JP3779624B2 - 透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。さらに詳しくは透明性、耐湿熱性に優れ、さらには燃焼時の樹脂のドリップ防止性にも優れた透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂は射出成形などの簡便で生産性に優れた加工法により種々の成形品に形成され、幅広い産業分野で利用されている。とりわけ各種照明カバー、透過型ディスプレイ用の保護カバー等の高い透明性が要求される用途には、芳香族ポリカーボネート樹脂の高い光線透過率と極めて低いヘーズに代表される優れた透明性を生かして幅広く使用されている。これらの用途においては蛍光灯や電球等の光源が高温になる、あるいは浴室または屋外で使用する場合高い湿気に曝される等の理由から、熱や湿気に曝されても透明性、色相、機械的特性を保持する必要があり、樹脂組成物の透明性に加えて樹脂組成物の耐湿熱性が重視されている。
【0003】
また、これらの用途では近年、火災時の難燃性についても注目されており、上記の特性に加えて高度な難燃性を有する樹脂組成物が求められている。芳香族ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与する方法としては、従来ハロゲン系化合物やリン系化合物を添加した難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提案されており、難燃化の要望の強いOA機器、家電製品などに利用されているが、一方でこれらの難燃剤に代わる難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が開発され、上記に挙げた製品などに使用されつつある。かかる難燃剤変更の目的としては、成形時における腐蝕ガスの発生の抑制、または製品のリサイクル性の向上などが挙げられる。
【0004】
上記に挙げた難燃剤に代わる難燃剤としては例えばシリコーン化合物を挙げることができる。シリコーン化合物を芳香族ポリカーボネート樹脂に配合した難燃性樹脂組成物は近年精力的に検討され、種々の提案がされている。
【0005】
例えばポリカーボネート樹脂にパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩とアルコキシ基、ビニル基およびフェニル基を有する有機シロキサンを配合する方法(特開平6−306265号公報)、およびポリカーボネート樹脂にパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と2価炭化水素基を介してケイ素原子に結合のオルガノキシシリル基を含有するオルガノポリシロキサンを配合する方法(特開平6−336547号公報)などが提案されている。
【0006】
また、樹脂成分に特定の石油系重質油類またはピッチ類とシリコーン化合物を配合する方法(特開平9−169914号公報)、および芳香環を有する非シリコーン樹脂に式R2SiO1.0で示される単位とRSiO1.5で示される単位を持ち、重量平均分子量が10,000以上270,000以下であるシリコーン樹脂を配合する方法(特開平10−139964号公報)などが提案されている。
【0007】
しかしながら、上記提案のポリカーボネート樹脂組成物は透明性、耐湿熱性、難燃性が十分とはいえないものであった。例えば薄肉の場合にドリップを生じUL規格94のV−0ランクを達成できない、またはシリコーンの分散が不十分で成形品に白濁が生じる、あるいは湿熱処理によりシリコーンが凝集して湿熱処理後の透明性が低下する、などである。
【0008】
一方、特公昭60−38419号公報には、芳香族ポリカーボネート樹脂に有機アルカリ金属塩、およびポリ(メチル水素シロキサン)からなる樹脂組成物が具体的に記載されている。しかしながらかかる樹脂組成物は樹脂組成物自体が白濁し、さらには成形品表面で剥離などの分散不良が発生し、十分とは言えないものであった。
【0009】
さらにドリップ防止剤としては現在フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを使用することが多い。しかしながらポリテトラフルオロエチレンを芳香族ポリカーボネート樹脂に配合するとポリテトラフルオロエチレンと芳香族ポリカーボネート樹脂が非相溶性であるために成形品の透明性が低下する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。さらに詳しくは良好な透明性、耐湿熱性に優れ、さらには燃焼時の樹脂のドリップ防止性にも優れた透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、芳香族ポリカーボネート樹脂、特定のシリコーン化合物を特定量組合わせることで目的とする透明性、耐湿熱性に優れ、さらには燃焼時の樹脂のドリップ防止性にも優れた透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、
分子中にSi−H基および芳香族基を含有するシリコーン化合物であって、
▲1▼Si−H基が含まれる量(Si−H量)が0.1〜1.2mol/100g、
▲2▼下記一般式(1)で示される芳香族基が含まれる割合(芳香族基量)が10〜70重量%、
【0013】
【化5】
【0014】
(式(1)中、Xはそれぞれ独立にOH基、炭素数1〜20の一価の有機残基を示す。nは0〜5の整数を表わす。更に式(1)中においてnが2以上の場合はそれぞれ互いに異なる種類のXを取ることができる。)
【0015】
▲3▼平均重合度が3〜80、
であるシリコーン化合物の中から選択される少なくとも一種以上のシリコーン化合物(B)0.1〜10重量部を配合してなる透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品に関わるものである。
【0016】
本発明の(A)成分として使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、通常二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法、溶融エステル交換法で反応させて得られたものの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法により重合させたもの、または環状カーボネート化合物の開環重合法により重合させて得られるものである。
【0017】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0018】
なかでもビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単独重合体または共重合体が好ましく、特に、ビスフェノールAの単独重合体および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンまたはα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンとの共重合体が好ましく使用される。
【0019】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0020】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融エステル交換法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0021】
三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0022】
かかる分岐ポリカーボネート樹脂を生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%であるものが好ましい。尚、かかる割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0023】
界面重縮合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0024】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノールまたは低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式(5)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0025】
【化6】
【0026】
(式中、Aは水素原子または炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはフェニル基置換アルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。)
【0027】
上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0028】
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類も示すことができる。これらのなかでは、下記一般式(6)および(7)で表される長鎖のアルキル基を置換基として有するフェノール類が好ましく使用される。
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
(式中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。)
【0032】
かかる一般式(6)の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
【0033】
また、一般式(7)の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0034】
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を1.33×103〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0035】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0036】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-8〜1×10-3当量、より好ましくは1×10-7〜5×10-4当量の範囲で選ばれる。
