JP3784874B2 - 低温プロテアーゼ、これを生産する微生物、これの製造法及びこれを用いる食肉軟化法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な低温プロテアーゼ、これを生産する微生物、当該低温プロテアーゼの製造法及びこれを用いる食肉軟化法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロテアーゼは、ペプチド結合の加水分解を触媒する酵素群の総称で、微生物、動物及び植物中に広く分布している。その応用範囲としては、衣料用洗剤、自動食器洗浄機用洗剤、コンタクトレンズ洗浄剤、浴用剤、角質除去用化粧料、食品の改質剤(製パン、肉の軟化、水産加工)、ビールの清澄剤、皮革なめし剤、写真フィルムのゼラチン除去剤、消化助剤あるいは消炎剤があり、多分野で盛んに利用されてきた。
【0003】
その中で最も大量に工業生産され、市場規模が大きいのは洗剤用プロテアーゼであり、例えばアルカラーゼ、サビナーゼ(ノボ・ノルディスク社製)、マクサカル(ギスト・ブロケイデス社製)、API−21(昭和電工社製)、ブラップ(ヘンケル社製)及びプロテアーゼK(KAP;花王社製)などが知られている。
【0004】
一方、従来から肉を柔らかくしたりあるいは肉の保存性を高めたり等の肉を改質する方法として、酵素を使用する方法が知られている(特開昭63−219351号公報、特開平4−278063号公報、特開平5−7476号公報、特開平5−252911号公報)。
しかしながら、上記洗剤用プロテアーゼの大半は最適温度が高温側にあるため、水道水をそのまま用いて低温領域で衣料等の洗浄を行う場合、その酵素特性が充分に発揮されているとは言いがたい。また、肉の改質等に用いられる酵素においても、一般に用いられる植物由来の酵素の至適温度は50〜70℃であり、食品衛生上の観点から調理直前まで低温域(20℃以下)に置かれる食肉には充分作用できず、充分満足すべき改質は得られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、低温条件下においても高い活性を保持するプロテアーゼ、これを生産する微生物及びこれの製造法並びにこれを用いる食肉の軟化法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
斯かる実情において、本発明者らは低温領域において充分作用するプロテアーゼを自然界に求め、探索した結果、低温領域においても活性を有するプロテアーゼを分泌する微生物を見出し、更に得られたプロテアーゼは低温領域で優れた活性を有し、これを低温の食肉に作用させると柔らかく、ジューシーに仕上がることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、次の酵素学的性質を有する低温プロテアーゼ、これを生産する微生物、当該プロテアーゼの製造法及びこれを用いる食肉軟化法を提供するものである。
【0008】
1)作用温度及び最適温度
0〜45℃で作用し、最適温度は約20〜30℃にある。
2)温度安定性
pH7.0、20分間の処理条件で25℃まで安定である。
3)作用pH及び最適pH
作用pH範囲は5〜9であり、最適pHは7近傍にある。
4)分子量
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による推定分子量は35000±1000である。
5)金属イオンの影響
Cu 2+ 及びHg 2+ イオンによって阻害される。
6)阻害剤
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)四酢酸(EGTA)によって強く阻害を受け、フェニルメタンスルホニルフルオリド、モノヨード酢酸、ジイソプロピルフルオロリン酸によって阻害を受けない。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の低温アルカリプロテアーゼは、例えばバチルス属(Bacillus)属に属するプロテアーゼ生産菌を培養し、その培養物から採取することにより製造することができる。
【0010】
かかるバチルス属に属する本発明プロテアーゼ生産菌としては、バチルス属に属し、上記の本発明プロテアーゼを生産する限り特に制限されないが、例えば次の菌学的性質を示すKSM−506株が挙げられる。
