JP3785440B2 - 目的成分内包微粒子の製造方法並びに中空高分子微粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シェルおよび中空部分を有し、該中空部分に目的成分を内包する高分子微粒子の製造方法に関する。また、本発明は、中空高分子微粒子、より詳しくは、シェルが架橋され、空隙率が大きい中空高分子微粒子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、微粒子内に薬効成分などの目的成分を内包させる方法として、一旦微粒子を製造した後に目的成分を含浸させる方法などが採用されている。
【0003】
しかし、この製造方法は、微粒子の製造と目的成分の内包という2段階を要するため複雑で、その結果コスト高になる。
【0004】
ここで、微粒子に目的成分を内包させる一つの目的として、該微粒子から目的成分を徐放させることにより、目的成分の効力を持続させることがある。
【0005】
従来、目的成分の徐放持続性を確保するために、無定型シリカ、ゼラチン、線状ポリウレタン、メラミン樹脂、尿素樹脂などからなるマイクロカプセル内に該成分を充填することが行われている。
【0006】
しかし、これらのカプセルは一般に強度が低い。このため、このマイクロカプセルを含む塗布剤などの製造時、使用時などに、加圧されることにより破壊されてしまい、長期にわたる成分の徐放性を確保し難いという難点がある。
【0007】
また、特許第1823630号公報によると、薬効成分を含む多層構造の重合体粒子が水中に分散した薬効成分徐放性のエマルジョンが開示されている。この重合体粒子は、揮発性の薬効成分を含有する重合体粒子を内部層とし、内部層の外側に薬効成分を含有しない重合体層が形成された二重構造の粒子である。
【0008】
この薬効成分を担持した粒子は、第一の不飽和単量体を水中で乳化重合して得た重合体粒子に薬効成分を含浸させた後、この粒子表面で第二の不飽和単量体を重合させることにより得られる。あるいは、第一の不飽和単量体に薬効成分を添加し、水中で乳化重合して重合体粒子を得た後、この重合体粒子の表面で第二の不飽和単量体を重合させることによっても得られる。
【0009】
この重合体粒子は、製造時、使用時の圧力で破壊されるという問題点を解消したものであるが、その反面、内部重合体に薬効成分を含浸させるために、1微粒子当たりの薬効成分の担持量が少なく、その結果、薬効成分の徐放期間が短い。また、多段階の複雑な製造工程を要するという難点がある。
【0010】
また、微粒子に目的成分を内包させる他の一つの目的として、目的成分を該微粒子から所定時期に放出させて、その効力を発揮させることがある。
【0011】
このような目的のためには、目的成分を内包するとともに、破壊し易い微粒子であることが求められる。
【0012】
さらに、目的成分の徐放持続性を有する微粒子、または、所定時期に目的成分を放出させることができる微粒子を、簡単に選択して製造できれば便利である。
【0013】
次に、従来の中空高分子微粒子について述べる。従来から、塗料、紙塗工用組成物等のコーティング剤には、隠蔽性を付与する目的で、炭酸カルシウムやクレー等の無機質粒子が添加されている。
【0014】
しかし、これら無機質粒子はその重量が重いため、最近では、この無機質粒子に代えて、中空重合体粒子が使用されるようになってきた。この中空重合体粒子は、中空であるため軽量であり、またこの中空内で光が乱反射するため隠蔽性、白色度、光沢などの光学的性質に優れ、更に、中空部が存在するために断熱効果をも有している。
【0015】
従来、中空高分子微粒子の製造法として、以下に示す2種類の製法が知られている。一つの方法は、特開平6−248012号に記載の方法である。この方法は、カルボキシル基含有単量体20〜60重量%及びこれと共重合可能なコモノマー80〜40重量%との共重合体からなる中心層重合体、カルボキシル基含有単量体1〜12重量%及びこれと共重合可能なコモノマー99〜88重量%との共重合体からなる中間層重合体、及びカルボキシル基を含まない単量体の重合体からなる表面層重合体からなる少なくとも3層構造を有する重合体粒子を含有するラテックスに、塩基を添加して該ラテックスのpHを8以上とし、次いで、酸を添加して該ラテックスのpHを7以下とする方法である。
【0016】
また、他の方法は、特開平8−20604号に記載の方法である。この方法は、下記の親水性有機溶媒(f)に下記の(a)〜(e)を分散させて分散系を調製する工程と、この分散系を構成する(a)〜(e)のうち水不溶性単量体(a)、水不溶性有機溶媒(c)、油溶性重合開始剤(e)の溶解度を低下させることにより種重合体粒子(b)に上記の水不溶性単量体(a)、水不溶性有機溶媒(c)、油溶性重合開始剤(e)を吸収させる工程と、種重合体粒子(b)中で水不溶性単量体(a)を選択的に重合させる工程とを備えたことを特徴とする中空重合体粒子の製法である:
(a)重合性反応基を2個以上有する単量体を含有する水不溶性単量体、
(b)水不溶性単量体(a)に溶解ないしこれを吸収して膨潤する種重合体粒子、
(c)水不溶性単量体(a)から形成される重合体および上記種重合体粒子(b)を溶解ないしこれを膨潤させる水不溶性有機溶媒、
(d)分散安定剤、
(e)油溶性重合開始剤、
(f)水不溶性単量体(a)を溶解し、かつ、この単量体から形成される重合体および種重合体粒子(b)を溶解しない親水性有機溶媒。
【0017】
この従来法においては、まず、いわゆる動的膨潤法を利用して、例えばポリスチレン粒子等の種重合体粒子(b)中に、ジビニルベンゼン等の単量体(a)、トルエン等の水不溶性有機溶媒(c)、及びアゾビスイソブチロニトリル等の油溶性重合開始剤(e)を吸収させることにより、該種重合体粒子(b)を膨潤ないし溶解させる。
【0018】
これにより、水不溶性有機溶媒(c)が種重合体粒子(b)を溶解するため、この種重合体粒子(b)の溶解物、単量体(a)、水不溶性有機溶媒(c)及び油溶性重合開始剤(e)が混在した液滴が得られる。この状態で昇温すると、油溶性重合開始剤(e)が存在するので、上記液滴内の単量体(a)が重合(シード重合)し、単量体(a)の重合皮膜からなるシェルを形成し、その内部には水不溶性有機溶媒(c)に溶解した種重合体(b)が存在する。こうして得られた粒子を乾燥すると、コア部の水不溶性有機溶媒(c)が揮発し、種重合体(b)は、単量体(a)の重合皮膜からなるシェルの内側に付着して、第2のシェルを構成する。その結果、2層構造のシェルを有する中空高分子微粒子が得られる。
【0019】
しかし、特開平6−248012号に記載の方法では、上記のように、中心層重合体を形成する工程、中間層重合体を形成する工程、表面層重合体を形成する工程の少なくとも3工程を要して少なくとも3層構造の重合体粒子を含有するラテックスを調製し、更に該ラテックスを、塩基処理する工程及び酸処理する工程を行うという煩雑で多数の工程を必要とする点において、尚改良の余地が大きい。また、この方法により製造される微粒子は、該公報の実施例では殻厚30〜45nmの3層構造の殻を有する中空粒子を得ているが、元来、少なくとも3層以上の積層構造を有する重合体粒子をまず調製しなければならないという問題点がある。
【0020】
一方、特開平8−20604号に記載の方法においても、親水性有機溶媒(f)に前記(a)〜(e)を分散させて分散系を調製する工程、動的膨潤法による種重合体粒子(b)を膨潤させる工程、及び引き続くシード重合工程の3工程を必要とし、しかも、前記種重合体粒子(b)をはじめとする各種の原料や溶媒を必要とする点で尚改良の余地がある。
【0021】
特に、種重合体粒子(b)の使用は必須であり、例えば、コロイド・アンド・ポリマー・サイエンス(Colloid & Polymer Science)第276巻第7号(1998)第638〜642頁の例えば第638頁のアブストラクト欄には、上記動的膨潤法を用いる場合、種重合体(b)(ポリスチレン)が存在しないと、中空高分子微粒子が製造できない旨記載されている。
【0022】
また、特開平8−20604号の方法により得られる中空高分子微粒子は、そのシェルが、単量体(a)の重合皮膜と該皮膜の内側に形成された種重合体(b)由来の皮膜との2層構造となっているので、合成行程も煩雑である。特に、合成は、種重合体の合成を予め行った後、モノマーと混合した後分散させ、重合を行うという段階を経なければならない。
【0023】
また、中空高分子微粒子は、空隙率が高いことが望まれる場合がある。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、目的成分を長期にわたり徐放することができる微粒子または所定時期に目的成分を放出させることができる微粒子を、簡単に選択して製造できる方法を提供することである。
【0025】
本発明の第2の目的は、目的成分を内包する微粒子であって、目的成分の徐放期間が長い微粒子の簡単な製造方法を提供することである。
【0026】
本発明の第3の目的は、目的成分を内包する微粒子であって、所定時期に目的成分を放出させることができる微粒子の簡単な製造方法を提供することである。
【0027】
本発明の第4の目的は、シェルが単層構造であって、空隙率の大きい中空高分子微粒子、及び、このような中空高分子微粒子を短い工程で且つ簡便な方法により製造し得る方法を提供することである。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく研究を重ねた結果、以下の知見を見出した。
(1) モノマー成分に目的成分および重合開始剤を溶解させて均一な溶液としたものを、分散安定剤を含む水に加え、加熱しつつ撹拌することにより、シェル及び中空部分からなる中空微粒子の中空部分に目的成分が内包された複合粒子を簡単に得ることができる。
(2) (1)の複合粒子を得るためには、目的成分が、モノマー成分に対して高い相溶性を有するが、該モノマー成分を重合又は共重合して得られるポリマーに対しては低い相溶性を有し、さらに目的成分と水との間の界面張力が、モノマー成分を重合又は共重合して得られるポリマーと水との間の界面張力より高いものであればよい。
(3) 目的成分が前記(2)の条件を満たさない場合であっても、補助ポリマーを 用いることにより前記複合粒子を得ることができる。補助ポリマーは、モノ マー成分に対して高い相溶性を有するが、該モノマー成分を重合又は共重合 して得られるポリマーに対しては低い相溶性を有し、さらに補助ポリマーと 水との間の界面張力が、モノマー成分を重合又は共重合して得られるポリマ ーと水との間の界面張力より高いものであればよい。
(4) モノマー成分として、少なくとも1種の架橋性モノマーと少なくとも1種の単官能性モノマーとを含むモノマー成分を用い、架橋性モノマーと単官能性モノマーとの比率を調整することにより、微粒子のシェルの強度を調整することができる。
(5) モノマー成分として、架橋性モノマー、または、架橋性モノマーおよび単官能性モノマーを用いることにより、微粒子シェルは高強度のものとなり、内包する目的成分を長期にわたり徐放できる微粒子が得られる。
(6) モノマー成分として単官能性モノマーを多く用いることにより、微粒子シェルの強度が低くなり、加圧により容易にシェルを破壊して内包した目的成分を放出させることができる微粒子が得られる。
(7) 得られた微粒子は、中空部分に目的成分を内包しているとともに、比較的粒径が大きいために、目的成分の保持量が多い。
(8) モノマー成分に代えてエポキシ樹脂を用い、開始剤に代えて硬化剤を用いて、エポキシ樹脂を架橋させることによっても(1)〜(3)と同様の効果が得 られる。これにより得られる微粒子は、架橋されたエポキシ樹脂からなるシ ェルを有する高強度の微粒子となる。また、得られた微粒子は、空隙率が大 きい。
(9) モノマー成分及び開始剤に代えて多価イソシアネート及び多価アルコールを用いることによっても(1)〜(3)と同様の効果が得られる。これにより得 られる微粒子は、架橋構造を有するポリウレタンからなるシェルを有する高 強度の微粒子となる。また、得られた微粒子は、空隙率が大きい。
(10) (1)、(8)及び(9)において、目的成分として特定の溶媒を用いれば、溶 媒内包微粒子を得ることができ、この溶媒を除去すれば空隙率が高く、かつ 、高強度のシェルを有する中空高分子微粒子が得られる。
(11) 中空高分子微粒子の製造方法については、特開平8−20604号の方法を改良する観点からは、種重合体粒子を使用しなくても、分散安定剤の水溶液中で、エポキシ樹脂、硬化剤及び特定の溶媒からなる混合液を分散させ、懸濁架橋反応に供するという、簡単な工程で中空高分子微粒子を製造できる。また、分散安定剤の水溶液中で、多価イソシアネート、多価アルコール及び特定の溶媒からなる混合液を分散させ、懸濁重付加反応に供することによっても、簡単な工程で中空高分子微粒子が得られる。
(12) (11)の方法により得られる中空高分子微粒子のシェルは単層構造であり、空隙率も大きい。
【0029】
本発明は、これらの知見に基づき、更に検討を加えて完成されたものであり、次の各項の目的成分内包微粒子の製造方法などを提供するものである。
【0030】
項1.分散安定剤の水溶液中に、目的成分、下記のモノマー成分、下記の補助ポリマー(SPA)及び開始剤を含む混合物を分散させ、懸濁重合を行う目的成分内包微粒子の製造方法。
【0031】
モノマー成分:少なくとも1種の架橋性モノマーを100〜0重量%、少なくとも1種の単官能性モノマーを0〜100重量%含むモノマー成分
補助ポリマー(SPA):モノマー成分を重合又は共重合することにより得られるポリマー(PA)に対して相溶性が低く、かつ、補助ポリマー(SPA)と水との間の界面張力(γx)(mN/m)とポリマー(PA)と水との間の界面張力(γy)(mN/m)との関係において、γx≧γyの条件を満たすポリマー
項2. モノマー成分が、少なくとも1種の架橋性モノマー、又は、少なくとも1種の架橋性モノマーと少なくとも1種の単官能性モノマーとの混合物である項1に記載の方法。
【0032】
項3. モノマー成分が、少なくとも1種の架橋性モノマーを100〜10重量%、少なくとも1種の単官能性モノマーを0〜90重量%含む項2に記載の方法。
【0033】
項4. 架橋性モノマーが重合性C=C二重結合を2個以上有する多官能性モノマーである項1、2又は3に記載の方法。
【0034】
項5. モノマー成分が、少なくとも1種の単官能性モノマーである項1に記載の方法。
【0035】
項6. 分散安定剤の水溶液中に、下記の目的成分、下記のモノマー成分及び開始剤を含む混合物を分散させ、懸濁重合を行う目的成分内包微粒子の製造方法。