【0037】
また、かかる重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えばビス(クロロフェニル)カーボネート、ビス(ブロモフェニル)カーボネート、ビス(ニトロフェニル)カーボネート、ビス(フェニルフェニル)カーボネート、クロロフェニルフェニルカーボネート、ブロモフェニルフェニルカーボネート、ニトロフェニルフェニルカーボネート、フェニルフェニルカーボネート、メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよびエトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。なかでも2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく、特に2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく使用される。
【0038】
さらにかかる重合反応において触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。この失活剤の具体例としては、例えばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸フェニルなどのスルホン酸エステル;さらに、トリフルオロメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルホン化ポリスチレン、アクリル酸メチル‐スルホン化スチレン共重合体、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−プロピル、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−ブチル、オクチルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、デシルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラエチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラヘキシルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム塩、デシルアンモニウムブチルサルフェート、デシルアンモニウムデシルサルフェート、ドデシルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシルアンモニウムエチルサルフェート、ドデシルメチルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシルジメチルアンモニウムテトラデシルサルフェート、テトラデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、テトラメチルアンモニウムヘキシルサルフェート、デシルトリメチルアンモニウムヘキサデシルサルフェート、テトラブチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラメチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート等の化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの化合物を二種以上併用することもできる。
【0039】
失活剤の中でもホスホニウム塩もしくはアンモニウム塩型のものが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましく、また重合後のポリカーボネート樹脂に対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。
【0040】
ポリカーボネート樹脂の分子量は特定されないが、粘度平均分子量が10,000未満であると高温特性等が低下し、50,000を超えると成形加工性が低下するようになるので、粘度平均分子量が10,000〜50,000のものが好ましく、14,000〜30,000のものがより好ましく、さらに好ましくは14,000〜24,000である。また、ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合しても差し支えない。この場合粘度平均分子量が上記範囲外であるポリカーボネート樹脂とを混合することも当然に可能である。
【0041】
特に粘度平均分子量が50,000を超えるポリカーボネート樹脂との混合物はドリップ防止能が高く、本発明の効果をさらに効率的に発揮するため好ましいものである。より好ましくは粘度平均分子量が80,000以上のポリカーボネート樹脂との混合物であり、さらに好ましくは100,000以上の粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂との混合物である。すなわちGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)などの方法により明らかな2ピークの分布を有するものが好ましく使用できる。
【0042】
本発明でいう粘度平均分子量はまず次式にて算出される比粘度を塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
【0043】
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4M0.83
c=0.7
【0044】
本発明の(A)成分の芳香族ポリカーボネートは、上記芳香族ポリカーボネート樹脂であって、かつ実質的にハロゲン原子を含まないものである。実質的にハロゲン原子を含まないとは、分子中にハロゲン置換二価フェノールなどを含まないことを示し、上記芳香族ポリカーボネートの製造方法において残留する微量の塩素系溶媒、カーボネート前駆体までも対象とするものではない。
【0045】
本発明の(B)成分として使用されるシリコーン化合物は特定のSi−H結合を有するシリコーン化合物である。即ち、
分子中にSi−H基および芳香族基を含有するシリコーン化合物であって、
▲1▼Si−H基が含まれる量(Si−H量)が0.1〜1.2mol/100g、
▲2▼下記一般式(1)で示される芳香族基が含まれる割合(芳香族基量)が10〜70重量%、
【0046】
【化9】
【0047】
(式(1)中、Xはそれぞれ独立にOH基、炭素数1〜20の一価の有機残基を示す。nは0〜5の整数を表わす。更に式(1)中においてnが2以上の場合はそれぞれ互いに異なる種類のXを取ることができる。)
【0048】
▲3▼平均重合度が3〜80、
であるシリコーン化合物の中から選択される少なくとも一種以上のシリコーン化合物(B)である。
【0049】
好ましくは、Si−H結合含有単位として、下記一般式(2)および(3)で示される構成単位のうち、少なくとも一種以上の式で示される構成単位を含むシリコーン化合物の中から選択される少なくとも一種以上のシリコーン化合物である。
【0050】
【化10】
【0051】
【化11】
【0052】
(式(2)および式(3)中、Z1〜Z3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の一価の有機残基、または下記一般式(4)で示される化合物を示す。α1〜α3はそれぞれ独立に0または1を表わす。m1は0もしくはそれ以上の整数を表わす。更に式(3)中においてm1が2以上の場合の繰返し単位はそれぞれ互いに異なる複数の繰返し単位を取ることができる。)
【0053】
【化12】
【0054】
(式(4)中、Z4〜Z8はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の一価の有機残基を示す。α4〜α8はそれぞれ独立に0または1を表わす。m2は0もしくはそれ以上の整数を表わす。更に式(4)中においてm2が2以上の場合の繰返し単位はそれぞれ互いに異なる複数の繰返し単位を取ることができる。)
より好ましくは、Mを1官能性シロキサン単位、Dを2官能性シロキサン単位、Tを3官能性シロキサン単位で表わした時、MD単位またはMDT単位からなるシリコーン化合物である。
【0055】
上記一般式(2)、(3)および(4)で示される構成単位のZ1〜Z8、および一般式(X)のXにおける炭素数1〜20の一価の有機残基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、アラルキル基を挙げることができ、さらにこれらの基はエポキシ基、カルボキシル基、無水カルボン酸基、アミノ基、およびメルカプト基などの各種官能基を含むものであってもよい。さらに好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、特にはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、またはフェニル基が好ましい。
【0056】
前記一般式(2)および(3)で示される構成単位のうち、少なくとも一種以上の式で示される構成単位を含むシリコーン化合物において、複数のシロキサン結合の繰返し単位を有する場合は、それらはランダム共重合、ブロック共重合、テーパード共重合のいずれの形態を取ることも可能である。
【0057】
本発明においては、(B)成分としての前記シリコーン化合物において、シリコーン化合物中のSi−H量を0.1〜1.2mol/100gの範囲とすることが必要とされる。Si−H量が0.1〜1.2mol/100gの範囲にあることで、燃焼時にシリコーンのストラクチャーの形成が容易となる。さらに好ましくはSi−H量が0.2〜1.0mol/100gの範囲にあるシリコーン化合物である。Si−H量が0.1mol/100gより少ないとシリコーンのストラクチャー形成が困難となり、1.2mol/100gより多いと組成物の熱安定性が低下する上に、湿熱処理時に過剰なSi−H基が空気中の水分と反応して水素ガスを発生して発泡し、成形品が白濁してしまう。尚、ここでシリコーンのストラクチャーとは、シリコーン化合物相互の反応、または樹脂とシリコーンとの反応により生成する網状構造をさす。
