JP3775930B2 - 集電舟体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両などの屋根に設置されるパンタグラフにおいて、架線に接触して電力を取込むための集電舟体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電力を動力とする電動機によって駆動される車両として、たとえば電気鉄道車両がある。電気鉄道車両は、軌道の上方に所定の高さ位置に支持された架線に、車両の屋根に設置される集電装置であるパンタグラフが備える集電舟体を所定の押上げ力で接触させ、車両を駆動するための電力を取込む方式を採用している。
【0003】
このような電気鉄道車両は、パンタグラフの集電舟体が備える摺板を架線に摺動させながら電力を取込み、走行している。集電舟体は、車両の進行方向および上下方向に対して垂直な車両の幅方向に延びて細長く形成されている。この集電舟体には、空気流によって揚力および抗力が発生し、押上げ力変化が起こる。集電舟体に働く全押上げ力が大きくなると、摺板と架線との摩擦力が大きくなるとともに、集電舟体が架線を持上げる結果となって、架線を破損したりする。また集電舟体の形状によっては、集電舟体に空気流による負の押上げ力、すなわち架線から集電舟体を離反させる力が働く。このような場合、集電舟体と架線とが非接触状態になるなどして、集電舟体は適切に電力を取込むことができなくなるという問題を生じる。
【0004】
また車両には走行速度を高くする高速化が望まれているけれども、車両が高速度で走行する場合、車両に設けられたパンタグラフの集電舟体に空気流が作用することによって、集電舟体の風切り音、エオルス音などの空力騒音が大きくなる。このような空力騒音の音圧レベルは、集電舟体に作用する空気流の速度の6乗に比例する。車両の高速化を図るためには、車両がより高速度で走行する場合においても、騒音の環境基準を満足する限界の速度に制限される。このため高速化を図る以前の最高速度での空力騒音の音圧レベルと、高速化を図った後の最高速度での空力騒音の音圧レベルとを同程度とすることができるように、走行速度に対して発生する空力騒音の音圧レベルを低減する必要がある。
【0005】
これらの問題を解決する目的で、空気流による揚力特性を改善し、空力騒音を低減することができる集電舟体が、たとえば特開平6−189408号公報に開示されている。この集電舟体は、長手方向に垂直な断面形状が楕円形である舟体本体と、舟体本体の上面側に設けられ、前記断面形状が略台形状の摺板と、舟体本体の下面側に設けられ、前記断面形状が略台形状の集電舟体フレームとから構成されている。この集電舟体は、集電舟体の進行方向と平行な方向に集電舟体に空気流が作用する条件の下に、摺板および集電舟体フレームの前記断面形状が決定され、空気流による押上げ力が所定範囲内となるように、適切な揚力特性を得ている。したがって集電舟体は、走行中にも適切な押上げ力で架線に接触され、電力を取込むことができる。また集電舟体の舟体本体の断面形状は楕円形であるので、舟体本体に作用する空気流の乱れが小さくなる。これによって、車両が高速走行するときの集電舟体の風切り音なとを小さくすることができ、空力騒音を低減することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、特開平6−189408号公報に開示される集電舟体は、進行方向と平行な方向の空気流に対しては適切な押上げ力を得ることができる。しかしながら、車両がたとえば山岳地帯などの空気流が複雑な流れを有する場所を走行するとき、パンタグラフの集電舟体には進行方向に対して迎角を持つ空気流が作用する。また車両がトンネルに進入し、もしくはトンネルから退出する場合、または車両の屋根に設けられた機器類が影響する場合など、車両のパンタグラフ付近の空気流が複雑な流れとなる場合においても、パンタグラフの集電舟体には迎角を持つ空気流が作用する。このように空気流が迎角を有する場合には、迎角の影響を受けて所定範囲外の空気流による押上げ力が働くので、集電舟体と架線とが適切に接触する全押上げ力を得られないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、集電舟体に対して仰角を持つ空気流が作用する場合において、空気流による押上げ力の影響を小さくすることができる集電舟体を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、空力騒音を低減することができる集電舟体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、進行方向に対して垂直で水平方向へ延びる舟体本体であって、
長手方向に垂直な断面の形状が、進行方向に垂直な高さ方向の縦寸法をhとしかつ進行方向に平行な幅方向の横寸法をdとする長方形状であり、
幅方向の両側面が、長手方向に垂直な断面における長方形の各角部で露出し、
縦寸法hと横寸法dとの比n=d/hが2.2以上でかつ2.7以下の範囲内の値に設定される舟体本体を備えることを特徴とする集電舟体である。
【0010】
本発明に従えば、舟体本体の長手方向に垂直な断面形状は長方形であり、前記断面形状の縦寸法hと横寸法dとの比n=d/hは2.2以上でかつ2.7以下の範囲内の値に設定されている。このような寸法比nが2.2以上でかつ2.7以下の範囲内である舟体本体を備える集電舟体は、迎角を有する空気流が集電舟体に作用する場合において、集電舟体に作用する空気流による押上げ力の絶対値が小さくなり、押上げ力の影響を小さくすることができる。逆に寸法比nが2.2未満または2.7を超える場合、集電舟体における空気流による押上げ力FYの影響が大きくなる。したがって、寸法比nが2.2以上でかつ2.7以下の範囲内である集電舟体を車両のパンタグラフに用いることによって、車両のパンタグラフ付近の空気流が複雑な流れとなる場合においても、集電舟体は適切な力で架線に接触し、パンタグラフは集電舟体を介して所要の通りに電力を取込むことができる。
さらに舟体本体は、進行方向であり、かつ幅方向の両側面が、各角部において露出している。つまり舟体本体の各角部がそれぞれ露出し、各角部に幅方向の両側面から成る平坦面が形成される。これによって舟体本体の前記断面形状が、前記範囲内の寸法比nを有する長方形状であることによる効果、具体的には、集電舟体における揚力特性の変化による押上げ力の変化を阻止するという効果を、確実に達成することができる。
【0011】
また本発明は、舟体本体の幅方向両側部には、舟体本体の長手方向に延びる縁体がそれぞれ設けられ、各縁体は、舟体本体の高さ方向両端部間の中間部から先細状に突出することを特徴とする。
【0012】
本発明に従えば、集電舟体の舟体本体の幅方向両側部には、進行方向に先細状に突出する縁体がそれぞれ設けられている。このような縁体が設けられた集電舟体に空気流が作用するとき、空気流が一方の縁体によって上下にかきわけられて、滑らかに案内されるとともに、他方の縁体によって円滑に合流され、集電舟体まわりの空気流の乱れが少なくなる。これによって空気流の乱れに伴う空力騒音の発生を低減することができる。このような縁体が設けられた集電舟体を車両のパンタグラフに用いることによって、車両が走行する際に集電舟体における空力騒音の発生が低減される。
【0013】