【0036】
目的成分:モノマー成分を重合又は共重合することにより得られるポリマー(PA)に対して相溶性が低く、かつ、目的成分と水との間の界面張力(γz)(mN/m)とポリマー(PA)と水との間の界面張力(γy)(mN/m)との関係において、γz≧γyの条件を満たす目的成分
モノマー成分:少なくとも1種の架橋性モノマーを100〜0重量%、少なくとも1種の単官能性モノマーを0〜100重量%含むモノマー成分
項7. モノマー成分が、少なくとも1種の架橋性モノマー、又は、少なくとも1種の架橋性モノマーと少なくとも1種の単官能性モノマーとの混合物である項6に記載の方法。
【0037】
項8. モノマー成分が、少なくとも1種の架橋性モノマーを100〜10重量%、少なくとも1種の単官能性モノマーを0〜90重量%含む項7に記載の方法。
【0038】
項9. 架橋性モノマーが重合性C=C二重結合を2個以上有する多官能性モノマーである項6、7又は8に記載の方法。
【0039】
項10. モノマー成分が、少なくとも1種の単官能性モノマーである項6に記載の方法。
【0040】
項11. 目的成分が、水難溶性の溶媒である項6から10のいずれかに記載の方法。
【0041】
項12. 分散安定剤の水溶液中に、目的成分、エポキシ樹脂、下記の補助ポリマー(SPB)及び硬化剤を含む混合物を分散させ、懸濁架橋反応を行う目的成分内包微粒子の製造方法。
【0042】
補助ポリマー(SPB):エポキシ樹脂を硬化剤を用いて架橋させることにより得られる架橋エポキシ樹脂に対して相溶性が低く、かつ、補助ポリマー(SPB)と水との間の界面張力(γp)(mN/m)と架橋エポキシ樹脂と水との間の界面張力(γq)(mN/m)との関係において、γp≧γqの条件を満たすポリマー
項13. 分散安定剤の水溶液中に、下記の目的成分、エポキシ樹脂及び硬化剤を含む混合物を分散させ、懸濁架橋反応を行う目的成分内包微粒子の製造方法。
【0043】
目的成分:エポキシ樹脂を硬化剤を用いて架橋させることにより得られる架橋エポキシ樹脂に対して相溶性が低く、かつ、目的成分と水との間の界面張力(γr)(mN/m)と架橋エポキシ樹脂と水との間の界面張力(γq)(mN/m)との関係において、γr≧γqの条件を満たす目的成分
項14. 目的成分が水難溶性の溶媒である項13に記載の方法。
【0044】
項15. 分散安定剤の水溶液中に、目的成分、多価イソシアネート、多価アルコール及び下記の補助ポリマー(SPC)を含む混合物を分散させ、懸濁重付加反応を行う目的成分内包微粒子の製造方法。
【0045】
補助ポリマー(SPC):多価イソシアネートと多価アルコールとの重付加反応により得られるポリウレタンに対して相溶性が低く、かつ、補助ポリマー(SPC)と水との間の界面張力(γt)(mN/m)とポリウレタンと水との間の界面張力(γu)(mN/m)との関係において、γt≧γuの条件を満たすポリマー
項16. 分散安定剤の水溶液中に、下記の目的成分、多価イソシアネート及び多価アルコールを含む混合物を分散させ、懸濁重付加反応を行う目的成分内包微粒子の製造方法。
【0046】
目的成分:多価イソシアネートと多価アルコールとの重付加反応により得られるポリウレタンに対して相溶性が低く、かつ、目的成分と水との間の界面張力(γv)(mN/m)とポリウレタンと水との間の界面張力(γu)(mN/m)との関係において、γv≧γuの条件を満たす目的成分
項17. 目的成分が水難溶性の溶媒である項16に記載の方法。
【0047】
項18. シェル及び中空部からなる中空高分子微粒子であって、シェルがエポキシ樹脂を硬化剤を用いて架橋させることにより得られる架橋エポキシ樹脂からなる単層構造を有する中空高分子微粒子。
【0048】
項19. シェルの厚さが0.01〜4μmであり、空隙率が50〜80%であり、平均粒径が0.1〜30μmである項18に記載の中空高分子微粒子。
【0049】
項20. 分散安定剤の水溶液中で、
i)エポキシ樹脂と、
ii)硬化剤と、
iii)エポキシ樹脂を硬化剤を用いて架橋することにより得られる架橋エポキシ樹脂に対して相溶性の低い水難溶性の溶媒(B)とからなる混合物
を分散させ、エポキシ樹脂の懸濁架橋反応を行う項18に記載の中空高分子微粒子の製造方法。
【0050】
項21. 溶媒(B)が、エポキシ樹脂を硬化剤を用いて架橋させることにより得られる架橋エポキシ樹脂に対して相溶性が低い性質を有し、かつ、溶媒(B)と水との間の界面張力(γa)(mN/m)とエポキシ樹脂及び硬化剤を溶媒(B)に溶解してなる溶液を懸濁架橋反応に供して得られる架橋エポキシ樹脂吸着表面と水との間の界面張力(γb)(mN/m)との関係において、γa≧γbの条件を満たす溶媒である項20に記載の方法。
【0051】
項22. シェル及び中空部からなる中空高分子微粒子であって、シェルが多価イソシアネートと多価アルコールとの重付加反応により得られるポリウレタンからなる単層構造を有する中空高分子微粒子。
【0052】
項23. シェルの厚さが0.01〜4μmであり、空隙率が50〜80%であり、平均粒径が0.1〜30μmである項22に記載の中空高分子微粒子。
【0053】
項24. 分散安定剤の水溶液中で、
i)多価イソシアネートと、
ii)多価アルコールと、
iii)多価イソシアネートと多価アルコールとの重付加反応により得られるポリウレタンに対して相溶性の低い水難溶性の溶媒(C)とからなる混合物
を分散させ、多価イソシアネートと多価アルコールとの懸濁重付加反応を行う項22に記載の中空高分子微粒子の製造方法。
【0054】
項25. 溶媒(C)が多価イソシアネートと多価アルコールとの重付加反応により得られるポリウレタンに対して相溶性が低い性質を有し、かつ、溶媒(C)と水との間の界面張力(γc)(mN/m)と、多価イソシアネート及び多価アルコールを溶媒(C)に溶解してなる溶液を懸濁重付加反応に供して得られるポリウレタン吸着表面と水との間の界面張力(γd)(mN/m)との関係において、γc≧γdの条件を満たす溶媒である項24に記載の方法。
【0055】
項26. シェル及び中空部分からなる中空微粒子の中空部分に水難溶性の溶媒が内包されており、シェルが、エポキシ樹脂を硬化剤を用いて硬化させることにより得られる架橋エポキシ樹脂で構成されている溶媒内包微粒子。
【0056】
項27. 下記の式に従い算出される、中空部分の容積比率Rが10〜80%である項26に記載の溶媒内包微粒子。
【0057】
R(%)=(rh/rp)3×100
(式中、rhは溶媒内包微粒子の中空部分の半径であり、rpは溶媒内包微粒子の半径である。)
項28. 溶媒の内包量が、シェルに対して10〜80重量%である項26又は27に記載の溶媒内包微粒子。
【0058】
項29. シェル及び中空部分からなる中空微粒子の中空部分に水難溶性の溶媒が内包されており、シェルが、多価イソシアネートと多価アルコールとの重付加反応により得られるポリウレタンで構成されている溶媒内包微粒子。
【0059】
項30. 下記の式に従い算出される、中空部分の容積比率Rが10〜80%である項29に記載の溶媒内包微粒子。
【0060】
R(%)=(rh/rp)3×100
(式中、rhは溶媒内包微粒子の中空部分の半径であり、rpは溶媒内包微粒子の半径である。)
項31.溶媒の内包量が、シェルに対して10〜80重量%である項29又は30に記載の溶媒内包微粒子。
【0061】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法
本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法は、
分散安定剤の水溶液中に、
(i) 目的成分、
(ii) 少なくとも1種の架橋性モノマーを100〜0重量%、少なくとも1種の単官能性モノマーを0〜100重量%含むモノマー成分、
(iii) モノマー成分を重合又は共重合することにより得られるポリマー(PA)に対して相溶性が低く、かつ、補助ポリマー(SPA)と水との間の界面張力(γx)(mN/m)とポリマー(PA)と水との間の界面張力(γy)(mN/m)との関係において、γx≧γyの条件を満たす補助ポリマー(SPA)
(iv)開始剤
からなる均一溶液を分散させ、懸濁重合反応を行う方法である。
分散安定剤
分散安定剤としては、目的成分、モノマー成分、補助ポリマー(SPA)および開始剤からなる均一溶液を、水中に分散して形成した液滴が、合一しないようにする作用を有するものを広い範囲から使用できる。
【0062】
例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルイミド、ポリエチレンオキシド、ポリ(ハイドロオキシステアリン酸−g−メタクリル酸メチル−co−メタクリル酸)共重合体等の高分子分散安定剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。このなかでも、ポリビニルアルコール等の高分子分散安定剤が好ましい。
【0063】
これら分散安定剤の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般には、目的成分、モノマー成分、補助ポリマー(SPA)および開始剤からなる均一溶液の1重量部に対して、0.005〜1重量部程度、特に0.01〜0.1重量部程度とするのが好ましい。
【0064】
また、分散安定剤の水溶液において、分散安定剤の濃度は上記液滴が合一しないような濃度となるように適宜選択すればよい。一般には、分散安定剤水溶液の濃度は、0.05〜5重量%程度、特に0.1〜1重量%程度の範囲に調整するのが好ましい。
目的成分
目的成分としては、モノマー成分に対して高い相溶性を有し、すなわち水に溶解しない疎水性物質、特に水に溶解しない疎水性有機化合物であればよく、特に制限されない。また、目的成分は、常温で固体又は液体のいずれであっても用いることができる。
【0065】
目的成分としては、例えば、芳香性物質であるヒノキチオール(β−ツヤプリシン)、ヒノキ精油、シトロネラール、リモネン、L−メントール、ヘキサノール、シス−3−ヘキセノール、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、α−ターピネオール、ボルネオール、ベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、ユーカリ油、シトラール、アレスリン、リナロール、リガストラール、ベンジルアセテート、エチルイソブチレート、β−ヨノンなどを例示できる。
【0066】
なお、前記例示した化合物のうち、ヒノキチオール(β−ツヤプリシン)、ヒノキ精油、シトロネラール、リモネン、L−メントールなどは、芳香剤、抗菌剤、防虫剤、防カビ剤等としても有用な化合物であるため、芳香用途に加えて抗菌、防虫、防カビなどの用途にも用いることができる。
【0067】
これらの成分は、高強度の微粒子シェルに内包させ、微粒子から徐放させることにより、該成分の芳香、抗菌などの効力を持続させることができる。
【0068】
また、これらの成分は、低強度の微粒子シェルに内包させ、所定時期に微粒子を破壊することにより該成分を微粒子外に放出させて、芳香などの効力を発揮させることができる。
【0069】
また、目的成分としては、ヘキサデカン、ドデカン、オクタン、キシレン、トルエン、ベンゼン、フタル酸ジブチル、フタル酸ジメチル等の水難溶性の溶媒も使用できる。これらの溶媒を目的物質として用いる場合には、この溶媒を内包する高分子微粒子を製造することもできるが、溶媒内包微粒子を一旦得た後に、この溶媒を乾燥などにより除去して中空高分子微粒子を製造することもできる。
【0070】
目的成分の使用量は、モノマー成分の1重量部に対して、0.01〜2重量部程度、特に0.1〜1重量部程度とするのが好ましい。
【0071】
また、目的成分として、次の1)〜3)の要件を満たす成分を用いることが好ましい。すなわち、
1)モノマー成分に対して高い相溶性を有する。
【0072】
2)モノマー成分を重合又は共重合することにより得られるポリマー(PA)に対して低い相溶性を有する。
【0073】
3)目的成分と水との間の界面張力(γz)(mN/m)とポリマー(PA)と水との間の界面張力(γy)(mN/m)との関係において、γz≧γyの条件 を満たす。
【0074】
1)〜3)の要件を満たす目的成分を用いる場合には、補助ポリマーを用いてもよいが、用いなくてもよい。
【0075】
1)〜3)の要件を満たすポリマー(PA)と目的成分との組み合わせは、後述する方法により容易に選択することができるが、例えばポリジビニルベンゼンとヘキサデカンとの組み合わせ、ポリジビニルベンゼンとドデカンとの組み合わせ,ポリスチレンとヘキサデカンとの組み合わせ、ポリスチレンとオクタンとの組み合わせ、および、ポリスチレンとドデカンとの組み合わせ等の組み合わせが挙げられる。
【0076】
本明細書において、目的成分とポリマーとの相溶性は、次の方法で測定したものである。すなわち、ポリマーの原料であるモノマー成分と目的成分と必要であればトルエンとを適当な重量比率で含むモノマー成分溶液に、開始剤(モノマー成分に対して2重量%)を添加し、30℃、窒素ガス雰囲気中で、モノマー成分の重合反応を起こさせる。この反応を光路長1cmの石英ガラスセル内で行い、波長550nmの光を照射した場合の光透過率を経時的に測定する。目的成分の濃度を増加させていくと、当初約100%であった透過率が、ポリマーが相分離することによって重合時間経過時に急激に0%近くまで低下する。この場合に、目的成分とポリマーとの相溶性が低いと0%近くまで低下するが、目的成分とポリマーとの相溶性が高いと透過率はほとんど低下しない。また、目的成分とポリマーとの相溶性が低いほど、重合開始から透過率の低下が起こるまでの時間が短くなる。
【0077】
ポリマーに対して低い相溶性を有する目的成分としては、前記方法で透過率を測定した場合に、モノマー成分の重合率が1〜10%程度、好ましくは1〜5%程度で透過率の低下が起こる目的成分が挙げられる。
【0078】
また、本明細書において、界面張力は、ASTM−971−50において規定されるデュヌイの白金リング法で測定した値である。
【0079】
1)〜3)の要件を満たす目的成分を用いる場合には、補助ポリマー(SPA)を使用しなくても、目的成分がモノマー成分とそれが重合または共重合することにより得られるポリマー(PA)との相分離を促進する。
【0080】
