JP3776838B2 - 抄紙機のサクションボックス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ツインワイヤ式抄紙機のサクションボックスに関する。さらに詳しくは、一対のフォーミングワイヤが重なり合ったフォーミングゾーンへ紙料懸濁液を送り込んで紙層形成を行うツインワイヤ式抄紙機のサクションボックスに関する。
【0002】
【従来の技術】
ツインワイヤ式抄紙機の基本構成を、図4に基づき説明する。
図4はツインワイヤ式抄紙機の概略説明図である。1はフォーミングロール、2はブレストロールで、これらのロール1,2は互いに接近して配置されている。3は上部ワイヤで、フォーミングロール1とガイドロール11にエンドレスに巻き掛けられて、ワイヤパートの上半分領域で循環する。4は下部ワイヤで、ブレストロール2とガイドロール12にエンドレスに巻き掛けられて、ワイヤパートの下半分領域で循環する。
前記上部ワイヤ3がフォーミングロール1に巻き掛けられた部分と、前記下部ワイヤ4がブレストロール2に巻き掛けられた部分は、ワイヤ3,4が互いに接近する方向に走行する部分であり、側面視で漏斗状の開口部を形成している。そして、開口部の奥底が、フォーミングロール1とブレストロール2で挟まれるニップ部Nであり、そこから各ワイヤ3,4の走行方向下流側において、各ワイヤ3,4が重なって走行する領域の内部が紙層を形成するフォーミングゾーンを構成している。
そして、前記開口部に臨むように、ヘッドボックス6が配置されており、紙料懸濁液(以下、紙料液という)を前記ワイヤ3,4間に噴出させるようにしている。このようにして紙料液がフォーミングゾーンに供給される。この紙料液は、パルプと水の割合(重量)が約1対100 の懸濁液である。
【0003】
図5はサクションボックス30の概略説明図である。図4および図5に示すように、前記フォーミングロール1の後方(各ワイヤ3,4の走行方向下流側という。以下同じ)、かつ上部ワイヤ3の上方には、サクションボックス30が設けられている。このサクションボックス30はフォーミングゾーンを通過していく紙料液から水分の数10%を吸引するために設けられている。さらに、このサクションボックス30の下面には数本の固定ブレード7が固定されており、上部ワイヤ3をガイドするようにしている。
さらに、上記サクションボックス30の下方領域において、下部ワイヤ4の下面には可動式のブレード8が配置されており、下部ワイヤ4を下方から支えている。
【0004】
このため、フォーミングロール1とブレストロール30に挟まれたニップ部Nに供給された紙料は、上下ワイヤ3,4によってニップ部Nと上下のブレード7,8で支えられた部分との間を通過する間に大部分の水分が除去されて紙層に形成されていく。
そして、紙料を、上下ワイヤ3,4でさらに搬送されつつ脱水することによって湿紙とし、ついで全ての抄紙機が備えているプレスパートで脱水をすすめて湿紙の組織を緻密にし、ドライパートで乾燥させ、カレンダパートで紙の平滑性や光沢をつけ、最後にリールパートでロール状に巻き取ることによって、製品に仕上げられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図5および図6に示すように、前記サクションボックス30は、内部が幾つかのチャンバ、例えば3つのチャンバ30c に区切られていて、これらの各チャンバ30c はいずれも負圧に維持されるようになっている。
そして、サクションボックス30の下面に、フォーミングギャップに面して開口し、各チャンバ30c に通ずる誘水路30h が設けられている。
【0006】
この誘水路30h は、上下部ワイヤ3,4に挟まれた紙料水から水分を吸引するものであるため、紙料水中のパルプも同時に吸引することが不可避である。そして、このパルプは誘水路30h の内壁や誘水路30h 中に取付けた支柱30bに付着すると、段々と付着量が膨張してくる。そこで、従来は、作業員が手を差し込んだり、誘水路30hにノズル等を挿入して水を吹き付けたり、外部から高圧水を吹きつけたり、可性ソーダ等の薬品によって洗浄するなど、人為的にも掃除できるようにするというのが基本思想であって、そのため、誘水路30hの断面積を大きくしたり、洗浄しやすい構造にする等の配慮が必要であった。
しかし、誘水路30h の断面積を大きくすると、誘水路30h内を流れる水の流速が低下するから、益々誘水路30hにパルプが付着しやすくなるという問題が生じる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑み、小さな断面の誘水路でありながら人為的な清掃を不要にでき、誘水路を流れる水の流速を容易に調整できるサクションボックスを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の抄紙機のサクションボックスは、負圧に維持されるチャンバと、該チャンバにフォーミングゾーンを走行する紙料液の水分を導入する誘水路を備えた、サクションボックスにおいて、前記誘水路の基部に外部空気を導入する空気導入路を接続したことを特徴とする。
