JP3777331B2 - 放電プラズマ処理装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放電プラズマ処理装置に関し、特に、被処理体表面上の処理ガスの流れを均一にする放電プラズマ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、低圧条件下でグロー放電プラズマを発生させて被処理体の表面改質、又は被処理体上に薄膜形成を行う方法が実用化されている。しかし、これらの低圧条件下における処理装置は、真空チャンバー、真空排気装置等が必要であり、表面処理装置は高価なものとなり、大面積基板等を処理する際にはほとんど用いられていなかった。このため、特開平6−2149号公報、特開平7−85997号公報等に記載されているような大気圧近傍の圧力下で放電プラズマを発生させる常圧プラズマ処理装置が提案されてきている。
【0003】
しかしながら、常圧プラズマ処理方法においても、固体誘電体等で被覆した平行平板型等の電極間に被処理体を設置し、電極間に電圧を印加し、発生したプラズマで被処理体を処理する装置では、被処理体全体を放電空間に置くこととなり、被処理体にダメージを与えることになりやすいという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するものとして、被処理体を放電空間中に配置するのではなく、その近傍に配置し、放電空間から被処理体にプラズマを吹き付けるリモート型の装置が提案されている。特開平11−251304号公報及び特開平11−260597号公報には外側電極を備えた筒状の反応管及び反応管の内部に内側電極を具備し、両電極に冷却手段を設け、反応管内部でグロー放電を発生させ、反応管からプラズマジェットを吹き出して被処理体に吹きつけるプラズマ処理装置が、特開平11−335868号公報には平行平板型の電極を用い、さらに被処理体近傍の排気手段によって、プラズマを被処理体に接触させるプラズマ処理装置が開発されている。
【0005】
しかしながら、これらの装置においては、放電空間から被処理体へプラズマを吹き付けることにより被処理体上に形成される成膜の膜厚は、被処理体を設置した搬送台が小さい場合、被処理体上を流れるプラズマ流が急激に外部方向流れるため、被処理体の縁部において、薄くなり、被処理体上には不均一な厚さの薄膜が形成されてしまうという問題があった。また、これらの処理を排ガスの外部への流出、外部からの雰囲気ガスの流入を防止するために、チャンバー内で行う場合は、大面積被処理体を処理する際には、チャンバーを大型化しなくてはならなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑み、高速処理及び大面積処理に対応可能でかつ、被処理体上全面に渡って均一な厚さの薄膜を形成させることのできる放電プラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、対向電極間で発生させたグロー放電プラズマを放電空間外に配置した被処理体に吹きつける際、被処理体を搬送する搬送台を拡大、縮小できるようにすることによって、大面積被処理体であってもその表面上を流れるプラズマ流を均一にすることができ、高速処理が可能で、厚さの均一な薄膜等を形成することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明は、少なくとも一方の電極対向面を固体誘電体で被覆した一対の対向電極間に電界を印加し、前記対向電極間に処理ガスを導入して発生するグロー放電プラズマでプラズマ発生空間外の搬送台に配置された被処理体を処理する処理装置において、前記搬送台の搬送方向における被処理体の前後に拡展・折りたたみ構造を有する整流板を設けることを特徴とする放電プラズマ処理装置である。
【0009】
また、本発明の第2の発明は、整流板がエアシリンダーにより拡展・折りたたみが可能にされていることを特徴とする第1の発明に記載の放電プラズマ処理装置である。
【0010】
また、本発明の第3の発明は、チャンバー内で稼働させることを特徴とする第1又は2の発明に記載の放電プラズマ処理装置である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、対向する電極の少なくとも一方の対向面を固体誘電体で被覆した一対の対向電極間に電界を印加し、当該電極間に処理ガスを導入してグロー放電プラズマを発生させる装置(以下、リモートソースという)を用い、放電空間外に配置された被処理体を処理する際、被処理体を搬送する搬送台に拡展・折りたたみ可能な整流板を取り付けることにより、被処理体を移動させても常にその表面のプラズマ流を一定に保つことができ、特に、一定の大きさのチャンバー内で大面積被処理体の処理を行っても、被処理体上のプラズマ流の速さを均一にし、被処理体表面上に形成される薄膜の厚さを均一にすることのできる放電プラズマ処理装置である。以下に詳細に本発明を説明する。
【0012】
