JP2002053037A - 鉄道車両動揺抑制方法及び鉄道車両 - Google Patents
鉄道車両動揺抑制方法及び鉄道車両Info
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Abstract
する渦の影響を低減することができる鉄道車両動揺抑制
方法及び鉄道車両を提供する。 【解決手段】 車体1は、鋼製あるいはアルミ合金製の
骨組み構造体である。車体1の側面下端部には、フィン
10が設けられている。フィン10は、車体1の前後方
向に沿って延びるように取り付けられている。フィン1
0の先端(下端縁)と軌道間の距離rは、85mm程度
(一例)である。フィン10により、車体1底面と軌道
面の間の空気層と、車体1側面とトンネル側面の間の空
気層とを仕切ることができる。
Description
ル内における動揺を抑制する方法に関する。特には、鉄
道車両の動揺の要因となる車体周辺で発生する渦の影響
を低減することができる方法、及び、そのような鉄道車
両に関する。
新幹線等の高速列車の速度向上に伴い、車両の左右動揺
が問題になりつつある。車両の動揺が発生すると、乗り
心地が低下する、あるいは、騒音が発生する等といった
諸問題が引き起こされるからである。このような動揺現
象は、以下に述べるような特性がある。 (1)トンネル区間走行時の方が、明かり区間走行時よ
りも動揺が大きい。 (2)連結車両の先頭から後尾に向かって動揺が大きく
なる。 このため、鉄道車両の動揺現象の解明は、トンネル区間
走行時における後尾車両に重点が置かれている。
(a)軌道狂いの影響、(b)蛇行動特性の影響、
(c)空気力の影響等が考えられている。これらの要因
のうち、(a)軌道狂いの影響については、例えば鉄道
総研報告、Vol.3、No.4、pp13−20、198
9.4において、トンネル区間では軌道狂いと車両動揺
との相関関係が小さいことが解明されている。さらに、
(b)蛇行動特性の影響については、例えば鉄道総研報
告、Vol.9、No.1、pp19−24、1995.1
において、蛇行動が発生しやすい高速時には、後尾車両
が他の車両よりも大きく揺れる傾向があることが報告さ
れている。ところが、蛇行動では明かり区間とトンネル
区間の揺れ方の違いの原因を明確に説明できない。この
ような事情から、最近では(c)空気力の影響が注目さ
れている。この空気力の影響のメカニズムを解明するた
め、従来から多くの列車において、車両に働く空気力の
測定が行われている(例えばProceedings of World
Congresson Railway Research E、pp531−53
8、1997参照)。
ついて、図面を参照しつつ説明する。図12は、明かり
区間とトンネル区間の車両走行状態を示す模式図であ
る。図13(A)は、現車試験で測定されたヨーイング
振動角加速度を示すグラフであり、縦軸がヨーイング振
動角加速度(単位rad/sec2)を表し、横軸が時
間(単位sec)を表す。図13(B)は、現車試験の
測定値から算定された空気力の影響を表すグラフであ
り、縦軸がヨーイングモーメント(単位Nm)を表し、
横軸が時間(単位sec)を表す。図14(A)は空気
力の発生メカニズムを説明するための模式図であり、図
14(B)は列車側面とトンネル壁間の速度分布を表す
図であり、図14(C)は列車床面と軌道面間の速度分
布を表す図である。
に300km/hで走行中の16両編成の列車Tが、ト
ンネル区間I2に進入する状態が示されている。このと
きの明かり区間I1及びトンネル区間I2における14
両目の車両への空気圧の作用を測定する。空気圧は、1
4両目の車両の側面に取り付けた圧力センサSで測定す
る。
るヨーイング振動角加速度は、明かり区間I1では±
0.05rad/sec2の範囲内に収まっているのに
対し、トンネル区間I2では値に大きな変動が生じてい
る。特に、トンネル進入後の3秒〜8秒の5秒間におい
ては、±0.1rad/sec2を超える大きな値の変
動が生じている。
の測定値から算定されたヨーイングモーメントは、明か
り区間I1では0Nmの近くを微動しているのに対し、
トンネル区間I2では値に大きな変動が生じている。こ
