JP3785888B2 - 物品の識別装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一時的に高温以下に曝される物品に取付けられる識別装置に関する。更に詳しくは、断熱材により被包されたICチップを有する物品の識別装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、物品の識別としてRF・ID(Radio Frequency IDentification)方式の実用化が図られている。このRF・ID方式では、識別すべき物品の情報をICチップのメモリに記憶させ、そのICチップを識別すべき物品に取付けている。このICチップが取付けれた物品は、そのメモリに記憶された情報を読みとる識別手段の近傍を通過する際に、その識別手段によりその情報を非接触で読みとられ、その物品はその情報により識別されるようになっている。
しかし、識別すべき物品が例えば自動車の塗装工程における組み立て途中の車体であって、塗装後にその塗膜を乾燥硬化させるために比較的高温下に保たれた乾燥炉を通過する車体である場合には、その車体に取付けられたICチップも一時的に高温環境下に曝される。一般的にICチップの使用温度範囲の上限値は塗膜の乾燥硬化温度よりも低いため、ICチップ自体の温度がその上限値を超えて上昇すると、そのICチップ自体が破壊してそのメモリに記憶された情報を正確に読みとることができなくなる不具合がある。
この点を解消するために、ICチップを断熱材により被包し、更に耐熱性樹脂からなる容器に密閉させた識別装置が知られている(特許第2825326号)。この装置ではICチップを断熱材により被包するので要求される耐熱性を確保できるとともに、そのICチップを断熱材とともに容器に密閉するので、機械的強度を向上させかつ外部塵埃の容器内部への侵入を防止できるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に断熱材の効果はその厚さに比例するので、断熱効果を高めるためにはICチップの周囲に設けられる断熱材の厚さを大きくすれば必要な断熱効果を得ることができる。しかし、上述した識別装置は物品に取付けられるものであるため、その必要な断熱効果を確保するために断熱材を厚くして比較的大きな識別装置を取付けたために、その物品の取り扱いが異なるようなことになればその装置の実効性を図ることはできない。このため、物品に取付けられる識別装置は従来の機能を維持した状態で可能な限り小型化されることが望まれる。
また、乾燥工程を含む製造ラインを流れる物品等に取付けられる識別装置では、密閉性を確保して浮遊塵埃に対する信頼性を向上させ、過酷な環境下における使用を可能にする必要もある。
本発明の目的は、要求される耐熱性を確保しつつ可能な限り小型化し得る物品の識別装置を提供することにある。
本発明の別の目的は、密閉性を十分に確保し得る物品の識別装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、ICチップ11を内包する第1断熱材12と、第1断熱材12を被包する第2断熱材13と、両端がICチップ11に接続されたアンテナコイル16と第2断熱材13を被包しかつ密封する耐熱性樹脂からなる密封容器14とを備えた識別装置10の改良である。
その特徴ある構成は、第1断熱材12は熱容量が0.4cal/cm3以上であって熱伝導率が0.5kcal/hr・℃以下であり、第2断熱材13は熱容量が0.008cal/cm3以上であって熱伝導率が0.15kcal/hr・℃以下であるところにある。
【0005】
この請求項1に係る発明では、識別装置10が高温環境下に曝されると、密封容器14の温度が上昇してその密封容器14に接触する第2断熱材13の温度が外側から上昇するが、第2断熱材13は単位時間あたりの第1断熱材12の温度上昇を有効に抑制する。第2断熱材13の内側部分の温度が上昇すると、第1断熱材12の温度が外側から上昇する。ここで、第1断熱材12は熱伝導率が第2断熱材13の熱伝導率より大きいが、熱容量が第2断熱材13より大きいので、ICチップ11に接触する第1断熱材12内側部分における単位時間あたりの温度上昇を有効に抑制する。このため、識別装置10が高温環境下に曝された時点からICチップ11の温度が上昇してそのICチップ11の使用温度範囲の上限値を超えるまでの時間を、単一の断熱材を使用した場合に比較して有効に引き延ばす。
ここで、第1断熱材12の好ましい熱容量は0.7cal/cm3以上であって好ましい熱伝導率は0.3kcal/hr・℃以下である。また、第2断熱材13の好ましい熱容量は0.05cal/cm3以上であって好ましい熱伝導率は0.02kcal/hr・℃以下である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明であって、第1断熱材12がポリフェニレンサルファイド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、超硬合金及又は微細斜長石からなる群より選ばれた1種又は2種以上の物質であり、第2断熱材13が珪藻土、泡ガラス、ガラスウール、又は無機質ファイバを含有するセラミック粉末の圧粉体からなる群より選ばれた1種又は2種以上の物質である物品の識別装置である。
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明であって、無機質ファイバを含有するセラミック粉末の圧粉体が5〜10wt%の無機質ファイバと30〜35wt%のチタニア粉と残部が微細多孔質シリカエアロゲルとからなる圧粉体であって、第2断熱材13がこの圧粉体とこの圧粉体を収納しシリカエアロゲルが細孔中に貫入して圧粉体の表面が内面に密着しかつ張力状態に保たれた多孔質繊維材料からなる包体とを有する物品の識別装置である。
この請求項2及び請求項3に係る発明では、請求項1に係る条件の第1断熱材12及び第2断熱材13を容易に得ることができる。なお、請求項2における無機質ファイバの好ましい値は6〜7wt%であり、チタニア粉の好ましい値は33〜34wt%である。
【0007】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれか記載の発明であって、密封容器14が、アンテナコイル16と第2断熱材13を開口部17aから収容可能に構成された容器本体17と、容器本体17の開口部17a側の端部外周を覆って容器本体17を密閉する封止蓋18とを備え、端部外周に1又は2以上の凹溝17dが全周にわたって形成され、凹溝17dの全周にわたって嵌合する凸条18bが封止蓋18に形成された物品の識別装置である。
この請求項4に係る発明では、識別装置10が高温環境下に曝されると、密封容器14内部の圧力が上昇するが、内部圧力の上昇はその凹溝17dと凸条18bの噛み合う力を強化させ、封止蓋18が容器本体17から外れたり浮き上がることを防止でき、密封容器14の密閉性が損なわれることを回避する。
【0008】
請求項5に係る発明は、請求項4記載の発明であって、有底筒状に形成されたボビン19の外周面に形成された凹部19aに巻き付けた耐熱性被覆導線によりアンテナコイル16が形成され、ボビン19は第2断熱材13を被包して容器本体17に僅かな隙間を持って挿入可能にかつ挿入状態で第2断熱材13が容器本体17の開口部側に露出しないように成形された物品の識別装置である。
この請求項5に係る発明では、アンテナコイル16の形成が容易になり、ボビン19が有底筒状であって挿入状態で第2断熱材13が容器本体17の開口部側に露出しないので、加熱されて溶融した樹脂を容器本体17の開口部に直接注入することが可能になり、封止蓋18を容器本体17に直接成形することができるようになる。
