JP3785352B2 - ホットプレスの温度制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸気、熱油又は水等の熱媒によって熱板の温度制御を行うホットプレスの温度制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明の温度制御方法を実施するホットプレス装置は図1の1に概要を示すが、従来の温度制御を実施するホットプレス装置も同様の構成を有する。ホットプレス装置1は、複数の熱板4を可動盤3が固定盤2から最も離隔したとき可動盤3と固定盤2の間に等間隔に配設するようになし、熱板4上に被加工物を載置し図示しない圧締装置により可動盤3を固定盤2に近接させさらに圧締させることにより被加工物を成形するものである。このとき、熱媒源24から制御弁23を介して圧力又は流量制御された熱媒が入口マニホールド5を経由して各熱板4を加熱又は冷却した後出口マニホールド8に収集され熱媒源24に戻る。従来のホットプレス装置の熱板温度制御においては、温度又は圧力のセンサは入口マニホールド5、出口マニホールド8又は熱板4に設置され、センサ6、センサ9又はセンサ11〜14のいずれかの検出値のみに基づいて制御弁23がフィードバック制御されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の制御方法においては、時間経過に対し一定の温度であるような温度設定パターンの工程(保持工程18)では設定値と実測値との偏差はなく、安定した制御が行われる。しかし、昇温工程17や冷却工程19のように時間経過に対し温度が変化するような温度設定パターンにおいては、設定値と実測値との間に偏差が現われる。特に温度設定パターンの温度変化即ち温度勾配が大きいときには、設定値に対し実測値が遅れて変化したり、昇温工程17や冷却工程19と保持工程18との切換わり時点で実測値のオーバーシュートやアンダーシュートが発生した。
【0004】
このような現象が起きる理由は次のことが挙げられる。すなわち、熱媒が熱油や水である場合、熱媒の流速は速いほど熱交換が良好となり温度精度は向上するが、熱媒の流速を高くするには高価な大型ポンプが必要となるので、無闇に流速を高くすることは費用対効果の点で無理がある。また、制御弁23から熱板4に至る熱媒通路には太い配管や入口マニホールド5等があり、それらの内部に残留した熱媒が熱板4を通過し終わるまでの時間、制御は遅れることになる。
【0005】
上記の問題は、センサの位置が出口マニホールド8にあるとき顕著であるため、センサの位置を入口マニホールド5に変更して制御を行うこともできるが、このときには別の問題が発生する。すなわち、熱板4へ流入する前の熱媒の温度が設定値に一致するように制御されるので、被加工物の大きさや材質の違いに伴う熱容量の変化により熱板の温度が変動する。さらに、被加工物の大きさや材質が同じであっても、全ての熱板間に被加工物を載置しないときには、被加工物の減少量に応じて熱容量が減少し熱板の温度が上昇気味となるのである。
【0006】
また、昨今の加工物の成形には従来要求されなかったような急速な冷却速度が必要とされている。そのような制御を熱媒の温度によるフィードバックで制御したのでは間接的な制御となり制御遅れが避けられないのである。そのようなときには、熱板の温度によるフィードバックで直接的に制御することも行われるが、このような熱媒の制御系において全行程を安定に制御することは極めて困難である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は、熱媒を各熱板へ分配・供給する入口マニホールド内の熱媒と、熱板から排出された熱媒を収集する出口マニホールド内の熱媒と、熱板とのうちの任意の二の温度を検出し、前記二の温度を温度設定パターンに応じて切換え選択した温度値かもしくは、前記三の温度のうちの少なくとも二の温度を検出し、それらを予め設定した重みに基づいて加重平均して求めた温度値が熱板の温度設定パターンに一致するようにフィードバック制御するようにした。このようにすることにより、制御工程に応じた最適な温度検出部を有する制御ループを構成することが出来、どの工程でも精度の良い温度制御が実現出来る。
【0008】
【発明の実施の形態】
図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1はホットプレス装置の概要とその熱板の温度を制御するための制御方法を示すブロック図である。図2は熱板を温度制御する熱媒の温度制御ループにおける各センサの重みとPID定数を設定する制御装置の設定画面である。
【0009】
