JP3780760B2 - エチレン系重合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なエチレン系重合体に関する。さらに詳しくは、中空成形、特に大型中空成形において、高い溶融張力を有し、均一延伸性などの成形加工性に優れ、且つ剛性が高く、耐衝撃性等の機械的特性に優れると共に、耐火性に優れたエチレン系重合体に関する。また、従来品より薄い平均肉厚でも優れた耐衝撃性と、耐火性を有する燃料タンク用のエチレン系重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車工業分野では、軽量化、省エネルギー化と言った目的で、各種自動車部品のプラスチック化が活発に押し進められている。プラスチック材料としては、安価、高強度、良耐候性、良耐薬品性および環境問題といった観点からポリオレフィン樹脂が一般に用いられている。
【0003】
ポリオレフィン樹脂の中でも、特にポリエチレンは中空成形用樹脂として好適な樹脂であり、一般に、比較的分子量分布が広く、溶融張力が大きく、均一延伸性が良好であるポリエチレンが使用される。なかでも、大型中空成形分野では、プラスチック燃料タンクや、ドラム缶と言った大型容器が最近注目されている。
特に、高分子量高密度ポリエチレン製のプラスチック燃料タンクは、従来の鋼板製燃料タンクに比較して、形状自由度が高いという特性を活かし一部の車種、例えば4WD(四輪駆動)や4WS(四輪操舵)などを装着した車種等に搭載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この様な用途に好適な材料として、例えば成形加工性や耐環境応力亀裂性(以下ESCRという)に優れたエチレン共重合体(特開平2−53811号公報)などが提案されている。
しかしながら、これらの高密度ポリエチレンでは、複雑な形状の燃料タンクを製造しようとした場合、得られる燃料タンクの曲部の肉厚が薄くなり、その部分の強度が低下する。従って曲部の強度を補強する意味で肉厚を厚くするために燃料タンク全体を厚くしなければならず、その結果、経済性や軽量性といった面で不十分な状況にある。
【0005】
また、製品の耐衝撃性やESCRといった機械的強度の向上をねらってα−オレフィンとの共重合を行う場合、比較的密度の低い共重合体とするために剛性が低下するという欠点が生じる。特に製品の軽量化、薄肉化をはかろうとする場合、剛性の低下は燃料タンクの使用に際し撓んだり、製品を積み重ねた際に変形をおこすといった問題を招くものであった。
【0006】
本発明の目的は、かかる用途において、高い溶融張力を有し、均一延伸性などの成形加工特性に優れ、かつ、高剛性で、耐衝撃性等の機械的特性および耐火性に優れたエチレン系重合体を提案すると共に、肉厚分布が少なく薄肉で軽量性、経済性に優れ、且つ高剛性で、耐衝撃性の優れ、耐火性に優れた燃料タンク用のエチレン系重合体を提案することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、エチレン単独重合体、またはエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体からなり、極限粘度が特定範囲を有し、成形加工特性及び耐火性に関するパラメーターである溶融張力と耐衝撃性のパラメーターであるHRI−IZODがHLMIに対して特定の範囲にあり、更にα−オレフィン含有量および密度が特定の範囲にあるエチレン系重合体が、中空成形、特に大型中空成形において、均一延伸性などの成形加工性に優れ、かつ、剛性が高く、耐衝撃性等の機械的特性に優れ、高い溶融張力を有し、優れた耐火性を有するエチレン重合体組成物を与える事を見出した。更に、上記エチレン重合体組成物によって製造された燃料タンクは、従来品より薄い肉厚でも優れた耐衝撃性、耐火性を有する事を見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、エチレン単独重合体、または、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなりα−オレフィン含有量が10重量%以下であるエチレン共重合体であって、
(1)極限粘度[η]が2.3〜5.5(dl/g)
(2)密度が0.955〜0.970(g/cm3 )
(3)溶融張力(MT)と21.6kg荷重のメルトインデックス(HLMI)の関係が、
MT≧−12.4logHLMI+20.5
(4)−30℃で測定した高速衝撃強度(HRI−IZOD)とHLMIの関係が、
HRI−IZOD≧−logHLMI+1.4
であることを特徴とするエチレン系重合体に存する。
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のエチレン系重合体は、エチレン単独重合体、または炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体からなり、α−オレフィン含有量が10重量%以下、好ましくは5重量%以下のものが使用される。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、オクタデセン−1、また、4−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、さらに、ビニルシクロヘキサン、スチレン等が挙げられる。また、α−オレフィン含有量が10重量%より多くなると、エチレン系重合体の剛性が低下し好ましくない。