【0009】
請求項6に係る発明は、請求項4又は5記載の発明であって、封止蓋18が第2断熱材13を収容した容器本体17に直接樹脂成形して作られた物品の識別装置である。
この請求項6に係る発明では、樹脂成形して封止蓋18を成形する際に容器本体17内部は一時的に高温下に曝されるので、その内部に存在するエアは膨張した状態で封止蓋18で容器本体17が密閉される。このため、封止蓋を容器本体に直接樹脂成形して作ることにより、凹溝17d嵌合する凸条18bを含む封止蓋18を比較的容易に形成できるとともに、密閉性に優れ内部が常温で負圧の識別装置10を簡便に得ることができる。また、成形時の熱により容器本体17に封止蓋18の一部が融着するので、成形後の封止蓋を容器本体に接着する従来に比較して封止蓋18の容器本体17に対する密着性を向上させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、物品の識別装置10は、ICチップ11を内包する第1断熱材12と、この第1断熱材12を被包する第2断熱材13と、両端がICチップ11に接続されたアンテナコイル16とその第2断熱材13を被包しかつ密封する耐熱性樹脂からなる密封容器14とを備える。
【0011】
図3に示すように、ICチップ11は電源回路11aと無線周波数(RF)回路11bと変調回路11cと復調回路11dとCPU11eとこれに接続された物品固有の情報を記憶するメモリ11fを有する。電源回路11aはコンデンサ(図示せず)を内蔵し、このコンデンサはアンテナコイル16とともに共振回路を形成する。このコンデンサにはアンテナコイル16が特定の共振周波数の電波を受信したときにその電磁誘導で生じる電力が充電される。電源回路11aはこの電力を整流し安定化してCPU11eに供給し、ICチップ11を活性化する。メモリ11fはROM(read only memory)、RAM(ramdom-access memory)及びEEPROM(electrically erasable pogramable read only memory)を含み、CPU11eの制御の下で後に例示する識別手段30,31からの電波のデータ通信による読出しコマンドに応じて記憶されたデータの読出しを行うとともに、識別手段30,31からの書込みコマンドに応じてデータの書込みが行われる。
【0012】
図1に戻って、第1断熱材12は熱容量が0.4cal/cm3以上であって熱伝導率が0.5kcal/hr・℃以下の物質であり、具体的にはポリフェニレンサルファイド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、超硬合金及又は微細斜長石が挙げられる。これらの物質は1種のものであっても良く、又は2種以上のものであってもよい。この実施の形態ではポリフェニレンサルファイド樹脂を成形することにより作られた一対の部材12a,12bからなり、ICチップ11が装着される凹部12c,12cがそれぞれ形成され、その凹部12c,12cにICチップ11を収容して重ねることによりICチップ11を内包するように構成される。
【0013】
第2断熱材13は熱容量が0.008cal/cm3以上であって熱伝導率が0.15kcal/hr・℃以下の物質であり、具体的には珪藻土、泡ガラス、ガラスウール、又は無機質ファイバを含有するセラミック粉末の圧粉体が挙げられる。これらの物質は1種のものであっても良く、又は2種以上のものであってもよい。この実施の形態では無機質ファイバを含有するセラミック粉末の圧粉体(商標名;マイクロサーム(日本アエロジル社))を使用し、第2断熱材13はこの圧粉体となる5〜10wt%の無機質ファイバと30〜35wt%のチタニア粉と残部が微細多孔質シリカエアロゲルとからなる混合物を多孔質繊維材料からなる包体に収納し、包体の外部から金型により圧力を加えて成形することにより作られる。包体の外部から圧力が加えられる結果、上述した混合物は無機質ファイバを含有するセラミック粉末の圧粉体になり、圧粉体におけるシリカエアロゲルは包体の細孔中に貫入して圧粉体の表面は包体に密着する。圧粉体の表面が包体に密着する結果、包体自体は張力状態に保たれ、所定の形状に保たれた第2断熱材13が得られる。この実施の形態における第2断熱材13は一対の部材13a,13bからなり、この一対の部材13a,13bには、ICチップ11を被包した第1断熱材12が装着される凹部13c,13cがそれぞれ形成され、その凹部13c,13cに第1断熱材12を収容して重ねることによりその第1断熱材12を被包するように構成される。
【0014】
耐熱性樹脂からなる密封容器14は、アンテナコイル16と第2断熱材13を開口部17aから収容可能に構成された容器本体17と、容器本体17の開口部17a側の端部外周を覆ってこの容器本体17を密閉する封止蓋18とを備える。この実施の形態における容器本体17はガラス繊維で強化されたポリフェニレンサルファイド樹脂或いはフェノール樹脂を釣鐘状に成形することにより作られ、上部に図示しない物品に取付けるための取付部17bが形成される。この取付部17bには2個の取付孔17cが形成され、物品にはこの取付孔17cを使用して取付けることができるように構成される。この容器本体17の開口部17a側における端部外周には1本の凹溝17dが、耐熱性樹脂を成形する際に全周にわたって形成される。
【0015】
アンテナコイル16は後に例示する識別手段30,31からの電波を受信し又はその識別手段30,31に向けて電波を発生させるものであり、耐熱性被覆導線をボビン19に巻き付けることにより構成され、その両端はICチップ11にそれぞれ接続される。ボビン19は容器本体17と同一の耐熱性樹脂を成形することにより有底筒状に形成され、外周面に被覆導線を巻き付けるための凹部19aが全週にわたって形成される。ボビン19は第2断熱材13を挿入した状態の容器本体17に挿入され、容器本体17とともに第2断熱材13を被包するように構成される。ボビン19は容器本体17に僅かな隙間を持って挿入可能に構成され、その外底面は容器本体17に挿入した状態でその容器本体17の開口部17a側端縁と面一になるように成形される。
【0016】
封止蓋18は、第2断熱材13を収容した容器本体17に、容器本体17と同一の耐熱性樹脂を直接樹脂成形することにより作られる。この封止蓋18は、容器本体17の開口部17a側の端部外周を外側から覆う縁部18aを有し、この縁部18aにはその容器本体17の端部外周に形成された凹溝17d全周にわたって嵌合する凸条18bが形成される。
【0017】
図2に封止蓋18の具体的な成形手順を示す。即ち、ICチップ11を第1断熱材12で被包した後この第1断熱材12を第2断熱材13で更に被包し、この第2断熱材13をボビン19に挿入する。ICチップ11を被包する際にアンテナコイル16の両端は第1断熱材12及び第2断熱材13の重ね合わせ面に形成された図示しない溝に沿って配線され、それらの重ね合わせ面に隙間が生じないようにICチップ11は被包される。ボビン19に挿入された第2断熱材13はそのボビン19とともに容器本体17に、ボビン19外底面が容器本体17の開口部17a側端縁と面一になるまで挿入され、ボビン19は容器本体17とともに第2断熱材13を被包する。この状態で一方の金型片21に容器本体17を挿入する。一方の金型片21には容器本体17の形状に相応して形成された装着凹部21aが形成され、容器本体17を挿入した後、その一方の金型片21に他方の金型片22を締め付ける。
【0018】
