JP3786404B2 - 軽合金製素材の成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明はアルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽合金製素材を塑性加工により成形する方法に関するものであり、特に小形軽量機器の筐体等の用途に適した軽合金製薄肉体の成形方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、各種家電製品や自動車部品などで軽量化が求められる部品には、軽合金やプラスチックが用いられてきた。しかし、リサイクル性の容易さや高級感の追求から、最近ではプラスチックよりも金属素材である軽合金が用いられる傾向が強くなっている。金属素材を比較的大量に、同一形状に形成するための技術としては、鋳造や塑性加工が知られており、アルミニウムやマグネシウム合金等の軽合金においても、鋳造や塑性加工は適用されている。
【0003】
鋳造による製造は、鋳造欠陥や酸化物を内部および表面に介在させてしまう恐れがあり、これら欠陥等が介在していると、機械的強度が低下するだけでなく、耐食性等も悪くなり、強度や表面の美観が要求される部品には問題がある。
塑性加工としては、曲げ、絞り、鍛造等の方法があるが、肉厚が局部的に異なる段差やボス部やリブ部を成形することができる鍛造を用いることができれば、薄肉で高強度で高い意匠自由度を有する部品を、溶接などを用いることなく製造することができて好ましい。一般に鍛造は、素材を室温で塑性変形させる冷間鍛造と、室温より高く再結晶温度より低い温度で行なう温間鍛造と、再結晶温度以上で行なう熱間鍛造に分けられるが、いずれの温度においても素材を流動させる(メタルフロー)加工であり、変形抵抗を減少させるためには素材表面への潤滑が重要である。
【0004】
アルミニウム合金の鍛造技術は、例えば軽合金協会編「アルミニウム鋳鍛造技術便覧」(カロス出版)に詳述されており、1143〜1158ページには、潤滑に関しての開示がある。これによれば、アルミニウム合金の冷間鍛造においては、素材表面にりん酸塩等の化成皮膜を形成したり、鉱油をベースとするりん化合物を添加剤として含む潤滑油を素材表面に塗布するとよく、熱間鍛造においては、素材と金型は高温高圧になり、素材が金型表面に付着し易いため、金型面上に均一な潤滑膜を安定して形成させることが重要で、黒鉛系潤滑剤又はガラス系等の非黒鉛系潤滑剤をスプレーなどで金型表面に塗布するとよい、と記載されている。上記黒鉛系又は非黒鉛系の潤滑剤は、高温でも潤滑性能を保持するものであるが、剥離し易いため、鍛造直前の金型に塗布するものである。
一方、マグネシウム合金は、結晶構造が稠密六方晶であることから、塑性加工そのものがアルミニウム合金に比して極めて難しく、工業的な生産技術としては国内外でほとんど確立されておらず、その機械的性質や加工性もあまり知られていない。特に、鍛造技術に関してはほとんど開示されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、電子回路部品・素子の高集積化・高密度化等を背景にして、携帯電話機等の小形通信機器、ノート型あるいはモバイル型パソコン等の小形事務機器、その他多くの電子、情報、AV機器において、小型化・軽量化が盛んに試みられている。また、自動車の室内パネルや収納部筐体等も、さらなる軽量化が追求されている。そのため、上記各種機器や部品に用いられる筐体やケース等も、より軽く、より頑丈に、より薄く、しかも美観に優れたものが要求されている。
また、これら小型部品の筐体等は、内部収容面積を増やすために、成形体内部の角部や隅部の面取り寸法や勾配は、できるだけ小さくすることが望まれ、また、筐体部品同士を結合したり内蔵する電子回路基板等を係止あるいは固定するためのボス部や、薄板構造体の強度を向上させるためのリブ部など、突起部が必要とされることが多く、鍛造による成形が望まれている。