また、ここで言うSi−H量とは、シリコーン化合物100gあたりに含まれるSi−H構造のmol数を言うが、これはアルカリ分解法により、シリコーン化合物の単位重量当たり発生した水素ガスの体積を測定することにより求めることができる。例えば、25℃においてシリコーン化合物1g当たり122mlの水素ガスが発生した場合、下記計算式により、Si−H量は0.5mol/100gとなる。
122×273/(273+25)÷22400×100≒0.5
【0058】
一方、芳香族ポリカーボネート樹脂にシリコーン化合物を配合した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、成形品の白濁、あるいは湿熱処理による透明性の低下を抑えるためには、シリコーン化合物の分散状態が重要である。シリコーン化合物が偏在する場合には、樹脂組成物自体が白濁し、さらには成形品表面で剥離などが生じたり、あるいは湿熱処理時にシリコーン化合物が移行して偏在して透明性が低下するなど、透明性の良好な成形品を得ることが困難となるためである。かかる分散状態を決定する重要な因子としてシリコーン化合物中の芳香族基量、平均重合度が挙げられる。
【0059】
かかる観点より、本発明のシリコーン化合物としては、シリコーン化合物中の芳香族基量が10〜70重量%の範囲にあるものとすることが必要とされる。さらに好ましくは芳香族基量が15〜60重量%の範囲にあるシリコーン化合物である。シリコーン化合物中の芳香族基量が10重量%より少ないとシリコーン化合物が偏在して分散不良となり、透明性が良好な成形品を得ることが困難となる。芳香族基量が70重量%より多いとシリコーン化合物自体の分子の剛直性が高くなるためやはり偏在して分散不良となり、透明性が良好な成形品を得ることが困難となる。
【0060】
また、ここで芳香族基量とは、シリコーン化合物において、下記一般式(1)で示される芳香族基が含まれる割合のことを言い、下記計算式によって求めることができる。
【0061】
【化13】
【0062】
芳香族基量=〔A/M〕×100(重量%)
ここで、上記式におけるA、Mはそれぞれ以下の数値を表す。
A=シリコーン化合物1分子中に含まれる、全ての一般式(1)で示される芳香族基部分の合計分子量
M=シリコーン化合物の分子量
【0063】
また、平均重合度は3〜80の範囲にあることが必要とされる。さらに好ましくは平均重合度が3〜60の範囲にあるシリコーン化合物である。平均重合度が3より小さいと湿熱処理時にシリコーン化合物が移行し易くなり、偏在して透明性が低下する。また、芳香族ポリカーボネート樹脂と溶融混合する際に系外に揮発する成分が多くなり、ドリップ防止効果が発揮されないばかりか、揮発成分による成形不良等の不具合を引き起こすことがある。平均重合度が80より大きいとシリコーン化合物が微分散し難く、偏在して分散不良となり、透明性が良好な成形品を得ることが困難となる。
【0064】
上記一般式で示されるシリコーン化合物としては、上記の条件を満たすものであれば直鎖状であっても分岐構造を持つものであっても良く、Si−H基を分子構造中の側鎖、末端、分岐点の何れか、または複数の部位に有する各種の化合物を用いることが可能である。
【0065】
一般的にシリコーン化合物の構造は、以下に示す4種類のシロキサン単位を任意に組み合わせることによって構成される。
M単位:(CH3)3SiO1/2、H(CH3)2SiO1/2、H2(CH3)SiO1/2、(CH3)2(CH2=CH)SiO1/2、(CH3)2(C6H5)SiO1/2、(CH3)(C6H5)(CH2=CH)SiO1/2等の1官能性シロキサン単位
D単位:(CH3)2SiO、H(CH3)SiO、H2SiO、H(C6H5)SiO、(CH3)(CH2=CH)SiO、(C6H5)2SiO等の2官能性シロキサン単位
T単位:(CH3)SiO3/2、(C3H7)SiO3/2、HSiO3/2、(CH2=CH)SiO3/2、(C6H5)SiO3/2等の3官能性シロキサン単位
Q単位:SiO2で示される4官能性シロキサン単位
【0066】
本発明において使用されるシリコーン化合物の構造は、具体的には、示性式としてDn、Tp、MmDn、MmTp、MmQq、MmDnTp、MmDnQq、MmTpQq、MmDnTpQq、DnTp、DnQq、DnTpQqが挙げられる。この中で好ましいシリコーン化合物の構造は、MmDn、MmTp、MmDnTp、MmDnQqであり、さらに好ましい構造は、MmDn、MmDnTpである。
(ここで、上記示性式中の係数m、n、p、qは各シロキサン単位の重合度を表す正数であり、各示性式における係数の合計は3〜80の範囲である。またm、n、p、qのいずれかが2以上の数値である場合、その係数の付いたシロキサン単位は、結合する水素原子や有機残基が異なる2種以上のシロキサン単位とすることができる。)
【0067】
なお、本発明でいう平均重合度とは、上記示性式中の係数m、n、p、qの合計として表されるものであり、M単位、D単位、T単位、Q単位の4種のシロキサン単位の構成単位比を、係数m、n、p、qの合計が3〜80の範囲となるように任意に設定することで、容易に平均重合度が3〜80の範囲を達成することができる。
【0068】
上記のシリコーン化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0069】
このようなSi−H結合を有するシリコーン化合物は、それ自体従来公知の方法によって製造することができる。例えば、目的とするシリコーン化合物の構造に従い、相当するオルガノクロロシラン類を共加水分解し、副生する塩酸や低沸分を除去することによって目的物を得ることができる。また、分子中にSi−H結合や一般式(1)で示される芳香族基、その他の有機残基を有するシリコーンオイル、環状シロキサンやアルコキシシラン類を出発原料とする場合には、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸等の酸触媒を使用し、場合によって加水分解のための水を添加して、重合反応を進行させた後、使用した酸触媒や低沸分を同様に除去することによって、目的とするシリコーン化合物を得ることができる。
【0070】
前記(B)成分のシリコーン化合物は、(A)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜7重量部、より好ましくは1.2〜5重量部配合される。
【0071】
本発明の樹脂組成物には、さらに(C)成分としてラジカル発生剤、有機アルカリ金属塩および有機アルカリ土類金属塩より選ばれる少なくとも一種の化合物を配合することができる。この(C)成分の配合により、難燃性をより向上させることができ、殊にドリップ防止性が改良される。(C)成分の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、0.001〜0.3重量部、好ましくは0.005〜0.3重量部、より好ましくは0.005〜0.2重量部の範囲が適当である。
【0072】
本発明の(C)成分として使用されるラジカル発生剤としては、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(ジクミル)等が挙げられ、これらは日本油脂(株)製パーヘキシン25B、パークミルD、ノフマーBC等の商品名で市販されており容易に入手できる。特に溶融混練時にはラジカルの発生が極力少なく、燃焼時に有効にある程度安定したラジカルを発生するものが好ましいため、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(ジクミル)をより好ましいラジカル発生剤として挙げることができる。
【0073】
本発明の(C)成分として使用されるアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩としては、従来ポリカーボネート樹脂を難燃化するのに使用されている各種の金属塩が使用可能であるが、特に有機スルホン酸の金属塩、または硫酸エステルの金属塩を挙げることができる。これらは単独の使用だけでなく、2種以上を混合して使用することも可能である。尚、本発明のアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられ、特に好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムである。
【0074】
前記有機スルホン酸の金属塩としては、脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩、脂肪族スルホン酸のアルカリ土類金属塩、芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。かかる脂肪族スルホン酸金属塩の好ましい例としては、アルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩、かかるアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩のアルキル基の一部がフッ素原子で置換したスルホン酸アルカリ(土類)金属塩、およびパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる(ここで、アルカリ(土類)金属塩の表記は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩のいずれも含む意味で使用する)。
【0075】
アルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩に使用するアルカンスルホン酸の好ましい例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、メチルブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、へプタンスルホン酸、オクタンスルホン酸等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。またかかるアルキル基の一部がフッ素原子で置換した金属塩も挙げることができる。
【0076】
