JP3743870B2 - 電動式パワーステアリングシステムの異常検出制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステアリングホイールを操作したとき、その操舵トルクにアシストトルクを付加して操作性を良くする電動式パワーステアリングシステムの異常検出制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電動式パワーステアリングシステムにおいては、例えば、特開昭64−56274号公報或いは特開平2−293260号公報等に開示されているように、操舵トルクとアシストトルクを電気信号に変換し、これらを電気制御ユニット(以下ECUと云う)により制御している。
ECUには、これらの制御回路とともに、故障検出機構及びアシスト禁止機構が設けられている。即ち、操舵トルクとアシストトルクの関係が許容範囲を越えたときこれらをソフト的に比較して故障検出を行い、さらに、この検出信号に基づいてアシスト禁止の制御を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の電動式パワーステアリングシステムのECUにおいては、操舵トルクからアシストトルクを演算する制御回路とともに、電気的に構成された故障検出機構及びアシスト禁止機構が設けられているので、これらを構成するハードやソフトが必要であり、システムが複雑になってコスト高になるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、操舵トルク及びアシストトルクを機械的変位量として直接比較して、故障検出機構及びアシスト禁止機構を一体化した電動式パワーステアリングシステムの異常検出制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために請求項1の発明が採った手段は、実施例で使用する符号を付して説明すると、
ステアリングホイール1の操舵トルクを検出し、この検出信号に応じてアシストモータ10のトルクを付加する電動式パワーステアリングシステムにおいて、
前記操舵トルクを検出する第1の検出手段20と、
前記アシストモータ10の付加トルクを検出する第2の検出手段30と、
前記第1の検出手段20の検出信号に応じて変位する第1の電極41及びこの第1の電極41に対して正常時は通電状態にあり第2の検出手段30の検出信号に応じて変位する第2の電極42とからなり、前記操舵トルクと前記付加トルクとの関係が所定の範囲を越えたとき第1の電極41及び第2の電極42が相対的に変位して断電状態に切り換わり前記付加トルクを零にする比較手段40と、
を備えたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明が採った手段は、前記アシストモータ10の付加トルクを検出する第2の検出手段30を、前記アシストモータ10に直列に接続された比例ソレノイド70から構成したところに特徴を有する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施例につき図1〜13図を参照して説明する。
まず、電動式パワーステアリングシステムに関して図2を参照して説明する。
ステアリングホイール1を操作すると、その操舵トルクはギヤーケース2の入力軸3に伝達され、出力軸4の下端のピニオンを介してラック5を駆動する。このラック5は操舵リンク6を介して車輪7の方向を変える。
【0008】
一方、ギヤーケース2に取付けられたトルクセンサ8が操舵トルクを検出し、その電気信号が電気制御装置(以下ECUと云う)9に入力される。そして、ECU9からの信号に基づいてアシストモータ10が駆動される。このアシストモータ10のトルクは、電磁クラッチ11を介してギヤーケース12の入力軸13に伝達され、出力軸14の下端のピニオンを介してラック5を駆動する。このラック5は、ステアリングホイール1の出力軸4とともに、アシストモータ10の出力軸14により駆動されるので、操作性が著しく改善される。
【0009】
ここで、電磁クラッチ11は、図1に示すように、アシストモータ10の端面に取着されたソレノイド15と、モータ軸10aに連結された第1のデイスク16及びピニオン軸17に連結された第2のデイスク18とから構成されており、ソレノイド15が通電されると、第1のデイスク16及び第2のデイスク18が一体化されてアシストモータ10のトルクがピニオン軸17、ギヤ19を介して入力軸13に伝達されるようになっている。
【0010】
つぎに、操舵トルクを検出する第1の検出手段として、トーションバー方式の第1の検出装置20について図1,3及び4を参照して説明する。