のトンネル区間I2においては、ヨーイングモーメント
の値の大きい箇所では±1×105Nmを超えるところ
もあり、車両に大きな動揺が生じる原因となっている。
つまり、ヨーイング振動角加速度及びヨーイングモーメ
ントは、トンネル区間I2内において増大し、車両は明
かり区間I1よりもトンネル区間I2において大きく動
揺する。
すように、トンネル壁側(図14(A)の右側)の列車
T側面部では、速度差が生じ易い。さらに詳しくは、列
車側面とトンネル壁間(図14(A)の符号p)におい
ては、図14(B)に示すように、列車Tの進行方向U
と逆方向(x方向)の空気流が生じており、この空気流
の速度は、列車側面側(図14(B)上側)では小さ
く、トンネル壁面(図14(B)下側)に向けて徐々に
大きくなっている。なお、空気流の速度は、列車から見
た相対的な値である。
の符号q)においては、図14(C)に示すように、同
様にx方向の速度が生じており、この速度は、列車床面
側(図14(C)上側)では小さく、軌道面(図14
(C)下側)に向けて徐々に大きくなっている。すなわ
ち、このような区間p、qにおける空気は、列車に引き
ずられるようにして流れる。
差が生じると、列車Tの車体底面と側面との境界部で速
度差のある気流が混じり合って、渦Vが生じる。そし
て、このような渦Vがトンネル壁面側で列車側面に巻き
上がり、上方及び後方へ移動すると圧力が変動し、これ
に伴い変動空気力が発生する。
であって、その目的は、鉄道車両の動揺の要因となる車
体周辺で発生する渦の影響を低減することができる鉄道
車両動揺抑制方法及び鉄道車両を提供することにある。
め、本発明の鉄道車両動揺抑制方法は、鉄道車両の車体
底面と軌道面の間の空気層と、該車体側面とトンネル側
面の間の空気層との境界に仕切板(フィン)を介装し、
両空気層を分離することを特徴とする。フィンの先端
(下端縁)においては、空気流の速度分布が変化する領
域が狭い領域に極限される。このため、渦の発生を低減
できる。さらに、フィンの先端(下端縁)から渦が発生
しても、渦の発生周波数がフィン厚みの関数であるた
め、高周波数(一例数kHz)の渦となる。したがっ
て、ヨーイングモーメントが小さくなるとともに、車両
との共振が起こりにくいので、車両の動揺が抑制され
る。
に、該車体底面と軌道面の間の空気層と、該車体側面と
トンネル側面の間の空気層とを仕切る仕切板(フィン)
を有することを特徴とする。フィンは、例えば鋼やアル
ミニウム合金製の薄板(厚さ例:鋼1.6mm、アルミ
ニウム合金2.5mm)から形成するのが好ましい。フ
ィンの先端(下端縁)と軌道間の距離は、車両限界を考
慮して85mm程度(一例)とするのが好ましい。
る。なお、以下の説明では、通常の鉄道車両の技術にお
けるのと同様に、軌道の長手方向(車両の進行方向)を
前後方向、軌道面における軌道長手方向と直角の方向を
左右方向、軌道面に垂直な方向を上下方向と呼ぶ。図1
は、本発明に係る鉄道車両を新幹線車両の第1例に適用
した場合の正面断面図である。図2は、本発明に係る鉄
道車両を新幹線車両の第2例に適用した場合の正面断面
図である。図3は、本発明に係る鉄道車両を新幹線車両
の第3例に適用した場合の正面断面図である。
あるいはアルミ合金製の骨組み構造体である。車体1下
部には、車輪、車軸及び軸箱等を有する台車や駆動モー
タ等(図示されず)が装備されている。車体1の屋根
は、上屋根(カバー)3を有する2重屋根構造になって
いる。カバー3上には、パンタグラフ(図示されず)が
備えられる。車体1内部には、この例では1列3人掛け
+2人掛けの腰掛5が備えられている。なお、図1〜図
3の各新幹線車両は、例えば車体の形状や駆動系統等が
異なるが、詳細については省略する。
仕切り板(フィン)が設けられている。図1の車両のフ
ィン10と図2の車両のフィン11は、厚さ1.6m
m、幅(上下方向の長さ)165mmの鋼製(一例)の
帯状薄板である。フィン10、11は、車体1の前後方
向に沿って延びるように取り付けられている。フィン1
0、11の先端(下端縁)と軌道間の距離(図の符号
r)は、85mm程度(一例)である。
m、幅(上下方向の長さ)680mmの鋼製(一例)の