一方、パーフルオロアルカンスルホン酸の好ましい例としては、パーフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロエタンスルホン酸、パーフルオロプロパンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロメチルブタンスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、パーフルオロヘプタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸等が挙げられ、特に炭素数が1〜8のものが好ましい。これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。
【0077】
かかるアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、エタンスルホン酸ナトリウム塩が、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩を好ましく挙げることができる。
【0078】
芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩に使用する芳香族スルホン酸としては、モノマー状またはポリマー状の芳香族サルファイドのスルホン酸、芳香族カルボン酸およびエステルのスルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族エーテルのスルホン酸、芳香族スルホネートのスルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホンスルホン酸、芳香族ケトンのスルホン酸、複素環式スルホン酸、芳香族スルホキサイドのスルホン酸、芳香族スルホン酸のメチレン型結合による縮合体からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸を挙げることができ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。
【0079】
モノマー状またはポリマー状の芳香族サルファイドのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98539号公報に記載されており、例えば、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジナトリウム、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジカリウムなどを挙げることができる。
【0080】
芳香族カルボン酸およびエステルのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98540号公報に記載されており、例えば5−スルホイソフタル酸カリウム、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレンテレフタル酸ポリスルホン酸ポリナトリウムなどを挙げることができる。
【0081】
モノマー状またはポリマー状の芳香族エーテルのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98542号公報に記載されており、例えば1−メトキシナフタレン−4−スルホン酸カルシウム、4−ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ジナトリウム、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,3−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,4−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(2,6−ジフェニルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリカリウム、ポリ(2−フルオロ−6−ブチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸リチウムなどを挙げることができる。
【0082】
芳香族スルホネートのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98544号公報に記載されており、例えばベンゼンスルホネートのスルホン酸カリウムなどを挙げることができる。
【0083】
モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98546号公報に記載されており、例えばベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ストロンチウム、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、p−ベンゼンジスルホン酸ジカリウム、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸ジカリウム、ビフェニル−3,3’−ジスルホン酸カルシウムなどを挙げることができる。
【0084】
モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭52−54746号公報に記載されており、例えばジフェニルスルホン−3−スルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3,4’−ジスルホン酸ジカリウムなどを挙げることができる。
【0085】
芳香族ケトンのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98547号公報に記載されており、例えばα,α,α−トリフルオロアセトフェノン−4−スルホン酸ナトリウム、ベンゾフェノン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウムなどを挙げることができる。
【0086】
複素環式スルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−116542号公報に記載されており、例えばチオフェン−2,5−ジスルホン酸ジナトリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸カルシウム、ベンゾチオフェンスルホン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0087】
芳香族スルホキサイドのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭52−54745号公報に記載されており、例えばジフェニルスルホキサイド−4−スルホン酸カリウムなどを挙げることができる。
【0088】
芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩のメチレン型結合による縮合体としては、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、アントラセンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物などを挙げることができる。
【0089】
一方、硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩としては、特に一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、かかる一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルとしては、メチル硫酸エステル、エチル硫酸エステル、ラウリル硫酸エステル、ヘキサデシル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル、ペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラ硫酸エステル、ラウリン酸モノグリセライドの硫酸エステル、パルミチン酸モノグリセライドの硫酸エステル、ステアリン酸モノグリセライドの硫酸エステルなどを挙げることができる。これらの硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩として好ましくはラウリル硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができる。
【0090】
また他のアルカリ(土類)金属塩としては、芳香族スルホンアミドのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、例えばサッカリン、N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホイミド、N−(N’−ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミド、およびN−(フェニルカルボキシル)スルファニルイミドのアルカリ(土類)金属塩などが挙げられる。
【0091】
上記に挙げたアルカリ(土類)金属塩のうち、より好ましい成分として芳香族スルホン酸のアルカリ(土類)金属塩およびパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩を挙げることができる。
【0092】
本発明の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を発揮する範囲において各種の熱可塑性樹脂および添加剤などを含むことができる。
【0093】
ポリカーボネート樹脂以外の他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、SMA樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂などに代表される汎用プラスチックス、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂(非晶性ポリアリレート、液晶性ポリアリレート)等に代表されるエンジニアリングプラスチックス、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイドなどのいわゆるスーパーエンジニアリングプラスチックスと呼ばれるものを挙げることができる。さらにスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーも使用することができる。