他方の金型片22には封止蓋18の外形形状に相応した成型凹部22aが形成され、一方の金型片21に他方の金型片22を締め付けた状態で、他方の金型22に形成された樹脂注入溝22bから溶融した耐熱性樹脂を成型凹部22aに注入する。注入された溶融耐熱性樹脂は成型凹部22aの形状に沿って流動し、成型凹部22aの全体に行き渡った後に冷却硬化して図1に示す封止蓋18が作られる。流動する際に溶融耐熱性樹脂は容器本体17の開口部17a側の端部外周にまで流動し、その外周を外側から覆う縁部18aが形成され、容器本体17の端部外周に形成された凹溝17dにまで流動して侵入し凸条18bが形成される。また、樹脂成形して封止蓋18を作る際に容器本体17内部は一時的に高温下に曝されるので、その内部に存在するエアは膨張した状態で容器本体17が密閉される。このため、封止蓋18を容器本体17に直接樹脂成形して作ることにより、凹溝17dに嵌合する凸条18bを含む封止蓋18を比較的容易に形成できるとともに、密閉性に優れ内部が常温で負圧の識別装置10を簡便に得ることができる。
【0019】
このように構成された物品の識別装置を自動車の組み立て途中の車体に設けた塗装工程について説明する。
図4に示すように、本発明の識別装置10は塗装工程における組み立て途中の車体26のバンパ26aに吊下げられる。識別装置の吊下げは、容器本体17の取付部17bに形成された2個の取付孔17cを介して行われ、識別装置10が取付けられた車体26は台車27に搭載される。台車27は車体26を搭載した状態で移動可能に構成され、塗装工程及び加熱乾燥工程を移動することにより搭載された車体26の塗装及び乾燥を一連に行うように構成される。識別装置10に内蔵されたICチップ11のメモリ11fにはその装置10が取付けられた車体26の車台番号、塗装色、塗装工程、出荷先等が予め記憶され、車体26は塗装ロボット28により塗料がその表面に塗布され、その後図示しない乾燥炉により加熱されその塗料が乾燥硬化される。乾燥炉に車体26が搬入されると、車体26に取付けられた識別装置10もバンパ26aに吊下げられた状態で乾燥炉に搬入され、比較的高温の環境下に曝される。
【0020】
図1に示すように、識別装置10が高温環境下に曝されると、周辺環境と接する密封容器14の温度が上昇するが、密封容器14は耐熱性樹脂から形成されているため、その温度により変形等することはなく、ICチップ11を密封して保護する。密封容器14の温度が上昇すると、その密封容器14に接触する第2断熱材13の温度が外側から上昇する。ここで、第2断熱材13は熱伝導率が0.15kcal/hr・℃以下であるので、外側の密封容器14に接触する部分の温度が上昇しても、内包する第1断熱材12に接触する部分へ伝達する単位時間あたりの熱量は抑制される。また第2断熱材13の熱容量が比較的小さくてもその熱容量が0.008cal/cm3以上であれば単位時間あたりの第2断熱材13の温度上昇は比較的小さく、内包する第1断熱材12に接触する部分の温度上昇は比較的緩やかである。
【0021】
第1断熱材12に接触する第2断熱材13の内側部分の温度が徐々に上昇すると、その内側部分に接触する第1断熱材12の温度が外側から上昇する。ここで、第1断熱材12は熱伝導率が0.5kcal/hr・℃以下であり第2断熱材13の熱伝導率より大きく、第1断熱材12外側の熱は第2断熱材13に比較して早期にICチップ11まで達するが、熱容量が第2断熱材13の熱容量より大きい0.4cal/cm3以上であるので、ICチップ11に接触する第1断熱材12内側部分における単位時間あたりの温度上昇を有効に抑制する。このため、識別装置10が高温環境下に曝された時点からICチップ11の温度が上昇してそのICチップ11の使用温度範囲の上限値を超えるまでの時間は、単一の断熱材を使用した場合に比較して有効に引き延ばされる。
【0022】
また、第1断熱材12及び第2断熱材13の温度が上昇することにより密封容器14内部の圧力が上昇する。特に第2断熱材13には珪藻土、泡ガラス又はガラスウールが使用されるため、これらに内在するエアが温度上昇に伴い膨張して内部圧力を上昇させる。しかし、容器本体17の端部外周に凹溝17dを全周にわたって形成し、この凹溝17dの全周にわたって嵌合する凸条18bを封止蓋18に形成したので、内部圧力の上昇による容器本体17の変形はその凹溝17dと凸条18bの噛み合う力を強化させ、封止蓋18が容器本体17から外れたり浮き上がることはなく、密封容器14の密閉性が損なわれることはない。また、封止蓋18は第2断熱材13を収容した容器本体17に直接樹脂成形して作られるので、成形時には比較的高温環境下であるため、密封容器内部は常温で負圧になり、高温環境下に曝された場合に内部圧力は、常温で内部圧力が常圧の識別装置に比較して低い。また、成形時の熱により容器本体17及びボビン19に封止蓋18の一部が融着するので、成形後の封止蓋を容器本体に接着する従来に比較して封止蓋18の容器本体17に対する密着性は向上する。このため、外部塵埃の密封容器14の内部への侵入は有効に防止され、過酷な環境下における使用が可能になり、その寿命を比較的長期化することができる。
なお、ICチップ11の温度がその使用温度範囲の上限値を超える以前に車体26は乾燥炉から台車27に搭載された状態で取り出され、その後識別手段により車体26の識別が行われる。
【0023】
次に、塗装工程におけるライン近傍に設けられた車体の識別手段による車体の識別について説明する。
図3及び図4に示すように、この実施の形態における車体26の識別手段30,31は、送受信アンテナ30と識別監視装置31とを備える。送受信アンテナ30は、車体26の塗装工程におけるライン近傍に設けられかつ巻回された被覆電線である。この送受信アンテナ30は、その近傍を通過する車体26の識別装置10に電波を送信しかつ識別装置10のアンテナコイル16からの電波を受信可能に構成される。図3に示すように、送受信アンテナ30は識別監視装置31に接続され、識別監視装置31は、電源回路32と無線周波数(RF)回路33と変調回路34と復調回路35を備える。更に識別監視装置31はCPU36とこれに接続されたメモリ37、ディスプレイ38、入力装置39及びタイマ40を有する。
【0024】
この識別監視装置31は、送受信アンテナ30を介して識別装置10のアンテナコイル16に特定周波数の電波を送信してICチップ11を活性化し、かつそのチップ11のメモリ11fに対してデータの読出し・書込みを行い送受信アンテナ30を介して受信するアンテナコイル16からの応答信号により物品を識別してその車体26の車台番号、塗装色、塗装工程、出荷先等をメモリ37に記録する。具体的には、送受信アンテナ30の近傍を識別装置10が車体26に取付けられた状態で通過すると、識別監視装置31はその送受信アンテナ30を介して識別装置10のアンテナコイル16に向けてその識別コード質問信号を特定周波数の電波により送信する。この実施の形態における質問信号は2値化されたデジタル信号である。識別監視装置31から発せられるデジタル信号は、図示しない信号発生器から発せられ変調回路34で変調を受ける。RF回路33ではこの変調した信号を増幅して送受信アンテナ30から送信する。この変調には例えばASK(振幅変調)、FSK(周波数変調)又はPSK(位相変調)が挙げられる。
【0025】
送信された質問信号の電波は識別装置10のアンテナコイル16に受信され、この受信により、電源回路11aのコンデンサにはその電磁誘導で生じる電力が充電される。電源回路11aは充電された電力を整流し安定化して、CPU11eに供給し、ICチップ11を活性化する。次いでICチップ11のRF回路11bでは復調に必要な信号のみを取込み、復調回路11dで元のデジタル信号の質問信号を再現させてメモリ11fから車体26に関するデータを送信する。このデータの送信は2値化された識別コードをICチップ11の変調回路11cで変調し、RF回路11bで増幅してアンテナコイル16から送出することにより行われる。