入力軸3及び出力軸4は、それぞれギヤーケース2に回転可能に取付けられている。トーションバー21は上端部がピン22により入力軸3に一体化され、下端が出力軸4の孔部4aに一体的に圧入されている。従って、入力軸3に入力されたトルクは、トーションバー21を介して出力軸4に伝達される。
【0011】
一方、入力軸3の外側にはスリーブ23が嵌合されている。このスリーブ23には軸方向に平行な長溝24と、傾斜溝25が形成されている。そして、長溝24には出力軸4に固定されたピン26が挿入され、傾斜溝25には入力軸3に固定されたピン27が挿入されている。即ち、スリーブ23は出力軸4に対して軸方向には移動するが、円周方向には回転しない。
【0012】
ここで操舵トルクが入力軸3から出力軸4へ伝達されるとき、トーションバー21にねじり角が発生して、入力軸3と出力軸4との間に円周方向のずれが発生する。従って、入力軸3に固定されたピン27は傾斜溝25内を移動して、スリーブ23が寸法Hだけ上昇する。第1の検出装置20は、この寸法Hを検出量として取り出すもので、スリーブ23の外周面には溝28が形成されている。
【0013】
一方、アシストモータ10の付加トルクを検出する第2の検出手段としての第2の検出装置30は、アシストモータ10の伝達力を検知するためにギヤーケース12に設けられたもので、これは、第1の検出装置20と同じ構成のトーションバー式であり、入力軸13の外周部にスリーブ23が設けられている。そして、前述と同様に、スリーブ23の変位量がアシストモータ10の付加トルクとして検出される。
【0014】
つぎに、比較手段40として使用するI/Oスイッチ40に関して、図1、図6及び図7を参照して説明する。
I/Oスイッチ40は、第1の電極41と、第1の電極41上を摺動する第2の電極としてのブラシ42とから構成されている。第1の電極41は、絶縁基板43の中央部に電極44を貼付けて形成されており、レバー45が図4に示すように第1の検出装置20のスリーブ23の溝28に嵌合して、スリーブ23の変位量に応じて移動される。なお、この移動は、直線的に摺動させてもよく、また、円周方向に回動させてもよい。
【0015】
第2の電極としてのブラシ42は、第1の検出装置20と同様のトーションバー方式により第2の検出装置30の検出量に応じてプッシュプルワイヤ46を介して移動される。
【0016】
ここで、操舵トルクによる第1の検出装置20の検出量(電極44の移動量)と、アシストトルクによる第2検出装置30の検出量(ブラシ42の移動量)との関係は、図5に示す制御線31に沿って制御される。この際、図5において、制御許容範囲(セーフエリア)である所定の範囲32,32間は、正常状態で稼働されることを示し、範囲32,32を越えた斜線部分が異常範囲(フェールエリア)となることを示すものである。
【0017】
I/Oスイッチ40は、正常時はブラシ42が電極44に接触して電源ラインが通電状態にあり、第2の検出装置30の検出量が図5に示す所定の範囲を越えると、即ちフェールエリアに入るとブラシ42が電極44から逸脱して電源ラインが断電状態に切換わるのである。
尚、電極44の幅寸法を変化させれば、図5に示す所定の範囲32,32を適宜に変更することができる。
【0018】
つぎに、比較手段40としてのI/Oスイッチ40の作用に関して図5〜図11を参照して説明する。
先ず図5〜図7において、
1,操舵トルク及びアシストトルクがともに加わっていない場合(図6のSTEP10)は、図5におけるO点(セーフエリア)に相当し、図7に示すように、電極44の中心にブラシ42が接触している。この第1の電極41及び第2の電極42の基準位置をそれぞれA1,A2と表示する。
【0019】
つぎに、操舵トルクが右方向へ作用して第1の電極41が右方向へ寸法H1移動した場合を例にとり、アシストトルクが各種の場合について説明する。
2,操舵トルクとアシストトルクが正常関係にある場合(STEP11、図8)
ブラシ42が寸法L1だけ移動するので、図5に示すA点(セーフエリア)に相当して、ブラシ42は電極44に接触し、電源は通電状態を維持する。
尚、ブラシ42が、所定の範囲32,32間に入るように寸法La〜Lbの範囲(電極44の幅寸法に相当する)移動されたときも電源は通電状態を維持する。
【0020】
3,操舵トルクよりもアシストトルクが大き過ぎる場合(STEP12、図9)
ブラシ42が寸法L2だけ移動して図5に示すB点(フェールエリア)に位置する。ブラシ42は電極44を通過して絶縁基板43上に移動して、電源が断電状態となり、故障を検出する。
【0021】
4,操舵トルクよりもアシストトルクが小さ過ぎる場合(STEP12、図10)