また、補助ポリマーを使用しなくても、目的成分、モノマー成分および開始剤の均一溶液中で、モノマー成分が重合または共重合してポリマー(PA)となり、ポリマー(PA)が水との界面に吸着される際に、目的成分よりもポリマー(PA)の方が水との界面に吸着され易くなり、その結果、ポリマー(PA)からなるシェル内部に目的成分が内包された微粒子が得られる。
モノマー成分
本発明の目的成分内包微粒子のシェルを構成する架橋性モノマー及び単官能性モノマーは、疎水性であることが好ましいが、通常はこの要件は満たされる。
【0081】
モノマー成分は、少なくとも1種の架橋性モノマーを100〜0%、少なくとも1種の単官能性モノマーを0〜100%含む。すなわち、モノマー成分は、少なくとも1種の架橋性モノマー、少なくとも1種の架橋性モノマーと少なくとも1種の単官能性モノマーとの混合物、または、少なくとも1種の単官能性モノマーである。
【0082】
モノマー成分が少なくとも1種の架橋性モノマーである場合には、得られる目的成分内包微粒子は極めて高強度のものとなる。
【0083】
また、モノマー成分が少なくとも1種の架橋性モノマーと少なくとも1種の単官能性モノマーとの混合物である場合には、両者の混合比率を調整することにより、得られる成分内包微粒子の強度を任意に設定できる。架橋性モノマーの含有比率を高くするほど微粒子は高強度のものとなる。
【0084】
高強度の微粒子を製造するために架橋性モノマーと単官能性モノマーとを併用する場合、架橋性モノマーの混合比率は、単官能性モノマーと架橋性モノマーとの合計量に対して、架橋性モノマーが10重量%以上、特に30重量%以上であるのが好ましい。
【0085】
これらモノマーを重合させて得られるシェルは、少なくとも1種の架橋性モノマー100〜10重量%程度、特に100〜30重量%程度及び少なくとも1種の単官能性モノマー0〜90重量%程度、特に0〜70重量%程度含むモノマー成分を重合または共重合させることにより得られる重合体又は共重合体から構成される。
【0086】
一方、モノマー成分が、少なくとも1種の単官能性モノマーである場合には、得られる成分内包微粒子は低強度のものとなる。
【0087】
このように、本発明方法においては、モノマー成分中の架橋性モノマーと単官能性モノマーとの比率を調整することにより、微粒子シェルの強度を容易に調整することができる。
<架橋性モノマー>
架橋性モノマーとしては、重合性反応基、特に重合性2重結合を2個以上(特に、2〜4個)有する多官能性モノマーを例示できる。特に、重合性C=C2重結合を2個以上(特に、2〜4個)有する多官能性モノマーが好ましい。例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。特に、ジビニルベンゼンおよびエチレングリコールジメタクリレートなどが好ましく、最も好ましいのはエチレングリコールジメタクリレートである。これらは単独であるいは2種以上を混合して使用できる。
【0088】
但し、目的成分としてヒノキチオールを用いる場合には、ヒノキチオールがラジカル補足剤に類似した構造を有するため、ラジカル重合するモノマーであって連鎖移動係数が大きいもの(例えばジビニルベンゼン)を用いると重合が進行し難い傾向がある。従って、目的成分としてヒノキチオールを用いる場合には、ラジカル重合するモノマーであれば、エチレングリコールジメタクリレート等の、ヒノキチオールに対して連鎖移動係数が小さい架橋性モノマーを用いることが好ましい。
<単官能性モノマー>
また、単官能性モノマーとしては、例えば、モノビニル芳香族単量体、アクリル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体、ジオレフィン等が挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を混合して使用できる。
【0089】
上記モノビニル芳香族単量体としては、下記一般式(1)で表されるモノビニル芳香族炭化水素、低級(炭素数1〜4)アルキル基で置換されていてもよいビニルビフェニル、低級(炭素数1〜4)アルキル基で置換されていてもよいビニルナフタレン等が挙げられる。
【0090】
【化1】
【0091】
[式中、R1は、水素原子、低級(炭素数1〜4)アルキル基又はハロゲン原子であり、R2は、水素原子、低級(炭素数1〜4)アルキル基、ハロゲン原子、−SO3Na基、低級(炭素数1〜4)アルコキシ基、アミノ基又はカルボキシル基を示す。]
上記一般式(1)において、R1は、水素原子、メチル基又は塩素原子が好ましく、R2は、水素原子、塩素原子、メチル基又は−SO3Na基であるのが好ましい。
【0092】
上記一般式(1)で示されるモノビニル芳香族炭化水素の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等があげられる。
【0093】
更に、低級アルキル基で置換されていてもよいビニルビフェニル、低級アルキル基で置換されていてもよいビニルナフタレンとしては、ビニルビフェニル、メチル基、エチル基等の低級アルキル基で置換されているビニルビフェニル、ビニルナフタレン、メチル基、エチル基等の低級アルキル基で置換されているビニルナフタレン等を例示できる。これらモノビニル芳香族単量体は、単独であるいは2種類以上併用することができる。
【0094】
また、上記アクリル系単量体としては、下記の一般式(2)で表されるアクリル系単量体が挙げられる。
【0095】
【化2】
【0096】
[式中、R3は、水素原子又は低級(炭素数1〜4)アルキル基を示し、R4は、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、低級(炭素数1〜4)アミノアルキル基又はジ(C1-C4アルキル)アミノ−(C1-C4)アルキル基を示す。]
一般式(2)において、R3は、水素原子又はメチル基であるのが好ましく、R4は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、低級(炭素数1〜4)ヒドロキシアルキル基、低級(炭素数1〜4)アミノアルキル基が好ましい。
【0097】
上記アクリル系単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルエキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸γ−ヒドロキシブチル、アクリル酸δ−ヒドロキシブチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸γ−アミノプロピル、アクリル酸γ−N,N−ジエチルアミノプロピル等が挙げられる。
【0098】
上記ビニルエステル系単量体としては、下記の一般式(3)で表されるものが挙げられる。
【0099】
【化3】
【0100】
[式中、R5は水素原子又は低級(炭素数1〜4)アルキル基を示す。]
上記ビニルエステル系単量体の具体例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
【0101】
上記ビニルエーテル系単量体としては、下記の一般式(4)で表されるビニルエーテル系単量体が挙げられる。
【0102】
【化4】
【0103】
[R6は、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基又はシクロヘキシル基を示す。]
上記ビニルエーテル系単量体の具体例としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルn−ブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル等が挙げられる。
【0104】
上記モノオレフィン系単量体としては、下記の一般式(5)で表されるものが挙げられる。
【0105】
【化5】
【0106】
[式中、R7及びR8は、水素原子又は低級(炭素数1〜4)アルキル基であり、それぞれ異なっていても同一でもよい。]
上記モノオレフィン系単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1等が挙げられる。
【0107】
上記ハロゲン化オレフィン系単量体としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデンをあげることができる。
【0108】
さらに、ジオレフィン類である、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等も単官能性単量体に含めることができる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0109】
架橋性モノマーと共重合させる単官能性モノマーとしては、モノビニル芳香族単量体、アクリル系単量体、ビニルエステル系単量体およびビニルエーテル系単量体などが好ましい。特に好ましいのは、スチレン、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ブチルなどである。
【0110】
架橋性モノマーと単官能性モノマーとを併用する場合の両者の好適な組み合わせとしては、架橋性モノマーであるエチレングリコールジメタクリレートと、単官能性モノマーであるスチレン単独、アクリル酸エステル単独、メタクリル酸エステル単独、スチレンおよびアクリル酸エステル、スチレンおよびメタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、スチレンおよびアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルとの組合わせなどが挙げられる。
【0111】
モノマー成分の使用量は、目的成分内包微粒子の粒子径、シェルの厚さ、内径等に応じて適宜選択できるが、一般には、目的成分1重量部に対して0.5〜100重量部程度、特に1〜10重量部程度とするのが好ましい。
補助ポリマー(SPA)
補助ポリマー(SPA)としては、次の4)〜5)の要件を満たすポリマーを広く用いることができる。すなわち、
4) モノマー成分を重合又は共重合することにより得られるポリマー(PA)に対して低い相溶性を有する。
5) 補助ポリマー(SPA)と水との間の界面張力(γx)(mN/m)とポリマー(PA)と水との間の界面張力(γy)(mN/m)との関係において、γx≧γyの条件を満たす。
【0112】
具体的には、補助ポリマーとしては、架橋性モノマー成分が重合又は共重合することにより得られるポリマー(PA)より、極性が低いものを用いることができる。
【0113】
本明細書において、補助ポリマー(SPA)とポリマー(PA)との相溶性は、目的成分とポリマー(PA)との相溶性について説明した方法において、目的成分に代えて補助ポリマー(SPA)を用いて測定したものである。
【0114】
ポリマー(PA)に対して低い相溶性を有する補助ポリマー(SPA)としては、モノマー成分の重合率が0.01〜4%程度で透過率の低下が起こる補助ポリマーを例示できる。
【0115】
また、界面張力については、前述したとおり、ASTM-971-50において規定されるデュヌイの白金リング法で測定した値である。
【0116】
なお、補助ポリマー(SPA)は、モノマー成分に溶解するものであることが望ましいが、通常この要件は満たされる。
【0117】
4)〜5)の要件を満たす補助ポリマー(B)は、モノマー成分(C)とそれが重合または共重合することにより得られるポリマー(PC)との相分離を促進する。
【0118】
さらに、目的成分、モノマー成分、補助ポリマー(SPA)および開始剤の均一溶液中で、モノマー成分が重合または共重合してポリマー(PA)となり、ポリマー(PA)が水との界面に吸着される際に、ポリマー(PA)の方が補助ポリマー(SPA)よりも水との界面に吸着され易くなり、その結果、ポリマー(PA)からなるシェル内部に目的成分が内包された微粒子が得られる。
このような補助ポリマーとしては、例えばポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチルなどを用いることができる。
【0119】
4)〜5)の要件を満たすような、モノマー成分と補助ポリマー(SPA)との組み合わせは、前述した方法により容易に選択することができるが、例えば、次表の組み合わせを例示できる。
【0120】
上記補助ポリマー(SPA)の使用量は、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、モノマー成分1重量部に対して、0.05〜0.4重量部程度、特に0.1〜0.2重量部程度とするのが好ましい。
【0121】
補助ポリマー(SPA)の分子量は、通常数十万程度のものを用いることができる。補助ポリマーは、溶液重合、塊状重合などの公知の方法で製造することができる。例えば、単量体としてスチレン18g、溶媒としてトルエン12g、開始剤としてAIBN54mgを用いて、60℃で、24時間反応させる溶液重合により、分子量数十万程度のポリスチレンを得ることができる。
【0122】
開始剤
本発明で使用する開始剤は、上記液滴中で、モノマー成分の重合を開始させるものであり、油溶性の重合開始剤が広く使用できる。例えば、ラジカル重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物や、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物等の単量体に可溶なものが挙げられる。また、紫外線等の光により重合開始する光重合開始剤を用いてもよい。このような光重合開始剤としては、油溶性であれば、特に制限されるものではなく、従来から使用されているものが挙げられる。
【0123】
上記開始剤の使用量は、モノマー成分の1重量部に対して、0.005〜0.1重量部程度、特に0.01〜0.06重量部程度とするのが好ましい。
分散工程
本発明では、上記分散安定剤の水溶液中に、目的成分、モノマー成分、開始剤、および必要に応じて補助ポリマー(SPA)を前記使用割合で含有する混合物を分散させ、懸濁重合を行う。
【0124】
目的成分、必要に応じて添加される補助ポリマー(SPA)および開始剤は、モノマー成分に溶解して、均一溶液となっているのが好ましい。混合時の温度としては特に限定はなく、例えば、0〜30℃程度で混合すればよい。
【0125】
こうして得られた目的成分、モノマー成分、開始剤および必要に応じて添加される補助ポリマー(SPA)の均一溶液を、次いで、上記分散安定剤の水溶液中で分散させる。
【0126】
この均一溶液は、分散安定剤の水溶液100重量部当たり、1〜200重量部程度、特に10〜100重量部程度となるような量で使用するのが好ましいが、特にこの範囲に限定されるものではない。
