JP3780233B2 - 把持装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロボットハンド等に使用するのに好適な把持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ロボットハンドに使用される把持装置は、一般に流体圧シリンダを使用したものが多く、各種の分野で流体圧シリンダを用いた把持装置が使用されている。また流体圧シリンダの他にも、電動モータや電磁ソレノイドをアクチュエータとして利用した把持装置がある。そして把持装置は、こうした流体圧シリンダなど、駆動源の種類にかかわらずカム、リンクなどの機構を介して把持機構の爪を開閉させる構造になっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の把持装置では把持力の調整が難しく、例えばモータの場合には、把持位置まで動作してモータの回転を止めた場合に把持力を継続的に発生すること、把持する瞬間にモータの力が直接かかって把持対象物を破損させないことへの課題があった。
また、サイズの異なる対象物の変化への対応がスムーズに行えないという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、異なるサイズの対象物を常に適切な力で把持することができる把持装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の把持装置は、本体に一対のガイドロッドが平行に固定され、各ガイドロッドにスライダが軸方向に移動可能に組み付けられ、一方のスライダは、対応するガイドロッドとの間に配設された磁気バネによって所定方向に吸引力が作用し、他方のスライダは、対応するガイドロッドとの間に配設された磁気バネによって所定方向と逆向きに吸引力が作用しており、その磁気バネの吸引力によるスライダの移動位置を、スライダに当てた同一円周上を回転する一対の駆動ローラによって調整するものであって、前記一対の駆動ローラを段違いに軸支するクランク状に形成されたローラベースと、前記ローラベースの回転を、磁気カップリングを介して制御するモータと、を有し、前記スライダーの各々に突設された作用プレートを、前記ローラベースによって異なる高さに配設された駆動ローラに対し、前記ローラベースに干渉しないように当接させたものであることを特徴とする。
【0006】
よって本発明によれば、モータの回転が磁気カップリングを介してローラベースに伝達され、そのローラベースの回転によってそこに軸支された駆動ローラが同一円周上を移動し、その一対の駆動ローラには磁気バネの吸引力によってそれぞれスライダが当てられているため、駆動ローラの移動に従ってスライダが移動することとなるが、こうしたスライダに把持用爪を取り付ければ、その磁気バネのバネ力によって把持対象物を把持することができる。
こうした本発明では、把持対象物の把持に適切なバネ力を設定しておけば、ほぼ一定のバネ力を発生させる磁気バネの特性によって把持物の寸法が変わっても常に同様な把持特性が得られる。
【0007】
また、本発明によれば、一方の作用プレートが他方の作用プレート及び駆動ローラに邪魔されることなく移動することができるので、スライダのストロークを大きくとることができ、装置全体を小型にしながら大きなものを把持することができるようになる。
【0008】
また、本発明の把持装置は、前記磁気カップリングが、前記モータの回転軸に固定されたオスカップリングと、当該オスカップリングの外側に回転自在に同軸配置されたメスカップリングとにそれぞれ円筒形状の永久磁石が非接触状態で固定され、その永久磁石には、それぞれ円周方向に分割してN極及びS極が交互に着磁され、異なる磁極同士吸引し合うようにしたものであることを特徴とする。
よって、本発明によれば、磁気カップリングを介して回転を伝達するため、例えば把持対象物に対してモータの回転量が大き過ぎた場合でも、磁気カップリングで空回りして当該対象物に過負荷が係るのを防止することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る把持装置について、その一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1及び図2は把持装置を示した平面図であり、図1は解放時を、図2はチャック時の状態を示している。また、図3は、図1に示す状態の把持装置1を矢印A方向から示した断面図であり、図4は、図2に示す状態の把持装置1を矢印B方向から示した断面図である。更に、図5は図1の矢印C方向から把持装置1を示した断面図である。
【0010】
