JP3784244B2 - 多層配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子回路基板等に使用される多層配線基板に関し、より詳細には高速で作動する半導体素子を搭載する多層配線基板における配線構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体集積回路素子等の半導体素子が搭載され、電子回路基板等に使用される多層配線基板においては、内部配線用の配線導体の形成にあたって、アルミナ等のセラミックスからなる絶縁層とタングステン(W)等の高融点金属からなる配線導体とを交互に積層して多層配線基板を形成していた。
【0003】
従来の多層配線基板においては、内部配線用配線導体のうち信号配線は通常、ストリップ配線構造とされており、信号配線として形成された配線導体の上下に絶縁層を介していわゆるベタパターン形状の広面積の接地(グランド)層または電源層が形成されていた。
【0004】
また、多層配線基板が取り扱う電気信号の高速化に伴い、絶縁層を比誘電率が10程度であるアルミナセラミックスに代えて比誘電率が3.5〜5と比較的小さいポリイミド樹脂やエポキシ樹脂を用いて形成し、この絶縁層上に蒸着法やスパッタリング法等の気相成長法による薄膜形成技術を用いて銅(Cu)からなる内部配線用導体層を形成し、フォトリソグラフィ法により微細なパターンの配線導体を形成して、この絶縁層と配線導体とを多層化することにより高密度・高機能でかつ半導体素子の高速作動が可能となる多層配線基板を得ることも行なわれていた。
【0005】
一方、多層配線基板の内部配線の配線構造として、配線のインピーダンスの整合によるリンギングノイズの低減や信号配線間のクロストークの低減等を図り、しかも高密度配線を実現するために、各絶縁層の上面に平行配線群を形成し、これを多層化して各層の配線群のうち所定の配線同士をビア導体やスルーホール導体等の貫通導体を介して電気的に接続する構造が提案されている。
【0006】
このような平行配線群を有する多層配線基板においては、この多層配線基板に搭載される半導体素子等の電子部品とこの多層配線基板が実装される実装ボードとを電気的に接続するために、多層配線基板内で各平行配線群のうちから適当な配線を選択し、異なる配線層間における配線同士の接続はビア導体等の貫通導体を介して行なわれる。
【0007】
そして、このような多層配線基板によれば、信号線をストリップ線路で構成する場合に比べて配線層の層数を削減できるとともに、平行配線群内および平行配線群間において、信号配線間のクロストークを低減することができるものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
近年の電子部品の高速化・高密度化に伴い、多層配線基板の内部に発生するノイズが電子部品や周囲の電子機器の動作に悪影響を及ぼすことが大きな問題となってきている。
【0009】
この多層配線基板の内部で発生するノイズには、例えばインピーダンスの不整合に起因するリンギングノイズや隣接の信号配線との電磁気的な結合で生じるクロストークノイズ、多層配線基板に搭載される電子部品のスイッチング時に発生するパワー/グランドノイズ、多層配線基板の内部の配線や電源/グランド配線あるいは電源/グランド面から放射されるEMI(Electro-Magnetic Interference:電磁的干渉)ノイズが挙げられる。
【0010】
このような各種のノイズの発生や影響の抑制を低減させるべく、前記の平行配線群を有する多層配線基板においても種々の改善の提案がなされている。しかしながら、GHz帯以上の周波数帯を考慮した場合には、平行配線群によって伝送される高周波信号を減衰させたりすることなく、しかも作製が容易で製造工程数や製造コストが大幅に増加しないような構成の多層配線基板に対する要求が高まっている。
【0011】