【0011】
(A)形態的性質
(a)細胞の大きさ:0.8×3〜5μm の桿菌
(b)多形性:なし
(c)運動性の有無:+
(d)胞子:0.6〜0.8×0.8〜1.0μm の楕円形、胞子嚢の膨らみは無
(e)グラム染色性:陽性
(f)抗酸性:なし
(g)肉汁寒天平板上で発育形態:生育は良好で、周縁部は葉状
(h)肉汁寒天斜面上での生育:生育は良好で、周縁部は葉状
(i)肉汁液体培養:生育は良好
(j)ゼラチン穿刺培養:生育は良好で液化する
(k)リトマスミルク:生育し、液化する
【0012】
(B)生理的性質
(a)硝酸塩の還元:陽性
(b)脱窒反応:陰性
(c)MRテスト:陰性
(d)VPテスト:陰性
(e)インドール生成:陰性
(f)硫化水素生成:陰性
(g)澱粉加水分解:陽性
(h)クエン酸の利用:陰性
(i)無機窒素源の利用:硝酸塩の利用は認められ、アンモニウム塩の利用は認められない
(j)色素の生成:生育はするが色素の産生なし
(k)ウレアーゼ:陰性
(l)オキシダーゼ:±
(m)カタラーゼ:陽性
(n)生育温度範囲:10〜50℃
(o)生育pH範囲:6.0〜9.0
(p)酸素に対する態度:好気的
(q)OFテスト(Hugh Leifson法):酸化型
(r)塩化ナトリウムに対する耐性:食塩濃度10%では生育できない
(s)リジンの加水分解:陰性
(t)オルニチンの加水分解:陰性
(u)アルギニンの加水分解:陽性
(v)ゼラチンの液化:陽性
(w)エスクリンの加水分解:陽性
(x)DNAase:陰性
(y)糖からの酸生成及びガス生成:
【0013】
【表1】
【0014】
以上の結果から明らかなように、本菌株はバチルス・ファーマス(Bacillus firmus)に属させることが妥当であるが、いくつかの点においてこれと相違し、また他の公知の菌株とも異なるので、本菌株を前記の如くバチルス・エスピー(Bacillus sp.)KSM−506と命名し、工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P−15326として寄託した。
【0015】
この菌株を用いて、低温プロテアーゼを得るためには、当該菌体を培地に接種し、常法に従って培養すればよい。
【0016】
使用される培地としては、通常の微生物の培地に用いられ当該菌体が生育可能なものであれば、何れをも使用することができるが、該培地中には資化し得る炭素及び窒素源を適当量含有せしめておくことが好ましい。
【0017】
かかる炭素源及び窒素源については特に制限されないが、例えば炭素源としては、資化し得る炭素源、例えばアラビノース、キシロース、グルコース、マンノース、フルクトース、ガラクトース、ショ糖、麦芽糖、乳糖、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、グリセリン、可溶性澱粉や廉価な廃糖蜜、転化糖等、また資化し得る有機酸、例えば酢酸等が挙げられる。また、窒素源としてはコーングルテンミール、大豆粉、コーンスチープリカー、カザミノ酸、酵母エキス、ファーマメディア、イワシミール、肉エキス、ペプトン、ハイプロ、アジパワー、コーンミール、ソイビーンミール、コーヒー粕、綿実油粕、カルチベーター、アミフレックス及びアジプロン、ゼスト、アジックス等が挙げられる。また、その他、リン酸、Mg2+、Ca2+、Mn2+、Zn2+、Co2+、Na+、K+等の無機塩や、必要であれば、無機、有機微量栄養源を培地中に適宜添加することもできる。
【0018】
培養物中からの目的物質である低温プロテアーゼの採取及び精製は、一般の酵素の採取及び精製手段に準じて行うことができる。すなわち、培養物を遠心、又は濾過などによって菌体を分離し、その培養濾液から通常の分離手段、例えば、塩析法、等電点沈澱法、溶媒沈澱法(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等)によって蛋白を沈澱させたり、また限外濾過により濃縮することにより得ることができる。
【0019】
このようにして得られるKSM−506由来の低温プロテアーゼは以下に示す酵素学的性質を有する。
【0020】
(酵素学的性質)
(1)阻害剤の影響