【0010】
また、本発明のエチレン系重合体は、極限粘度[η]が2.3〜5.5dl/g、好ましくは3〜5dl/gの範囲とすることが必要である。極限粘度が2.3dl/g未満の場合は機械的強度が低下すると共に、耐ドローダウン性も劣り好ましくない。また5.5dl/gを超えると成形性が低下し好ましくない。また、本発明のエチレン系重合体は、密度が0.955〜0.970g/cm3 、好ましくは0.960g/cm3 を超え0.970g/cm3 以下、更にはエチレン単独重合体が好ましい。密度が0.955g/cm3 未満の場合は、剛性が低下し好ましくない。
【0011】
また、本発明のエチレン系重合体はMTとHLMIの関係が
MT≧−12.4logHLMI+20.5
好ましくは
MT≧−12.4logHLMI+23.5
の関係を満たすことが必要である。MTが上記関係より低い場合は、溶融張力が劣るために薄肉化した燃料タンクの耐火性が劣り好ましくない。
【0012】
また、本発明のエチレン系重合体は−30℃で測定したHRI−IZODとHLMIの関係が、
HRI−IZOD≧−logHLMI+1.4
の関係を満たすことが必要である。HRI−IZODが上記関係より低い場合は、耐衝撃性に劣り、特に、薄肉化した燃料タンクの耐衝撃性が劣り好ましくない。前記MT、およびHRI−IZODは、例えば特定の触媒を使用し、特定の条件で重合したり、多段重合において重合条件を特定することにより制御することができる。次に、本発明のエチレン系重合体の製造方法の例を示すが、本発明は以下に示す製造方法に限定されるものではない。
【0013】
本発明のエチレン重合体は、特定の触媒を使用し、特定の条件で重合したり、多段重合において重合条件を特定することにより製造することができる。特定の触媒としては、例えば、Mg化合物、Ti化合物、ハロゲンを必須成分とする固体触媒成分(A)、と有機アルミニウム化合物(B)を主成分とする触媒を挙げることができる。具体的には、例えば、(A)一般式Mg(OR1 )m X1 2-m (式中R1 はアルキル、アリール、またはシクロアルキル基を示し、X1 はハロゲン原子を示し、mは1または2である。)で表されるMg化合物(a)と、一般式Ti(OR2 )n X2 4-n (式中R2 はアルキル、アリール、またはシクロアルキル基を示し、X2 はハロゲン原子を示し、nは4≧n≧1を示す。)で表されるTi化合物(b)および下記一般式(I)
【0014】
【化1】
【0015】
(式中R3 はアルキル、アリールまたはシクロアルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。pは20≧p≧2を示す。)で表されるポリアルキルチタネート(c)並びに必要に応じて一般式R4 OH(式中R4 はアルキル、アリールまたはシクロアルキル基を示す。)で表されるアルコール化合物を含む均一な炭化水素溶液をハロゲン化剤を用いて処理して得られる炭化水素不溶性固体触媒成分と(B)有機アルミニウム化合物とを組み合わせてなる触媒系を用いてエチレンの単独重合またはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合によって製造することができる。より具体的には、固体触媒成分の製造に使用されるMg化合物(a)の一般式Mg(OR1 )m X1 2-m (式中R1 はアルキル、アリール、またはシクロアルキル基を示し、X1 はハロゲン原子を示し、mは1または2である。)で表される化合物としては、具体的にはR1 がメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、トリル、キシリル、シクロヘキシル等の炭素数15程度までのアルキル、アリール、シクロアルキル基であり、X1 が塩素、臭素、またはヨウ素であるような化合物、例えばジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、エトキシマグネシウムクロライド、ジフェノキシマグネシウム等が挙げられる。このうち一般式のmが2であるような化合物が好ましい。Ti化合物(b)の一般式Ti(OR2 )n X2 4-n (式中R2 はアルキル、アリール、またはシクロアルキル基を示し、X2 はハロゲン原子を示し、nは4≧n≧1を示す。)で表されるTi化合物としては、R2 、X2 として上記R1 、X1 で例示したものが同様に挙げられる。具体的にはnが4の化合物としてテトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン等、nが3の化合物としてトリエトキシモノクロルチタン、トリプロポキシモノクロルチタン、トリn−ブトキシモノクロルチタン等、nが2の化合物としてはジエトキシジクロルチタン、ジプロポキシジクロルチタン、ジn−ブトキシジクロルチタン等、nが1の化合物としてはエトキシトリクロルチタン、プロポキシトリクロルチタン、n−ブトキシトリクロルチタン等が挙げられる。特にnが4および3のものが好ましい。中でもnが4の化合物であるテトラn−ブトキシチタン、nが3の化合物であるトリn−ブトキシモノクロルチタン等が好ましい。
【0016】