この把持装置1は、先ず図1及び図2に示すように、本体2の上面に2本のガイドロッド3,4が平行に固定され、そのガイドロッド3,4を通すようにしてスライダ5,6がそれぞれ軸方向に移動可能に組み付けられている。ガイドロッド3,4は、ボール起動溝が形成されスプライン軸を構成しており、各スライダ5,6の貫通孔5a,6a内にはそれぞれボールスプライン7,8が嵌装され、スライダ5,6が回転方向に傾くことがないようになっている。
【0011】
また、ガイドロッド3,4とスライダ5,6の各組合せには磁気バネ9,10がそれぞれ設けられ、スライダ5は図面右側へ、そしてスライダ6は図面左側へとそれぞれ逆向きに吸引力が作用するように構成されている。磁気バネ9,10は、それぞれガイドロッド3,4に円筒形状マグネット(永久磁石)11,13が固定され、スライダ5,6の貫通孔5a,6a内にも円筒形状マグネット(永久磁石)12,14が固定されている。磁気バネ9,10は、それぞれ固定側のマグネット11,12と可動側のマグネット13,14が軸方向の長さが等しく、そして非接触状態で同軸上に重ねることができる径で形成されたものであり、対向する面にはN極又はS極の異なる磁極が着磁されている。
【0012】
軸方向の寸法が同じ固定側と可動側のマグネット11,13又はマグネット12,14は、軸方向にずれた状態で互いに吸引し合い、両端が重なった状態で力が釣り合う。把持装置1は、こうした軸方向のずれに対してそれを釣り合った状態に戻そうとする磁気バネ9,10の吸引力(バネ力)を利用し、その力で把持動作を行わせるようにしたものである。こうしたバネ力が作用するスライダ5,6には作用プレート5b,6bが内側に突設され、それぞれ駆動ローラ15,16が当てられている。
【0013】
駆動ローラ15,16は、180゜ずれた位置で同一円周上を回転するようにしたものであり、各スライダ5,6に対してバネ力が作用する方向から作用プレート5b,6bが当てられている。すなわちこの把持装置1は、駆動ローラ15,16の移動によって、磁気バネ9,10のバネ力が作用したスライダ5,6をそのバネ力に抗して移動させ、把持動作を行わせるようにしたものである。
【0014】
ところで各磁気バネ9,10は、図2に示す状態でマグネット11,13/12,14に所定寸法だけずれを生じさせているが、これは常に一定の把持力を発生させるようにしているためである。ここで図6は、マグネット11,13(マグネット12,14も同じ)のストロークと推力の特性をグラフにしたものであり、マグネット11,13が重なった状態をストロークゼロとして示している。磁気バネ9(磁気バネ10)は、軸方向にずれたマグネット11,13によって、吸引力が図6に示すように所定のストローク間でほぼ同じ値を示すようになる。そして、それはマグネット11,13における軸方向のズレ量を大きくする引っ張り時も、逆に戻る時の対象物を押し付ける時もほぼ同じ値であった。
【0015】
把持装置1では、特にこの吸引力が安定するストロークの領域を利用し、把持位置が異なっても常に一定のバネ力で把持できるようにストローク0〜S間を不使用状態にしている。つまり、前述したように図2に示す状態で作用プレート5b,6bが駆動ローラ15,16に当たるようにして、そのずれ量がストローク0〜Sに相当する距離になっている。こうして、磁気バネ9,10の吸引力を一定にして対象物の大きさが異なっても、常に一定の力で把持することができるようになっている。
【0016】
また、固定側と可動側のマグネット11,13又はマグネット12,14が最も重なる図2に示す状態でもずれが生じているため、常に磁気バネ9,10にバネ力が発生し、作用プレート5b,6bが常に駆動ローラ15,16に対して押し当てられた状態になっている。これによって作用プレート5b,6bが駆動ローラ15,16に常に接触した状態になっているため、駆動ローラ15,16の動作に対してスライダ5,6の運動が安定して追従するようになっている。
【0017】
スライダ5,6の作用プレート5b,6bは、図5に示すように上下にずらして突設され、図2に示すように重なった場合でも互いに干渉しないように、駆動ローラ15,16は、クランク状に構成されたローラベース20によって段違いに軸支されている。
すなわちローラベース20は、図3及び図4に示すようにリング21とクランクバー22とがローラ軸23を介して平行に連結され、クランクバー22には、ローラベース20の回転中心に対してローラ軸23と対称的な位置にローラ軸24が固定されている。そして、各ローラ軸23,24に駆動ローラ15,16が取り付けられ、それぞれに作用プレート5b,6bが異なる高さで当てられている。
【0018】
