JP3784688B2 - 電子部品処理用器材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品処理用器材に関し、さらに詳しくは半導体、液晶表示素子などの電子部品の製造においてシリコンウェハやガラス基板などの流通、運搬、現像・エッチングなどの各種薬品処理、脱脂・水洗などの処理する際に用いられるキャリア、パイプ、チューブ、タンクなど、電子部品をプリント配線板やハイブリッドICに自動で実装する際に電子部品を配列供給するためのICトレー、キャリアーテープ、それらに保持された電子部品の保護用セパレーション・フィルムなどに関する。
【0002】
【従来の技術】
IC、LSIなどの高集積半導体は、シリコンウェハ上に電気絶縁層、配線材料層、層間絶縁層などの積層、不要な層の剥離、接着性改良助剤やフォトレジストなどの薬品の塗布、薬品の除去・洗浄、露光、現像、エッチングにより微細画像を焼きつけ、不純物の拡散など、複雑な工程を経て製造される。これらの各工程毎に、工程に応じた薬品の塗布、薬品への浸漬、加熱などの処理を行う。また、微細画像のもととなるガラスマスクやレチクルも、ガラス基板上をフォトリソグラフィ法により加工して製造されるが、同様の処理が行われる。
【0003】
ウェハやガラス基板は、通常キャリアと呼ばれるカセットに一定枚数毎に収納されて流通し、そのまま各工程間、各処理間を移動する。各処理において、ウェハやガラス基板は、枚葉処理、すなわち、一枚一枚別々に処理されることもあるが、通常、効率をよくするため、バッチ処理、すなわち、まとめて処理されることが多い。例えば、現在、レジストの塗布・露光処理はバッチ処理が不可能なため枚葉処理が行われ、現像処理は枚葉処理、バッチ処理の両方が行われているが、洗浄処理はバッチ処理で行われることが多い。バッチ処理を行う場合は、キャリアに収納されたまま処理される。
【0004】
したがって、半導体製造用キャリアは、半導体製造用装置の規格にあった形状であり、枚葉処理をする際のウェハやガラス基板の出し入れが自在であること、出し入れ時に異物の付着やキズの発生がないこと、加熱処理や薬品処理に耐えることが要求される。加熱処理の温度は、目的とする各処理によって異なるため、キャリアの材質の耐熱温度が高いほど、キャリアの使用可能な処理が多くなり好ましい。例えば、酸やアルカリによる洗浄などでは、50〜70℃以上に加熱される工程などがあり、従って、成形品として、18.6kgf/cm2の荷重撓み温度で70℃以上である。
【0005】
また、バッチ処理では、濃硫酸、希硫酸、硝酸、リン酸、フッ硝酸、バッファード・フッ酸、塩酸などの酸類;過酸化水素水;テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAHO)水溶液、コリン水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水;などのアルカリ水溶液;ヘキサメチルジシラザン、アセトン、イソプロピルアルコール、エトキシエチルアセテート、セロソルブ類、トリクロロエチレンなどの有機溶媒;超純水と呼ばれる精製し除菌した水などが用いられる。キャリアの材質がこれらの薬品の出来るだけ多くに対して耐性があるほど、キャリアの使用可能な処理が多くなり好ましい。
【0006】
キャリアは使用することにより、レジストのカス、ゴミや異物などの汚染物が付着し、これらの除去が困難であるため、適宜更新して使用する。そのため、生産性がよく、生産コストが安いものが好ましい。さらに、汚染物の付着や、現像処理、エッチング処理、洗浄処理などの終了などが確認しやすいように、透明であることが好ましい。
【0007】
半導体製造用キャリアの材質としては、従来、真鍮などの金属、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などのフッ素樹脂が用いられている。このうち、金属製のキャリアは寸法精度や耐熱性に優れるものの重い、酸への耐性がない、ウェハやガラス基板の出し入れ時も擦れのために微少な削れやカスが発生する、不透明であるという問題がある。さらに、金属製キャリアは別々に加工した部品を組み立てるために生産性が悪く、高価となるため、現在では殆ど使用されていない。
【0008】
現在、熱可塑性樹脂製のキャリアが主流であり、PP、PTFE、PFAが主に用いられているが、これらの樹脂はいずれも上記の半導体製造用薬品の多くに耐性があり、吸水性が0.02%程度以下と低く、水をはじくため水切れが良いなどの理由で使用されている。
【0009】
PPは射出成形による量産が可能であり、使い捨てによる利用が可能で、比重も0.9程度と軽い。しかし、不透明であるほかに、射出成形時の収縮が1.2〜2%とやや大きく寸法精度が悪い、18.6kgf/cm2の荷重撓み温度で50〜65℃程度と耐熱性が悪い、線膨張係数が10〜18×10−5/℃と大きく、温度変化にともなう寸法変化が大きいという欠点がある。このため、キャリアからウェハやガラス基板を一括して移し替える作業の際に、それぞれ所定の位置に入らずに重なったりするなどの問題があった。