また各縁体は舟体本体の高さ方向両端部間の中間部にそれぞれ設けられているので、長手方向に垂直な断面形状が長方形である舟体本体の各角部分がそれぞれ露出し、すなわち縁体の上下には、舟体本体の進行方向に垂直な幅方向の両側面から成る平坦面が形成される。これによって舟体本体に縁体を設けた場合においても、舟体本体の前記断面形状が所定の長方形状であることによる集電舟体における揚力特性が変化し、集電舟体に働く押上げ力が変化することが阻止される。したがって集電舟体において、集電舟体に働く空気流による押上げ力を少なくするとともに、空力騒音を低減することができる。
【0014】
また本発明は、縁体は、略三角柱状であり、その軸線に平行な一側部で、舟体本体の幅方向両側部に固定されることを特徴とする。
【0015】
本発明に従えば、縁体は略三角柱状であるので、このような縁体が集電舟体の幅方向両側部にそれぞれ設けられることによって、集電舟体は略流線形となる。このような集電舟体に空気流が作用するとき、集電舟体周りの空気流の乱れが小さくなり、この空気流の乱れに伴う空力騒音の発生を低減することができる。
【0016】
また本発明は、縁体の先端部の外表面は、前記幅方向に凸となる丸みを有していることを特徴とする。
【0017】
本発明に従えば、縁体の先端部の外表面は、丸みを有しているので、集電舟体の揚力傾斜が低くでき、低騒音化を図ることができる。
【0018】
また本発明は、縁体は、先端部よりの部分に、縁体の長手方向に複数の凹所が形成されることを特徴とする。
【0019】
本発明に従えば、集電舟体に設けられた縁体には複数の凹所が形成されている。空気流が集電舟体に作用するとき、集電舟体に沿って流れる空気にカルマン渦が生じる。集電舟体の断面形状が長手方向に一様であると、カルマン渦の発生も一様となり、特定の周波数の成分が強調されてエオルス音という空力騒音が発生しやすい。したがって縁体に複数の凹所が形成されることによって、集電舟体の長手方向に一様なカルマン渦が発生することが抑制され、空力騒音を低減することができる。
【0020】
また本発明は、舟体本体の上部に設けられ、架線に接触される摺板を有し、
各縁体の先端部を含む仮想平面は、舟体本体の下面と摺板の上面との中央位置よりも下方に位置することを特徴とする。
【0021】
本発明に従えば、各縁体の先端部を含む仮想平面は、舟体本体の下面と摺板の上面との中央位置よりも下方に位置する。このような集電舟体に空気流が作用したとき、集電舟体の上面側の空気流の速度は、下面側の空気流の速度より大きくなり、上面側の圧力が下面側より小さくなるので、空気流がどのような仰角を有していても集電舟体には上向きの揚力が生じる。言い換えると、空気流が作用したとき、集電舟体は、空気流の仰角に関係なく、空気流の押上げ力に応じた正の押上げ力を得ることができる。したがって、集電舟体における前記仮想平面の位置を適切に設定することによって、架線に対する集電舟体の全押上げ力を任意の範囲内に設定することができる。
【0022】
また本発明は、舟体本体の上部に設けられ、架線に接触される摺板を有し、
各縁体の先端部を含む仮想平面は、舟体本体の下面と摺板の上面との中央位置よりも上方に位置することを特徴とする。
【0023】
本発明に従えば、各縁体の先端部を含む仮想平面は、舟体本体の下面と摺板の上面との中央位置よりも上方に位置する。このような集電舟体に空気流が作用するとき、集電舟体の下面側の空気流の速度は上面側の空気流の速度より大きくなり、下面側の圧力が上面側より小さくなるので、空気流がどのような仰角を有していても集電舟体には下向きの揚力が生じる。言い換えると、空気流が作用するとき、集電舟体は、空気流の仰角に関係なく、空気流の速度に応じた負の押上げ力を得ることができる。したがって、集電舟体における前記仮想平面の位置を適切に設定することによって、架線に対する集電舟体の全押上げ力を任意の範囲内に設定することができる。
【0024】
さらに本発明は、舟体本体の上部に設けられ、架線に接触される摺板を有し、摺板の進行方向と平行な幅方向寸法は、舟体本体の横寸法dより小さく設定され、幅方向両側の表面は、幅方向に対して垂直に形成され、または舟体本体から離反するにつれて幅方向内方に向かうように、幅方向に対して45°以上90°未満の角度をなして傾斜して形成されることを特徴とする。
【0025】
本発明に従えば、摺板の進行方向と平行な幅方向寸法は、舟体本体の横寸法dより小さく設定され、幅方向両側の表面は、幅方向に対して垂直に形成され、または舟体本体から離反するにつれて幅方向内方に向かうように、幅方向に対して45°以上90°未満の角度をなして傾斜して形成される。このように摺板は形成されているので、摺板を集電舟体に設けることによって集電舟体の揚力特性が変化することが少ない。したがって舟体本体を所定の長方形断面形状とすることによって、集電舟体に働く押上げ力の絶対値を小さくする効果に影響を及ぼすことが少なく、摺板を舟体本体に設けることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の一形態である集電舟体2を示す斜視図であり、図2は集電舟体2を示す平面図であり、図3は図2における切断面線III−III線から見た集電舟体2の断面図である。電気鉄道車両などの電動機によって駆動される車両の屋根には、集電装置であるパンタグラフが設置される。パンタグラフは、上枠および下枠を有する上下に伸縮自在な枠組みを備え、上枠に舟体支持手段を介して支持される集電舟体2を備えている。集電舟体2は、枠組の伸縮動作によって上下に変位され、少なくとも車両が走行するときには、車両が走行する軌道上方の所定の高さ位置に支持された架線に、押付けられて接触される。車両は、このようにパンタグラフの集電舟体2を架線に接触させ、架線から電力を取込むことによって、電動機によって駆動されて走行する。このとき集電舟体2は、好適に電力を取込むために、所定の押付け力FPで架線に押付けられる。この押付け力FPは、たとえば5.5kgfに設定される。
【0027】
集電舟体2は、舟体本体4と、舟体本体4の上部に設けられ架線に接触する摺板6とを有する。舟体本体4は、たとえば耐食性アルミニウム合金から成り、車両の進行方向である集電舟体2の進行方向8に対して垂直に延びて細長く形成されている。摺板6は、たとえば銅系または鉄系の焼結合金板から成り、舟体本体4の長手方向に延びる長尺の板状に形成されて、部分的に取替え可能なように短冊のタイル張り状に構成されている。摺板6の端面には、架線が滑らかに摺板6上に乗移れるように傾斜がつけられている。このような摺板6は、舟体本体4の上部に固定されて設けられ、架線と摺動することによって車両に電力が取込まれる。摺板6が舟体本体4に対して弾性体によって支持され、架線に対して付勢されることもある。また集電舟体2の長手方向の両端部2aには、ホーン10がそれぞれ設けられている。各ホーン10は、舟体本体4から集電舟体2の長手方向、すなわち集電舟体2の進行方向8に対して垂直に延び、先端部10aが下方に向けて湾曲している。このような各ホーン10によって、集電舟体2の長手方向両端部2aより外側に位置する架線を,滑らかに集電舟体2へ導くことができる。
【0028】