本発明の装置の一例を図で説明する。図1は、チャンバー内で、拡展・折りたたみ機構を有する整流板を設けた搬送台上の被処理体をリモートソースで処理する装置を説明する模式的装置断面図である。図1において、チャンバー1内に、リモートソース2、搬送台3、搬送機構5が設置され、搬送台3上の被処理体4にリモートソース2からプラズマを吹き付けて、放電プラズマ処理をできるようになされている。リモートソース2は、平行平板型の対向電極21及び22、両電極の間に構成される放電空間23、放電空間への処理ガス導入口24及びプラズマ吹き出し口25、電極近傍に設けられた排ガス回収口26及び27から構成され、両電極には電源から電界を印加するようになされ、処理ガス導入ラインと排ガス回収ラインが設けられている。被処理体4を搬送する搬送台3は、搬送方向の前後に整流板31及び32が、拡展・折りたたみ機構33及び34で、折りたたみ可能に取り付けられ、搬送台支持棒35で搬送台移動回転軸51により左右に移動されるようになされている。搬送台移動機構5は、搬送台支持棒35を移動させる搬送台移動回転軸51、回転軸の両端を支える支柱52、回転軸51を駆動させる電動モーターを含む搬送コントローラ53から構成されている。
【0013】
処理ガスは、リモートソース2に導入され、電界を印加された電極の放電空間23でプラズマ化され、プラズマ吹き出し口25から吹き出される。被処理体4は、搬送台3に設置され、搬送されてプラズマ吹き出し口25から吹き出されるプラズマで処理される。本発明の装置においては、プラズマ吹き出し口25から吹き出されるプラズマ流は、搬送台3の搬送方向の前後に設けられた整流板31及び32により、急激にガス流を乱されることなく流れ、被処理体表面を均一に処理することができる。また、本発明の装置においては、整流板31及び32が拡展・折りたたみ機構を有しているため、搬送台3の全体の大きさの大面積被処理体を設置しても両整流板を一杯に拡げることにより対応でき、一定の大きさのチャンバー内でも整流板をチャンバー内壁に衝突させることなく大きくすることができ、円滑なプラズマ処理を行うことができる。
【0014】
本発明の放電プラズマ処理装置において、搬送台3に取り付けられた整流板31及び32を拡げ、折りたたみながら放電プラズマ処理を行う処理操作工程の一例を図2で説明する。一定の大きさのチャンバー1内において、搬送台3に被処理体4を設置し、左から右方向に搬送台3を移動させ、リモートソース2から吹き出したプラズマで処理する順序は、次のような3段階になる。第1段階として、図2(a)に示すように右側整流板32を拡げ、リモートソース2から吹き出されるプラズマ流を整流板32から搬送台3方向に一様に流れるようにして安定させる。第2段階として搬送台3を搬送機構5により徐々に右方向に移動させ、搬送台左側の整流板31を拡げていき、図2(b)に示すように左右の両整流板31及び32を拡げ、プラズマ流を両方向に安定に流れるようにする。第3段階として、搬送台3がチャンバー1の右端側に進むに連れて、チャンバー内壁にぶつからないよう整流板32をたたむが、プラズマ流は、整流板31から被処理体4の全体の上を流れ、被処理体4の表面上には、流れの乱れが生ぜず、均一な処理が継続される。このように、本発明の装置は、大面積被処理体であってもチャンバーの大きさ全体を用いて処理することができ、被処理体が大きいからといって、チャンバー等を取り換える必要のない装置である。
【0015】
本発明の装置における整流板32及び33の拡展・折りたたみ機構は、どのような機構を用いてもよく、整流板自体が蛇腹状に伸び縮みする機構、整流板自体が巻き込み巻開きする機構、平滑な板を空気の圧縮・排気により気筒内のピストンを駆動させるエアシリンダーにより拡展・折りたたみ機構等を挙げることができるが、整流板を拡げたときにより平滑な面を維持するためには、エアシリンダーによる平滑板の拡展・折りたたみ機構を用いるのが好ましい。例えば、図3に示すように、整流板コントローラ36によりソレノイドバルブ37を稼働させエアシリンダー34を駆動して整流板32を拡展し、折りたたむことができる。図3(a)は、エアシリンダー34を伸ばして整流板32を拡展した状態を示す図であり、図3(b)は、エアシリンダー34を縮めて整流板32を折りたたんだ状態を示す図である。なお、整流板コントローラ36は、チャンバー1の大きさに合わせて搬送台がチャンバー内壁に衝突しないように駆動できるようにするのが大面積被処理体を処理するのに好ましい。
【0016】
なお、本発明の装置における整流板31及び32の大きさは、搬送台3の大きさ、チャンバーの大きさ等により適宜決めることができる。また、搬送台3としては、被処理体の加熱機構を有するようにし、XY方向またはXYZ方向に移動可能な制御装置を設けて適宜、処理の必要箇所に移動させる制御システムを備えているようにするのが好ましい。また、整流板の拡展・折りたたむ操作もそれに伴う制御システムにより操作するようにするのが好ましい。
【0017】
上記電極の材質としては、銅、アルミニウム等の金属単体、ステンレス、真鍮等の合金、金属間化合物等からなるものが挙げられる。電極の形状としては、プラズマ放電が安定にできれば、特に限定されないが、電界集中によるアーク放電の発生を避けるために、対向電極間の距離が一定となる構造であることが好ましく、より好ましくは電圧印加電極と接地電極間の間が平行平坦部分を有する形状であり、特に好ましくは、両電極が略平面形状であるのが好ましい。
【0018】
上記固体誘電体は、電極の対向面の一方又は双方を被覆する。この際、固体誘電体と被覆される電極は密着し、かつ、接する電極の対向面を完全に覆うようにする。固体誘電体によって覆われずに電極同士が直接対向する部位があると、そこからアーク放電が生じやすい。
【0019】
