JP3785584B2 - 電動式パワーステアリングシステムの異常検出制御装置 - Google Patents

電動式パワーステアリングシステムの異常検出制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステアリングホイールを操作したとき、その操舵トルクにアシストトルクを付加して操作性を良くする電動式パワーステアリングシステムの異常検出制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電動式パワーステアリングシステムにおいては、例えば、特開昭64−56274号公報或いは特開平2−293260号公報等に開示されているように、操舵トルクとアシストトルクを電気信号に変換し、これらを電気制御ユニット(以下ECUと云う)により制御している。
ECUには、これらの制御回路とともに、故障検出機構及びアシスト禁止機構が設けられている。即ち、操舵トルクとアシストトルクの関係が許容範囲を越えたときこれらをソフト的に比較して故障検出を行い、さらに、この検出信号に基づいてアシスト禁止の制御を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の電動式パワーステアリングシステムのECUにおいては、操舵トルクからアシストトルクを演算する制御回路とともに、電気的に構成された故障検出機構及びアシスト禁止機構が設けられているので、これらを構成するハードやソフトが必要であり、システムが複雑になってコスト高になるという問題がある。
【0004】
また、車両を安全に運行するために、高速時におけるアシストトルクは、低速時におけるアシストトルクよりも小さく設定することが考えられるが、このように車速に応じて2種類のアシストトルクが適用された場合の故障検出機構及びアシスト禁止機構の開発が要望されている。
【0005】
また、縁石等に接触して操舵トルクが大きくなった場合には、広い範囲でアシストトルクを付加することが有効であり、パワーステアリングの制御許容範囲の範囲を拡大することが要望されている。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、操舵トルク及びアシストトルクを機械的変位量として直接比較して、故障検出機構及びアシスト禁止機構を一体化し、制御許容範囲の範囲を拡大するとともに、アシストトルクの異なる高速時及び低速時にも適用し得る電動式パワーステアリングシステムの異常検出制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために請求項1の発明が採った手段は、実施例で使用する符号を付して説明すると、
ステアリングホイール1の操舵トルクを検出し、この検出信号に応じて低速時においては所定の関係でアシストモータ10のトルクを付加し、高速時には低速時よりも小なる比率でアシストモータ10のトルクを付加する電動式パワーステアリングシステムにおいて、
前記操舵トルクを検出する第1の検出手段20と、
前記アシストモータ10の付加トルクを検出する第2の検出手段30と、
低速比較部41及び高速比較部42を備え正常時は通電状態にあり前記操舵トルクと前記付加トルクとの関係が所定の範囲を越えたとき断電状態に切り換わり前記付加トルクを零にする比較手段40と、
車速を検知して前記低速比較部41又は高速比較部42の何れか一方を選択する車速スイッチ43とを備えたものにおいて、
低速比較部41を、
前記第1の検出手段20の検出信号に応じて変位する第1、第2の電極52,53と、これらの電極に対して正常時は通電状態にあり低速時の第2の検出手段30の検出信号に応じて変位する低速用ブラシ54と、前記第1及び第2の電極52,53が一方向に所定の距離変位したとき第1の電極52のみの変位を阻止する第1のストッパ55と、前記第1及び第2の電極52,53が他方向に所定の距離変位したとき第2の電極53のみの変位を阻止する第2のストッパ56とから構成するとともに、
高速比較部42を、