図4は、集電舟体2における舟体本体4に、空気流が作用することによって舟体本体4に働く力を、舟体本体4の長手方向に対して垂直な面において示す図である。舟体本体4の長手方向に垂直な面内において、進行方向8に対して迎角αを成す方向12の空気流が速度Vで作用するとき、舟体本体4には、空気流が作用する方向12に対して垂直、かつ舟体本体4の長手方向に垂直な揚力FLと、空気流が作用する方向に対して平行、かつ舟体本体4の長手方向に垂直な抗力FDとが働く。言い換えるならば、舟体本体4には揚力FLと抗力FDとの合力ΣFが働く。この合力ΣFは、舟体本体4の進行方向8に対して平行、かつ舟体本体4の長手方向に垂直な抵抗力FXと、舟体本体4の進行方向8に対して垂直かつ舟体本体4の長手方向に垂直な押上げ力FYとに分解することができる。言い換えれば、舟体本体4には、空気流によって抵抗力FXおよび押上げ力FYとが働いている。空気流による押上げ力FYが舟体本体4に作用するとき、舟体本体4を有する集電舟体2に働く全押上げ力Pは、枠組などによって予め集電舟体2に加えられる所定の押付け力FPと、空気流による押上げ力FYとの和P=FP+FYとなる。
【0029】
迎角αは、任意の基準位置Oに関して、この基準位置Oから進行方向8に移動した位置、すなわち図4において左側の位置をMとし、基準位置Oから空気流の流れ方向12と逆方向に移動した位置、すなわち図4において左斜め下方側の位置をNとしたときの角MONの成す角度である。この迎角αは、各位置M,Oを含む直線よりも位置Nが下方にあるような、集電舟体2に対して下方から、すなわち摺板6と反対側から空気流が作用するときを、正の迎角とし、逆に各位置M,Oを含む直線よりも位置Nが上方にあるような、集電舟体2に対して上方から、すなわち摺板6側から空気流が作用するときを負の迎角とする。集電舟体2における押上げ力FYは、上方向すなわち集電舟体2を架線に押付ける方向の力を正の押上げ力とし、下方向すなわち集電舟体2を架線から離反させる方向の力であるときを負の押上げ力とする。また集電舟体2に設けられたホーン10は、集電舟体2に比較して充分に細く、円柱と見なすことができるので、ホーン10に作用する空気流による力は無視することができる。
【0030】
上述した集電舟体2は、図1〜図3から容易に理解されるように、車両に設けられたとき、車両の前後軸方向に対称となる形状を有している。したがって車両が前後方向一方および他方のどちらの方向に走行する場合においても、集電舟体2における空気流による押上げFYは上述したようにして説明することができる。
【0031】
集電舟体2の舟体本体4において、進行方向8に対して垂直な長手方向の長さをwとし、長手方向に対して垂直な長方形状の断面形状の進行方向8に垂直な縦寸法をh、進行方向8に平行な横寸法をdとし、このときの舟体本体4の進行方向8および長手方向に平行な表面の面積をA=d×wとする。このような舟体本体4に、進行方向8に対して、迎角αを有する密度ρの空気の空気流が速度Vで作用したときに、この空気流によって舟体本体4に働く押上げ力FYを風洞試験などによって既知量として予め求める。この押上げ力FYから舟体本体4の押上げ力係数CYを、次式(1)
【0032】
【数1】
【0033】
によって算出する。
ただし、押上げ力FYの単位は〔kgf〕とし、
空気の密度ρの単位は〔kgf・s2/m4〕とし、
空気流の速度Vの単位は〔m/s〕とし、
面積Aの単位は〔m2〕とする。
【0034】
この押上げ力係数CYは、押上げ力FYと、空気の密度ρおよび空気流の速度Vと、舟体本体4の進行方向8および長手方向に平行であり、空気流が作用する舟体本体4の表面の面積Aとで表される無次元数である。押上げ力FYの値は、空気の密度ρ、空気流の速度Vの2乗および面積Aの値の変化に比例して変化する。たとえば、空気の密度ρが2倍になったとき、押上げ力FYの値は2倍となり、空気流の速度Vが2倍になったとき押上げ力FYの値は4倍となり、面積Aが2倍になったとき押上げ力FYの値は2倍となる。したがって、集電舟体2の長手方向に対して垂直な長方形断面の縦寸法hと横寸法dとの比をn=d/hとするとき、この比nと、集電舟体2に作用する空気流が有する迎角αが一定であれば、密度ρ、速度Vおよび面積Aの値に関係なく押上げ力係数CYは常に一定の値となる。
【0035】
図5は、縦寸法hと横寸法dとの比n=d/hが2である舟体本体4において、空気流の迎角αと押上げ力係数CYとの関係を示すグラフであり、横軸は迎角αを示し縦軸は押上げ力係数CYを示す。寸法比n=2で一定である舟体本体4を用い風洞試験などによって、舟体本体4に作用する空気流の迎角αを変化させたときの空気流による押上げ力FYを計測し、この押上げ力FYから上記式(1)によって押上げ力係数CYを算出することによって、迎角αと押上げ力CYとの関係が求められる。押上げ力係数CYが負の値であるとき、空気流による押上げ力FYは負の値であり、すなわち舟体本体4には押下げようとする力が働く。図5に示すように、寸法比n=2である場合、舟体本体4に作用する空気流の迎角αが、ほぼ±6°の範囲にあるとき、押上げ力係数CYは迎角αの増加に対して減少する。
【0036】
図6は、縦寸法hと横寸法dとの比n=d/hが4である舟体本体4において、図5と同様に、空気流の迎角αに対する押上げ力係数CYの関係を示すグラフであり、横軸は迎角αを示し縦軸は押上げ力係数CYを示す。寸法比n=4で一定である舟体本体4において、空気流の迎角αを変化させたとき、計測される押上げ力FYの値から押上げ力係数CYを算出することによって迎角αと押上げ力CYとの関係が求められる。図6に示すように、寸法比n=4である場合、迎角αがほぼ±6°の範囲にあるとき、押上げ力係数CYは迎角αの増加に対して増加する。
【0037】
このように、舟体本体4に作用する空気流の迎角αと押上げ力係数CYとの関係は、舟体本体4の長手方向に垂直な長方形断面形状の縦寸法hと横寸法dとの比n=d/hについてそれぞれ求めることができる。
【0038】
図7は、空気流の迎角αが3°、−3°、6°または−6°であるときの縦寸法hと横寸法dとの比n=d/hに対する押上げ力係数CYの関係を示すグラフであり、横軸は縦寸法hと横寸法dとの比nを示し、縦軸は押上げ力係数CYを示す。実線20は、舟体本体4に作用する空気流の迎角αが3°であるときの寸法比nと押上げ力係数CYとの関係を示し、実線22は、舟体本体4に作用する空気流の迎角αが−3°であるときの寸法比nと押上げ係数CYとの関係を示す。破線24は、迎角αが6°であるときの寸法比nと押上げ力係数CYとの関係を示し、破線26は、迎角αが−6°であるときの寸法比nと押上げ力係数CYとの関係を示している。
【0039】
図7のグラフに示されるそれぞれの寸法比nと押上げ係数CYとの関係は、図5および図6において示されるように、寸法比nが一定であるときの舟体本体4に作用する空気流の迎角αに対する押上げ力係数CYの関係を基に求めることができる。図7のグラフは、縦寸法hと横寸法dとの比nが1、2、3、4または5であるときの迎角αに対する押上げ力係数CYの関係を基に作成されているが、寸法比nの値を細かく分けることによって、迎角αに対する押上げ力係数CYの関係を詳細に求めることができる。また図7のグラフにおいて、nとCYの関係は1≦n≦5範囲で示されている。
【0040】
風洞試験などにおいて計測される空気流による舟体本体4の押上げ力FYは、集電舟体2の表面粗さなどによって少しの誤差を含んでいるが、ある迎角αにおける縦寸法hと横寸法dとの比nに対する押上げ力係数CYの関係は、ほぼ図7に示すように表され、押上げ力係数CYの値は寸法比n=2.5付近で正負が入換わる特性を持っている。