【0006】
前述したように、アルミニウム合金の鍛造技術についてはある程度確立しているが、大きく素材を変形させるために用いられる温熱間鍛造加工においては、鍛造直前の金型面に潤滑剤を塗布する必要がある。しかし、前述した筐体のように突起を有する部品を鍛造するための凹凸のある金型の表面に、均一に潤滑剤を塗布するのは難しい。作業者が潤滑剤の塗布を行なう場合、安全面や環境面に問題がある。自動塗布装置で行なう場合、金型の凹凸に合せて塗布ができるような複雑な動作をさせるためには、相応な大きさの塗布装置が必要となり、プレス廻りの限られたスペースに設置できず、製造設備レイアウト上問題となるだけでなく、自動塗布設備が高価となる。また、金型に塗布することによる金型温度の低下による鍛造精度の変動や、鍛造タクトが塗布時間分延びることによる生産性の低下や、潤滑剤の飛散による周囲環境の汚染等が問題となる。
【0007】
また、マグネシウム合金については、実用金属の中で最も密度が小さく、比強度や比剛性もトップレベルであることに加え、アルミニウム合金よりも高熱伝導性、電磁波シールド性等が優れていることから、今後マグネシウム合金が採用されていくことが予想されるが、前述したように、マグネシウム合金の鍛造技術はまだ確立されていない。
従って本願発明の目的は、軽合金製素材を生産性高く工業的に塑性加工で成形する方法を提供することであり、特に角部面取り寸法又は曲率半径が小さく、部分的に厚肉の段差部や突起部を有するような複雑形状の薄肉成形体を鍛造加工するのに好適な方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、上記目的を達成するために、マグネシウム合金及びアルミニウム合金などの軽合金素材について、鍛造加工方法を中心に塑性加工方法を種々検討し、本願発明を完成したものである。
【0009】
本願発明は、マグネシウムを主体とした軽合金製素材の少なくとも表面の一部に二硫化モリブデンと黒鉛を含んだ潤滑剤を塗布して潤滑膜を形成する工程と、前記素材を塑性加工する工程とを有し、潤滑膜を形成する前に仮防食処理を行なうことを特徴としている。潤滑剤は、塑性加工のプレス方向によっては必ずしも素材の全面に塗布されていなくてもよく、例えば、薄板素材では表面と裏面だけでもよく、丸材でも主として半径方向から加圧するような時は円周面に塗布するだけでもよい。また、鍛造前の素材表面は通常単純な平面か曲面であり、スプレーを単純動作させるだけで所定膜厚になるように塗布することができるので、簡単な塗布装置で潤滑膜形成をすることができる。
また、潤滑膜を形成する前の仮防食処理は、クロム酸、硝酸、りん酸等を用いた化成処理で行なうとよい。一般に、仮防食を行なう前には、油脂などを除去する脱脂処理を行なうが、仮防食処理を行なうことにより、酸化防止をすると同時に、油脂が残存していてもほぼ完全に除去することができる。さらに、仮防食皮膜面の凹凸が潤滑膜を強固に捉えるため、潤滑膜は素材表面に所定の剥離強度を有して付着することができる。
【0010】
また、本願発明における潤滑膜は、二硫化モリブデン/(二硫化モリブデン+黒鉛)の成分比が、重量で50%以上で100%より小さいことを特徴としている。数値限定理由は、種々の実験をもとに、黒鉛は二硫化モリブデンより高い温度で適用できるため混合すべきであること、また、多すぎると素材が流動しすぎて欠肉が出やすくなることから、最大量は二硫化モリブデンと同量までが限度と判定したことによる。また、黒鉛の含有量があまり少ないと高温での鍛造に問題が生ずる恐れがあるため、上記成分比は、重量で50%以上で80%以下の範囲が好ましい。潤滑剤としては、この成分比の混合体を、例えば水で希釈して用いる。潤滑膜は、厚くした方が圧下率を大きくできるが、鍛造品の肉厚バラツキが出やすくなるため、潤滑膜は1〜12μmとするとよく、好ましくは2〜5μmとするとよい。なお、本願発明における潤滑膜は、潤滑性のみでなく離型性も兼ね備えている。