【0026】
送信されたデータは送受信アンテナ30を介して識別監視装置31が受信し、識別監視装置31は識別装置10からのそのデータにより車体26を識別してタイマ40からの時刻に関するデータとともにその車体26が塗装された事実をメモリ37に記憶する。これとともに、識別監視装置31は車体26に関する情報とその塗装が行われた時間をディスプレイ38に表示するようになっている。この表示により作業員は車体26の塗装が予定されているものであって、その予定されている時間に塗装がされたことを確認し、その車体26に関する一連の塗装工程を終了させる。
【0027】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
図1に示すように、縦8.0mm、横5.0mm及び高さが0.39mmであって、140℃以下で正常動作するICチップ11に熱電対を接着し、そのICチップ11をポリフェニレンサルファイド樹脂て被包し、直径が50mm厚さが25mmの第1断熱材12を得た。この第1断熱材12を厚さが25mmの無機質ファイバを含有するセラミック粉末の圧粉体(商標名;マイクロサーム(日本アエロジル社))からなる第2断熱材13で被包し、ICチップを内包する第1断熱材12を被包する直径が100mm厚さが75mmの識別装置10を得た。この密封容器14を持たない仮の識別装置10を実施例1とした。
【0028】
<比較例1>
実施例1と同一のICチップに熱電対を接着し、そのICチップをポリフェニレンサルファイド樹脂のみで被包し、直径が100mm厚さが75mmの識別装置を得た。密封容器14及び実施例1における第2断熱材13を持たないこの仮の識別装置を比較例1とした。
<比較例2>
実施例1と同一のICチップに熱電対を接着し、そのICチップを無機質ファイバを含有するセラミック粉末の圧粉体(商標名;マイクロサーム(日本アエロジル社))からなる断熱材で被包し、ICチップを内包する直径が100mm厚さが75mmの識別装置を得た。密封容器14及び実施例1における第1断熱材12を持たないこの仮の識別装置を比較例2とした。
【0029】
<比較試験1及びその結果>
実施例1の仮の識別装置及び比較例2の仮の識別装置を30℃の室温からそれぞれ200℃の恒温槽に入れた。その後90分経過した後におけるICチップのそれぞれの温度を測定した。この結果、実施例1のICチップの温度は110℃であったが、比較例2のICチップの温度は147℃であった。
<比較試験2及びその結果>
実施例1の仮の識別装置及び比較例1の仮の識別装置を、温度サイクル試験器を用いて30℃の室温に30分曝した後250℃の高温雰囲気中に30分曝すことを1サイクルとして計1000サイクル繰り返す温度サイクル試験を行った。この温度サイクル試験の途中におけるそれぞれのICチップの温度変化を測定した。この結果、実施例1のICチップの温度は100℃から140℃の範囲で変動したが、比較例1のICチップの温度は室温である30℃から240℃の範囲で変動した。この試験の後、双方のICチップの動作の有無を確認した結果、実施例1のICチップは正常に動作したが、比較例1のICチップは故障していた。
【0030】
<評価>
比較試験1の結果から、単一の断熱材を使用した比較例2に比較して実施例1のICチップの温度上昇は緩やかであることがわかる。これは実施例1は性質の異なる2種以上の断熱材を使用した結果によるものと考えられる。
また、比較試験2の結果から、単一の断熱材を使用した比較例1はICチップの温度変化は激しくその上限はそのICチップの保存上限値を超えていることがわかる。これに対して実施例1では、ICチップの温度は比較的高温の範囲で変動するが、その上限はそのICチップの保存上限値を超えていない。これも実施例1は性質の異なる2種以上の断熱材を使用した結果によるものと考えられる。これは温度サイクル試験後におけるICチップの動作確認において、実施例1のICチップは正常に動作したのに対して、比較例1のICチップは故障していたことからもわかる。なお、比較例1のICチップが故障したのは、比較例1ではICチップの温度がそのICチップの保存上限値を超えたことに起因する、いわゆるパープルプレーグが原因と考えられる。
これらのことから実施例1の第2断熱材を密封容器で被包する本発明の識別装置は要求される耐熱性を確保しつつ可能な限り小型化し得ることがわかる。
【0031】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば熱容量及び熱伝導率が異なる第1断熱材及び第2断熱材でICチップを被包するので、識別装置が高温下に曝されて密封容器の温度が上昇しても、ICチップの単位時間あたりの温度上昇を、単一の断熱材を使用した場合に比較して有効に引き延ばすことができる。この結果、要求される耐熱性を確保しつつ可能な限り識別装置を小型化することができる。
また、密封容器を容器本体と、その開口部側の端部外周を覆って容器本体を密閉する封止蓋とを備え、端部外周に1又は2以上の凹溝を全周にわたって形成し、凹溝の全周にわたって嵌合する凸条を封止蓋に形成すれば、封止蓋が容器本体から外れたり浮き上がることを有効に防止できるとともに、高温環境下に曝されることによる密封容器の内部圧力の上昇はその凹溝と凸条の噛み合う力を強化させるので、密封容器の密閉性を確保することもできる。
更に、容器本体に直接樹脂成形して封止蓋を作れば、凹溝に嵌合する凸条を含む封止蓋を比較的容易に形成できるとともに、樹脂成形する際に容器本体内部は一時的に高温下に曝されるので、その内部に存在するエアは膨張した状態で容器本体が密閉される。このため、密閉性に優れ内部が常温で負圧の識別装置を簡便に得ることができる。また、成形時の熱により容器本体に封止蓋の一部が融着するので、成形後の封止蓋を容器本体に接着する従来に比較して封止蓋の容器本体への密着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の識別装置の縦断面を含む正面図。
【図2】その識別装置の組み立て手順を示す分解図。
【図3】その識別装置と送受信アンテナと識別監視装置の構成を示す概念図。
【図4】その識別装置を用いた車体の塗装工程を示す斜視図。
【符号の説明】
10 識別装置
11 ICチップ
12 第1断熱材
13 第2断熱材
14 密封容器
16 アンテナコイル
17 容器本体
17a 開口部
17d 凹溝
18 封止蓋
18b 凸条
【発明の属する技術分野】
本発明は、一時的に高温以下に曝される物品に取付けられる識別装置に関する。更に詳しくは、断熱材により被包されたICチップを有する物品の識別装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、物品の識別としてRF・ID(Radio Frequency IDentification)方式の実用化が図られている。このRF・ID方式では、識別すべき物品の情報をICチップのメモリに記憶させ、そのICチップを識別すべき物品に取付けている。このICチップが取付けれた物品は、そのメモリに記憶された情報を読みとる識別手段の近傍を通過する際に、その識別手段によりその情報を非接触で読みとられ、その物品はその情報により識別されるようになっている。
しかし、識別すべき物品が例えば自動車の塗装工程における組み立て途中の車体であって、塗装後にその塗膜を乾燥硬化させるために比較的高温下に保たれた乾燥炉を通過する車体である場合には、その車体に取付けられたICチップも一時的に高温環境下に曝される。一般的にICチップの使用温度範囲の上限値は塗膜の乾燥硬化温度よりも低いため、ICチップ自体の温度がその上限値を超えて上昇すると、そのICチップ自体が破壊してそのメモリに記憶された情報を正確に読みとることができなくなる不具合がある。