【0094】
その他各種添加剤としては、例えば補強剤(タルク、マイカ、クレー、ワラストナイト、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素フレーク、カーボンビーズ、カーボンミルドファイバー、金属フレーク、金属繊維、金属コートガラス繊維、金属コート炭素繊維、金属コートガラスフレーク、シリカ、セラミック粒子、セラミック繊維、アラミド粒子、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、グラファイト、導電性カーボンブラック、各種ウイスカーなど)、難燃剤(ハロゲン系、リン酸エステル系、赤リン、金属水和物系など)、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、滑剤、摺動剤(PTFE粒子など)、着色剤(カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、染料)、光拡散剤(アクリル架橋粒子、シリコン架橋粒子、極薄ガラスフレーク、炭酸カルシウム粒子など)、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、帯電防止剤、流動改質剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛など)、グラフトゴムに代表される衝撃改質剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤を配合することができる。
【0095】
本発明の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、熱安定剤としてリン系安定剤を含むことが好ましい。かかるリン系安定剤としては、ホスファイト系、ホスホナイト系、およびホスフェート系のいずれも使用可能である。
【0096】
本発明におけるホスファイト系安定剤としては、さまざまなものを用いることができる。具体的には例えば一般式(8)
【0097】
【化14】
【0098】
[式中R8は、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基ないしアルカリール基、炭素数7〜30のアラルキル基、またはこれらのハロ、アルキルチオ(アルキル基は炭素数1〜30)またはヒドロキシ置換基を示し、3個のR8は互いに同一または互いに異なるのいずれの場合も選択でき、また2価フェノール類から誘導されることにより環状構造も選択できる。]で表わされるホスファイト化合物である。
【0099】
また、一般式(9)
【0100】
【化15】
【0101】
[式中R9、R10はそれぞれ水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基ないしアルキルアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基、炭素数4〜20のシクロアルキル基、炭素数15〜25の2−(4−オキシフェニル)プロピル置換アリール基を示す。尚、シクロアルキル基およびアリール基は、アルキル基で置換されていないもの、またはアルキル基で置換されているもののいずれも選択できる。]で表わされるホスファイト化合物を挙げることができる。
【0102】
また、一般式(10)
【0103】
【化16】
【0104】
[式中R11、R12は炭素数12〜15のアルキル基である。尚、R11およびR12は互いに同一または互いに異なるのいずれの場合も選択できる。]で表わされるホスファイト化合物を挙げることができる。
【0105】
ホスホナイト系安定剤としては下記一般式(11)で表わされるホスホナイト化合物、および下記一般式(12)で表わされるホスホナイト化合物を挙げることができる。
【0106】
【化17】
【0107】
【化18】
【0108】
[式中、Ar1、Ar2は炭素数6〜20のアリール基ないしアルキルアリール基、または炭素数15〜25の2−(4−オキシフェニル)プロピル置換アリール基を示し、4つのAr1は互いに同一、または互いに異なるいずれも選択できる。または2つのAr2は互いに同一、または互いに異なるいずれも選択できる。]
【0109】
上記一般式(8)に対応するホスファイト化合物における好ましい具体例としては、ジフェニルイソオクチルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイトが挙げられる。
【0110】
上記一般式(9)に対応するホスファイト化合物における好ましい具体例としては、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられ、好ましくはジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトを挙げることができる。かかるホスファイト化合物は1種、または2種以上を併用することができる。
【0111】
上記一般式(10)に対応するホスファイト化合物における好ましい具体例としては、4,4’−イソプロピリデンジフェノールテトラトリデシルホスファイトを挙げることができる。
【0112】
上記一般式(11)に対応するホスホナイト化合物における好ましい具体例としては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトがより好ましい。このテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトは、2種以上の混合物が好ましく、具体的にはテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト(E2−1成分)、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト(E2−2成分)および、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト(E2−3成分)の1種もしくは2種以上を併用して使用可能であるが、好ましくはかかる3種の混合物である。また、3種の混合物の場合その混合比は、E2−1成分、E2−2成分およびE2−3成分を重量比で100:37〜64:4〜14の範囲が好ましく、100:40〜60:5〜11の範囲がより好ましい。
【0113】
上記一般式(12)に対応するホスホナイト化合物の好ましい具体例としては、ビス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイトビス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられ、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。このビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトは、2種以上の混合物が好ましく、具体的にはビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、およびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイトの1種もしくは2種を併用して使用可能であるが、好ましくはかかる2種の混合物である。また、2種の混合物の場合その混合比は、重量比で5:1〜4の範囲が好ましく、5:2〜3の範囲がより好ましい。
【0114】
一方ホスフェート系安定剤としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリメチルホスフェートである。
【0115】
上記のリン系安定剤に対してさらに好ましいリン系安定剤としては、以下の一般式(13)および(14)で示される化合物を挙げることができる。
【0116】
【化19】
【0117】
(式(13)中、R13およびR14は、それぞれ炭素原子数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示す。)
【0118】
【化20】
【0119】
(式(14)中、R15、R16、R17、R18、R21、R22、およびR23はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示し、R19は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、およびR20は水素原子またはメチル基を示す。)
【0120】
式(13)中、好ましくはR13およびR14は炭素原子数1〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基である。式(13)の化合物としては具体的に、トリス(ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられ、特にトリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。
【0121】
一方、式(14)のリン化合物は公知の方法で製造できる。例えば下記一般式(15)に示されるビスフェノール化合物と三塩化リンとを反応させて相当する塩化リン酸を得て、その後それと下記一般式(16)で示されるフェノールとを反応させる方法などがある。
【0122】
【化21】
【0123】
(式(15)中、R15、R16、R17、およびR18はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示し、R19は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、およびR20は水素原子またはメチル基を示す。)
【0124】
【化22】
【0125】
(式(16)中、R21、R22、およびR23はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示す。)
【0126】