【0011】
前記本願発明における塑性加工としては、鍛造加工を用いることができる。
本願発明における鍛造は、軽合金製素材温度を室温〜540℃、金型温度を室温〜450℃とするとともに、鍛造1回当たりの圧下率を75%以下で行なうものである。素材温度の上限を540℃に限定したのは、540℃を超えると結晶粒の粗大化を招き、結晶粒径が300μmを超えると伸びが失われてくるからである。温熱間鍛造を行なう場合は、素材温度は100〜540℃、金型温度は100〜450℃とするとよいが、マグネシウム合金については、圧下率によっては発火し燃焼する恐れもあることから、素材温度は200〜450℃とするのが好ましく、アルミニウム合金素材については、マグネシウム合金より低めの100〜300℃とするのが好ましい。なお、素材が薄く熱容量が小さい場合、鍛造用金型を加熱しておくだけで鍛造時熱伝導で素材は昇温されるので、必ずしも素材は加熱する必要はないが、温度バラツキ少なく鍛造するためには素材、金型とも加熱制御することが望ましい。
【0012】
鍛造加工は、複数回行なうことが多いが、素材や製品の仕様によっては1回だけで行なうこともできる。複数回の鍛造加工を行なう場合、鍛造後の素材は変形して表面積が増加していくが潤滑膜は延びないため、潤滑膜の被覆面積割合が低くなり、潤滑性能が低下することがある。鍛造仕様にもよるが、3回目以降の鍛造加工においては、鍛造中間体又は金型に潤滑剤を追加塗布するようにしてもよい。鍛造1回当たりの圧下率を75%以下に限定したのは、メタルフローが著しくなると、再結晶した微細粒子がメタルフローに沿って出現したり、偏析して存在する恐れがあるからであり、また、成形荷重の過大による装置や金型の破損という機械的問題を防止するためである。また、複数回の鍛造加工における潤滑膜被覆面積割合の低下を抑えるためでもあり、好ましくは50%以下とするのがよい。
【0013】
前記本願発明において、鍛造を複数回行ない、最初の鍛造加工は75%以下の圧下率で行い、最後の鍛造加工は50%以下の圧下率で行なうことで、周壁部及び突起部を有し、主要面肉厚が1.5mm以下で、周壁部の立上がり内側角部および/または外側角部の面取りまたは半径が1mm以下で、周壁部の高さが30mm以下の軽合金製筐体を成形することができる。なお、温熱間鍛造を行なう場合、素材の温度低下状況によっては、鍛造直前の素材を所定温度になるように再加熱するようにしてもよい。なお、上記で言う主要面肉厚とは、筐体の主要構成面の肉厚で、ボス部、リブ部や段差部等局部的な肉厚変化部や曲げによる突起等を除いた実質的な面部肉厚を言う。
【0014】
上記軽合金製筐体を成形するための鍛造加工において、最初の鍛造加工としての粗鍛造においては、75%以下の圧下率で素材を展伸させて、周壁部およびボス部等の突起部を有する有底形状の粗鍛造成形体に成形する。最後の鍛造加工としての仕上鍛造は、粗鍛造成形体の比較的粗い公差の各部寸法形状を、目標とする成形体の形状寸法に精密に仕上げ成形することを目的として施すものであり、加工量よりも成形性が重要なため、圧下率は50%以下とするのが望ましく、仕上げ成形体の表面性状等を考慮すると30%以下とするのがより好ましい。
【0015】
本願発明は、マグネシウム合金製素材を工業的に塑性加工することを可能にするもので、特に鍛造加工に対して有効であり、圧延や押出しなどで形成される展伸材で、例えばJIS記号のMP1、MP4、MB1、MB4などの板材や丸棒材又は角棒材を用いることができる。前記の筐体は、上記条件を適切に設定することにより、厚さが2〜3mmの薄板を表裏から加圧鍛造したり、直径10mm程度の丸棒材を厚さ方向(半径方向)に鍛造することにより、絞り加工と異なりボス部を一体に成形することができる。
また、本願発明は、アルミニウム合金製素材を工業的に塑性加工することを可能にするもので、特に鍛造加工に対して有効であり、JIS合金記号で展伸材に分類される例えば2000系、3000系、4000系、5000系、6000系、7000系などの板材や丸棒材又は角棒材を用いることができ、上記と同様、前記筐体を成形することができる。
