JP3775671B2 - 鉄筋コンクリート造外断熱建物に於けるバルコニー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄筋コンクリート造外断熱建物のバルコニー、庇、外廊下など、建物の外壁より突出した床部に関するもの(以下、本明細書中ではバルコニーと総称する)であり、より詳しくは、鉄筋コンクリート外断熱建築物の外壁面に、熱橋を最小限に抑制して付設したバルコニーに関するものであり、建築の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄筋コンクリート造外断熱建物は、コンクリート躯体の外側を断熱層で被覆するため、太陽日射の躯体への熱応力が微少となってコンクリート躯体のクラック発生を抑制すること、コンクリート躯体が空気に接触しないためにコンクリートの中性化を抑制して建物の耐久性が向上すること、更には、建物内の温度環境の変化が小さくて熱損失が少なく、居住者の快適環境を維持すると共に、結露が少なくてカビ、ダニの発生が抑制出来て健康面にも優れているため、省エネルギーの高性能建物として評価されている。
【0003】
しかし、建物より突出するバルコニー、外廊下などのコンクリート床スラブがコンクリート躯体への熱橋(ヒートブリッジ)となり易く、外部の熱環境の建物内部への伝達(熱橋)を抑制する必要があり、従来より、バルコニーコンクリート床スラブからコンクリート躯体内部への熱橋抑制手段としては、(イ)バルコニー床スラブの付設部近傍の建物内部に特別の断熱被覆を付加する手段、(ロ)バルコニー床スラブ全周面を断熱被覆する手段、(ハ)セメント板のバルコニー床支持梁とコンクリート躯体梁との継梁に熱伝導率の低いステンレス鋼を用いる方法等が提案され、実施されている。
【0004】
即ち、従来例(イ)は、図11(A)に示す如く、断熱層を外面に備えた外断熱耐力壁を貫通した形態のコンクリートのバルコニー床スラブを内部床スラブ及びコンクリート壁から一体的に突出形成し、バルコニー床スラブの設置部近傍のコンクリート躯体内部に、即ち、耐力壁内面には厚さ30mmで、内部(居住部)床スラブの表裏面に、厚さ15mmで各長さ450mm以上の現場発泡の硬質ウレタンフォームを吹付けて断熱補強し、バルコニー床スラブからの熱橋を抑制し、該断熱補強材で発生する段差30mm(壁内面では断熱補強材厚30mm、床面では断熱補強材厚15mm+保護モルタル厚15mm、計30mm)を平坦にするため、壁面にあっては、木組み、や軽量鉄骨間仕切材などの下地材を施工して石膏ボード等の仕上材で壁面段差を隠蔽し、床面にあっては、断熱材上面に保護用モルタル層を付加し、モルタル層と面一に、内部床スラブ上にコンクリートの増打ちしている。
【0005】
また、従来例(ロ)は、図11(B)に示す如く、コンクリート躯体と一体にコンクリート打設形成したバルコニー床スラブの下面及び前端面に断熱層と外装材の一体化した複合パネルを張設し、バルコニー床スラブの上面には、断熱層を配置し、断熱層上に防水層を張設し、防水層上に保護モルタルか保護コンクリートを配置している。
【0006】
また、従来例(ハ)は、図11(C)に示す如く、主として鉄骨鉄筋コンクリート造に適用しているものであって、バルコニーは鉄筋コンクリート造ではなく、コンクリート梁の内部に配置したH形鋼の鋼製鉄骨梁に適宜長さのスレンレス製H形鋼の継梁をボルトで固着し、継梁からH形鋼の鋼製鉄骨梁を接続してバルコニーの構造体を形成し、該構造体上にコンクリート板の床材を載置し、バルコニー側の鉄骨梁と居住部(内部)の鉄骨梁間を熱伝導率の低いステンレス鋼で接続して、バルコニー側から内部への熱橋を抑制している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来例(イ)の手段にあっては、コンクリート躯体内部(居住部)の壁面及び床スラブ表面一部に断熱材を付加するため、コンクリートの打放し仕上げには適応出来ない。
