JP3783681B2 - 作業車両 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば建設機械や運搬車、農作業機械等の移動車両に関し、車軸回りを覆う車輪支架装置の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車体の前部に左右方向へ突設する車軸ケースを設け、該車軸ケースに車輪を駆動する車軸を挿通すると共に、前記車軸ケースの左右突出端にギアケースを介して車輪を取り付ける移動車両があった。例えば、農業用のトラクタは、前部にエンジンを載置するブラケットを設け、このエンジン下方に左右方向に突設する車軸ケースを上下揺動自在に設け、これに前輪を駆動する車軸を挿通すると共に、車軸ケースの突設端にギアケースを介して前輪を取り付けている。そして、前記車軸ケース、またはギアケース内には、内部のギア部品を円滑に作動させるために潤滑油が充填されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の技術の移動車両においては、各種作業の種類に応じて重量の異なる作業機を装着して作業を行うが、この際、車両の前後バランスを良好に保つことが必要であり、このため車体の前部にウエイトを着脱自在に取り付けて車体の安定性を確保していた。しかしながら、このウエイトを着脱可能に構成すると、この着脱に非常に労力を必要とし、またウエイトを車体の一部、例えばバンパー等に固定すると、強固な支持部材が必要となったり、車両の外観に影響を及ぼしたり、法的な規制から種々の制約を受けていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような課題を解消するために、次のような技術的手段を講じた。即ち、車軸ケース(2F)の中央内部に前輪デフ機構(30)を設け、ミッションケース(13)内に設けた変速装置(15)から取り出した回転動力を伝導軸(31)を介してこの前輪デフ機構(30)に伝達するように構成し、
前記車軸ケース(2F)の内側には前記前輪デフ機構(30)の左右に車軸(4F,4F)を設けると共に、この車軸ケース(2F)の先端部には内部に中継軸(35)、ベベルギヤ(36,37,38)群を経由して前記車軸(4F,4F)からの回転動力を伝達して前輪(3F,3F)を駆動する前輪用ギヤケース(5F)を設ける作業車両において、
車軸ケース(2F)と前輪用ギヤケース(5F)との間に中間車軸ケース(2N)を設け、この中間車軸ケース(2N)の内壁に車軸(4F,4F)に近接しかつ下部に溝状の油路(7)を上部に溝状の空気路(33)を夫々形成する厚肉部(6,6)を設けたことを特徴とする移動車両とした。
【0005】
【発明の効果】
この発明は以上の如く構成したので、中間車軸ケース(2N)内の厚肉部(6,6)は前輪荷重を増大させるウェイトの効果を果たし、これらは中間車軸ケース(2N)内に設けるので、従来のようにウェイトが機体前方に大きく突出して美観を損ねたり法的規制も受けることがなく、更に着脱に労力を要することもない。また、機体後部に作業機を装着したときの前後バランスも良好に維持して車体の安定性を十分確保できる。
また、既存の車軸ケース(2F)を用いて、中間車軸ケース(2N)の装着により、トレッドの調整とウエイト調整を同時に行うことができる。
【0006】
【実施例】
次に移動車両の一例として農用トラクタ(以下、トラクタ)の場合を説明する。トラクタ10は、車体前部にブラケット9を設け、ブラケット9上部にエンジン11を設け、このエンジン11からクラッチハウジング12、ミッションケース13、及びリアミッションケース14等を車体前後方向に一体的に連結し車体の剛体主要部としている。ミッションケース13は、例えば鋳物製の重量物等で構成され、ミッションケース13の内部にトラクタの変速装置15が設けられ、エンジン11からの回転動力を変速装置15にて適宜減速し前輪3F、または後輪3Rへ伝達している。前記ミッションケース13の前部下方には、車輪支架装置として、車体左右方向に設けられた前輪用の車軸ケース2Fと、この車軸ケース2Fの先端部に前輪用ギアケース5Fとが設けられている。これに前輪3Fを設けている。また、前記リヤアクスルハウジング14の左右両端部には後輪3Rが設けられている。前記エンジン11の周囲はボンネット17で覆われ、このボンネット17の後方にステアリング18、シート19、変速レバー20等からなる操縦部を構成している。
【0007】
トラクタ10の油圧昇降系の構成について説明すると、前記リヤミッションケース14の後部上面には、シリンダーケース21が設けられ、このシリンダーケース21内の油圧ピストン22を伸縮することにより左右に枢支されたリフトアーム23・23を上下回動する構成となっている。また、リヤミッションケース14の後部には、トップリンク24と左右ロアリンク25・25からなる3点式リンク機構を設け、この3点式リンク機構に各種作業機を連結する構成となっている。図3では、車体後部にロータリ作業機1を連結している。
【0008】