本発明は上記要求に応えるべく案出されたものであり、その目的は、直交させて積層された平行配線群で構成され、同一層内および上下層間における配線間のクロストークを低減させる配線構造を有しつつ、さらにEMIノイズの影響を低減させることができる、高速で作動する半導体素子等の電子部品を搭載する電子回路基板等に好適な多層配線基板を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層配線基板は、第1の絶縁層に形成され、この第1の絶縁層の中央部に交点を有する2〜4本の直線で中心角が略等しくなるように区分された各区分領域においてそれぞれ前記交点側に向かう第1の平行配線群と、前記第1の絶縁層に積層された第2の絶縁層に形成され、前記各区分領域においてそれぞれ前記第1の平行配線群と直交する第2の平行配線群と、前記第1および第2の平行配線群を電気的に接続する貫通導体群とから成る積層配線体を具備して成り、前記第2の平行配線群は前記各区分領域の平行配線群の配線が接続されてなる環状配線を構成し、前記第1および第2の平行配線群はそれぞれ前記第1および第2の絶縁層の外周部に形成した環状磁性体層により取り囲まれていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の多層配線基板は、上記構成において、前記第1および第2の絶縁層に形成された前記環状磁性体層同士が貫通磁性体で接続されていることを特徴とするものである。
【0014】
さらにまた、本発明の多層配線基板は、上記構成において、前記貫通磁性体間の間隔が前記第1および第2の平行配線群により伝送される高周波信号の波長の4分の1以下であることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の多層配線基板は、上記各構成において、前記第1および第2の平行配線群は、それぞれ複数の信号配線と、各信号配線に隣接する電源配線または接地配線とを有することを特徴とするものである。
【0016】
本発明の多層配線基板によれば、第1および第2の平行配線群を各区分領域において互いに直交配置して上下に積層し、貫通導体群で電気的に接続して成る積層配線体を具備して成ることから、各平行配線群同士の配線間におけるクロストークノイズを減少させて最小とすることができ、第2の配線層を構成する平行配線群の配線は絶縁層の中央部を取り囲むようにほぼ環状の配線構造をとることとなり、配線間のクロストークノイズを低減させることができるとともに、EMIノイズ対策としても効果を有するものとなり、しかも、第1および第2の平行配線群をそれぞれ第1および第2の絶縁層の外周部に形成した環状磁性体層により取り囲んだことから、積層配線体の内部からわずかに生じる放射ノイズおよび外部から侵入しようとする電磁波ノイズ等のEMIノイズを環状磁性体層によって吸収し効果的に低減させることが可能となる。
【0017】
また、第1および第2の絶縁層に形成された環状磁性体層同士を絶縁層を貫通して形成された貫通磁性体でもって接続した場合には、環状磁性体層間からのEMIノイズの放射や侵入も効果的に低減させることができるものとなる。
【0018】
さらに、この貫通磁性体間の間隔を第1および第2の平行配線群により伝送される高周波信号の波長の4分の1以下の間隔とした場合には、環状磁性体層間からのEMIノイズの放射や侵入をほぼなくすことができ、EMIノイズの影響を極めて有効に低減させることができる。
【0019】
これにより、本発明の多層回路基板によれば、積層配線体により配線間のクロストークノイズを低減させることができるとともに、第1および第2の平行配線群におけるEMIノイズの影響も効果的に低減することができるので、ノイズ発生や高周波信号の伝送損失の発生・搭載される半導体素子等の電子部品の誤動作の発生等を引き起こすことなく、高速で作動する半導体素子等の電子部品を正確かつ安定に動作させることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の多層配線基板について添付図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
【0021】
本発明の多層配線基板の実施の形態の一例を図1〜図5に示す。図1〜図5はそれぞれ本発明の多層配線基板の実施の形態の一例における各絶縁層毎の上面図または下面図であり、図1は上面に集積回路素子を始めとする半導体素子等の電子部品が搭載される第1層目の絶縁層の上面図、図2はその下の第2層目の絶縁層の上面図、図3は第3層目の絶縁層の上面図、図4は第4層目の絶縁層の上面図、図5は第4層目の絶縁層の下面図を示している。
【0022】
これらの図において、I1〜I4はそれぞれ第1層目〜第4層目の絶縁層であり、この例では、第1層目の絶縁層I1は多層配線基板の最上層となり、第4層目の絶縁層I4は最下層となっている。また、Mは第1層目の絶縁層I1の上面、すなわちこの多層配線基板の上面側の表面の中央部に設けられた半導体素子等の搭載領域である。