ポリアルキルチタネート(c)の上記一般式(I)で表される化合物(式中R3 はアルキル、アリールまたはシクロアルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。pは20≧p≧2を示す。)としては、前記一般式中、R3 は前記R1 で例示したものが同様に挙げられる。具体的な化合物としてテトラエトキシチタンの2〜20量体、テトラプロポキシチタンの2〜20量体、テトラブトキシチタンの2〜20量体、テトラキス(2エチルヘキシルオキシ)チタンの2〜20量体、テトラステアリルオキシチタンの2〜20量体等が挙げられる。中でも、テトラブトキシチタンの2〜4量体及びテトラプロポキシチタンの2〜10量体が好ましい。さらに、テトラアルコキシチタン等に少量のH2 Oを反応して得られたテトラアルコキシチタンの縮合物を使用することもできる。また、必要に応じて用いられるアルコール化合物(d)の一般式R4 OH(式中R4 はアルキル、アリールまたはシクロアルキル基を示す。)としては、R4 は前記R1 で例示したものが同様に挙げられる。具体的にはエチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−オクチルアルコール等が挙げられる。
【0017】
固体触媒成分(A)は前記Mg化合物(a)、Ti化合物(b)、ポリアルキルチタネート(c)そして必要に応じてアルコール(d)を含む均一な炭化水素溶液を調製する。
溶媒として使用される炭化水素としてはヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が使用される。炭化水素溶液を調製するには、Mg化合物、Ti化合物、ポリアルキルチタネートを予め接触させて均一な液状物を調製しても良く、またMg化合物、Ti化合物を予め接触させて均一な液状物を調製した後に、ポリアルキルチタネートを接触させても良い。
【0018】
均一な液状物は使用する化合物の種類によって上記3成分あるいは2成分を混合し加温することによって達成しうるが、均一な液状物が生成しがたい場合にはアルコールを存在させることが好ましい。添加順序には特に制限はない。
混合後、好ましくは100℃〜170℃に加温することにより均一な液状物もしくは、均一なアルコール溶液が得られる。ついで炭化水素溶媒を加えて炭化水素溶液とするが、アルコールを使用した場合にはアルコールを溜去させた後に炭化水素溶媒を加えてもよい。また、Mg化合物、Ti化合物の2成分よりなる液状物を調製し、次いで炭化水素溶媒を加えて均一な炭化水素溶液とした後に、ポリアルキルチタネートを加えてもよい。
【0019】
ついで、上記のようにして得られた均一な炭化水素溶液をハロゲン化剤で処理することによって固体触媒成分(A)を得る。ハロゲン化剤としてはハロゲン化の作用のあるものならば特に制限は無く、通常ハロゲンが共有結合している化合物を用いる。
具体的には三塩化硼素、四塩化チタン、四塩化硅素、四塩化錫、四塩化バナジウム、塩化アルミニウム等の塩化物、塩化水素、チオニルクロライド、クロルスルホン酸等の塩素含有化合物、あるいは塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。なかでも四塩化チタン、四塩化硅素等が好ましい。
【0020】
これらハロゲン含有化合物で処理する方法としては特に制限はないが、通常、常温〜200℃の温度で処理を行うことが好ましい。
ハロゲン化処理は1回でも良く、2回以上繰り返し行ってもよい。またハロゲン化の度合いは上記のMg化合物、Ti化合物、ポリアルキルチタネート、アルコール化合物に対し、以下に示す範囲
【0021】
【数1】
が好ましい。
より好ましくは
【0022】
【数2】
【0023】
の範囲である。
(ここで、Xはハロゲン化剤中のハロゲン原子のモル数を示し、X1 、X2 、R1 、OR2 、OR3 、OR4 は前記化合物の一般式中の各基モル数を示す。)
以上のようにして固体触媒成分が得られた後、固体を分離し、炭化水素溶媒で洗浄する。
しかして、Mg化合物(a)、Ti化合物(b)、ポリアルキルチタネート(c)の各成分の使用量は各成分のモル比で
【数3】
0.1≦(b)/(a)≦5
0.3≦(c)/(a)≦8
好ましくは
【数4】
0.2≦(b)/(a)≦2
0.5≦(c)/(a)≦4
の範囲で使用される。
【0024】
上記範囲外では、溶融張力が低下するために耐ドローダウン性や均一延伸性といった成形加工性が劣ると共に、耐火性が低下する。また、耐衝撃性も劣る傾向があり好ましくない。
また、アルコール化合物(d)の使用量は前記の均一な液状物を得るに必要な量が使用される。
【0025】
次に、共触媒として用いられる有機アルミニウム化合物としては、一般式AlR5 q (OR6 )r X5 3-(q+r) (式中、R5 、R6 はアルキル、アリール、シクロアルキル基を示し、X5 はハロゲン原子を示し、qは2〜3を、rは0〜1の数を示す。)で表される化合物が挙げられる。具体的にはトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、ジイソブチルアルミニウムモノクロリド、ジエチルアルミニウムモノエトキサイド等が挙げられる。また、トリアルキルアルミニウムと水との反応生成物を使用することもできる。これら有機アルミニウム化合物は単一の化合物を用いてもよく、また2種以上の化合物を使用してもよい。