前記第1の検出手段20の検出信号に応じて変位する第3、第4の電極59,60と、これらの電極に対して正常時は通電状態にあり高速時の前記第2の検出手段30の検出信号に応じて変位する高速用ブラシ61と、前記第3及び第4の電極59,60が一方向に所定の距離変位したとき第3の電極59のみの変位を阻止する第3のストッパ62と、前記第3及び第4の電極59,60が他方向に所定の距離変位したとき第4の電極60のみの変位を阻止する第4のストッパ63とから構成したところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、前記高速比較部42における高速用ブラシ61の変位は、前記低速比較部41における低速用ブラシ54の変位に対して、前記アシストトルクの比率に反比例して拡大されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、前記高速比較部42における第3,第4の電極59,60の通電範囲は、前記低速比較部41における第1,第2の電極52,53の通電範囲に対して、前記アシストトルクの比率に反比例して拡大されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、前記第1,第2の電極52,53及び第3,第4の電極59,60がブラシ54,61と接触する位置は、中立位置において各電極が当接するストッパ側が広く、反対側が狭く設定されているところに特徴を有する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施例につき図1〜18図を参照して説明する。
まず、電動式パワーステアリングシステムに関して図13を参照して説明する。
ステアリングホイール1を操作すると、その操舵トルクはギヤーケース2の入力軸3に伝達され、出力軸4の下端のピニオンを介してラック5を駆動する。このラック5は操舵リンク6を介して車輪7の方向を変える。
【0012】
一方、ギヤーケース2に取付けられたトルクセンサ8が操舵トルクを検出し、その電気信号が電気制御装置(以下ECUと云う)9に入力される。そして、ECU9からの信号に基づいてアシストモータ10が駆動される。このアシストモータ10のトルクは、電磁クラッチ11を介してギヤーケース12の入力軸13に伝達され、出力軸14の下端のピニオンを介してラック5を駆動する。このラック5は、ステアリングホイール1の出力軸4とともに、アシストモータ10の出力軸14により駆動されるので、操作性が著しく改善される。
【0013】
ここで、電磁クラッチ11は、図14に示すように、アシストモータ10の端面に取着されたソレノイド15と、モータ軸10aに連結された第1のデイスク16及びピニオン軸17に連結された第2のデイスク18とから構成されており、ソレノイド15が通電されると、第1のデイスク16及び第2のデイスク18が一体化されてアシストモータ10のトルクがピニオン軸17、ギヤ19を介して入力軸13に伝達されるようになっている。
【0014】
つぎに、操舵トルクを検出する第1の検出手段として、トーションバー方式の第1の検出装置20について図14〜図16を参照して説明する。
入力軸3及び出力軸4は、それぞれギヤーケース2に回転可能に取付けられている。トーションバー21は上端部がピン22により入力軸3に一体化され、下端が出力軸4の孔部4aに一体的に圧入されている。従って、入力軸3に入力されたトルクは、トーションバー21を介して出力軸4に伝達される。
【0015】
一方、入力軸3の外側にはスリーブ23が嵌合されている。このスリーブ23には軸方向に平行な長溝24と、傾斜溝25が形成されている。そして、長溝24には出力軸4に固定されたピン26が挿入され、傾斜溝25には入力軸3に固定されたピン27が挿入されている。即ち、スリーブ23は出力軸4に対して軸方向には移動するが、円周方向には回転しない。
【0016】
ここで操舵トルクが入力軸3から出力軸4へ伝達されるとき、トーションバー21にねじり角が発生して、入力軸3と出力軸4との間に円周方向のずれが発生する。従って、入力軸3に固定されたピン27は傾斜溝25内を移動して、スリーブ23がその軸方向へ所定量例えば寸法Hだけ上昇する。第1の検出装置20は、この寸法Hを検出量として取り出すもので、スリーブ23の外周面には溝28が形成されている。
【0017】
一方、アシストモータ10の付加トルクを検出する第2の検出手段としての第2の検出装置30は、アシストモータ10の伝達力を検知するためにギヤーケース12に設けられたもので、これは、第1の検出装置20と同じ構成のトーションバー式であり、入力軸13の外周部にスリーブ23が設けられている。そして、前述と同様に、スリーブ23の変位量がアシストモータ10の付加トルクとして検出される。
【0018】
つぎに、比較手段40を機械的に構成したI/Oスイッチ40について、図1、〜図13を参照して説明する。
比較手段40は、低速比較部41と、高速比較部42とから構成されている。これらは、車速を検出する車速検出手段からの信号により車速スイッチ43が切換えられ、低速比較部41または高速比較部42の何れか一方が選択される。
【0019】
そして、低速時においては、操舵トルクに対して図7に制御線44に示すようなアシストトルクが付加され、高速時においては、制御線45に示すようなアシストトルクが付加される。そして、高速時のアシストトルクは低速時のアシストトルクの1/Nとなっている。
