JP3782083B2 - 建物基礎構造 - Google Patents
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Description
前記直接基礎は、強固な地盤上に建てる場合によく用いられる基礎で、建築物の基礎版を基礎地盤上に直に設置して荷重を支持させるものであり、杭基礎に比べてコストが易く上がる特徴がある。しかし、地盤状況によっては不等沈下を発生することもある。
前記杭基礎は、軟弱な地盤上に建てる場合によく用いられる基礎で、地上から支持地盤まで基礎杭を打設して、その杭上に建築物を支持させる状態に築くものであり、不等沈下等を発生する危険性は極めて低い。しかし、杭施工に伴うコストが掛かり、直接基礎に比べて建設費がかさみ易い。
そして、これら両基礎の短所を補うものとして、直接基礎と杭基礎とを併用したものが開発され(例えば、特許文献1、特許文献2参照)、直接基礎によって杭基礎への荷重分担を減少させる一方、不等沈下に関しては杭基礎で支持すると言うものがあった。
また、地盤の沈下が進行すると、杭基礎での支持力分担が増加すると同時に直接基礎での支持力が減少し、それに伴って、地震時の杭の曲げ負担力も増加することとなり、上述の問題点は更に大きなものとなる。
また、この様な作用は、地盤の沈下が進行しても期待することができる。そして、最終的に基礎版下面と基礎杭頭部との間の前記隙間が無くなるまで、言い換えれば、基礎版下面が基礎杭頭部に接するまで沈下が進行すると、それ以後は、杭基礎による鉛直支持力によって不等沈下を防止した状態での建物支持が実現され、適切な支持力を維持することができる。また、基礎版下面と基礎杭頭部とは接当しているだけの構造であるから、相対的に横ずれすることが可能で、地震時の横揺れのエネルギーが接当部分に集中し難くすることが可能で、基礎杭の負担軽減を図ることができる。
以上の結果、基礎杭に余分な横揺れ力が作用するのを防止できるようになり、最小限の構造に設計すればよく、基礎杭そのものの材料コストの低減、及び、施工コストの低減を共に叶えることが可能となる。
そして、圧密沈下が生じている間においては直接基礎によって基礎地盤と基礎版との強い摩擦力が得られ、直接基礎による荷重分担を最大限に発揮させることができる。従って、その後、建物荷重を支持することとなる杭基礎は、最小限の支持力を受け持つだけでよくなり、基礎杭の更なる低材料コスト化と、杭基礎全体とした施工コストの更なる低減化とを共に叶えることが可能となる。
建築物Bは、図に示すように、最下面部分に基礎版B1を設け、その下方に、隙間Sをあけて複数の基礎杭B2が打設してある。
即ち、前記基礎版B1による直接基礎と、前記基礎杭B2による杭基礎との両方を備えさせてある。また、前記基礎杭B2は、建築物Bの柱Pの直下に配置してある。
前記基礎版B1は、鉄筋コンクリート造によって形成してあり、前記基礎杭B2の頭部1の直上に位置する部分は、図に示すように、金属製の捨て型枠2が埋設してあり、竣工時において前記基礎杭B2の頭部1との間に、正確な離間寸法の隙間Sを確保できるように構成してある。
前記捨て型枠2は、金属板2aの上面に山形鋼で構成した補強枠2bを間隔をあけて溶接によって一体化してあり、この補強枠2bによって捨て型枠2の剛性を高め、下面の平坦性が向上するように構成してある。
また、基礎版B1を支える基礎地盤Gは、繰り石G2、捨てコンG1によって表層部分を構成し、その下方に土層G3が位置している。
そして、頭部1は、モルタル仕上げによって、平坦に仕上げてある。
基礎杭B2は、前記基礎版B1との間に、前記隙間Sが設けられており、建築物の竣工時においては、互いは接触しない状態に設置されている。更には、前記基礎杭B2の上面は、前記基礎版B1を支持する基礎地盤G面より下方に位置させてある。
従って、地震に伴う横揺れが作用した場合、直接基礎の作用として、建築物Bは、基礎地盤Gとの摩擦抵抗によって拘束されるものの、前記基礎杭B2とは相対的に横移動自在な位置関係にあるから基礎杭B2とは直接的な力の伝達は行われない。よって、基礎杭Bには、地震時の建築物Bとの係わりによる曲げ力は作用しない。