なお、前記発明において規定した圧下率は、素材に板材を使用した場合であり、棒材、特に丸棒材を用いた場合は、圧下率を90〜95%にすることも可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、薄肉で突起部を有するマグネシウム合金製成形体を、温熱間鍛造加工で成形する場合を例にして説明する。この場合のマグネシウム合金製素材は、より鍛造性に優れたマグネシウム合金であることが望ましく、重量比率でAl:1〜6%、Zn:0〜2%、Mn:0.5%以下、微量元素0.2%以下、残部Mg及び不可避的不純物よりなるマグネシウム合金、例えばASTM規格のAZ31合金(Al:約3%、Zn:約1%、その他)や、AM20合金( Al:約2%、Mn:約0.5%、その他)の板材又は棒材を用いることができるが、以下薄板を用いた例で説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係わる主な工程を示す図である。
図1(a)は、マグネシウム合金製薄板素材(単に板材と略す)の表面に既に潤滑剤が被覆されているものを用いる場合であり、パンチで打抜く等で適切な大きさと形状のブランク材とし、加熱、鍛造工程を経て所定の形状に成形される。これは、高温用潤滑剤が表面に被覆された板材を、素材製造メーカや、別途潤滑剤塗布メーカから供給を受けることができる場合に適用するとよい。
【0018】
図1(b)は、圧延されたままの板材を用いる場合を示している。
圧延された板材は、油脂等が付着しているため、アルカリ溶液で脱脂処理を行う。この後、酸による化成処理で仮防食処理を行なう。次いで、潤滑剤塗布工程において、二硫化モリブデンと黒鉛を、二硫化モリブデン/(二硫化モリブデン+黒鉛)が重量で50〜80%の範囲の所定割合に混合し水で数倍に希釈した潤滑剤を、スプレーで板材の両面に噴霧し、板材表面に潤滑膜を形成する。板材表面には仮防食処理により微小な凹凸を有する酸化皮膜面が形成されているため、潤滑剤は強固に付着する。潤滑膜の厚さは、1〜12μmの範囲の所定厚さになるようにスプレーの噴霧条件を調整する。潤滑膜厚は、板材表面の面粗さに影響されないように、表面粗さが数μm程度のアルミニウム板を板材表面に張り付け、この上に塗布された潤滑膜を、(株)Kett社製の高周波膜厚計で測定して得たものである。潤滑剤が乾燥後、成形体形状等で定める所定の寸法に板材を切断してブランク材とし、加熱炉で所定温度に加熱する。
【0019】
ブランク材の加熱は、表面が酸化しないように、アルゴンガス等不活性雰囲気中で行い、ブランク材温度を100〜540℃内の所定温度とする。次いで、できるだけ温度低下を抑えて所定温度を維持した状態で、粗鍛造用の静圧プレス式金型へ載置し、上下の金型で押圧する。該金型もブランク材の温度低下を抑えるため加熱制御しており、鍛造時の金型温度は100〜450℃としている。ブランク材表面の潤滑膜は強固に付着しているため、鍛造によるメタルフローでブランク材表面が延びても、潤滑膜は分断されて縞模様を呈するだけでほとんど脱落しない。また、二硫化モリブデンと黒鉛を主成分とする潤滑剤は、高温での離型性能も有しており、ブランク材は金型表面から容易に分離できる。従って、粗鍛造が終了した中間鍛造体や仕上鍛造用金型に、改めて潤滑剤を塗布しなくても、そのまま中間鍛造体に仕上鍛造を行なうことができる。なお、仕上鍛造時の中間鍛造体温度は、100〜540℃内の所定温度にする必要があるため、仕上鍛造を行なう前に所定温度以下に低下するような場合は、仕上鍛造工程前に、前記粗鍛造工程と同様に加熱手段で加熱するとよい。なお、仕上鍛造の金型も粗鍛造金型と同様、加熱制御を行い、鍛造時の金型温度は100〜450℃とする。
【0020】
以下、ブランク材を図4に示す形状のマグネシウム合金製薄肉成形体(以降単に成形体と略す)31に鍛造成形する場合を例にさらに詳しく説明する。図4(a)は斜視図、図4(b)は、図4(a)のA−A断面図である。