各種阻害剤を1mMになるように添加したトリス緩衝液(pH7.0)に本酵素溶液を添加し、25℃で20分間放置後残存活性を測定した。阻害剤無添加で同様に処理した酵素活性を100%として処理群の残存活性を求めた。結果を表2に示す。
【0021】
【表2】
【0022】
表2から、キレート剤であるEDTAとEGTAによって強く阻害され、PMSFなどのセリン酵素阻害剤で全く影響を受けないので金属プロテアーゼであると考えられる。
【0023】
(2)金属イオンの影響
各種金属塩を2.5mMになるように添加したトリス緩衝液(pH7.0)に本酵素溶液を添加し、25℃で20分間放置した後残存活性を測定した。金属塩無添加で同様に処理した酵素活性を100%として処理群の残存活性を求めた。結果を表3に示す。
【0024】
【表3】
【0025】
表3から、本酵素活性は、Cu2+やHg2+イオンに若干の阻害作用が認められる。
【0026】
(3)至適pH
活性測定時の緩衝液を0.1Mの様々なpHのものに代え、25℃、15分間反応を行った。その結果を図1に示すように、本酵素の至適pHは7付近に認められる。なお、pH4.0〜6.0は酢酸緩衝液、pH6.0〜8.0はリン酸緩衝液、pH7.5〜9.0はトリス緩衝液、pH9.0〜10.0はグリシン−NaOH緩衝液を使用した。
【0027】
(4)温度安定性
100mMトリス緩衝液(pH7.0)に本酵素を加え、各温度で20分間熱処理した後氷冷した。アゾカゼインを基質として、25℃で残存活性を求め、その結果を図2に示した。本酵素は25℃まで安定(90%残存)であることがわかる。
【0028】
(5)至適温度
5〜75℃の範囲の各温度で0.1Mのリン酸バッファーpH7.0を用いて20分間反応を行った。最も高い活性を示す温度を至適温度とした。図3から明らかなように、本酵素の至適温度は20〜30℃であった。
【0029】
(6)分子量
本酵素の分子量をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により測定した。分子量マーカーには、低分子用マーカーキット(ファルマシア社製)のホスホリラーゼb(分子量:94,000)、牛血清アルブミン(分子量:67,000)、卵白オブアルブミン(分子量:43,000)、カルボニックアンヒドラーゼ(分子量:30,000)、大豆トリプシンインヒビター(分子量:20,100)、γ−ラクトアルブミン(分子量:14,400)を用いた。その結果、単一バンドが得られ、その分子量は35,000±1,000と推定された。
【0030】
(7)等電点
等電点電気泳動法により、本プロテアーゼの等電点を求めた。アクリルアミドゲル(6.0%)のpH勾配は、両性電解質であるファーマライト(Pharmalyte, pH3〜10;ファルマシア社製)を使用した。その結果、本プロテアーゼの等電点はpH6.0〜6.5に2本の主なバンドが認められた。
【0031】
本発明において、上記の方法又は特開昭63−219351号公報記載の方法により得られる酵素液はそのまま食肉に用いることもできるが、比活性を上げるために公知の方法により濃縮、精製して用いることもできる。更に酵素液を凍結乾燥し、酵素粉末として配合することもできる。凍結乾燥することで酵素活性が長期間に渡り安定に保たれ、また幅広い利用が可能となる。
【0032】
なお、プロテアーゼの蛋白分解活性はアゾカゼインを基質として行った。すなわち、0.1Mリン酸バッファー(pH7.0)0.8mlに適当に希釈した酵素液0.2mlを加え、25℃にてインキュベートした後、2%アゾカゼイン溶液1mlを加え反応を開始した。20分反応後、5%TCA溶液2mlを加えることで反応を停止した。反応液は濾紙で濾過し、440nmの吸光度を測定した。酵素量1ユニットは、1μmol相当のアゾ色素を1分間でトリクロロ酢酸可溶部に生産する量とした。
【0033】
本発明の食肉軟化法は、低温プロテアーゼをそのまま又はこれに任意成分を含有させたものを直接肉片に塗布、散布などの方法で行うことができるが、肉片の形状、またその調理方法などに応じてその使用形態を適宜調整して行うことが好ましい。食肉片に作用させる当該低温プロテアーゼの量は特に制限されず、使用の際に肉の量によって決定される。すなわち、当該低温プロテアーゼは肉1g量に対し、0.5〜5.0ユニット、特に1.0〜3.0ユニット作用させるのが好ましい。
