JP3786590B2 - 圧電共振子及び圧電共振装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電共振子及び圧電共振装置に関し、特に厚み縦振動モードまたは厚み滑り振動モードを用いた高周波(100〜300MHz)用の圧電共振子及び圧電共振装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】
一般に、厚み縦振動モードまたは厚み滑り振動モードを用いた高周波用の圧電共振子は、基本モードを用いる場合は圧電基板の厚みを薄くし、または圧電基板の厚みを厚めのままにして3次高調波などのモードを用いて実現する。
【0003】
このとき、基本波の場合には厚みを精度良く薄くする技術、高調波を用いる場合には基本波を抑えて、なお且つ3次モードのピークバレー値(P/V値)が大きくなるように設計することが必要である。また、高周波のため、駆動電極の厚みバラツキを精度良くコントロールすることも必要となる。
【0004】
100〜300MHzのような高周波で基本波を用いる場合は、厚みが特に薄くなるため、上記した従来のコントロールによっても圧電共振子の作製が困難である。例えば、厚み縦振動や厚み滑り振動を用いた圧電共振子の共振周波数は圧電基板の厚みに反比例するため、基本波モードの場合で、一般的な圧電材料では基板厚みが数10μm以下のものを作製する必要があり、また共振周波数バラツキを1%以下に抑えるためには圧電基板厚みを1%以下の誤差で製造する必要もある。さらに駆動電極の厚みコントロールも圧電基板が薄くなるに連れて、相対的に重要になる。
【0005】
従って共振周波数が高くなると圧電共振子の作製が困難になるため、共振周波数が高い圧電共振子を作製する場合は、3次高調波などの高調波のモードを使用することが一般的に行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
通常の設計では、一般的に高調波の振動よりも基本振動のほうが強く励振されてしまうため、高調波で正しく励振させるためには高調波のインピーダンスピークを少なくとも基本振動よりも相対的に大きくする設計が要求される。このため基本モードを抑制して、なお且つできるだけきれいな3次高調波を発現する素子設計が望まれる。しかしながら、高周波化が進むと3次モードのP/V値の絶対値は系統的に小さくなると同時に、基本波モードの振動を低減することが困難になる。
【0007】
このような問題を解決するため、従来、特開2000−341064号公報や特開平11−205076号公報に開示されるように、素子保持部を厚く、振動部を薄く作製した基本波モードを利用した水晶振動子が提案されている。図6は、このような圧電共振子を示すもので、両主面が四角形状の圧電基板31中央部の対向する位置に凹部33a、33bを形成するとともに、その凹部33a、33bに一対の対向する駆動電極35a、35bを形成し、これらの駆動電極35a、35bに引出電極37a、37bを接続して構成されている。
【0008】
このような圧電共振子では、圧電基板31の外周部の厚みが厚いため破損等を抑制することができるが、駆動電極35a、35bを形成する部分の厚みに関しては、精度の良い厚みコントロールの難しさが残る。駆動電極35a、35bの厚みコントロールが必要であることも避けられない。このような構造では、エッチング等の技術により精度良く加工する必要があり、素子の製造コストのアップも避けられない。
【0009】
本発明は、駆動電極を形成する圧電基板に厚みバラツキがあっても良好な特性を容易に得ることができる圧電共振子及び圧電共振装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の圧電共振子は、長さ方向に向けて厚みが薄くなる楔型形状の圧電基板と、該圧電基板の傾斜した両主面に設けられた対向する一対の駆動電極とを具備するとともに、該駆動電極の厚みを、前記圧電基板と前記駆動電極の厚みの合計厚みが前記圧電基板の長さ方向において同一となるように、前記圧電基板の最薄肉部に向けて次第に厚く形成してなるものである。
【0011】
このような圧電共振子では、圧電基板の主面に厚みバラツキがあっても、駆動電極を形成する位置を変化させることにより、周波数微調整が可能になる。即ち、圧電基板の駆動電極が形成される主面に厚みバラツキがあっても、適切な駆動電極の貼り付け位置を選択すれば望む共振周波数を得ることができる。また、圧電基板が楔型形状であるため厚みが徐々に変化しており、テーパーがある方向のエネルギー閉じ込めの大きな効果が得られる。
