JP3781299B2 - 球状ろ過機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、密閉型のろ過槽内にろ材を充填した急速ろ過機において、ろ過機の形状を球形とすることにより、ろ過面積を広く取ることができ、ろ層厚さを均一にすることができるろ過機の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のろ過機においては、ろ過槽は円筒型をしており、ろ材をこの円筒部分に充填して、ろ過層を形成している。そして、浮上ろ材を用いたろ過機ではろ過槽の下部から原水を供給し、原水は圧密されたろ過層を透過することにより固形物が除去され、ろ過槽の頂部に内設しているノズルから処理水を取出すようにしている。又、沈降性のろ材を用いたろ過機ではろ過槽の上部から原水を供給し、原水は圧密されたろ過層を透過することにより固形物が除去され、ろ過槽の下部から処理水を取出すようにしたろ過機はよく知られている。
【0003】
特公平2−22682号公報には、浮上ろ材を円筒状の密閉タンク内に充填して、上向流でろ過操作を行い、処理水を密閉タンクの天壁部に設けた集水ノズルから取出すようにしたろ過機についての記載がある。又、特開平6−31113号公報には、水より比重の大きいろ材を密閉状の円筒形ろ過槽に充填し、ろ過槽頂部の原水導入管から原水を供給して下向流でろ過操作を行い、処理水をろ過槽下部の側面に設けている流出管より取出すようにしたろ過機についての記載がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、円筒状の密閉タンク内にろ材を充填してろ過層を形成し、このろ過層で原水に含まれている固形物を除去するろ過機においては、以下のような課題がある。上述の特公平2−22682号公報や特開平6−31113号公報に記載されているように円筒状のろ過槽を用い、内部にろ材を充填してろ過操作を行う場合、このろ過機のろ過面積としては円筒状タンクの横断面がろ過面積となる。従って、ろ過面積を大きくしようとすれば、円筒状タンクの直径を大きくする必要があり、設置スペースが大きくなる。又、前記特公平2−22682号公報や特開平6−31113号公報の発明では原水を上向流あるいは下向流でろ過層を透過させてろ過操作を行い、処理水を上部あるいは下部の一箇所から取出すようにしているため、ろ過層の厚みにバラツキを生じ、処理水の水質が安定しないという課題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前述した課題を解決するため、本発明はろ過槽の形状を球形とし、このろ過槽の同心上に球形の内殻スクリーンと球形の中心殻スクリーンを内設し、該内殻スクリーンと中心殻スクリーンの空間にろ材を充填してろ過層を形成し、ろ過槽の数箇所に原水供給管を設け、該ろ過槽の下部には固形物排出管を設けるとともに、固形物排出管の上端部は前記内殻スクリーン内部で開口し、この上端部にはろ材流失防止用のスクリーンを張設したものである。そして、中心殻スクリーンの外表面に複数個の撹拌羽根を固着し、該中心殻スクリーンの下半球に処理水取出管を配設するとともに、この処理水取出管を前記ろ過槽の外部まで延設して、且つ、該中心殻スクリーンを回動自在とした。又、内殻スクリーンと中心殻スクリーンの空間に充填するろ材は比重が水と略同等の合成樹脂繊維を用いるとともに、該ろ材の形状は球状体、立方体、直方体としたものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に係る装置は上述のような構成により、球状の内殻スクリーンの表面積がろ過面積となるため、従来の円筒形ろ過機と比べ直径が同じの場合、円筒形ろ過機の横断面積S1=π×直径(D)2/4、球の表面積S2=π×直径(D)2となり、球状ろ過機は円筒形ろ過機の約4倍(4S1=S2)のろ過面積が得られることになる。そして、前記球形の内殻スクリーンの同心上に球形の中心殻スクリーンを内設し、該内殻スクリーンと中心殻スクリーンとの空間部にろ材を充填したので、ろ材層の厚みは略均一となる。
【0007】
この状態において、球状のろ過槽と内殻スクリーンとの空間部に該ろ過槽の数箇所に配設している原水供給管から原水を圧入し、撹拌羽根を回転させれば、原水は内殻スクリーンの全表面部からろ材層を圧密しながら通過する。このろ材層の厚みは内殻スクリーンから中心殻スクリーンの表面までの距離となり、ろ材層の厚みは全ての部位において略均一となっている。このろ材層を原水が透過することにより、原水中の固形物は合成樹脂繊維製のろ材により除去される。前記ろ材は水と略同等の比重のものを使用することにより、ろ材が浮上あるいは沈降したりして部分的に圧密されることなく略均一な厚みのろ材層を保持することができるものである。