【0023】
Cは搭載領域Mの下部で第3層目の絶縁層I3の上面に配設されたストリップ線路部の線路導体である。この例では、第3層目の絶縁層I3上の線路導体Cは、第2層目の絶縁層I2の表面に形成された接地導体層GLと、第4層目の絶縁層I4の表面に形成された電源導体層PLとによりストリップ線路部を形成している。また、複数の線路導体Cはそれぞれ接続用の貫通導体群TCを介して多層配線基板表面の搭載領域Mに導出され、搭載される半導体素子等の各端子電極に電気的に接続される。なお、図1〜図5中において、接続用の貫通導体群TCを始めとする各貫通導体はいずれも丸印で示している。
【0024】
GLは第2の絶縁層I2の表面に形成された接地導体層である。この接地導体層GLは、半導体素子等を第1の平行配線群L1に線路導体Cを介して効率よく電気的に接続するための再配列を可能にするとともに、搭載されるデバイスの周波数に応じた接地導体層の面積を最適化し、半導体素子等への電位の供給を安定化させることにより電磁ノイズに対するシールド効果を有するものである。この接地導体層GLは、多層配線基板において第2層目の導体層I2の上面に、下方に形成される各線路導体Cおよび各平行配線群L1・L2の仕様に応じて適宜形成される。このような接地導体層GLを形成することにより、半導体素子等と第1の平行配線群L1との間で接地配線を効率的に接続できるように再配列させることができ、また電磁ノイズに対して良好なシールド効果を有する多層配線基板を得ることができる。
【0025】
また、PLは第4層目の絶縁層I4の表面に形成された電源導体層である。この電源導体層PLは、接地導体層GLと同様に、電源配線を半導体素子等から第1の平行配線群L1に効率よく電気的に接続するための再配列を可能とするものである。この電源配線層PLは、接地導体層GLと同様に、多層配線基板の仕様に応じて適宜形成されるものであり、このような電源導体層PLを形成することにより、半導体素子と第1の平行配線群L1との間で電源配線を効率的に接続できるように再配列させることができる。
【0026】
これら接地導体層GLおよび電源導体層PLは、必要に応じて格子状としてもよく、また電源と接地とを入れ替えて用いてもよいものである。これら各層を接地または電源のいずれに設定するかは多層配線基板の仕様に応じて適宜選択すればよい。
【0027】
なお、接続用の貫通導体群TCはこの接地導体層GLとは電気的に絶縁されてこれらの層を貫通している。
【0028】
次に、L1およびL2はそれぞれ第3および第4の絶縁層I3・I4の上面に形成された第1および第2の平行配線群である。この例では、第3の絶縁層I3の上面に第1の平行配線群L1が、第4の絶縁層I4の上面に第2の平行配線群L2が形成されて、交互に積層されている。また、P1およびP2はそれぞれ第1および第2の平行配線群L1・L2中の電源配線、G1およびG2はそれぞれ第1および第2の平行配線群L1・L2中の接地配線、S1およびS2はそれぞれ第1および第2の平行配線群L1・L2中の信号配線を示している。
【0029】
なお、同じ平面に配設された複数の信号配線S1・S2はそれぞれ異なる信号を伝送するものとしてもよく、同じ平面に配設された複数の電源配線P1・P2はそれぞれ異なる電源を供給するものとしてもよい。
【0030】
また、外部電気回路との接続は、第2の平行配線群L2または第1の平行配線群L1の各配線から外部接続用の貫通導体群TPを介してそれぞれ電気的に接続された、第4層目の絶縁層I4の下面に配設された接続ランドLPに、それぞれ半田バンプ等の接続導体を取着し、これらを外部電気回路の接続電極に電気的に接続することによって行なわれる。なお、これら多数の接続ランドLPのうちLPPは電源配線P1またはP2が接続された電源用接続ランドを、LPGは接地配線G1またはG2が接続された接地用接続ランドを、LPSは信号配線S1またはS2が接続された信号用接続ランドを示している。また、接続ランドLPには必要に応じて接地導体層GL・電源導体層PL・線路導体C等もそれぞれ貫通導体を介して電気的に接続される。
【0031】