そして、付加断熱材によって生ずる段差(30mm)の平坦化処理には工数を要し、作業が煩雑である。
【0008】
また、従来例(ロ)の手段にあっては、バルコニーの床スラブ表面を全て断熱層で被覆するため、バルコニーからコンクリート躯体内部への熱橋の防止には有効であるが、バルコニー下方の壁とバルコニー下面の断熱層の連結、バルコニー下面の断熱層とバルコニー先端部の断熱層の連結、バルコニー先端部とバルコニー床スラブ上面の断熱層の連結等、断熱層の接続部に空隙を生じないように断熱層を連結する作業が煩雑、且つ困難な作業であり、建築コスト増を招く。
更に、バルコニーに重量物、或いは椅子等の尖った物の載置使用を可能とするためには、防水層上に、更に保護モルタルや保護コンクリートの付設が必要となり、床スラブ厚さ及び使用鉄筋量の増加により、建築コスト増を招く。
【0009】
また、従来例(ハ)の手段にあっては、鉄筋コンクリート造の建物と鉄骨造のバルコニーとの異種の構造体の組合せとなるため作業性が良くない。
また、鉄骨造のバルコニーは、鉄骨梁にロックウール吹付け等の耐火被覆を施す必要があり、鉄骨梁を隠蔽するための幕板や軸天井を配置するため、建築コスト増となる。
また、継梁の存在により、型枠や断熱層の切欠が生じて作業性が良くない。
しかも、熱橋防止面でも、熱伝導率が、鉄は71.8kcal/mh℃、ステンレス鋼は12.9kcal/mh℃、コンクリートは1.4kcal/mh℃であるため、バルコニー鉄骨梁→ステンレス継梁→居住部鉄骨梁の熱伝達での熱橋(ヒートブリッジ)防止効果は小さい。
【0010】
従来例(イ)、(ロ)の如く、本発明は、上述の如き、各従来例の問題点を改善又は解決するものであり、鉄筋コンクリート造建物に付設作業性の良い鉄筋コンクリート造バルコニーを、より合理的に構築出来る手段を提供するものであって、コンクリート躯体外面の外断熱用の断熱層で鉄筋コンクリートバルコニーを完全に遮断し、外断熱断熱層を貫通する支持棒群をバルコニー床スラブのコンクリート中から居住部床スラブコンクリート中に差し渡すことにより、作業性が容易で、建築費コストを低減し、且つバルコニー側からコンクリート躯体への熱伝導をバルコニーコンクリート中からコンクリート躯体内への差し渡された適数の支持棒のみとして熱橋作用を抑制した、新規且つ画期的なバルコニーを提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段、及び作用】
本発明のバルコニーは、例えば図1に示す如く、セメント板1aと断熱層1bから成る複合パネル1の断熱層1bで壁コンクリートWCの外面を熱的に被覆したコンクリート躯体CRの外壁W,AWに、鉄筋コンクリート造のバルコニー床スラブS1を突出付設して支持棒2群のみによって支持した構造であって、バルコニー床スラブS1は、形成時のコンクリート打設によって基端Bb,Bsを、複合パネル1のむきだしとなった断熱層1bと当接一体化して、断熱層1bによって建物のコンクリート躯体CRと熱的に遮断し、支持棒2群は、耐力壁W1部で、バルコニー床スラブS1の内部から断熱層1bの貫通孔H1を通って建物のコンクリート躯体CRの居住部床スラブS2内部に延出し、形成時のコンクリート打設によってバルコニー床スラブS1側、及びコンクリート躯体CR側に固定支持した、鉄筋コンクリート造外断熱建物に於けるバルコニーである。
