JP3778827B2 - 光制御素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光制御素子に関し、より詳細には、入力信号の光強度に応じて、入力信号光の波長と同一または異なる波長の光を変調する光制御素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数の異なる波長の光信号を1本の光ファイバに結合して伝送する波長多重伝送(WDM)システムが知られている。WDMシステムは、1対1の対地間の伝送のみならず、多対多を結ぶネットワーク化が進められている。このようなWDMシステムにおいて、光ファイバを伝送する光信号の波長を同一または異なる波長に変換する光制御素子が重要となっている。
【0003】
図1に、従来の波長変換回路を示す。波長変換回路は、半導体光増幅器(SOA: Semiconductor Optical Amplifier)101と、ループ型干渉回路109と、MMI(Multi Mode Interference)カプラ102,103とから構成されている。MMIカプラ103のポート111に、波長λjの連続光(CW光)105が入射されると、2方向に分岐されてループ型干渉回路109に導かれる。ループ型干渉回路109において、右回りと左回りとに分かれてループを一周し、MMIカプラ103で合波されてポート111から出射される。
【0004】
この状態において、波長λiの信号光104を、MMIカプラ102に入射する。入射された信号光104は、SOA101を通過する。このとき、SOA101内の屈折率が変化するので、ループ型干渉回路109を導波する波長λjの光は、屈折率変化の影響を受ける。
【0005】
図2(a)に、波長λjの光の位相変化の様子を示す。右回りの光107は、急峻に位相変化を起こし、その後、SOA101におけるキャリア変化の回復時間の速度に応じた時間で元の位相に戻り、MMIカプラ103に入射する。左回りの光106も同様に位相変化を起こすが、右回りの光107に較べて、ループ型干渉回路109を導波する距離がΔLだけ長いために、伝播時間差Δτだけ遅れて、MMIカプラ103に入射する。MMIカプラ103においては、右回りの光107と左回りの光106の位相変化が起きる時間がΔτだけずれることになる。
【0006】
図2(b)に、MMIカプラにおける干渉効果を示す。波長λjの光は、MMIカプラ103において、干渉を受けポート110から出射される。すなわち、入力した波長λiの信号光104が、波長λjの光に移されてポート110から出射される。このように、ループ型干渉回路を有する波長変換回路において、位相変化がキャリア変化の回復時間の速度に制限される領域は、キャンセルアウトされる。従って、その制限を受けることがないので、高速な波長変換が可能となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ループ型干渉回路を有する波長変換回路は、SOA101の長さが、ΔLと比較して十分に小さいことが必要である。右回りの光107は、信号光104と同一方向に伝搬するために、SOA101の長さLSOA全体にわたって屈折率変化の影響を受ける。一方、左回りの光106は、信号光104と逆方向に伝搬するために、信号光104と出会うまでは屈折率変化の影響を受けず、立ち上がりにt=2・LSOA/(C/neq)を要する。ここで、Cは光速、neqは、SOA101の等価屈折率である。
【0008】
図3(a)に、LSOAとΔLとが同程度の場合における波長λjの光の位相変化の様子を示す。図3(b)に、LSOAとΔLとが同程度の場合におけるMMIカプラにおける干渉効果を示す。SOA101の長さLSOAとΔLとが同程度の場合には、右回りと左回りの双方の連続光の位相変化は、図3(a)に示したようになり、MMIカプラ103のポート110から出射される変換光の波形は、図3(b)に示したように変形してしまう。従って、tよりもΔτが小さいときの動作は不可能であった。
【0009】
また、Δτ=10ps程度を実現するためには、
LSOA = 1/2・(C/neq)×tr << 1/2・(C/neq)×Δτ = 500μm
が要求され、SOA101の長さLSOAを200μm程度以下にする必要があった。光の位相変化は、屈折率変化の絶対値と媒質の長さとの積で決まるため、LSOAの短いSOAにより所望の位相変化を得るためには、屈折率変化の絶対値を大きくせざるを得なかった。従って、動作パワーが増大したり、場合によっては、SOAの飽和により所望の屈折率変化が得られないという問題があった。
【0010】