上記一般式(15)の化合物の具体例としては、2,2’−メチレンビスフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−エチリデンビスフェノール、2,2’−エチリデンビス(4−メチルフェノール)、2,2’−イソプロピリデンビスフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチルフェニルメタン、2,2’−メチレンビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、および2,2−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などが挙げられ、好ましく使用することができる。
【0127】
一般式(15)の化合物としてより好ましくは、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、および2,2−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)を挙げることができる。
【0128】
一方、一般式(16)の化合物の具体例としては、フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、および2,6−ジ−tert−ブチル−4−s−ブチルフェノールなどが挙げられ、好ましく使用できる。一般式(16)の化合物の具体例としてより好ましいのは、アルキル置換基を2つ以上有する場合である。
【0129】
本発明の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物はフェノール系酸化防止剤を含むことができる。フェノール系酸化防止剤により熱暴露時の変色を抑制できると共に、難燃性の向上に対してもある程度の効果を発揮する。かかるフェノール系酸化防止剤としては種々のものを使用することができる。
【0130】
かかるフェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えばビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどを挙げることができ、好ましく使用できる。
【0131】
より好ましくは、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンであり、さらにn−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネートが好ましい。
【0132】
本発明の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物はイオウ系酸化防止剤を含むことができる。特に成形が回転成形や圧縮成形に使用される場合には好適である。かかるイオウ系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリルチオプロピオネート)エステル、ビス[2−メチル−4−(3−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1,1’−チオビス(2−ナフトール)などを挙げることができる。より好ましくは、ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリルチオプロピオネート)エステルを挙げることができる。
【0133】
上記に挙げたリン系安定剤、フェノール系酸化防止剤、およびイオウ系酸化防止剤はそれぞれ単独または2種以上併用することができる。より好ましくはリン系安定剤を必須とする場合であり、特にリン系安定剤として上記一般式(13)の化合物を含んでいることが好ましい。
【0134】
これらの安定剤の組成物中の割合としては、本発明の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部当たり、リン系安定剤、フェノール系酸化防止剤、またはイオウ系酸化防止剤はそれぞれ0.0001〜1重量部であることが好ましい。より好ましくはポリカーボネート樹脂組成物100重量部当たり、0.0005〜0.5重量部である。さらに好ましくは0.001〜0.2重量部である。
【0135】
本発明の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じて離型剤を配合することができる。本発明においては良好な難燃性を有するため、通常難燃性に対して悪影響を及ぼしやすい離型剤を配合した場合であっても、良好な難燃性を達成することができる。かかる離型剤としては公知のものが使用できる。例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワツクス、1−アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、シリコーン化合物(本発明の(B)成分以外のもの。例えば直鎖状または環状のポリジメチルシロキサンオイルやポリメチルフェニルシリコーンオイルなどが挙げられる。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。これらの中でも飽和脂肪酸エステル類、直鎖状または環状のポリジメチルシロキサンオイルやポリメチルフェニルシリコーンオイルなど、およびフッ素オイルを挙げることができる。かかる離型剤は透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して0.01〜0.3重量部が好ましい。
【0136】
好ましい離型剤としては飽和脂肪酸エステルが挙げられ、例えばステアリン酸モノグリセライドなどのモノグリセライド類、デカグリセリンデカステアレートおよびデカグリセリンテトラステアレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、ステアリン酸ステアレートなどの低級脂肪酸エステル類、セバシン酸ベヘネートなどの高級脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトールテトラステアレートなどのエリスリトールエステル類が使用される。
【0137】
本発明の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、OA機器の筐体などに使用されることが多いため、紫外線吸収剤を含んでいることが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタンなどに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0138】
また紫外線吸収剤としては例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニルベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物に代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0139】
さらに紫外線吸収剤としては例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシ−フェノール、2−(4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシ−フェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を挙げることができる。
【0140】
またビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2n−ブチルマロネート、1,2,3,4−ブタンカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンジカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、ポリ{[6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンと2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−クロロ−1,3,5−トリアジンとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、ポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も配合することができる。
【0141】
かかる紫外線吸収剤、光安定剤の割合は、透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部当たり0.01〜5重量部、より好ましくは0.02〜1重量部である。
【0142】
また、本発明の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には紫外線吸収剤などに基づく黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としてはポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。具体的なブルーイング剤としては、例えば一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイオレットB」、三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーG」、住友化学工業(株)製「スミプラストバイオレットB」]、一般名Solvent Violet31[CA.No68210;商標名三菱化学(株)製「ダイアレジンバイオレットD」]、一般名SolventViolet33[CA.No60725;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーJ」]、一般名Solvent Blue94[CA.No61500;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーN」]、一般名Solvent Violet36[CA.No68210;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイオレット3R」]、一般名Solvent Blue97[商標名 バイエル社製「マクロレックスブルーRR」]および一般名Solvent Blue45[CA.No61110;商標名 サンド社製「テトラゾールブルーRLS」]、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社のマクロレックスバイオレットやトリアゾールブルーRLS等が挙げられ、特に、マクロレックスブルーRR、マクロレックスバイオレットBやトリアゾールブルーRLSが好ましい。
