JP3780941B2 - 掘削カッタービット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネル掘削に適用される地中掘削機用の掘削カッタービットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の掘削カッタービットは、耐磨耗性、耐衝撃性に優れた超硬合金等で形成されたチップと、チップを保持するための台金とで構成されている。該チップは、チップの先端部が台金の先端面から突出し、台金の先端面に沿うように、先端部から基端部に向けて、一箇所に一本ずつ台金に植設されている。該台金は、基部が掘削機に固定されるように構成されている。また、掘削カッタービットには、一つの台金に対し単数もしくは複数本のチップが植設されたものや、角柱状もしくは板状のチップが植設されたものなど、数多くの種類が考案されている。
【0003】
このような掘削カッタービットは、各種掘削機の先端に取り付けられて、チップ先端部を地盤に食い込ませ、掘削作業に供される。このとき、掘削すべき地盤の地質に対応した材種のチップが植設された、掘削カッタービットが掘削作業に用いられる。例えば、硬岩層の場合は耐磨耗性の高い硬質チップ、レキ層の場合は靭性に優れ欠損しにくい軟質チップが使用される。そして、磨耗や欠損などにより掘削カッタービットの掘削性能が低下すると、掘削機の先端から掘削カッタービットを取り替える必要がある。このため、作業効率を良くするためにも、長時間使用することができる掘削カッタービットが必要とされてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記掘削カッタービットは、掘削すべき地盤が、硬岩層やレキ層など複数の層に渡るときに、地層ごとにその地質に対応したチップの掘削カッタービットに交換することができなければ、地質に対応していないチップの掘削カッタービットで掘削しなければならないという問題があった。例えば、レキ層を硬質チップの掘削カッタービットで掘削した場合、チップが欠損しやすく、硬岩層を軟質チップの掘削カッタービットで掘削した場合、チップが磨耗しやすくなる。このため、掘削カッタービットの寿命が短くなるという問題があった。また、各地質ごとに適したチップを備えたカッタービットに交換することができた場合においても、この交換の間は作業が中断されてしまうとともに、この交換作業によるコストが高くなるので、多地質層の地盤に対して長距離掘削に適していないという問題があった。
【0005】
また、チップが台金にロウ付けによって植設されている場合、ロウ付け後に残留応力が発生し、角柱状もしくは板状のチップをロウ付けした場合には、チップに発生する残留応力によりチップが割れやすくなるという問題があった。また、台金はチップに比べ軟質であるため、掘削カッタービット側面の台金が地盤と当接した場合、掘削カッタービット側面の台金が磨耗してしまうので、掘削カッタービット側面の耐磨耗性能が低いという問題があった。上述したような諸問題により、掘削カッタービットの寿命が短くなり、掘削カッタービットを取り替える作業が多くなることで、作業効率が悪くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたものであって、上述のような構成の掘削カッタービットにおいて、多地質層の地盤で各地質に対応したチップで掘削を行うことができ、ロウ付け後の残留応力による影響を低減させ、掘削カッタービット側面の耐磨耗性を向上させることにより、掘削カッタービットの寿命を長くし、掘削カッタービットの交換回数を減らすことで、掘削カッタービット交換に伴うコストが削減できるとともに、多地質層での長距離掘削作業における掘削作業効率を向上させることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る掘削カッタービットは、掘削機の先端に取り付けられる台金と、該台金の先端面に先端部が突出するように植設された硬質のチップとを備えた掘削カッタービットにおいて、該チップは先端部から基端部に向けて、複数段に植設されており、このうち少なくとも一部の段のチップが、他の段と異なる材種及び硬度とされ、かつ他の段と異なる長さとされていることを特徴とする
【0008】
この掘削カッタービットによれば、掘削前に地盤の地質を調査し、掘削していく地質の順番ごとに、各地質に対応した材種及び硬度のチップを各段に植設することができ、かつ他の段と異なる長さとされるので、多地質層の地盤の各地質に対応した材種のチップで掘削することができる。これにより、多地質層に対しても連続して掘削を行うことができるとともに、掘削カッタービットの寿命を長くすることができ、掘削カッタービット交換回数が少なくなるので、掘削カッタービット交換に伴うコストが削減できるとともに、多地質層の地盤に対しての長距離掘削作業における掘削作業効率を向上させることができる。また、多地質層の地盤の各地層の硬さ及び厚さに対応するように各段のチップの硬度及び長さを設定し植設することができるので、多地質層の地盤の各地層の硬さに対応したチップで掘削することができる。
【0011】
また、この掘削カッタービットは、該チップが圧入されることで、該台金に植設されていることを特徴とする。これにより、ロウ付けされることでチップが該台金に植設される場合に生ずる残留応力の影響が少ないため、残留応力によりチップが欠損することなく掘削することができる。
【0012】