【0010】
PTFEは耐熱性が200℃以上と高く、滑り摩擦も小さく好適な材料である。しかし、射出成形ができないため、圧縮成形による粗成形品を削りだし加工により成形されている。このため、量産が困難であり、価格的に問題がある。また、比重も2以上と高く、削り出し加工に耐えるようにある程度の厚みが必要であるため、キャリアはかなり重くなる。さらに、線膨張係数が11〜13×10−5/℃と大きく、温度変化にともなう寸法変化が大きい。また、不透明である。
【0011】
PFAは射出成形が可能であり、耐熱性も200℃以上と高い。しかし、透明性が不十分であり、成形時の収縮が4〜5%と非常に大きく、また、線膨張係数も12×10−5/℃程度と大きく寸法精度の良い精密な成形品が得られ難いという難点があり、また、樹脂材料の合成が困難であり大量生産には適さず、価格的に問題があった。
【0012】
また、前述の工程、処理、移動等の間に、キャリアから微量な有機物等が溶出すると、精度の高い製品を製造できないため、キャリアの材質としては、そのような有機物等の溶出の少ない樹脂等を選択する必要がある。
【0013】
これらは、キャリアのみの問題ではなく、前述の工程、処理、移動を行うために用いられるパイプ、バルブ、チューブ、タンク等についても、耐薬品性、耐熱性、有機物低溶出性(薬液や超純水等を用いる場合に微少なゴミや極微量の有機物が溶出しにくいこと)などが必要である。
【0014】
IC製造用の配管材としては、有機物溶出量が比較的少ないポリビニリデンフルオリドやポリエーテルエーテルケトンが使用されているが、有機物低抽出性が不十分であり、より有機物低溶出性の配管材が求められていた。
【0015】
また、電子部品をプリント配線板やハイブリッドICに実装する際に電子部品を配列供給するためのICトレー、キャリアーテープは成形での高い寸法制度、低吸湿性、低帯電性、電子部品を保持した状態での加熱乾燥のための耐熱性などが要求される。
【0016】
このような用途にも、主にポリスチレン、硬質塩化ビニルなどが使用されているが、加熱により変形するという問題があった。また、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの結晶性ポリマーも検討されたが、加熱により反りが発生するという問題があった。
【0017】
一方、熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、射出成形が可能であり量産に適し、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、透明性などに優れた樹脂として注目されている。しかし、有機溶剤等に対する耐薬品性に優れていることは知られていたが、半導体製造用等の強酸、強アルカリ等の薬品にどの程度の耐性があるか、また、他の樹脂と比較して、有機物の溶出量がどの程度であるかは知られていなかった。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、鋭意研究の結果、熱可塑性ノルボルネン系樹脂が、各種の強酸、強アルカリ等に耐性があり、また、樹脂中の有機物が抽出されにくいために電子部品処理用器材の材料として優れていることを見いだし、本発明を完成するに到った。
【0019】
かくして本発明によれば、電子部品、その製造中間体、またはその製造工程の処理液と接触する器材であり、その接触面が18.6kgf/cm2の荷重撓み温度で70℃以上で、表面抵抗が10 10 Ω以下である熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂で形成されていることを特徴とする電子部品処理用器材が提供される。
【0020】
【発明の実施の形態】
(熱可塑性ノルボルネン系樹脂)
熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、特開平3−14882号や特開平3−122137号などで公知の樹脂であり、具体的には、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加型重合体、ノルボルネン系単量体とオレフィンの付加型重合体、これらの重合体や重合体水素添加物の変性物などが挙げられる。
【0021】