【0127】
分散方法としては、ホモジナイザーや膜乳化法など機械的せん断力による分散方法等の公知の方法を種々採用できる。分散の際の温度条件は、使用する目的成分および開始剤の分解に影響する温度以下であれば限定されるものではないが、0〜30℃程度であるのが好ましい。
【0128】
上記分散方法では、目的成分、モノマー成分、開始剤および場合により補助ポリマー(SPA)の均一混合物が分散されて形成される液滴の大きさは単分散ではなく、一般に種々の異なる粒子径の液滴が混在したものとなる。従って、最終的に得られる目的成分内包微粒子も異なる粒子径を有する。
【0129】
一方、分散方法を選択することにより、液滴の大きさを均一にして、単分散の液滴を得ることもできる。そのような単分散液滴を得る方法としては、例えば、多孔質ガラス(SPG)を利用した膜乳化法による単分散液滴を作製する方法やシード膨潤法(特開平8-20604号公報に記載の方法)などを挙げることができる。
【0130】
このような粒子径が均一に揃った単分散の液滴を調製した場合は、最終的に得られる目的成分内包微粒子も粒子径が均一に揃った単分散となる。
【0131】
いずれの場合も、上記液滴の平均粒子径は、所望する目的成分内包微粒子の平均粒子径に応じて適宜決定すればよいが、一般には0.05〜50μm程度、特に0.1〜20μm程度とするのが好ましい。目的成分、架橋性モノマー成分、開始剤および必要に応じて添加される補助ポリマー(SPA)からなる均一溶液の粘度、分散安定剤の使用量、分散安定剤水溶液の粘度、分散方法・分散条件を前記範囲で適宜設定することにより、前記範囲の液滴平均粒子径が得られる。
懸濁重合
こうして得られた目的成分、モノマー成分、開始剤および必要に応じて添加される補助ポリマー(SPA)の均一混合物が分散された分散安定剤の水溶液を、懸濁重合に供するには、この水溶液を撹拌しながら加熱すればよい。
【0132】
加熱温度としては、目的成分、モノマー成分(SPA)、開始剤および必要に応じて添加される補助ポリマー(SPA)の均一混合物の液滴中で、モノマー成分が開始剤により重合開始されるに足りる温度であれば特に限定されないが、一般には、30〜90℃程度、特に40〜70℃程度が好ましい。
【0133】
懸濁重合は、所望の目的成分内包微粒子が得られるまで行う。懸濁重合に要する時間は、使用する目的成分、モノマー成分および開始剤の種類等により変動するが、一般には3〜48時間程度である。
【0134】
また、懸濁重合に際しては、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0135】
こうして懸濁重合を行うことにより、目的成分、モノマー成分、開始剤および必要に応じて添加される補助ポリマー(SPA)の均一溶液の液滴中で、モノマー成分が重合する。
【0136】
得られたモノマー成分の重合体又は共重合体(PA)は、目的成分または/および補助ポリマー(SPA)の存在により、相分離が促進され、その結果、単層構造のシェル、即ち、ポリマー(PA)からなるシェルが形成される。一方、コア部には、目的成分および場合により補助ポリマー(SPA)が内包された状態となる。
【0137】
室温で固体の目的成分は、反応初期の液滴中ではモノマー成分に溶解しているが、モノマー成分の重合又は共重合が進行するにつれて析出する傾向がある。
【0138】
このようにして得られた目的成分内包微粒子は、分散液(サスペンジョン)のままで使用してもよく、また、濾過し必要に応じて水洗した後、粉体の形態で、各種用途に供することができる。サスペンジョンを乾燥して粉体の形態の目的成分内包微粒子を得る場合には、目的成分が昇華または蒸発しない温度・圧力条件下で、例えば温度0〜50℃程度、圧力103〜105Pa程度の条件下で乾燥することができる。また、自然蒸発、減圧処理、シリカゲルなどの乾燥剤の使用によっても微粒子を乾燥することができる。
本発明の第2の目的成分内包微粒子の製造方法
本発明の第2の目的成分内包微粒子の製造方法は、
分散安定剤の水溶液中に、
(i) 目的成分、
(ii) エポキシ樹脂、
(iii) 硬化剤
(iv) エポキシ樹脂を硬化剤を用いて架橋させることにより得られる架橋エポキシ樹脂に対して相溶性が低く、かつ、補助ポリマー(SPB)と水との間の界面張力(γp)(mN/m)と架橋エポキシ樹脂と水との間の界面張力(γq)(mN/m)との関係において、γp≧γqの条件を満たす補助ポリマー(SPB)
からなる均一溶液を分散させ、懸濁架橋反応を行う方法である。
分散安定剤
使用可能な分散安定剤は、本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法において使用できる分散安定剤と同様である。
【0139】
分散安定剤の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般には、目的成分、エポキシ樹脂、硬化剤及び補助ポリマー(SPB)からなる均一溶液の1重量部に対して、0.005〜1重量部程度、特に0.01〜0.1重量部程度とするのが好ましい。
【0140】
また、分散安定剤の水溶液中の分散安定剤の濃度は本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法の場合と同等である。
目的成分
目的成分としては、エポキシ樹脂及び硬化剤に対して高い相溶性を有し、すなわち水に溶解しない疎水性物質、特に水に溶解しない疎水性有機化合物であればよく、特に制限されない。また、目的成分は、常温で固体又は液体のいずれであっても用いることができる。
【0141】
目的成分としては、例えば、本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法において例示した芳香性物質、抗菌剤、防虫剤、防カビ剤及び溶媒を挙げることができる。
【0142】
目的成分の使用量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の1重量部に対して、0.01〜2重量部程度、特に0.1〜1重量部程度とするのが好ましい。
【0143】
また、目的成分として、次の6)〜8)の要件を満たす成分を用いることが好ましい。すなわち、
6)エポキシ樹脂及び硬化剤に対して高い相溶性を有する。
7)エポキシ樹脂を硬化剤を用いて架橋することにより得られる架橋エポキシ樹脂に対して低い相溶性を有する。
8)目的成分と水との間の界面張力(γr)(mN/m)と架橋エポキシ樹脂と水との間の界面張力(γq)(mN/m)との関係において、γr≧γqの条件を満 たす。
【0144】
本明細書において、目的成分と架橋エポキシ樹脂との相溶性は、次の方法で測定したものである。すなわち、架橋エポキシ樹脂の原料であるエポキシ樹脂と目的成分と必要であればトルエンとを適当な重量比率で含むモノマー成分溶液に、硬化剤(エポキシ樹脂に対して等モル当量)を添加し、70℃、窒素ガス雰囲気中で、エポキシ樹脂の架橋反応を起こさせる。この反応を光路長1cmの石英ガラスセル内で行い、波長550nmの光を照射した場合の光透過率を経時的に測定する。目的成分の濃度を増加させていくと、当初約100%であった透過率が、架橋エポキシ樹脂が相分離することによって重合時間経過時に急激に0%近くまで低下する。この場合に、目的成分と架橋エポキシ樹脂との相溶性が低いと0%近くまで低下するが、目的成分と架橋エポキシ樹脂との相溶性が高いと透過率はほとんど低下しない。また、目的成分と架橋エポキシ樹脂との相溶性が低いほど、架橋開始から透過率の低下が起こるまでの時間が短くなる。
【0145】
架橋エポキシ樹脂に対して低い相溶性を有する目的成分としては、前記方法で透過率を測定した場合に、エポキシ樹脂の架橋率が1〜20%程度、好ましくは1〜10%程度で透過率の低下が起こる目的成分が挙げられる。
【0146】
6)〜8)の要件を満たす目的成分を用いる場合には、補助ポリマー(SPB)を用いてもよいが、用いなくてもよい。
【0147】
6)〜8)の要件を満たす架橋エポキシ樹脂と目的成分との組み合わせは、後述する方法により容易に選択することができるが、例えば、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(ストルアス社製、エポフィクス(商品名))を硬化剤の4,4'−ジアミノジフェニルメタンを用いて架橋させた架橋エポキシ樹脂とキシレンとの組み合わせ、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(油化シェルエポキシ社製、エピコート828(商品名))を硬化剤のドデカメチレンジアミンを用いて架橋させた架橋エポキシ樹脂とヘキサデカンとの組み合わせ等の組み合わせが挙げられる。
【0148】
6)〜8)の要件を満たす目的成分を用いる場合には、補助ポリマー(SPB)を使用しなくても、目的成分がエポキシ樹脂及び硬化剤と架橋エポキシ樹脂との相分離を促進する。
【0149】
また、補助ポリマーを使用しなくても、目的成分、エポキシ樹脂および硬化剤の均一溶液中で、エポキシ樹脂が架橋して架橋エポキシ樹脂となり、架橋エポキシ樹脂が水との界面に吸着される際に、目的成分よりも架橋エポキシ樹脂の方が水との界面に吸着され易くなり、その結果、架橋エポキシ樹脂からなるシェル内部に目的成分が内包された微粒子が得られる。
エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は、水難溶性であることが好ましいが、通常はこの要件は満たされる。
【0150】
エポキシ樹脂は、特に制限されず、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する公知の化合物を使用できる。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、臭素化ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールAF、レゾシノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのフェノール類をエピクロロヒドリンを用いてエポキシ化したフェノール系グリシジルエーテル、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類をエピクロロヒドリンを用いてエポキシ化したアルコール系グリシジルエーテル;フタル酸、合成脂肪酸(ダイマー酸など)等をエピクロロヒドリンを用いてエポキシ化したグリシジルエステル;アミノフェノール、アミノクレゾールなどをエピクロロヒドリンを用いてエポキシ化したグリシジルアミン等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0151】
特に、室温で液体状のものが好ましく、このようなエポキシ樹脂としてビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル等が挙げられる。ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルがより好ましい。
【0152】
エポキシ樹脂の使用量は、目的成分1重量部に対して0.01〜2重量部程度、特に0.1〜1重量部程度とするのが好ましい。
補助ポリマー(SPB)
補助ポリマー(SPB)としては、次の9)〜10)の要件を満たすポリマーを広く用いることができる。すなわち、
9) エポキシ樹脂を硬化剤を用いて架橋させることにより得られる架橋エポキシ樹脂に対して低い相溶性を有する。
10) 補助ポリマー(SPB)と水との間の界面張力(γp)(mN/m)と架橋エポキシ樹脂と水との間の界面張力(γq)(mN/m)との関係において、γp≧γqの条件を満たす。
【0153】
具体的には、補助ポリマーとしては、エポキシ樹脂を硬化剤を用いて架橋させることにより得られる架橋エポキシ樹脂より、極性が低いものを用いることができる。
【0154】
本明細書において、補助ポリマー(SPB)と架橋エポキシ樹脂との相溶性は、目的成分と架橋エポキシ樹脂との相溶性について説明した方法において、目的成分に代えて補助ポリマー(SPB)を用いて測定したものである。
【0155】
架橋エポキシ樹脂に対して低い相溶性を有する補助ポリマー(SPB)としては、エポキシ樹脂の架橋率が0.01〜10%程度で透過率の低下が起こる補助ポリマーを例示できる。
なお、補助ポリマー(SPB)は、エポキシ樹脂に溶解するものであることが望ましいが、通常この要件は満たされる。
【0156】
9)〜10)の要件を満たす補助ポリマー(SPB)は、エポキシ樹脂及び硬化剤とそれが架橋することにより得られる架橋エポキシ樹脂との相分離を促進する。さらに、目的成分、エポキシ樹脂、補助ポリマー(SPB)および硬化剤の均一溶液中で、エポキシ樹脂が架橋して架橋エポキシ樹脂となり、架橋エポキシ樹脂が水との界面に吸着される際に、架橋エポキシ樹脂の方が補助ポリマー(SPB)よりも水との界面に吸着され易くなり、その結果、架橋エポキシ樹脂からなるシェル内部に目的成分が内包された微粒子が得られる。
このような補助ポリマーとしては、例えばポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチルなどを用いることができる。
【0157】
9)〜10)の要件を満たすような、エポキシ樹脂と硬化剤と補助ポリマー(SPB)との組み合わせは、前述した方法により容易に選択することができるが、例えば、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルと4,4'−ジアミノジフェニルメタンとポリスチレンとの組み合わせ等を例示できる。
【0158】
補助ポリマー(SPB)の使用量は、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量1重量部に対して、0.05〜0.4重量部程度、特に0.1〜0.2重量部程度とするのが好ましい。
【0159】
補助ポリマーの分子量(SPB)は、通常数十万程度のものを用いることができる。
硬化剤
本発明で使用する硬化剤は、上記液滴中で、エポキシ樹脂を架橋させることにより硬化させるものであり、エポキシ樹脂の硬化剤として公知の、油溶性の多官能硬化剤を広く使用できる。
【0160】