【0020】
低速比較部41は、図1に示すように、絶縁基板51の中央部に貼付けた第1の電極52と、この第1の電極52に対向して配置された第2の電極53と、これら第1及び第2の電極52,53の表面を摺動する低速用ブラシ54及び第1及び第2のストッパ55,56とから構成されている。
低速比較部41のレバー57は、図15及び図16に示す第1の検出装置20のスリーブ23の溝28に嵌合しており、第1及び第2の電極52,53はスリーブ23の変位量に応じて軸方向に所定量例えば寸法Hだけ移動される。
尚、この移動は、直線的に摺動させてもよく、また、円周方向に回動させてもよい。
【0021】
第1のストッパ55は、第1及び第2の電極52,53が図1に示す一方向である矢印A方向へ移動したとき、絶縁基板51に当接して第1の電極52の変位を阻止する。また、第2のストッパ56は、第1及び第2の電極52,53が図1に示す他方向である矢印B方向へ移動したとき、絶縁基板51に当接して第2の電極53の変位を阻止する。
また、第1及び第2の電極52,53とレバー57との間にはスプリング58が介装されている。
【0022】
尚、中立位置において第1の電極52と低速用ブラシ54が接触する位置は、第1のストッパ55側52aが広く、反対側52bが狭く設定されており、第2の電極53と低速用ブラシ54が接触する位置は、第2のストッパ56側53aが広く、反対側53bが狭く設定されている。
【0023】
高速比較部42は、絶縁基板51の中央部に貼付けた第3の電極59と、この第3の電極59に対向して配置された第4の電極60と、これら第3及び第4の電極59,60の表面を摺動する高速用ブラシ61及び第3及び第4のストッパ62,63とからとから構成されている。これら第3及び第4の電極59,60は、第1及び第2の電極52,53と同様にレバー57により変位される。
【0024】
第3のストッパ62は、第3及び第4の電極59,60が図1に示す一方向である矢印A方向へ移動したとき、絶縁基板51に当接して第3の電極59の変位を阻止する。また、第4のストッパ63は、第3及び第4の電極59,60が図1に示す他方向である矢印B方向へ移動したとき、絶縁基板51に当接して第4の電極60の変位を阻止する。
【0025】
尚、中立位置において、第3の電極59が高速用ブラシ61と接触する位置は第3のストッパ62側が広く、反対側が狭く設定さており、第4の電極60が高速用ブラシ61と接触する位置は第4のストッパ63側が広く、反対側が狭く設定さている。
また、第3及び第4の電極59,60の幅寸法(通電範囲)は、第1及び第2の電極52,53の幅寸法のN倍に設定されている。
【0026】
低速用ブラシ54及び高速用ブラシ61は、変位レバー64を介して移動される。この変位レバー64は支点64aを中心に回動され、これの中間点64bに低速比較部41の低速用ブラシ54が連結され、先端64cに高速比較部42の高速用ブラシ61が連結されており、反対側の端部64dにプッシュプルワイヤ65が連結されている。このプッシュプルワイヤ65は第2の検出装置30の検出量に応じて変位レバー64を回動させる。そして、支点64aから先端64cまでの長さは、支点64aから中間点64bまでの長さのN倍に設定されている。
【0027】
高速時における変位レバー64の端部64dの変位は(アシストトルクに比例する)、低速時の端部64dの変位の1/Nに減少するが、高速用ブラシ61の変位は変位レバー64により低速時の低速用ブラシ54のN倍に拡大されるので、基準位置における第3及び第4の電極59,60と高速用ブラシ61の関係位置は、低速時と同様に維持される。
【0028】
ここで、低速走行時において、操舵トルクによる第1の検出装置20の検出量(電極52,53の移動量)と、アシストトルクによる第2検出装置30の検出量(低速用ブラシ54の移動量)との関係は、図8に示す制御線44に沿って制御される。この際、図8において、後述するように、pqrstp’q’r’s’t’で囲まれた制御許容範囲は、正常時は第1の電極52,第2の電極53が低速用ブラシ54を介して接触して電源ラインが通電状態にあって正常状態で稼働されることを示し、制御許容範囲を越えた斜線部分では、低速用ブラシ54が第1、第2の電極52,53から逸脱して電源ラインが断電状態に切換わり、異常範囲(フェールエリア)となることを示すものである。
【0029】