本発明のホットプレスは、従来の技術の項に記載したホットプレス装置1における、入口マニホールド5、出口マニホールド8及び熱板4にそれぞれセンサ6,9及び11〜14を設けた構成である。入口マニホールド5及び出口マニホールド8は円柱状の容器であり、それぞれ複数の熱板4の両端面と耐熱・可撓性ホースで連通接続されている。入口マニホールド5には制御弁23からの配管が接続される入口が一個所あり、該入口から流入した温度調節された熱媒は前記複数のホースから各熱板4に穿設された熱媒通路へ均等に分配・供給される。出口マニホールド8には熱媒源24への配管が接続される出口が一個所あり、各熱板4から流出した熱媒は出口マニホールド8内で収集され、前記出口から排出される。
【0010】
センサ6及びセンサ9は、温度又は圧力の検出器であり、入口マニホールド5及び出口マニホールド8の比較的高い位置に壁面を貫通して配設され、各熱板4に供給される熱媒の平均的な温度や圧力が検出出来るようにしている。熱媒が熱油や水の場合には、センサ6,9はサーモカップルや測温抵抗体からなる温度検出器を使用する。熱媒が蒸気の場合には、センサ6,9は蒸気圧力検出器を使用し、その信号は制御装置22に入力され蒸気圧力に対応した温度の信号に変換され熱板の温度制御のフィードバック信号となる。
【0011】
センサ11,12,13及び14はサーモカップル等からなり、各熱板4の側面に埋設され、熱板4の温度を直接検出する。センサ11,12,13及び14の熱板温度信号15は制御装置22に入力され、平均されて一の温度値とされ熱板の温度制御のフィードバック信号となる。センサ11,12,13又は14は各熱板4全てに配設しないこともあり、一又は複数のセンサで全体の熱板の平均的な温度が検出できる状態であれば一部を省略することもできる。
【0012】
制御装置22はホットプレス装置1の作動、圧締力の制御及び熱板の温度制御を実行するため、設定値を設定しアクチュエータに演算・増幅した信号を出力するものであり、公知のマイクロプロセッサ等によって構成されている。16は被加工物を成形する一連の工程における熱板の温度を設定するための温度設定パターンであり、制御装置22のマンマシーンインターフェイスであるCRTや液晶表示パネル等の表示部に表示される。温度設定パターン16は主に昇温工程17、保持工程18及び冷却工程19からなり、時間経過とともに変化させる熱媒(熱板4)の温度を任意の折線グラフ状に設定できる。センサ6,9から発信される温度又は圧力信号7,10及び熱板温度信号15は、制御装置22に入力され演算部20で温度の信号に変換後、さらに図2に示す工程及び温度設定範囲に応じた温度の重みに基づいて加重平均されて温度値となる。温度設定パターン16から時間経過に伴って出力される温度設定信号は該温度値と突合わされ、図2で設定されたPID定数に基づいてフィードバック演算され、増幅器21で電流増幅されて制御弁23を駆動する。
【0013】
制御弁23は、ダイヤフラム弁や三方弁等のように開度や流路を調整するものであり、熱板4に供給する熱媒の圧力や流量を調節して熱板4の温度を制御する。熱媒源24は、ボイラーあるいは、ヒータ、冷却器及びポンプを備えた温度調節器であり、制御弁23と協働して熱板4を温度制御する熱媒を圧送する。
【0014】
図2は制御装置22の表示部に表示された画面の一例であり、熱板を温度制御する熱媒の温度制御ループにおける各センサの温度の重みとPID定数を設定する。温度設定パターンは主に昇温工程、保持工程及び冷却工程に分けられ、各工程はそれぞれの温度設定範囲を任意に設定できる値で三分割される。つまり九分割された温度設定パターンの分節それぞれについて、温度の重みと制御定数が設定できるのである。
【0015】
温度の重みは、入口マニホールド5の温度、熱板4の温度及び出口マニホールド8の温度のそれぞれがフィードバック制御に寄与する割合を、三者の合計が100となるように%で設定するものである。基本的な考え方としては、入口マニホールド5の温度の重みは小さく抑え、冷却工程の低温時を除いて10%程度とする。熱板4の温度の重みは、昇温工程から保持工程に至るに従い、また温度設定値が高い程大きくする。特に冷却工程の低温時では100%とすることもある。出口マニホールド8の温度の重みは、熱板の温度の重みとは逆の傾向であり、昇温工程から保持工程に至るに従い、また温度設定が高い程小さくする。なお、上記のように入口マニホールド5の温度の重みは一般に小さいので、入口マニホールド5の温度を除いた他の二の温度での加重平均によって温度値を得る場合もある。このように重みが設定された入口マニホールド5の温度、熱板4の温度及び出口マニホールド8の温度のうち少なくとも二の温度は、演算部20で加重平均されて温度値となる。
【0016】
制御定数はP(比例定数)、I(積分定数)及び D(微分定数)からなる。Pはフィードバック制御のゲインともいい、比例帯の幅を制御領域の%で設定する。したがってPの数値が小さいほどゲインが高いことになる。Iは積分時間を秒数で設定し、設定値と実測値との偏差をこの時間中積分して修正値とする。Dは微分時間を秒数で設定し、設定値と実測値との偏差の変化分をこの時間中微分して修正値とする。一般的な設定として、Pは昇温工程と保持工程では温度設定値が高い程小さくし、冷却工程では逆に温度設定値が低い程小さくする。IとDは、温度設定パターンの分節に係わらずほぼ一定値でよい。