【0026】
有機アルミニウム化合物(B)の使用割合は、有機アルミニウム化合物の濃度および有機アルミニウム化合物と固体触媒成分との比、即ちAl/Ti原子比の積〔Al〕(mmol/l)×(Al/Ti)が1.2〜0.02、好ましくは1.0〜0.03、より好ましくは0.5〜0.05の範囲で使用される。
上記範囲以下では重合活性が低下したり、また、上記範囲以上では均一延伸性などの成形加工特性が劣るとともに溶融張力が低下し製品の耐火性が低下する。また、耐衝撃性が低下し好ましくない。
【0027】
以上のような触媒系を使用してエチレンの重合または前記例示のα−オレフィンとの共重合を行うが、重合反応は不活性溶媒中で行うスラリー重合、溶液重合、あるいは気相重合により行われる。不活性溶媒としてはブタン、ヘキサン、ヘプタン、等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が使用される。重合反応は通常、常温〜200℃の温度、常圧〜100気圧の範囲から選ばれる。また重合反応において水素を導入することにより容易に所望の分子量の重合体を得ることができる。
【0028】
さらに、本発明のエチレン系重合体の製造に際しては1段重合法のみならず多段重合法もとりうる。
多段重合法の例としては、
(イ)重合反応を2段階、すなわち第1の反応帯域で重合して得られた反応生成物の存在下に第2の反応帯域においてさらに重合する方法で行い、
(ロ)第1および第2の反応帯域のいずれか一方の帯域においてエチレンの単独重合を行い、粘度平均分子量6〜15万の重合体Aを全重合体生成量の60重量%〜90重量%の量生成させ、
(ハ)他方の反応帯域においてエチレンの単独重合または前記記載のα−オレフィンとの共重合を行い、α−オレフィン含有量10重量%以下で、粘度平均分子量50万〜400万の重合体Bを40重量%〜10重量%の量生成させ、
(ニ)重合体Bと重合体Aの分子量比が3〜50の範囲になるよう重合する方法が挙げられる。
【0029】
さらに、本発明のエチレン系共重合体の製造に使用される他の触媒としては、例えば、(A)一般式Mg(OR1 )m X1 2-m (式中R1 はアルキル、アリール、またはシクロアルキル基を示し、X1 はハロゲン原子を示し、mは1または2である)で表されるMg化合物(a)と、一般式Ti(OR2 )n X2 4-n (式中R2 はアルキル、アリールまたはシクロアルキル基を示し、X2 はハロゲン原子を示し、nは4≧n≧1を示す。)で表されるTi化合物(b)、および必要に応じ一般式R4 OH(式中R4 はアルキル、アリールまたはシクロアルキル基を示す。)で表されるアルコール(c)を含む均一な炭化水素溶液に、チタニルクロライド(TiOCl2 )(d)と還元能を有しないハロゲン含有化合物(e)からなる溶液を用いて処理して得られる炭化水素不溶性固体触媒成分と(B)有機アルミニウム化合物とを組み合わせてなる触媒系が挙げられる。より具体的には、固体触媒成分の製造に使用されるMg化合物(a)、Ti化合物(b)、および必要に応じ使用されるアルコール(c)は前記例示の触媒と同様の化合物が使用される。固体触媒(A)は、前記Mg化合物、Ti化合物、および必要に応じ使用されるアルコールを含む均一な溶液を調製する。溶媒として使用される炭化水素としては前記例示のものが使用される。炭化水素溶液を調製するには、Mg化合物、Ti化合物をあらかじめ接触させ均一な液状物を調製する。均一な液状物が生成しがたい場合にはアルコールを存在させることが好ましい。添加順序に特に制限はない。
【0030】
混合後、好ましくは100℃〜170℃に加温することにより均一な液状物もしくは、均一なアルコール溶液が得られる。ついで炭化水素溶媒を加えて炭化水素溶液とするが、アルコールを使用した場合にはアルコールを溜去させた後に炭化水素溶媒を加えてもよい。
次いで、上記のようにして得られた均一な炭化水素溶液をTiOCl2 と還元能を有しないハロゲン含有化合物からなる溶液で処理することによって固体触媒成分(A)を得る。
【0031】
TiOCl2 と還元能を有しないハロゲン含有化合物からなる溶液はTiOCl2 と還元能を有しないハロゲン含有化合物とを混合し加温することによって得られる。
還元能を有しないハロゲン含有化合物としては特に制限はないが、TiOCl2 の溶解度が高い化合物が好ましい。中でも四塩化チタン、四塩化硅素が好ましい。特に四塩化チタンが好ましい。
【0032】
これらTiOCl2 と還元能を有しないハロゲン含有化合物からなる溶液で処理する方法としては特に制限はないが、上記溶液が均一な溶液であることが好ましい。処理温度は、常温〜200℃の温度で行うことが好ましい。以上のようにして固体触媒成分が得られた後、固体を分離し、炭化水素溶媒で洗浄する。
しかして、Mg化合物(a)、Ti化合物(b)、TiOCl2 (d)の各成分の使用量は各成分のモル比で
【数5】
0.01≦(b)/(a)≦10
0.1≦(d)/(a)≦50
の範囲である。また、還元能を有しないハロゲン含有化合物(c)の使用量は、上記Mg化合物(a)、Ti化合物(b)、アルコール(c)に対し、以下に示す範囲が好ましい。
【0033】
【数6】
【0034】
(ここで、Xは還元能を有しないハロゲン含有化合物中のハロゲン原子のモル数を示し、X1 、X2 、OR1 、OR2 、OR4 は上記化合物の一般式中の各基のモル数を示す。)