この点を解消するために、ICチップを断熱材により被包し、更に耐熱性樹脂からなる容器に密閉させた識別装置が知られている(特許第2825326号)。この装置ではICチップを断熱材により被包するので要求される耐熱性を確保できるとともに、そのICチップを断熱材とともに容器に密閉するので、機械的強度を向上させかつ外部塵埃の容器内部への侵入を防止できるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に断熱材の効果はその厚さに比例するので、断熱効果を高めるためにはICチップの周囲に設けられる断熱材の厚さを大きくすれば必要な断熱効果を得ることができる。しかし、上述した識別装置は物品に取付けられるものであるため、その必要な断熱効果を確保するために断熱材を厚くして比較的大きな識別装置を取付けたために、その物品の取り扱いが異なるようなことになればその装置の実効性を図ることはできない。このため、物品に取付けられる識別装置は従来の機能を維持した状態で可能な限り小型化されることが望まれる。
また、乾燥工程を含む製造ラインを流れる物品等に取付けられる識別装置では、密閉性を確保して浮遊塵埃に対する信頼性を向上させ、過酷な環境下における使用を可能にする必要もある。
本発明の目的は、要求される耐熱性を確保しつつ可能な限り小型化し得る物品の識別装置を提供することにある。
本発明の別の目的は、密閉性を十分に確保し得る物品の識別装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、ICチップ11を内包する第1断熱材12と、第1断熱材12を被包する第2断熱材13と、両端がICチップ11に接続されたアンテナコイル16と第2断熱材13を被包しかつ密封する耐熱性樹脂からなる密封容器14とを備えた識別装置10の改良である。
その特徴ある構成は、第1断熱材12は熱容量が0.4cal/cm3以上であって熱伝導率が0.5kcal/hr・℃以下であり、第2断熱材13は熱容量が0.008cal/cm3以上であって熱伝導率が0.15kcal/hr・℃以下であるところにある。
【0005】
この請求項1に係る発明では、識別装置10が高温環境下に曝されると、密封容器14の温度が上昇してその密封容器14に接触する第2断熱材13の温度が外側から上昇するが、第2断熱材13は単位時間あたりの第1断熱材12の温度上昇を有効に抑制する。第2断熱材13の内側部分の温度が上昇すると、第1断熱材12の温度が外側から上昇する。ここで、第1断熱材12は熱伝導率が第2断熱材13の熱伝導率より大きいが、熱容量が第2断熱材13より大きいので、ICチップ11に接触する第1断熱材12内側部分における単位時間あたりの温度上昇を有効に抑制する。このため、識別装置10が高温環境下に曝された時点からICチップ11の温度が上昇してそのICチップ11の使用温度範囲の上限値を超えるまでの時間を、単一の断熱材を使用した場合に比較して有効に引き延ばす。
ここで、第1断熱材12の好ましい熱容量は0.7cal/cm3以上であって好ましい熱伝導率は0.3kcal/hr・℃以下である。また、第2断熱材13の好ましい熱容量は0.05cal/cm3以上であって好ましい熱伝導率は0.02kcal/hr・℃以下である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明であって、第1断熱材12がポリフェニレンサルファイド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、超硬合金及又は微細斜長石からなる群より選ばれた1種又は2種以上の物質であり、第2断熱材13が珪藻土、泡ガラス、ガラスウール、又は無機質ファイバを含有するセラミック粉末の圧粉体からなる群より選ばれた1種又は2種以上の物質である物品の識別装置である。
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明であって、無機質ファイバを含有するセラミック粉末の圧粉体が5〜10wt%の無機質ファイバと30〜35wt%のチタニア粉と残部が微細多孔質シリカエアロゲルとからなる圧粉体であって、第2断熱材13がこの圧粉体とこの圧粉体を収納しシリカエアロゲルが細孔中に貫入して圧粉体の表面が内面に密着しかつ張力状態に保たれた多孔質繊維材料からなる包体とを有する物品の識別装置である。
この請求項2及び請求項3に係る発明では、請求項1に係る条件の第1断熱材12及び第2断熱材13を容易に得ることができる。なお、請求項2における無機質ファイバの好ましい値は6〜7wt%であり、チタニア粉の好ましい値は33〜34wt%である。
【0007】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれか記載の発明であって、密封容器14が、アンテナコイル16と第2断熱材13を開口部17aから収容可能に構成された容器本体17と、容器本体17の開口部17a側の端部外周を覆って容器本体17を密閉する封止蓋18とを備え、端部外周に1又は2以上の凹溝17dが全周にわたって形成され、凹溝17dの全周にわたって嵌合する凸条18bが封止蓋18に形成された物品の識別装置である。
この請求項4に係る発明では、識別装置10が高温環境下に曝されると、密封容器14内部の圧力が上昇するが、内部圧力の上昇はその凹溝17dと凸条18bの噛み合う力を強化させ、封止蓋18が容器本体17から外れたり浮き上がることを防止でき、密封容器14の密閉性が損なわれることを回避する。
【0008】
請求項5に係る発明は、請求項4記載の発明であって、有底筒状に形成されたボビン19の外周面に形成された凹部19aに巻き付けた耐熱性被覆導線によりアンテナコイル16が形成され、ボビン19は第2断熱材13を被包して容器本体17に僅かな隙間を持って挿入可能にかつ挿入状態で第2断熱材13が容器本体17の開口部側に露出しないように成形された物品の識別装置である。
この請求項5に係る発明では、アンテナコイル16の形成が容易になり、ボビン19が有底筒状であって挿入状態で第2断熱材13が容器本体17の開口部側に露出しないので、加熱されて溶融した樹脂を容器本体17の開口部に直接注入することが可能になり、封止蓋18を容器本体17に直接成形することができるようになる。
【0009】
請求項6に係る発明は、請求項4又は5記載の発明であって、封止蓋18が第2断熱材13を収容した容器本体17に直接樹脂成形して作られた物品の識別装置である。
この請求項6に係る発明では、樹脂成形して封止蓋18を成形する際に容器本体17内部は一時的に高温下に曝されるので、その内部に存在するエアは膨張した状態で封止蓋18で容器本体17が密閉される。このため、封止蓋を容器本体に直接樹脂成形して作ることにより、凹溝17d嵌合する凸条18bを含む封止蓋18を比較的容易に形成できるとともに、密閉性に優れ内部が常温で負圧の識別装置10を簡便に得ることができる。また、成形時の熱により容器本体17に封止蓋18の一部が融着するので、成形後の封止蓋を容器本体に接着する従来に比較して封止蓋18の容器本体17に対する密着性を向上させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、物品の識別装置10は、ICチップ11を内包する第1断熱材12と、この第1断熱材12を被包する第2断熱材13と、両端がICチップ11に接続されたアンテナコイル16とその第2断熱材13を被包しかつ密封する耐熱性樹脂からなる密封容器14とを備える。
【0011】