成形体31は、底部32と周壁部33を有し、底部32および周壁部33の主要面肉厚wが1.5mm以下であるような薄肉品で、また、底部32から周壁部33が立ち上がる部分の内側角部34あるいは周壁部底部の外側角部38は、半径或いは面取り部が1mm以下と極めてシャープであり、また、周壁及び底部には異なった種類のボスが形成されている。ボス35は周壁33途中より垂直に立ち上がっており、ボス35’は周壁33に沿っており、ボス36は底部32から独立に立ち上がっており、ボス37は底部と周壁2面とのコーナ部に形成されている。また、底部32は平面状だけでなく、任意形状の段差部を有する場合もある。
【0021】
図2は、粗鍛造における概略金型構造と、潤滑膜が表裏両面に被覆されたブランク材1のセット状態を示す一例である。ブランク材1は下金型2に設けられた凹部(以下、ダイ部とも称す)4の上面開口部を覆うように載置される。なお、載置位置は使用するブランク材1の形状寸法に応じて、例えばダイ部底面との間に若干の空隙を有するようにダイ部内に装着することもある。
使用するブランク材1の板厚t、および平面寸法や形状は、成形体の肉厚、周壁部の高さ、形成するボス部の形状、金型温度および圧下率などの鍛造条件などから定められる。ブランク材厚さtは、図4に示す成形体を鍛造する場合、主要面肉厚wと同一または少し厚い寸法とするが、その平面寸法や形状は、得ようとする成形体の表面積と同等または少し大きめとし、成形体底面形状と類似形状にすることが好ましい。上金型3は、下金型2のダイ4に対応する凸部(以下、ポンチ部とも称す)5を有する。ポンチ5の中央部および肩部には、形成しようとするボス部に対応する窪みを設けており(図2には、図4(b)のボス36、35、35’に対応する窪み6、7、7’を示す)、粗鍛造時にボス部を有する粗鍛造成形体が形成される。
【0022】
1mm以下というシャープな角部を有する成形体を、角部に亀裂などを生じることなく鍛造成形するには、粗鍛造用下金型2のダイ部(凹部)4の隅部半径と、上金型3ポンチ部(凸部)5における肩部半径の寸法は重要である。粗鍛造加工時初期における絞り加工に近い挙動がスムースに行われ、かつ鍛造加工時における良好なメタルフローが確保され、さらに仕上鍛造で成形体の角部の半径を1mm以下に絞り込むためには、2mm〜5mmの半径とするとよい。
【0023】
図3は、仕上鍛造における概略金型構造と粗鍛造成形品のセット状態を示す一例である。粗鍛造成形品21は、下金型22のダイ部に載置される。ダイ部は、下金型22と、下金型22の穴部に隙間無くきっちりと挿入された入子24で形成されている。上金型23は、下金型22のダイ部に対応するポンチ部25を有する。ポンチ部25の中央部および肩部には、形成しようとするボス部に対応する窪みを設けており(図3には、図4(b)のボス36、35、35’に対応する窪み26、27、27’を示す)、仕上鍛造後には所定のボス部を有する成形体を製造することができる。
【0024】
(実施例1)
鍛造用金型として、下金型の凹部(ダイ部)4の立ち上がり内側角部半径および上金型の凸部(ポンチ部)5肩部の半径4.5mmの粗鍛造用金型と、入子24を有する下金型の凹部(ダイ部)立ち上がり内側角部半径および上金型の凸部(ポンチ部)肩部の半径1mmの仕上鍛造用金型とを準備した。準備した粗鍛造用の上金型のポンチ部5の先端四隅には、図4の成形体31に示すボス37に対応する4箇所に3mm×3mm×深さ4mmより少し大きいサイズの切り欠き部が、またポンチ部5の周壁部には、同じくボス35に対応する箇所に3mm×3mmで垂直に落ちる切り欠き部と、同じくボス35’に対応する箇所には3mm×3mm×深さ4mmより少し大きいサイズの切り欠き部が、またポンチ部5のほぼ先端中央部には、同じくボス36に対応する箇所に3mm×3mm×深さ6mmより少し大きいサイズの穴が形成されている。