【0012】
このような構成を採用することにより、製作時の圧電基板の厚みバラツキに大きく左右されることなく所望の共振周波数で振動する圧電共振子を得ることができるとともに、圧電基板を楔型形状とし、駆動電極厚みを変化させることによりエネルギーを有効に閉じ込めることができ、圧電基板の長辺方向のリップルを抑制することができる。
【0013】
また、駆動電極厚みを、圧電基板のテーパー(傾斜面)を補うように変化させて、即ち、圧電基板と駆動電極の厚みの合計厚みが長さ方向において同一となるように、最薄肉部に向けて次第に厚く形成することにより、テーパー形状に誘発されやすいリップルなどの影響がインピーダンス特性に現われないように設計することができる。
【0014】
また、本発明では、圧電基板の一端部に形成される最薄肉部の厚みが、前記圧電基板の他端部に形成される最厚肉部の厚みの0.8倍以上であるとともに、前記最薄肉部と前記最厚肉部の間に形成される傾斜面のテーパーが2/100以下であることが望ましい。
【0015】
このような構成によれば、楔型形状の圧電基板を用いる場合には、駆動電極を形成する領域の圧電磁器、水晶基板等の圧電基板の形状は、駆動電極の形成位置により変化するが、圧電基板の一端部に形成される薄肉部の厚みが、前記圧電基板の他端部に形成される最厚肉部の厚みの0.8倍以上とすることにより、圧電基板の全体的な厚みに10%程度のバラツキがある場合でも駆動電極を形成する位置を選ぶことによって望ましい共振周波数で振動をする圧電共振子を得ることができ、また、最薄肉部と最厚肉部の間に形成される傾斜面のテーパーを2/100以下とすることにより、高周波(100〜300MHz)用の圧電共振子においては蒸着あるいはスパッタリング技術によりテーパーを補う形で電極形成をすることができる。
【0016】
さらに、本発明では、駆動電極に接続された引出電極が、最厚肉部に向けて引き出されていることが望ましい。これにより、引出電極を楔型形状の圧電基板の厚みが厚い根元部分に引き出すことができ、圧電共振子の保持を圧電基板の根元部で行うことができ、落下衝撃などに強い保持構造が可能になる。
【0017】
さらにまた、圧電基板の最厚肉部に、該最厚肉部よりも大きな厚みを有する保持部が形成されていることが望ましい。この場合には、厚みが大きい保持部を、例えば収納容器内に保持固定することができ、圧電基板厚みが薄い高周波用の圧電共振子であっても、落下衝撃などに強い保持構造が可能になる。
【0018】
本発明の圧電共振装置は、上記の圧電共振子の最厚肉部又は保持部を、収納容器内に保持固定してなるものである。圧電基板の厚みが厚い根元部又は保持部が収納容器内に保持固定されるため、圧電共振子を収納容器内に確実に保持固定することができ、衝撃等により、圧電共振子が収納容器から脱落することを防止することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電共振子は、図1に示すように、楔型形状の圧電基板1の両主面の中央部に、対向するように駆動電極2、3を形成し、これらの駆動電極2、3に、圧電基板1のテーパー形状の厚みの厚い根元の短辺に向けて引き出された引出電極5、6を接続して構成されている。圧電基板1は、圧電磁器または水晶から構成されている。
【0020】
駆動電極2、3は、平面が長方形状の圧電基板1の上下主面に、その長辺に向けて帯状に形成されている。圧電基板1は縦断面が台形状であり、その上下主面は傾斜面とされ、テーパー形状とされている。この圧電基板1は、長さ方向の一端部に厚みが最も薄い最薄肉部1aが形成され、長さ方向の他端部に最も厚みが厚い最厚肉部1bが形成されている。最薄肉部1aの厚みは、最厚肉部1bの厚みの0.8倍以上とされている。最薄肉部1aと最厚肉部1bの間に形成される傾斜面のテーパーは2/100以下とされている。
【0021】
即ち、圧電基板1の長さをL、最薄肉部1aの厚みをt1、最厚肉部1bの厚みをt2とすると、t2>t1≧0.8t2で表され、傾斜面のテーパーは、(t2−t1)/Lで表され、(t2−t1)/L≦2/100とされている。
【0022】
最薄肉部1aの厚みをt1、最厚肉部1bの厚みをt2としたとき、t1≧0.8t2としたのは、数10ミクロンの厚みの圧電基板1を作製する場合でも、エッチング技術などによる圧電基板1の加工バラツキを10%以下に抑制できるため、この範囲内のバラツキでは最薄肉部1aと最厚肉部1bの間の所望位置に所望共振周波数を得るため駆動電極2、3を形成することができるからである。特に、駆動電極2、3を圧電基板1の中心付近に置くことができるという点から、加工バラツキは5%以下に抑制することが望ましい。