具体的には、ポリメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、分岐ポリメチレンジアミン、メタンジアミン、アミノエチルピペラジン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどの脂肪族アミン;キシリレンジアミン、テトラクロル-p-キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、ジアミノフェニルスルホン、ベンジジン、4,4'−ビス(トルイジン)、4,4'−ジチオアニリン、ジアニジン、メチレンビス(クロロアニリン)、トルエンジアミンなどの芳香族アミン;無水フタル酸誘導体、無水アルケニル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水マレイン酸-ビニルエーテル共重合物、無水マレイン酸-スチレン共重合物、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテイト、グリセリントリストリメリテイトなどの酸無水物;ポリフェノール;ポリメルカプタン;ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノールなどの3級アミン;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール;芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩などの酸;フェノール樹脂;尿素樹脂;メラミン樹脂等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0161】
特に、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタンのような重付加型の硬化剤が好ましく、中でもポリアミン、ポリフェノール等が好ましく、ポリアミン(特に芳香族ジアミン)がより好ましい。
【0162】
硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基数と硬化剤の反応性官能基数とが同程度になるような量とすることが好ましいが、エポキシ基の1に対して、硬化剤の反応性官能基数が0.7〜1.5程度、特に0.9〜1.2程度となる範囲にすることもできる。
【0163】
エポキシ樹脂と硬化剤との好ましい組み合わせとしては、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(例えばストルアス社製、エポフィクス)と4,4'−ジアミノジフェニルメタンとの組み合わせ、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(例えば油化シェルエポキシ社製、エピコート828)とドデカメチレンジアミンとの組み合わせ等が挙げられる。
分散工程
本発明では、分散安定剤の水溶液中に、目的成分、エポキシ樹脂、硬化剤、および必要に応じて補助ポリマー(SPB)を前記使用割合で含有する混合物を分散させ、懸濁架橋反応を行う。
【0164】
目的成分、必要に応じて添加される補助ポリマー(SPB)および硬化剤は、エポキシ樹脂に溶解して、均一溶液となっているのが好ましい。混合時の温度としては特に限定はなく、例えば、0〜30℃程度で混合すればよい。
【0165】
こうして得られた目的成分、エポキシ樹脂、硬化剤および必要に応じて添加される補助ポリマー(SPB)の均一溶液を、次いで、分散安定剤の水溶液中で分散させる。
【0166】
この均一溶液は、分散安定剤の水溶液100重量部当たり、1〜200重量部程度、特に10〜100重量部程度となるような量で使用するのが好ましいが、特にこの範囲に限定されるものではない。
【0167】
分散方法及び温度は、本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法の場合と同様である。目的成分、エポキシ樹脂、硬化剤及び場合により補助ポリマー(SPB)の均一混合物が分散されて形成される液滴の平均粒子径は、所望する目的成分内包微粒子の平均粒子径に応じて適宜決定すればよいが、一般には0.05〜50μm程度、特に0.1〜20μm程度とするのが好ましい。単分散の液滴は、多孔質ガラス(SPG)を利用した膜乳化法やシード膨潤法(特開平8-20604号公報に記載の方法)に準じて作製することができる。
懸濁架橋反応
こうして得られた目的成分、エポキシ樹脂、硬化剤および必要に応じて添加される補助ポリマー(SPB)の均一混合物が分散された分散安定剤の水溶液を、懸濁重合に供するには、この水溶液を撹拌しながら加熱すればよい。
【0168】
加熱温度としては、目的成分、エポキシ樹脂(SPB)、硬化剤および必要に応じて添加される補助ポリマー(SPB)の均一混合物の液滴中で、エポキシ樹脂が硬化剤により架橋されるに足りる温度であれば特に限定されないが、一般には、30〜150℃程度、特に40〜120℃程度が好ましい。
【0169】
架橋反応は、所望の目的成分内包微粒子が得られるまで行う。懸濁架橋反応に要する時間は、使用する目的成分、エポキシ樹脂および硬化剤の種類等により変動するが、一般には3〜48時間程度である。
【0170】
また、懸濁架橋反応に際しては、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0171】
こうして懸濁架橋反応を行うことにより、目的成分、エポキシ樹脂、硬化剤および必要に応じて添加される補助ポリマー(SPB)の均一溶液の液滴中で、エポキシ樹脂が架橋により硬化する。
【0172】
得られた架橋エポキシ樹脂は、目的成分または/および補助ポリマー(SPB)の存在により、相分離が促進され、その結果、単層構造のシェル、即ち、架橋エポキシ樹脂からなるシェルが形成される。一方、コア部には、目的成分および場合により補助ポリマー(SPB)が内包された状態となる。
【0173】
室温で固体の目的成分は、反応初期の液滴中ではエポキシ樹脂に溶解しているが、エポキシ樹脂の架橋が進行するにつれて析出する傾向がある。
【0174】
このようにして得られた目的成分内包微粒子は、分散液(サスペンジョン)のままで使用してもよく、また、濾過し必要に応じて水洗した後、粉体の形態で、各種用途に供することができる。微粒子の乾燥方法は、本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法の場合と同様である。
本発明の第3の目的成分内包微粒子の製造方法
本発明の第3の目的成分内包微粒子の製造方法は、
分散安定剤の水溶液中に、
(i) 目的成分、
(ii) 多価イソシアネート、
(iii) 多価アルコール
(iv) 多価イソシアネートと多価アルコールとの重付加反応により得られるポリウレタンに対して相溶性が低く、かつ、補助ポリマー(SPC)と水との間の界面張力(γt)(mN/m)とポリウレタンと水との間の界面張力(γu)(mN/m)との関係において、γt≧γuの条件を満たす補助ポリマー(SPC)
からなる均一溶液を分散させ、懸濁重付加反応を行う方法である。
分散安定剤
使用可能な分散安定剤は、本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法において使用できる分散安定剤と同様である。
【0175】
分散安定剤の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般には、目的成分、多価イソシアネート、多価アルコール及び補助ポリマー(SPC)からなる均一溶液の1重量部に対して、0.005〜1重量部程度、特に0.01〜0.1重量部程度とするのが好ましい。
【0176】
また、分散安定剤の水溶液中の分散安定剤の濃度は本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法の場合と同様である。
目的成分
目的成分としては、多価イソシアネート及び多価アルコールに対して高い相溶性を有し、すなわち水に溶解しない疎水性物質、特に水に溶解しない疎水性有機化合物であればよく、特に制限されない。また、目的成分は、常温で固体又は液体のいずれであっても用いることができる。
【0177】
目的成分としては、例えば、本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法において例示した芳香性物質、抗菌剤、防虫剤、防カビ剤及び溶媒を挙げることができる。
【0178】
目的成分の使用量は、多価イソシアネート及び多価アルコールの1重量部に対して、0.01〜2重量部程度、特に0.1〜1重量部程度とするのが好ましい。
【0179】
また、目的成分として、次の11)〜13)の要件を満たす成分を用いることが好ましい。すなわち、
11)多価イソシアネート及び多価アルコールに対して高い相溶性を有する。
12)多価イソシアネートと多価アルコールとの重付加反応により得られるポリウ
レタンに対して低い相溶性を有する。
13)目的成分と水との間の界面張力(γv)(mN/m)とポリウレタンと水との間 の界面張力(γu)(mN/m)との関係において、γv≧γuの条件を満たす。
【0180】
本明細書において、目的成分とポリウレタンとの相溶性は、次の方法で測定したものである。すなわち、ポリウレタンの原料である多価イソシアネートと目的成分と必要であればトルエンとを適当な重量比率で含むモノマー成分溶液に、多価アルコール(多価イソシアネートに対して等モル当量)を添加し、70℃、窒素ガス雰囲気中で、多価イソシアネートと多価アルコールとの重付加反応を起こさせる。この反応を光路長1cmの石英ガラスセル内で行い、波長550nmの光を照射した場合の光透過率を経時的に測定する。目的成分の濃度を増加させていくと、当初約100%であった透過率が、ポリウレタンが相分離することによって重合時間経過時に急激に0%近くまで低下する。この場合に、目的成分とポリウレタンとの相溶性が低いと0%近くまで低下するが、目的成分とポリウレタンとの相溶性が高いと透過率はほとんど低下しない。また、目的成分とポリウレタンとの相溶性が低いほど、架橋開始から透過率の低下が起こるまでの時間が短くなる。
【0181】
ポリウレタンに対して低い相溶性を有する目的成分としては、前記方法で透過率を測定した場合に、多価イソシアネートの架橋率が1〜20%程度、好ましくは1〜10%程度で透過率の低下が起こる目的成分が挙げられる。
【0182】
11)〜13)の要件を満たす目的成分を用いる場合には、補助ポリマー(SPC)を用いてもよいが、用いなくてもよい。
【0183】
11)〜13)の要件を満たすポリウレタンと目的成分との組み合わせは、後述する方法により容易に選択することができるが、例えば、イソフォロンジイソシアネートとノナンジオール及び5,5',6,6'−テトラヒドロキシ−3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビインダンとの重付加反応により得られるポリウレタンとオクタンとの組み合わせ、イソフォロンジイソシアネートとドデカンジオールとの重付加反応により得られるポリウレタンとヘキサデカンとの組み合わせ等が挙げられる。
【0184】
11)〜13)の要件を満たす目的成分を用いる場合には、補助ポリマー(SPC)を使用しなくても、目的成分が多価イソシアネート及び多価アルコールとポリウレタンとの相分離を促進する。
また、補助ポリマーを使用しなくても、目的成分、多価イソシアネートおよび多価アルコールの均一溶液中で、多価イソシアネートと多価アルコールとが重付加反応によりポリウレタンとなり、ポリウレタンが水との界面に吸着される際に、目的成分よりもポリウレタンの方が水との界面に吸着され易くなり、その結果、ポリウレタンからなるシェル内部に目的成分が内包された微粒子が得られる。
多価イソシアネート
多価イソシアネートは、水難溶性であることが好ましいが、通常はこの要件は満たされる。
【0185】
多価イソシアネートは、特に制限されず、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する公知の化合物を使用できる。例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添加MDI、4,4’−ビフェニルジイソシアネートトリデンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,8−オクタメチレンジイソシアネート、L−リジンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、4,4',4''−トリフェニルメタントリイソシアネート、2,4,4'−ビフェニルトリイソシアネート、2,4,4'−ジフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンフェニルイソシアネートなどが挙げられる。これらの多価イソシアネートは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0186】
特に、室温で液体状のものが好ましく、このような多価イソシアネートとしてイソフォロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。イソフォロンジイソシアネートがより好ましい。また、2官能イソシアネート及び3官能イソシアネートの双方を使用できるが、3官能イソシアネートがより好ましい。
【0187】
多価イソシアネートの使用量は、目的成分1重量部に対して0.01〜2重量部程度、特に0.1〜1重量部程度とするのが好ましい。
補助ポリマー(SPC)
補助ポリマー(SPC)としては、次の14)〜15)の要件を満たすポリマーを広く用いることができる。すなわち、
14) 多価イソシアネートと多価アルコールとの重付加反応により得られるポリウレタンに対して低い相溶性を有する。
15) 補助ポリマー(SPC)と水との間の界面張力(γt)(mN/m)とポリウレタンと水との間の界面張力(γu)(mN/m)との関係において、γt≧γuの条件を満たす。
【0188】
具体的には、補助ポリマーとしては、多価イソシアネートと多価アルコールとの重付加反応により得られるポリウレタンより、極性が低いものを用いることができる。
【0189】
本明細書において、補助ポリマー(SPC)とポリウレタンとの相溶性は、目的成分とポリウレタンとの相溶性について説明した方法において、目的成分に代えて補助ポリマー(SPC)を用いて測定したものである。
【0190】
ポリウレタンに対して低い相溶性を有する補助ポリマー(SPC)としては、多価イソシアネートの架橋率が0.01〜10%程度で透過率の低下が起こる補助ポリマーを例示できる。
なお、補助ポリマー(SPC)は、多価イソシアネートに溶解するものであることが望ましいが、通常この要件は満たされる。