ノルボルネン系単量体も、上記公報や特開平2−227424号、特開平2−276842号などで公知の単量体であって、例えば、ノルボルネン、そのアルキル、アルキリデン、芳香族置換誘導体およびこれら置換または非置換のオレフィンのハロゲン、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基等の極性基置換体、例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン等;ノルボルネンに一つ以上のシクロペンタジエンが付加した単量体、その上記と同様の誘導体や置換体、例えば、1,4:5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−2,3−シクロペンタジエノナフタレン、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4:5,10:6,9−トリメタノ−1,2,3,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a−ドデカヒドロ−2,3−シクロペンタジエノアントラセン等;シクロペンタジエンの多量体である多環構造の単量体、その上記と同様の誘導体や置換体、例えば、ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物、その上記と同様の誘導体や置換体、例えば、1,4−メタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレン、5,8−メタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−2,3−シクロペンタジエノナフタレン等;等が挙げられる。
【0022】
ノルボルネン系単量体の重合は公知の方法でよく、必要に応じて、他の共重合可能な単量体と共重合したり、水素添加することにより熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂である熱可塑性ノルボルネン系重合体水素添加物とすることができる。また、重合体や重合体水素添加物を特開平3−95235号などで公知の方法により、α,β−不飽和カルボン酸および/またはその誘導体、スチレン系炭化水素、オレフィン系不飽和結合および加水分解可能な基を持つ有機ケイ素化合物、不飽和エポキシ単量体を用いて変性させてもよい。
【0023】
分子量はトルエン溶媒によるGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)分析により測定した数平均分子量Dで1〜20万、重量平均分子量で2〜60万が適当であり、好ましくは数平均分子量で2〜10万、重量平均分子量で3〜30万であり、この範囲よりも分子量が小さい場合には十分な強度が得られない、割れやすいなどの不都合があり、この範囲よりも分子量が大きいと、成形時の流動性が悪くなり成形しにくい、樹脂の合成時に再現性よくかつ生産性よく合成しにくいという不都合が生じる。
【0024】
また、耐光劣化性や耐候劣化性、各種薬品からの分解や着色などの劣化を受けにくいという点からはオレフィン性不飽和結合を多く含まないことが好ましく、そのために重合後の構造単位のなかに1つ以上の炭素−炭素不飽和結合が存在する場合には水素添加することが好ましく、その場合、通常、水素添加率は90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。
【0025】
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂は、単量体の選定、分子量、変性反応などによりその特性が変化する。例えば、半導体製造用キャリア用の成形材料としては、18.6kgf/cm2の荷重撓み温度で70℃以上のものであり、90℃以上のものが好ましく、110℃以上のものがより好ましい。この好ましい条件を満たすためには、通常、ガラス転移温度(以下、Tgという)が90℃以上、より好ましくは110℃以上、特に好ましくは130℃以上である必要がある。上記の分子量の範囲であれば、Tgを90℃以上にするためには、ホモポリマー水素添加物の場合は一般に、シクロペンタジエンの多量体、その誘導体や置換体、シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物、その誘導体や置換体など、三環体以上の単量体を用い、共重合または共重合体水素添加物の場合には一般に、四環体以上の単量体由来の構造単位を50%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上含むように重合するか、重合後に変性してそれと類似の構造にすればよい。ただし、射出成形の熱効率のためには、Tgが200℃以下のものが好ましい。
【0026】
半導体製造用キャリア以外の電子部品処理用器材についても、耐熱性が必要な場合は、上記のようにして、必要な耐熱性をもたせることが好ましい。
【0027】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂の比重は単量体の種類などで若干は変化するが、概ね0.95〜1.1である。