【0023】
また、テーパー(t2−t1)/Lを2/100以下としたのは、駆動電極2、3によるエネルギー閉じ込めを大きく壊すことなく、また駆動電極2、3の厚み分布を工夫することによって元々平板で実現できる基本振動に近い振動モードを実現することができるからである。特に蒸着などでつけられる駆動電極2、3の厚みは1ミクロン以下であるから、駆動電極2、3の厚み分布に工夫を加えることによって模擬的に平板に近い振動条件を実現するためには、駆動電極2、3の最薄肉部1a側の端での基板厚みと最厚肉部1b側の端での基板厚みの差が駆動電極2、3の厚みあるいはそれ以下であることが望ましいためである。
【0024】
圧電基板1の長さLは、エッチング等の加工及びテーパー(t2−t1)/Lが2/100以下という点から0.5〜1.5mmであることが望ましい。最薄肉部1aの厚みt1と最厚肉部1bの厚みt2の平均厚み、即ち圧電基板の平均厚みは、所望の共振周波数に合うように設定される。
【0025】
また、駆動電極2、3に接続された引出電極5、6は、最厚肉部1bに向けて引き出されている。
【0026】
圧電基板1は、温度特性を重視するのであれば水晶、共振−反共振ピーク間の帯域を重視するのであればLTなどの単結晶を用いるのが良い。圧電磁器などの焼成材料であればボイド等の欠陥が共振特性を阻害する可能性が高くなるが、薄膜の圧電磁器生成プロセス等により、ボイドフリーの薄膜磁器材料を得ることは可能であり、圧電磁器による共振子も実現できる。また、駆動電極2、3、引出電極5、6は、例えば、Cu、Ni、Auの薄膜を順次蒸着することにより形成されている。
【0027】
以上のように構成された圧電共振子では、圧電基板1に厚みバラツキがあっても、テーパー方向に駆動電極2、3を形成する位置を変化させることにより、厚みバラツキを補うための周波数微調整を行うことができる。即ち、圧電基板1の厚みが最厚肉部1bから最薄肉部1aに向けて次第に薄くなっているため、駆動電極2、3が形成される主面に厚みバラツキがあっても、適切な駆動電極2、3の貼り付け位置(長さ方向の貼り付け位置)を選択すれば望む共振周波数を得ることができる。
【0028】
例えば、従来の厚み縦共振子では、圧電基板1の厚みバラツキが数ミクロン程度あるとして、このバラツキを駆動電極2、3の厚みをコントロールして周波数調整を行うため、電極材料を重ねて貼り付ける必要があるが、蒸着などの精度よく厚みコントロールができるプロセスで、この厚みの電極を貼り付けるには時間、コスト増加が伴う。しかしながら、本発明の場合には、駆動電極2、3を貼り付ける最厚肉部1bと最薄肉部1a間の位置を変更することにより、圧電基板1の平均的厚みを数ミクロン程度容易に変更することができ、周波数調整を容易に行うことができる。
【0029】
また、圧電基板1は厚みが徐々に変化する楔型形状であり、テーパーがある方向、即ち長さ方向のエネルギー閉じ込め効果を大きくできる。
【0030】
このような構成を採用することにより、製作時の圧電基板1の厚みバラツキに大きく左右されることなく所望の共振周波数で振動する圧電共振子を得ることができるとともに、圧電基板1を楔型形状とし、テーパーによる圧電基板1の厚み変化を補う形で駆動電極2、3の厚みを変化させることによりエネルギーを更に有効に閉じ込めることができ、圧電基板1の長辺方向の陪振動によるリップルを抑制することができる。
【0031】
従って、上記圧電共振子によれば、基本モードを用いた100〜300MHzの高周波の厚み縦振動共振子において、厚みバラツキに影響を受けにくい形状で、厚みバラツキがあっても電極貼り付け時に修正が容易な構造を持った圧電共振子を提供でき、より簡単でかつ効果的に基本波モードを用いた100〜300MHz帯の高周波厚み縦圧電共振子を得ることができる。
【0032】
本発明者等は、上記圧電共振子について、駆動電極2、3の形成位置を変化させることにより、共振周波数を変化させることができかどうかについて、また、圧電共振子として用いることができるか否かについて、シミュレーションを行った。
【0033】
条件は、L=0.5mm、t1=8μm、t2=10μm、圧電磁器は通常のPZT材を用いた。この結果を図2(a)、(b)に示す。図2(b)は駆動電極をテーパー方向(長さ方向)の中心に置き、図2(a)は中心から最厚肉部1bの方向に50μmずらした位置に置いたもののインピーダンス特性の結果を示す。