【0191】
14)〜15)の要件を満たす補助ポリマー(SPC)は、多価イソシアネート及び多価アルコールとそれらが重付加することにより得られるポリウレタンとの相分離を促進する。
さらに、目的成分、多価イソシアネート、補助ポリマー(SPC)および多価アルコールの均一溶液中で、多価イソシアネートと多価アルコールとが重付加してポリウレタンとなり、ポリウレタンが水との界面に吸着される際に、ポリウレタンの方が補助ポリマー(SPC)よりも水との界面に吸着され易くなり、その結果、ポリウレタンからなるシェル内部に目的成分が内包された微粒子が得られる。
【0192】
補助ポリマー(SPC)の使用量は、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、多価イソシアネート及び多価アルコールの合計量1重量部に対して0.05〜0.4重量部程度、特に0.1〜0.2重量部程度とするのが好ましい。補助ポリマー(SPC)の分子量は、通常数十万程度のものを用いることができる。
多価アルコール
本発明で使用する多価アルコールは、上記液滴中で、多価イソシアネートとの重付加反応を起こすものであり、ポリウレタンの製造原料として公知の、油溶性の多価アルコールを広く使用できる。
【0193】
具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール(1,3−または1,4−ブチレングリコール)、テトラメチレンエーテルグリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、p−キシリレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0194】
また、これらの低分子多価アルコールの重合体または共重合体、またはこれらの低分子アルコールの1種又は2種以上にエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシドなどの1種又は2種以上を付加することにより得られるポリエーテル多価アルコールも挙げられる。さらに、これらの低分子多価アルコール又はこれらのアルキレンオキシド付加物等の1種又は2種以上と、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、シュウ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などの1種又は2種以上を反応させることにより得られるポリエステル多価アルコール;プロピオラクトン、ブチロラクトン、カプロラクトンなどの環状エステルを開環重合させることにより得られるポリエステル多価アルコール;多価アルコールと環状エステルとから得られるポリエステル多価アルコールなども例示できる。ポリエーテル多価アルコール又はポリエステル多価アルコールは、分子量80〜200程度、特に100〜150程度のものを使用できる。
【0195】
これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。特にトリアルコールが好ましい。
【0196】
多価アルコールの使用量は、多価イソシアネートとの間で、OH/NCOの値が1程度になる量を使用するのが一般的であるが、OH/NCO=0.7〜1. 5程度、特に0.9〜1.2程度の範囲で使用できる。
【0197】
多価イソシアネートと多価アルコールとの好ましい組み合わせとしては、イソフォロンジイソシアネートとノナンジオールとの組み合わせ、イソフォロンジイソシアネートとノナンジオール及び5,5',6,6'−テトラヒドロキシ−3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン混合物との組み合わせ等が挙げられる。
分散工程
本発明では、分散安定剤の水溶液中に、目的成分、多価イソシアネート、多価アルコール、および必要に応じて補助ポリマー(SPC)を前記使用割合で含有する混合物を分散させ、懸濁架橋反応を行う。
【0198】
目的成分、必要に応じて添加される補助ポリマー(SPC)および多価アルコールは、多価イソシアネートに溶解して、均一溶液となっているのが好ましい。混合時の温度としては特に限定はなく、例えば、0〜10℃程度で混合すればよい。
【0199】
こうして得られた目的成分、多価イソシアネート、多価アルコールおよび必要に応じて添加される補助ポリマー(SPC)の均一溶液を、次いで、分散安定剤の水溶液中で分散させる。
【0200】
この均一溶液は、分散安定剤の水溶液100重量部当たり、1〜200重量部程度、特に10〜100重量部程度となるような量で使用するのが好ましいが、特にこの範囲に限定されるものではない。
【0201】
分散方法及び温度は、本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法の場合と同様である。目的成分、多価イソシアネート、多価アルコール及び場合により補助ポリマー(SPC)の均一混合物が分散されて形成される液滴の平均粒子径は、所望する目的成分内包微粒子の平均粒子径に応じて適宜決定すればよいが、一般には0.05〜50μm程度、特に0.1〜20μm程度とするのが好ましい。単分散の液滴は、多孔質ガラス(SPG)を利用した膜乳化法やシード膨潤法(特開平8-20604号公報に記載の方法)に準じて作製することができる。
目的成分、多価イソシアネート、多価アルコールおよび必要に応じて添加される補助ポリマー(SPC)からなる均一溶液の粘度、分散安定剤の使用量、分散安定剤水溶液の粘度、分散方法・分散条件を前記範囲で適宜設定することにより、前記範囲の液滴平均粒子径が得られる。
懸濁重付加反応
こうして得られた目的成分、多価イソシアネート、多価アルコールおよび必要に応じて添加される補助ポリマー(SPC)の均一混合物が分散された分散安定剤の水溶液を、懸濁重付加反応に供するには、この水溶液を撹拌しながら加熱すればよい。
【0202】
加熱温度としては、目的成分、多価イソシアネート、多価アルコールおよび必要に応じて添加される補助ポリマー(SPC)の均一混合物の液滴中で、多価イソシアネートと多価アルコールとの重付加反応が進行するに足りる温度であれば特に限定されないが、一般には、30〜90℃程度、特に40〜70℃程度が好ましい。
【0203】
重付加反応は、所望の目的成分内包微粒子が得られるまで行う。懸濁重付加反応に要する時間は、使用する目的成分、多価イソシアネートおよび多価アルコールの種類等により変動するが、一般には3〜48時間程度である。
【0204】
また、懸濁重付加反応に際しては、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0205】
こうして懸濁架橋反応を行うことにより、目的成分、多価イソシアネート、多価アルコールおよび必要に応じて添加される補助ポリマー(SPC)の均一溶液の液滴中で、多価イソシアネートと多価アルコールとの重付加反応が生じる。
【0206】
得られたポリウレタンは、目的成分または/および補助ポリマー(SPC)の存在により、相分離が促進され、その結果、単層構造のシェル、即ち、ポリウレタンからなるシェルが形成される。一方、コア部には、目的成分および場合により補助ポリマー(SPC)が内包された状態となる。
【0207】
室温で固体の目的成分は、反応初期の液滴中では多価イソシアネートに溶解しているが、重付加反応が進行するにつれて析出する傾向がある。
【0208】
このようにして得られた目的成分内包微粒子は、分散液(サスペンジョン)のままで使用してもよく、また、濾過し必要に応じて水洗した後、粉体の形態で、各種用途に供することができる。微粒子の乾燥方法は、本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法の場合と同様である。
本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法により得られる目的成分内包微粒子
本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法により得られる目的成分内包微粒子は、前述したように、そのシェルが、実質上、少なくとも1種の架橋性モノマーの重合体若しくは共重合体、架橋性モノマーと単官能性モノマーとの共重合体、または、少なくとも1種の単官能性モノマーの重合体若しくは共重合体からなる単層構造である。
【0209】
本発明方法において、モノマー成分として、少なくとも1種の架橋性モノマーおよび少なくとも1種の単官能性モノマーを用いる場合には、モノマー成分中に含まれる架橋性モノマーの比率を調整することにより、得られる目的成分内包微粒子の強度を調整することができる。
【0210】
本発明方法により得られる微粒子シェルの強度は、モノマー成分の種類、微粒子の粒径などによっても異なるが、モノマー成分が架橋性モノマーからなる場合または架橋性モノマーおよび単官能性モノマーからなる場合には、通常1〜200mN程度、特に4〜150mN程度となる。一方、モノマー成分が単官能性モノマーからなる場合には、通常0.01〜0.5mN程度、特に0.1〜0.4mN程度となる。
【0211】
また、典型的には、本発明方法により得られる目的成分内包微粒子のシェルの厚さは、0.01〜5μm程度、特に0.1〜3μm程度である。
【0212】
また、本発明方法により得られる目的成分内包微粒子の中空部分の容積比率は、10〜80%程度、特に10〜50%程度である。
【0213】
ここで、本明細書において、「中空部分の容積比率」Aは、下記の式により算出されるものである。
【0214】
A(%)=(rh/rp)3×100
(式中、rhは、目的成分内包微粒子の中空部分の半径(シェルの内径の1/2)であり、rpは、目的成分内包微粒子の半径(シェルの外径の1/2)である。)
また、本発明方法により得られる目的成分内包微粒子の粒子径は、通常、平均粒子径が0.05〜50μm程度となる。特に、目的成分内包微粒子の粒子径が0.1〜20μm程度の範囲となるようにして本発明を実施するのが好ましい。この粒子径は、電子顕微鏡あるいは光学顕微鏡により測定した場合の粒子径である。
【0215】
中空微粒子の粒子径は、一般には、目的成分、モノマー成分、開始剤および必要に応じて添加される補助ポリマー(SPA)の均一混合物が分散されて形成される液滴の大きさを変化させることにより調節することができる。また、前述したように、懸濁重合の前に粒子径の揃った単分散の液滴を調整すると、得られる目的成分内包微粒子も粒子径の揃った単分散となる。
【0216】
本発明方法により得られる目的成分内包微粒子における、1微粒子あたりの目的成分の内包量は、通常、シェルに対して10〜80重量%程度となる。特に、30〜70重量%程度となるようにして本発明方法を実施するのが好ましい。
本発明の第2の目的成分内包微粒子の製造方法により得られる目的成分内包微粒子
本発明の第2の目的成分内包微粒子の製造方法により得られる目的成分内包微粒子は、前述したように、そのシェルが、実質上、架橋エポキシ樹脂からなる単層構造である。
【0217】
本発明方法においては、シェルを構成する高分子材料が架橋エポキシ樹脂であるために、高強度のシェルを有する微粒子が得られる。
【0218】
また、典型的には、本発明方法により得られる目的成分内包微粒子のシェルの厚さは、0.01〜5μm程度、特に0.1〜3μm程度である。
【0219】
また、本発明方法により得られる目的成分内包微粒子の中空部分の容積比率は、10〜80%程度、特に10〜50%程度である。
【0220】
また、本発明方法により得られる目的成分内包微粒子の粒子径は、通常、平均粒子径が0.05〜50μm程度となる。特に、目的成分内包微粒子の粒子径が0.1〜20μm程度の範囲となるようにして本発明を実施するのが好ましい。この粒子径は、電子顕微鏡あるいは光学顕微鏡により測定した場合の粒子径である。
【0221】
微粒子の粒子径の調整方法、単分散の目的成分内包微粒子の調製方法は、本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法の場合と同様である。
【0222】
本発明の第2の目的成分内包微粒子の製造方法により得られる目的成分内包微粒子における、1微粒子あたりの目的成分の内包量は、通常、シェルに対して10〜80重量%程度となる。特に、30〜70重量%程度となるようにして本発明方法を実施するのが好ましい。
本発明の第3の目的成分内包微粒子の製造方法により得られる目的成分内包微粒子
本発明の第3の目的成分内包微粒子の製造方法により得られる目的成分内包微粒子は、前述したように、そのシェルが、実質上、ポリウレタンからなる単層構造である。
【0223】
本発明方法においては、シェルを構成する高分子材料が架橋構造を採るポリウレタンであるために、高強度のシェルを有する微粒子が得られる。
【0224】
また、典型的には、本発明方法により得られる目的成分内包微粒子のシェルの厚さは、0.01〜5μm程度、特に0.1〜3μm程度である。
【0225】
また、本発明方法により得られる目的成分内包微粒子の中空部分の容積比率は、10〜80%程度、特に10〜50%程度である。
【0226】
また、本発明方法により得られる目的成分内包微粒子の粒子径は、通常、平均粒子径が0.05〜50μm程度となる。特に、目的成分内包微粒子の粒子径が0.1〜20μm程度の範囲となるようにして本発明を実施するのが好ましい。この粒子径は、電子顕微鏡あるいは光学顕微鏡により測定した場合の粒子径である。
【0227】
微粒子の粒子径の調整方法、単分散の目的成分内包微粒子の調製方法は、本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法の場合と同様である。
【0228】
本発明の第3の目的成分内包微粒子の製造方法により得られる目的成分内包微粒子における、1微粒子あたりの目的成分の内包量は、通常、シェルに対して10〜80重量%程度となる。特に、30〜70重量%程度となるようにして本発明方法を実施するのが好ましい。
本発明の第 1 の中空高分子微粒子の製造方法
本発明の中空高分子微粒子の製造方法は、分散安定剤の水溶液中で、
(i)エポキシ樹脂、
(ii)硬化剤及び
(iii)エポキシ樹脂を硬化剤を用いて架橋させることにより得られる架橋エポキシ樹脂に対して相溶性の低い水難溶性の溶媒
からなる混合物を分散させ、懸濁架橋反応を行う方法である。
分散安定剤