【0012】
尚、「バルコニー」は、バルコニー、ベランダ等、建物の外周に突出した床を備えたものを意味する。
また、支持棒2の材質は、コスト面からは鋼棒が有利であるが、PC鋼棒や高張力プラスチック棒等、コスト面と熱橋防止効果とを勘案して選択するものであり、また、支持棒のサイズ、本数は使用支持棒とバルコニーの形状に基づいた強度計算により決定する。
【0013】
従って、本発明バルコニーにあっては、バルコニーBの床スラブS1が、基端Bb,Bsで居住部Rの床スラブS2及び耐力壁W1とは、複合パネル1のむきだしとなった断熱層1bで分離されており、且つ、床スラブS1の基端Bb,Bsが断熱層1bとコンクリート打設によって当接一体化して、埋設形態の各支持棒2群への外気熱の直接伝達が阻止されているため、バルコニーB側から居住部R側への熱橋作用は、バルコニーコンクリート→支持棒→居住部コンクリートのみとなり、例え、支持棒2に鋼棒を用いても、使用鋼棒の合計断面積は、従来のバルコニーのコンクリートと居住部コンクリートとの一体化タイプ(図11(A)、(B))でのバルコニーB側と居住部R側とを連結している全鉄筋の合計断面積と近似するため、本発明バルコニーBは、コンクリートの連続を遮断した分(全伝導熱量の1/2強)だけ抑制出来て、熱橋作用は従来のバルコニー(図11(A)、(B))の1/2以下に軽減出来る。
そして、大径鋼棒の全周面に断熱性プラスチック被覆するか、高強度プラスチック棒を採用するか、支持棒2の材料選択によりバルコニーから居住部への熱橋作用抑制効果はより大となる。
【0014】
また、本発明バルコニーは、バルコニーBも鉄筋コンクリート造であって外壁W1の外側に突出付設した構造ではあるが、バルコニーB側とコンクリート躯体側とは別々に独立した配筋となるため、コンクリート躯体CRの外壁W1及び床スラブS2と同時並行、又は別々に型枠組み作業及びコンクリート打設が可能であって、作業計画の自由度があること、従来例(ロ)の如きバルコニー表裏面への断熱層付設作業が不要となること、従来例(イ)の如き居住部内への断熱材付加、及び付加断熱材により生ずる段差の平坦化処理が不要であることより、従来のバルコニー形成手段より形成作業性が良くて建築コストが低減出来る。
【0015】
そして、本発明のバルコニーBは、建物の耐力壁W1がセメント板1aと断熱層1bとの複合パネル1を備え、バルコニー床スラブS1の基端Bb,Bs(図3)が断熱層1bに当接している。
この場合、外壁W1の複合パネル1は、バルコニー床スラブ当接面では外装材としてのセメント板1aを除去した形態となるため、コンクリート躯体外面(外壁W1の壁コンクリートWC外面)とバルコニー床スラブ基端面との間隔が断熱層1bの厚みのみと狭くなり、従って、支持棒2に対する撓み抑制上有利であると共に、例え、バルコニー床スラブBに構造上無視出来る程度の微少撓みが生じてもセメント板(外装材)1aを損傷する恐れはない。
【0016】
また、支持棒2が、断熱層1bの貫通孔H1部では耐火被覆材3によって被覆保護されているのが好ましい。
この場合、耐火被覆材3としては、耐火性、断熱性に富み、鋏で切断出来る、例えばカオウール(イソライト工業(株)商品名)やフイブロック(積水化学工業(株)商品名)等の使用が好都合である。
そして、支持棒2は、バルコニーの撓みに対抗する強度を常時負担しているが、貫通孔H1部で耐火被覆材3によって保護されているため、火災時の断熱層1bの燃焼に対しても、支持棒2の加熱劣下による支持力の低下は防止出来、バルコニーの耐火性が保証出来る。