把持装置1は、把持動作を行わせる駆動手段として例えばステッピングモータ28が利用され、ステッピングモータ28の回転出力を駆動ローラ15,16を介してスライダ5,6の往復直線運動に変換させている。ステッピングモータ28の回転軸28aには、磁気カップリング30を介してローラベース20のリング21が固定され、回転出力が伝達されるようになっている。
【0019】
磁気カップリング30は、ステッピングモータ28の回転軸28aにオスカップリング31が固定され、その外側には円筒状のメスカップリング32が本体2に対してベアリング29,29を介して回転自在に取り付けられており、それぞれに円筒形状マグネット(永久磁石)33,34が固定されている。マグネット33,34は、軸方向の長さが等しく非接触状態で同軸上に配置され、それぞれ円周方向に4分割してN極及びS極が交互に着磁され、異なる磁極同士吸引し合っている。そして、メスカップリング32にローラベース20のリング21が固定され、磁気カップリング30によってステッピングモータ28の回転出力がローラベース20へと伝達されるようになっている。
【0020】
次に、こうした構成の把持装置1について、その動作を説明する。
本実施形態では、図1に示すように作用プレート5b,6bが最も離れた状態になる駆動ローラ15,16の位置を把持前の初期状態としている。すなわち、スライダ5,6に取り付けられた図3に一点鎖線で示す把持用爪41,42が最も開いた状態である。なお、把持用爪41のスライダ5は図面上省略している。図4においても同じ。
そこでステッピングモータ28が駆動すれば、その回転が磁気カップリング30を介してローラベース20に伝えられ、把持用爪41,42が徐々に近づき、図2に示すように180゜回転して駆動ローラ15,16の位置が入れ代わったところで、図4に示すように最も閉じた状態になる。
【0021】
先ずステッピングモータ28の駆動は、その回転軸28aに固定されたオスカップリング31を回転させ、ローラベース20へはその回転が磁気カップリング30を介して非接触状態で伝達される。すなわち、対向配置されたマグネット33,34には円周方向に交互にN極とS極の磁極が着磁され互いに吸引し合っているため、オスカップリング31に固定されたマグネット33が回転すれば、互いに吸引し合っているマグネット34が共回りし、メスカップリング32に回転が生じる。
【0022】
そして、メスカップリング32にはローラベース20のリング21が固定されているため、メスカップリング32への回転伝達によりローラベース20が回転する。駆動ローラ15,16は、その回転中心に対して対称的に配置されているため、ローラベース20が回転して図1に示す状態からクランクバー22が徐々に傾けば、同じ回転角度分だけ同一円周上を移動し、図1の位置からその図面上を横方向に、駆動ローラ15は右側へ、駆動ローラ16は左側へと同じ量だけ位置を変化させる。
【0023】
スライダ5,6は、その駆動ローラ15,16に対して作用プレート5b,6bが磁気バネ9,10によって押し付けられ、その駆動ローラ15,16に従って移動する。その際、ローラベース20がクランク状に形成されているため、図2に示すように駆動ローラ15,16の位置が入れ代わっても、作用プレート6bはクランクバー22の下に入り込み、図5に示すように作用プレート5b,6bが互いに干渉することはない。そして、このときスライダ5,6に取り付けられた把持用爪41,42が図4から図5に示すように接近して把持動作を行う。
【0024】
従って、図4から図5に示す把持用爪41,42の把持領域に対象物が置かれていれば、その把持対象物は左右両側からつかまれて把持される。把持用爪41,42が対象物を把持する把持力は、それぞれスライダ5,6に作用している磁気バネ9,10のバネ力であり、どの位置で把持してもほぼ一定である。
そして、把持した対象物を放す場合には、ステッピングモータ28を駆動させてローラベース20に逆回転を与える。これにより図1の状態に戻ろうとする駆動ローラ15,16が、磁気バネ9,10のバネ力に抗して作用プレート5b,6bを押し戻し、スライダ5,6に固定された把持用爪41,42が広げられる。
【0025】
以上、本実施形態の把持装置1によれば、ステッピングモータ28の回転出力によってスライダ5,6を往復直線運動させて把持させるようにしているが、スライダ5,6を運動させるために磁気バネ9,10を使用しているため、モータ28の力が把持対象物に直接加わることなく、その磁気バネ9,10の磁力によって常に適切な力で把持することができる。
また、モータの回転は磁気カップリング30を介して伝達されるため、大きな抵抗が作用したような場合には脱調して空回りし、把持対象物へ過大な負荷がかかるのを防止することができる。
【0026】