【0008】
そして、前記ろ材層で固形物を除去された処理水は中心殻スクリーンの全表面部から中心殻スクリーンの内部に流入する。この中心殻スクリーンの一箇所には処理水取出管を固着しており、この処理水取出管はろ過槽の外部まで延出して、回動自在に軸支されている。そして、中心殻スクリーンの全表面部から流入した処理水は前記処理水取出管より外部に取出されるものである。
【0009】
次に、ろ過運転を継続することにより、ろ材に目詰まりが発生してくる。ろ材が目詰まりを起こすと、原水供給を停止して、処理水取出管より洗浄水を供給すると同時に、処理水取出管を回動させることにより、中心殻スクリーンも回転する。そして、中心殻スクリーンに固着している撹拌羽根も回動することにより、ろ材が拡散され、ろ材に付着している固形物は剥離して、洗浄排水とともに固形物排出管から外部に排出される。この際、固形物排出管の上面部にはスクリーンを張設しているので、ろ材の流出を防止できるようになっている。このようにして、ろ材の洗浄・再生が完了すれば、洗浄水の供給を停止するとともに、処理水取出管の回動も停止し、原水供給管から再び原水を供給してろ過運転を行うものである。以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【0010】
【実施例】
図1は本発明に係る球状ろ過機1を模式的に表した縦断面図である。図1において、ろ過槽2は球形をした密閉容器であり、該ろ過槽2の周部には数箇所に原水供給管3…を配設し、下半球の最下点部に固形物排出管4を垂設している。そして、原水供給管3…の入口部にはバルブ3a…を設け、固形物排出管4の入口部にはバルブ4aを設けている。図1では原水供給管3はろ過槽2の上半球の最上点部に一箇所、下半球の225°の位置に一箇所配設しているが、球状ろ過機1においては球体の全表面部から均等に原水が圧入できるため、原水供給管3の位置や本数については特に限定する必要は無い。前記ろ過槽2の内部には同心上に内殻スクリーン5を内設しており、さらに、この内殻スクリーン5の内部には同心上に中心殻スクリーン6を内設している。該中心殻スクリーン6の下半球の一箇所(図1では135°の位置であるが、特に限定する必要は無い。)には処理水取出管7を配設しており、処理水取出管7は内殻スクリーン5及びろ過槽2を貫通して外部まで延出している。
【0011】
上記処理水取出管7は回動自在に軸支されており、処理水取出管7の外周部に配設しているスプロケットホイール8と駆動装置9のスプロケットホイール10間にチェーン11を掛け回し、駆動装置9のハンドル12を回転させることにより、処理水取出管7及び中心殻スクリーン6が回転するようになっている。図1においては手動操作でハンドル12を回転させるようにしているが、ハンドル12に代えて電動機等で自動運転を行うことも可能である。
【0012】
前記のように構成した球状ろ過機1において、前記内殻スクリーン5と中心殻スクリーン6の空間部にろ材13を充填しており、このろ材13によって原水中の汚濁物質を除去するものである。該ろ材13には比重が水と略同等の(約1.0)合成樹脂繊維製のものを使用し、その形状は球状体、立方体、直方体等の立体形状のものが好適である。尚、ろ材13はろ過運転開始時並びにろ材13の洗浄・再生時に撹拌羽根6aがろ材13を拡散することができる程度の隙間を確保した量を充填する。
【0013】
次に、図2に基づいて処理水取出管7の軸受部について詳述する。ろ過槽2の中心方向にボス14を固着しており、このボス14の中心部に設けた孔に処理水取出管7を挿通させている。処理水取出管7の外周部でボス14に対応する部位にはスリーブ7aを設けており、このスリーブ7aとボス14の孔部に内設した軸受15とで摺動するようにしている。そして、ボス14の内殻スクリーン5の内側部及びろ過槽2の外側部にはOリング16を設け、液漏れを防止するようにしている。尚、処理水取出管7の終端部にはカップラー17を連結しており、処理水取出管7は自由に回転できるようになっている。
【0014】