また、この掘削カッタービットは、該チップがロウ付けされることで、該台金に植設されていることを特徴とする。これにより、圧入されることでチップが台金に植設されている場合と比べ、より強くチップを台金に植設することができ、チップの脱落を防止できるので、掘削性能を維持することができる。
【0013】
このようにチップをロウ付けされた掘削カッタービットにおいては、該チップが円柱状になっていることを特徴とする。これにより、角柱状もしくは板状のチップと比べ、残留応力による影響を少なくすることができる。
【0014】
そして、この掘削カッタービット側面の台金より、該チップの側面の一部が突出するように植設されていることを特徴とする。これにより、掘削カッタービット側面が地盤と当接する場合、台金より先にチップの側面が地盤と当接することで、台金の磨耗が低減され掘削カッタービット側面の耐磨耗性能を向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。図1から図3は、各段のチップが、掘削する多地質層の地盤の各地質に対応するように設定された掘削カッタービットである。以下の説明において、複数段に植設されているチップの各チップをチップ2と符号を付すが、この説明における4段のチップ2を区別するために、各段のチップにa〜dのアルファベットを付し、最上段のチップ2をチップ2aとし、以下順に2b、2cとして、最下段のチップ2をチップ2dとする。
【0016】
図1から図3に示す第1の実施の形態において、掘削カッタービット1は、硬質のチップ2と、チップ2を保持するための台金3とで構成されている。チップ2は、超硬合金等で形成され、互いに同径の短円柱状をしており、最上段のチップ2aから最下段の2dまで上記円柱の中心線を同軸にして、各チップ2の円形をなす基端面と先端面とをロウ付けされ、長尺状とされた状態で、台金3の先端部から基端部に向けて植設されている。そして、互いに同じ長さとされたこのような長尺状のチップ2が、複数、互いの上記中心線を平行にし、最上段のチップ2aの先端部が台金3の先端面3aから突出し、台金3の先端面3aに沿うように、かつ、千鳥状に配列されるように、チップ2は植設されている。
【0017】
台金3は、チップ2よりも軟質な鋼材などから形成され、略板状をしており、先端面3aは前面から後面に向けて下がる斜面とされ、また、先端面3aの左右側面付近も各側面に向けて下がる斜面とされている。また、台金3の前面のうち、チップ2が植設されている部分の前面3bは、チップ2が植設されていない部分の前面3cより一段高く形成されており、台金3の厚さは、チップ2が植設されている先端側が基端側より厚く形成されている。
【0018】
この実施形態における掘削カッタービット1によって多地質層の地盤の掘削作業を行う場合、まず、掘削作業をはじめる前に掘削する地盤の地質と各地質の厚さの調査が行われる。そして、掘削カッタービット1のチップ2は、その各段のチップ2a〜2dが多地質層の各地質の硬さと厚さに対応するように、同じ超硬合金でも異なる材種で、それぞれに硬度と長さが設定され、台金3に植設される。例えば、レキ層、硬岩層、レキ層、硬岩層と交互に4層に渡って掘削する場合、硬岩層には耐磨耗性の高い硬質チップを、レキ層には靭性に優れ欠損しにくい軟質チップを使用して掘削できるように、チップ2aに軟質チップ、チップ2bに硬質チップ、チップ2cに軟質チップ、チップ2dに硬質チップと、チップ2の材種は、異なる硬度に設定される。さらに、各地質の掘削による磨耗などによる各チップ2の消耗を考慮して、地層の厚さに対応するように各チップ2の長さは設定される。
【0019】
このように設定された掘削カッタービット1は、台金3の基端部を掘削機の先端に固定され、掘削機に取り付けられる。そして、掘削カッタービット1の台金3の先端面3aより突出された最上段のチップ2aの先端部が、地盤に食い込まされ、地盤の掘削作業は行われる。
【0020】
そして、第1の地層を掘削し終わるころには、チップ2aは磨耗し短くなり、台金3の先端面3aも磨耗するので、台金3がチップ2aを保持する力は弱くなっている。その後、第2の地層を掘削し始めるころには、チップ2aは台金3から脱落してしまい、さらに掘削作業が進められることで台金3の先端面3aが磨耗していき、次段のチップ2bの先端部が磨耗した台金3の先端面3aより突出し、チップ2bにより第2の地層の掘削が行われる。このように、第3の地層はチップ2cで掘削を行い、第4の地層はチップ2dで掘削を行う。
【0021】
また、チップ2が、圧入されることで台金3に植設されている場合、ロウ付けされることで植設されている場合に生じる残留応力の影響がないので、チップ2には残留応力による欠損が生じない。これにより、掘削カッタービット1は、ロウ付けした場合に生じる残留応力の影響なく掘削することができる。
【0022】
また、チップ2が、ロウ付けされることで台金3に植設されている場合、圧入されることで植設されている場合と比べ、より強く植設されるので、チップ2は脱落しにくくなる。これにより、掘削カッタービット1は、チップ2の脱落を防止でき掘削性能を維持することができる。
【0023】
上述したような、チップ2をロウ付けにより台金3に植設した場合、ロウ付け後に発生する残留応力によってチップ2が欠損することが考えられるが、チップ2は、円柱状とされているので、角柱状もしくは板状のチップと比べ残留応力による影響が少ない。これにより、角柱状もしくは板状のチップをロウ付けにより植設した掘削カッタービットと比べ、掘削カッタービット1は、残留応力による影響を少なくすることができる。
【0024】