第3層目の絶縁層I3上の第1の平行配線群L1は、絶縁層I3の中央部に対応する搭載領域M内に交点を有する、図3中に一点鎖線で示した2本の直線で中心角が略等しくなるように区分された各区分領域において、それぞれ交点側すなわち絶縁層I3の中央部の搭載領域M側に向かう平行配線群で構成されている。ここでは、略正方形状の絶縁層I3の対角線に沿った、交点が搭載領域M内に位置する2本の直線で中心角が約90度になるように区分された4つの区分領域を設定した場合の例を示している。
【0032】
また、第4層目の絶縁層I4上に形成された第2の平行配線群L2は、この各区分領域(図4中にも一点鎖線で示す)においてそれぞれ第1の平行配線群L1の平行配線群と直交する平行配線群で構成されている。そして、ここでは、第2の平行配線群L2のうち各区分領域の平行配線群の電源配線P2および接地配線G2が接続されて、略正方形状の第4層目の絶縁層I4の各辺に平行な配線を有する略正方形状の環状配線を形成している場合の例を示している。
【0033】
そして、これら第1の平行配線群L1と第2の平行配線群L2とは、第3層目の絶縁層I3に形成された貫通導体群Tにより対応する配線同士が適当な箇所において電気的に接続されており、これにより各区分領域毎に直交する平行配線群が形成された積層配線体である平行配線部を構成している。
【0034】
また、この例では第1および第2の平行配線群L1・L2は、信号配線S1・S2に電源配線P1・P2または接地配線G1・G2がそれぞれ隣接するように配設されている。これにより、同じ絶縁層I3・I4上の信号配線S1・S2間を電磁気的に遮断して、同じ平面上の左右の信号配線S1・S2間のクロストークノイズを良好に低減することができる。
【0035】
なお、信号配線S1・S2の配置は、この平行配線群L1・L2内に所望の配線回路を構成するように、多層配線基板の仕様に応じて適宜設定される。
【0036】
また、この例の変形例として、第2の平行配線群L2の信号配線S2の一部に対しては、それに隣接する電源配線として電源導体層PLを利用してもよく、本発明の多層配線基板は、平行配線群とストリップ線路部とを備える場合には、このように変形してもよい。
【0037】
さらに、信号配線S1・S2に必ず電源配線P1・P2または接地配線G1・G2を隣接させることで、信号配線S1・S2間のクロストークノイズを遮断して効果的に低減させることができる。また、同じ平面上の電源配線P1・P2と信号配線S1・S2、ならびに接地配線G1・G2と信号配線S1・S2との相互結合が最大となり、信号配線S1・S2の電流経路を最短にできる。このため、信号配線S1・S2から電源配線P1・P2および接地配線G1・G2へ至るインダクタンス値を減少させることができ、デバイスのスイッチング時の電源ノイズおよび接地ノイズを効果的に低減することができる。
【0038】
なお、このことは、第1の平行配線群L1の下方または第2の平行配線群L2をさらに積層して多層化した場合には、これらの配線層についても同様に該当するものである。
【0039】
本発明の多層配線基板によれば、このように区分領域を設定し、各区分領域においてそれぞれ互いに直交する平行配線群が形成された積層配線体を具備するものとすることにより、第2の平行配線群L2を構成する平行配線群の電源配線P2および接地配線G2は第4層目の絶縁層I4の中央部を取り囲むようにほぼ環状の配線構造をとることとなり、さらに環状に配置される電源配線P2および接地配線G2を最適化することにより外部からのEMIノイズの侵入や外部への不要な電磁波ノイズの放射をシールドする効果を有するものとなり、信号配線間のクロストークノイズを低減させることができるとともに、EMI対策としても効果を有するものとなる。
【0040】
さらに、この第2の平行配線群L2は、図4に示すようにその配線層中の最外周側の環状配線が接地配線G2である場合には、この環状の接地配線G2の面積や貫通導体群との接続を最適化することにより、さらにより効果的にEMIノイズに対してシールド効果を有するものとなり、有効なEMI対策を施すことができる。
【0041】
これら第1の平行配線群L1は第3層目の絶縁層I3上に、すなわちストリップ線路部の複数の線路導体Cと同一面内に形成されており、例えばそのうちの信号配線S1が、信号配線である複数の線路導体Cのそれぞれとその面内で搭載領域Mの周辺において接続されている。また、第2の平行配線群L2は第4層目の絶縁層I4上に形成されており、第1の平行配線群L1とは貫通導体群Tで電気的に接続されている。これにより、搭載領域Mに搭載される半導体素子の各端子電極と第1または第2の平行配線群L1・L2とが、ストリップ線路部を介して電気的に接続されている。