前記中心殻スクリーン6の外周面には図3に示す通り、処理水取出管7のほかに撹拌羽根6a…を数箇所固着している。この撹拌羽根6a…は原水の供給圧力によってろ材厚みを均等に圧密するまでのろ過運転初期だけろ材13を拡散するために使用する。そして、前記ろ材13が目詰まりを起こしてくると、処理能力が減少するため、ろ材13の洗浄・再生が必要となってくる。このろ材13の洗浄・再生のタイミングは内圧検知あるいはタイマー等によって行うものである。上記ろ材13の洗浄・再生を行う場合、まず、原水供給管3のバルブ3aを閉じ、原水供給を停止する。次に、処理水取出管7より先浄水を供給するとともにハンドル12を回転させて、撹拌羽根6a…を回動させることにより、ろ材13が拡散してろ材13に付着している固形物が剥離される。この時、固形物排出管4のバルブ4aは開いておく。
【0015】
剥離した固形物は図4に示すスクリーン18を通り、洗浄排水とともに固形物排出管4から外部に排出される。前記スクリーン18の目はろ材13よりも小さくしているので、洗浄時におけるろ材13の流出を防止することができる。尚、内殻スクリーン5と中心殻スクリーン6の目の大きさもろ材13より小さいことは勿論のことである。上述の操作により、ろ材13の洗浄・再生が完了すれば、洗浄水の供給を停止し、バルブ4aを閉じ、バルブ3aを開いて原水をろ過槽2内に供給してろ過処理を再開するものである。
【0016】
上述のろ過方法は図5に示すように、広いろ過面積を利用した外から内へのろ過処理方法について説明したものであるが、処理水の清澄度を高くしたい場合には、図6に示すように、処理水取出管7から原水を供給して原水供給管3より処理水を取出すようにすれば、内から外に向かうに従ってろ材13の体積が増大するため、汚濁物質の捕捉効率が高くなり、処理水の清澄度が高まるものである。
【0017】
【発明の効果】
本発明に係る球状ろ過機は従来から用いられている円筒型のろ過装置に比べ、同じ直径の場合、約4倍もろ過面積を広くすることができるため、コンパクトなろ過機となり、設置スペースが小さくて済む。そして、内殻スクリーンと中心殻スクリーンの空間部にろ材を充填しているので、ろ材層の厚みが均一となり、処理水の水質が安定する。また、ろ材の洗浄時には中心殻スクリーンに配設している撹拌羽根によって、ろ材は均一に拡散されるので、少ない先浄水量で効率の良いろ材の洗浄・再生が行える。尚、原水の供給と処理水の取出しを逆に切替えることによって、原水の透過に対してろ材の体積が漸増するため、処理水の清澄度を高くすることもできるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る球状ろ過機を模式的に表した縦断面図である。
【図2】 本発明に係る球状ろ過機の処理水取出管軸受部の詳細図である。
【図3】 本発明に係る球状ろ過機の中心殻スクリーンの詳細図である。
【図4】 本発明に係る球状ろ過機の固形物取出管の詳細図である。
【図5】 本発明に係る球状ろ過機の外から内へのろ過方法を示す模式図である。
【図6】 本発明に係る球状ろ過機の内から外へのろ過方法を示す模式図である。
【符号の説明】
1 球状ろ過機
2 ろ過槽
3 原水供給管
4 固形物排出管
5 内殻スクリーン
6 中心殻スクリーン
6a 撹拌羽根
7 処理水取出管
13 ろ材
18 スクリーン
Claims (4)
- ろ材を充填した密閉型のろ過槽(2)に原水を外部から供給し、処理水を内部から取出すようにしたろ過機(1)において、該ろ過槽(2)の形状を球形とし、このろ過槽(2)の同心上に球形の内殻スクリーン(5)と球形の中心殻スクリーン(6)を内設し、該内殻スクリーン(5)と中心殻スクリーン(6)の空間にろ材(13)を充填し、前記ろ過槽(2)の数箇所に原水供給管(3…)を設け、該ろ過槽(2)の下部には固形物排出管(4)を設けるとともに、固形物排出管(4)の上端部は前記内殻スクリーン(5)内部で開口し、この上端部にはろ材流失防止用のスクリーン(18)を張設したことを特徴とする球状ろ過機。
- 上記中心殻スクリーン(6)の外表面に複数個の撹拌羽根(6a…)を固着し、該中心殻スクリーン(6)の下半球に処理水取出管(7)を配設するとともに、この処理水取出管(7)を前記ろ過槽(2)の外部まで延設して、且つ、該中心殻スクリーン(6)を回動自在としたことを特徴とする請求項1に記載の球状ろ過機。
- 上記内殻スクリーン(5)と中心殻スクリーン(6)の空間に充填するろ材(13)は比重が水と略同等の合成樹脂繊維を用いるとともに、該ろ材(13)の形状は球状体、立方体、直方体としたことを特徴とする請求項1、2に記載の球状ろ過機。
- 上記処理水取出管(7)から原水を供給して、前記原水供給管(3)より処理水を取出すようにした請求項1に記載の球状ろ過機。
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