帯状薄板である。フィン12は、車体1の前後方向に沿
って延びており、車体1側面下端部から内側に40°程
度以下(図3の場合はθ=約20°)傾斜させて取り付
けられている。フィン12の先端(下端縁)と軌道間の
距離(図の符号r)は、85mm程度(一例)である。
面と軌道面の間の空気層と、車体1側面とトンネル側面
の間の空気層とを仕切ることができる。以下、図1及び
図2のような垂直のフィンを備えた車両の模型と、従来
のフィンの無い車両の模型とを用いて行った風洞試験に
ついて説明する。
新幹線車両模型の側面図であり、図4(B)は図4
(A)のX部拡大図であり、図4(C)は同新幹線車両
模型の正面断面図である。図5(A)〜(I)は、図4
の車両の模型を用いて行った風洞試験のストロボ撮影
(経時連続撮影)結果を示す図である。これらの図にお
いては、黒塗りの部分が煙を表している。なお、このス
トロボ撮影の撮影位置は、図4(B)に示す位置と同一
である。
ンサの値を示すグラフであり、縦軸が圧力係数Cpを表
し、横軸が無次元時間を表す。なお、圧力係数Cpと無
次元時間は次式で算出されている。 ・圧力係数Cp=(圧力)/{(1/2)×(空気の密
度)×(風速の2乗)} ・無次元時間=(時間)×(風速)/(車両の左右方向
の長さ) 図7は、図4の車両の模型に関する空気力の影響を表す
グラフであり、縦軸がヨーイングモーメント係数を表
し、横軸が無次元時間を表す。なお、ヨーイングモーメ
ント係数は次式で算出されている。 ・ヨーイングモーメント係数=(ヨーイングモーメン
ト)/{0.5×(空気の密度)×(風速の2乗)×
(車両の側面積)×(車両の前後方向の長さ)}
両模型の側面図であり、図8(B)は図8(A)のX部
拡大図であり、図8(C)は同新幹線車両模型の正面断
面図である。図9(A)〜(I)は、図8の車両の模型
を用いて行った風洞試験のストロボ撮影(経時連続撮
影)結果を示す図である。これらの図においては、黒塗
りの部分が煙を表している。なお、このストロボ撮影の
撮影位置は、図8(B)に示す位置と同一である。
センサの値を示すグラフであり、縦軸が圧力係数Cpを
表し、横軸が無次元時間を表す。なお、圧力係数Cpと
無次元時間は上述した図6の場合と同一の式で算出され
ている。図11は、図8の車両の模型に関する空気力の
影響を表すグラフであり、縦軸がヨーイングモーメント
係数を表し、横軸が無次元時間を表す。なお、ヨーイン
グモーメント係数は上述した図7の場合と同一の式で算
出されている。
(A)、図8(A)に示す車両の模型をそれぞれ配置し
て行った。図4(A)、図8(A)の矢印α方向から送
風し、車体模型側面に取り付けた圧力センサS(図4
(B)、図8(B)参照)で風圧を測定した。また、渦
の可視化のために煙を車体の下から流し、煙の状態を観
測することで渦の発生状態を確認した。圧力センサS
は、連結車両の後尾側に相当するように、後ろ寄り(図
4(A)、図8(A)における右寄り)の上下方向ほぼ
中央部に配置した。
る。 ・送風条件:風速10m/s ・ストロボ間隔:1/1000秒 ・模型縮尺:1/40 風速10m/sと設定した理由は、速い風速では煙によ
る可視化が難しくなるためである。上記の送風条件は、
車両が図4(A)、図8(A)の矢印β方向(矢印α方
向と逆方向)に時速0.9km/hで走行している状態
に相当する。
て、レイノルズ数(={(代表長さ)×(風速)}/
(空気の動粘性係数))を同一にすることが要求され
る。しかし、風洞試験でレイノルズ数を現車条件と同一
にすることは困難である。そのため、通常は、レイノル
ズ数が105以上ならば、流れ場の様子は大きく変わら
ないと仮定して風洞試験を実施する。本風洞試験の場合
(風速10m/sとした場合)、レイノルズ数は5×1
04となるので105には及ばないが、本発明者が風速3
0m/sの送風条件で予め測定した圧力結果と同様の結
果が得られた。このため、時速0.9km/hであって
も、現車の現象を再現していると考えることができる。
本発明のフィンFを有する車両模型については、車体の
下から流した煙が各図の下側にのみ見えており、圧力セ
ンサSを取り付けた位置(車両模型の上下方向中央部)