【0041】
図7のグラフに示されるように、舟体本体4の長方形断面形状の縦寸法hと横寸法dとの比nが2.5付近であるとき、押上げ力係数CYの値は0に近い値となる。式(1)から理解されるように、押上げ力係数CYの絶対値が小さくなるにつれて、舟体本体4に作用する空気流による押上げ力FYの絶対値が小さくなる。したがって舟体本体4の縦寸法hと横寸法dとの比nを2.5付近に設定することによって、舟体本体4に作用する空気流が迎角を有する場合においても、舟体本体4に働く空気流による押上げ力FYの影響を小さくすることができる。
【0042】
パンタグラフの設置する場所の空気流に特定の迎角を持つような癖がある場合には、その癖を織込んで考えることもできるが、本実施の形態では理解を容易にするために、パンタグラフが設置される場所の空気流が迎角を持つなどの癖がないと仮定して説明する。
【0043】
また、双方向性のパンタグラフでは双方向ともで充分なる集電性能を出す必要がある。さらに空気流が迎角を持つ場合についても、正および負の迎角によって特性が大きく異なっては、使用上問題がある。これらをふまえて集電舟体2は上述したような構成を有する。
【0044】
図7から明らかなように、寸法比nが2.5付近、本実施の形態において具体的には、2.2以上でかつ2.7以下の範囲内の値に設定された舟体本体4を有する集電舟体2においては、迎角を有する空気流による押上げ力係数CYの絶対値が小さくなるので、押上げ力FYの影響を小さくすることができる。逆に舟体本体の寸法比nが2.2未満または2.7を超える場合、押上げ力係数CYの値が大きくなり、集電舟体2における空気流による押上げ力FYの影響が大きくなる。したがって、寸法比nが2.2以上でかつ2.7以下の範囲内である舟体本体4を有する集電舟体2を車両のパンタグラフに用いることによって、車両のパンタグラフ付近の空気流が複雑な流れとなり、集電舟体2に迎角を有する空気流が作用する場合においても、集電舟体2は適切な力で架線に接触し、パンタグラフは集電舟体2を介して所要の通りに電力を取込むことができる。
【0045】
再び図1〜図3を参照して、集電舟体2において舟体本体4の幅方向両側部における進行方向8に垂直な各面には、舟体本体4の長手方向に延び、舟体本体4から先細状に突出する縁体14がそれぞれ設けられている。各縁体14は略三角柱状であり、その軸線方向に平行な一側部で、舟体本体4の進行方向8に垂直な各面に固定される。縁体14において、舟体本体4から離反する側に形成される先端部28の外表面は鋭角で形成されている。このような縁体14は、長手方向に垂直な断面形状が台形状の基部15と、この基部15から進行方向8に平行な方向に突出する突部17とを有する。突部17は四角錐状の形状を有し、集電舟体2の長手方向に連続的に形成されている。したがって縁体14には、突端部28よりの部分に縁体の長手方向に沿って複数の凹所18が形成される。
【0046】
縁体14が舟体本体4に設けられることによって、集電舟体2全体の形状は略流線形状となる。したがって集電舟体2に空気流が作用したとき、空気流は縁体14の先端部28で分離され、上下にかきわけられる。空気流は一方の縁体14によって滑らかに案内され集電舟体2の表面に沿って流れ、他方の縁体14によって円滑に合流される。これによって集電舟体2まわりの空気流の乱れが小さくなり、この空気流の乱れに伴う空力騒音の発生を低減することができる。このような縁体14が設けられた集電舟体2を車両のパンタグラフに用いることによって、車両が走行する際に集電舟体2における空力騒音の発生が低減される。またこのように車両の走行時の空力騒音が抑制されることによって、車両が高速化を図る以前の最高速度での空力騒音の音圧レベルと、高速化を図った後での最高速度での空力騒音の音圧レベルとを同程度とすることができる。これによって、車両の高速化を図った後においても、騒音の環境基準を満足することができる。空力騒音の音圧レベルの範囲内で車両をさらに高速で走行させることができる。
【0047】
また空気流が集電舟体2に作用するとき、集電舟体2に沿って流れる空気にカルマン渦が生じる。集電舟体2の断面形状が長手方向に一様であるとカルマン渦の発生も一様となり、特定の周波数の成分が強調されてエオルス音という空力騒音が発生しやすくなる。したがって縁体14に複数の凹所18が形成されることによって、集電舟体2の長手方向に一様にカルマン渦が発生することが抑制され、空力騒音であるエオルス音が低減される。
【0048】
この実施の形態においては、縁体14を三角柱状としているが、集電舟体2全体の形状を略流線形状とするものであれば、縁体14を任意の形状とすることができる。また縁体14の基部15から突出する突部17の形状を四角錐状としているが、これに代えて、任意の形状で突部17を形成することもでき、たとえば先端部が縁体14の長手方向に延びる稜線に向かって先細となるくさび状とすることができる。さらに舟体本体4の進行方向8に垂直な各面にそれぞれ設けられた各縁体14における突部17を、一方の縁体14の突部17に対して他方の縁体14の突部17を長手方向にずらして形成することもできる。
【0049】
集電舟体2において、各縁体14は、舟体本体4の高さ方向両端部間の中間部に設けられている。このように縁体14が舟体本体4に設けられた状態では、縁体14の舟体本体4に取付けられる側の一側部の上端は、舟体本体4の上面より僅かに下方となり、縁体14の舟体本体4に取付けられる側の一側部の下端は、舟体本体4の下面より僅かに上方となる。
【0050】
このような集電舟体2においては、縁体14の上方および下方に舟体本体4の長方形断面における各角部19がそれぞれ露出し、すなわち縁体14の上下には舟体本体4の進行方向8に垂直な幅方向の両側面から成る平坦面21が形成される。これによって空力騒音を低減するために舟体本体4の縁体14が設けられた場合においても、集電舟体2は縁体14を設けない場合とほぼ同様の揚力特性を示す。これによって集電舟体2は、空気流による押上げ力FYの絶対値が小さくなる特性を維持することができる。したがって集電舟体2において、空気流による押上げ力FYの影響を小さくするとともに空力騒音を低減することができる。
【0051】
舟体本体4の上面に設けられた摺板6は、進行方向8と平行な幅方向寸法が舟体本体4の横寸法dより小さく設定されている。また摺板6の幅方向両側の表面は、幅方向に対して垂直に形成され、または舟体本体4から離反するにつれて幅方向内方に向かうように、幅方向に対して45°以上90°未満の角度をなして傾斜して形成される。摺板を舟体本体4の上面に設けた場合、集電舟体2において上面の空気流の流れ方向の長さが下面の長さより大きくなる。これによって空気流が作用したときに集電舟体2の上面における空気流の流速が大きくなり、集電舟体2に上向きの揚力が発生する。摺板6は上述したように形成されているので、集電舟体2に空気流が作用したとき、摺板6の角で再度剥離して、摺板6の表面において空気流が滑らかに流れないので、集電舟体2の上面において空気流の流速が大きくなることがない。これによって集電舟体2に上向きの揚力が発生することが阻止される。したがって、舟体本体4を所定の長方形断面形状とすることによって得られる集電舟体2に作用する押上げ力FYの絶対値を小さくする効果に影響を及ぼすことなく、摺板6を舟体本体4に設けることができる。