ブラシ42が寸法L3だけ移動して図5に示すC点(フェールエリア)に位置する。電極44のブラシ42に対する相対的な移動距離が大きいので、ブラシ42が絶縁基板43上に移動して、電源が断電状態となる。
【0022】
5,アシストトルクが逆方向に作用した場合(STEP13、図11)
ブラシ42が反対方向に寸法L4だけ移動して、図5に示すD点(フェールエリア)に位置する。ブラシ42は絶縁基板43上に移動して電源が断電状態となる。
【0023】
つぎに、これらの制御回路及びフェールセーフ機能について図12,13を参照して説明する。
イグニッションスイッチ52をオンにすると、エンジンスタータ連動リレーの接点51がオンされて、直流電源53が回路に接続される。エンジンスタータ接点51にはリレーコイル54が直列に接続されており、イグニッションスイッチ52をオフにしてもその接点55及び接点56が自己保持される。接点55は、I/Oスイッチ40及びリレーコイル54に直列に接続されており、また、接点56はアシストモータ10のトルクをギヤ−ケース12に伝達するか否かを制御する電磁クラッチ11のソレノイド11aに直列に接続されている。尚、リレー54と並列にコンデンサ57が接続されている。
【0024】
つぎに、図13において、ステアリングホイール1を操作すると、第1の検出装置20が操舵トルクを検出し、また、第2の検出装置30がアシストトルクを検出する。そして、両者をI/Oスイッチ40で比較して(図13のSTEP20)、その関係が正常範囲であれば、I/Oスイッチ40が通電状態を保持し(STEP24)、パワーアシストが継続される。
【0025】
一方、その関係が異常範囲になると、即ちフェールエリアに入ると、前述のように、I/Oスイッチ40が断電状態となり、故障を検出する。すると、リレー54がオフとなるので(STEP21)、その接点55及び接点56も同時にオフとなる。
これにより、ソレノイド11aが断電されて(STEP22)、電磁クラッチ11が遮断されて、アシストモータ10のトルクはギヤーケース12に伝達されないので、アシストトルクは零となって、アシスト禁止を実施する。即ち、異常を検出するとフェールセーフ機能が働いてマニュアルステアリングに切換えられるのである(STEP23)。
【0026】
尚、本実施例においては、急ハンドルや振動等によりI/Oスイッチ40が瞬間的に断電状態となっても、コンデンサ57の容量に応じた時間だけ接点55及び接点56が自己保持されるので、その分、事故フェールの発生が未然に防止できる。
【0027】
上記した第1の実施例によれば、つぎの効果を奏する。
(1)I/Oスイッチ40を互いに相対的に移動する第1の電極41と第2の電極42で構成し、故障検出機構とアシスト禁止機構を一体化したので、構造が簡単にすることができコストを低減し得て、しかも信頼性を向上させることができる。
(2)フェールセーフ機能はI/Oスイッチ40により制御しECU9に対して別個に設けているので、たとえECU9に故障が発生してもフェールセーフが可能である。
(3)I/Oスイッチ40は、第1の電極41と第2の電極42との機械的変位を直接比較するので、電極の寸法を変えることにより、フェールセーフの調整範囲を変化できる。
【0028】
図14〜図17は本発明の第2の実施例を示すもので、第1の実施例との相違点を説明する。
第2の実施例においては、アシストモータ10のモータ軸10aにピニオン61が連結されており、これに噛み合うギヤ62を介してアシストトルクがラック5に伝達される。
【0029】
また、第2の検出手段として、アシストモータ10に直列に接続された比例ソレノイド70が使用されている。この比例ソレノイド70は、アシストモータ10の回路電流が流れるソレノイドと、このソレノイドの内部を移動するプランジャとから構成されている。そして、このプランジャをI/Oスイッチ40のブラシ電極42に連結して、プランジャの移動距離に対応してブラシ電極42を移動させている。
【0030】
このプランジャは、ソレノイドの電流が大になると移動距離が大となり、ソレノイドの電流が小になれど移動距離も小となる。即ち、アシストモータ10のアシストトルクが大となって電流が大となると、プランジャの移動距離も大となり、アシストトルクが小となって電流が小となると、プランジャの移動距離も小となる。
尚、第2の検出手段は、比例ソレノイドに限らず、アシストモータ10の回路電流に関連して作動するモータによっても良く、要はアシストモータ10のアシストトルクを機械的変位に変換できる手段であれば特に限定されない。
【0031】
つぎに、第2の実施例の作用について図15〜図17を参照して説明する。
アシストモータ10の回路には、比例ソレノイド70とリレー54により自己保持される接点71が直列に接続されている。