但し、建築物Bの建築に伴って、即時沈下が生じるため、建設時における基礎杭B2頭部1と基礎版B1との離間寸法は、上述の10mmに加えて即時沈下量を加えた寸法を確保するものである。そして、建築物が立ち上がるに伴って即時沈下が生じ、前記隙間Sも小さくなり、竣工時においては前記隙間Sが10mmとなるように構成されている。
そして、この隙間Sの設定に当たっては、最終的に基礎版B1で支持する支持力と、基礎杭B2で支持する支持力とを予め設定しておき、前記隙間Sに相当する沈下が生じて建築物Bの重量が基礎版B1と基礎杭B2との両方に伝わるようになった時点で、それぞれの支持力が、前記設定値となるように解析されて求められている。
因みに、基礎版B1による支持力と、基礎杭B2による支持力との比率の一例を示すと、例えば、7:3と言う値が挙げられる。また、支持地盤が圧密沈下を生じる地盤で構成されている場合には、前記隙間Sの解析値としては、最終圧密沈下量の1〜2割程度になることが多い。
尚、前記隙間Sは、建築物Bとその周辺との間での設備配管の維持が図れる範囲の落差内に設定されていれば、設備維持を図る上で、より好ましい。
また、基礎版B1は、基礎杭B2の上に接当しているに過ぎないから、相対的な横移動が可能で、この構造によって、地震の横揺れによる曲げ力が基礎杭B2の頭部1にのみ集中的に作用するのを緩和することができる。
以下に他の実施の形態を説明する。
〈2〉 本発明の建築基礎構造に係わる基礎杭は、先の実施形態で説明した深層撹拌混合工法によって形成した場所打ち杭に限るものではなく、例えば、他の工法によって形成した場所打ち杭であったり、予め形成された基礎杭を、打設や立込によって設置する方式のものであってもよく、それらを含めて基礎杭と総称する。
〈3〉 本発明の建築基礎構造に係わる前記基礎版B1と基礎杭B2との隙間Sは、先の実施形態で説明した10mmと言う値に限るものではなく、予め設定する基礎版B1と基礎杭B2との支持力の割合や、対象とする地盤によって異なった値が設定される。そして、支持地盤が圧密沈下を伴う地盤である場合には、例えば、建築物Bの最終圧密沈下量に設定してあってもよく、この場合は、建築物Bの最終圧密沈下が終了する時期に杭基礎が有効となり、最終的な不等沈下の抑制を図ることが可能となる。
また、圧密沈下が生じている間においては直接基礎によって基礎地盤と基礎版との強い摩擦力が得られ、直接基礎による荷重分担を最大限に発揮させることができる。従って、その後、建物荷重を支持することとなる杭基礎は、最小限の支持力を受け持つだけでよくなり、基礎杭の更なる低材料コスト化と、杭基礎全体とした施工コストの更なる低減化とを共に叶えることが可能となる。
前記圧密沈下量の算出に関しては、各種方法を採用することができる。
また、基礎杭B2の頭部に、上下方向に弾性変形自在な弾性体を設け、その弾性体と基礎版B1との間に、前記隙間Sを形成するような構造を採用することも可能で、この場合は、建築物の沈下に伴って前記隙間Sが0となった後も、基礎杭B2に急激な荷重が作用するのを、前記弾性体の圧縮変形によって緩和することが可能となる。
B 建築物
B1 基礎版
B2 基礎杭
G 基礎地盤
S 隙間
Claims (3)
- 建築物の基礎版と、その下方に、不等沈下抑制となる基礎杭を設けてある建物基礎構造であって、前記建築物の少なくとも竣工時において、前記基礎版下面と、すべての前記基礎杭の頭部との間に、建築物支持地盤の最終圧密沈下量以下に設定された隙間を設けてあり、前記基礎杭は、前記基礎版下面が基礎杭頭部に接するまで前記建築物が沈下したとき建物を支持するように設置してある建物基礎構造。
- 前記建築物と前記基礎杭とは、相対的に横移動自在な位置関係に設けてある請求項1に記載の建物基礎構造。
- 前記基礎杭の上面は、前記基礎版を支持する基礎地盤面より下方に位置させてある請求項1又は2に記載の建物基礎構造。
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