JP3781461B2 - 減衰力可変式油圧緩衝器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、緩衝器が発生するダンパの減衰力を可変制御できるようにした油圧緩衝器に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車や自動二輪車等の車両に用いられる緩衝器では、走行条件等によってダンパ減衰力を自由に可変制御できることが望ましい。
【0003】
そこで従来、例えば図8に示す減衰力可変式油圧緩衝器60が採用されている。この緩衝器60は以下のように構成されている。シリンダ61内をピストン62により上,下油室63,64に画成し、該ピストン62に形成された副油室62b内に上記両油室63,64を連通する主通路62aを開閉する主弁65を配設する。そして該副油室62bに逆止弁62cを介して上記上,下油室63,64の圧力の高い側を連通させるとともに、該副油室62b内の圧力を逃がすパイロット通路62dをパイロット弁66で開閉可能とし、かつ該パイロット弁66の閉方向付勢力を電磁コイル67で調節可能とする。
【0004】
この従来の緩衝器60では、走行条件等に応じて上記電磁コイル67への通電量を制御することにより、パイロット弁66のパイロット通路62dの閉力、ひいては主弁65の閉方向力が制御され、その結果、作動油が主弁65と主通路62aの弁座との開隙間を通って流れる際のダンパ減衰力が可変制御される。
【0005】
ところがこの緩衝器60の場合、主弁65がその移動方向に振動し、圧力変動が発生し易いという問題がある。そこで主弁65内にダンプリング70を相対的にスライド自在に挿入配置し、該ダンプリング70と主弁スライド孔62fとで囲まれた空間をダンピング室71としたものがある。
【0006】
上記緩衝器60では、上記ダンピング室71内の作動油が主弁65の開閉動作に伴って該ダンプリング70と主弁65との摺動面間の隙間(オリフィス)aを通って流動することにより主弁65に働く主弁減衰力が発生し、これにより主弁65の振動が抑制される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが上記従来の緩衝器では、ダンピング室71内の作動油が上記オリフィスaを流動する際に発生する主弁減衰力は、主弁65のストローク量(開度)と無関係に常に一定であることから、主弁65の開度が小さく振動が発生し易い状態だけでなく、主弁65の開度が全開に近い振動の発生しにくい状態でも上記主弁減衰力が作用する等、不必要な場合にも主弁減衰力が作用するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、振動の発生(圧力変動)を抑制しながら応答性を向上できる減衰力可変式油圧緩衝器を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、シリンダ内を2つの主油室に画成するピストンに、該2つの主油室を連通する主通路を開閉する主弁と、該主弁に高圧側の主油室内の圧力を閉方向に作用させる副油室と、該副油室と低圧側の主油室内とを連通するパイロット通路を開閉可能に配設され、副油室内の圧力が設定圧を越えると上記パイロット通路を開いて上記副油室から低圧側主油室に作動油を逃がすことにより上記主弁への閉方向力を変化させるパイロット弁と、上記設定圧を可変制御する設定圧可変手段とを備えた減衰力可変式油圧緩衝器において、作動油を、上記副油室内と、上記主弁の移動に伴って容積が変化するダンピング室との間でオリフィスを介して流動させることにより主弁に働く減衰力(主弁減衰力)を発生させ、もって主弁の振動を抑制するダンピング機構を設け、上記主弁の開度が小さい領域にあるときの上記オリフィスの長さを開度が大きい領域にあるときの上記オリフィスの長さより大きくすることにより、上記開度が小さい領域にあるときの上記主弁減衰力を開度が大きい領域にあるときの主弁減衰力より大きく設定したことを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、上記主弁減衰力を、主弁の開度が上記小さい領域にあるときに零から所定開度までは一旦増加させて該大きさに保持し、さらに開度が増加するに伴って減少させたことを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1〜図7は請求項1,2の発明の一実施形態による減衰力可変式油圧緩衝器を説明するための図であり、図1は上記緩衝器が採用された懸架装置の模式図、図2は上記緩衝器の要部の断面側面図、図3は上記緩衝器のパイロット弁部分を示す図、図4,図5,図7は上記緩衝器の作用効果を説明するための特性図、図6はダンピング機構部分の拡大図である。