操舵トルクとアシストトルクをI/Oスイッチ40で比較して(図17のSTEP30)、その関係が正常範囲であれば、I/Oスイッチ40が通電状態を保持し、パワーアシストが継続される(STEP34)。
【0032】
その関係が異常範囲になると、前述のように、I/Oスイッチ40が断電状態となる。すると、リレー54がオフとなるので(STEP31)、その接点55及び接点71も同時にオフとなる。
これにより、アシストモータ10が断電されて(STEP32)、アシストトルクは零となる。即ち、異常を検出するとフェールセーフ機能が働いてマニュアルステアリングに切換えられるのである(STEP33)。
【0033】
この第2の実施例においては、第1の実施例の効果に加えて、ギヤケース12内の構成部品が少なくなり、コストダウンが達成でき、しかも、アシストモータ10の取付け位置が自由に選択できるという効果を奏するものである。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1の発明にあっては、比較手段によって操舵トルクとアシストトルクを機械的変位として直接比較して故障検出を行い、この故障検出と同時に機械的に電源非導通としてアシスト禁止の制御を行っている。
このため、故障検出機構及びアシスト禁止機構を一体化することができて、簡単な構成で信頼性を向上させ、コストを低減することができ、しかも、電気制御ユニットも簡単にすることができるという効果を奏するものである。
さらに、比較手段により機械的変位を直接比較するため、接点範囲の変更のみでフェールエリアの変更を容易に行うことができるという優れた効果も奏する。
【0035】
また、請求項2の発明にあっては、アシストモータの付加トルクを検出する第2の検出手段を、アシストモータに直列に接続された比例ソレノイドから構成したので、簡単な構成で信頼性を向上させ、コストを低減することができ、アシストモータの取付け位置を自由に選択できるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施例における要部の縦断正面図である。
【図2】 第1の実施例のシステムを説明するブロック図である。
【図3】 第1の検出装置の縦断正面図である。
【図4】 第1の検出装置のスリーブの正面図である。
【図5】 アシスト特性及びフェールエリアを示すグラフである。
【図6】 比較手段の制御形態を示すフローチャートである。
【図7】 比較手段の機械的変位の第1の状態を示す図である。
【図8】 比較手段の機械的変位の第2の状態を示す図である。
【図9】 比較手段の機械的変位の第3の状態を示す図である。
【図10】 比較手段の機械的変位の第4の状態を示す図である。
【図11】 比較手段の機械的変位の第5の状態を示す図である。
【図12】 第1の実施例における制御回路図である。
【図13】 第1の実施例における制御を示すフローチャートである。
【図14】 第2の実施例における要部の縦断正面図である。
【図15】 第2の実施例のシステムを説明するブロック図である。
【図16】 第2の実施例における制御回路図である。
【図17】 第2の実施例における制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 ステアリングホイール
9 電気制御装置
10 アシストモータ
11 電磁クラッチ
20 第1の検出装置(第1の検出手段)
30 第2の検出装置(第2の検出手段)
40 I/0スイッチ(比較手段)
41 第1の電極
42 第2の電極
44 電極
70 比例ソレノイド(第2の検出手段)
Claims (2)
- ステアリングホイールの操舵トルクを検出し、この検出信号に応じてアシストモータのトルクを付加する電動式パワーステアリングシステムにおいて、
前記操舵トルクを検出する第1の検出手段と、
前記アシストモータの付加トルクを検出する第2の検出手段と、
前記第1の検出手段の検出信号に応じて変位する第1の電極及びこの第1の電極に対して正常時は通電状態にあり第2の検出手段の検出信号に応じて変位する第2の電極とからなり、前記操舵トルクと前記付加トルクとの関係が所定の範囲を越えたとき第1及び第2の電極が相対的に変位して断電状態に切り換わり前記付加トルクを零にする比較手段と
を備えたことを特徴とする電動式パワーステアリングシステムの異常検出制御装置。 - 前記アシストモータの付加トルクを検出する第2の検出手段は、
前記アシストモータに直列に接続された比例ソレノイドから構成されていることを特徴とする請求項1記載の電動式パワーステアリングシステムの異常検出制御装置。
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