【0034】
また、他の任意の成分としては、例えば、澱粉類、蛋白質類、糖類、調味料などを挙げることができる。これらの成分を使用することにより、例えば、低温プロテアーゼが液状の場合には、これらの成分に含ませ、噴霧するなどの方法で軟化剤を粉末状とすることができる。
更に、これらの使用形態としては、例えば以下の形態を挙げることができる。
【0035】
(1)唐揚げ粉、粉末調味料などの粉末基材に配合して使用する。
(2)大豆油、コーン油などの調理用液体食用油脂に配合して使用する。
(3)精製ラード、ショートニングなどの可塑性油脂に配合して使用する。
(4)マーガリン等のW/O乳化組成物に配合して使用する。
(5)O/W乳化組成物に配合して使用する。
(6)だし、タレなどの液体調味料に配合して使用する。
【0036】
本発明の食肉軟化法は、牛、豚、羊などの畜肉、鶏、七面鳥、カモ、ガチョウ等の鳥肉、あるいはアジ、サケ、タラやヒラメなどの白身魚などの魚肉を用いて調理するときに効果があるが、特に畜肉、鳥肉において効果が大である。また肉の部位としては、カタ、モモ等の比較的硬質の蛋白質を多く含む部位のものを用いるときに効果がある。更に肉の形態としては、前述のように肉片として形状のあるもの(厚切り肉、薄切り肉、細切り肉)を用いるときに有効であるが、特に、ある程度の大きさのある肉片(ステーキ、焼き肉用の肉、唐揚、フライあるいは照り焼き用の肉、塩焼き、かば焼きあるいはムニエル用の肉など)を用いるときに効果が大きい。
【0037】
また、本発明の食肉軟化法は、低温条件下短時間処理で充分効果が得られるので、冷蔵保存した肉片又は冷凍保存後解凍した肉片に室温条件下(好ましくは0〜30℃)、短時間(好ましくは1〜30分、より好ましくは1〜15分)処理すればよい。そして、このような処理後に肉片を加熱調理すればよい。加熱処理方法としては、焼く、炒める、揚げる、煮る、蒸すなどの何れの調理方法でもよいが、特に、焼く、揚げるなどの調理において顕著な効果が得られる。
【0038】
本発明の食肉軟化法で処理された肉片を含む肉製品は、既に加熱調理されているものでもよいし(加熱調理済食品)、あるいは食べるときに加熱調理するように調理されているものでもよい(未加熱調理食品)。すなわち、加熱調理済食品においては、これを製造する際の加熱調理工程で低温プロテアーゼで処理されていれば良く、一方未加熱調理食品においては、食べるときの加熱調理する際に低温プロテアーゼが作用するように予めこの食品に付着等の処理をしておけばよい。本発明の低温プロテアーゼで処理された肉片を含む製品は、保存後においても、肉の柔らかさやジューシーさが維持され、良好な風味のものとなる。
【0039】
なお、本発明において肉片とは、畜肉等の生肉から切り出した、比較的形状の大きな肉(例えば、肉片の表面積が1cm2程度以上のもの)を意味する。従ってミンチ状の肉をつなぎ合わせて整形したような肉片(例えば、ハンバーグなど)は意味しない。
【0040】
【発明の効果】
本発明の低温プロテアーゼは、作用最適温度を低温領域に有するため、例えば冷凍保存後解凍した直後の食肉片を室温で短時間処理するだけで、加熱調理後の肉を柔らかく、風味を損なうことなくかつジューシーに仕上げることができる。また、本酵素は洗浄剤組成物の配合成分として、低温下で有利に使用できるものである。
【0041】
【実施例】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0042】
実施例1
(低温プロテアーゼの生産)
南氷洋に生息する貝類シロバイに滅菌人工海水20mlを添加し、ホモゲナイザーで粉砕した。生じた懸濁液を、各種人工海水平板培地に塗抹し、20℃で72〜96時間培養した。なお、用いた人工海水培地の組成は、以下に示すとおりであり、プロテアーゼ生産の判定を行うために、スキムミルクを添加した。培養後、生育した集落(コロニー)の周囲にスキムミルク分解に基づく透明帯を形成したものを選抜した。
【0043】
【表4】
人工海水培地(pH7.6)
(成分) (配合量)
バクトペプトン(ディフコ社製) 2.5g
酵母エキス(ディフコ社製) 1.25g
肉エキス(ディフコ社製) 1.25g
グルコース 0.5g
寒天 20.0g
人工海水(ジャマリン・ラボラトリー社製) 1000ml