【0017】
ところで、熱媒が蒸気の場合、蒸気圧センサは入口マニホールド5に設置される。これはセンサを出口マニホールド8に配設すると、出口マニホールド8では一部の蒸気が凝縮して水となったりセンサが制御弁23から離れるため制御が困難となるからであり、センサは6と11〜14が採用される。したがって、この場合の温度の重みは、入口マニホールド5の蒸気圧力(温度)と熱板4の温度の二者の合計が100%となるように設定され、二者の加重平均により温度値が求められる。
【0018】
また他の実施例として、図2の温度の重みに基づいた加重平均のような高度な演算を実行することなく、簡易な方法で本発明の効果が得られる場合もある。すなわち、熱媒を各熱板へ分配・供給する入口マニホールド5内の熱媒と、熱板4から排出された熱媒を収集する出口マニホールド8内の熱媒と、熱板4とのうちの任意の二の温度を検出し、演算部20において前記二の温度のうち温度設定パターンの各工程毎に予め設定しておいたいずれかの温度を切換え選択し、選択した温度値が温度設定パターンに一致するように熱媒をフィードバック制御する。この制御における温度の切換・選択は、例えば図2のような温度設定パターンにおいて、入口マニホールド5内の熱媒と、出口マニホールド8内の熱媒と、熱板4とのうちの任意の二の温度について、温度設定パターンの分節毎に0%と100%のいずれかの対を設定したものによって行われることとなる。
【0019】
つまり、高度なソフトウエアを必要とする特殊な制御装置を用いず、汎用の温度調節器であっても、熱媒を熱油又は水として用いる場合、例えば昇温・保持工程は出口マニホールド8の温度のみでフィードバック制御し、冷却工程は熱板4の温度のみでフィードバック制御するようにセンサを切換え選択して制御することにより、従来のように出口マニホールド8の温度のみで全行程をフィードバック制御したときと比較して、温度設定パターンにより近い優れた冷却特性を得ることが出来るのである。
【0020】
【発明の効果】
本発明は上記のように実施するので、温度設定パターンの分節に応じて最適なセンサが重みを考慮して選択され、その選択又は加重平均された温度値に基づいてフィードバック制御される。その結果、熱板温度は温度設定パターンと大きな偏差なく制御され、またオーバーシュートやアンダーシュートも発生しないので、被加工物は安定して成形され、不良率の低下と生産性向上に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ホットプレス装置の概要とその熱板の温度を制御するための制御方法を示すブロック図である。
【図2】熱板を温度制御する熱媒の温度制御ループにおける各センサの重みとPID定数を設定する制御装置の設定画面である。
【符号の説明】
1 ……… ホットプレス装置
2 ……… 固定盤
3 ……… 可動盤
4 ……… 熱板
5 ……… 入口マニホールド
6,9,11,12,13,14 ……… センサ
7,10 ……… 温度又は圧力信号
8 ……… 出口マニホールド
15 …… 熱板温度信号
16 …… 温度設定パターン
17 …… 昇温工程
18 …… 保持工程
19 …… 冷却工程
20 …… 演算部
21 …… 増幅器
22 …… 制御装置
23 …… 制御弁
24 …… 熱媒源

Claims (2)

  1. 熱媒によって温度制御される熱板と、熱板上に載置した被加工物を圧締する圧締装置とを備えたホットプレスの温度制御方法であって、
    各熱板へ分配・供給される入口マニホールド内における熱媒と、各熱板から排出・収集される出口マニホールド内における熱媒と、熱板とのうちの任意の二の温度を検出し、前記二の温度を温度設定パターンの工程に応じて切換え選択し、選択した温度値が温度設定パターンに一致するようにフィードバック制御することを特徴とするホットプレスの温度制御方法。
  2. 熱媒によって温度制御される熱板と、熱板上に載置した被加工物を圧締する圧締装置とを備えたホットプレスの温度制御方法であって、
    各熱板へ分配・供給される入口マニホールド内における熱媒と、各熱板から排出・収集される出口マニホールド内における熱媒と、熱板とのうちの少なくとも二の温度を検出し、それらを予め温度設定パターンの分節毎に設定され切換えられる重みに基づいて加重平均して求めた温度値が熱板の温度設定パターンに一致するようにフィードバック制御することを特徴とするホットプレスの温度制御方法。
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