【0143】
本発明の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば(A)〜(C)成分および任意に他の成分をそれぞれV型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行い、その後ベント式二軸ルーダーに代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する方法が挙げられる。
【0144】
他に、(A)〜(C)成分および任意に他の成分をそれぞれ独立にベント式二軸ルーダーに代表される溶融混練機に供給する方法、(A)および(C)成分の一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法、(B)成分を水または有機溶剤で希釈混合した後、溶融混練機に供給、またはかかる希釈混合物を他の成分と予備混合した後、溶融混練機に供給する方法なども挙げられる。尚、配合する成分に液状のものがある場合には、溶融混練機への供給にいわゆる液注装置、または液添装置を使用することができる。
【0145】
本発明の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は通常かかるペレットを射出成形して成形品を得ることにより各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常のコールドランナー方式の成形法だけでなく、ランナーレスを可能とするホットランナーによって製造することも可能である。また射出成形においても、通常の成形方法だけでなくガスアシスト射出成形、射出圧縮成形、超高速射出成形等を使用することができる。
【0146】
また本発明の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を溶融混練することなく回転成形により成形品とすることも可能である。
【0147】
【実施例】
以下に実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。尚、評価としては以下の項目について実施した。
(1)材料特性
(1−▲1▼)ドリップ防止性
UL規格に従って作成した厚さ1.6mmの試験片を用いてUL規格94に基づいて試験を行った。その時、一次着火後および二次着火後にドリップに至るまでの時間を計測し、その最短の時間(秒)で評価した。
(1−▲2▼)透明性
大きさ150mm×150mm、厚さ2.0mmの角板状成形品の透明性をJIS K7105で測定して得られたヘーズ値および、成形品色相を目視で評価した。
(1−▲3▼)耐湿熱性
1−▲2▼で測定に用いた角板状成形品を、温度65℃、湿度85%の環境下で500時間放置した後にJIS K7105でヘーズ値を測定した。得られたヘーズ値と初期ヘーズ値との差(ΔH)および、湿熱処理後の成形品色相を目視で評価した。
【0148】
実施例1〜14、および比較例1〜9
表1〜3に記載の樹脂組成物を以下の要領で作成した。尚、説明は以下の表中の記号にしたがって説明する。
【0149】
表1〜3の割合の各成分を計量し、さらにホスファイト系抗酸化剤(日本チバガイギー社製IRGAFOS168) 0.01重量部、フェノール系抗酸化剤(日本チバガイギー社製IRGANOX1076) 0.01重量部、紫外線吸収剤(ケミプロ化成工業(株)製 ケミソーブ79) 0.3重量部、離型剤(理研ビタミン(株)製 リケマールSL900) 0.3重量部を計量して、タンブラーを用いて均一に混合し、かかる混合物を押出機に投入して樹脂組成物の作成を行った。
【0150】
押出機としては径30mmφのベント式二軸押出機((株)神戸製鋼所KTX−30)を使用した。スクリュー構成はベント位置以前に第1段のニーディングゾーン(送りのニーディングディスク×2、送りのローター×1、戻しのローター×1および戻しニーディングディスク×1から構成される)を、ベント位置以後に第2段のニーディングゾーン(送りのローター×1、および戻しのローター×1から構成される)を設けてあった。シリンダ−温度およびダイス温度が280℃、およびベント吸引度が3,000Paの条件でストランドを押出し、水浴において冷却した後ペレタイザーでストランドカットを行い、ペレット化した。
【0151】
得られたペレットは110℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥し、射出成形機[ファナック(株)T−150D]によりシリンダー温度290℃、金型温度70℃で試験片を成形した。
【0152】
また、表1〜表3に記載の使用した原材料等は以下の通りである。
(A)成分
PC−1:直鎖状ポリカーボネート樹脂(ホスゲン法で作成されたビスフェノールAおよび末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノールからなるポリカーボネート樹脂。かかるポリカーボネート樹脂はアミン系触媒を使用せず製造され、ポリカーボネート樹脂末端中、末端水酸基の割合は10モル%であり、またかかるポリカーボネート樹脂は25ppmのホスホナイト系抗酸化剤[サンドズ(Sandoz)社製 Sandstab P−EPQ]を含んでいた。粘度平均分子量は22,500であった)
PC−2:分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(出光石油化学(株)製 タフロンIB2500)
【0153】
(B)成分
合成例−1
撹拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコに水301.9gとトルエン150gを仕込み、内温5℃まで冷却した。滴下ロートにトリメチルクロロシラン21.7g、メチルジクロロシラン23.0g、ジメチルジクロロシラン12.9gおよびジフェニルジクロロシラン76.0gの混合物を仕込み、フラスコ内へ撹拌しながら2時間かけて滴下した。この間、内温を20℃以下に維持するよう、冷却を続けた。滴下終了後、さらに内温20℃で撹拌を4時間続けて熟成した後、静置して分離した塩酸水層を除去し、10%炭酸ナトリウム水溶液を添加して5分間撹拌後、静置して分離した水層を除去した。その後、さらにイオン交換水で3回洗浄し、トルエン層が中性になったことを確認した。このトルエン溶液を減圧下内温120℃まで加熱してトルエンと低沸分を除去した後、濾過により不溶物を取り除いてシリコーン化合物B−1を得た。
【0154】
合成例−2
撹拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコにヘキサメチルジシロキサン16.2g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン61.0g、オクタメチルシクロテトラシロキサン103.8gおよびジフェニルジメトキシシラン391.0gを仕込み、さらに撹拌しながら濃硫酸25.0gを添加した。内温10℃まで冷却した後、水29.4gをフラスコ内へ撹拌しながら30分間かけて滴下した。この間、内温を20℃以下に維持するよう、冷却を続けた。滴下終了後、さらに内温10〜20℃で撹拌を5時間続けて熟成した後、水8.5gとトルエン300gを添加して30分間撹拌後、静置して分離した水層を除去した。その後、さらに5%硫酸ナトリウム水溶液で4回洗浄し、トルエン層が中性になったことを確認した。このトルエン溶液を減圧下内温120℃まで加熱してトルエンと低沸分を除去した後、濾過により不溶物を取り除いてシリコーン化合物B−2を得た。
【0155】
合成例−3
1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン167.9g、オクタメチルシクロテトラシロキサン92.7g、オクタフェニルシクロテトラシロキサン49.6gおよびフェニルトリメトキシシラン297.4gを仕込み、さらに濃硫酸25.5gを添加し、水41.3gを滴下した以外は、合成例−2と同様に操作して、シリコーン化合物B−3を得た。
【0156】
合成例−4
水403.2gとトルエン120gを仕込み、ジメチルクロロシラン48.3g、ジメチルジクロロシラン43.9g、ジフェニルジクロロシラン21.5gおよびフェニルトリクロロシラン36.0gの混合物を滴下した以外は、合成例−1と同様に操作して、シリコーン化合物B−4を得た。
【0157】
合成例−5
1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン70.5g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン126.3gおよびジフェニルジメトキシシラン243.8gを仕込み、さらに濃硫酸25.0gを添加し、水18.3gを滴下した以外は、合成例−2と同様に操作して、シリコーン化合物B−5を得た。
【0158】
合成例−6
1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン87.3g、ヘキサメチルジシロキサン211.1g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン31.3gおよびフェニルトリメトキシシラン257.8gを仕込み、さらに濃硫酸25.0gを添加し、水35.8gを滴下した以外は、合成例−2と同様に操作して、シリコーン化合物B−6を得た。
【0159】
合成例−7
ヘキサメチルジシロキサン81.2g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン33.1gおよびジフェニルジメトキシシラン476.5gを仕込み、さらに濃硫酸25.0gを添加し、水35.8gを滴下した以外は、合成例−2と同様に操作して、シリコーン化合物B−7を得た。
【0160】
合成例−8