入力した波長λiの信号光104は、波長λjの波長変換された出力光と同一のポートから出射される。このため、入力光と出力光とを分離するために、出力ポートに波長フィルタを設置しなければならなかった。波長λiと波長λjとが同一の場合には、波長変換前の光と波長変換後の光とを分離することができず、波長変換前の光が雑音として出力光に混入してしまう。従って、同一波長に波長変換することができないという問題もあった。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、低い動作パワーで、波長フィルタが不要であり、同一の波長でも波長変換が可能な高速の波長変換機能を有する光制御素子を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、任意波長の第1の入力信号(406)の光強度に応じて、前記第1の入力信号の波長(λi)と同一または異なる波長(λj)を有する第2の入力信号(407)を変調する光制御素子において、前記第1の入力信号(406)を分岐させる光分岐手段(420)と、前記第2の入力信号(407)を分岐して、分岐された一方の第2の入力信号を遅延させる光分岐・遅延手段(405,413)と、分岐された一方の第1の入力信号と前記一方の第2の入力信号とを合波し、合波された信号を2つの第1ポートに分配する第1の分配手段(403)と、分岐された他方の第1の入力信号と分岐された他方の第2の入力信号とを合波し、合波された信号を2つの第2ポートに分配する第2の分配手段(404)と、一方の第1ポートと一方の第2ポートとの間、他方の第1ポートと他方の第2ポートとの間の各々に接続され、前記第1の入力信号の光強度に応じて屈折率が変化する2つの媒質(401,402)からなる位相変調手段とを備えた。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の前記光分岐・遅延手段は、ループ型干渉回路を構成し、前記一方の第2の入力信号を遅延させることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の前記第1の分配手段と前記位相変調手段と前記第2の分配手段とにより、対称型マッハツェンダ回路を構成することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2または3に記載の前記位相変調手段は、半導体光増幅器であることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
図4に、本発明の一実施形態にかかる光制御素子の構成を示す。光制御素子は、フィルタ付位相変調器415と、フィルタ付位相変調器415に接続された光分岐手段であるMMIカプラ420と、フィルタ付位相変調器415に接続され、光分岐・遅延手段を構成するMMIカプラ405およびループ型干渉回路413とから構成されている。フィルタ付位相変調器415は、位相変調手段であるSOA401,402と、各々のSOA401,402の出力に接続された分配手段であるMMIカプラ403,404とから構成されている。
【0017】
フィルタ付位相変調器415は、SOA401,402を含む2つの導波路(アーム)を、MMIカプラ403,404で結んだ対称型マッハツェンダ回路を構成している。対称型マッハツェンダ回路は、入射した光は、カプラ内で分波され、各々2つの導波路(アーム)を通り、再びカプラで合波された後、入射ポートとクロス位置にある出射ポートに出力される。
【0018】
このような構成により、MMIカプラ405のポート412に、波長λjの連続光(CW光)407が入射されると、2方向に分岐されてループ型干渉回路413に導かれる。ループ型干渉回路413において、右回りと左回りとに分かれてループを一周し、フィルタ付位相変調器415を経て、MMIカプラ405で合波されてポート412から出射される。
【0019】
この状態において、波長λiの信号光406を、MMIカプラ420のポート419に入射する。MMIカプラ420で分波された信号光406の一方は、MMIカプラ403のポート417に入射し、2方向に分岐されてSOA401,402を通過する。通過した光は、MMIカプラ404で合波された後、入射ポートとクロス位置にあるMMIカプラ404のポート414に出力される。
【0020】
MMIカプラ420で分波された信号光406の他方は、MMIカプラ404のポート414に入射し、2方向に分岐されてSOA401,402を通過する。通過した光は、MMIカプラ403で合波された後、入射ポートとクロス位置にあるMMIカプラ403のポート417に出力される。このようにして、波長λiの信号光406は、対称型マッハツェンダ回路によるフィルタ機能により、ループ型干渉回路413には導入されない。
【0021】
信号光406がSOA401,402を通過するとき、SOA401,402内の屈折率が変化する。ループ型干渉回路413を導波する波長λjの光は、SOA401,402の屈折率変化の影響を受け、位相変化が起こる。右回りの光409は、急峻に位相変化を起こし、その後、SOA401,402におけるキャリア変化の回復時間の速度に応じた時間で元の位相に戻り、MMIカプラ405に入射する。左回りの光408も同様に位相変化を起こすが、右回りの光409に較べて、ループ型干渉回路413を導波する距離がΔLだけ長いために、伝播時間差Δτだけ遅れて、MMIカプラ405に入射する。MMIカプラ405においては、右回りの光409と左回りの光408の位相変化が起きる時間がΔτだけずれることになる。Δτの間だけ干渉効果により、波長λjの光は、MMIカプラ405のポート411から出射される。
【0022】
このようにして、入力した波長λiの信号光406が、波長λjの光に移されてポート411から出射される。このように、ループ型干渉回路413を有する光制御素子において、位相変化がキャリア変化の回復時間の速度に制限される領域は、キャンセルアウトされる。従って、その制限を受けることがないので、高速な波長変換が可能となっている。
【0023】
