に対応する。ここで、図6及び図7より明らかなように、主変速レバー24が中立位置に操作されると変速出力が零となり、中立位置から移動操作されると、その移動操作量が大きくなるに伴って高速側に変化し、且つ、所定操作範囲の上限値が指令されたときに上限変速位置となるようにトラニオン軸29、29の目標変速位置が設定されることになる。
【0072】
次に、変速位置センサ46、47にて検出される各トラニオン軸29、29の変速位置が前記目標変速位置になるように、前記各電磁弁34A、34Bの作動を制御して走行用の各油圧シリンダ33R、33Lを作動させる変速操作を実行する(ステップ3)。つまり、変速位置の検出情報に基づく位置フィードバック制御を実行するのである。このときの変速操作が変速位置調整処理に対応する。従って、主変速レバー24が中立位置から前進側に操作されると、その中立位置からの操作量が大きくなるほど高速になる状態で前進方向での直進走行が行われ、主変速レバー24が後進側に操作されると、その中立位置からの操作量が大きくなるほど高速になる状態で後進方向での直進走行が行われ、主変速レバー24の操作に基づく制御装置31の制御作動で、前後進の切り換えと無段階の変速操作とを行うことができ、もって、所望の速度での前方直進状態や後方直進状態を容易に現出できるようになっている。
【0073】
上記したような変速位置調整処理の実行により、左右の無段変速装置11R、11Lのうちいずれか無段変速装置のトラニオン軸29の変速位置が、前記制御状態切換用位置としての目標変速位置に至ると、言い換えると、目標変速位置に対して予め設定されている制御不感帯内に収まると、そのときに左右の無段変速装置のうちトラニオン軸29の変速位置が前記中立位置から遠い側に位置する無段変速装置を、基準側の無段変速装置として定めて、その基準側の無段変速装置における出力速度を回転速度センサ(44又は45)により検出して前記同期用目標速度としての目標回転速度に設定する(ステップ5,6)
【0074】
そして、その基準側の無段変速装置におけるトラニオン軸29の変速位置をその位置に保持させるように、その無段変速装置に対応する油圧シリンダを作動させておき、他方の無段変速装置の出力速度が前記目標回転速度になるように、前記回転速度センサ(44又は45)の検出情報に基づいて他方の無段変速装置に対応する油圧シリンダを作動させる変速操作を実行する(ステップ7、8)。すなわち、無段変速装置の出力速度の検出結果に基づく速度フィードバック制御を実行するのである。このような処理が速度同期処理に対応する。
【0075】
前記速度同期処理が主変速レバー24の指令位置が変更するまで行われ、主変速レバー24の指令位置が変更すると、ステップ1に戻り、再度、前記目標変速位置設定処理、及び、変速位置調整処理を実行した後に、前記速度同期処理を実行することになる。
【0076】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る作業車の旋回制御装置の第2実施形態について説明する。この実施形態は、前記制御装置による直進制御において、速度同期処理を実行するための構成以外の他の構成については、上記第1実施形態と同じであるから、第1実施形態と異なる構成についてのみ説明し、同じ構成については説明は省略する。
【0077】
上記第1実施形態では、前記速度同期処理において、常に、前記一対の無段変速装置11R、11Lのうちトラニオン軸29の変速位置が停止用変速位置(中立位置)から遠い側に位置する無段変速装置を基準側の無段変速装置として定めるよう構成するものを例示したが、このような構成に代えて、次のように構成する。
つまり、前記制御手段としての制御装置が、前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が前記制御状態切換用位置になったときに、前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が設定位置よりも低速側に位置しているときは、一対の無段変速装置のうち前記被操作体の変速位置が前記停止用変速位置から遠い側に位置する無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定め、前記一対の無段変速装置夫々の被操作体の変速位置が共に前記設定位置よりも高速側に位置しているときは、前記一対の無段変速装置のうち前記被操作体の変速位置が前記停止用変速位置から近い側に位置する無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定める構成である。