仕上鍛造用の上金型のポンチ部25の先端四隅、周壁部には、目的とするボス部寸法に対応する3mm×3mm×深さ4mmの切り欠け部が、先端中央部には3mm×3mm×深さ9mm穴が形成されている。
【0025】
板厚tが1.5mmで、表裏両面に二硫化モリブデンと黒鉛を主成分とする潤滑膜が形成された75mm ×165mmのAZ31製ブランク材を、アルゴンガスで充満した電気式加熱炉内に装入し、400℃に均一加熱した。潤滑膜は、二硫化モリブデン/(二硫化モリブデン+黒鉛)の重量比が約0.7で、膜厚は4〜10μmであった。加熱されたブランク材を電気式加熱炉内から取り出し、下金型のダイ部開口部上に載置し、金型温度400℃,鍛造速度200mm/秒,成型荷重10ton/cm2 の鍛造条件で粗鍛造を行った結果、底部面積が55×150mm、周壁部の有効高さが10mm、主要面の肉厚が1.2mmで、四隅には3mm×3mm×高さ4mmのボス、周壁部33には3mm×3mm×高さ4mmの周壁33に垂直なボス35および周壁33に沿ったボス35’、また底部中央部には3mm×3mm×高さ6mmのボス36を有する外観上欠陥のない粗鍛造成形体が得られた。
【0026】
次に、得られた粗鍛造成形体をアルゴンガスで充満した電気式加熱炉に装入して350℃に均一加熱し、金型温度350℃、鍛造速度50mm/秒、成形荷重10ton/cm2 の鍛造条件で仕上鍛造を行った結果、底部面積が50×155mm、周壁部の有効高さ10mm、主要面の肉厚が1mmで、立ち上がり部内側半径が約1mm、四隅に3mm×3mm×高さ4mmのボス、周壁部33には夫々3mm×3mm×高さ4mmのボス35、35’、また底部中央には3mm×3mm×高さ9mmのボスを有し、成形体の内隅部、外角部ともに半径1mmの良好な外観のマグネシウム合金薄肉成形体が得られた。
【0027】
(実施例2)
鍛造用金型として、下金型の凹部(ダイ部)立ち上がり内側角部半径および上金型の凸部(ポンチ部)肩部の半径が2.5mmの粗鍛造用金型と、入子を有する下金型の凹部(ダイ部)立ち上がり内側角部半径がほぼ0mmおよび上金型の凸部(ポンチ部)肩部の半径が0.3mmの仕上鍛造用金型とを準備した。準備した粗鍛造用上金型のポンチ部長辺における両端から5mm内側の位置2カ所(合計4ケ所)には、図4の成形体31に示すボス35’に対応する3mm×3mm×深さ5mmより少し大きいサイズの切り欠き部が、ポンチ部先端中央部には同じくボス36に対応する3mm×3mm×深さ5mmの窪みが形成され、仕上鍛造用の上金型のポンチ部長辺における両端から5mm内側の位置2ヶ所(合計4ケ所)には、目的とするボス部寸法に対応する3mm×3mm×深さ5mmの切り欠き部が、底部中央に対応する箇所に3mm×3mm×深さ6mmの窪みが形成されている。
【0028】
板厚1.0mm、幅120mm、長さ1000mmのAZ31製マグネシウム合金圧延素材をアルカリ溶液で脱脂した後、硝酸溶液で仮防食処理を行ない、二硫化モリブデンと黒鉛を含む潤滑剤を、二硫化モリブデン/(二硫化モリブデン+黒鉛)の重量比を約0.55になるように混合して水で希釈し、膜厚が3μmとなるように表裏面にスプレーで塗布した。乾燥後測定した膜厚は2〜6μmであった。潤滑膜が形成された素材を、100mm×100mmにパンチングしてブランク材を切出し、アルゴンガスで充満した電気式加熱炉内に装入し、430℃に均一加熱した。次いで、加熱されたブランク材を電気式加熱炉内から取り出し、下金型のダイ部に載置し、金型温度380℃,鍛造速度200mm/秒,成型荷重10ton/cm2 の鍛造条件で粗鍛造を行った結果、底部の概略面積が95×95mm、周壁部の有効高さが7mm、主要面の肉厚0.7mm、各長辺周壁両隅から5mm中央よりの位置4ケ所と底部中央部にボスを有する、外観上欠陥のない粗鍛造成形体が得られた。
【0029】