【0052】
図3において、集電舟体2の舟体本体4の進行方向8に垂直な各面にそれぞれ設けられた各縁体14の先端部28を含む仮想平面30の上下方向の位置が実線で示され、集電舟体2の上下幅の中央位置32が進行方向8に平行な幅Bにわたって一点鎖線で示されている。このような集電舟体2において、各縁体14の先端部28を含む仮想平面30は、前記中央位置32となる舟体本体4の下面と摺板6の上面との中央位置32となるように位置しており、舟体本体4の下面と仮想平面30および中央位置32との距離h1と、摺板6の上面と仮想平面30および中央位置32との距離h2とがh1=h2となる。したがって集電舟体2に迎角αが0であり、進行方向8に平行な空気流が作用する場合、集電舟体2の上側および下側における空気流の速度が同じになるので、集電舟体2に揚力が働かない。すなわち集電舟体2には空気流による押上げ力FYが働かないので、空気流による押上げ力FYは常に0となる。
【0053】
図8は、集電舟体2に空気流が作用したときの空気流の迎角αと、空気流の速度Vと、集電舟体2に働く全押上げ力Pとの関係を示すグラフである。図8において、x軸は空気流の迎角αを示し、y軸は空気流の速度Vを示し、z軸は集電舟体2に働く全押上げ力Pを示す。図8は、集電舟体2に働く全押上げ力Pを空気流の仰角αが±3゜の範囲で、かつ空気流の速度Vが0m/s≦V≦100m/sの範囲において示す。また集電舟体2が図8に示すような特性を示すとき、空気流の空気の密度ρは0.125kgf・s2/m4であり、集電舟体2の舟体本体4において進行方向8および長手方向に平行な表面に面積Aは0.08m2である。
【0054】
全押上げ力Pは、パンタグラフによって集電舟体2が予め架線に押付けられる力であり、標準押上げ力などと呼ばれる押付け力FPと、空気流による集電舟体2の押上げ力FYとの和であり、P=FP+FYで表される。また空気流の速度Vは、近似的に集電舟体2を有するパンタグラフを備えた車両の走行速度とすることができる。
【0055】
集電舟体2は、上述するように、迎角αを有する空気流が作用した場合において、空気流による押上げ力FYの絶対値が小さくなるような形状を有しているが、僅かに発生する押上げ力FYは仰角αの影響を受ける。この実施の形態における集電舟体2は、空気流によって僅かに発生する押上げ力FYが、迎角αの増加に対して増加する特性を有するように、舟体本体4の長方形断面形状の縦寸法hと横寸法dとの比nが、たとえばn=2.7に設定されている。したがって空気流の速度Vが0でないとき、図8に実線35で表される面によって示すように迎角αが増加するにつれて集電舟体2の全押上げ力Pは増加し、迎角αが減少するにつれて全押上げ力Pは減少する。
【0056】
集電舟体2に空気流が作用していないとき、すなわち空気流の速度Vが0であるとき空気流による押上げ力FYは0であり、集電舟体2に働く全押上げ力Pは押付け力FPとなる。押付け力FPは、通常5.5kgfに設定される。また集電舟体2が正常に電力を取込むことができる全押上げ力Pの許容範囲は、2kgf≦P≦15.5kgfとされる。したがって空気流による押上げ力FPの上限値FYmaxは10kgfとなり、下限値FYminは−3.5kgfとなる。
【0057】
また集電舟体2において、縁体14の先端部28を含む仮想平面30は、舟体本体4の下面と摺板6の上面との中央位置32になるように位置している。これによって、集電舟体2に迎角αが0である進行方向8に平行な空気流が作用するとき、集電舟体2には揚力が働かないので、空気流の速度Vが大きくなっても空気流による押上げ力FYの値は常に0となる。
【0058】
空気流の迎角αが正の値であるとき、空気流の速度Vの増加につれて押上げ力FYが大きくなり、集電舟体2の全押上げ力Pが増加する。このような集電舟体2の空気流に対する特性は、図8において実線35で表される面のうち、仰角αの値が正であるときの斜線で表される部分の面S1によって示される。たとえば面S1における点Q1で示すように、迎角αが3°である空気流が集電舟体2に作用したとき、空気流の速度VがV1=100m/sであれば、このときの空気流による押上げ力FY1は5.5kgfとなり、全押上げ力P1=FP+FY1は11kgfとなる。このとき、全押上げ力P1は許容範囲内であり、集電舟体2は正常に架線から電力を取込むことができる。
【0059】
空気流の迎角αが負の値であるとき、空気流の速度Vの増加につれて押上げ力FYが小さくなり、集電舟体2の全押上げ力Pは減少する。このような集電舟体2の空気流に対する特性は、図8において仰角αの値が負であるときの斜線で表される部分の面S2によって示される。たとえば面S2における点Q2で示すように、迎角αは−3°である空気流が集電舟体2に作用したとき、空気流の速度VがV1=100m/sであれば、空気流による押上げ力FY2は−5.5kgfとなり、全押上げ力P2=FP+FY2は0となる。このとき集電舟体2における全押上げP2は、許容範囲より小さくなり、集電舟体2は車両の振動、架線の位置のずれなどの影響によって、集電するための架線との接触力が不足し、実質上架線と非接触状態になる。
【0060】
このような特性に基づいて、集電舟体2は、架線に対する全押上げ力Pが許容範囲内となるような状況において使用される。たとえば集電舟体2に作用する空気流が±3゜の範囲で変動する場合、空気流の速度V、すなわち集電舟体2が設けられた車両の速度は80m/s以下に制限される。また集電舟体2における全押上げ力Pが許容範囲外となる場合においても、予め集電舟体2に加えられる押付け力FPを適切な値に設定することによって、集電舟体2を適切な力で架線と接触させることができる。
【0061】
またこの実施の形態においては、集電舟体2は空気流による押上げ力FYが迎角αの増加に対して増加する特性を有するように舟体本体4の縦寸法hと横寸法dとの比nがたとえばn=2.7に設定されているが、他の実施の形態として集電舟体2は押上げ力FYが迎角αの増加に対して減少する特性を有するように舟体本体の縦寸法hと横寸法dとの比nが設定されていてもよい。この場合、寸法比nは、たとえばn=2.2に設定され、空気流の迎角αが増加するにつれて集電舟体の全押上げ力Pが減少し、迎角αが減少するにつれて全押上げ力Pが増加する。このような集電舟体の空気流に対する特性は、図8において破線36で表される面S5によって示される。このような特性を考慮した上で集電舟体が使用される。
【0062】