【0078】
具体的に説明すると、前記制御装置31が、前記一対の無段変速装置11R、11Lのいずれか一方の無段変速装置におけるトラニオン軸29の変速位置が前記制御状態切換用位置になったときに、前記一対の無段変速装置11R、11Lのいずれか一方の無段変速装置におけるトラニオン軸29の変速位置が設定位置よりも低速側に位置しているときは、一対の無段変速装置のうちトラニオン軸29の変速位置が停止用変速位置(中立位置)から遠い側に位置する無段変速装置を基準側の無段変速装置として定める。又、前記一対の無段変速装置11R、11L夫々のトラニオン軸29の変速位置が共に前記設定位置よりも高速側に位置しているときは、一対の無段変速装置のうちトラニオン軸29の変速位置が前記停止用変速位置(中立位置)に近い側に位置する無段変速装置を基準側の無段変速装置として定めることになる。
【0079】
〔第3実施形態〕
次に、本発明に係る作業車の旋回制御装置の第3実施形態について説明する。この実施形態は、前記制御装置による直進制御において、速度同期処理を実行するための構成以外の他の構成については、上記第1実施形態と同じであるから、第1実施形態と異なる構成についてのみ説明し、同じ構成については説明は省略する。
【0080】
上記第1実施形態では、前記速度同期処理において、常に、前記一対の無段変速装置11R、11Lのうちトラニオン軸29の変速位置が停止用変速位置(中立位置)から遠い側に位置する無段変速装置を基準側の無段変速装置として定めるよう構成するものを例示したが、このような構成に代えて、次のように構成する。
つまり、前記制御手段としての制御装置が、前記変速位置調整処理の実行により、前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が前記制御状態切換用位置になると、その無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定める構成である。
【0081】
具体的に説明すると、前記制御装置31が、前記変速位置調整処理の実行により、前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置におけるトラニオン軸29の変速位置が前記制御状態切換用位置になったときに、そのトラニオン軸29の変速位置が前記制御状態切換用位置になった方の無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定めるのである。
【0082】
〔第4実施形態〕
次に、本発明に係る作業車の旋回制御装置の第4実施形態について説明する。この実施形態は、前記制御装置による直進制御において速度同期処理を実行するための構成以外の他の構成については、上記第1実施形態と同じであるから、第1実施形態と異なる構成についてのみ説明し、同じ構成については説明は省略する。
【0083】
上記第1実施形態では、前記速度同期処理として、基準側の無段変速装置におけるトラニオン軸の変速位置をその位置に保持させるように、その無段変速装置に対応する油圧シリンダを作動させ、且つ、その基準側の無段変速装置における出力速度を同期用目標速度として設定して、他方の無段変速装置の出力速度が前記同期用目標速度になるように、回転速度センサの検出情報に基づいて他方の無段変速装置に対応する油圧シリンダを作動させる構成としたが、この第4実施形態では、一方の無段変速装置を速度を維持して他方側のみ速度フィードバック制御するのではなく、左右一対の無段変速装置を共に速度フィードバック制御する構成とするのである。
【0084】
つまり、前記速度同期処理、具体的には第1実施形態における図9の制御フローチャートのステップ7において、次のように制御を実行する。
基準側の無段変速装置として設定した無段変速装置における出力速度を回転速度センサにて検出して、その検出値を目標回転速度として設定した後に、一対の回転速度センサ44、45の検出値が共に目標速度になるように、一対の油圧シリンダ33R、33Lを作動させるように制御する構成である。そして、このような速度同期処理は主変速レバー24の指令位置が変更するまで行われることになる。このように主変速レバー24の指令位置が変更するまで左右一対の無段変速装置を共に速度フィードバック制御する構成である。