【0042】
このような配線構造とした本発明の多層配線基板によれば、狭ピッチで極めて高密度に配設された半導体素子の入出力電極に接続された配線をストリップ線路部において線路導体Cの配線ピッチ(配線間隔)を拡げ、また信号配線・電源配線・接地配線を再配列して、平行配線群に適した広ピッチの配線に展開し再配列して接続することができるので、平行配線群が有する優れた電気的特性を活かしつつ高密度化された入出力電極を有する半導体素子と効率よく電気的接続を行なうことができる。しかも、ストリップ線路部により、さらには信号配線がすべて展開されるまでこのストリップ線路部を複数積層して設けてそれぞれに対応した平行配線群を併設することにより、半導体素子からの信号配線・電源配線・接地配線を効率よく再配列してその周囲の平行配線群との接続に最適な配線に設定して平行配線群に展開することができるので、半導体素子の高密度化に対応して多層化を図る場合にも、配線設計を最適化してその積層数を低減させることが可能となる。
【0043】
そして、本発明の多層配線基板においては、第3層目および第4層目の絶縁層I3・I4の外周部にそれぞれ環状磁性体層RMを形成して、これら環状磁性体層RMによって第1および第2の平行配線群L1・L2を取り囲んでいる。
【0044】
これにより、多層配線基板に搭載される半導体素子等の電子部品の同時スイッチングにより、電源配線および接地配線の電位が変動してしまうことによって、第1の平行配線群L1中の電源配線P1および接地配線G1の端部において電源配線P1と接地配線G1間の電磁気的な結合からの高周波電流によるEMI(Electro-Magnetic Interference:電磁波妨害)ノイズの自由空間への放射であるいわゆる高周波電流の縁飾りの発生によるEMIノイズの自由空間への放射や、信号配線S1・S2と貫通導体Tとの接続部における特性インピーダンスが不連続なためにこの接続部から放射される電磁波ノイズの自由空間への放射を環状磁性体層RMによって吸収しシールドすることができるとともに、外部からこの積層配線体に侵入しようとするEMIノイズも吸収しシールドすることができ、搭載される半導体素子等について高レベルで安定した電気特性を維持して良好な動作をさせることができるものとなる。
【0045】
このように、環状磁性体層RMを形成する場合、第1および第2の平行配線群L1・L2の周囲を取り囲むようにそれぞれ第3層目および第4層目の絶縁層I3・I4の外周部に配置し、積層配線体においてこれら環状磁性体層RMが大体重なり合うように配置するとよい。また、第2の平行配線群L2の最外周部の配線が環状の電源配線P1の場合であれば、これに対して第1の平行配線群L1と第2の平行配線群L2間の間隔の2倍以上外側に環状磁性体層RMが位置するように配置するとよい。さらに、この環状磁性体層RMの幅はできるだけ広く取る方が効果的であるが、あまりに広く取ると多層配線基板が大型化してしまうことから、第3層目および第4層目の絶縁層I3・I4の外形寸法に対して20%以下、好ましくは15%以下の幅で、所望のEMIノイズ低減効果が得られるような幅、通常は平行配線群の配線導体の幅と同程度かそれ以上の幅に設定すればよい。また、厚みは平行配線群の各配線導体と同程度に設定しておけばよい。
【0046】
さらに、この第3層目および第4層目の絶縁層I3・I4に形成された環状磁性体層RM同士を接続するように、第3層目の絶縁層I3を貫通する貫通磁性体TMを設けてもよい。このように環状磁性体層RM同士を貫通磁性体TMでもって接続することにより、環状磁性体層RMの内側に位置する第1および第2の平行配線群L1・L2に対して疑似同軸構造を構成することとなり、積層配線体内部からのEMIノイズの放射および外部からのEMIノイズの侵入を環状磁性体層RM間でも吸収してシールドすることができる。さらにまた、この貫通磁性体TM間の間隔を第1および第2の平行配線群L1・L2中の信号配線S1・S2により伝送される高周波信号の信号波長の4分の1以下に設定しておくことにより、EMIノイズのうちでも高周波信号に大きな影響を与える電磁波ノイズがこれら貫通磁性体TM間を通過するのを確実に防止することができる。
【0047】
以上のような構成の本発明の多層配線基板によれば、積層配線体の内部からのEMIノイズの自由空間への放射および外部からのEMIノイズの侵入をより効果的に防止することができる。