図9は、本発明の実施のさらに他の形態である集電舟体52を示す断面図である。この実施の形態は上述した実施の形態に類似しており、対応する部分には同一の参照符を付し、異なる構成についてだけ説明し、同様の構成については説明を省略する。集電舟体52における舟体本体4の進行方向8に垂直な各面には、空力騒音を低減するための縁体54がそれぞれ設けられている。各縁体54は、長手方向に垂直な断面形状が台形状の基部15と、基部15から進行方向8に平行な方向に突出する四角錐状の突部17とを有する。したがって各縁体14には、縁体14の長手方向に沿って複数の凹所18が形成されている。図9において、各縁体54の先端部28を含む仮想平面56の上下方向の位置が実線で示され、集電舟体52の上下幅の中央位置58が進行方向8に平行な幅Bにわたって一点鎖線で示されている。集電舟体52においては、舟体本体4の下面と中央位置58との距離h3と、摺板6の上面と中央位置58との距離h4とがh3=h4となる。各縁体54の先端部28を含む仮想平面56は、前記中央位置58となる舟体本体4の下面と摺板6の上面との中央位置より下方に位置しており、仮想平面56と中央位置58との距離はΔGに設定されている。このような集電舟体52においては、空気流が作用したとき、集電舟体52の上面側の空気流の速度は、下面側の空気流の速度より大きくなり、上面側の圧力が下面側より小さくなる。したがって集電舟体52には上向きの揚力が生じるので、仰角αの値に関係なく、空気流の速度Vに応じた正の押上げ力Fvが働く。したがって集電舟体52における距離ΔGの値を任意に設定することによって、集電舟体2に作用する空気流の仰角αの値に関係なく、集電舟体2に働く空気流による押上げ力Fvを設定することができる。集電舟体52において、舟体本体4の縦寸法hと距離ΔGとの比m=ΔG/hは、たとえばm=1/3に設定されている。
【0063】
このような形状を有する集電舟体52を翼体とみなすとき、各縁体54の先端部28同士を結ぶ線を翼弦線とし、集電舟体52の上下幅の中央位置58を示す線を中心線とすることかできる。このとき翼弦線と中心線との距離であるキャンバはΔGとなるので、集電舟体52はキャンバがΔGである翼体とみなすことができる。このようなキャンバΔGを有する集電舟体52に進行方向8に対して平行な空気流が作用する場合、集電舟体52は迎角βを有する空気流が作用したときと同様の押上げ力FVが得られる。
【0064】
通常の翼体においては、翼弦線の長さをBとするとき、上記迎角βの値はβ=δ/B×100[°]によって求められる。しかしながら集電舟体52は、特異な特性を有しているので、先端部28同士を結ぶ線の長さを翼弦線の長さBとして上述の式によって迎角βの値を求めることができない。したがって集電舟体52においては、ΔGの値を変化させて風洞試験、または車両に設置した状態で走行試験を行うことによって適切なΔGの値を設定する。これによって集電舟体52は、進行方向8に平行な空気流が作用した場合において、迎角βを有する空気流が作用したときと同様の押上げ力をFVを得ることができる。ΔGの値を変化させて得た集電舟体52の特徴は、双方向共に同じ様相を示すことにある。すなわち、集電舟体52が進行方向8および進行方向8と逆方向に進行する場合のどちらの場合においても、空気流に対して同じ特性を示す。
【0065】
図10は、図9の集電舟体52に空気流が作用したときの空気流の迎角αと、空気流の速度Vと、集電舟体52に働く全押上げ力Pとの関係を示すグラフである。図10において、x軸は空気流の迎角αを示し、y軸は空気流の速度Vを示し、Z軸は集電舟体52に働く全押上げ力Pを示す。図10は、集電舟体2の全押上げ力Pを空気流の仰角αが±3゜の範囲で、かつ空気流の速度Vが0m/s≦V≦100m/sの範囲において示す。また集電舟体52が図10に示すような特性を示すとき、空気流の密度ρは0.125kgf・s2/m4であり、集電舟体52の舟体本体4において進行方向8および長手方向に平行な表面の面積Aは0.08m2である。
【0066】
集電舟体52は、空気流によって僅かに発生する押上げ力FYが仰角αに影響し、迎角αの増加に対して押上げ力FYが増加する特性を有するように、舟体本体4の長方形断面形状の縦寸法hと横寸法dとの比nが、たとえばn=2.7に設定されている。したがって空気流の速度Vが0でないとき、図10に実線60で表される面によって示すように、迎角αが増加するにつれて集電舟体52の全押上げ力Pは増加し、迎角αが減少するにつれて全押上げ力Pは減少する。
【0067】
また上述した実施形態と同様に、集電舟体52の押付け力FPは5.5kgfであり、全押上げ力Pの許容範囲は2kgf≦P≦15.5kgfとされる。したがって空気流による押上げ力FYの上限値FYmaxは10kgfとなり、下限値FYminは−3.5kgfとなる。空気流の速度Vは、近似的に集電舟体52を有する車両の速度とすることができる。空気流の速度Vが0であるとき、集電舟体52における空気流による押上げ力FYは0であり、全押上げ力Pは押付け力FPとなる。
【0068】
集電舟体52において、空気流が作用するとき上向きの揚力が働くので、正の押上げ力Fvが働く。これによって集電舟体52に迎角が0である進行方向8に平行な空気流が作用するとき、空気流の速度Vが大きくなるとともに空気流による押上げ力Fvは大きくなり、たとえば点Q3で示すように空気流の速度VがV2=100m/sであるときの押上げ力FVは3kgfとなる。また集電舟体52はキャンバΔGを有するので、押上げ力FVは、集電舟体52に迎角βを有する速度V2の空気流が作用したときと同様の押上げ力となる。したがって、点Q4で示すように、空気流の速度がV2であるとき、集電舟体52において押上げ力FYが0となる場合の迎角α1はほぼ−β°となる。この押上げ力FVの値はキャンバΔGの値によって任意に設定することができる。
【0069】
空気流の迎角αが正の値であるとき、空気流の速度Vの増加につれて押上げ力FYが大きくなり、集電舟体52の全押上げ力Pが増加する。このような集電舟体52の特性は、実線60で表される面のうち、仰角αが正の値であるときの斜線で表される部分の面S3によって示される。たとえば面S3における点Q5で示すように、迎角αが3°である空気流が集電舟体52に作用したとき、空気流の速度がV2=100m/sであれば、空気流による押上げ力FY3は5.5kgfとなり、全押上げ力P3=FP+FY3+Fvは14kgfとなる。このとき全押上げ力P3は許容範囲内であり、集電舟体52は正常に架線から電力を取込むことができる。
【0070】
空気流の迎角αが負の値であるとき、空気流の速度Vの増加につれて押上げ力FYが小さくなり、集電舟体52の全押上げ力Pは減少する。このような集電舟体52の特性は、仰角αの値が負であるときの斜線で表される部分の面S4によって示される。たとえば面S4における点Q6で示すように、迎角αが−3°である空気流が集電舟体52に作用したとき、空気流の速度VがV2=100m/sであれば、空気流による押上げ力FY4は−5.5kgfとなり、全押上げ力P4=FP+FY4+Fvは3kgfとなる。このとき、全押上げ力P4は許容範囲内であり、集電舟体52は正常に架線から電力を取込むことができる。
【0071】
このように集電舟体52は、先端部28を含む仮想平面56が、舟体本体4の下面と摺板6の上面との中央位置58より下方にΔGの距離に位置しているので、集電舟体52に空気流が作用するとき、集電舟体52には上向きの揚力が働き正の押上げ力をFvを得ることができる。これによって図10に示すように、空気流の仰角αが±3°の範囲であり、かつ空気流の速度Vが0m/s≦V≦100m/sの範囲であるとき、集電舟体2に働く全押上げ力Pを許容範囲内にすることができる。したがって、集電舟体52におけるキャンバΔGの値を適切に設定することにいよって、集電舟体2に働く全押上げ力Pを任意の範囲内にすることができる。
【0072】
この実施の形態においては、先端部28を含む仮想平面56は、舟体本体4の下面と摺板6の上面との中央位置58より下方になるように位置しているが、仮想平面56を中央位置58より上方になるように位置させることもでき、このときキャンバΔGの値は負となる。この場合、空気流が作用したとき、集電舟体52の下面側の空気流の速度は、上面側の空気流の速度より大きくなり、下面側の圧力が上面側より小さくなる。したがって集電舟体52には架線から離反する方向に下向きの揚力が働き、仰角αの値に関係なく、空気流の速度Vに応じた負の押上げ力Fvが得られる。したがってこのような特性を利用して、全押上げ力Pを任意の範囲内に設定することができる。