上記固体誘電体の厚みは、0.01〜4mmであることが好ましい。厚すぎると放電プラズマを発生するのに高電圧を要することがあり、薄すぎると電圧印加時に絶縁破壊が起こり、アーク放電が発生することがある。
【0020】
固体誘電体の材質としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の複酸化物等が挙げられる。
【0021】
特に、25℃環境下における比誘電率が10以上のものである固体誘電体を用いれば、低電圧で高密度の放電プラズマを発生させることができ、処理効率が向上する。比誘電率の上限は特に限定されるものではないが、現実の材料では18,500程度のものが入手可能であり、本発明に使用出来る。特に好ましくは比誘電率が10〜100の固体誘電体である。上記比誘電率が10以上である固体誘電体の具体例としては、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の複酸化物を挙げることが出来る。
【0022】
上記電極間の距離は、固体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して適宜決定されるが、0.1〜50mmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜5mmである。0.1mm未満では、電極間の間隔を置いて設置するのに充分でないことがあり、一方、50mmを超えると、均一な放電プラズマを発生させにくい。
【0023】
本発明では、上記電極間に、高周波、パルス波、マイクロ波等による電界が印加され、プラズマを発生させるが、パルス電界を印加することが好ましく、特に、電界の立ち上がり及び/又は立ち下がり時間が、10μs以下である電界が好ましい。10μsを超えると放電状態がアークに移行しやすく不安定なものとなり、パルス電界による高密度プラズマ状態を保持しにくくなる。また、立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短いほどプラズマ発生の際のガスの電離が効率よく行われるが、40ns未満の立ち上がり時間のパルス電界を実現することは、実際には困難である。より好ましくは50ns〜5μsである。なお、ここでいう立ち上がり時間とは、電圧(絶対値)が連続して増加する時間、立ち下がり時間とは、電圧(絶対値)が連続して減少する時間を指すものとする。
【0024】
上記パルス電界の電界強度は、10〜1000kV/cmとなるようにするのが好ましい。電界強度が10kV/cm未満であると処理に時間がかかりすぎ、1000kV/cmを超えるとアーク放電が発生しやすくなる。
【0025】
上記パルス電界の周波数は、0.5kHz以上であることが好ましい。0.5kHz未満であるとプラズマ密度が低いため処理に時間がかかりすぎる。上限は特に限定されないが、常用されている13.56MHz、試験的に使用されている500MHzといった高周波帯でも構わない。負荷との整合のとり易さや取り扱い性を考慮すると、500kHz以下が好ましい。このようなパルス電界を印加することにより、処理速度を大きく向上させることができる。
【0026】
また、上記パルス電界におけるひとつのパルス継続時間は、200μs以下であることが好ましい。200μsを超えるとアーク放電に移行しやすくなる。ここで、ひとつのパルス継続時間とは、ON、OFFの繰り返しからなるパルス電界における、ひとつのパルスの連続するON時間を言う。
【0027】
本発明の放電プラズマ処理装置は、どのような圧力下でも用いることができるが、大気圧近傍の圧力下でグロー放電プラズマを発生させる常圧放電プラズマ処理に用いるとその効果を十分に発揮できる。常圧放電プラズマ処理においては、低圧下の処理よりも高い電圧を必要とするため、本発明の装置が特に有利である。
【0028】
上記大気圧近傍の圧力下とは、1.333×104〜10.664×104Paの圧力下を指す。中でも、圧力調整が容易で、装置が簡便になる9.331×104〜10.397×104Paの範囲が好ましい。
【0029】
本発明で処理できる被処理基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等のプラスチック、ガラス、セラミック、金属等が挙げられる。基材の形状としては、板状、フィルム状等のものが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明の表面処理方法によれば、様々な形状を有する基材の処理に容易に対応することができる。
【0030】
本発明で用いる処理ガスとしては、電界を印加することによってプラズマを発生するガスであれば、特に限定されず、処理目的により種々のガスを使用できる。
【0031】
上記処理用ガスとして、CF4、C2F6、CClF3、SF6等のフッ素含有化合物ガスを用いることによって、撥水性表面を得ることができる。
【0032】
また、処理用ガスとして、O2、O3、水、空気等の酸素元素含有化合物、N2、NH3等の窒素元素含有化合物、SO2、SO3等の硫黄元素含有化合物を用いて、基材表面にカルボニル基、水酸基、アミノ基等の親水性官能基を形成させて表面エネルギーを高くし、親水性表面を得ることができる。また、アクリル酸、メタクリル酸等の親水基を有する重合性モノマーを用いて親水性重合膜を堆積することもできる。