上記範囲外では、均一延伸性といった成形加工特性が劣ると共に、溶融張力が低下するために耐火性が低下する。また、耐衝撃性も劣り好ましくない。
【0035】
また、アルコール(e)の使用量は前記の均一な液状物を得るに必要な量が使用される。
次に、共触媒として用いられる有機アルミニウム化合物(B)としては、前記例示触媒と同様の化合物が使用される。
有機アルミニウム化合物(B)の使用割合は、有機アルミニウム化合物の濃度および有機アルミニウム化合物(B)と固体触媒成分との比、即ちAl/Ti原子比の積〔Al〕(mmol/l)×(Al/Ti)が2.0〜0.01、好ましくは1.0〜0.02の範囲で使用される。
【0036】
上記範囲以下では重合活性が低下したり、また、上記範囲以上では均一延伸性などの成形加工特性が劣るとともに溶融張力が低下し製品の耐火性が低下する。また耐衝撃強度も低下し好ましくない。
以上のような触媒系を使用してエチレンの重合または前記例示のα−オレフィンとの共重合を行うが、重合反応は前記重合例と同様に行うことができる。
さらに、本発明においては、1段重合法のみならず、前記記載の多段重合法も同様に行うことができる。
【0037】
本発明のエチレン系重合体は、均一延伸性などの成形加工性に優れ、且つ、剛性が高く、溶融張力に優れるために耐火性に優れ、また、耐衝撃性に優れた特徴を有する。
本発明のエチレン系重合体を成形するに際しては、充填剤、顔料、光安定剤、熱安定剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、離型剤、発泡剤、核剤などの公知の添加剤を配合してもよい。
【0038】
本発明のエチレン系重合体を用いた燃料タンクは、公知のブロー成形法等によって製造することができる。例えば、本発明のエチレン系重合体を押出機からダイを通して、そのパリソンを形成する。このパリソンを成形用金型内において、内側より空気圧により膨らませ、金型に密着させると同時に冷却することにより製造する。
本発明のエチレン系重合体は、材料の硬化現象(strain hardening)を生じやすく、その部位の過剰な伸びを抑制する性質があるので、金型の曲部において、パリソンの変形が均一化された状態でブローアップされるため、得られる成形品の曲部の肉厚が従来のものに比べてより厚いものを成形することができる。
【0039】
また、多層の燃料タンクを製造する場合は、例えば、複数の押出機から各層の樹脂組成物を個別に可塑化して同じ円状の流路を有する同一のダイに押出し、ダイ内で各層の肉厚の均一化を行うと共に各層を重ね合わせ、見かけ上、一層のパリソンを形成し、ついで上記と同様にして成形用金型において成形する。
多層の燃料タンクとしては、特に、バリヤ層の両面に接着層を介して本発明のエチレン系重合体組成物による高密度ポリエチレン層を積層した3種5層構造のものが好ましい。その際、バリヤ層の厚さは0.01〜0.5mm、好ましくは0.1〜0.3mm、接着層の厚さは、0.01〜0.5mm、好ましくは0.3mm、高密度ポリエチレン層の厚さは、1〜10mm、好ましくは1.5〜5mmの範囲から選ばれる。
【0040】
多層の場合は、バリヤ層の少なくとも片側に接着層を介して、エチレン系重合体組成物から形成されるポリエチレン層を積層した積層型の燃料タンクとして好適に使用することができる。
バリヤ層は、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性ポリエステル樹脂、鹸化度が93%以上、好ましくは96%以上でエチレン含量が25〜50モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体などのエチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物などから形成することができる。
【0041】
特に、ポリアミド樹脂が形成安定性、ガスバリヤ性の点から好ましく、ジアミンとジカルボン酸との重縮合によって得られるポリアミド、アミノカルボン酸の縮合によって得られるポリアミド、ラクタムから得られるポリアミドまたはこれらの共重合ポリアミドなどの、通常、相対粘度が1〜6程度で、融点が170〜280℃、好ましくは200〜240℃のものが使用される。具体的には、例えば、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−9、ナイロン−11、ナイロン−12、ナイロン−6/66、ナイロン−66/610、ナイロン−6/11などが挙げられる。特にナイロン−6が好適である。
【0042】
本発明においてはポリアミド層は、上記ポリアミド樹脂と無水マレイン酸変性エチレン〜α−オレフィン共重合体とからなる変性ポリアミド樹脂組成物から形成されたものが好ましく、無水マレイン酸変性エチレン〜α−オレフィン共重合体としては、結晶化度が1〜35%、好ましくは1〜30%で、メルトインデックスが0.01〜50g/10分、好ましくは0.1〜20g/10分のエチレン〜α−オレフィン共重合体に、無水マレイン酸を0.05〜1重量%、好ましくは0.2〜0.6重量%グラフトしたものが使用される。エチレン〜α−オレフィン共重合体のα−オレフィンとしてはプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1などが挙げられ、これらのα−オレフィンは、30重量%以下、好ましくは5〜20重量%の割合でエチレンと共重合される。