【0085】
〔第5実施形態〕
次に、本発明に係る作業車の旋回制御装置の第5実施形態について説明する。この実施形態は、前記制御装置による直進制御を実行するための構成以外の他の構成については、上記第1実施形態と同じであるから、第1実施形態と異なる構成についてのみ説明し、同じ構成については説明は省略する。
【0086】
つまり、この実施形態では、前記制御装置が、前記直進制御として、上記第1実施形態における目標変速位置設定処理と同じ目標変速位置設定処理、及び、次のような変速作動処理の夫々を常に実行するよう構成されている。
前記変速作動処理について説明すると、前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置を主変速側とし、他方の無段変速装置を追従側として設定し、主変速側の無段変速装置の前記被操作体の変速位置が前記目標変速位置に近づくように、その無段変速装置に対応するアクチュエータ(油圧シリンダ)を作動させるとともに、その主変速側の無段変速装置の出力速度を追従用目標速度として、追従側の無段変速装置の出力速度が前記追従用目標速度になるように、前記変速出力検出手段(回転速度センサ)の検出情報に基づいて、その追従側の無段変速装置に対応するアクチュエータ(油圧シリンダ)を作動させる。
【0087】
説明を加えると、上記第1実施形態のように前記一対の被操作体の変速位置夫々が目標変速位置に近づくように制御を行うのではなく、主変速側として設定した無段変速装置は、常に、被操作体の変速位置が前記目標変速位置に近づくように制御(位置フィードバック制御)を行い、追従側の無段変速装置は、常に、出力速度が前記追従用目標速度になるように制御(速度フィードバック制御)を行う構成である。
具体的には、図10に示すように、上記第1実施形態における目標変速位置設定処理と同じ目標変速位置設定処理(ステップ11,12)を実行し、主変速側として設定した無段変速装置のみを被操作体の変速位置が前記目標変速位置に近づくように制御(位置フィードバック制御)を行い(ステップ13)、その主変速側として設定した無段変速装置の出力速度を検出して、その速度を前記追従用目標速度として設定し(ステップ14、15)、追従側の無段変速装置のみを出力速度が前記追従用目標速度になるように変速操作(速度フィードバック制御)する(ステップ16)。
【0088】
この実施形態において、左右の無段変速装置のうち主変速側として設定した無段変速装置は、刈取作業を開始してから作業が終了するまで常に一定にさせる構成としてもよいが、作業状況に応じて適宜変更させるようにしてもよい。
【0089】
〔第6実施形態〕
次に、本発明に係る作業車の旋回制御装置の第6実施形態について図面に基づいて説明する。
【0090】
図11に示すように、この実施形態では、上記第1実施形態における変速位置センサ46、47が設けられておらず、その代わりに、前記エンジンの出力回転速度を検出するエンジン出力検出手段としてのエンジン回転センサ50と、前記一対の無段変速装置から前記一対の走行装置への伝動機構中に設けられた副変速装置13R、13Lの変速状態を検出する変速状態検出手段としての副変速センサ51とが備えられている。副変速センサ51は副変速レバー25の操作状態に基づいて高速又は低速のうちのいずれであるかを検出する構成となっている。
【0091】
そして、制御装置31は、前記直進制御として、エンジン回転センサ50及び副変速センサ51の検出情報に基づいて、一対の無段変速装置11R、11Lにて変速可能な上限車速を求める上限車速設定処理、車速指令手段としての主変速レバー24が停止指令位置に操作されると停止状態になり、主変速レバー24が停止指令位置から移動操作されると、その移動操作量が大きくなるに伴って高速側に変化し、且つ、所定操作範囲の上限値が指令されたときに前記上限車速となるように、指令位置に対応する車体の目標走行速度を設定する目標車速設定処理、及び、一対の回転速度センサ44、45にて検出される一対の無段変速装置11R、11Lの夫々における出力速度が前記目標走行速度になるように、一対の油圧シリンダ33R、33Lを作動させる出力調整処理の夫々を実行するように構成されている。
【0092】