【0033】
さらに、Si、Ti、Sn等の金属の金属−水素化合物、金属−ハロゲン化合物、金属アルコラート等の処理用ガスを用いて、SiO2、TiO2、SnO2等の金属酸化物薄膜を形成させ、基材表面に電気的、光学的機能を与えることができ、ハロゲン系ガスを用いてエッチング処理、ダイシング処理を行ったり、酸素系ガスを用いてレジスト処理や有機物汚染の除去を行ったり、アルゴン、窒素等の不活性ガスによるプラズマで表面クリーニングや表面改質を行うこともできる。
【0034】
経済性及び安全性の観点から、上記処理ガスを以下に挙げるような希釈ガスによって希釈された雰囲気中で処理を行うこともできる。希釈ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガス、窒素気体等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。希釈ガスの混合割合は、用途によって異なるが、例えば、親水生重合膜、金属酸化物薄膜を形成する場合は、処理用ガスの割合が0.01〜10体積%であることが好ましい。
【0035】
なお、本発明の装置によれば、プラズマ発生空間中に存在する気体の種類を問わずグロー放電プラズマを発生させることが可能である。公知の低圧条件下におけるプラズマ処理はもちろん、特定のガス雰囲気下の大気圧プラズマ処理においても、外気から遮断された密閉容器内で処理を行うことが必須であったが、本発明のグロー放電プラズマ処理装置を用いた方法によれば、開放系、あるいは、気体の自由な流失を防ぐ程度の低気密系での処理が可能となる。
【0036】
本発明のパルス電界を用いた大気圧放電処理装置によると、全くガス種に依存せず、電極間において直接大気圧下で放電を生じせしめることが可能であり、より単純化された電極構造、放電手順による大気圧プラズマ装置、及び処理手法でかつ高速処理を実現することができる。また、パルス周波数、電圧、電極間隔等のパラメータにより処理に関するパラメータも調整できる。
【0037】
【実施例】
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0038】
実施例1
図1に示す装置を用い、放電プラズマ処理を行った。チャンバー1として700mm×500mm×500mmの大きさのアルミニウム製容器を用い、リモートソース2の電極21及び電極22として、長さ250mm×高さ50mm×厚み20mmのSUS製平行平板電極を用い、各電極には固体誘電体としてアルミナを1mmの厚さに溶射し、2mmの間隔をおいて設置した。被処理体4として、200mmφのシリコーンウェーハを用い、搬送台3の両側に100mm×270mmのステンレス製整流板31及び32をエアシリンダーで拡展・折りたたみ可能に設け、搬送台3を50mm/minで移動させ、図2の順序に整流板の拡展・折りたたみを行いながら処理を行った。処理ガスとして、テトラエトキシシラン0.16体積%、酸素16体積%をアルゴンガスにより希釈した混合ガスを用い、電極間にパルス立ち上がり速度5μs、電圧20kVPP、周波数10kHzのパルス電界を印加した。シリコーンウェーハ基材上にSiO2薄膜が100nmの厚さで均一に形成され、表面厚さのばらつきは、±3%であった。
【0039】
比較例1
整流板を折りたたんだままの状態で処理を行う以外は、実施例1と同様にして放電プラズマ処理を行った。シリコーンウェーハ基材上にはSiO2薄膜が形成され、基材中心部は、厚さのばらつきが±3%の100nmの厚さのSiO2薄膜であったが、基材の縁先端部は、厚さが60〜100nmに変化し、縁部は中心部より薄くなり、均一な厚さの薄膜は得られなかった。
【0040】
【発明の効果】
本発明の放電プラズマ処理装置は、被処理体を均一に処理することができ、基材上に均一な厚さの薄膜を形成することができる簡便な処理装置であり、特に一定の大きさのチャンバー内においても大面積被処理体の安定処理に対応可能であるので、半導体製造工程で用いられる種々の方法を始めとして、あらゆるプラズマ処理方法において、インライン化及び高速化を実現するのに有効に用いることができる。これにより、処理時間の短縮化、コスト低下が可能になり、従来では不可能あるいは困難であった様々な用途への展開が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の放電プラズマ処理装置の例を説明する模式的装置図である。
【図2】本発明の放電プラズマ処理の処理工程を説明する模式的装置図である。
【図3】本発明の整流板の取り付け機構の一例を説明する模式的装置図である。
【符号の説明】
1 チャンバー
2 リモートソース
3 搬送台
4 被処理体
5 搬送機構
21、22 電極
23 放電空間
24 処理ガス導入口
25 プラズマ吹き出し口
26、27 排ガス回収口
31、32 整流板
33、34 整流板拡展・折りたたみ機構(エアシリンダー)
35 搬送台支持棒
36 整流板コントローラ
37 ソレノイドバルブ
51 搬送台移動回転軸
52 支柱
53 搬送コントローラ
【発明の属する技術分野】