分散安定剤については、本発明の第2の目的成分内包微粒子の製造方法の場合と同様である。また、分散安定剤の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般には、エポキシ樹脂と硬化剤と溶媒との合計1重量部に対して、0.001〜1重量部程度、特に0.01〜0.1重量部程度とするのが好ましい。
【0229】
また、分散安定剤の水溶液において、分散安定剤の濃度は上記液滴が合一しないような濃度となるように適宜選択すればよい。一般には、分散安定剤水溶液の濃度は、0.001〜10重量%程度、特に0.1〜0.5重量%程度の範囲に調整するのが好ましい。
エポキシ樹脂
エポキシ樹脂については、本発明の第2の目的成分内包微粒子の製造方法の場合と同様である。エポキシ樹脂の使用量は、目的とする中空高分子微粒子の粒子径、シェルの厚さ等に応じて適宜選択できるが、一般には、前記溶媒1重量部に対して0.1〜2重量部程度、特に0.5〜1重量部程度とするのが好ましい。
硬化剤
硬化剤については、本発明の第2の目的成分内包微粒子の製造方法の場合と同様である。硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基数と硬化剤の反応性官能基数が同程度になる量とするのが一般的であるが、エポキシ基の1に対して硬化剤の反応性官能基数が0.7〜1.5程度、特に0.9〜1.2程度となる量とすることもできる。
【0230】
溶媒(B)
溶媒(B)は、エポキシ樹脂を硬化剤を用いて架橋することにより得られる架橋エポキシ樹脂に対する相溶性が低く、架橋エポキシ樹脂の相分離を促進し、かつ、架橋エポキシ樹脂皮膜の形成を妨げないものであれば、各種の有機溶媒が使用できる。
【0231】
このような溶媒としては、例えば、炭素数8〜18程度の飽和炭化水素、炭素数6〜12程度、特に炭素数6〜10程度の芳香族炭化水素等が例示できる。特に好ましい溶媒としては、ヘキサデカン、オクタン、キシレン等が挙げられる。
【0232】
本発明では、溶媒(B)としては、例示した炭化水素及び芳香族炭化水素に限定されず、架橋エポキシ樹脂に対して相溶性が低い性質を有し、かつ、溶媒(B)と水間の界面張力(γa)と、本発明の第1の中空高分子微粒子の製造方法の条件下でエポキシ樹脂及び硬化剤を溶媒(B)に溶解してなる溶液を懸濁架橋反応に供して得られる架橋エポキシ樹脂吸着表面と水間の界面張力(γb)(mN/m)との関係において、γa≧γbのような条件が成立する溶媒を広く使用できる。
【0233】
上記溶媒(B)の使用量は、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、エポキシ樹脂と硬化剤との合計量1重量部に対して、1〜5重量部程度、特に1〜2重量部程度とするのが好ましい。
分散工程
本発明では、分散安定剤の水溶液中に、エポキシ樹脂、硬化剤及び溶媒(B)を前述した使用割合で含有する混合物を分散させ、懸濁重合を行なう。
【0234】
エポキシ樹脂、硬化剤及び溶媒(B)の混合物は、均一溶液となっているのが好ましく、これら3成分を混合することにより形成される。混合時の温度としては特に限定はなく、例えば、0〜30℃程度で混合すればよい。
【0235】
こうして得られたエポキシ樹脂、硬化剤及び溶媒(B)の均一溶液を、次いで、分散安定剤の水溶液中で分散させる。
【0236】
均一溶液は、分散安定剤の水溶液100重量部当たり、1〜50重量部程度、特に3〜20重量部程度となるような量で使用するのが好ましいが、特にこの範囲に限定されるものではない。
【0237】
分散方法、単分散の液滴の調製方法は、本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法で説明した通りである。液滴の平均粒子径は、所望とする中空高分子微粒子の平均粒子径に応じて適宜決定すればよいが、一般には0.1〜30μm程度、特に0.5〜10μm程度とするのが好ましい。
懸濁重合
こうして得られたエポキシ樹脂、硬化剤及び溶媒(B)の均一混合物が分散された分散安定剤の水溶液を、懸濁重合に供するには、この水溶液を撹拌しながら加熱すればよい。加熱温度はエポキシ樹脂、硬化剤及び溶媒(B)の均一混合物の液滴中で、エポキシ樹脂が硬化剤により架橋開始するに足りる温度であれば特に限定されないが、一般には、30〜150℃程度、特に50〜120℃程度が好ましい。
【0238】
懸濁架橋反応は、所望の中空高分子微粒子が得られるまで行う。懸濁架橋反応に要する時間は、一般には3〜24時間程度である。
【0239】
また、懸濁重合に際しては、窒素ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0240】
こうして懸濁架橋反応を行うことにより、エポキシ樹脂、硬化剤及び溶媒(B)の均一混合物の液滴中で、エポキシ樹脂が硬化剤により架橋する。得られた架橋エポキシ樹脂は、溶媒(B)の存在により、相分離が促進され、その結果、単層構造のシェル、即ち、架橋エポキシ樹脂からなるシェルが形成される。一方、コア部には、溶媒(B)が内包された状態となる。
【0241】
このようにして得られた中空高分子微粒子は、分散液(サスペンジョン)のままで使用してもよく、また、濾過し必要に応じて水洗した後、粉体の形態で、各種用途に供することができる。さらに、サスペンジョンや粉体の形態の中空重合体粒子を、温度20〜300℃程度、圧力1〜100000Pa程度の条件下で乾燥する方法、自然蒸発、減圧処理等により、中空部に存在する溶媒(B)を除去した形態で各種用途に供することもできる。
【0242】
本発明の第1の中空高分子微粒子の中空とは、中空部に空気が存在する場合だけでなく、溶媒(B)等が中空部に存在している場合も含む趣旨である。これは、中空部に溶媒等が存在しても、ポリマーピグメントとしての隠蔽性付与効果や光沢性付与効果を有するからである。
本発明の第 1 の中空高分子微粒子
本発明の第1の中空高分子微粒子の製造方法により得られる中空高分子微粒子は、そのシェルが、実質上、架橋エポキシ樹脂からなる単層構造であり、この点において、前記従来法により得られる3層構造又は2層構造の中空高分子微粒子とは大きく異なっている。
【0243】
この中空高分子微粒子は、エポキシ樹脂及び硬化剤の反応性官能基の数によっても異なるが、一般にシェルが強固で、空隙率が大きいという特徴を有する。典型的には、本発明の中空高分子微粒子のシェルの厚さは、0.01〜4μm程度、特に0.05〜1μm程度である。また、空隙率は、50〜80%程度、特に60〜70%程度である。
【0244】
また、本発明の第1の中空高分子微粒子の粒子径は、分散した液滴の大きさを変化させることにより調節することが出来るが、一般には、平均粒子径は、0.1〜30μm程度、特に0.5〜10μm程度の範囲にあるのが好ましい。この場合の中空高分子微粒子の粒子径は、電子顕微鏡あるいは光学顕微鏡により測定した場合の粒子径である。
【0245】
また、懸濁架橋反応の前に粒子径の揃った単分散の液滴を調整すると、得られる中空高分子微粒子も粒子径の揃った単分散となる。
本発明の第 2 の中空高分子微粒子の製造方法
本発明の中空高分子微粒子の製造方法は、分散安定剤の水溶液中で、
(i)多価イソシアネート、
(ii)多価アルコール及び
(iii)多価イソシアネートと多価アルコールとの重付加反応により得られるポリウレタンに対して相溶性の低い水難溶性の溶媒(C)からなる混合物を分散させ、懸濁重付加反応を行う方法である。
分散安定剤
分散安定剤については、本発明の第3の目的成分内包微粒子の製造方法の場合と同様である。また、分散安定剤の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般には、多価イソシアネートと多価アルコールとの合計1重量部に対して、0.001〜1重量部程度、特に0.01〜0.1重量部程度とするのが好ましい。
【0246】
また、分散安定剤の水溶液において、分散安定剤の濃度は上記液滴が合一しないような濃度となるように適宜選択すればよい。一般には、分散安定剤水溶液の濃度は、0.001〜10重量%程度、特に0.1〜0.5重量%程度の範囲に調整するのが好ましい。
多価イソシアネート
多価イソシアネートについては、本発明の第3の目的成分内包微粒子の製造方法の場合と同様である。多価イソシアネートの使用量は、目的とする中空高分子微粒子の粒子径、シェルの厚さ等に応じて適宜選択できるが、一般には、前記溶媒1重量部に対して0.1〜2重量部程度、特に0.5〜1重量部程度とするのが好ましい。
多価アルコール
多価アルコールについては、本発明の第3の目的成分内包微粒子の製造方法の場合と同様である。多価アルコールの使用量は、多価イソシアネートに対して、OH/NCO=1程度となる量を使用するのが一般的であるが、OH/NCO=0.7〜1.5程度、特に0.9〜1.2程度となる量とすることができる。
【0247】
溶媒(C)
溶媒(C)は、エポキシ樹脂を硬化剤を用いて架橋することにより得られる架橋エポキシ樹脂に対する相溶性が低く、架橋エポキシ樹脂の相分離を促進し、かつ、架橋エポキシ樹脂皮膜の形成を妨げないものであれば、各種の有機溶媒が使用できる。
【0248】
このような溶媒(C)としては、例えば、炭素数8〜18程度の飽和炭化水素、炭素数6〜15程度、特に炭素数6〜10程度の芳香族炭化水素等が例示できる。特に好ましい溶媒としては、ヘキサデカン、オクタン、キシレン等が挙げられる。
【0249】
本発明では、溶媒(C)としては、例示した炭化水素及び芳香族炭化水素に限定されず、ポリウレタンに対して相溶性が低い性質を有し、かつ、溶媒(C)と水間の界面張力(γc)と、本発明の第2の中空高分子微粒子の製造方法の条件下で多価イソシアネート及び多価アルコールを溶媒(C)に溶解してなる溶液を懸濁重付加反応に供して得られるポリマー吸着表面と水間の界面張力(γd)(mN/m)との関係において、γc≧γdのような条件が成立する溶媒を広く使用できる。
【0250】
上記溶媒(C)の使用量は、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、多価イソシアネートと多価アルコールとの合計量1重量部に対して、1〜5重量部程度、特に1〜2重量部程度とするのが好ましい。
分散工程
本発明では、分散安定剤の水溶液中に、多価イソシアネート、多価アルコール及び溶媒(C)を前述した使用割合で含有する混合物を分散させ、懸濁重合を行なう。
【0251】
多価イソシアネート、多価アルコール及び溶媒(C)の混合物は、均一溶液となっているのが好ましく、これら3成分を混合することにより形成される。混合時の温度としては特に限定はなく、例えば、0〜10℃程℃で混合すればよい。
【0252】
こうして得られた多価イソシアネート、多価アルコール及び溶媒(C)の均一溶液を、次いで、分散安定剤の水溶液中で分散させる。
【0253】
均一溶液は、分散安定剤の水溶液100重量部当たり、1〜50重量部程度、特に3〜20重量部程度となるような量で使用するのが好ましいが、特にこの範囲に限定されるものではない。
【0254】
分散方法、単分散の液滴の調製方法は、本発明の第2の目的成分内包微粒子の製造方法で説明した通りである。液滴の平均粒子径は、所望とする中空高分子微粒子の平均粒子径に応じて適宜決定すればよいが、一般には0.1〜30μm程度、特に0.5〜10μm程度とするのが好ましい。
懸濁重合
こうして得られた多価イソシアネート、多価アルコール及び溶媒(C)の均一混合物が分散された分散安定剤の水溶液を、懸濁重合に供するには、この水溶液を撹拌しながら加熱すればよい。加熱温度は多価イソシアネート、多価アルコール及び溶媒(C)の均一混合物の液滴中で、多価イソシアネートが多価アルコールにより重付加を開始するに足りる温度であれば特に限定されないが、一般には、30〜90℃程度、特に50〜70℃程度が好ましい。
【0255】
懸濁重付加反応は、所望の中空高分子微粒子が得られるまで行う。懸濁重付加反応に要する時間は、一般には3〜48時間程度である。
【0256】
また、懸濁重付加に際しては、窒素ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0257】
こうして懸濁重付加反応を行うことにより、多価イソシアネート、多価アルコール及び溶媒(C)の均一混合物の液滴中で、多価イソシアネートと多価アルコールとが重付加する。得られたポリウレタンは、溶媒(C)の存在により、相分離が促進され、その結果、単層構造のシェル、即ち、ポリウレタンからなるシェルが形成される。一方、コア部には、溶媒(C)が内包された状態となる。
【0258】
このようにして得られた中空高分子微粒子は、分散液、粉体、又は、中空部に存在する溶媒(C)を除去した形態で各種用途に供することができる。本発明の第2の中空高分子微粒子の中空とは、中空部に空気が存在する場合だけでなく、溶媒(C)等が中空部に存在している場合も含む趣旨である。
本発明の第2の中空高分子微粒子
本発明の第2の中空高分子微粒子の製造方法により得られる中空高分子微粒子は、そのシェルが、実質上、ポリウレタンからなる単層構造であり、この点において、前記従来法により得られる3層構造又は2層構造の中空高分子微粒子とは大きく異なっている。
【0259】
この中空高分子微粒子は、多価イソシアネート及び多価アルコールの反応性官能基の数によっても異なるが、一般にシェルが強固で、空隙率が大きいという特徴を有する。典型的には、本発明の中空高分子微粒子のシェルの厚さは、0.01〜4μm程度、特に0.05〜1μm程度である。また、空隙率は、50〜80%程度、特に60〜70%程度である。
【0260】
また、本発明の第2の中空高分子微粒子の粒子径は、分散した液滴の大きさを変化させることにより調節することが出来るが、一般には、平均粒子径は、0.1〜30μm程度、特に0.5〜10μm程度の範囲にあるのが好ましい。この場合の中空高分子微粒子の粒子径は、電子顕微鏡あるいは光学顕微鏡により測定した場合の粒子径である。
【0261】
また、懸濁架橋反応の前に粒子径の揃った単分散の液滴を調整すると、得られる中空高分子微粒子も粒子径の揃った単分散となる。
【0262】
【発明の効果】
本発明の第1の目的成分内包微粒子の製造方法によると、シェルおよび中空部分からなる中空高分子微粒子の中空部分に目的成分が内包された微粒子を製造する際に、シェルを構成するモノマー成分中に含まれる架橋性モノマーの比率を調整することにより、得られる目的成分内包微粒子のシェルの強度を容易に調整することができる。
【0263】
モノマー成分中に含まれる架橋性モノマーの比率を多くすることにより、特に架橋性モノマーを100重量%程度含むモノマー成分を用いることにより、高強度の微粒子を製造することができる。高強度の微粒子は、この微粒子を含有する製品の製造時、使用時等に微粒子にかけられる力によっても破壊されないため、内包された成分の徐放持続性に優れる。