尚、詳述はしないが、前記回転速度センサ44、45は、発生するパルス信号の計数により一対の無段変速装置11R、11Lの出力回転速度の絶対値を検出することができるが、そのことに加えて、例えばパルス波形の位相差等によって無段変速装置の回転方向、つまり、前進方向であるか後進方向であるかについても検出可能に構成されている。
【0093】
制御装置31の具体的な制御動作について、図13に基づいて説明する。制御装置31は、先ず、エンジン回転センサ50の検出情報に基づいてエンジン7の出力回転速度を検出する(ステップ21)。そして、副変速センサ51の検出結果を参照して、その出力回転速度であるときの一対の無段変速装置11R、11Lにて変速可能な上限車速を演算にて求める(ステップ22)。つまり、そのときのエンジン7の出力回転速度から無段変速装置11R、11Lにて変速可能な上限車速を、予め設定されている機械的な特性から求めるのである。この処理が上限車速設定処理に対応する。
【0094】
このようにして上限車速が求められると、この上限車速に基づいて、図12に示すように、主変速レバー24が中立位置から移動操作されると、その移動操作量が大きくなるに伴って高速側に変化し、且つ、所定操作範囲の上限値が指令されたときに前記上限車速となるように、指令位置の変化に対して直線的に変化するように車体の目標走行速度の変化特性が定められる。このときエンジン出力が高速になるほど指令位置の変化に対する目標走行速度の変化率(図12の傾斜角)が大となり、エンジン出力が低速であれば指令位置の変化に対する目標速度の変化率は小となる。
【0095】
図12を参照しながら具体例に基づいて説明すると、エンジン7の出力回転速度が最も高い状態であれば、図12のラインL5にて示されるように目標走行速度の変化特性が設定され、所定操作範囲の前進側の上限値が指令されたときには上限車速V11が設定され、後進側の上限値が指令されたときには上限車速V12が設定される。又、エンジン7の出力回転速度が最も低い状態であれば、図12のラインL6にて示されるように目標走行速度の変化特性が設定され、所定操作範囲の前進側の上限値が指令されたときには上限車速V21が設定され、後進側の上限値が指令されたときには上限車速V22が設定される。そして、エンジン7の出力回転速度が中間値であれば、ラインL5とラインL6との間での中間的な特性が設定される。
【0096】
次に、主変速レバー24の操作位置を検出して、上述したようにして設定された変化特性と、主変速レバー24の操作位置の検出結果とに基づいて、そのときの目標走行速度を設定する(ステップ23、24)。この処理が目標車速設定処理に対応する。
【0097】
そして、左右一対の無段変速装置11R、11L夫々における回転速度センサ44、45の検出値が共に前記目標回転速度になるように、一対の油圧シリンダ33R、33Lを作動させる変速操作を実行する(ステップ25)。すなわち、出力回転速度の検出結果に基づくフィードバック制御を実行するのである。この変速操作が出力調整処理に対応する。
【0098】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態を列記する。
【0099】
(1)上記第1実施形態では、前記速度同期処理において、常に、前記一対の無段変速装置11R、11Lのうちトラニオン軸29の変速位置が停止用変速位置(中立位置)から遠い側に位置する無段変速装置を基準側の無段変速装置として定めるよう構成するものを例示したが、このような構成に代えて、次の(イ)、(ロ)に記載するような構成としてもよい。
【0100】
(イ)前記速度同期処理において、常に、前記一対の無段変速装置11R、11Lのうちトラニオン軸29の変速位置が停止用変速位置(中立位置)に近い側に位置する無段変速装置を基準側の無段変速装置として定めるよう構成する。
【0101】
(ロ)前記変速位置調整処理の実行により、前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置におけるトラニオン軸29の変速位置が前記制御状態切換用位置になったときに、そのトラニオン軸29の変速位置が前記制御状態切換用位置になった方の無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定めるよう構成する。
【0102】