本発明は、放電プラズマ処理装置に関し、特に、被処理体表面上の処理ガスの流れを均一にする放電プラズマ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、低圧条件下でグロー放電プラズマを発生させて被処理体の表面改質、又は被処理体上に薄膜形成を行う方法が実用化されている。しかし、これらの低圧条件下における処理装置は、真空チャンバー、真空排気装置等が必要であり、表面処理装置は高価なものとなり、大面積基板等を処理する際にはほとんど用いられていなかった。このため、特開平6−2149号公報、特開平7−85997号公報等に記載されているような大気圧近傍の圧力下で放電プラズマを発生させる常圧プラズマ処理装置が提案されてきている。
【0003】
しかしながら、常圧プラズマ処理方法においても、固体誘電体等で被覆した平行平板型等の電極間に被処理体を設置し、電極間に電圧を印加し、発生したプラズマで被処理体を処理する装置では、被処理体全体を放電空間に置くこととなり、被処理体にダメージを与えることになりやすいという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するものとして、被処理体を放電空間中に配置するのではなく、その近傍に配置し、放電空間から被処理体にプラズマを吹き付けるリモート型の装置が提案されている。特開平11−251304号公報及び特開平11−260597号公報には外側電極を備えた筒状の反応管及び反応管の内部に内側電極を具備し、両電極に冷却手段を設け、反応管内部でグロー放電を発生させ、反応管からプラズマジェットを吹き出して被処理体に吹きつけるプラズマ処理装置が、特開平11−335868号公報には平行平板型の電極を用い、さらに被処理体近傍の排気手段によって、プラズマを被処理体に接触させるプラズマ処理装置が開発されている。
【0005】
しかしながら、これらの装置においては、放電空間から被処理体へプラズマを吹き付けることにより被処理体上に形成される成膜の膜厚は、被処理体を設置した搬送台が小さい場合、被処理体上を流れるプラズマ流が急激に外部方向流れるため、被処理体の縁部において、薄くなり、被処理体上には不均一な厚さの薄膜が形成されてしまうという問題があった。また、これらの処理を排ガスの外部への流出、外部からの雰囲気ガスの流入を防止するために、チャンバー内で行う場合は、大面積被処理体を処理する際には、チャンバーを大型化しなくてはならなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑み、高速処理及び大面積処理に対応可能でかつ、被処理体上全面に渡って均一な厚さの薄膜を形成させることのできる放電プラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、対向電極間で発生させたグロー放電プラズマを放電空間外に配置した被処理体に吹きつける際、被処理体を搬送する搬送台を拡大、縮小できるようにすることによって、大面積被処理体であってもその表面上を流れるプラズマ流を均一にすることができ、高速処理が可能で、厚さの均一な薄膜等を形成することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明は、少なくとも一方の電極対向面を固体誘電体で被覆した一対の対向電極間に電界を印加し、前記対向電極間に処理ガスを導入して発生するグロー放電プラズマでプラズマ発生空間外の搬送台に配置された被処理体を処理する処理装置において、前記搬送台の搬送方向における被処理体の前後に拡展・折りたたみ構造を有する整流板を設けることを特徴とする放電プラズマ処理装置である。
【0009】
また、本発明の第2の発明は、整流板がエアシリンダーにより拡展・折りたたみが可能にされていることを特徴とする第1の発明に記載の放電プラズマ処理装置である。
【0010】
また、本発明の第3の発明は、チャンバー内で稼働させることを特徴とする第1又は2の発明に記載の放電プラズマ処理装置である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、対向する電極の少なくとも一方の対向面を固体誘電体で被覆した一対の対向電極間に電界を印加し、当該電極間に処理ガスを導入してグロー放電プラズマを発生させる装置(以下、リモートソースという)を用い、放電空間外に配置された被処理体を処理する際、被処理体を搬送する搬送台に拡展・折りたたみ可能な整流板を取り付けることにより、被処理体を移動させても常にその表面のプラズマ流を一定に保つことができ、特に、一定の大きさのチャンバー内で大面積被処理体の処理を行っても、被処理体上のプラズマ流の速さを均一にし、被処理体表面上に形成される薄膜の厚さを均一にすることのできる放電プラズマ処理装置である。以下に詳細に本発明を説明する。
【0012】
本発明の装置の一例を図で説明する。図1は、チャンバー内で、拡展・折りたたみ機構を有する整流板を設けた搬送台上の被処理体をリモートソースで処理する装置を説明する模式的装置断面図である。図1において、チャンバー1内に、リモートソース2、搬送台3、搬送機構5が設置され、搬送台3上の被処理体4にリモートソース2からプラズマを吹き付けて、放電プラズマ処理をできるようになされている。リモートソース2は、平行平板型の対向電極21及び22、両電極の間に構成される放電空間23、放電空間への処理ガス導入口24及びプラズマ吹き出し口25、電極近傍に設けられた排ガス回収口26及び27から構成され、両電極には電源から電界を印加するようになされ、処理ガス導入ラインと排ガス回収ラインが設けられている。被処理体4を搬送する搬送台3は、搬送方向の前後に整流板31及び32が、拡展・折りたたみ機構33及び34で、折りたたみ可能に取り付けられ、搬送台支持棒35で搬送台移動回転軸51により左右に移動されるようになされている。搬送台移動機構5は、搬送台支持棒35を移動させる搬送台移動回転軸51、回転軸の両端を支える支柱52、回転軸51を駆動させる電動モーターを含む搬送コントローラ53から構成されている。