【0012】
図において、1は本実施形態緩衝器が採用された懸架装置であり、該懸架装置1は、車輪2が軸支されたサスペンションアーム3を車体4により上下揺動自在に枢支し、該アーム3と車体4との間にコイルスプリング5,及び緩衝器6を介設した構造のものである。
【0013】
上記緩衝器6は、下端部が上記サスペンションアーム3に連結されたシリンダ7内をピストン9により上,下主油室7a,7bに画成してなり、該ピストン9に接続されたピストンロッド10の上端部が上記車体4に連結されている。そして、上記車輪2の上下動によりピストン9がシリンダ7内を相対的に上下移動することにより所定の減衰力が発生するようになっている。
【0014】
また、上記ピストン9のシリンダ7に対する相対移動速度や位置、及び車両の走行速度,操舵角,加減速度等の走行条件を示すデータを検出するセンサ11と、上記走行条件に応じて上記緩衝器6の減衰特性を予め設定されたパターンに基づいて制御する制御装置(コントローラ)12とが設けられている。ここで上記減衰力特性としてユーザーの好みのものを手動スイッチ等により上記制御装置12に適宜入力するようにしても良い。なお、13は上記制御装置12と緩衝器1とを接続する電気配線である。
【0015】
上記ピストン9は、図2に示すように、上端にピストンロッド10が一体形成され、下端が開口した筒状の外ケース14と、この外ケース14内に下端開口から順に装填された上ボデー15,中間ボデー16,及び下ボデー17とを備えており、該下ボデー17を外ケース14の下端開口内に螺挿することにより一体化されている。
【0016】
上記下ボデー17の軸芯には主弁挿入穴17aが形成されており、該挿入穴17a内には主弁18が上下にスライド可能に装填されている。また該下ボデー17及び上記外ケース14には、上記上主油室7aと下主油室7bとを連通する主油路19が形成されており、この主油路19の下主油室7bへの開口19aは、上記主弁18が下降位置にある時に閉じ、上昇位置にある時に開くようになっている。
【0017】
上記主弁18は、上部に凹室18aを有し、下部が略きのこ形に形成された略有底円筒状のものであり、その外周面にテーパ状に形成されたシール面18bが上記開口19aの周縁(弁座)に当接するよう構成されており、該主弁18のシール面18bより下側部分に上記下主油室7bの圧力が作用する。また、上記主弁18の上記シール面18bより上方には段部18cが上記下側部分より大径に形成されており、この段部18cに上記主油路19を介して上主油室7aの圧力が上向き(開方向)に作用するようになっている。
【0018】
上記主弁18の上部の凹室18aの上端部内には、樹脂製又は金属製で筒状の防振リング22の下端部が相対的に上下スライド可能に挿入されており、該防振リング22の内側に突出するように形成された上端フランジは上記中間ボデー16の下面に当接している。また上記凹室18aの底部にはスペーサ26が配設されている。上記防振リング22の上端フランジと上記底部のスペーサ26内に形成された穴18dの底面との間には、該スペーサ26を介在させて該防振リング22を上記中間ボデー16下面に押圧固定するとともに、上記主弁18を下向きに付勢する二重コイルバネ23が縮装されている。
【0019】
上記二重コイルバネ23は、上記スペーサ26を挟んで直列に重ねられた大,小コイルバネ24,25で構成されている。該大コイルバネ24の下端は、上記スペーサ26のフランジ26aに上方から当接しており、上記小コイルバネ25の上端はスペーサ26の内底に、また、その下端は主弁18の穴18dにそれぞれ当接している。ここで主弁18の全閉状態では、上記スペーサ26のフランジ26aの下面と凹室18aの底面との間には若干の隙間が開くように上記コイルバネ寸法が設定されている。
【0020】
このようにして、上記主弁18の凹室18a,穴18d,上記防振リング22,及び上記中間ボデー16の下面で囲まれた空間が副油室31となっている。そして上記穴18d内は、共通油孔32から分岐油孔30,31を介して上主油室7a,下主油室7bに連通しており、これらの油孔の分岐部にはチェック弁33が配設されいてる。また上記スペーサ26には、上記穴18d内と上記凹室18a内とを連通する連通穴26bが形成されている。これにより上記副油室31内に、上主油室7a又は下主油室7bの何れか高い方の圧力が導入されるようになっている。
【0021】
上記副油室31はパイロット弁35を介してパイロット通路36に連通しており、該パイロット通路36はチェック弁37,38を介してそれぞれ下主油室7b,上主油室7aに連通している。
【0022】