【0028】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂の吸水性は単量体の種類などによって変わるが、比較的吸水性のよくない極性基を有するノルボルネン系単量体のホモポリマー水素添加物の場合で0.3%以下、極性基を含まないノルボルネン系単量体のホモポリマーで0.1%以下、より好ましくは0.01%以下の吸水率を持った樹脂の合成が可能である。極性基を含まない単量体を重合した樹脂は疎水性が高く、水の接触角で50°以上好ましくは80°以上が可能で水を良く弾くため水キレがよく、半導体製造用キャリアやトレイなどに適している。
【0029】
また、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の成形収縮率は通常0.7〜0.9%、線膨張係数は6〜8×10−5/℃の範囲にあり、さらに透明性を必要としない場合には下記のようにフィラーや繊維等を含有させることにより、成形収縮率を0.2%程度、線膨張係数を2×10−5/℃程度にまで下げることも可能であり、温度変化をともなう工程に用いる電子部品処理用器材の成形材料として適している。
【0030】
さらに、熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、その重合、水素添加等の処理に由来する有機の不純物を含有していても、成形後に水やアルコールなどの有機溶媒等で洗浄して、表面の有機物を除去すれば、以後、有機物は80℃の温水中で1日当りの有機物抽出量が有機炭素量(TOC)で、500μg/m2以下しか溶出せず、溶出量は実際上、問題とならず、接触した物に有機物を付着させたり、接触した液に微量の有機物を溶出することは実質的にない。
【0031】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂には、所望により、フェノール系やリン系などの老化防止剤;フェノール系などの熱劣化防止剤;ベンゾフェノン系やヒンダードアミン系などの紫外線安定剤;脂肪族アルコールのエステル、多価アルコールの部分エステル及び部分エーテルなどの助剤;などの各種添加剤を添加してもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリブタジエン、ポリイソプレン、SBS、SIS、SEBSなどのゴム、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホンなど他の樹脂などを混合して用いることもできる。さらに、透明性を必要としない電子部品処理用器材に用いる場合は、色分けによる識別や耐熱性や強度等を改良することを目的として、各種のタルクやチタン白などの鉱物系やその他のフィラー、繊維、有機系または無機系の顔料などを用いることもできる。
【0032】
一般に、電子部品処理用器材は帯電しにくいものが好ましく、帯電防止効果を有する添加物を添加することが好ましい。そのような添加物としては、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの長鎖アルキルアルコール、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレートなどの多価アルコールの脂肪エステルなどの帯電防止剤や炭素繊維、グラファイト、無定型炭素、酸化スズ粉、アンチモン含有酸化スズ粉、金属粉などの帯電防止フィラーや繊維などがある。添加量は添加するものによって異なるが、帯電防止剤は通常0.01〜10重量%程度、帯電防止フィラーは通常1.0〜20重量%程度添加し、樹脂の表面抵抗値を1010Ω以下、より好ましくは108Ω以下にすることが好ましい。
【0033】
(電子部品処理用器材)
本発明にいう電子部品処理用器材とは、(A)IC、LSIなどの半導体やハイブリッドIC、液晶表示素子、発光ダイオードなどの電子部品と接触する器材、(B)ウェハ、液晶基板、これらに透明電極層や保護層などを積層したものなどの製造中間体と接触する器材、及び(C)電子部品の製造工程において製造中間体の処理に用いる薬液や超純水などの処理液と接触する器材をいう。
【0034】
(A)電子部品と接触する器材、(B)電子部品の製造中間体と接触する器材としては、例えば、タンク、トレイ、キャリア、ケース、シッパー等の処理用、および移送用容器;キャリアテープ、セパレーション・フィルム等の保護材;などが挙げられる。(C)処理液と接触する器材としては、例えば、パイプ、チューブ、バルブ、流量計、フィルター、ポンプ等などの配管類;サンプリング容器、ボトル、アンプル、バッグなどの液用容器類;などが挙げられる。
【0035】