【0013】
処理ガスは、リモートソース2に導入され、電界を印加された電極の放電空間23でプラズマ化され、プラズマ吹き出し口25から吹き出される。被処理体4は、搬送台3に設置され、搬送されてプラズマ吹き出し口25から吹き出されるプラズマで処理される。本発明の装置においては、プラズマ吹き出し口25から吹き出されるプラズマ流は、搬送台3の搬送方向の前後に設けられた整流板31及び32により、急激にガス流を乱されることなく流れ、被処理体表面を均一に処理することができる。また、本発明の装置においては、整流板31及び32が拡展・折りたたみ機構を有しているため、搬送台3の全体の大きさの大面積被処理体を設置しても両整流板を一杯に拡げることにより対応でき、一定の大きさのチャンバー内でも整流板をチャンバー内壁に衝突させることなく大きくすることができ、円滑なプラズマ処理を行うことができる。
【0014】
本発明の放電プラズマ処理装置において、搬送台3に取り付けられた整流板31及び32を拡げ、折りたたみながら放電プラズマ処理を行う処理操作工程の一例を図2で説明する。一定の大きさのチャンバー1内において、搬送台3に被処理体4を設置し、左から右方向に搬送台3を移動させ、リモートソース2から吹き出したプラズマで処理する順序は、次のような3段階になる。第1段階として、図2(a)に示すように右側整流板32を拡げ、リモートソース2から吹き出されるプラズマ流を整流板32から搬送台3方向に一様に流れるようにして安定させる。第2段階として搬送台3を搬送機構5により徐々に右方向に移動させ、搬送台左側の整流板31を拡げていき、図2(b)に示すように左右の両整流板31及び32を拡げ、プラズマ流を両方向に安定に流れるようにする。第3段階として、搬送台3がチャンバー1の右端側に進むに連れて、チャンバー内壁にぶつからないよう整流板32をたたむが、プラズマ流は、整流板31から被処理体4の全体の上を流れ、被処理体4の表面上には、流れの乱れが生ぜず、均一な処理が継続される。このように、本発明の装置は、大面積被処理体であってもチャンバーの大きさ全体を用いて処理することができ、被処理体が大きいからといって、チャンバー等を取り換える必要のない装置である。
【0015】
本発明の装置における整流板32及び33の拡展・折りたたみ機構は、どのような機構を用いてもよく、整流板自体が蛇腹状に伸び縮みする機構、整流板自体が巻き込み巻開きする機構、平滑な板を空気の圧縮・排気により気筒内のピストンを駆動させるエアシリンダーにより拡展・折りたたみ機構等を挙げることができるが、整流板を拡げたときにより平滑な面を維持するためには、エアシリンダーによる平滑板の拡展・折りたたみ機構を用いるのが好ましい。例えば、図3に示すように、整流板コントローラ36によりソレノイドバルブ37を稼働させエアシリンダー34を駆動して整流板32を拡展し、折りたたむことができる。図3(a)は、エアシリンダー34を伸ばして整流板32を拡展した状態を示す図であり、図3(b)は、エアシリンダー34を縮めて整流板32を折りたたんだ状態を示す図である。なお、整流板コントローラ36は、チャンバー1の大きさに合わせて搬送台がチャンバー内壁に衝突しないように駆動できるようにするのが大面積被処理体を処理するのに好ましい。
【0016】
なお、本発明の装置における整流板31及び32の大きさは、搬送台3の大きさ、チャンバーの大きさ等により適宜決めることができる。また、搬送台3としては、被処理体の加熱機構を有するようにし、XY方向またはXYZ方向に移動可能な制御装置を設けて適宜、処理の必要箇所に移動させる制御システムを備えているようにするのが好ましい。また、整流板の拡展・折りたたむ操作もそれに伴う制御システムにより操作するようにするのが好ましい。
【0017】
上記電極の材質としては、銅、アルミニウム等の金属単体、ステンレス、真鍮等の合金、金属間化合物等からなるものが挙げられる。電極の形状としては、プラズマ放電が安定にできれば、特に限定されないが、電界集中によるアーク放電の発生を避けるために、対向電極間の距離が一定となる構造であることが好ましく、より好ましくは電圧印加電極と接地電極間の間が平行平坦部分を有する形状であり、特に好ましくは、両電極が略平面形状であるのが好ましい。
【0018】
上記固体誘電体は、電極の対向面の一方又は双方を被覆する。この際、固体誘電体と被覆される電極は密着し、かつ、接する電極の対向面を完全に覆うようにする。固体誘電体によって覆われずに電極同士が直接対向する部位があると、そこからアーク放電が生じやすい。
【0019】
上記固体誘電体の厚みは、0.01〜4mmであることが好ましい。厚すぎると放電プラズマを発生するのに高電圧を要することがあり、薄すぎると電圧印加時に絶縁破壊が起こり、アーク放電が発生することがある。
【0020】
固体誘電体の材質としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の複酸化物等が挙げられる。
【0021】