【0048】
このような環状磁性体層RMおよび貫通磁性体TMを形成するための磁性体材料の特性としては、多層配線基板に搭載される半導体素子等の動作によって第1および第2の平行配線群L1・L2に励起される磁界によっては飽和しない飽和磁束密度を有するものが好ましく、このような磁性体材料としては例えばセンダストやフェライト等を用いればよい。また、環状磁性体層RMおよび貫通磁性体TMには、磁性体材料とともに平行配線群の配線導体と同様の各種の導体材料あるいは二酸化ルテニウムやランタンボライト・酸化スズ・ニクロム・銀パラジウム等の各種の抵抗体材料等を含有させてもよく、所望の磁性とともに所望の導電性や抵抗値を持たせるようにしてもよい。
【0049】
また、これら環状磁性体層RMおよび貫通磁性体TMを形成する方法としては、例えば磁性体ペーストを所定のパターンに印刷塗布し貫通孔に充填する厚膜印刷法や、所定形状の磁性体箔を貼付もしくは転写する方法、あるいはスパッタリング法により磁性体膜を被着させる方法等がある。
【0050】
本発明の多層配線基板においては、平行配線部を構成する各区分領域の設定として上述の例の他にも、第3層目および第4層目の絶縁層I3・I4の中央部に対応する搭載領域M内に交点を有する、略正方形状の各絶縁層I3・I4の辺のほぼ中央を通る辺に平行な直線に沿った2本の直線で中心角が約90度になるように区分された4つの区分領域を設定してもよく、3本の直線で中心角が約60度と略等しくなるように区分された6つの区分領域を設定してもよく、さらに、4本の直線で中心角が約45度と略等しくなるように区分された8つの区分領域を設定してもよい。
【0051】
これらいずれの場合であっても、上述の例と同様に、同じ平面上の左右の信号配線S1・S2間だけでなく上下層の平行配線群が直交しているため上下層間のクロストークノイズを良好に低減することができ、信号配線S1・S2の電流経路を最短にできる。このため、信号配線S1・S2から電源配線P1・P2および接地配線G1・G2へのインダクタンス値を減少させることができ、デバイスのスイッチング時電源ノイズおよび接地ノイズを効果的に低減することができる。また、第1および第2の平行配線群L1・L2に対して環状磁性体層RMを設けることによってEMIノイズの影響の低減が行なえるとともに、第2の平行配線群L2を構成する平行配線群の電源配線P2および接地配線G2がそれらが形成された絶縁層の中央部を取り囲むように環状の配線構造をとっている場合には、これら電源配線P2および接地配線G2を最適化することにより、これによっても外部からのEMIノイズの侵入や外部への不要な電磁波ノイズの放射をシールドする効果を持たせることができ、信号配線間のクロストークノイズを低減させることができるとともに、より十分なEMI対策としての効果をも持たせることができる。
【0052】
このような本発明の多層配線基板には、例えばその表面にMPU(Micro Processing Unit)・ASIC(Application Specific Integrated Circuit)・DSP(Digital Signal Processor)のような半導体素子等の電子部品が搭載される。そして、半導体素子収納用パッケージ等の電子部品収納用パッケージや電子部品搭載用基板、多数の半導体集積回路素子が搭載されるいわゆるマルチチップモジュールやマルチチップパッケージ、あるいはマザーボード等として使用される。これらの電子部品は、例えばいわゆるバンプ電極によりこの多層配線基板の表面に実装されて、あるいは接着剤・ろう材等により搭載部に取着されるとともにボンディングワイヤ等を介して、貫通導体等により第1または第2の平行配線群L1・L2と電気的に接続される。なお、図1〜図5において、外部電気回路との接続部ならびに搭載される半導体素子等の電子部品との接続部は図示していない。
【0053】
貫通導体群T・TC・TPは、ここでは例えば絶縁層I3を貫通して上下の配線同士を、あるいは配線と半導体素子または多層配線基板の表面に形成される外部接続端子等とを電気的に接続するものであり、通常はスルーホール導体やビア導体等が用いられ、接続に必要な箇所に形成される。
【0054】
本発明の多層配線基板においては、積層配線体の上下には種々の配線構造の多層配線部を積層して多層配線基板を構成することができる。例えば、積層配線体と同様に平行配線群を直交させて積層した構成の配線構造、あるいはストリップ線路構造の配線構造、その他、マイクロストリップ線路構造・コプレーナ線路構造等を多層配線基板に要求される仕様等に応じて適宜選択して用いることができる。