上記パイロット通路36は、パイロット弁35の下流側から半径方向に伸びる複数の放射路部39と、該各放射路部39をつなぐ環状部40とで構成されており、該環状部40が上記チェック弁37,38に連通している。
【0023】
上記パイロット弁35は、中間ボデー16の軸芯部分に弁室41を凹設し、該弁室41内に弁体42を上下にスライド可能に配設するとともに、該弁体42をこれの弁軸42dに装着されたプランジャ43を介してリニヤソレノイド44により下向きに付勢するように構成されている。
【0024】
図3に示すように、上記弁室41の底壁41cの平坦な上面には環状の開口溝(弁孔)41aが形成され、下面には3つの略楕円状の凹溝41bが形成されており、該凹溝41b及び上記開口溝41aを介して上記弁室41と副油室31とが連通可能となっている。上記開口溝41aの周縁は平坦な弁座となっている。
【0025】
上記弁体42は、円盤部42aの下面に環状の凸部42bを一体形成するとともに、該弁体42の下面側から上面側に連通する3つの略楕円状の貫通穴42cを形成した構造のものである。該弁体42の上昇により、上記凸部42bと上記開口溝41aの周縁部(弁座)との間にパイロット開口が形成され、該パイロット開口を通って流れる作動油の流れ方向は、該弁体42の移動方向と交差するようになっている。ここで上記弁座及び凸部42bの下面(受圧面)は弁体42の移動方向bと直交している。
【0026】
上記リニヤソレノイド44は、励磁されるとその励磁力に対応した下向きの力をプランジャ43を介して上記弁体42に付与するものであり、上記励磁力を制御することにより、上記パイロット弁35の開き始める副油室31の内圧が変化するようになっており、本発明の設定圧可変手段として機能する。なお、上記励磁力は上記電気配線13を介してソレノイド43に伝達される電圧の大きさによって制御される。
【0027】
ここで上記リニアソレノイド44への電力供給が停止されると、弁体42は副油室31内の圧力により、プランジャ43の上端面43aが上記外ケース14の上端部に配設されたストッパ44bの凸部44aに当接するまで上昇する。この場合、上記円盤部42aの外周面により上記パイロット通路36の放射路部39が閉じられる。
【0028】
一方、上記中間ボデー16には上記円盤部42aにより放射路部39が閉じられた場合の、副油室31内の圧力を所定圧に調整するための圧力調整弁50が設けられている。該圧力調整弁50は、上記弁室41の円盤部42aより下側部分と上記パイロット通路36の環状部40内とを連通する連通孔50a内にボール50bを配設し、該ボール50bを付勢ばね50cで閉方向に付勢した構造のものである。
【0029】
上記主弁18の上端面,主弁挿入穴17aの内面,上記パイロット弁35の底壁41c,及び上記凹室18a内にスライド自在に挿入された上記防振リング22で囲まれた空間はダンピング室54となっており、該ダンピング室54の容積は、上記主弁18の上下移動、つまり該主弁18の開度に伴って変化する。
【0030】
そして上記主弁18の凹室18aと上記防振リング22の外周面との間隙でもってオリフィス53が形成されている。これにより上記主弁18の開度の変化に伴ってダンピング室54の容積が変化すると、作動油が上記オリフィス53を介して副油室31とダンピング室54との間を流動し、この際に主弁18に働く主弁減衰力が発生する。このようにして上記主弁18の振動を抑制するダンピング機構が構成されている。
【0031】
ここで、上記オリフィス53の長さ(減衰力)は、図7の特性線Aに示すように、上記主弁18のストローク量が極小さい領域では、該ストローク量に伴って一旦長く(大きく)なり、その後短く(小さく)なるよう構成されている。なお、図7の特性線Bは、上記従来の緩衝器におけるオリフィス長さ(減衰力)が常に一定であることを示している。
【0032】
図6は、上記減衰力特性を実現するための構造を示している。即ち、本実施形態では、主弁18の凹室18a側のオリフィス構成面の長さはL1に、ダンプリング22側のオリフィス構成面長さはL1よりΔL/2(本実施形態の場合はHと等しい)だけ短いL2に設定されており、かつ主弁全閉時に主弁オリフィス構成面の上端がダンプリングオリフィス構成面の上端よりHだけ下方に位置するように構成されている。
【0033】
これにより実質的オリフィス長は、主弁18の開度零位置のL2−ΔL/2から開度Hの最大長さL2まで増加し、さらに開度がΔL/2増加するまで同じ長さL2に保持され、その後開度が増加するほど減少する。
【0034】
次に、上記緩衝器6の動作について説明する。
路面の凸部等により上記車輪2が突き上げられて緩衝器6が圧縮状態になると、ピストン9が図1,2の下方に相対的に押されることとなり、下主油室7bが昇圧し、作動油が分岐油孔31からチェック弁33,共通油孔32を通って副油室31に導入され、該副油室31も昇圧する。