【0017】
また、支持棒2外面が、エポキシ樹脂等の断熱性の合成樹脂で被覆されているのが好ましい。
この場合、支持棒2は、径35mmの異形棒鋼にエポキシ樹脂紛体の静電塗布で得ることが出来る。
そして、支持棒2には合成樹脂被覆によって防食(防錆)性、断熱性が付与出来るので、安価な鋼棒を採用しても、エポキシ樹脂の熱伝導率は0.16kcal/mh℃と小であるため、コンクリート→支持棒の熱伝達が抑制出来て、バルコニーBからコンクリート躯体CRへの熱橋作用の抑制に有効となり、且つ、コンクリートの中性化に伴う支持棒2の劣下も抑制出来、バルコニーの耐久性が向上する。
【0018】
また、断熱層1bの貫通孔H1のバルコニーB側を、図5(A)に示す如く、支持棒2挿通孔H2を有する円板29で閉止して耐火被覆材3を充填するのが好ましい。
この場合、円板29を予め断熱層1bに孔H1を閉止する形態で止着しておき、支持棒2の挿通後に耐火被覆材3を孔H1部に充填するか、或いは、支持棒2を円板29に相通して断熱層1bに挿通し、被覆材3の充填後に円板29を断熱層表面に止着することにより、支持棒2への耐火被覆材3の付与作業が容易となる。
しかも、円板29が耐火被覆材3の突出を抑制することにより、バルコニー基端Bb,Bsでの支持棒2全周面とコンクリートとの一体化固着が達成出来、支持棒2は設計値どおりの力学的機能(抗撓み力)を発揮する。
【0019】
また、バルコニー床スラブS1の支持位置Bb,Bsには溝形鋼片15のフランジ15aを断熱層1bに当接配置し、溝形鋼片15の孔H15に各支持棒2を挿通するのが好ましい。
この場合、溝形鋼片15のフランジ15aは、耐火被覆材3のバルコニー側への膨出を阻止して被覆材3の貫通孔H1内への充填を容易にし、上下のウエブ15bは、支持棒2の上下のコンクリートを保護するため、特に支持棒2上方のコンクリートの破壊を防止するため、コンクリートの被り層が薄く出来、バルコニー床スラブS1の厚さの減少及び重量の減少が可能となる。
尚、溝形鋼片15には、図9(B)に示す如く、異形棒鋼(径:13mm)のアンカー片28を溶接固定してバルコニー床スラブS1のコンクリートと一体化すれば、溝形鋼片15のコンクリートとの一体化が向上し、バルコニーの支持位置、即ち支持棒2の配置位置での補強効果が増す。
【0020】
また、支持棒2が、バルコニー床スラブS1内で支持棒2に直交する補強筋14を備えているのが好ましい。
この場合、35mm径、異形棒鋼の支持棒2を300mmで2本配置したものにあっては、補強筋14として径13mmの異形棒鋼を支持棒2に200mm間隔で直交方向に、上下に、且つ支持棒2両側に突出形態とすれば、支持棒2への負担応力を床スラブS1内に補強筋14を介して好適に分散出来る。
従って、支持棒2が直交補強筋14を備えることによって支持棒2周囲のコンクリートの負担が軽減出来、バルコニーの耐久性が向上する。
【0021】
また、支持棒2が、断熱層1bから居住部床スラブS2側とバルコニー床スラブS1側とに略等長に延びているのが好ましい。
支持棒2は、バルコニー床スラブS1内の上端筋(抗引張筋)及び下端筋(抗圧縮筋)よりも遥かに太く高価な鋼棒であるため、スラブコンクリート内での定着長さ(鋼棒径×15)を構造計算上の最短寸法とするのがコスト上有利であり、バルコニー側と居住部側との支持棒2の長さを等長とすれば、支持棒2は必要最短寸法と出来、必要、且つ充分な性能を奏するバルコニーの建築コスト合理化となる。
【0022】
また、支持棒2が、居住部R側の端部に定着板43を備えているのが好ましい。