請求項2の抄紙機のサクションボックスは、請求項1記載の発明において、前記空気導入路に、空気導入量を加減するダンパが取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、誘水路に外部空気が導入されると、チャンバ内の負圧によって空気が上昇していき、かつ膨張していく。このため、水路内部は狭くなり紙料液は早く流れることになり、さらに流動中の紙料液は気泡の衝突、振動を受けるので、紙料液中のパルプが水路の内壁や支え部材に付着しない。このため、人手による掃除等の手間が不要になるし、掃除等を行うために抄紙機を停止させる必要がないので生産効率を高くすることができる。また、人手による清掃を行う必要がないので、誘水路の断面積を小さくすることができる。しかも、誘水路を流れる水の流速を速くできるから、紙料液中のパルプが水路等に付着することを防ぐ効果を、更に高めることができる。
請求項2の発明によれば、ダンパを調整すれば、誘水路に導入される空気の量を調整することができるので、誘水路を流れる水の量、つまり抄紙機から脱水する水の量が変化しても、誘水路を流れる水の流速を調節することができる。よって、誘水路内を流れる水の流速を、パルプの付着防止に必要な流速に保つことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るサクションボックスの部分拡大断面図、図2はダンパを取付けた空気導入路の断面図、図3は誘水路30h 中における空気の挙動を示す説明図、図4はツインワイヤ式抄紙機の概略説明図、図5はサクションボックス30の概略説明図である。
【0011】
まず、図4および図5に基づきツインワイヤ式抄紙機の全体構成を説明する。
フォーミングロール1と、ブレストロール2は互いに接近して配置されている。上部ワイヤ3は、フォーミングロール1とワイヤパートの上半分適所に配置されたガイドロール11にエンドレスに巻き掛けられて、ワイヤパートの上半分領域で循環する。下部ワイヤ4は、ブレストロール2とワイヤパートの下半分適所に配置されたガイドロール12にエンドレスに巻き掛けられて、ワイヤパートの下半分領域で循環する。
前記上部ワイヤ3がフォーミングロール1に巻き掛けられた部分と、前記下部ワイヤ4がブレストロール2に巻き掛けられた部分で側面視漏斗状に形成された開口部に臨むように、ヘッドボックス6が配置されている。そして、ニップ部Nから下流側においてワイヤ3,4が重なって走行する領域の内部が紙層を形成するフォーミングゾーンとなっている。
【0012】
前記フォーミングロール1の上方には、水を回収するためのセーブオール20が取付けられている。つまり、フォーミングロール1の回転に伴って遠心力方向に紙料液の一部がはね飛ばされるが、これを外部に飛散しないように回収するためにセーブオール20が設けられている。
【0013】
また、上部ワイヤ3の上方であって前記フォーミングロール1の後方には、上部ワイヤ3をガイドするように、数本の固定ブレード7が設けられている。この固定ブレード7は後述するサクションボックス30の下面に取り付けられている。
また、上記サクションボックス30の下方領域において、下部ワイヤ4の下面には浮動式のブレード8が配置されており、下部ワイヤ4を下方から支えている。
【0014】
前記フォーミングロール1の後方かつ固定ブレード7の上方には、サクションボックス30が設けられている。このサクションボックス30はフォーミングゾーンを通過していく紙料液から水分の数10%を吸引するためのものである。このサクションボックス30は、複数のチャンバ30cを備えており、このチャンバ30cは、いずれも図示しない負圧源に接続され、その内部が負圧に保たれている。
【0015】
このサクションボックス30の下部には、各チャンバ30c と前記フォーミングゾーンとの間を連通させる誘水路30h が設けられている(図1参照)。この誘水路30h は、いずれもその一端がチャンバ30c に連結されており、その他端における前記上部ワイヤ3に面する部分、つまりフォーミングゾーンと面する部分に開口部30f が設けられている。
【0016】
このため、紙料懸濁液(以下、紙料液という)をニップ部Nにおける前記ワイヤ3,4間に噴出させてフォーミングゾーンに供給し、上下ワイヤ3,4によって下流側に搬送すればニップ部Nと上下のブレード7,8で支えられた部分との間を通過する間に、サクションボックス30等によって紙料液から大部分の水分が除去することができるので、紙層を形成することができる。