【0073】
またこの実施の形態においては、集電舟体52は空気流による押上げ力FYが迎角αの増加に対して増加する特性を有するように舟体本体4の寸法比nが設定されているが、実施のさらに他の形態として、集電舟体は押上げ力FYが迎角αの増加に対して減少する特性を有するように舟体本体4の寸法比nが設定されていてもよい。この場合、迎角αが増加するにつれて集電舟体52の全押上げ力Pが減少し、迎角αが減少するにつれて全押上げ力Pが増加する。このような集電舟体の空気流に対する特性は、図8において破線36で表された面S5に類似して示される。したがってこのような特性を考慮して、集電舟体のキャンバΔGの値を設定することによって、集電舟体に働く空気流による押上げ力FYを調整し、全押上げ力Pを任意の範囲内に設定することができる。
【0074】
図11は本発明の実施のさらに他の形態である集電舟体102の一部を示す断面図であり、進行方向8に平行な幅方向における一側部のみを示す。この実施の形態は上述した実施の形態に類似しており、対応する部分には同一の参照符を付し、異なる構成についてだけ説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0075】
集電舟体102において、舟体本体4の進行方向8に対して垂直な各面には各縁体14がそれぞれ設けられている。進行方向8に臨む側、すなわち図11において左側に設けられた一方の各縁体14の先端部104の外表面は、進行方向8に平行であり、進行方向8に臨む側となる舟体本体4の幅方向一方に凸となる丸みを有しており、すなわち先端部104はR付けされている。このような先端部104のRは、たとえば5〜6mm程度に選ばれる。図11においては一方の縁体14のみが示されているが、進行方向8と逆方向に臨む側、すなわち図11において右側に設けられた他方の縁体14においても同様に、先端部104の外表面は、進行方向8と逆方向に臨む側となる前記幅方向他方に凸となる丸みを有している。このような縁体14を有する集電舟体102は、揚力傾斜が低くでき、低騒音化を図ることができる。揚力傾斜が低くできるということは、すなわち集電舟体102に作用する空気流による押上げ力Fyを小さくすることができる。
【0076】
図12は、本発明に従う集電舟体において、集電舟体に作用する空気流の速度Vを60m/sとして風洞試験を行ったときに得られた迎角αと押上げ力FYとの関係の一例を示すグラフであり、横軸は迎角αを示し、縦軸は押上げ力FYを示す。図12に示すように、迎角αを有する空気流が作用したときの集電舟体の押上げ力FYは、迎角αの値が−1°において最も低い−1.25kgfの値をとり、迎角αが−1°から増加し、または減少するにつれて押上げ力FYは増加する。また図12に示す仰角が±3°以内の範囲においては、押上げ力FYは上限値FYmax=10kgfと下限値FYmin=−3.5kgfとの間となるので、全押上げ力Pは2kgf≦P≦15.5kgfである許容範囲内となる。したがってこのような押上げ力特性を有する集電舟体は、適当な力で押上げられて架線と接触することによって、正常に電力を取込むことができる。
【0077】
図12に示すような特性を有する集電舟体は、たとえば集電舟体に作用する空気流の空気の密度ρが0.125kgf・s2/m4、舟体本体の進行方向および長手方向に平行な面積Aが0.08m2であるとき、舟体本体の長方形断面形状の縦寸法hと横寸法dとの比nがn=2.5、キャンバΔGと縦寸法hとの比mがm=1/3に設定されることによって得ることができる。
【0078】
上述した種々の実施の形態において、集電舟体は進行方向8に対して前後に対称な形状を有している。したがってこれらの集電舟体を備えるパンタグラフは、双方向性パンタグラフとして機能することができる。電気鉄道車両である車両に集電装置としてこのようなパンタグラフを設けることによって、車両が上り線または下り線のどちらを走行する場合においても、集電舟体は適切な押上げ力で架線と接触し、パンタグラフは正常に電力を取込むことができる。
【0079】
また上述した種々の実施形態においては、摺板が舟体本体の上面に固定されて設けられているが、これに代えて、摺板がばねなどによって三次元系の変位が許容された状態で支持される構成としてもよい。この場合、上述の支持状態を配慮した上で集電舟体の形状が設定される。
【0080】
【発明の効果】
請求項1の本発明によれば、舟体本体の長手方向に垂直な断面形状は長方形であり、前記断面形状の縦寸法hと横寸法dとの比n=d/hは2.2以上でかつ2.7以下の範囲内の値に設定されている。このような寸法比nが2.2以上でかつ2.7以下の範囲内である舟体本体を備える集電舟体は、迎角を有する空気流が集電舟体に作用する場合において、集電舟体に作用する空気流による押上げ力の絶対値が小さくなり、押上げ力の影響を小さくすることができる。逆に寸法比nが2.2未満または2.7を超える場合、集電舟体における空気流による押上げ力FYの影響が大きくなる。したがって、寸法比nが2.2以上でかつ2.7以下の範囲内である集電舟体を車両のパンタグラフに用いることによって、車両のパンタグラフ付近の空気流が複雑な流れとなる場合においても、集電舟体は適切な力で架線に接触し、パンタグラフは集電舟体を介して所要の通りに電力を取込むことができる。
さらに舟体本体は、進行方向であり、かつ幅方向の両側面が、各角部において露出している。つまり舟体本体の各角部がそれぞれ露出し、各角部に幅方向の両側面から成る平坦面が形成される。これによって舟体本体の前記断面形状が、前記範囲内の寸法比nを有する長方形状であることによる効果、具体的には、集電舟体における揚力特性の変化による押上げ力の変化を阻止するという効果を、確実に達成することができる。
【0081】
また請求項2の本発明によれば、集電舟体の舟体本体の幅方向両側部には、進行方向に先細状に突出する縁体がそれぞれ設けられている。このような縁体が設けられた集電舟体に空気流が作用するとき、空気流が一方の縁体によって上下にかきわけられて、滑らかに案内されるとともに、他方の縁体によって円滑に合流され、集電舟体まわりの空気流の乱れが少なくなる。これによって空気流の乱れに伴う空力騒音の発生を低減することができる。このような縁体が設けられた集電舟体を車両のパンタグラフに用いることによって、車両が走行する際に集電舟体における空力騒音の発生が低減される。
【0082】
また各縁体は舟体本体の高さ方向両端部間の中間部にそれぞれ設けられているので、長手方向に垂直な断面形状が長方形である舟体本体の各角部分がそれぞれ露出し、すなわち縁体の上下には、舟体本体の進行方向に垂直な幅方向の両側面から成る平坦面が形成される。これによって舟体本体に縁体を設けた場合においても、舟体本体の前記断面形状が所定の長方形状であることによる集電舟体における揚力特性が変化し、集電舟体に働く押上げ力が変化することが阻止される。したがって集電舟体において、集電舟体に働く空気流による押上げ力を少なくするとともに、空力騒音を低減することができる。
【0083】