次に、得られた粗鍛造成形体を電気式加熱炉に装入して430℃に加熱し、金型温度380℃、鍛造速度50mm/秒、成形荷重7ton/cm2 の鍛造条件で仕上鍛造を行った結果、底部の面積が95×95mm、周壁部の有効高さが7mm、肉厚が0.65mmで、立ち上がり部内側半径が約0.3mm、各長辺周壁両隅から5mm中央よりの位置4ケ所に3mm×3mm×高さ5mmのボスを、底部中央部に3mm×3mm×深さ6mmのボスを有し、外観上欠陥のないマグネシウム合金からなる薄肉成形体を得ることができた。
なお、上記実施例においては、下型に凹部(ダイ部)を形成し、上型に凸部(ポンチ部)を形成したが、本願発明は、その逆の構成の金型を使っても良い。即ち、下型に形成したポンチ部(凸部)上にマグネシウム合金薄板素材または粗鍛造成形体を載置して成形しても良い。
以上、塑性加工として鍛造加工の場合を例に説明したが、本願発明は鍛造加工だけに限定されず、広く曲げ、絞りなどの塑性加工、特に高温で成形する場合には有効に適用できることは言うまでもない。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本願発明は、高温時にも潤滑性及び離型性を有するような材質と組成の潤滑膜が形成された軽合金製素材を用いて塑性加工するので、軽合金製素材を、広い温度範囲で選定でき、生産性高く工業的に塑性加工で成形することができる。特に、角部面取り寸法又は曲率半径が小さく、部分的に厚肉の段差部や突起部を有するような、従来であれば、曲げや絞りさらには溶接など複数の加工工程を経なければできないような複雑形状の軽合金製薄肉成形体を、鍛造だけで成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の軽合金製素材の成形方法に係る工程フロー図
【図2】本願発明の成形方法に係る粗鍛造要部構成概略説明図
【図3】本願発明の成形方法に係る仕上げ鍛造要部構成概略説明図
【図4】本願発明に係る軽合金製薄肉成形体の一例を示す図
【符号の説明】
1…軽合金薄板素材、 2…粗鍛造用下金型、 3…粗鍛造用上金型、
4…下金型の凹部(ダイ)、 5…上金型の凸部(ポンチ)、
6…ボス部に対応する窪み、 7、7’…ボス部に対応する切り欠き部、
21…粗鍛造成形体、 22…仕上鍛造用下型、 23…仕上げ鍛造用上金型、
24…下金型の入子、 25…上金型の凸部(ポンチ)、
26…ボス部に対応する窪み、 27、27’…ボス部に対応する切り欠き部、
31…軽合金製薄肉成形体、 32…底部、 33…周壁部、
34…内側隅部、 35、35’…ボス、 36…ボス、 37…隅ボス、
38…外側角部、 w …主要面肉厚、 H …ボス高さ
Claims (6)
- マグネシウムを主体とした軽合金製素材の少なくとも表面の一部に二硫化モリブデンと黒鉛を含んだ潤滑剤を塗布して潤滑膜を形成する工程と、前記素材を塑性加工する工程とを有し、潤滑膜を形成する前に仮防食処理を行なうことを特徴とする軽合金製素材の成形方法。
- 潤滑膜は、二硫化モリブデン/(二硫化モリブデン+黒鉛)が、重量比で50%以上で100%より小さい請求項1に記載の軽合金製素材の成形方法。
- 潤滑膜の平均膜厚が1〜12μmである請求項1又は2のいずれかに記載の軽合金製素材の成形方法。
- 塑性加工は鍛造加工である請求項1乃至3のいずれかに記載の軽合金製素材の成形方法。
- 鍛造は、軽合金製素材温度を室温〜540℃、金型温度を室温〜450℃とするとともに、1回の圧下率を75%以下で行なう請求項4に記載の軽合金製素材の成形方法。
- 鍛造は複数回行い、最初の鍛造加工は75%以下の圧下率で行ない、最後の鍛造加工は50%以下の圧下率で行なうことにより、周壁部及び突起部を有し、主要面肉厚が1.5mm以下、周壁部の立上がり内側角部および/または外側角部の面取りまたは半径が1mm以下、周壁部の高さが30mm以下の筐体に鍛造加工する請求項4又は5のいずれかに記載の軽合金製素材の成形方法。
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