【0044】
得られたバチルス・エスピー KSM−506を以下に示す液体培地に接触し、5℃で96時間培養を行い、本酵素を生産させた。
【0045】
【表5】
液体培養培地(pH7.6)
(成分) (配合量)
バクトペプトン(ディフコ社製) 5g
酵母エキス(ディフコ社製) 2.5g
グルコース 10g
人工海水(八洲薬品社製) 1000ml
【0046】
培養終了後、得られた培養液を遠心分離(8,000rpm,5分間)して菌体を除去した。本培養上清に飽和硫酸アンモニウムを加えて塩析を行った後、担体としてGCL−300mを用いたゲル濾過クロマトグラフィー、QAE−Toyopearlを用いた陰イオン交換体クロマトグラフィー、PHENYL−Cellulofineを用いた疎水性クロマトグラフィー、Mono Qを用いた陰イオン交換体クロマトグラフィーにより、SDS電気泳動により単一なバンドにまで精製した結果、比活性は、643倍上昇し、活性回収率は5%であった。
【0047】
かかる低温プロテアーゼは、前記した酵素学的性質を示すものであった。
【0048】
実施例2
(低温プロテアーゼの肉軟化試験)
前記の酵素粉末を用いて、オーストラリア産輸入牛肉、モモ肉(100g)の軟化実験を行った。ミートスライサーにて5mm厚にスライスした20g程度の肉を冷蔵庫(4℃)に置き、これに酵素粉末を12.5ユニット、肉10gとなるように振りかけ、ラップで覆って一定の時間冷蔵庫にて放置した。その後200℃のホットプレートにて片面1分、返して45秒焼成し、3cm幅の帯状にカットしてミートシェアーにて切断応力(SFV)を測定した。対照として、パパイン粉末(天野社製)を用いた。結果を図4に示した。
【0049】
図4に示すように、本酵素は5分後には適正な軟化を示し、その後1時間まで良好な状態を保った。これに対し、パパインを用いて低温、短時間(少なくとも5分以内)で軟化効果を得ようとした場合、10gの肉当たり10ユニット以上の酵素で処理する必要があり、また、パパイン2ユニット/10g肉の5分でも軟化する前に表面に苦みを生じ、風味上、食するに耐えないものとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】低温プロテアーゼのpHと相対活性の関係を示す図である。
【図2】低温プロテアーゼの温度と安定性を示す図である。
【図3】低温プロテアーゼの至適温度を示す図である。
【図4】低温プロテアーゼの処理時間と切断力の関係を示す図である。
Claims (4)
- 次の酵素学的性質を有する低温プロテアーゼ。
1)作用温度及び最適温度
0〜45℃で作用し、最適温度は約20〜30℃にある。
2)温度安定性
pH7.0、20分間の処理条件で25℃まで安定である。
3)作用pH及び最適pH
作用pH範囲は5〜9であり、最適pHは7近傍にある。
4)分子量
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による推定分子量は35000±1000である。
5)金属イオンの影響
Cu 2+ 及びHg 2+ イオンによって阻害される。
6)阻害剤
エチレンジアミン四酢酸、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)四酢酸によって強く阻害を受け、フェニルメタンスルホニルフルオリド、モノヨード酢酸、ジイソプロピルフルオロリン酸によって阻害を受けない。 - バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−506と命名され、FERM P−15326号として寄託された微生物。
- 請求項2記載の微生物を培養し、その培養物から当該低温プロテアーゼを採取することを特徴とする請求項1記載のプロテアーゼの製造法。
- 請求項1記載の低温プロテアーゼを用いる食肉軟化法。
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1996
- 1996-02-08 JP JP02245596A patent/JP3784874B2/ja not_active Expired - Lifetime
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