また、高速走行時における操舵トルクによる第1の検出装置20の検出量(第3、第4の電極59,60の移動量)と、アシストトルクによる第2検出装置30の検出量(高速用ブラシ61の移動量)との関係は、図9に示す制御線45に沿って制御される。この場合においても、pqrstp’q’r’s’t’で囲まれた制御許容範囲は、第3の電極59,第4の電極60が高速用ブラシ61を介して接触して電源ラインが通電状態にあり正常状態で稼働されることを示し、制御許容範囲を越えた斜線部分では、高速用ブラシ61が第3、第4の電極59,60から逸脱して電源ラインが断電状態に切換わり、異常範囲(フェールエリア)となることを示すものである。
【0030】
ここで、比較手段40の基本的な作用に関して説明する。低速比較部41及び高速比較部42の何れの場合も同じであるので、低速比較部41の場合について図1〜図8を参照して説明する。尚、第1、第2の電極52,53が矢印A方向へ移動した場合も矢印B方向に移動したときも、その作用は同じであるので、矢印A方向へ移動する場合を例にして説明する。
【0031】
1,操舵トルク及びアシストトルクがともに加わっていない場合(図10のSTEP10)は、図8におけるO点(制御許容範囲)に相当し、図1に示すように、第1、第2の電極52,53に低速用ブラシ54が接触して、電源は通電状態にある。
【0032】
2,操舵トルクとアシストトルクが正常関係にある(制御線44に沿って移動する)場合(STEP11)
第1、第2の電極52,53及び低速用ブラシ54が図1に示す関係を維持して移動する。絶縁基板51が第1のストッパ55に当接すると(図8のH点、図2)、第1の電極52の移動が停止する。第2の電極53及び低速用ブラシ54は引続き所定の関係を維持して移動して、通電状態は維持される。
【0033】
そして、更に低速用ブラシ54が移動して、図3に示すように電極52aの幅に相当する距離を越えると(図8に示すJ点、STEP12)電源は断電状態に切り替わる。
ところで、H点における制御許容範囲の幅寸法H1は、第2の電極53の幅寸法53aに対応して増減し、制御許容範囲の幅寸法H2は、第2の電極53の幅寸法53aに対応して変化させることができる。
【0034】
3,操舵トルクよりもアシストトルクが大き過ぎる場合(STEP13、図4)
低速用ブラシ54が第2の電極53よりも早く進行するので、図8に示すK点(フェールエリア)に達すると、低速用ブラシ54は第2の電極53を通過して絶縁基板51上に移動して、電源が断電状態となり、故障を検出する。
【0035】
4,操舵トルクよりもアシストトルクが小さ過ぎる場合(STEP13、図5及び図6)
第1の電極52(絶縁基板51)が第1のストッパ55に当接するときに低速用ブラシ54が第1の電極52に接触していれば、第1の電極52が停止するので、低速用ブラシ54は引続き電極52aの幅に相当する距離を移動する間通電状態が維持され(図8のL1点,L2点、図5)、電極52aから外れたとき即ち図8に示す「rst」線を越えたとき電源は断電状態に切り替わる。
また、第1の電極52が第1のストッパ55に当接する前に低速用ブラシ54が第1の電極52から外れると(M1点、図6)、そのとき電源が断電状態となる。
【0036】
5,アシストトルクが逆方向に作用した場合(STEP14、図6)
低速用ブラシ54が反対方向に移動するので、図8に示すM2点(フェールエリア)に位置する。低速用ブラシ54は絶縁基板51上に移動して電源が断電状態となる。
【0037】
尚、上記実施例中で、第1の電極52(絶縁基板51)と第1のストッパ55との間の距離及び第2の電極53(絶縁基板51)と第2のストッパ56との間の距離を0に設定すれば、その制御許容範囲は、図11に示すように変化する。
【0038】
車速検知手段が高速走行を検知すると、車速スイッチ43が切換わり、高速比較部42が選択される。
この高速比較部42においても、前記低速比較部41の場合と同じ作用を呈するものであって、上述した説明中、第1の電極52を第3の電極59に、第2の電極53を第4の電極60に、低速用ブラシ54を高速用ブラシ61に、第1のストッパ55を第3のストッパ62に、第2のストッパ56を第4のストッパ63に読み替えれば、同様に理解される。
【0039】
尚、高速用ブラシ61の移動量は、低速用ブラシ54に対してN倍に拡大されているが、第3及び第4の電極59,60の幅寸法を拡大しているので、制御許容範囲を低速時と同様に設定できる。
また、第3の電極59(絶縁基板51)と第3のストッパ62との距離及び第4の電極60(絶縁基板51)と第4のストッパ63との間の距離を0に設定すれば、その制御許容範囲範囲は、図12に示すように変化する。
【0040】
つぎに、これらの制御回路及びフェールセーフ機能について図17,18を参照して説明する。