【0043】
無水マレイン酸変性エチレン〜α−オレフィン共重合体の使用割合は、ポリアミド樹脂100重量部に対して10〜50重量部、好ましくは10〜30重量部の範囲から選ばれ、例えば200〜280℃の温度で押出機などにより混練して使用される。
【0044】
接着層としては、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィンの単独重合体や共重合体を不飽和カルボン酸またはその誘導体で0.01〜1重量%、好ましくは0.02〜0.6重量%グラフトした変性ポリオレフィンが使用できる。特に、密度が0.940〜0.970g/cm3 のエチレン単独重合体またはエチレンと3重量%以下、好ましくは0.05〜0.5重量%のプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1などのα−オレフィンとの共重合体の変性物が好適である。
不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸またはそれらの無水物などが挙げられる。特に無水マレイン酸が好ましい。
【0045】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって更に詳しく説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の諸例において、各種物性試験は以下の方法に従って行った。
(1)極限粘度〔η〕
テトラリン中、130℃で測定した。
(2)密度
JIS K6760に準拠して測定した。
【0046】
(4)メルトテンション(MT)
東洋精機製の『メルトテンションテスター』を使用し、190℃で溶融した試料を直径1mm、長さ5mm、流入角60°のオリフィスから一定速度:0.44g/minで押し出し、0.94m/minで引き取った時の張力を求めた。ドラフト率(引取り速度/ノズル線速度)は1.25となった。
(5)メルトインデックス(HLMI)
ASTM−D−1238−57Tに基づき、190℃、21.6kg荷重で測定した。
【0047】
(6)高速衝撃強度(HRI−IZOD)
<試料の作成>
JISK7110に準拠し、巾:6.0mm、厚さ:9.55mm、のプレス片を長さ63.5mmに切断しノッチ部分を切削加工した。
<測定>
ダイナタップ社製、モデルGRC8250を使用し、−30℃、7.7m/secの条件で測定した。
(7)曲げ剛さ(stiffness)
ASTM D747に準拠して測定した。
【0048】
(実施例1)
(1)固体触媒成分の調製
コンデンサーを備えた3リットルのフラスコを充分に乾燥、窒素置換した後、Mg(OEt)2 を66.5g(0.58mol)、Ti(OBu)4 を98.7g(0.29mol)を仕込み、撹拌下に130℃まで昇温し、熱処理を行った。4時間後、均一な粘調液体が得られた。約80℃まで冷却後トルエン1.0リットルを加え、均一な溶液とした。
充分に乾燥、窒素置換した24リットルのオートクレーブに、上記の溶液を全量移送した。このトルエン溶液にテトラブトキシチタニウムテトラマー1272g(1.31mol)を加え、更に、トルエン4.5リットルを追加した。
撹拌下、40℃で4.24リットル(38.6mol)のTiCl4 をトルエンで4.55mol/lの濃度まで希釈し、3時間かけて添加した。ひき続き30分間かけて105℃まで昇温し、1時間保持した。
次いで、冷却後、ノルマルヘキサンで洗浄し、固体触媒成分を得た。固体触媒成分中のTi含有量は34.9重量%であった。
【0049】
(2)エチレンの予備重合
容量300リットルの予備重合用反応器に、ノルマルヘキサン220リットルを仕込み、次いで実施例1で得た固体触媒成分360gを導入した。水素を2kg/cm2 導入し、80℃に昇温後、トリエチルアルミニウム0.36molをエチレンと共にフィードし予備重合を開始した。エチレンを連続的に導入し、0.5時間予備重合を行い固体触媒成分1g当り10gのポリエチレンを得た。予備重合終了後冷却し、ノルマルヘキサンで洗浄した。
【0050】
(3)エチレンの重合
容量500リットルの反応器を備えた連続重合装置を用いて、エチレン27kg/hr、ノルマルヘキサン63kg/hr、および水素を表−1の示す極限粘度を有するポリエチレンが得られるように連続的に供給すると共に、実施例1で製造した予備重合触媒を2.5g/hr、およびトリエチルアルミニウムを1.5g/hrの速度で導入し、80℃、全圧25kg/cm2 、平均滞留時間3時間の条件下でエチレンの単独重合を行った。反応器内のポリエチレンを25kg/hrの速度で脱ガス槽に導入し、粗分離、乾燥工程を経て、重合体粉末を得た。得られたポリエチレン100重量部にヒンダードフェノール系安定剤であるイルガノックス1010(商品名、チバガイギー社製)を0.1重量部、フォスファイト系安定剤であるイルガフォス168(商品名、チバガイギー社製)を0.05重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部添加してペレット化し、各種物性試験および成形試験に供した。結果を表−1に示す。