図3に示すように、ICチップ11は電源回路11aと無線周波数(RF)回路11bと変調回路11cと復調回路11dとCPU11eとこれに接続された物品固有の情報を記憶するメモリ11fを有する。電源回路11aはコンデンサ(図示せず)を内蔵し、このコンデンサはアンテナコイル16とともに共振回路を形成する。このコンデンサにはアンテナコイル16が特定の共振周波数の電波を受信したときにその電磁誘導で生じる電力が充電される。電源回路11aはこの電力を整流し安定化してCPU11eに供給し、ICチップ11を活性化する。メモリ11fはROM(read only memory)、RAM(ramdom-access memory)及びEEPROM(electrically erasable pogramable read only memory)を含み、CPU11eの制御の下で後に例示する識別手段30,31からの電波のデータ通信による読出しコマンドに応じて記憶されたデータの読出しを行うとともに、識別手段30,31からの書込みコマンドに応じてデータの書込みが行われる。
【0012】
図1に戻って、第1断熱材12は熱容量が0.4cal/cm3以上であって熱伝導率が0.5kcal/hr・℃以下の物質であり、具体的にはポリフェニレンサルファイド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、超硬合金及又は微細斜長石が挙げられる。これらの物質は1種のものであっても良く、又は2種以上のものであってもよい。この実施の形態ではポリフェニレンサルファイド樹脂を成形することにより作られた一対の部材12a,12bからなり、ICチップ11が装着される凹部12c,12cがそれぞれ形成され、その凹部12c,12cにICチップ11を収容して重ねることによりICチップ11を内包するように構成される。
【0013】
第2断熱材13は熱容量が0.008cal/cm3以上であって熱伝導率が0.15kcal/hr・℃以下の物質であり、具体的には珪藻土、泡ガラス、ガラスウール、又は無機質ファイバを含有するセラミック粉末の圧粉体が挙げられる。これらの物質は1種のものであっても良く、又は2種以上のものであってもよい。この実施の形態では無機質ファイバを含有するセラミック粉末の圧粉体(商標名;マイクロサーム(日本アエロジル社))を使用し、第2断熱材13はこの圧粉体となる5〜10wt%の無機質ファイバと30〜35wt%のチタニア粉と残部が微細多孔質シリカエアロゲルとからなる混合物を多孔質繊維材料からなる包体に収納し、包体の外部から金型により圧力を加えて成形することにより作られる。包体の外部から圧力が加えられる結果、上述した混合物は無機質ファイバを含有するセラミック粉末の圧粉体になり、圧粉体におけるシリカエアロゲルは包体の細孔中に貫入して圧粉体の表面は包体に密着する。圧粉体の表面が包体に密着する結果、包体自体は張力状態に保たれ、所定の形状に保たれた第2断熱材13が得られる。この実施の形態における第2断熱材13は一対の部材13a,13bからなり、この一対の部材13a,13bには、ICチップ11を被包した第1断熱材12が装着される凹部13c,13cがそれぞれ形成され、その凹部13c,13cに第1断熱材12を収容して重ねることによりその第1断熱材12を被包するように構成される。
【0014】
耐熱性樹脂からなる密封容器14は、アンテナコイル16と第2断熱材13を開口部17aから収容可能に構成された容器本体17と、容器本体17の開口部17a側の端部外周を覆ってこの容器本体17を密閉する封止蓋18とを備える。この実施の形態における容器本体17はガラス繊維で強化されたポリフェニレンサルファイド樹脂或いはフェノール樹脂を釣鐘状に成形することにより作られ、上部に図示しない物品に取付けるための取付部17bが形成される。この取付部17bには2個の取付孔17cが形成され、物品にはこの取付孔17cを使用して取付けることができるように構成される。この容器本体17の開口部17a側における端部外周には1本の凹溝17dが、耐熱性樹脂を成形する際に全周にわたって形成される。
【0015】
アンテナコイル16は後に例示する識別手段30,31からの電波を受信し又はその識別手段30,31に向けて電波を発生させるものであり、耐熱性被覆導線をボビン19に巻き付けることにより構成され、その両端はICチップ11にそれぞれ接続される。ボビン19は容器本体17と同一の耐熱性樹脂を成形することにより有底筒状に形成され、外周面に被覆導線を巻き付けるための凹部19aが全週にわたって形成される。ボビン19は第2断熱材13を挿入した状態の容器本体17に挿入され、容器本体17とともに第2断熱材13を被包するように構成される。ボビン19は容器本体17に僅かな隙間を持って挿入可能に構成され、その外底面は容器本体17に挿入した状態でその容器本体17の開口部17a側端縁と面一になるように成形される。
【0016】
封止蓋18は、第2断熱材13を収容した容器本体17に、容器本体17と同一の耐熱性樹脂を直接樹脂成形することにより作られる。この封止蓋18は、容器本体17の開口部17a側の端部外周を外側から覆う縁部18aを有し、この縁部18aにはその容器本体17の端部外周に形成された凹溝17d全周にわたって嵌合する凸条18bが形成される。
【0017】
図2に封止蓋18の具体的な成形手順を示す。即ち、ICチップ11を第1断熱材12で被包した後この第1断熱材12を第2断熱材13で更に被包し、この第2断熱材13をボビン19に挿入する。ICチップ11を被包する際にアンテナコイル16の両端は第1断熱材12及び第2断熱材13の重ね合わせ面に形成された図示しない溝に沿って配線され、それらの重ね合わせ面に隙間が生じないようにICチップ11は被包される。ボビン19に挿入された第2断熱材13はそのボビン19とともに容器本体17に、ボビン19外底面が容器本体17の開口部17a側端縁と面一になるまで挿入され、ボビン19は容器本体17とともに第2断熱材13を被包する。この状態で一方の金型片21に容器本体17を挿入する。一方の金型片21には容器本体17の形状に相応して形成された装着凹部21aが形成され、容器本体17を挿入した後、その一方の金型片21に他方の金型片22を締め付ける。
【0018】
他方の金型片22には封止蓋18の外形形状に相応した成型凹部22aが形成され、一方の金型片21に他方の金型片22を締め付けた状態で、他方の金型22に形成された樹脂注入溝22bから溶融した耐熱性樹脂を成型凹部22aに注入する。注入された溶融耐熱性樹脂は成型凹部22aの形状に沿って流動し、成型凹部22aの全体に行き渡った後に冷却硬化して図1に示す封止蓋18が作られる。流動する際に溶融耐熱性樹脂は容器本体17の開口部17a側の端部外周にまで流動し、その外周を外側から覆う縁部18aが形成され、容器本体17の端部外周に形成された凹溝17dにまで流動して侵入し凸条18bが形成される。また、樹脂成形して封止蓋18を作る際に容器本体17内部は一時的に高温下に曝されるので、その内部に存在するエアは膨張した状態で容器本体17が密閉される。このため、封止蓋18を容器本体17に直接樹脂成形して作ることにより、凹溝17dに嵌合する凸条18bを含む封止蓋18を比較的容易に形成できるとともに、密閉性に優れ内部が常温で負圧の識別装置10を簡便に得ることができる。
【0019】
このように構成された物品の識別装置を自動車の組み立て途中の車体に設けた塗装工程について説明する。