イグニッションスイッチ71及びエンジンスタータ連動リレーの接点72をオンにすると、直流電源73が回路に接続される。エンジンスタータ接点72にはリレーコイル74が直列に接続されており、接点72をオフにしても接点75及び接点76が自己保持される。接点75は、I/Oスイッチ40の低速比較部41高速比較部42及びリレーコイル74に直列に接続されており、また、接点76はアシストモータ10のトルクをギヤ−ケース12に伝達するか否かを制御する電磁クラッチ11のソレノイド11aに直列に接続されている。尚、リレー74と並列にコンデンサ77が接続されている。
【0041】
つぎに、図18において、車速検知手段が先ず低速走行であることを検知すると(図18のSTEP20)、車速スイッチ43が切換えられて低速比較部41が選択される。また、車速が高速に移行すると高速比較部42が選択される(図18のSTEP21)。
【0042】
ステアリングホイール1を操作すると、第1の検出装置20が操舵トルクを検出し、また、第2の検出装置30がアシストトルクを検出する。そして、両者をI/Oスイッチ40で比較して(図18のSTEP22)、その関係が制御許容範囲であれば、I/Oスイッチ40が通電状態を保持し、パワーアシストが継続される(STEP26)。
【0043】
一方、その関係が異常範囲になると、即ちフェールエリアに入ると、前述のように、I/Oスイッチ40が断電状態となり、故障を検出する。すると、リレー74がオフとなるので(STEP23)、その接点75及び接点76も同時にオフとなる。
これにより、ソレノイド11aが断電されて(STEP24)、電磁クラッチ11が遮断される。そして、アシストモータ10のトルクはギヤーケース12に伝達されないので、アシストトルクは零となって、アシスト禁止を実施する。即ち、異常を検出するとフェールセーフ機能が働いてマニュアルステアリングに切換えられるのである(STEP25)。
【0044】
尚、本実施例においては、急ハンドルや振動等によりI/Oスイッチ40が瞬間的に断電状態となっても、コンデンサ77の容量に応じた時間だけ接点75及び接点76が自己保持されるので、その分、誤フェールの発生が未然に防止できる。
【0045】
上記した第1の実施例によれば、つぎの効果を奏する。
(1)比較手段としてのI/Oスイッチ40に低速比較部41及び高速比較部42を設け、車速に応じて何れか一方を選択するので、高速走行時においても適切なパワーステアリング制御を行なうことができる。
(2)I/Oスイッチ40を互いに相対的に移動する電極52,53と低速用ブラシ54及び電極59,60と高速用ブラシ61で構成し、故障検出機構とアシスト禁止機構を一体化したので、構造が簡単にすることができコストを低減し得て、しかも信頼性を向上させることができる。
【0046】
(3)フェールセーフ機能はI/Oスイッチ40により制御しECU9に対して別個に設けているので、たとえECU9に故障が発生してもフェールセーフが可能である。
(4)I/Oスイッチ40は、第1、第2の電極52,53と低速用ブラシ54または電極59,60と高速用ブラシ61との機械的変位を直接比較するので、電極の寸法を変えることにより、フェールセーフの調整範囲を変化できる。
【0047】
(5)I/Oスイッチ40は、第1、第2の電極52,53にそれぞれストッパ55,56を設け、第3、第4の電極59,60にそれぞれストッパ62,63を設けたので、パワーステアリングの制御許容範囲を広く設定することができる。
(6)高速比較部42の第3、第4の電極59,60を、高速用ブラシ61の変位量に応じて低速比較部41の第1、第2の電極52,53よりも大きく設定したので、低速時及び高速時のフェールセーフの調整範囲を同じ管理限界で管理できる。
【0048】
図19〜図22は本発明の第2の実施例を示すもので、第1の実施例との相違点を説明する。
第2の実施例においては、アシストモータ10のモータ軸10aにウォームギヤー81が連結されており、これに噛み合うウォームホィール82と、ウォームホィール82と一体化された図示しないピニオンを介してアシストトルクがラック5に伝達される。
【0049】
また、第2の検出手段として、アシストモータ10に直列に接続された比例ソレノイド31が使用されている。この比例ソレノイド31は、アシストモータ10の回路電流が流れるソレノイドと、このソレノイドの内部を移動するプランジャとから構成されている。
【0050】
このプランジャは、ソレノイドの電流が大になると移動距離が大となり、ソレノイドの電流が小になれど移動距離も小となる。即ち、アシストモータ10のアシストトルクが大となって電流が大となると、プランジャの移動距離も大となり、アシストトルクが小となって電流が小となると、プランジャの移動距離も小となる。