この場合、定着板43は、図10(A)の如く、支持棒2の端部に定着用の座金41をナットで止着一体化するか、或いは定着用の板材を支持棒2の長さと直交方向で支持棒端に強固に溶着一体化すれば良い。
従って、定着板43が居住部床スラブS2内でコンクリートと一体化して支持棒2のアンカー機能を奏するため、支持棒2によるバルコニーBの保持が強固となり、支持棒2のコンクリート躯体CR(居住部床スラブS2及び壁コンクリートWC)側での埋設長さの短縮化が可能となる。
【0023】
また、支持棒2が、バルコニー床スラブS1中では、上端配筋13部の上部支持棒2uと、下端配筋12部の下部支持棒2dとの上下2層配置であるのが特に好ましい。
この場合は、図10(A)の如く、支持棒2のコンクリート躯体CR側端部に定着板43を付設しておけば、支持棒端部のコンクリート壁WC内配置も可能となる。
従って、バルコニーBの基端Bb,Bs上部に作用する引張応力に上部支持棒2uが、基端Bb,Bs下部に作用する圧縮応力に下部支持棒2dが対抗するため、支持棒2u,2dの径寸法、及び本数の適切な使用により、構造的に安定、且つ強固なバルコニーが合理的に形成出来る。
【0024】
また、上下2層形態で配置する支持棒2は、上層の支持棒2uがPC鋼の如き抗張力鋼棒であり、下層の支持棒2dが抗圧縮鋼棒であるのが好ましい。
この場合、鋼材は抗圧縮力が大であるため、抗圧縮棒としては、コンクリート付着性の良い通常の異形棒鋼を採用すれば良く、図10(A)の如く、コンクリート躯体CR側の端部に定着板43を付設しておけば有利である。
従って、構造計算に基づいたバルコニーBの合理的設計により、使用資材のコスト合理化が達成出来、特に片持ちスラブ形式のバルコニーBに適用して顕著な効果を発揮する。
【0025】
また、本発明バルコニーBは、図3に示す如き、バルコニーBの基端中央Cb及び両側基端Bsは耐力壁W1部であり、バルコニーBの先端中央Ctに支持部W2が存在するものが特に好ましい。
尚、支持部W2は、図3では、建物の柱列帯を形成する補助壁(耐力壁)であるが、H型鋼柱や角柱等の支柱形態でも良い。
この場合、支持棒2は、両側基端Bsの耐力壁W1と、基端中央Cbの耐力壁W1とに配置出来る。
【0026】
そして、バルコニー基端Bbに対する曲げモーメントは片持ちスラブ形式に比べて極端に小さくなる(1/4)。
従って、共同住宅等、バルコニーの中間で両側の家屋を仕切る壁の存在する形式の、最も需要の多い建物(図3の間取り住宅の建物)のバルコニーBの建築が極めて有利に実施出来、従来のバルコニーより遥かに熱橋阻止効果が大で、充分な強度及び耐久性を備えたバルコニーBが使用資材面、作業面から遥かに低コストで提供出来る。
【0027】
【発明の実施の形態】
〔例1(図1〜図8)〕
本発明を図3(A)に示す中階段型の共同住宅の間取りを備えた鉄筋コンクリート外断熱建物に適用する。
1戸の住宅は、建物の長辺方向が、L1(6000mm)+L2(3000mm)の9mで、短辺方向が、L3+L4が10.5mで94.5m2のスペースであり、その内、X1通からX2通の長さ(L1)が6000mm、Y1通からY2通の長さ(L3)1800mmがバルコニーBである。
また、バルコニーBに関しては、長辺方向のL1+L1及び短辺方向のL3の2戸分を一体形成し、バルコニーBの両側基端Bs及び基端中央Cbには耐力壁W1が存在し、基端Bbの中間部には窓、出入口用開口部AW及び耐力壁W1が存在し、先端Btの中央Ctには補助壁としての耐力壁W2を配置する。
【0028】
〔バルコニーBの形状〕