図4に示すように、本発明の識別装置10は塗装工程における組み立て途中の車体26のバンパ26aに吊下げられる。識別装置の吊下げは、容器本体17の取付部17bに形成された2個の取付孔17cを介して行われ、識別装置10が取付けられた車体26は台車27に搭載される。台車27は車体26を搭載した状態で移動可能に構成され、塗装工程及び加熱乾燥工程を移動することにより搭載された車体26の塗装及び乾燥を一連に行うように構成される。識別装置10に内蔵されたICチップ11のメモリ11fにはその装置10が取付けられた車体26の車台番号、塗装色、塗装工程、出荷先等が予め記憶され、車体26は塗装ロボット28により塗料がその表面に塗布され、その後図示しない乾燥炉により加熱されその塗料が乾燥硬化される。乾燥炉に車体26が搬入されると、車体26に取付けられた識別装置10もバンパ26aに吊下げられた状態で乾燥炉に搬入され、比較的高温の環境下に曝される。
【0020】
図1に示すように、識別装置10が高温環境下に曝されると、周辺環境と接する密封容器14の温度が上昇するが、密封容器14は耐熱性樹脂から形成されているため、その温度により変形等することはなく、ICチップ11を密封して保護する。密封容器14の温度が上昇すると、その密封容器14に接触する第2断熱材13の温度が外側から上昇する。ここで、第2断熱材13は熱伝導率が0.15kcal/hr・℃以下であるので、外側の密封容器14に接触する部分の温度が上昇しても、内包する第1断熱材12に接触する部分へ伝達する単位時間あたりの熱量は抑制される。また第2断熱材13の熱容量が比較的小さくてもその熱容量が0.008cal/cm3以上であれば単位時間あたりの第2断熱材13の温度上昇は比較的小さく、内包する第1断熱材12に接触する部分の温度上昇は比較的緩やかである。
【0021】
第1断熱材12に接触する第2断熱材13の内側部分の温度が徐々に上昇すると、その内側部分に接触する第1断熱材12の温度が外側から上昇する。ここで、第1断熱材12は熱伝導率が0.5kcal/hr・℃以下であり第2断熱材13の熱伝導率より大きく、第1断熱材12外側の熱は第2断熱材13に比較して早期にICチップ11まで達するが、熱容量が第2断熱材13の熱容量より大きい0.4cal/cm3以上であるので、ICチップ11に接触する第1断熱材12内側部分における単位時間あたりの温度上昇を有効に抑制する。このため、識別装置10が高温環境下に曝された時点からICチップ11の温度が上昇してそのICチップ11の使用温度範囲の上限値を超えるまでの時間は、単一の断熱材を使用した場合に比較して有効に引き延ばされる。
【0022】
また、第1断熱材12及び第2断熱材13の温度が上昇することにより密封容器14内部の圧力が上昇する。特に第2断熱材13には珪藻土、泡ガラス又はガラスウールが使用されるため、これらに内在するエアが温度上昇に伴い膨張して内部圧力を上昇させる。しかし、容器本体17の端部外周に凹溝17dを全周にわたって形成し、この凹溝17dの全周にわたって嵌合する凸条18bを封止蓋18に形成したので、内部圧力の上昇による容器本体17の変形はその凹溝17dと凸条18bの噛み合う力を強化させ、封止蓋18が容器本体17から外れたり浮き上がることはなく、密封容器14の密閉性が損なわれることはない。また、封止蓋18は第2断熱材13を収容した容器本体17に直接樹脂成形して作られるので、成形時には比較的高温環境下であるため、密封容器内部は常温で負圧になり、高温環境下に曝された場合に内部圧力は、常温で内部圧力が常圧の識別装置に比較して低い。また、成形時の熱により容器本体17及びボビン19に封止蓋18の一部が融着するので、成形後の封止蓋を容器本体に接着する従来に比較して封止蓋18の容器本体17に対する密着性は向上する。このため、外部塵埃の密封容器14の内部への侵入は有効に防止され、過酷な環境下における使用が可能になり、その寿命を比較的長期化することができる。
なお、ICチップ11の温度がその使用温度範囲の上限値を超える以前に車体26は乾燥炉から台車27に搭載された状態で取り出され、その後識別手段により車体26の識別が行われる。
【0023】
次に、塗装工程におけるライン近傍に設けられた車体の識別手段による車体の識別について説明する。
図3及び図4に示すように、この実施の形態における車体26の識別手段30,31は、送受信アンテナ30と識別監視装置31とを備える。送受信アンテナ30は、車体26の塗装工程におけるライン近傍に設けられかつ巻回された被覆電線である。この送受信アンテナ30は、その近傍を通過する車体26の識別装置10に電波を送信しかつ識別装置10のアンテナコイル16からの電波を受信可能に構成される。図3に示すように、送受信アンテナ30は識別監視装置31に接続され、識別監視装置31は、電源回路32と無線周波数(RF)回路33と変調回路34と復調回路35を備える。更に識別監視装置31はCPU36とこれに接続されたメモリ37、ディスプレイ38、入力装置39及びタイマ40を有する。
【0024】
この識別監視装置31は、送受信アンテナ30を介して識別装置10のアンテナコイル16に特定周波数の電波を送信してICチップ11を活性化し、かつそのチップ11のメモリ11fに対してデータの読出し・書込みを行い送受信アンテナ30を介して受信するアンテナコイル16からの応答信号により物品を識別してその車体26の車台番号、塗装色、塗装工程、出荷先等をメモリ37に記録する。具体的には、送受信アンテナ30の近傍を識別装置10が車体26に取付けられた状態で通過すると、識別監視装置31はその送受信アンテナ30を介して識別装置10のアンテナコイル16に向けてその識別コード質問信号を特定周波数の電波により送信する。この実施の形態における質問信号は2値化されたデジタル信号である。識別監視装置31から発せられるデジタル信号は、図示しない信号発生器から発せられ変調回路34で変調を受ける。RF回路33ではこの変調した信号を増幅して送受信アンテナ30から送信する。この変調には例えばASK(振幅変調)、FSK(周波数変調)又はPSK(位相変調)が挙げられる。
【0025】
送信された質問信号の電波は識別装置10のアンテナコイル16に受信され、この受信により、電源回路11aのコンデンサにはその電磁誘導で生じる電力が充電される。電源回路11aは充電された電力を整流し安定化して、CPU11eに供給し、ICチップ11を活性化する。次いでICチップ11のRF回路11bでは復調に必要な信号のみを取込み、復調回路11dで元のデジタル信号の質問信号を再現させてメモリ11fから車体26に関するデータを送信する。このデータの送信は2値化された識別コードをICチップ11の変調回路11cで変調し、RF回路11bで増幅してアンテナコイル16から送出することにより行われる。
【0026】
送信されたデータは送受信アンテナ30を介して識別監視装置31が受信し、識別監視装置31は識別装置10からのそのデータにより車体26を識別してタイマ40からの時刻に関するデータとともにその車体26が塗装された事実をメモリ37に記憶する。これとともに、識別監視装置31は車体26に関する情報とその塗装が行われた時間をディスプレイ38に表示するようになっている。この表示により作業員は車体26の塗装が予定されているものであって、その予定されている時間に塗装がされたことを確認し、その車体26に関する一連の塗装工程を終了させる。
【0027】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
図1に示すように、縦8.0mm、横5.0mm及び高さが0.39mmであって、140℃以下で正常動作するICチップ11に熱電対を接着し、そのICチップ11をポリフェニレンサルファイド樹脂て被包し、直径が50mm厚さが25mmの第1断熱材12を得た。この第1断熱材12を厚さが25mmの無機質ファイバを含有するセラミック粉末の圧粉体(商標名;マイクロサーム(日本アエロジル社))からなる第2断熱材13で被包し、ICチップを内包する第1断熱材12を被包する直径が100mm厚さが75mmの識別装置10を得た。この密封容器14を持たない仮の識別装置10を実施例1とした。
【0028】
<比較例1>