また、比例ソレノイド31に並列に車速スイッチ43及び低速比較部として機能する抵抗32が接続されている。
【0051】
尚、第2の検出手段は、比例ソレノイドに限らず、アシストモータ10の回路電流に関連して作動するモータによっても良く、要はアシストモータ10のアシストトルクを機械的変位に変換できる手段であれば特に限定されない。
【0052】
つぎに、第2の実施例の作用について説明する。
アシストモータ10の回路には、比例ソレノイド31とリレー74により自己保持される接点33が直列に接続されている。また、比較手段40の回路には、車速スイッチ43と連動して作動する選択スイッチ34が設けられ、車速に応じて低速比較部41または高速比較部42を選択するようになっている。
【0053】
車両がスタートすると、図22において、車速検出手段が低速であることを検知して(STEP30)、ECU9からの信号により車速スイッチ43がオンとなり(STEP31)、選択スイッチ34が低速比較部41に接続される。アシストモータ10の電流は、比例ソレノイド31と抵抗32とに分流する。
【0054】
ステアリングホイール1を操作すると、第1の検出装置20が操舵トルクを検出して第1及び第2の電極52,53が変位する。また、アシストモータ10のトルクに応じて比例ソレノイド31のプランジャが移動して低速用ブラシ54を変位させる。
そして、両者をI/Oスイッチ40で比較して(STEP32)、その関係が正常範囲であれば、I/Oスイッチ40が通電状態を保持し(STEP36)、パワーアシストが継続される。
【0055】
その関係が異常範囲になると、前述のように、I/Oスイッチ40が断電状態となる。すると、リレー74がオフとなるので(STEP33)、その接点75及び接点33も同時にオフとなる。
これにより、アシストモータ10が断電されて(STEP34)、アシストトルクは零となる。即ち、異常を検出するとフェールセーフ機能が働いてマニュアルステアリングに切換えられるのである(STEP35)。
【0056】
つぎに、車速が増加して高速状態になると、アシストトルクは図9の制御線45のように変化する。一方、車速検出手段により車速スイッチ43がオフに切換えられ、選択スイッチ34が高速比較部42に接続される。アシストモータ10の電流が比例ソレノイド31に流れる(STEP31)。この場合、比例ソレノイド31が検出する変位量は、比例ソレノイド31と抵抗32とが並列に接続されている低速時の変位量のN倍になるように設定されている。
そして、フェールセーフ機能に関しては第1の実施例と同様に制御される。
【0057】
尚、上記第2の実施例においては、第1の実施例と同様に高速時においても低速時と同じ管理限界で制御できる。
【0058】
この第2の実施例においては、第1の実施例の効果に加えて、ギヤケース12内の構成部品が少なくなり、コストダウンが達成でき、しかも、アシストモータ10の取付け位置が自由に選択できるという効果を奏するものである。
【0059】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1の発明にあっては、比較手段に低速比較部並びに高速比較部を設け、それぞれ、操舵トルクとアシストトルクを機械的変位として直接比較して故障検出を行い、この故障検出と同時に機械的に電源非導通としてアシスト禁止の制御を行っている。
このため、故障検出機構及びアシスト禁止機構を一体化することができて、低速時及び高速時においても、最適なパワーステアリング制御を実施できる。しかも、簡単な構成で信頼性を向上させ、コストを低減することができ、さらに、電気制御ユニットも簡単にすることができるという効果を奏するものである。
さらに、比較手段により機械的変位を直接比較するため、通電範囲の変更のみでフェールエリアの変更を容易に行うことができるという優れた効果も奏する。
【0060】
また、請求項2,3の発明にあっては、低速時及び高速時においてアシストトルクの比率を変化させる場合であっても、故障検出機構及びアシスト禁止機構を一体化することができて、簡単な構成で信頼性を向上させ、コストを低減することができるという効果を奏するものである。
請求項4の発明にあっては、制御許容範囲を適宜に変更することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施例における比較手段の機械的変位の第1の状態を示す図である。
【図2】 比較手段の機械的変位の第2の状態を示す図である。
【図3】 比較手段の機械的変位の第3の状態を示す図である。
【図4】 比較手段の機械的変位の第4の状態を示す図である。
【図5】 比較手段の機械的変位の第5の状態を示す図である。