また請求項3の本発明によれば、縁体は略三角柱状であるので、このような縁体が集電舟体の幅方向両側部にそれぞれ設けられることによって、集電舟体は略流線形となる。このような集電舟体に空気流が作用するとき、集電舟体周りの空気流の乱れが小さくなり、この空気流の乱れに伴う空力騒音の発生を低減することができる。
【0084】
また請求項4の本発明によれば、縁体の先端部の外表面は、丸みを有しているので、集電舟体の揚力傾斜が低くでき、低騒音化を図ることができる。
【0085】
また請求項5の本発明によれば、集電舟体に設けられた縁体には複数の凹所が形成されている。空気流が集電舟体に作用するとき、集電舟体に沿って流れる空気にカルマン渦が生じる。集電舟体の断面形状が長手方向に一様であると、カルマン渦の発生も一様となり、特定の周波数の成分が強調されてエオルス音という空力騒音が発生しやすい。したがって縁体に複数の凹所が形成されることによって、集電舟体の長手方向に一様なカルマン渦が発生することが抑制され、空力騒音を低減することができる。
【0086】
また請求項6の本発明によれば、各縁体の先端部を含む仮想平面は、舟体本体の下面と摺板の上面との中央位置よりも下方に位置する。このような集電舟体に空気流が作用したとき、集電舟体の上面側の空気流の速度は、下面側の空気流の速度より大きくなり、上面側の圧力が下面側より小さくなるので、空気流がどのような仰角を有していても集電舟体には上向きの揚力が生じる。言い換えると、空気流が作用したとき、集電舟体は、空気流の仰角に関係なく、空気流の押上げ力に応じた正の押上げ力を得ることができる。したがって、集電舟体における前記仮想平面の位置を適切に設定することによって、架線に対する集電舟体の全押上げ力を任意の範囲内に設定することができる。
【0087】
また請求項7の本発明によれば、各縁体の先端部を含む仮想平面は、舟体本体の下面と摺板の上面との中央位置よりも上方に位置する。このような集電舟体に空気流が作用するとき、集電舟体の下面側の空気流の速度は上面側の空気流の速度より大きくなり、下面側の圧力が上面側より小さくなるので、空気流がどのような仰角を有していても集電舟体には下向きの揚力が生じる。言い換えると、空気流が作用するとき、集電舟体は、空気流の仰角に関係なく、空気流の速度に応じた負の押上げ力を得ることができる。したがって、集電舟体における前記仮想平面の位置を適切に設定することによって、架線に対する集電舟体の全押上げ力を任意の範囲内に設定することができる。
【0088】
さらに請求項8の本発明によれば、摺板の進行方向と平行な幅方向寸法は、舟体本体の横寸法dより小さく設定され、幅方向両側の表面は、幅方向に対して垂直に形成され、または舟体本体から離反するにつれて幅方向内方に向かうように、幅方向に対して45°以上90°未満の角度をなして傾斜して形成される。このように摺板は形成されているので、摺板を集電舟体に設けることによって集電舟体の揚力特性が変化することが少ない。したがって舟体本体を所定の長方形断面形状とすることによって、集電舟体に働く押上げ力の絶対値を小さくする効果に影響を及ぼすことが少なく、摺板を舟体本体に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う実施の一形態である集電舟体2を示す斜視図である。
【図2】集電舟体2を示す平面図である。
【図3】図2における切断面線III−III線から見た集電舟体2の断面図である。
【図4】集電舟体2に空気流が作用することによって集電舟体2に働く力を、集電舟体2の長手方向に対して垂直な断面において示す図である。
【図5】縦寸法hと横寸法dとの比n=d/hが2である舟体本体4において、空気流の迎角αと押上げ力係数CYとの関係を示すグラフである。
【図6】縦寸法hと横寸法dとの比n=d/hが4である舟体本体4において、空気流の迎角αと押上げ力係数CYとの関係を示すグラフである。
【図7】空気流の迎角αが3°、−3°、6°または−6°であるときの縦寸法hと横寸法dとの比n=d/hに対する押上げ力係数CYの関係を示すグラフである。
【図8】集電舟体2に空気流が作用したときの空気流の迎角αと、空気流の速度Vと、集電舟体2に働く全押上げ力Pとの関係を示すグラフである。
【図9】本発明に従う実施のさらに他の形態である集電舟体52を示す断面図である。
【図10】集電舟体52に空気流が作用したときの空気流の迎角αと、空気流の速度Vと、集電舟体52に働く全押上げ力Pとの関係を示すグラフである。
【図11】本発明に従う実施のさらに他の形態である集電舟体102の一部を示す断面図である。
【図12】本発明に従う集電舟体において迎角αと押上げ力FYとの関係の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
2,52,102 集電舟体
4 舟体本体
6 摺板
8 進行方向
10 ホーン
12 空気流の方向
14 縁体
18 凹所
FY 押上げ力
d 横寸法
h 縦寸法
w 長さ寸法
Claims (8)
- 進行方向に対して垂直で水平方向へ延びる舟体本体であって、
長手方向に垂直な断面の形状が、進行方向に垂直な高さ方向の縦寸法をhとしかつ進行方向に平行な幅方向の横寸法をdとする長方形状であり、
幅方向の両側面が、長手方向に垂直な断面における長方形の各角部で露出し、
縦寸法hと横寸法dとの比n=d/hが2.2以上でかつ2.7以下の範囲内の値に設定される舟体本体を備えることを特徴とする集電舟体。 - 舟体本体の幅方向両側部には、舟体本体の長手方向に延びる縁体がそれぞれ設けられ、各縁体は、舟体本体の高さ方向両端部間の中間部から先細状に突出することを特徴とする請求項1記載の集電舟体。
- 縁体は、略三角柱状であり、その軸線に平行な一側部で、舟体本体の幅方向両側部に固定されることを特徴とする請求項2記載の集電舟体。
- 縁体の先端部の外表面は、前記幅方向に凸となる丸みを有していることを特徴とする請求項2または3記載の集電舟体。
- 縁体は、先端部よりの部分に、縁体の長手方向に複数の凹所が形成されることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の集電舟体。
- 舟体本体の上部に設けられ、架線に接触される摺板を有し、
各縁体の先端部を含む仮想平面は、舟体本体の下面と摺板の上面との中央位置よりも下方に位置することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の集電舟体。 - 舟体本体の上部に設けられ、架線に接触される摺板を有し、
各縁体の先端部を含む仮想平面は、舟体本体の下面と摺板の上面との中央位置よりも上方に位置することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の集電舟体。 - 舟体本体の上部に設けられ、架線に接触される摺板を有し、
摺板の進行方向と平行な幅方向寸法は、舟体本体の横寸法dより小さく設定され、幅方向両側の表面は、幅方向に対して垂直に形成され、または舟体本体から離反するにつれて幅方向内方に向かうように、幅方向に対して45°以上90°未満の角度をなして傾斜して形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の集電舟体。
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