【0055】
また、例えば、ポリイミド絶縁層と銅蒸着による導体層といったものを積層して、電子回路を構成してもよい。また、チップ抵抗・薄膜抵抗・コイルインダクタ・クロスコンデンサ・チップコンデンサ・電解コンデンサといったものを取着して半導体素子収納用パッケージを構成してもよい。
【0056】
また、各絶縁層の形状は、図示したような略正方形状のものに限られるものではなく、長方形状や菱形状・多角形状等の形状であってもよい。
【0057】
なお、第1および第2の平行配線群L1・L2は、各絶縁層の表面に形成するものに限られず、それぞれの絶縁層の内部に形成したものであってもよい。
【0058】
本発明の多層配線基板において、第3層目および第4層目の絶縁層I3・I4を始めとする各絶縁層は、例えばセラミックグリーンシート積層法によって、酸化アルミニウム質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体・炭化珪素質焼結体・窒化珪素質焼結体・ムライト質焼結体・ガラスセラミックス等の無機絶縁材料を使用して、あるいはポリイミド・エポキシ樹脂・フッ素樹脂・ポリノルボルネン・ベンゾシクロブテン等の有機絶縁材料を使用して、あるいはセラミックス粉末等の無機絶縁物粉末をエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂で結合して成る複合絶縁材料等の電気絶縁材料を使用して形成される。
【0059】
これら絶縁層は、それぞれの絶縁層の特性に応じて、グリーンシート積層法やビルドアップ法等の方法により所望の多層配線基板を構成するように形成すればよい。これら絶縁層の厚みとしては、使用する材料の特性に応じて、また要求される仕様に対応する機械的強度や電気的特性・貫通導体群の形成の容易さ等の条件を満たすように適宜設定される。
【0060】
第1および第2の平行配線群L1・L2、その他の配線層ならびに貫通導体群T・TC・TP等は、例えばタングステンやモリブデン・モリブデン−マンガン・銅・銀・銀−パラジウム等の金属粉末メタライズ、あるいは銅・銀・ニッケル・クロム・チタン・金・ニオブやそれらの合金等の金属材料の薄膜等から成る。
【0061】
これら配線導体および貫通導体は、それぞれの材料の特性や絶縁層への形成方法に従って、例えば厚膜印刷法により、あるいはスパッタリング法・真空蒸着法またはメッキ法により金属層を形成した後フォトリソグラフィ法により、所定のパターン形状・大きさに設定されて形成され、各絶縁層に配設される。
【0062】
第1および第2の平行配線群L1・L2の各配線の幅および配線間の間隔は、使用する材料の特性に応じて、要求される仕様に対応する電気的特性や各絶縁層への配設の容易さ等の条件を満たすように適宜設定される。
【0063】
なお、各平行配線群L1・L2の厚みは1〜20μm程度とすることが好ましい。この厚みが1μm未満となると配線の抵抗が大きくなるため、配線群による半導体素子への良好な電源供給や安定したグランドの確保・良好な信号の伝搬が困難となる傾向が見られる。他方、20μmを超えるとその上に積層される絶縁層による被覆が不十分となって絶縁不良となる場合がある。
【0064】
貫通導体群T・TC・TPの各貫通導体ならびに貫通磁性体TMは、横断面形状が円形のものの他にも楕円形や正方形・長方形等の矩形、その他の異形状のものを用いてもよい。その位置や大きさは、使用する材料の特性に応じて、要求される仕様に対応する電気的特性や絶縁層への形成・配設の容易さ等の条件を満たすように適宜設定される。
【0065】
例えば、絶縁層にガラスセラミックスを用い、平行配線群に銅を主成分とする導体材料を用いた場合であれば、絶縁層の厚みを100μmとし、配線の線幅を100μm、配線間の間隔を100μm、貫通導体の径を100μmとすることによって、信号配線のインピーダンスを50Ωとし、上下の平行配線群間を高周波信号の反射を抑えた接続をすることができる。