また、掘削カッタービット1のチップ2は、この掘削カッタービット1の側面となる台金3の前面3bより、チップ2の側面の一部が突出するように植設されている。これにより、掘削カッタービット1は、台金3の前面3bより先にチップ2の側面が地盤と当接し掘削作業が行われるので、掘削カッタービット1は、台金3の前面3bの磨耗が低減され、掘削カッタービット1側面の耐磨耗性能を向上させることができる。また、台金3、6の表面には適宜硬化肉盛が施され、台金自体の耐磨耗性を向上させることができる(図示していない)。
【0025】
上述したように掘削カッタービット1は、多地質層の地盤の掘削において、各地質に対応したチップで掘削を行うことができ、ロウ付け後の残留応力による影響を低減させ、掘削カッタービット側面の耐磨耗性を向上させることにより、掘削カッタービットの寿命を長くすることができ、掘削カッタービット交換回数が少なくなるので、掘削カッタービット交換に伴うコストが削減できるとともに、多地質層の地盤に対しての長距離掘削作業における掘削作業効率を向上させることができる。
【0026】
なお、第1の実施の形態においては、円柱状のチップについて説明を行ったが、図4〜6に示す第2の実施の形態のような角柱状のチップを複数段に圧入、又はロウ付けし、植設した掘削カッタービットとしても良い。第2の実施の形態において、角柱状のチップ4以外の構成は図1〜3に示す第1の実施の形態と同一の構成であるので、同一の符号を付し説明を省略する。
【0027】
また、第1、2の実施の形態においては、シールド工法で使用される掘削カッタービットを用いて説明を行ったが、図7、8に示すような形状のシールド工法用の掘削カッタービットに本発明を用いても良く、掘削工具全般について本発明を用いることができる。図7、8に示す掘削カッタービット5は、チップ6が台金7に植設されて構成されている。また、各チップの先端面と基端面をロウ付けした状態で植設する実施の形態について説明したが、各チップが当接された状態で複数段に植設されても良く、当接せずに複数段に植設されても良い。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の掘削カッタービットによれば、チップが先端部から基端部に向けて、複数段に植設され、このうち少なくとも一部の段のチップの材種が、他の段と異なるので、掘削する各地質に対応したチップで掘削することができ、掘削カッタービットの寿命を長くすることができ、掘削カッタービット交換による作業中断を減らすことができる。さらに、このチップの硬度と長さが、他の段と異なる硬度と長さにされているので、多地質層の地盤の各地層の硬さと厚さに対応したチップで掘削することができる。
【0029】
また、該チップが圧入されることで、該台金に植設されているので、ロウ付け後の残留応力によりチップが欠損することなく掘削することができる。また、該チップがロウ付けされることで、該台金に植設されているので、より強くチップを台金に植設することができ、チップの脱落を防止できるので、掘削性能を維持することができる。このようにチップをロウ付けされた掘削カッタービットにおいては、該チップを円柱状とすることで、ロウ付け後の残留応力による影響を少なくすることができる。そして、該掘削カッタービット側面の台金より、該チップの側面の一部が突出するようにチップが植設されているので、掘削カッタービット側面の耐磨耗性能を向上させることができる。
【0030】
したがって、従来のこの種の掘削カッタービットと比較して、本発明の掘削カッタービットは寿命を長くすることができ、掘削カッタービット交換回数が少なくなり、掘削カッタービット交換に伴うコストが削減できるとともに、多地質層の地盤に対しての長距離掘削作業における掘削作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態における掘削カッタービットの正面図である。
【図2】 図1に示す掘削カッタービットの上面図である。
【図3】 図2におけるX−X線視断面図である。
【図4】 本発明の第2の実施形態における掘削カッタービットの正面図である。
【図5】 図4に示す掘削カッタービットの上面図である。
【図6】 図5におけるY−Y線視断面図である。
【図7】本発明のシールド工法用掘削カッタービットにおける実施形態の正面図である。
【図8】 図7に示す掘削カッタービットの側面図である。
【符号の説明】
1 掘削カッタービット
2 チップ
3 台金
3a 先端面
Claims (5)
- 掘削機の先端に取り付けられる台金と、該台金の先端面に先端部が突出するように植設された硬質のチップとを備えた掘削カッタービットにおいて、該チップは先端部から基端部に向けて、複数段に植設されており、このうち少なくとも一部の段のチップが、他の段と異なる材種及び硬度とされ、かつ他の段と異なる長さとされていることを特徴とする掘削カッタービット。
- 請求項1に記載の掘削カッタービットにおいて、前記チップが圧入されることで、該台金に植設されていることを特徴とする掘削カッタービット。
- 請求項1又は2に記載の掘削カッタービットにおいて、前記チップがロウ付けされることで、該台金に植設されていることを特徴とする掘削カッタービット。
- 請求項3に記載の掘削カッタービットにおいて、前記チップが円柱状となっていることを特徴とする掘削カッタービット。
- 請求項1から4のいずれかに記載の掘削カッタービットにおいて、該掘削カッタービット側面の台金より、該チップの側面の一部が突出するように植設されていることを特徴とする掘削カッタービット。
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