【0035】
上記パイロット弁35は、その弁体42によりニヤソレノイド44で設定された付勢力でもって開口溝41aを閉じているが、この場合に上記副油室31の内圧により上記弁体42に作用する開方向力が上記付勢力を越えると弁体42が開口溝41aを開き、作動油は開口溝41a,貫通孔42c,パイロットイロット通路36を通り、さらにチェック弁38を通って上主油室7aに流動する。
【0036】
上記パイロット弁35の開により副油室31の内圧が低下し、主弁18は下主油室7bの圧力により押し上げられ、これにより主油路19の開口19aが開き、作動油は下主油室7bから上主油室7aに流動し、この際にダンパ減衰力が発生する。そして上,下主油室7a,7bの差圧が所定値以下になると、主弁18が二重コイルばね23及び副油室31内の圧力により戻されて、主油路19を閉じる。以上の動作を繰り返しながらピストン9が相対的に下降する。
【0037】
車輪2が下降し、緩衝器6が伸長する場合には、ピストン9は上向きに相対的に引かれる。このため、上主油室7aが昇圧し、その圧力は主油路19から主弁18の分岐油孔30からチェック弁33,共通油孔32を通って副油室31に導入される。該副油室31の内圧による開方向力が、リニヤソレノイド44の付勢力による閉方向力を越えるとパイロット弁35が開き、作動油はパイロット通路36,チェック弁37を経て下主油室7bに逃げる。このため、副油室31が減圧し、主弁18の段部18cに作用する上主油室7aの圧力と副油室31の圧力との差圧により主弁18が上昇して主油路19が開く。
【0038】
そのため上主油室7aから下主油室7bへ作動油が流れ、この際にダンパ減衰力が発生し、また両主油室7a,7bの差圧が所定値以下になると主油路19が閉じ、以上の動作を繰り返しながらピストン9は上昇する。
【0039】
本実施形態では、開弁時に弁体42の凸部42bと弁室41の底面の開口溝41aの周縁部(弁座)とで形成されるパイロット開口における作動油の流れ方向aが該弁体42の移動方向bと交差するように、理想的には略直交するように、パイロット弁35の形状,寸法を設定したので、同じパイロット弁ストロークにおける実質的開口面積を大きくすることができ、応答性を向上できるとともに、パイロット弁35の開閉方向の振動を低減できる。
【0040】
上記実質開口面積の点を図4,図5に基づいて詳述する。図4は同一プランジャストロークと実質的開口面積との関係を、図5は同一開口面積とプランジャストロークとの関係を示す。まず、図4(a)は弁体のシール面を角度θの円錐状とし、弁孔を直径Dの貫通穴とし、かつプランジャストロークをLとした従来構造の場合を、図4(b)は本実施形態において開口溝41aの外径,内径をそれぞれ5D/4,3D/4としたの場合を示す。なお、上記外径,内径は受圧面積が同一となるように設定した。
【0041】
まず従来構造の場合、実質的開口面積S′は、
S′=L×cosθ×π×D
であり、これに対して本実施形態の場合、実質的開口面積Sは、
S=L×π×2D
となり、本実施形態では、同じプランジャストロークであれば実質的開口面積は従来構造の場合より2倍以上に増大していることが分かる。なお、実際には作動油の流れ方向aは弁体42の移動方向bと直交するのではなく斜めに交差するので、実際の開口面積は上記実質的開口面積Sより若干小さい。
【0042】
また図5において同じ開口面積Sを得る場合には、従来構造の場合(特性線A)、プランジャストロークはL′必要であるのに対し、本実施形態の場合(特性線B)、プランジャストロークはLで済むことが分かる。
【0043】
このように本実施形態では、弁室41の底壁41cに弁孔として環状の開口溝41aを形成し、これを環状の凸部42bで開閉することにより、該凸部42bと開口溝41aの周縁(弁座)との間に形成されるパイロット開口を流れる作動油の流れ方向aが弁体42の移動方向bと交差することとなり、かつ作動油の流れが外方と内方の2方向に流れることから、同一プランジャストロークに対する実質的開口面積が大きくなり、応答性が向上するとともに、パイロット弁の振動を抑制できる。
【0044】
ここで上記主弁18が開いて上記ダンピング室54の容積が減少するに伴って、該ダンピング室54内の作動油が上記オリフィス53を通って副油室31内に流出する際に主弁減衰力が発生し、これにより主弁18の開時の振動ひいては圧力変動が抑制される。
【0045】