【0066】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。例えば、上述の実施例では本発明を半導体素子を搭載する多層配線基板として説明したが、これを半導体素子を収容する半導体素子収納用パッケージや、あるいはマルチチップモジュールに適用するものとしてもよい。また、絶縁層として放熱を考慮した窒化アルミニウム質焼結体・炭化珪素質焼結体や、低誘電率を考慮したガラスセラミックス質焼結体を用いたものとしてもよい。
【0067】
【発明の効果】
本発明の多層回路基板によれば、第1および第2の平行配線群を各区分領域において互いに直交配置して上下に積層し、貫通導体群で電気的に接続して成る積層配線体を具備して成ることから、各平行配線群同士の配線間におけるクロストークノイズを減少させて最小とすることができ、第2の配線層を構成する平行配線群の配線は絶縁層の中央部を取り囲むようにほぼ環状の配線構造をとることとなり、配線間のクロストークノイズを低減させることができるとともに、EMIノイズ対策としても効果を有するものとなり、しかも、第1および第2の平行配線群をそれぞれ第1および第2の絶縁層の外周部に形成した環状磁性体層により取り囲んだことから、積層配線体の内部からわずかに生じる放射ノイズおよび外部から侵入しようとする電磁波ノイズ等のEMIノイズを環状磁性体層によって吸収し効果的に低減させることが可能となる。
【0068】
また、第1および第2の絶縁層に形成された環状磁性体層同士を絶縁層を貫通して形成された貫通磁性体でもって接続した場合には、環状磁性体層間からのEMIノイズの放射や侵入も効果的に低減させることができるものとなり、さらに、この貫通磁性体間の間隔を第1および第2の平行配線群により伝送される高周波信号の波長の4分の1以下の間隔とした場合には、環状磁性体層間からのEMIノイズの放射や侵入をほぼなくすことができ、EMIノイズの影響を極めて有効に低減させることができる。
【0069】
以上により、本発明によれば、直交させて積層された平行配線群で構成され、同一層内および上下層間における配線間のクロストークを低減させる配線構造を有しつつ、さらにEMIノイズの影響を低減させることができる、高速で作動する半導体素子等の電子部品を搭載する電子回路基板等に好適な多層配線基板を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層配線基板の実施の形態の一例を示す、第1層目の絶縁層の上面図である。
【図2】本発明の多層配線基板の実施の形態の一例を示す、第2層目の絶縁層の上面図である。
【図3】本発明の多層配線基板の実施の形態の一例を示す、第3層目の絶縁層の上面図である。
【図4】本発明の多層配線基板の実施の形態の一例を示す、第4層目の絶縁層の上面図である。
【図5】本発明の多層配線基板の実施の形態の一例を示す、第4層目の絶縁層の下面図である。
【符号の説明】
I1〜I4・・・・第1層目〜第4層目の絶縁層
L1、L2・・・・第1、第2の平行配線群
P1、P2・・・・第1、第2の電源配線
G1、G2・・・・第1、第2の接地配線
S1、S2・・・・第1、第4の信号配線
T・・・・・・・・貫通導体群
RM・・・・・・・環状磁性体層
TM・・・・・・・貫通磁性体
Claims (4)
- 第1の絶縁層に形成され、該第1の絶縁層の中央部に交点を有する2〜4本の直線で中心角が略等しくなるように区分された各区分領域においてそれぞれ前記交点側に向かう第1の平行配線群と、前記第1の絶縁層に積層された第2の絶縁層に形成され、前記各区分領域においてそれぞれ前記第1の平行配線群と直交する第2の平行配線群と、前記第1および第2の平行配線群を電気的に接続する貫通導体群とから成る積層配線体を具備して成り、前記第2の平行配線群は前記各区分領域の平行配線群の配線が接続されてなる環状配線を構成し、前記第1および第2の平行配線群はそれぞれ前記第1および第2の絶縁層の外周部に形成した環状磁性体層により取り囲まれていることを特徴とする多層配線基板。
- 前記第1および第2の絶縁層に形成された前記環状磁性体層同士が貫通磁性体で接続されていることを特徴とする請求項1記載の多層配線基板。
- 前記貫通磁性体間の間隔が前記第1および第2の平行配線群により伝送される高周波信号の波長の4分の1以下であることを特徴とする請求項2記載の多層配線基板。
- 前記第1および第2の平行配線群は、それぞれ複数の信号配線と、各信号配線に隣接する電源配線または接地配線とを有することを特徴とする請求項1記載の多層配線基板。
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