【0051】
(実施例2)
(1)固定触媒成分の調製
コンデンサーを備えた3リットルのフラスコを充分に乾燥、窒素置換した後、Mg(OEt)2 を133g(1.16mol)、Ti(OBu)4 を197g(0.58mol)を仕込み、撹拌下に130℃まで昇温し、熱処理を行った。4時間後、均一な粘調液体が得られた。約80℃まで冷却後トルエン1.0リットルを加え、均一な溶液とした。
充分に乾燥、窒素置換した24リットルのオートクレーブに、上記の溶液を全量移送した。このトルエン溶液にテトラブトキシチタニウムテトラマー957g(0.986mol)を加え、更に、トルエンを5.8リットルを追加した。
撹拌下、40℃で1.99リットル(18.13mol)のTiCl4 をトルエンで4.55mol/lの濃度まで希釈し、3時間かけて添加した。ひき続き30分間かけて105℃まで昇温し、1時間保持した。
次いで、冷却後、デカンテーションにより上澄液12.5リットルを抜き出し、更に、10リットルのトルエンで洗浄した。その後、4.0リットルのトルエンを加え、更に4.55mol/lの濃度のTiCl4 /トルエン溶液をTiCl4 量で18.13molとなるように再度添加した。ひきつづき105℃で1時間熱処理を行い、冷却後、ノルマルヘキサンで洗浄し、固定触媒成分を得た。固体触媒成分中のTi含有量は33.8重量%であった。
【0052】
(2)エチレンの予備重合
上記固体触媒成分730gを使用し、トリエチルアルミニウム0.52molを使用した以外は実施例1の予備重合条件と同様に行った。
(3)エチレンの重合
上記の予備重合触媒を2.5g/hr、およびトリエチルアルミニウムを1.5g/hrの速度で導入した以外は実施例1と同様に重合した。結果を表−1に示す。
【0053】
(実施例3)
(1)固体触媒成分の調製
コンデンサーを備えた3リットルのフラスコを充分に乾燥、窒素置換した後、Mg(OEt)2 を133g(1.16mol)、Ti(OBu)4 を197g(0.58mol)を仕込み、撹拌下に130℃まで昇温し、熱処理を行った。4時間後、均一な粘調液体が得られた。約80℃まで冷却後トルエン1.0リットルを加え、均一な溶液とした。
充分に乾燥、窒素置換した24リットルのオートクレーブに、上記の容液を全量移送した。この溶液にトルエンを5.89リットル追加した。
ついで、あらかじめ用意しておいた、TiOCl2 (0.99mol)とTiCl4 (11.6mol)からなる加温された溶液を3時間かけて添加した。ひき続き30分かけて105℃まで昇温し、1時間保持した。その後冷却し、ノルマルヘキサンで洗浄し、固体触媒成分を得た。固体触媒成分中のTi含有量は33.5重量%であった。
【0054】
(2)エチレンの予備重合
上記固体触媒成分730gを使用し、トリエチルアルミニウム0.52molを使用した以外は実施例1の予備重合条件と同様に行った。
(3)エチレンの重合
上記予備重合触媒を2.5g/hr、およびトリエチルアルミニウムを1.75g/hrの速度で導入し、水素とブテン−1を表−1の示す極限粘度、および密度を有するポリエチレンが得られるように連続的に供給した以外は実施例1と同様に重合した。結果を表−1に示す。
【0055】
(実施例4)
(1)固体触媒成分の調製
テトラブトキシチタニウムテトラマーの使用量を844g(0.87mol)に変更した以外は、実施例1と同様に固体触媒成分を調製した。
固体触媒成分中のTi含有量は31.2重量%であった。
(2)エチレンの予備重合
実施例1と同様に行った。
【0056】
(3)エチレンの重合
実施例1と同様の連続重合装置を用いて、エチレン27kg/hr、ノルマルヘキサン63kg/hr、および水素を下記に示す極限粘度を有するポリエチレンが得られるように連続的に供給すると共に、上記予備重合触媒成分を1.7g/hr、およびトリエチルアルミニウムを1.75g/hrの速度で導入し、90℃、全圧25kg/cm2 の条件下で重合させ、粘度平均分子量が12万のエチレン単独重合体を全重合体の75重量%重合した。反応器内のポリエチレンを所定の速度で脱ガス槽に導き、水素を分離後、容量500リットルの2段目反応器に導いた。2段目反応器には、エチレン9kg/hr、ノルマルヘキサン21kg/hrを連続的に供給し、50℃、平均滞留時間1.5時間重合させ、粘度平均分子量が130万の2段目エチレン単独重合体を全重合体の25重量%重合した。反応終了後、重合体の粘度平均分子量を測定したところ34万であった。以下の操作は実施例1と同様に行った。結果を表−1に示す。
【0057】
(比較例1)
エチレンの重合
実施例1で製造した予備重合触媒を1.3g/hr、およびトリエチルアルミニウムを5.3g/hrの速度で導入した以外は実施例1と同様に重合した。結果を表−1に示す。
【0058】
(比較例2)
(1)固体触媒成分の調製
コンデンサーを備えた24リットルオートクレーブを充分に乾燥、窒素置換した後、Mg(OEt)2 を133g(1.16mol)、Ti(OBu)3 Clを160g(0.53mol)、Zr(OBu)3 Clを138g(0.40mol)を仕込み、撹拌下に130℃まで昇温し、熱処理を行った。4時間後、均一な粘調液体が得られた。約80℃まで冷却後トルエン3.5リットルを加え、均一な溶液とした。ついで、40℃でEtAlCl2 210gを1.5時間かけて添加し、残りのEtAlCl2 490gを1.5時間かけて添加した。80℃で2時間撹拌したのち、冷却しノルマルヘキサンで洗浄し、固体触媒成分を得た。固体触媒成分中のTi含有量は10.1重量%であった。