(2)上記第1実施形態では、前記速度同期処理において、前記一対の無段変速装置11R、11Lのいずれか一方の無段変速装置におけるトラニオン軸29の変速位置が前記目標変速位置になったことを判別するようにしたが、このような構成に代えて、前記目標変速位置に対して設定量だけ移動方向作手前側の位置になったことを判別してもよく、一対の無段変速装置11R、11Lが共に目標変速位置になったことを判別してもよい。
【0103】
又、上記第1実施形態では、前記同期用目標速度として基準側の無段変速装置の出力速度を設定するようにしたが、このような構成に代えて、反対側の無段変速装置の出力速度を用いたり、一対の無段変速装置の出力速度の平均値を用いてもよく、又、そのときのエンジン回転速度と主変速レバーの操作位置の情報等に基づいて演算にて求めた目標速度を用いる等、各種の形態で実施することができる。
【0104】
(3)上記各実施形態では、アクチュエータとしての油圧シリンダを油圧制御するための構成として、複数の2位置切換式の電磁弁を設ける構成としたが、このような構成に限らず、次のような構成としてもよい。
例えば、図14に示すように、前記油圧シリンダ33Rに対する作動油の供給状態を切り換える3位置切り換え式の電磁切換弁52と、排油状態を切り換える2個の2位置切換式電磁切換弁53とで構成する等、各種の形態で実施することができる。尚、図14では油圧シリンダ33Rのみ示しているが、他方の油圧シリンダ33Lについても同様の構成である。
【0105】
(4)上記各実施形態では、無段変速装置のトラニオン軸を操作するアクチュエータとして、油圧シリンダを例示したが、アクチュエータとしては油圧モータや電動モータ等他のアクチュエータを用いてもよい。
【0106】
(5)上記各実施形態では、一対の無段変速装置として、静油圧式無段変速装置を用いたが、このような構成に代えて、例えば、ベルト式無段変速装置やテーパコーン型の無段変速装置と走行方向を前後で切り換えるための前後進切換機構とを組み合わせる構成としてもよい。
又、このような構成と合わせて、前記車速指令手段として、所定操作範囲の一端側が走行停止を指令する停止指令位置になり、所定操作範囲の他端側が高速側の上限値になるように構成するものでもよい。
【0107】
(6)上記各実施形態では、作業車としてコンバインを例示したが、本発明はコンバインに限らず、人参収穫機や大根収穫機など他の農作業車でもよく、又、農作業車に限らず建設機械等の作業車でもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】伝動構造を示す概略縦断背面図
【図3】伝動構造を示す概略縦断側面図
【図4】伝動構造を示す縦断背面図
【図5】操作構造の構成を示す概略図
【図6】変速位置と走行速度との関係を示す図
【図7】主変速レバー位置と目標変速位置との関係を示す図
【図8】旋回レバー位置と左右走行装置の速度比の関係を示す図
【図9】制御動作のフローチャート
【図10】第5実施形態の制御動作のフローチャート
【図11】第6実施形態の操作構造の構成を示す概略図
【図12】第6実施形態の主変速レバー位置と目標速度との関係を示す図
【図13】第6実施形態の制御動作のフローチャート
【図14】別実施形態の油圧回路図
【符号の説明】
1R、1L 走行装置
7 エンジン
11R、11L 無段変速装置
24 車速指令手段
26 旋回指令手段
29 被操作体
31 制御手段
33R、33L アクチュエータ
44、45 変速出力検出手段
46、47 変速位置検出手段
50 エンジン出力検出手段
51 変速状態検出手段

Claims (9)

  1. エンジンの動力にて駆動される左右一対の走行装置の走行速度を各別に無段階に変速する一対の無段変速装置と、
    その一対の無段変速装置を各別に変速操作する一対のアクチュエータと、
    走行停止を指令する停止指令位置を含む所定操作範囲内で移動操作自在で、且つ、停止指令位置からの移動操作量が大きくなるほど高速を指令する車速指令手段と、
    旋回を指令する旋回指令手段と、
    前記車速指令手段にて指令される車速指令情報に対応する速度で車体を直進走行させるべく前記一対のアクチュエータを作動させる直進制御、及び、前記旋回指令手段にて指令された旋回を行うべく前記一対のアクチュエータを作動させる旋回制御を実行する制御手段とが備えられている作業車の走行制御装置であって、
    前記一対の無段変速装置の夫々における変速用の被操作体の変速位置を各別に検出する一対の変速位置検出手段と、