特に、25℃環境下における比誘電率が10以上のものである固体誘電体を用いれば、低電圧で高密度の放電プラズマを発生させることができ、処理効率が向上する。比誘電率の上限は特に限定されるものではないが、現実の材料では18,500程度のものが入手可能であり、本発明に使用出来る。特に好ましくは比誘電率が10〜100の固体誘電体である。上記比誘電率が10以上である固体誘電体の具体例としては、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の複酸化物を挙げることが出来る。
【0022】
上記電極間の距離は、固体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して適宜決定されるが、0.1〜50mmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜5mmである。0.1mm未満では、電極間の間隔を置いて設置するのに充分でないことがあり、一方、50mmを超えると、均一な放電プラズマを発生させにくい。
【0023】
本発明では、上記電極間に、高周波、パルス波、マイクロ波等による電界が印加され、プラズマを発生させるが、パルス電界を印加することが好ましく、特に、電界の立ち上がり及び/又は立ち下がり時間が、10μs以下である電界が好ましい。10μsを超えると放電状態がアークに移行しやすく不安定なものとなり、パルス電界による高密度プラズマ状態を保持しにくくなる。また、立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短いほどプラズマ発生の際のガスの電離が効率よく行われるが、40ns未満の立ち上がり時間のパルス電界を実現することは、実際には困難である。より好ましくは50ns〜5μsである。なお、ここでいう立ち上がり時間とは、電圧(絶対値)が連続して増加する時間、立ち下がり時間とは、電圧(絶対値)が連続して減少する時間を指すものとする。
【0024】
上記パルス電界の電界強度は、10〜1000kV/cmとなるようにするのが好ましい。電界強度が10kV/cm未満であると処理に時間がかかりすぎ、1000kV/cmを超えるとアーク放電が発生しやすくなる。
【0025】
上記パルス電界の周波数は、0.5kHz以上であることが好ましい。0.5kHz未満であるとプラズマ密度が低いため処理に時間がかかりすぎる。上限は特に限定されないが、常用されている13.56MHz、試験的に使用されている500MHzといった高周波帯でも構わない。負荷との整合のとり易さや取り扱い性を考慮すると、500kHz以下が好ましい。このようなパルス電界を印加することにより、処理速度を大きく向上させることができる。
【0026】
また、上記パルス電界におけるひとつのパルス継続時間は、200μs以下であることが好ましい。200μsを超えるとアーク放電に移行しやすくなる。ここで、ひとつのパルス継続時間とは、ON、OFFの繰り返しからなるパルス電界における、ひとつのパルスの連続するON時間を言う。
【0027】
本発明の放電プラズマ処理装置は、どのような圧力下でも用いることができるが、大気圧近傍の圧力下でグロー放電プラズマを発生させる常圧放電プラズマ処理に用いるとその効果を十分に発揮できる。常圧放電プラズマ処理においては、低圧下の処理よりも高い電圧を必要とするため、本発明の装置が特に有利である。
【0028】
上記大気圧近傍の圧力下とは、1.333×104〜10.664×104Paの圧力下を指す。中でも、圧力調整が容易で、装置が簡便になる9.331×104〜10.397×104Paの範囲が好ましい。
【0029】
本発明で処理できる被処理基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等のプラスチック、ガラス、セラミック、金属等が挙げられる。基材の形状としては、板状、フィルム状等のものが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明の表面処理方法によれば、様々な形状を有する基材の処理に容易に対応することができる。
【0030】
本発明で用いる処理ガスとしては、電界を印加することによってプラズマを発生するガスであれば、特に限定されず、処理目的により種々のガスを使用できる。
【0031】
上記処理用ガスとして、CF4、C2F6、CClF3、SF6等のフッ素含有化合物ガスを用いることによって、撥水性表面を得ることができる。
【0032】
また、処理用ガスとして、O2、O3、水、空気等の酸素元素含有化合物、N2、NH3等の窒素元素含有化合物、SO2、SO3等の硫黄元素含有化合物を用いて、基材表面にカルボニル基、水酸基、アミノ基等の親水性官能基を形成させて表面エネルギーを高くし、親水性表面を得ることができる。また、アクリル酸、メタクリル酸等の親水基を有する重合性モノマーを用いて親水性重合膜を堆積することもできる。
【0033】
さらに、Si、Ti、Sn等の金属の金属−水素化合物、金属−ハロゲン化合物、金属アルコラート等の処理用ガスを用いて、SiO2、TiO2、SnO2等の金属酸化物薄膜を形成させ、基材表面に電気的、光学的機能を与えることができ、ハロゲン系ガスを用いてエッチング処理、ダイシング処理を行ったり、酸素系ガスを用いてレジスト処理や有機物汚染の除去を行ったり、アルゴン、窒素等の不活性ガスによるプラズマで表面クリーニングや表面改質を行うこともできる。