本発明の電子部品処理用器材は、電子部品、製造中間体、処理液と接触し、その接触面が熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなるものである。該接触面が熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなるものであれば、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を成形したものでも、熱可塑性ノルボルネン系樹脂で表面を溶液塗布や粉体塗装などの方法によってコートしたものでもよい。例えば、パイプなどは、金属製のパイプの内面を熱可塑性ノルボルネン系樹脂でコートすれば強度に優れ、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を押し出し成形等で成形すれば軽量のパイプが得られる。
【0036】
以下、電子部品処理用器材の例として、半導体製造用キャリアについて説明する。
【0037】
(半導体製造用キャリアの形状)
現在一般に半導体製造に使用されているウェハは、シリコンの単結晶で、厚みが500〜1000μm程度、直径は1.5、2、2.5、3、3.5、4、5、6、8インチなどの円形の非常に硬い板である。また、現在一般に使用されている半導体製造用ガラス基板はガラスまたは合成コルツ製の板であり、厚みが1/8インチまたは2〜8mm程度、一辺が4、5、6、7インチなどの方形の非常に硬い板であり、その表面に微細な電子回路に相当するクロム等からなる画像を形成し、これを介してフォトレジストの表面に画像状露光をするためのレチクルやフォトマスクと呼ばれる板を形成する。
【0038】
本発明の電子部品処理用器材である半導体製造用キャリアは、ウェハやガラス基板どうしが接触することなく保持、出し入れ可能であり、キャリアに収納したまま、ウェハやガラス基板の加熱処理や薬品等への浸漬処理が可能なようになっている必要がある。一般には、面どうしが平行な形で、互いに接触することなく収納でき、面に平行な方向に一枚づつ接触することなく出し入れが可能になっている。このような構造としては、一般に、収納された状態で、ウェハやガラス基板と空間が交互に層状に何層も積み重ねられた構造を、ウェハやガラス基板が取り出し方向以外には動かないように枠組みされており、その枠組みに溝や突起などを設けることにより、ウェハやガラス基板どうしの間に空間を設けている。さらに、加熱処理や薬品等への浸漬処理が効率的に、またできるだけ均一にできるように、一般に、ウェハやガラス基板の取り出し方向以外の方向からも、ウェハやガラス基板の間の空間に液体等の流入口を開けている。具体的な例としては、特開平2−63112号、特開平2−143545号、特開平2−161745号、特開平3−95954号などで公知のものや、図1に示すもの、SEMI規格のなかに規定されたキャリアなどを挙げることができる。
【0039】
(半導体製造用キャリアの成形方法)
半導体製造用キャリアの様な複雑な形状のものを得るには、例えば、金属部品を組み立てて製造したものに熱可塑性ノルボルネン系樹脂をコートする方法などがある。熱可塑性ノルボルネン系樹脂からのみ成るものを製造する方法としては、一般的に削り出し加工か射出成形法しかなく、どちらでもよい。量産性の点からは、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のみからなるものを射出成形する方法が好ましい。
【0040】
射出成形する方法としては、ごく一般的な射出成形機が使用可能で、成形時の樹脂の温度としては、概ね200〜350℃程度が適当であり、その他の条件は一般のポリスチレン等と同様の設定で成形できる。ポリカーボネート樹脂などで必要な予備乾燥やホッパードライヤは用いても良いが特に必要ない。
【0041】
(半導体製造用キャリアの使用方法)
本発明の半導体製造用キャリアは、熱変形温度以下、通常はTg未満、好ましくはTg−10℃未満、より好ましくはTg−20℃未満程度の環境で使用する。特に、ウェハやガラス基板などを収納することなどにより荷重がかかる場合は、荷重撓み温度未満で使用することが好ましい。
【0042】
また、バッチ処理で用いられる一般的な化学薬品は前述の通りであるが、このうち、強酸化性のある硫酸で表面が炭化し、有機溶剤のうち塩素系溶剤であるトリクロロレチレン、トリクレンなどに溶解するが、その他の薬品については耐性があり、本発明の半導体製造用キャリアの使用できる処理の範囲は広い。
【0043】
【実施例】
以下に参考例、実施例、及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0044】
参考例1 6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレンの開環重合体に水素添加反応して得られた樹脂(数平均分子量28,000、水添率ほぼ100%、Tg140℃)の100重量部に対して0.2重量部のフェノール系老化防止剤ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)を0.2重量部添加し、二軸混練機(東芝機械製、TEM−35)を用いて、240℃で溶融押し出し方によりペレットとした。
【0045】