【0034】
この図2から、駆動電極2、3の形成位置を変化させることにより、共振周波数を変化させることができ、しかも図2(b)からいくつかのリップルをコントロールすることにより共振子として良好なインピーダンス特性が得られることがわかり、楔型形状が圧電共振子として有効であることがわかる。
【0035】
図3は、他の例を示すもので、この例では、圧電基板1の最厚肉部1bに、該最厚肉部1bよりも大きな厚みを有する保持部9が形成されている。この保持部9の上下面に引出電極5、6が、圧電基板1の主面から連続して形成されている。
【0036】
このような圧電共振子では、厚みが大きい保持部9を、図4に示すように、収納容器11内に、Agペーストや導電性接着材等の接合剤13で保持固定することができ、落下衝撃などに強い保持構造を実現できる。即ち、圧電共振子の保持部9の一端での保持であるが、先端の最薄肉部1aは楔の先端で厚みが薄いため、落下等の衝撃に対して強い構造となっている。
【0037】
そして、本発明の圧電共振子は、図5に示すように、駆動電極2、3厚みを、圧電基板1のテーパー(傾斜面)を補うように変化させて、即ち、圧電基板1と駆動電極2、3の厚みの合計厚みが長さ方向において同一となるように、言い換えれば、駆動電極2、3の厚みを最薄肉部1aに向けて次第に厚く形成している。これにより、リップルなどの影響がインピーダンス特性に現われないように設計することができる。また、この駆動電極2、3の平均的な厚みをコントロールすることによる共振周波数の微調整を行うこともできる。テーパー方向と垂直な方向の幅を広げることによっても駆動電極2、3の面積を広げることができ、インピーダンス特性の重要項目であるピ−クバレー値の向上を図ることができる。
【0038】
【発明の効果】
本発明の圧電共振子では、高周波(100〜300MHz)の基本波モードによる、駆動電極周りのテーパー方向のエネルギー閉じ込めが良好で、高いピークバレー値を有する高周波振動子が得られるとともに、厚みバラツキが駆動電極貼り付け位置によって修正でき、厚みバラツキを補うため周波数微調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】楔型形状の圧電基板の傾斜した両主面に駆動電極を形成した圧電共振子を示すもので、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図2】図1の圧電共振子のインピーダンス特性を示すシミュレーション結果を示す図であり、(a)は駆動電極を圧電基板の長さ方向の中心位置に形成し、(b)は最厚肉部の方向に中心から50μmだけずらした位置に形成したシミュレーション結果である。
【図3】保持部を有する圧電共振子を示す断面図である。
【図4】図3の圧電共振子の保持部が収納容器内に固定された圧電共振装置を示す断面図である。
【図5】駆動電極を最薄肉部に向けて次第に厚く形成した本発明の圧電共振子を示す断面図である。
【図6】従来の100MHz以上の基本振動モードを用いた高周波水晶振動子を示すもので、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【符号の説明】
1・・・圧電基板
1a・・・最薄肉部
1b・・・最厚肉部
2、3・・・駆動電極
5、6・・・引出電極
9・・・保持部
11・・・収納容器
t1・・・最薄肉部の厚み
t2・・・最厚肉部の厚み
Claims (4)
- 長さ方向に向けて厚みが薄くなる楔型形状の圧電基板と、該圧電基板の傾斜した両主面に設けられた対向する一対の駆動電極とを具備するとともに、該駆動電極の厚みを、前記圧電基板と前記駆動電極の厚みの合計厚みが前記圧電基板の長さ方向において同一となるように、前記圧電基板の最薄肉部に向けて次第に厚く形成してなることを特徴とする圧電共振子。
- 駆動電極に接続された引出電極が、最厚肉部に向けて引き出されていることを特徴とする請求項1記載の圧電共振子。
- 圧電基板の最厚肉部に、該最厚肉部よりも大きな厚みを有する保持部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電共振子。
- 請求項1乃至3のうちいずれかに記載の圧電共振子の最厚肉部又は保持部を、収納容器内に保持固定してなることを特徴とする圧電共振装置。
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