【0059】
(2)エチレンの重合
容量500リットルの反応器を備えた連続重合装置を用いて、エチレン13kg/hr、ノルマルヘキサン32kg/hr、および水素を下記に示す極限粘度を有するポリエチレンが得られるように連続的に供給すると共に、上記固体触媒成分を1.7g/hr、およびトリエチルアルミニウムを4.4g/hrの速度で導入し、90℃、全圧25kg/cm2 の条件下で重合させ、粘度平均分子量が6万のエチレン単独重合体を全重合体の60重量%重合した。反応器内のポリエチレンを所定の速度で脱ガス槽に導き、水素を分離後、容量500リットルの2段目反応器に導いた。2段目反応器には、エチレン11kg/hr、ノルマルヘキサン21kg/hrを連続的に供給し、50℃で重合させ、粘度平均分子量が64万の2段目エンレン単独重合体を全重量体の40重量%重合した。反応終了後、重合体の粘度平均分子量を測定したところ27万であった。以下の操作は実施例1と同様に行った。結果を表−1に示す。
【0060】
(比較例3)
エチレンの重合に際し、トリエチルアルミニウムを1.65g/hrの速度で導入し、表−1に示す極限粘度を得るように水素量を変更した以外は実施例1と同様に重合した。結果を表−1に示す。
【0061】
(比較例4)
市販のエチレン系重合体(昭和電工(株)製『ショーレックス4551H』)を使用した。
【0062】
【表1】
【0063】
(実施例5および比較例5)
表−1に示す実施例および比較例において製造した各HDPEを押出機(シリンダーの設定温度;185〜215℃)にて溶融し、ダイ(ダイ温度;235℃)を通して直径530mmのパリソンを形成した。パリソンコントローラーによりドローダウンを調整し、成形直前のパリソン肉厚が射出方向において一定になるようにして、金型(60L鞍型で40Rコーナー部を有する。温度;20℃)で挟み、空気を圧入(圧力;6kg/cm2 )した後、製品取り出し温度80℃で60リットル容量の燃料タンク(製品重量;7kgおよび10kg)を得た。
【0064】
得られた各燃料タンクについて、落下試験と40Rコーナー部の肉厚を測定した。その結果を表−2に示す。
尚、落下衝撃強度は、燃料タンクに不凍液を満液とし、−40℃で16mの高さから落下させて亀裂の有無を確認することにより強度を評価した。
また、実施例5−1において、40Rコーナー部肉厚を2.2mmとなるように成形したところ、製品重量が5.9kgと製品当り1.1kg軽量化された燃料タンクを得ることができた。この燃料タンクの落下衝撃強度を測定したが、破損は観察されなかった。さらに、製品取り出し温度が、同一冷却時間で、12℃低下することができ、製品1個当り、約24秒の冷却時間の短縮ができた。
【0065】
【表2】
【0066】
(実施例6)
表−3に示す実施例で製造したHDPEと以下に示す接着剤樹脂(イ)およびバリヤー樹脂(ロ)の各層の原料樹脂を別々の押出機を用いて個々に溶融し、同心円状の流路を有する同一ダイに押し出し、ダイ内(ダイ内温度;230℃)で各層を重ね合わせて共押出をして直径530mmのパリソンを形成した。以下実施例5と同様にして60リットル容量の多層(3種5層)の燃料タンク(7kg)を得た。該容器の落下衝撃強度試験で容器に破損は観察されなかった。また、40Rコーナー部の肉厚を測定したところ2.9mmであった。
【0067】
【表3】
【0068】
(イ)変性ポリエチレン(APO)
密度=0.960g/cm3 の高密度ポリエチレンに無水マレイン酸(0.4重量%)をグラフトした変性ポリエチレン。メルトインデックス(MI);0.1g/10分。
(ロ)変性ポリアミド樹脂組成物(MPA)
80重量部の相対粘度4.0のナイロン−6と20重量%の無水マレイン酸(0.3重量%)変性エチレン〜ブテン−1共重合体(エチレン〜ブテン−1(13mol%)共重合体の結晶化度20%で、MIが3.5g/10分)との混合物。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、均一延伸性にすぐれ、高剛性でかつ耐衝撃性等の機械的特性に優れたエチレン系重合体が得られると共に、従来より薄い肉厚でも優れた耐衝撃強度を有し、耐火性に優れ、軽い燃料タンクが得られる。また、冷却時間や射出時間を短縮し、製造サイクルが短縮された燃料タンクの製造が可能となる。
Claims (1)
- エチレン単独重合体、または、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなりα−オレフィン含有量が10重量%以下であるエチレン共重合体であって、
(1)極限粘度[η]が2.3〜5.5(dl/g)
(2)密度が0.955〜0.970(g/cm3 )
(3)溶融張力(MT)と21.6kg荷重のメルトインデックス(HLMI)の関係が、
MT≧−12.4logHLMI+20.5
(4)−30℃で測定した高速衝撃強度(HRI−IZOD)とHLMIの関係が、
HRI−IZOD≧−logHLMI+1.4
であることを特徴とするエチレン系重合体。
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