水447.2gとトルエン200gを仕込み、トリメチルクロロシラン22.2g、メチルジクロロシラン39.1g、ジメチルジクロロシラン21.9g、ジフェニルジクロロシラン43.0g、メチルトリクロロシラン12.7gおよびフェニルトリクロロシラン18.0gの混合物を滴下した以外は、合成例−1と同様に操作して、シリコーン化合物B−8を得た。
B−1:合成例−1に従って作成したSi−H量が0.21mol/100g、芳香族基量が49重量%、平均重合度が8.0のシリコーン化合物。
B−2:合成例−2に従って作成したSi−H量が0.20mol/100g、芳香族基量が50重量%、平均重合度が42.0のシリコーン化合物。
B−3:合成例−3に従って作成したSi−H量が0.50mol/100g、芳香族基量が31重量%、平均重合度が11.0のシリコーン化合物。
B−4:合成例−4に従って作成したSi−H量が0.52mol/100g、芳香族基量が27重量%、平均重合度が6.5のシリコーン化合物。
B−5:合成例−5に従って作成したSi−H量が0.80mol/100g、芳香族基量が39重量%、平均重合度が7.9のシリコーン化合物。
B−6:合成例−6に従って作成したSi−H量が0.37mol/100g、芳香族基量が20重量%、平均重合度が4.4のシリコーン化合物。
B−7:合成例−7に従って作成したSi−H量が0.11mol/100g、芳香族基量が60重量%、平均重合度が7.0のシリコーン化合物。
B−8:合成例−8に従って作成したSi−H量が0.34mol/100g、
芳香族基量が33重量%、平均重合度が62.0のシリコーン化合物。
【0161】
(B)成分以外
合成例−9
ヘキサメチルジシロキサン39.9g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン14.8g、オクタメチルシクロテトラシロキサン200.6gおよびジフェニルジメトキシシラン300.6gを仕込み、さらに濃硫酸25.0gを添加し、水22.6gを滴下した以外は、合成例−2と同様に操作して、シリコーン化合物B−9を得た。
【0162】
合成例−10
水560.6gとトルエン140gを仕込み、ジメチルクロロシラン18.9g、メチルジクロロシラン126.5gおよびジフェニルジクロロシラン25.3gの混合物を滴下した以外は、合成例−1と同様に操作して、シリコーン化合物B−10を得た。
【0163】
合成例−11
水560.6gとトルエン130gを仕込み、トリメチルクロロシラン21.2g、メチルジクロロシラン52.3g、ジメチルジクロロシラン83.9gおよびフェニルトリクロロシラン13.8gの混合物を滴下した以外は、合成例−1と同様に操作して、シリコーン化合物B−11を得た。
【0164】
合成例−12
1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン39.0gおよびジフェニルジメトキシシラン566.9gを仕込み、さらに濃硫酸25.0gを添加し、水42.6gを滴下した以外は、合成例−2と同様に操作して、シリコーン化合物B−12を得た。
【0165】
合成例−13
ヘキサメチルジシロキサン8.1g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン120.3g、オクタメチルシクロテトラシロキサン111.2gおよびジフェニルジメトキシシラン195.5gを仕込み、さらに濃硫酸20.0gを添加し、水14.7gを滴下した以外は、合成例−2と同様に操作して、シリコーン化合物B−13を得た。
B−9(比較):合成例−9に従って作成したSi−H量が0.05mol/100g、芳香族基量が38重量%、平均重合度が19.0のシリコーン化合物。
B−10(比較):合成例−10に従って作成したSi−H量が1.31mol/100g、芳香族基量が16重量%、平均重合度が14.0のシリコーン化合物。
B−11(比較):合成例−11に従って作成したSi−H量が0.45mol/100g、芳香族基量が5重量%、平均重合度が21.0のシリコーン化合物。
B−12(比較):合成例−12に従って作成したSi−H量が0.12mol/100g、芳香族基量が72重量%、平均重合度が8.0のシリコーン化合物。
B−13(比較):合成例−13に従って作成したSi−H量が0.50mol/100g、芳香族基量が31重量%、平均重合度が88.0のシリコーン化合物。
【0166】
<各シリコーン化合物の示性式>
B−1 : M2DH 2D1Dφ2 3
B−2 : M2DH 10D14Dφ2 16
B−3 : MH 5D2.5Dφ2 0.5Tφ3
B−4 : MH 3D2Dφ2 0.5Tφ1
B−5 : MH 2DH 4Dφ2 1.9
B−6 : M2MH 1DH 0.4Tφ1
B−7 : M2DH 1.1Dφ2 3.9
B−8 : M12DH 20D10Dφ2 10T5Tφ5
B−9 : M2DH 1D11Dφ2 5 (比較)
B−10 : MH 2DH 11Dφ2 1 (比較)
B−11 : M3DH 7D10Tφ1 (比較)
B−12 : MH 2Dφ2 8 (比較)
B−13 : M2DH 40D30Dφ2 16 (比較)
【0167】
尚、上記示性式における各記号は以下のシロキサン単位を表し、各記号の係数は1分子中における各シロキサン単位の重合度を示す。
M :(CH3)3SiO1/2
MH : H(CH3)2SiO1/2
D :(CH3)2SiO
DH : H(CH3)SiO
Dφ2 :(C6H5)2SiO
T :(CH3)SiO3/2
Tφ :(C6H5)SiO3/2
【0168】
(C)成分
C−1:2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(ジクミル)(日本油脂(株)製 ノフマーBC)
C−2:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(大日本インキ化学工業(株)製 メガファックF−114P)
C−3:ジフェニルスルホンスルホン酸カリウム塩(ユーシービージャパン製 KSS)
【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
【表3】
【0172】
これらの表から以下のことが明らかである。実施例と比較例との比較から、本発明の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、透明性、耐湿熱性に優れ、さらに、本発明のシリコーン化合物が添加されることによって着火後からドリップに至るまでの時間が長く燃焼時の樹脂のドリップ防止性にも優れていることが分かる。
【0173】
【発明の効果】
以上より明らかなように、本発明の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、ドリップ防止剤としてシリコーン化合物を主に含有し、良好なドリップ防止性能を有し、かつ透明性、耐湿熱性にも優れるものである。かかる特性は従来の難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂にはないものであり、かかる樹脂組成物は射出成形等の高温での溶融時にも高い熱安定性を併せ持つ。したがって、照明カバー、透過型ディスプレイ用保護カバーのみならず、OA機器分野、電気電子機器分野などの各種工業用途に極めて有用であり、その奏する工業的効果は極めて大である。
Claims (10)
- 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、分子中にSi−H基および芳香族基を含有するシリコーン化合物であって、
▲1▼Si−H基が含まれる量(Si−H量)が0.1〜1.2mol/100g、
▲2▼下記一般式(1)で示される芳香族基が含まれる割合(芳香族基量)が10〜70重量%、
▲3▼平均重合度が3〜80、
であるシリコーン化合物の中から選択される少なくとも一種以上のシリコーン化合物(B)0.1〜10重量部を配合してなる透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。 - (B)成分が、下記一般式(2)および(3)で示される構成単位のうち、少なくとも一種以上の式で示される構成単位を含むシリコーン化合物である請求項1に記載の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- (B)成分がMD単位またはMDT単位からなるシリコーン化合物である請求項1または2のいずれか1項に記載の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(ただし、Mは1官能性シロキサン単位、Dは2官能性シロキサン単位、Tは3官能性シロキサン単位である)。
- JIS K7105で測定された2mm厚みのヘーズが0.3〜20%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 温度65℃、湿度85%の環境下で300時間放置した後のJIS K7105で測定された2mm厚みのヘーズと初期ヘーズとの差(ΔH)が0.01〜10%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- (B)成分における▲1▼Si−H量が0.2〜1.0mol/100gである請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- (B)成分における▲2▼芳香族基量が15〜60重量%である請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- (B)成分における▲3▼平均重合度が3〜60である請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、ラジカル発生剤、有機アルカリ金属塩、および有機アルカリ土類金属塩より選ばれる少なくとも一種以上の化合物(C)0.001〜0.3重量部をさらに配合してなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1に記載の透明難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物より形成された成形品。
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