前記前輪用の車軸ケース2Fは、前記ミッションケース13と同様に鋳物製の重量物で構成され、前記ブラケット9の下方に左右揺動自在に設けられている。車軸ケース2Fの中央内部には前輪デフ機構30が設けられ、前記変速装置15から取り出した回転動力を伝導軸31を介して、この前輪デフ機構30へ伝達している。前輪デフ機構30の左右からは前輪3Fを駆動する車軸4Fが、車軸ケース2Fの中空部を挿通して設けられている。この車軸4Fの左右先端部には、車軸ケース2Fより突出した状態でべベルギア32を取り付け、このべベルギア32の周囲を車軸ケース2Fの突出端に取り付けられた前輪用ギアケース5Fで覆っている。また、前輪用車軸ケース2Fの上部には、潤滑油を充填するための給油口34が設けられている。そして、車軸ケース2Fの内部には、前記車軸4Fに近接する状態でウェイトとなる厚肉部6を設けている。これにより、従来の前輪用車軸ケースと比較すると車軸ケース自体の重量が増加するようになっている。また、図2のように、車軸ケース2Fの断面形状は、この厚肉部6の下部に溝状の油路7が設けられ、上部にも溝状の空気路33を設けている。これにより、後述する前輪用ギアケース5F内へ遅滞無く潤滑油を充填することができる。
【0009】
前記前輪用ギアケース5Fは、車軸ケース2Fの左右両端に、正面視、下方やや外側へ開いた状態で取り付けられ、内部に中継軸35を設け、この中継軸35の上下端には、上部べベルギア36と下部べベルギア37が設けられている。そして、前記車軸4Fの先端部のべベルギア32と上部べベルギア36が噛合し、下部べベルギア37と前輪3Fと一体に設けられた前輪べベルギア38と噛合し、車軸4Fからの回転動力を前輪3Fへ伝達し駆動する構成となっている。前記油路7は、ギアケース5Fと車軸ケース2Fの当接面にて、ギアケース5Fに連通して設けられている。よって、前記給油口34から投入された潤滑油は、油路7を通りギヤケース5Fの内部に落ちこんでギアケース5Fと前輪車軸ケース2F内に充填される構成となっている。
【0010】
このように、トラクタ10の前輪用車軸ケース2Fに厚肉部6を設けたことで、ウエイトを車体前部に設けることと同様の効果を生じ、車体の後部に重量負荷が掛った場合でも車体の前後バランスを確保することができる。また、車軸ケース2F内部に厚肉部6を設け、この厚肉部6に油路7と空気路33を設けたことにより、潤滑油を充填する際、内部の空気が空気路33に押し出され、潤滑油を遅滞無くギアケース5F、及び車軸ケース2Fに充填することが可能となった。
【0011】
また、この発明の実施例として、図4に示されるように車軸ケース2Fとギアケース5Fとの間に中間車軸ケース2Nを設け、この中間車軸ケース2Nの内壁にだけ前記厚肉部6を形成している。これにより、既存の車軸ケース2Fを用いて、トレッドの調整とウエイト調整を同時に行うことが可能としている。
また、図5に示す例は、この車軸4Fを管状に構成し、この一部に挿通孔40を開口し、この挿通孔40と車軸4Fの管内41を通じて前記ギアケース5Fに潤滑油、または空気が挿通可能なように構成しても良い。
【0012】
これにより、前記車軸を4Fを従来の中空状でない車軸と比較して、より迅速に潤滑油を充填することができる。尚、特許請求の範囲に実施例の構成に対応する符号を付すが、この符号によりこの発明を実施例の構成に限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】前輪用車軸ケースの左右断面全体図。
【図2】図1のA−A線の断面図。
【図3】トラクタの全体側面図。
【図4】中間車軸ケースを設けた前輪用車軸ケースの左右断面全体図。
【図5】車軸を管状に形成した前輪用車軸ケースの左右断面全体図。
【図6】車軸ケースの前輪デフ装置部の側面断面図。
【符号の説明】
1 作業部
2 車軸ケース
2F 前輪用車軸ケース
2N 中間車軸ケース
3 車輪
3F 前輪
3R 後輪
4 車軸
5 ギアケース
6 厚肉部
7 油路
10 トラクタ
33 空気路

Claims (1)

  1. 車軸ケース(2F)の中央内部に前輪デフ機構(30)を設け、ミッションケース(13)内に設けた変速装置(15)から取り出した回転動力を伝導軸(31)を介してこの前輪デフ機構(30)に伝達するように構成し、
    前記車軸ケース(2F)の内側には前記前輪デフ機構(30)の左右に車軸(4F,4F)を設けると共に、この車軸ケース(2F)の先端部には内部に中継軸(35)、ベベルギヤ(36,37,38)群を経由して前記車軸(4F,4F)からの回転動力を伝達して前輪(3F,3F)を駆動する前輪用ギヤケース(5F)を設ける作業車両において、
    車軸ケース(2F)と前輪用ギヤケース(5F)との間に中間車軸ケース(2N)を設け、この中間車軸ケース(2N)の内壁に車軸(4F,4F)に近接しかつ下部に溝状の油路(7)を上部に溝状の空気路(33)を夫々形成する厚肉部(6,6)を設けたことを特徴とする移動車両。
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