参考例2 参考例1で得たペレットを下記の条件で射出成形して、厚さ3mmの50mm×50mmの試験片を得た。成形機: 型締め圧 350トン(東芝機械株式会社IS−350FB−19A)樹脂温: 280℃ 金型温度:100℃(固定側)、100℃(可動側)
【0046】
この試験片の比重1.01、18.6kgf/cm2の荷重撓み温度120℃、成形収縮率0.7%、線膨張係数7.0×10−5/℃、吸水性0.007%、水の接触角89°、波長400〜700nmの範囲で光線透過率は90%以上であった。
【0047】
この試験片を、濃硫酸、30%希硫酸、70%硝酸、リン酸、フッ硝酸(フッ酸7重量%、硝酸42重量%、水51重量%)、37%塩酸、30%過酸化水素水、水酸化カリウム飽和水溶液、29%アンモニア水、アセトン、イソプロピルアルコール、トリクロロエチレン、2.38重量%TMAHO水溶液、アルミニウム用エッチング液(濃リン酸80重量%、硝酸5重量%、氷酢酸5重量%、水10重量%)に5分間浸漬した。
【0048】
トリクロロエチレンに溶解し、濃硫酸では表面が炭化したが、その他の薬品による影響は認められず、良好な耐薬品性が示された。
【0049】
参考例3 さらに帯電防止フィラーであるカーボンブラック9部を配合する以外は参考例1と同様にし、さらに、二軸混練機で処理することを4回繰り返してペレットを得た。
【0050】
実施例1 参考例1で得たペレットを参考例2と同じ条件で射出成形して、図1に示す3インチ・ウェハ用キャリアを得た。
【0051】
このキャリアに、3インチ・ウェハを収納して、温度70℃に30分間放置したが、異常なかった。
【0052】
実施例2 参考例3で得たペレットを参考例2と同様の成形条件で射出成形し、厚さ1mm、直径100mmの試験片を得た。
【0053】
この試験片の表面抵抗値は3×106Ωであった。
【0054】
さらにこの試験片をオーブン中で110℃、24時間の乾燥処理を5回繰り返したが、反り、ねじれなどの外観の変化は認められなかった。
【0055】
比較例1 図1に示す3インチ・ウェハ用キャリアをポリプロピレンで成形し、3インチ・ウェハを収納して、温度70℃に30分間放置したところ、変形し、ウェハを保持できず、キャリアを持ち上げると、ウェハが落下した。
【0056】
参考例4 参考例2で得た試験片20枚を80℃に保持した純水500g中に24時間浸漬したところ、抽出された有機物は有機炭素量で一日当り1×102μg/m2であった。
【0057】
その後、同じ試験片を80℃で再度純水500g中に144時間浸漬したところ、抽出された有機炭素量は一日当り測定限界である7μg/m2以下であった。
【0058】
比較例2 参考例2の試験片の代わりに同形のポリビニリデンフルオリド製の試験片を用いる以外は参考例4と同様に処理したところ、80℃、24時間の抽出では、有機炭素量で一日当り6.5×103μg/m2の有機物が抽出され、80℃、144時間の抽出では、一日当り7.2×102μg/m2であった。
【0059】
実施例3 参考例1で得たペレットを単軸押し出し機(田辺プラスチック機械製、VS40)を用いて、樹脂温度240℃で、外径22mm、内径16mmのチューブ状に連続的に押し出し、長さ2m毎に切断して、管材を得た。この管材を切断して、外径22mm、内径16mm、長さ2mのパイプを得た。
【0060】
試験片20枚の代わりにこのパイプ4本を用いる以外は参考例4と同様にして、有機物抽出量を測定した。80℃、24時間の抽出では、1日当り1×102μg/m2の有機物が抽出され、80℃、144時間の抽出では、一日当り測定限界である7μg/m2以下であった。
【0061】
【発明の効果】
寸法精度がよく、その寸法精度が温度の影響を受け難く、軽く、耐薬品性に優れ、さらに、有機物等が溶出しにくい電気部品製造用部材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の半導体製造用キャリアの1例であり、本発明の実施例で用いた半導体製造用キャリアの説明図である。
Claims (4)
- 電子部品、その製造中間体、またはその製造工程の処理液と接触する器材であり、その接触面が18.6kgf/cm2の荷重撓み温度で70℃以上で、表面抵抗が1010Ω以下で、かつ水の接触角で50°以上である熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂で形成されていることを特徴とする電子部品処理用器材。
- 熱可塑性ノルボルネン系樹脂が数平均分子量10,000〜200,000のものである請求項1記載の電子部品処理用器材。
- 熱可塑性ノルボルネン系樹脂が、帯電防止剤を添加したものである請求項1、または2記載の電子部品処理用器材。
- 半導体製造用キャリアである請求項1、2、または3記載の電子部品処理用器材。
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