また、この目的成分内包微粒子は、中空部分に目的成分を内包すると共に粒径が比較的大きいため、1微粒子当たりの目的成分の保持量が多い。このことからも、目的成分の徐放期間が長くなる。
また、モノマー成分を単官能性モノマーからなるものとすることにより、低強度の微粒子を製造することができる。低強度の微粒子は、微粒子に圧力をかけることにより容易に破壊されて、内包された成分を放出する。なお、この微粒子は、内部に目的成分が存在するため、特に圧力を加えない状態では、破壊されない。また、前述したように、この目的成分内包微粒子は、中空部分に目的成分を内包すると共に粒径が比較的大きいため、1微粒子当たりの目的成分の保持量が多い。従って、多量の目的成分を所定時期に放出できる。
【0264】
本発明の第2の目的成分内包微粒子の製造方法によると、架橋されたエポキシ樹脂からなるシェルを有する高強度の微粒子が得られる。また、本発明の第3の目的成分内包微粒子の製造方法によると、架橋構造を有するポリウレタンからなるシェルを有する高強度の微粒子が得られる。これらの高強度の微粒子は、この微粒子を含有する製品の製造時、使用時等に微粒子にかけられる力によっても破壊されないため、内包された成分の徐放持続性に優れる。
また、これらの目的成分内包微粒子は、中空部分に目的成分を内包すると共に粒径が比較的大きいため、1微粒子当たりの目的成分の保持量が多い。このことからも、目的成分の徐放期間が長くなる。
【0265】
また、本発明の第1、第2及び第3の目的成分内包微粒子の製造方法は、目的成分、モノマー成分及び開始剤(又は、エポキシ樹脂及び硬化剤、又は、多価イソシアネート及び多価アルコール)並びに必要に応じて添加される補助ポリマーを混合して懸濁重合することにより、1段階で、目的成分が中空部に内包された微粒子を形成できる。すなわち、操作が簡単であるとともに、特殊な設備や装置を必要とせず、低コストで簡単に行うことができる。
【0266】
本発明の第1及び第2の中空高分子微粒子は、有機白色顔料として、或いは紙の塗工剤中に添加するポリマーピグメントとして、或いはマイクロカプセル担体として使用できる。
【0267】
特に、本発明の中空高分子微粒子は、粒径が大きくかつ空隙率が大きいため、その中空部に多くの空気を含有することができ、この結果、断熱性や遮音性等の特性を付与することも可能となる。
【0268】
さらに、本発明により得られる中空重合体粒子は、空隙率が大きくその皮膜が薄いため、低分子量物質を粒子内部から外部へ拡散させる機能も有する。したがって、この発明により得られる中空重合体粒子は、ドラッグデリバリーシステムや、香料等を封入したマイクロカプセルとして使用することも可能である。
【0269】
また、本発明の第1及び第2の中空高分子微粒子の製造製法は、アルカリ処理等を必要としないため、得られる中空重合体粒子は、耐アルカリ性等の特性も優れている。
【0270】
さらに、本発明の中空重合体粒子の製法は、特殊な設備や装置を必要とせず、低コストで簡単に行うことができ、高性能の中空高分子粒子を簡便に提供することが可能となる。
【0271】
【実施例】
つぎに、実施例及び比較例を掲げて本発明をより詳しく説明する。これら実施例は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではなく、種々の変更が可能である。
【0272】
実施例1 - 1
(a)分散安定剤としてポリビニルアルコール(重合度1700,ケン化度88%)24mgを水7.48gに溶解させて得た水溶液に、薬効としてヒノキチオール(純度99.9%、大阪有機化学工業社製HT-SF)25mg、モノマー成分として架橋性モノマーのエチレングリコールジメタクリレート250mg、補助ポリマーとしてポリスチレン(重量平均分子量16万)50mg、開始剤として2,2'−アゾビス(4−メトキシ−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬社製、V−70)の15mgを均一混合してなる溶液を懸濁させた。
【0273】
懸濁の方法は、装置としてホモジナイザーを用い、攪拌速度1500rpmで2分間、室温の条件下で行った。得られた懸濁液の液滴は、平均粒子径が10μm程度のものであった。
【0274】
(b)次いで、懸濁液を窒素ガス雰囲気下で、撹拌しながら40℃で加熱し、48時間懸濁重合させた。
【0275】
得られた分散液を顕微鏡観察したところ、平均粒子径約10μmの略真球状の中空微粒子のコア部分に、固体状態のヒノキチオールが内包されていた。シェルの厚さは約3μmであり、中空部分の容積比率は約10%であった。
【0276】
また、重量測定による反応率は100%であった。
【0277】
なお、重量測定による反応率(%)は、下記の式に従い算出されるものである。
【0278】
反応率=(Wpc/Wmo)×100
Wpc:生成ポリマー重量
Wmo:仕込みモノマー成分重量
実施例1 - 2
実施例1-1において、ヒノキチオールの使用量を100mgにした他は、実施例1-1と同様にして、ヒノキチオールを内包する微粒子を得た。
【0279】
得られた分散液を顕微鏡観察したところ、平均粒子径約10μmの略真球状の中空微粒子のコア部に、固体状態のヒノキチオールが内包されていた。シェルの厚さは約1.5μmであり、中空部分の容積比率は約30%であった。微小圧縮試験器を用いて測定した微粒子の強度(圧裂限界荷重)は7〜9mNであった。
【0280】
また、重量測定による反応率は100%であった。
【0281】
実施例1 - 3
実施例1-1において、ヒノキチオールの使用量を250mgにした他は、実施例1-1と同様にして、ヒノキチオールを内包する微粒子を得た。
【0282】
得られた分散液を顕微鏡観察したところ、平均粒子径約10μmの略真球状の中空微粒子のコア部に、固体状態のヒノキチオールが内包されていた。シェルの厚さは約1μmであり、中空部分の容積比率は約50%であった。微小圧縮試験器を用いて測定した微粒子の強度(圧裂限界荷重)は約4mNであった。
【0283】
また、重量測定による反応率は94%であった。
【0284】
比較例1 - 1
実施例1-3において、補助ポリマーとしてのポリスチレンを使用しなかった他は、実施例1-3と同様にして、微粒子を得た。
【0285】
得られた分散液を顕微鏡観察したところ、平均粒子径約10μmの略真球状の中空微粒子が得られていた。また、後述するように、微粒子シェルは、モノマー成分が重合したポリエチレングリコールジメタクリレートとヒノキチオールとが均一に混合されたものであった。
【0286】
微小圧縮試験器を用いて測定した微粒子の強度(圧裂限界荷重)は1mN未満であった。
【0287】
また、重量測定による反応率は93%であった。
【0288】
結果を次表1にまとめて示す。
【0289】
【表1】
【0290】
表1の結果から明らかなように、上記の実施例1-1〜1-3により、高い反応率で、簡単に、ヒノキチオールを内包する微粒子が得られ、しかも各微粒子の強度は極めて高いことが分かる。
【0291】
試験例1
実施例1-2及び比較例1-1により得られた各微粒子を光学顕微鏡写真で観察した。その写真を、それぞれ図1の(a)及び(b)に示す。図1の(a)に示すように、実施例2による微粒子は、比較的厚いシェルが形成され、中空部に固体のヒノキチオールが内包されていることが分かる。一方、図1の(b)に示すように、比較例1の微粒子では、ポリエチレングリコールジメタクリレートとヒノキチオールとが混合した状態のシェルが形成されていることが分かる。
【0292】
次に、実施例1-2で得られた分散液を濾紙を用いて濾過することによりヒノキチオール内包微粒子を単離し、温度約100℃、圧力約100000Pa(大気圧下)の条件下で、6日間乾燥した。結果を図2に示す。図2の(a)は、実施例1-2により得られた分散液中に含まれるヒノキチオール内包微粒子の顕微鏡写真であり、図2の(b)は、乾燥後の微粒子の顕微鏡写真である。図2の(b)に示すように、本発明の微粒子を乾燥することにより、中空部のヒノキチオールが蒸発ないしは昇華した微粒子が得られたことが分かる。
【0293】
試験例2
次に、ヒノキチオール自体と実施例3により得られたヒノキチオールを内包する微粒子との双方について、1H NMR分析(250MHz)を行った。得られた1H NMRスペクトラムを図3に示す。図3の (a)はヒノキチオール自体の結果であり、図3の(b)は実施例3により得られたヒノキチオール内包微粒子の結果である。
【0294】
図3に示すように、(a)と(b)とでは、検出されるピークに殆ど差はなかった。このことから、ヒノキチオールは、懸濁重合工程で変性していないことが分かる。
【0295】
なお、図3の(b)における5ppm付近のブロードなピークおよび1〜2ppmの微小なピークは、分散安定剤であるポリビニルアルコールおよび補助ポリマーであるポリスチレンに由来するものと考えられる。
【0296】
試験例3
次に、実施例1-2及び比較例1-1により得られた各微粒子、並びにヒノキチオール自体について、窒素ガスを流しながら150℃で加熱処理した場合の重量の減少率を測定することにより、ヒノキチオールの徐放持続性を調べた。結果を図4に示す。図4のグラフにおいて、実線は実施例2の微粒子、破線は比較例1-1の微粒子、1点鎖線はヒノキチオール自体の結果である。
【0297】
図4に示すように、実施例2の微粒子は、ヒノキチオール自体および比較例1-1の微粒子に比べて重量減少が緩やかであった。このことから、実施例1-2の微粒子では、ヒノキチオールの放出が非常に遅く、その徐放期間が非常に長いことが分かる。
【0298】
実施例2 - 1
(a)分散安定剤としてポリビニルアルコール(重合度1700、ケン化度88 %)45mgを水に溶解させて得た水溶液13gに、エポキシ樹脂としてエポフィクス(ストルアス社製)1.31g、硬化剤として4,4'-ジアミノジフェニルメタン0.19g、溶媒としてキシレン1.31gを均一混合してなる溶液を懸濁させた。
【0299】
懸濁の方法は、装置としてホモジナイザーを用い、攪拌速度1000rpm、室温下の条件で行った。得られた懸濁液の液滴は、平均粒子径が10μm程度のものであった。
【0300】
(b)次いで、懸濁液を、窒素ガス雰囲気下で、攪拌しながら、70℃で加熱しつつ、24時間重付加反応させた。
得られた分散液を顕微鏡観察したところ、一部にシェル層がへこんでいる微粒子が観察されたものの、殆どは平均粒子径約10μmの略真球状の中空高分子微粒子が得られていた。コア部には、キシレンが内包されていた。シェルの厚さは、約1μmであり、空隙率は約50%であった。
【0301】
実施例3 - 1
(a)分散安定剤としてポリビニルアルコール(重合度1700、ケン化度88 %)45mgを水に溶解させて得た水溶液13gに、多価イソシアネートとしてイソフォロンジイソシアネート0.74g、多価アルコールとしてノナンジオール0.48gと5,5',6,6'−テトラヒドロキシ-3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン0.028gとの混合物、溶媒としてオクタン0.74gを均一混合してなる溶液を懸濁させた。
【0302】
懸濁の方法は、装置としてホモジナイザーを用い、攪拌速度1000rpm、50℃の条件で行った。得られた懸濁液の液滴は、平均粒子径が10μm程度のものであった。
【0303】
(b)次いで、懸濁液を、70℃で加熱しつつ、24時間重付加反応させた。
得られた分散液を顕微鏡観察したところ、平均粒子径約10μmの略真球状の中空高分子微粒子が得られていた。コア部には、オクタンが内包されていた。シェルの厚さは、約1μmであり、空隙率は約50%であった。得られた微粒子の顕微鏡写真を図5に示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は、実施例1-2により得られた目的成分内包微粒子の粒子構造を示す図面代用写真(顕微鏡写真)であり、(b)は、比較例1-1により得られた微粒子の粒子構造を示す図面代用写真(顕微鏡写真)である。
【図2】 (a)は、実施例1-2により得られた目的成分内包微粒子の粒子構造を示す図面代用写真(顕微鏡写真)であり、(b)は、これを加熱により乾燥した後の目的成分内包微粒子の粒子構造を示す図面代用写真(顕微鏡写真)である。
【図3】 (a)は、ヒノキチオール自体の1H NMRスペクトラムであり、(b)は、実施例1-3により得られたヒノキチオール内包微粒子の1H NMRスペクトラムである。
【図4】実施例1-2および比較例1-1により得られた各微粒子について、ヒノキチオールの徐放持続性を調べたグラフである。
【図5】実施例3-1で得られたポリウレタンからなるシェルを有する溶媒内包微粒子の図面代用写真である。
Claims (7)
- 分散安定剤の水溶液中に、目的成分、少なくとも1種の架橋性モノマーからなるモノマー成分、下記の補助ポリマー(SPA)及び開始剤を含む混合物を分散させ、懸濁重合を行うことを特徴とする目的成分内包微粒子の製造方法。
補助ポリマー(SPA):モノマー成分を重合又は共重合することにより得られるポリマー(PA)に対して相溶性が低く、かつ、補助ポリマー(SPA)と水との間の界面張力(γx)(mN/m)とポリマー(PA)と水との間の界面張力(γy)(mN/m)との関係において、γx≧γyの条件を満たすポリマー - 架橋性モノマーが重合性C=C二重結合を2個以上有する多官能性モノマーである請求項1に記載の方法。
- 架橋性モノマーがジビニルベンゼンである請求項2に記載の方法。
- 分散安定剤の水溶液中に、下記の目的成分、少なくとも1種の架橋性モノマーからなるモノマー成分及び開始剤を含む混合物を分散させ、懸濁重合を行うことを特徴とする目的成分内包微粒子の製造方法。
目的成分:モノマー成分を重合又は共重合することにより得られるポリマー(PA)に対して相溶性が低く、かつ、目的成分と水との間の界面張力(γz)(mN/m)とポリマー(PA)と水との間の界面張力(γy)(mN/m)との関係において、γz≧γyの条件を満たす目的成分 - 架橋性モノマーが重合性C=C二重結合を2個以上有する多官能性モノマーである請求項4に記載の方法。
- 架橋性モノマーがジビニルベンゼンである請求項5に記載の方法。
- 目的成分が、水難溶性の溶媒である請求項4、5、又は6に記載の方法。
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