本実施形態によれば、入力した波長λiの信号光406は、フィルタ付位相変調器415において、MMIカプラ403,404のポート417,414に出射されるため、MMIカプラ405のポート411から出射されることはない。すなわち、入力光と出力光とを分離するために、出力ポートに波長フィルタを設置する必要がない。従って波長λiと波長λjとが同一の場合であっても、ポート411から出射される出力光に雑音が混じることなく波長変換を行うことができる。
【0024】
図5(a)に、本発明の一実施形態にかかる光制御素子における波長λjの光の位相変化の様子を示す。図5(b)に、本発明の一実施形態にかかる光制御素子におけるMMIカプラにおける干渉効果を示す。本実施形態において、波長λiの信号光406は、SOA401,402の両方向から入射する。従って、ループ型干渉回路413を伝搬する右回りの光409と左回りの光408との各々に対して、同方向と逆方向とですれ違うことになる。その結果、右回りの光409と左回りの光408との位相変化は、図5(a)に示したように、急峻で同一の波形となる。MMIカプラ405のポート411から出射される変換光の波形は、図5(b)に示したように、立ち上がり、立ち下がりともに急峻な波形となり、高速な出力波形を得ることができる。
【0025】
本実施形態において、SOAの構造になんら制約を受けるものではない。SOAの活性層に関しては、InGaAsP、GaAs、AlGaAs、InGaAs、GaInNAsなど任意の材質について同様の効果を得ることができる。活性構造に関しても、バルク、MQW(Multi Quantum Well)、量子細線、量子ドットを問わず、導波路構造に関しても、pn埋め込み、リッジ構造、半絶縁埋め込み構造、ハイメサ構造などを用いた場合でも同様の効果を得ることができる。
【0026】
また、本実施形態においては、信号光または連続光(CW)を分波・合波する構造として、MMIカプラを用いたが、方向性結合器を用いてもよい。また、入力光の光強度に応じて、屈折率が変化する媒質からなる構造として、SOAを用いたが、EA変調など光強度に応じて屈折率が変化する構造であれば適用することができる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、入力光と出力光とを分離するために、出力ポートに波長フィルタを設置する必要がなく、同一の波長でも波長変換が可能な高速の波長変換機能を有する光制御素子を構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の波長変換回路を示した構成図である。
【図2】(a)は、波長λjの光の位相変化の様子を示した図である。(b)は、MMIカプラにおける干渉効果を示した図である。
【図3】(a)は、LSOAとΔLとが同程度の場合における波長λjの光の位相変化の様子を示した図である。(b)は、LSOAとΔLとが同程度の場合におけるMMIカプラにおける干渉効果を示した図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる光制御素子を示した構成図である。
【図5】(a)は、本発明の一実施形態にかかる光制御素子における波長λjの光の位相変化の様子を示した図である。(b)は、本発明の一実施形態にかかる光制御素子におけるMMIカプラにおける干渉効果を示した図である。
【符号の説明】
101,401,402 SOA
102,103,403〜405,420 MMIカプラ
104,406 波長λiの信号光
105,407 波長λjの連続光(CW光)
106,409 左回りの光
107,408 右回りの光
108,410 波長λjの出力光
109,413 ループ型干渉回路
110,111,411,412,414,416〜419 ポート
415 フィルタ付位相変調器

Claims (4)

  1. 任意波長の第1の入力信号の光強度に応じて、前記第1の入力信号の波長と同一または異なる波長を有する第2の入力信号を変調する光制御素子において、
    前記第1の入力信号を分岐させる光分岐手段と、
    前記第2の入力信号を分岐して、分岐された一方の第2の入力信号を遅延させる光分岐・遅延延手段と、
    分岐された一方の第1の入力信号と前記一方の第2の入力信号とを合波し、合波された信号を2つの第1ポートに分配する第1の分配手段と、
    分岐された他方の第1の入力信号と分岐された他方の第2の入力信号とを合波し、合波された信号を2つの第2ポートに分配する第2の分配手段と、
    一方の第1ポートと一方の第2ポートとの間、他方の第1ポートと他方の第2ポートとの間の各々に接続され、前記第1の入力信号の光強度に応じて屈折率が変化する2つの媒質からなる位相変調手段と
    を備えたことを特徴とする光制御素子。
  2. 前記光分岐・遅延手段は、ループ型干渉回路を構成し、前記一方の第2の入力信号を遅延させることを特徴とする請求項1に記載の光制御素子。
  3. 前記第1の分配手段と前記位相変調手段と前記第2の分配手段とにより、対称型マッハツェンダ回路を構成することを特徴とする請求項1または2に記載の光制御素子。
  4. 前記位相変調手段は、半導体光増幅器であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の光制御素子。
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