そして、紙料液を上下ワイヤ3,4でさらに下流側に搬送されつつ脱水することによって湿紙とし、ついで全ての抄紙機が備えているプレスパートで脱水をすすめて湿紙の組織を緻密にし、ドライパートで乾燥させ、カレンダパートで紙の平滑性や光沢をつけ、最後にリールパートでロール状に巻き取ることによって、製品に仕上げられる。
【0017】
さて、本発明の特徴であるサクションボックス30を詳細に説明する。
図1および図2に示すように、サクションボックス30の下部には、上下ワイヤ3,4の送り方向に対して直交する方向に延びた空気導入路31が設けられている。この空気導入路31の一端には、サクションボックス30の外部と空気導入路31との間を連通する連通口31h が設けられている。
一方、図2に示すように、空気導入路31の下面と、前記誘水路30h の基部の上面との間には、両者を連通させる連通通路32が設けられている。この連通通路32は、空気導入路31の長手方向に沿って複数個所、一定の間隔で設けられている。
【0018】
このため、チャンバ30c 内が負圧になり、紙料液の水分が誘水路30h 内をチャンバ30c に向かって流れると、空気導入路31を通って連通通路32から誘水路30h 内に外部空気が導入される。
【0019】
図3に示すように、誘水路30h に導入された空気Bbは誘水路30h を流れる水とともにチャンバ30c に向かって流れ、チャンバ30c に近づくにつれその体積が膨張していく。すると、誘水路30hの各断面において、水が流れる部分の面積が、空気Bbの存在によって小さくなる。つまり、誘水路30h 内部における実質的な流水路が狭くなり、紙料液は早く流れる。しかも流動中の紙料液は気泡の衝突、振動を受けるので、誘水路30h の内壁や支持ブラケット30b に付着しない。
【0020】
よって、誘水路30h 内部を人手によって掃除等する手間が不要になるし、掃除等を行うために抄紙機を停止させる必要がないので生産効率を高くすることができる。
また、人手による清掃を行う必要がないので、誘水路30h の断面積を小さくすることができる。そして、誘水路30h の断面積が小さくすることによって、誘水路30h を流れる水の流速を速くできるから、紙料液中のパルプが水路等に付着することを防ぐ効果を、更に高めることができる。
【0021】
また、図2に示すように、空気導入路31内において、連通口31h 近傍には、ダンパ35が設けられている。このダンパ35は、空気導入路31の通路面積を増減することによって、連通口31h から空気導入路31内に流入する空気の量、つまり連通通路32を通って誘水路30h に導入される空気の量を加減することができる。
【0022】
このため、ダンパ35によって空気導入路31の通路面積を調整し、誘水路30hに導入される空気の量を調整すれば、誘水路30h を流れる水の量、つまり紙料液から脱水する水の量が変化しても、誘水路30h を流れる水の流速を調節することができる。よって、誘水路30h 内を流れる水の流速を、パルプの付着防止に必要な流速に保つことができる。
【0023】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、人手による掃除等の手間が不要になるし、掃除等を行うために抄紙機を停止させる必要がないので生産効率を高くすることができ、誘水路を流れる水の流速を速くできるから、紙料液中のパルプが水路等に付着することを防ぐ効果を、更に高めることができる。
請求項2の発明によれば、誘水路内を流れる水の流速を、パルプの付着防止に必要な流速に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るサクションボックス30の部分拡大断面図である。
【図2】 ダンパ35を取付けた空気導入路の断面図である。
【図3】 誘水路30h 中における空気の挙動を示す説明図である。
【図4】 ツインワイヤ式抄紙機の概略説明図である。
【図5】 サクションボックス30の概略説明図である。
【図6】 サクションボックス30の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
30 サクションボックス
30c チャンバ
30h 誘水路
31 空気導入路
35 ダンパ
Claims (2)
- 負圧に維持されるチャンバと、該チャンバにフォーミングゾーンを走行する紙料液の水分を導入する誘水路を備えた、サクションボックスにおいて、
前記誘水路の基部に外部空気を導入する空気導入路を接続した
ことを特徴とする抄紙機のサクションボックス。 - 前記空気導入路に、空気導入量を加減するダンパが取り付けられている
ことを特徴とする請求項1記載の抄紙機のサクションボックス。
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