上記主弁18の振動は、これのストローク量(開度)が小さい領域において発生し易く、該開度が大きい領域では発生しにくいことが確認されている。本実施形態では、上記主弁18のストローク量(開度)が零からH+ΔL/2に達するまでは、上記オリフィス53の長さを最大長L2と略等しい長さとしたので、主弁18のストローク量(開度)が小さく従って振動が発生し易い領域では、作動油がダンピング室54から副油室31に流出する際に発生するダンピング機構の減衰力は従来と同程度の最大値となる。これにより上記主弁18の振動、ひいては圧力変動を抑制することができる。
【0046】
また、上記主弁18のストローク量(開度)がさらに増加すると、上記オリフィス53の長さは短くなり、上記主弁減衰力は減少することとなる。このように主弁18の振動が発生し難い領域では、ダンピング機構による主弁減衰力を小さくでき、不必要な減衰力の発生を回避することができる。
【0047】
ここで、本実施形態では、オリフィス長を、主弁開度18の開度が零からHに達するまでは上記最大長さL2より短くしたので、主弁開度が極小の領域においてオリフィス長が必要以上に大きくなるのを回避できる。このように本実施形態では、減衰の必要な所で最大の主弁減衰力を与え、それ以外の所では主弁減衰力を小さくして応答性を向上させることができる。
【0048】
なお、上記実施形態では、オリフィス長(減衰力)を一旦増加した後、減少する場合の例を説明したが、本発明の減衰力は必ずしもこのように設定する必要はなく、要は、例えば図7に一点鎖線で示すように主弁が振動し易い主弁開度の小さい領域の減衰力を主弁開度の大きい領域の減衰力よりも大きく設定すれば良い。
【0049】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明に係る減衰力可変式油圧緩衝器によれば、ダンピング室内の作動油が副油室内に流出することにより主弁減衰力を発生するダンピング機構を設け、主弁の開度が小さいときのダンピング機構の主弁減衰力を、大きいときの主弁減衰力より大きく設定したので、主弁開度の小さい領域では主弁の振動を抑制でき、かつ主弁開度の大きい領域では主弁減衰力が必要以上に大きくなるのを防止できる効果がある。
【0050】
請求項2の発明によれば、上記主弁減衰力を、主弁開度が上記小さい領域にあるときに零から所定開度までは一旦増加させて該大きさに保持し、さらに開度が増加するに伴って減少させたので、主弁開度が小さい領域における上記主弁減衰力が必要以上に大きくなるのを回避でき、初期応答性を向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による緩衝器を備えた懸架装置の模式図である。
【図2】上記実施形態緩衝器の断面側面図である。
【図3】上記実施形態緩衝器のパイロット弁を示す図である。
【図4】上記実施形態緩衝器の作用効果を説明するための特性図である。
【図5】上記実施形態緩衝器の作用効果を説明するための特性図である。
【図6】上記実施形態緩衝器のダンピング機構部分の拡大図である。
【図7】上記実施形態緩衝器の作用効果を説明するための特性図である。
【図8】従来の緩衝器の主弁ダンピング機構部分を示す模式図である。
【符号の説明】
6 緩衝器
7 シリンダ
7a,7b 上,下主油室
9 ピストン
18 主弁
31 副油室
36 パイロット通路
35 パイロット弁
44 リニアソレノイド(設定圧可変手段)
53 オリフィス(ダンピング機構)
L1,L2 オリフィス長(減衰力)
Claims (2)
- シリンダ内を2つの主油室に画成するピストンに、該2つの主油室を連通する主通路を開閉する主弁と、該主弁に高圧側の主油室内の圧力を閉方向に作用させる副油室と、該副油室と低圧側の主油室内とを連通するパイロット通路を開閉可能に配設され、副油室内の圧力が設定圧を越えると上記パイロット通路を開いて上記副油室から低圧側主油室に作動油を逃がすことにより上記主弁への閉方向力を変化させるパイロット弁と、上記設定圧を可変制御する設定圧可変手段とを備えた減衰力可変式油圧緩衝器において、作動油を、上記副油室内と、上記主弁の移動に伴って容積が変化するダンピング室との間でオリフィスを介して流動させることにより主弁に働く減衰力(主弁減衰力)を発生させ、もって主弁の振動を抑制するダンピング機構を設け、上記主弁の開度が小さい領域にあるときの上記オリフィスの長さを開度が大きい領域にあるときの上記オリフィスの長さより大きくすることにより、上記開度が小さい領域にあるときの上記主弁減衰力を開度が大きい領域にあるときの主弁減衰力より大きく設定したことを特徴とする減衰力可変式油圧緩衝器。
- 請求項1において、上記主弁減衰力を、主弁の開度が上記小さい領域にあるときに零から所定開度までは一旦増加させて該大きさに保持し、さらに開度が増加するに伴って減少させたことを特徴とする減衰力可変式油圧緩衝器。
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