    前記一対の無段変速装置の出力速度を各別に検出する一対の変速出力検出手段とが備えられ、
    前記制御手段が、前記直進制御として、
    前記車速指令手段が停止指令位置に操作されると停止用変速位置になり、前記車速指令手段が停止指令位置から移動操作されると、その移動操作量が大きくなるに伴って高速側に変化し、且つ、所定操作範囲の上限値が指令されたときに上限変速位置となるように、指令位置に対応する前記一対の被操作体の目標変速位置を設定する目標変速位置設定処理、
    前記一対の変速位置検出手段にて検出される前記一対の被操作体の変速位置夫々が前記目標変速位置に近づくように、前記一対のアクチュエータを作動させる変速位置調整処理、及び、
    その変速位置調整処理の実行により、前記一対の無段変速装置の少なくともいずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が前記目標変速位置との関連で定めた制御状態切換用位置としての、前記目標変速位置又は前記目標変速位置に対して設定量だけ手前側の位置になると、前記一対の無段変速装置の出力速度が同期用目標速度としての、いずれか一方の無段変速装置における出力速度又は前記一対の無段変速装置の出力速度を平均した出力速度になるように、前記一対の変速出力検出手段の検出情報に基づいて前記一対のアクチュエータを作動させる速度同期処理の夫々を実行するよう構成されている作業車の走行制御装置。
  2. 前記制御状態切換用位置が、前記目標変速位置に定められている請求項1記載の作業車の走行制御装置。
  3. 前記制御手段が、前記速度同期処理として、
    前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置を基準側の無段変速装置として定めて、その基準側の無段変速装置における前記被操作体の変速位置をその位置に保持させるように、その無段変速装置に対応する前記アクチュエータを作動させ、
    且つ、その基準側の無段変速装置における出力速度を前記同期用目標速度として設定して、他方の無段変速装置の出力速度が前記同期用目標速度になるように、前記変速出力検出手段の検出情報に基づいて前記他方の無段変速装置に対応する前記アクチュエータを作動させるように構成されている請求項1又は2記載の作業車の走行制御装置。
  4. 前記制御手段が、
    前記変速位置調整処理の実行により、前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が前記制御状態切換用位置になると、その無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定めるよう構成されている請求項3記載の作業車の走行制御装置。
  5. 前記制御手段が、
    前記変速位置調整処理の実行により、前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が前記制御状態切換用位置になると、一対の無段変速装置のうち前記被操作体の変速位置が前記停止用変速位置から遠い側に位置する無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定めるよう構成されている請求項3記載の作業車の走行制御装置。
  6. 前記制御手段が、
    前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が前記制御状態切換用位置になったときに、
    前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置における被操作体の変速位置が設定位置よりも低速側に位置しているときは、一対の無段変速装置のうち前記被操作体の変速位置が前記停止用変速位置から遠い側に位置する無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定め、
    前記一対の無段変速装置夫々の被操作体の変速位置が共に前記設定位置よりも高速側に位置しているときは、前記一対の無段変速装置のうち前記被操作体の変速位置が前記停止用変速位置から近い側に位置する無段変速装置を前記基準側の無段変速装置として定めるよう構成されている請求項5記載の作業車の走行制御装置。