また、ローラベース20をクランク状に形成して駆動ローラ15,16を段違いに取り付け、それにスライダ5,6の作用プレート5b,6bを当てているため、一方の駆動ローラ15,16に当接した作用プレート5b,6bが他方の駆動ローラ15,16に干渉することがないため、ローラベース20を180゜回転させてスライダ5,6を移動させることができる。従って、スライダのストロークを大きくとることができ、装置を小型にしながらも大きな把持対象物を把持するとができる。
【0027】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば前記実施形態では、ストロークを大きくとるためにローラベース20をクランク状に構成したが、ストロークを大きくとる必要がない場合や、装置自体を大きくできるような場合には、ローラベースをクランク状にする必要はない。
また、例えば前記実施形態では2本のガイドロッド3,4にそれぞれスライダ5,6を取り付けたが、1本のガイドロッドにスライダを取り付けるようにして構成しもよい。
【0028】
更に、これまでの説明による動作は磁気バネ2つの力によって把持するため、磁気力に不均衡があった場合には精密にセンタリングした状態で把持することができないことがある。そうした場合、精密なセンタリングを行うには駆動ローラ15,16を逆方向に動作させ、駆動ローラ15,16の駆動力を作用プレート5b,6bに直接作用させて、磁気バネを復帰作動時のリターンスプリングの機能だけを負わせることができる。この場合には、モータ出力軸に設置した磁気カップリング30のみが把持対象物に加わる力の緩衝機能を果たすことになるが、磁気カップリング30ではバネを回転方向に作用させるため一定の力にはならず、sinカーブに従ってバネ力が発生する。そのため、この磁気バネの最大発生力を把持の限界値に設定すれば、把持対象物を破損させることなくその前に脱調させることができる。磁気バネの最大発生力は、着磁条件による調整又は内筒、外筒の磁石の重なり量を変化させる事により調整できる。
【0029】
【発明の効果】
本発明は、ガイドロッドに対して互いに逆向きに吸引力が作用するように磁気バネを介してスライダが配設され、その磁気バネの吸引力によるスライダの移動位置を、スライダに当てた同一円周上を回転する一対の駆動ローラによって調整するものであって、当該一対の駆動ローラを軸支したローラベースの回転を、磁気カップリングを介してモータによって制御するようにしたので、異なるサイズの対象物を常に適切な力で把持することができる把持装置を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 把持装置の一実施形態を示した平面図である。
【図2】 把持装置の一実施形態を示した平面図である。
【図3】 図1に示す状態の把持装置1を矢印A方向から示した断面図である。
【図4】 図2に示す状態の把持装置1を矢印B方向から示した断面図である。
【図5】 図1の矢印C方向から把持装置1を示した断面図である。
【図6】 マグネットのストロークと推力の特性をグラフにして示した図である。
【符号の説明】
1 把持装置
3,4 ガイドロッド
5,6 スライダ
9,10 磁気バネ
15,16 駆動ローラ
20 ローラベース
28 ステッピングモータ
30 磁気カップリング

Claims (2)

  1. 本体に一対のガイドロッドが平行に固定され、各ガイドロッドにスライダが軸方向に移動可能に組み付けられ、一方のスライダは、対応するガイドロッドとの間に配設された磁気バネによって所定方向に吸引力が作用し、他方のスライダは、対応するガイドロッドとの間に配設された磁気バネによって所定方向と逆向きに吸引力が作用しており、その磁気バネの吸引力によるスライダの移動位置を、スライダに当てた同一円周上を回転する一対の駆動ローラによって調整するものであって、
    前記一対の駆動ローラを段違いに軸支するクランク状に形成されたローラベースと、
    前記ローラベースの回転を、磁気カップリングを介して制御するモータと、を有し、
    前記スライダーの各々に突設された作用プレートを、前記ローラベースによって異なる高さに配設された駆動ローラに対し、前記ローラベースに干渉しないように当接させたものであることを特徴とする把持装置。
  2. 請求項1に記載する把持装置において、
    前記磁気カップリングは、前記モータの回転軸に固定されたオスカップリングと、当該オスカップリングの外側に回転自在に同軸配置されたメスカップリングとにそれぞれ円筒形状の永久磁石が非接触状態で固定され、その永久磁石には、それぞれ円周方向に分割してN極及びS極が交互に着磁され、異なる磁極同士吸引し合うようにしたものであることを特徴とする把持装置。
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