【図6】 比較手段の機械的変位の第6の状態を示す図である。
【図7】 操舵トルクとアシストトルクの関係を示す図である。
【図8】 低速時におけるアシスト特性及びフェールエリアを示すグラフである。
【図9】 高速時におけるアシスト特性及びフェールエリアを示すグラフである。
【図10】 比較手段の制御形態を示すフローチャートである。
【図11】 低速時における異なるフェールエリアを示すグラフである。
【図12】 高速時における異なるフェールエリアを示すグラフである。
【図13】 第1の実施例のシステムを説明するブロック図である。
【図14】 第1の実施例における要部の縦断正面図である。
【図15】 第1の検出装置の縦断正面図である。
【図16】 第1の検出装置のスリーブの正面図である。
【図17】 第1の実施例における制御回路図である。
【図18】 第1の実施例における制御を示すフローチャートである。
【図19】 第2の実施例における要部の縦断正面図である。
【図20】 第2の実施例のシステムを説明するブロック図である。
【図21】 第2の実施例における制御回路図である。
【図22】 第2の実施例における制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 ステアリングホイール
9 電気制御装置(ECU)
10 アシストモータ
11 電磁クラッチ
20 第1の検出装置(第1の検出手段)
30 第2の検出装置(第2の検出手段)
31 比例ソレノイド(第2の検出手段)
40 I/0スイッチ(比較手段)
41 低速比較部
42 高速比較部
43 車速スイッチ
52 第1の電極
56 第2の電極
54 低速用ブラシ
55 第1のストッパ
56 第2のストッパ
59 第3の電極
60 第4の電極
61 高速用ブラシ
62 第3のストッパ
63 第4のストッパ

Claims (4)

  1. ステアリングホイールの操舵トルクを検出し、この検出信号に応じて低速時においては所定の関係でアシストモータのトルクを付加し、高速時には低速時よりも小なる比率でアシストモータのトルクを付加する電動式パワーステアリングシステムであって、
    前記操舵トルクを検出する第1の検出手段と、
    前記アシストモータの付加トルクを検出する第2の検出手段と、
    低速比較部及び高速比較部を備え正常時は通電状態にあり前記操舵トルクと前記付加トルクとの関係が所定の範囲を越えたとき断電状態に切り換わり前記付加トルクを零にする比較手段と、
    車速を検知して前記低速比較部又は高速比較部の何れか一方を選択する車速スイッチとを備えたものにおいて、
    前記低速比較部を、
    前記第1の検出手段の検出信号に応じて変位する第1、第2の電極と、これらの電極に対して正常時は通電状態にあり低速時の第2の検出手段の検出信号に応じて変位する低速用ブラシと、前記第1及び第2の電極が一方向に所定の距離変位したとき第1の電極のみの変位を阻止する第1のストッパと、前記第1及び第2の電極が他方向に所定の距離変位したとき第2の電極のみの変位を阻止する第2のストッパとから構成するとともに、
    前記高速比較部を、
    前記第1の検出手段の検出信号に応じて変位する第3、第4の電極と、これらの電極に対して正常時は通電状態にあり高速時の前記第2の検出手段の検出信号に応じて変位する高速用ブラシと、前記第3及び第4の電極が一方向に所定の距離変位したとき第3の電極のみの変位を阻止する第3のストッパと、前記第3及び第4の電極が他方向に所定の距離変位したとき第4の電極のみの変位を阻止する第4のストッパとから構成した
    ことを特徴とする電動式パワーステアリングシステムの異常検出制御装置。
  2. 前記高速比較部における高速用ブラシの変位は、前記低速比較部における低速用ブラシの変位に対して、前記アシストトルクの比率に反比例して拡大されていることを特徴とする請求項1記載の電動式パワーステアリングシステムの異常検出制御装置。
  3. 前記高速比較部における第3,第4の電極の通電範囲は、前記低速比較部における第1,第2の電極の通電範囲に対して、前記アシストトルクの比率に反比例して拡大されていることを特徴とする請求項1または2記載の電動式パワーステアリングシステムの異常検出制御装置。
  4. 前記第1,第2の電極及び第3,第4の電極がブラシと接触する位置は、中立位置において各電極が当接するストッパ側が広く、反対側が狭く設定されていることを特徴とする請求項1、2または3記載の電動式パワーステアリングシステムの異常検出制御装置。
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