  7. エンジンの動力にて駆動される左右一対の走行装置の走行速度を各別に無段階に変速する一対の無段変速装置と、
    その一対の無段変速装置を各別に変速操作する一対のアクチュエータと、
    走行停止を指令する停止指令位置を含む所定操作範囲内で移動操作自在で、且つ、停止指令位置からの移動操作量が大きくなるほど高速を指令する車速指令手段と、
    旋回を指令する旋回指令手段と、
    前記車速指令手段にて指令される車速指令情報に対応する速度で車体を直進走行させるべく前記一対のアクチュエータを作動させる直進制御、及び、前記旋回指令手段にて指令された旋回を行うべく前記一対のアクチュエータを作動させる旋回制御を実行する制御手段とが備えられている作業車の走行制御装置であって、
    前記エンジンの出力回転速度を検出するエンジン出力検出手段と、
    前記一対の無段変速装置の夫々における出力速度を検出する一対の変速出力検出手段と、
    前記一対の無段変速装置から前記一対の走行装置への伝動機構中に設けられた副変速装置の変速状態を検出する変速状態検出手段とが備えられ、
    前記制御手段が、前記直進制御として、
    前記エンジン出力検出手段並びに前記変速状態検出手段の検出情報に基づいて、前記一対の無段変速装置にて変速可能な上限車速を求める上限車速設定処理、前記車速指令手段が停止指令位置に操作されると停止状態になり、前記車速指令手段が停止指令位置から移動操作されると、その移動操作量が大きくなるに伴って高速側に変化し、且つ、所定操作範囲の上限値が指令されたときに前記上限車速となるように、指令位置に対応する目標出力速度を設定する目標出力設定処理、及び、
    前記一対の変速出力検出手段にて検出される前記一対の無段変速装置の夫々における出力速度が前記目標出力速度になるように、前記一対のアクチュエータを作動させる出力調整処理の夫々を実行するように構成されている作業車の走行制御装置。
  8. エンジンの動力にて駆動される左右一対の走行装置の走行速度を各別に無段階に変速する一対の無段変速装置と、
    その一対の無段変速装置を各別に変速操作する一対のアクチュエータと、
    走行停止を指令する停止指令位置を含む所定操作範囲内で移動操作自在で、且つ、停止指令位置からの移動操作量が大きくなるほど高速を指令する車速指令手段と、
    旋回を指令する旋回指令手段と、
    前記車速指令手段にて指令される車速指令情報に対応する速度で車体を直進走行させるべく前記一対のアクチュエータを作動させる直進制御、及び、前記旋回指令手段にて指令された旋回を行うべく前記一対のアクチュエータを作動させる旋回制御を実行する制御手段とが備えられている作業車の走行制御装置であって、
    前記一対の無段変速装置の夫々における変速用の被操作体の変速位置を各別に検出する一対の変速位置検出手段と、
    前記一対の無段変速装置の出力速度を各別に検出する一対の変速出力検出手段とが備えられ、
    前記制御手段が、前記直進制御として、
    前記車速指令手段が停止指令位置に操作されると停止用変速位置になり、前記車速指令手段が停止指令位置から移動操作されると、その移動操作量が大きくなるに伴って高速側に変化し、且つ、所定操作範囲の上限値が指令されたときに上限変速位置となるように、指令位置に対応する前記被操作体の目標変速位置を設定する目標変速位置設定処理、及び、
    前記一対の無段変速装置のいずれか一方の無段変速装置を主変速側とし、他方の無段変速装置を追従側として設定し、主変速側の無段変速装置の前記被操作体の変速位置が前記目標変速位置に近づくように、その無段変速装置に対応する前記アクチュエータを作動させるとともに、その主変速側の無段変速装置の出力速度を追従用目標速度として、追従側の無段変速装置の出力速度が前記追従用目標速度になるように、前記変速出力検出手段の検出情報に基づいて、その追従側の無段変速装置に対応する前記アクチュエータを作動させる変速作動処理の夫々を常に実行するよう構成されている作業車の走行制御装置。
  9. 前記一対の無段変速装置の夫々が、静油圧式無段変速装置にて構成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の作業車の走行制御装置。
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