【0034】
経済性及び安全性の観点から、上記処理ガスを以下に挙げるような希釈ガスによって希釈された雰囲気中で処理を行うこともできる。希釈ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガス、窒素気体等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。希釈ガスの混合割合は、用途によって異なるが、例えば、親水生重合膜、金属酸化物薄膜を形成する場合は、処理用ガスの割合が0.01〜10体積%であることが好ましい。
【0035】
なお、本発明の装置によれば、プラズマ発生空間中に存在する気体の種類を問わずグロー放電プラズマを発生させることが可能である。公知の低圧条件下におけるプラズマ処理はもちろん、特定のガス雰囲気下の大気圧プラズマ処理においても、外気から遮断された密閉容器内で処理を行うことが必須であったが、本発明のグロー放電プラズマ処理装置を用いた方法によれば、開放系、あるいは、気体の自由な流失を防ぐ程度の低気密系での処理が可能となる。
【0036】
本発明のパルス電界を用いた大気圧放電処理装置によると、全くガス種に依存せず、電極間において直接大気圧下で放電を生じせしめることが可能であり、より単純化された電極構造、放電手順による大気圧プラズマ装置、及び処理手法でかつ高速処理を実現することができる。また、パルス周波数、電圧、電極間隔等のパラメータにより処理に関するパラメータも調整できる。
【0037】
【実施例】
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0038】
実施例1
図1に示す装置を用い、放電プラズマ処理を行った。チャンバー1として700mm×500mm×500mmの大きさのアルミニウム製容器を用い、リモートソース2の電極21及び電極22として、長さ250mm×高さ50mm×厚み20mmのSUS製平行平板電極を用い、各電極には固体誘電体としてアルミナを1mmの厚さに溶射し、2mmの間隔をおいて設置した。被処理体4として、200mmφのシリコーンウェーハを用い、搬送台3の両側に100mm×270mmのステンレス製整流板31及び32をエアシリンダーで拡展・折りたたみ可能に設け、搬送台3を50mm/minで移動させ、図2の順序に整流板の拡展・折りたたみを行いながら処理を行った。処理ガスとして、テトラエトキシシラン0.16体積%、酸素16体積%をアルゴンガスにより希釈した混合ガスを用い、電極間にパルス立ち上がり速度5μs、電圧20kVPP、周波数10kHzのパルス電界を印加した。シリコーンウェーハ基材上にSiO2薄膜が100nmの厚さで均一に形成され、表面厚さのばらつきは、±3%であった。
【0039】
比較例1
整流板を折りたたんだままの状態で処理を行う以外は、実施例1と同様にして放電プラズマ処理を行った。シリコーンウェーハ基材上にはSiO2薄膜が形成され、基材中心部は、厚さのばらつきが±3%の100nmの厚さのSiO2薄膜であったが、基材の縁先端部は、厚さが60〜100nmに変化し、縁部は中心部より薄くなり、均一な厚さの薄膜は得られなかった。
【0040】
【発明の効果】
本発明の放電プラズマ処理装置は、被処理体を均一に処理することができ、基材上に均一な厚さの薄膜を形成することができる簡便な処理装置であり、特に一定の大きさのチャンバー内においても大面積被処理体の安定処理に対応可能であるので、半導体製造工程で用いられる種々の方法を始めとして、あらゆるプラズマ処理方法において、インライン化及び高速化を実現するのに有効に用いることができる。これにより、処理時間の短縮化、コスト低下が可能になり、従来では不可能あるいは困難であった様々な用途への展開が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の放電プラズマ処理装置の例を説明する模式的装置図である。
【図2】本発明の放電プラズマ処理の処理工程を説明する模式的装置図である。
【図3】本発明の整流板の取り付け機構の一例を説明する模式的装置図である。
【符号の説明】
1 チャンバー
2 リモートソース
3 搬送台
4 被処理体
5 搬送機構
21、22 電極
23 放電空間
24 処理ガス導入口
25 プラズマ吹き出し口
26、27 排ガス回収口
31、32 整流板
33、34 整流板拡展・折りたたみ機構(エアシリンダー)
35 搬送台支持棒
36 整流板コントローラ
37 ソレノイドバルブ
51 搬送台移動回転軸
52 支柱
53 搬送コントローラ
Claims (3)
- 少なくとも一方の電極対向面を固体誘電体で被覆した一対の対向電極間に電界を印加し、前記対向電極間に処理ガスを導入して発生するグロー放電プラズマでプラズマ発生空間外の搬送台に配置された被処理体を処理する処理装置において、前記搬送台の搬送方向における被処理体の前後に拡展・折りたたみ構造を有する整流板を設けることを特徴とする放電プラズマ処理装置。
- 整流板がエアシリンダーにより拡展・折りたたみが可能にされていることを特徴とする請求項1に記載の放電プラズマ処理装置。
- チャンバー内で稼働させることを特徴とする請求項1又は2に記載の放電プラズマ処理装置。
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