まで煙が到達していない。これは、フィンにより車両模
型底面と軌道面の間の空気層と、車両模型側面と風洞側
面の間の空気層とが仕切られており、渦が発生していな
いことを表している。さらに、図6に示すように、圧力
センサSの測定値は、±0.05の範囲内に収まってお
り、大きな空気圧の変動が生じていないことがわかる。
示すように、従来のフィンの無い車両模型については、
車体の下から流した煙が、特に図9(A)、(B)、
(C)、(D)、(H)、(I)の各図において広範囲
に流れているのが見えている。これは、渦が発生して巻
き上がっていることを表している。さらに、図10に示
すように、圧力センサSの測定値は、図9(A)、
(G)及び(H)の各時点に対応するA、G及びH時点
では約−0.1〜−0.15の値を示し、図9(C)、
(D)及び(E)の各時点に対応するC、D及びE時点
では約+0.1の値を示しており、大きな空気圧の変動
が生じているのがわかる。なお、圧力センサで負圧が検
知されて少したってから煙が昇るという時間遅れの関係
がある。
模型のヨーイングモーメント係数を比較すると、図7の
フィンFを有する車両模型に関しては、ヨーイングモー
メント係数が±0.01の値の範囲に収まっているのに
対し、図11のフィンの無い車両模型に関しては、ヨー
イングモーメント係数が±0.015の範囲で、大きい
ところではこれを超える値を示している。この結果によ
り、フィンFを取り付けた場合は、空気圧の変動が小さ
いために渦の発生が低減される、あるいは、渦が発生し
ても高周波数(一例数kHz)の渦となるため、車両の
動揺が小さくなるということが結論できる。
鉄道車両によれば、トンネル区間内でも空気圧の変動が
小さく、渦の発生を低減できるので、列車の動揺(ヨー
イングモーメント)を抑えることができる。
のフィンを有する鉄道模型について行ったが、実際の適
用に当たっては、車両限界の制限はあるが、図3に示す
ような傾斜フィンであってもほとんど同様の効果を得る
ことができる。
たって延びる帯状薄板であるとして説明したが、長手方
向(車両の前後方向)に複数に分割したフィンであって
も同様の効果を期待できる。このような分割フィンの場
合は、特に台車の横に設置すれば、転動音の遮蔽等にも
効果がある。
によれば、速度差により生じる渦の発生を低減でき、車
両に加わる空気力の変動を低減できる。したがって、車
両の動揺を抑制できるので、特に以下の効果を得ること
ができる。 (1)乗り心地が向上する。 (2)列車走行時の騒音が低減できる。 (3)列車のスピードアップを図ることができる。 (4)列車に加わる空気抵抗を低減できる。
適用した場合の正面断面図である。
適用した場合の正面断面図である。
適用した場合の正面断面図である。
線車両模型の側面図であり、図4(B)は図4(A)の
X部拡大図であり、図4(C)は同新幹線車両模型の正
面断面図である。
いて行った風洞試験のストロボ撮影(経時連続撮影)結
果を示す図である。
すグラフである。
グラフである。
型の側面図であり、図8(B)は図8(A)のX部拡大
図であり、図8(C)は同新幹線車両模型の正面断面図
である。
いて行った風洞試験のストロボ撮影(経時連続撮影)結
果を示す図である。
示すグラフである。
すグラフである。
示す模式図である。
ング振動角加速度を示すグラフであり、図13(B)は
現車試験の測定値から算定された空気力の影響を表すグ
ラフである。
明するための模式図であり、図14(B)は列車側面と
トンネル壁間の速度分布を表す図であり、図14(C)
は列車床面と軌道面間の速度分布を表す図である。
トンネル区間 S 圧力センサ T 列
車 V 渦
Claims (2)
- 【請求項1】 鉄道車両の車体底面と軌道面の間の空気
層と、該車体側面とトンネル側面の間の空気層との境界
に仕切板(フィン)を介装し、両空気層を分離すること
を特徴とする鉄道車両動揺抑制方法。 - 【請求項2】 車体の側面下端部に、該車体底面と軌道
面の間の空気層と、該車体側面とトンネル側面の間の空
気層とを仕切る仕切板(フィン)を有することを特徴と
する鉄道車両。
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