実施例1と同一のICチップに熱電対を接着し、そのICチップをポリフェニレンサルファイド樹脂のみで被包し、直径が100mm厚さが75mmの識別装置を得た。密封容器14及び実施例1における第2断熱材13を持たないこの仮の識別装置を比較例1とした。
<比較例2>
実施例1と同一のICチップに熱電対を接着し、そのICチップを無機質ファイバを含有するセラミック粉末の圧粉体(商標名;マイクロサーム(日本アエロジル社))からなる断熱材で被包し、ICチップを内包する直径が100mm厚さが75mmの識別装置を得た。密封容器14及び実施例1における第1断熱材12を持たないこの仮の識別装置を比較例2とした。
【0029】
<比較試験1及びその結果>
実施例1の仮の識別装置及び比較例2の仮の識別装置を30℃の室温からそれぞれ200℃の恒温槽に入れた。その後90分経過した後におけるICチップのそれぞれの温度を測定した。この結果、実施例1のICチップの温度は110℃であったが、比較例2のICチップの温度は147℃であった。
<比較試験2及びその結果>
実施例1の仮の識別装置及び比較例1の仮の識別装置を、温度サイクル試験器を用いて30℃の室温に30分曝した後250℃の高温雰囲気中に30分曝すことを1サイクルとして計1000サイクル繰り返す温度サイクル試験を行った。この温度サイクル試験の途中におけるそれぞれのICチップの温度変化を測定した。この結果、実施例1のICチップの温度は100℃から140℃の範囲で変動したが、比較例1のICチップの温度は室温である30℃から240℃の範囲で変動した。この試験の後、双方のICチップの動作の有無を確認した結果、実施例1のICチップは正常に動作したが、比較例1のICチップは故障していた。
【0030】
<評価>
比較試験1の結果から、単一の断熱材を使用した比較例2に比較して実施例1のICチップの温度上昇は緩やかであることがわかる。これは実施例1は性質の異なる2種以上の断熱材を使用した結果によるものと考えられる。
また、比較試験2の結果から、単一の断熱材を使用した比較例1はICチップの温度変化は激しくその上限はそのICチップの保存上限値を超えていることがわかる。これに対して実施例1では、ICチップの温度は比較的高温の範囲で変動するが、その上限はそのICチップの保存上限値を超えていない。これも実施例1は性質の異なる2種以上の断熱材を使用した結果によるものと考えられる。これは温度サイクル試験後におけるICチップの動作確認において、実施例1のICチップは正常に動作したのに対して、比較例1のICチップは故障していたことからもわかる。なお、比較例1のICチップが故障したのは、比較例1ではICチップの温度がそのICチップの保存上限値を超えたことに起因する、いわゆるパープルプレーグが原因と考えられる。
これらのことから実施例1の第2断熱材を密封容器で被包する本発明の識別装置は要求される耐熱性を確保しつつ可能な限り小型化し得ることがわかる。
【0031】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば熱容量及び熱伝導率が異なる第1断熱材及び第2断熱材でICチップを被包するので、識別装置が高温下に曝されて密封容器の温度が上昇しても、ICチップの単位時間あたりの温度上昇を、単一の断熱材を使用した場合に比較して有効に引き延ばすことができる。この結果、要求される耐熱性を確保しつつ可能な限り識別装置を小型化することができる。
また、密封容器を容器本体と、その開口部側の端部外周を覆って容器本体を密閉する封止蓋とを備え、端部外周に1又は2以上の凹溝を全周にわたって形成し、凹溝の全周にわたって嵌合する凸条を封止蓋に形成すれば、封止蓋が容器本体から外れたり浮き上がることを有効に防止できるとともに、高温環境下に曝されることによる密封容器の内部圧力の上昇はその凹溝と凸条の噛み合う力を強化させるので、密封容器の密閉性を確保することもできる。
更に、容器本体に直接樹脂成形して封止蓋を作れば、凹溝に嵌合する凸条を含む封止蓋を比較的容易に形成できるとともに、樹脂成形する際に容器本体内部は一時的に高温下に曝されるので、その内部に存在するエアは膨張した状態で容器本体が密閉される。このため、密閉性に優れ内部が常温で負圧の識別装置を簡便に得ることができる。また、成形時の熱により容器本体に封止蓋の一部が融着するので、成形後の封止蓋を容器本体に接着する従来に比較して封止蓋の容器本体への密着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の識別装置の縦断面を含む正面図。
【図2】その識別装置の組み立て手順を示す分解図。
【図3】その識別装置と送受信アンテナと識別監視装置の構成を示す概念図。
【図4】その識別装置を用いた車体の塗装工程を示す斜視図。
【符号の説明】
10 識別装置
11 ICチップ
12 第1断熱材
13 第2断熱材
14 密封容器
16 アンテナコイル
17 容器本体
17a 開口部
17d 凹溝
18 封止蓋
18b 凸条
Claims (6)
- ICチップ(11)を内包する第1断熱材(12)と、前記第1断熱材(12)を被包する第2断熱材(13)と、両端が前記ICチップ(11)に接続されたアンテナコイル(16)と前記第2断熱材(13)を被包しかつ密封する耐熱性樹脂からなる密封容器(14)とを備えた識別装置(10)において、
前記第1断熱材(12)は熱容量が0.4cal/cm3以上であって熱伝導率が0.5kcal/hr・℃以下であり、
前記第2断熱材(13)は熱容量が0.008cal/cm3以上であって熱伝導率が0.15kcal/hr・℃以下である
ことを特徴とする物品の識別装置。 - 第1断熱材(12)がポリフェニレンサルファイド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、超硬合金及又は微細斜長石からなる群より選ばれた1種又は2種以上の物質であり、第2断熱材(13)が珪藻土、泡ガラス、ガラスウール、又は無機質ファイバを含有するセラミック粉末の圧粉体からなる群より選ばれた1種又は2種以上の物質である請求項1記載の物品の識別装置。
- 無機質ファイバを含有するセラミック粉末の圧粉体が5〜10wt%の無機質ファイバと30〜35wt%のチタニア粉と残部が微細多孔質シリカエアロゲルとからなる圧粉体であって、第2断熱材(13)が前記圧粉体と前記圧粉体を収納しシリカエアロゲルが細孔中に貫入して前記圧粉体の表面が内面に密着しかつ張力状態に保たれた多孔質繊維材料からなる包体とを有する請求項2記載の物品の識別装置。
- 密封容器(14)が、アンテナコイル(16)と第2断熱材(13)を開口部(17a)から収容可能に構成された容器本体(17)と、前記容器本体(17)の前記開口部(17a)側の端部外周を覆って前記容器本体(17)を密閉する封止蓋(18)とを備え、
前記端部外周に1又は2以上の凹溝(17d)が全周にわたって形成され、前記凹溝(17d)の全周にわたって嵌合する凸条(18b)が前記封止蓋(18)に形成された請求項1ないし3いずれか記載の物品の識別装置。 - 有底筒状に形成されたボビン(19)の外周面に形成された凹部(19a)に巻き付けた耐熱性被覆導線によりアンテナコイル(16)が形成され、ボビン(19)は第2断熱材(13)を被包して容器本体(17)に僅かな隙間を持って挿入可能にかつ挿入状態で前記第2断熱材(13)が容器本体(17)の開口部側に露出しないように成形された請求項4記載の物品の識別装置。
- 封止蓋(18)が第2断熱材(13)を収容した容器本体(17)に直接樹脂成形して作られた請求項4又は5記載の物品の識別装置。
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