図1、図2に示す如く、バルコニーBの基端Bbの厚さT3は250mmで先端厚T4は200mmで、パラペットPaの高さT5は150mmであり、バルコニー床スラブS1は中央から先端へと厚さを減少し、コンクリートの重量も軽減する。
また、パラペットPaには、慣用の笠木21、底板24b及び手摺柱24aを介した手摺24を配置する。
また、床スラブS1上及び基端立上り部には慣用の防水層20を配置する。
【0029】
〔複合パネル(図6)〕
複合パネル1は、図6に示す如く、外装材としての、厚さT1が25mmで通気用の条溝を備えた押出成形セメント板1aと、厚さT2が75mmの発泡プラスチック系断熱層(JISA9511の硬質ウレタンフォーム)との接着一体化積層品であり、標準サイズが幅(S)490mm、高さ(h1)2880mmであり、並列接続して壁コンクリートの外枠として用いるため、壁型枠組用のセパレータ挿入孔を中央に、壁コンクリート(耐力壁)に固着する皿ボルト挿入用孔を両端部に備えたものである。
【0030】
そして、図6のパネル1は、図3(A)のX1通、X3通及びY2通に配置するパネル、即ち、バルコニーBの床スラブS1と当接するパネルであり、該パネル1は、図2に示す如く、上部ではバルコニーの床スラブS1に当接するため、パネル上端よりd1(265mm)を、下部ではバルコニー床スラブS1上面の防水層20処理のため、パネル下端よりd2(200mm)を、断熱層1bのむき出しとする。
【0031】
〔外壁(図3)〕
外壁の耐力壁W1の壁量(長さ)及び配置形態は建物の設計により決まるものであるが、耐力壁W1は、壁厚Twが180mm厚(最上階は150mm)の鉄筋コンクリート造で、鉄筋は10mm径の異形棒鋼の縦横組みのダブルで配筋する。
該耐力壁W1は、支持棒2挿通部の長さL6,L7が600mm以上であれば、バルコニーBの床スラブS1を支持棒2と共に支持可能であるため、バルコニー基端中央部Cbに対応する耐力壁W1の長さL6を900mm、バルコニー両端基部に対応する耐力壁W1の長さL7を600mmとする。
また、バルコニー先端中央の補助耐力壁W2は180mm厚、600mm長とする。
【0032】
〔バルコニー躯体の形成〕
イ.〔耐力壁W1の形成〕
図8は、固化した下階のバルコニー床スラブS1、及び居住部床スラブS2上に耐力壁型枠を立設した状態の断面図である。
まず、固化床スラブS1,S2で挟着形態の下階断熱層1b´と位置合わせしてバルコニー側に桟木(幅50mm、厚さ25mm)4aをバルコニー床スラブS1の表面Sfにコンクリート釘打ちし、慣用のセパレータ5a、Pコン5b、KPコン5c、フォームタイ6の型枠金物を取付けた複合パネル1を、断熱層1bを桟木4aに当接して立設し、チェーンで仮固定する。
【0033】
また、複合パネル1の下部のセメント板1aの欠如部には、桟木4bを断熱層1bに当接配置し、パネル中間部にはパイプ(横端太)8aを当接し、パネル上部には、壁型枠とバルコニーBの型枠とを固定する桟木4cの下部に縦桟木4dにパイプ(横端太)8aを当接し、慣用のリブ座金9をフォームタイ6に嵌挿してナット10によりパイプ(横端太)8aを固定し、複合パネルの外型枠を形成する。
【0034】
次に慣用の壁鉄筋の配筋組立てを行い、内側の壁型枠を組立てる。
内側の壁型枠は、桟木4a´を耐力壁W1の位置に符号して床スラブ表面Sf´にコンクリート釘で固定し、予め型枠合板7bの上下に桟木4e,4c´を配置した型枠パネルを桟木4a´に載置して4eと4a´とを釘固定する。
立設した型枠パネルの型枠合板7bより突出したPコン5bのネジにフォームタイ6を締着固定し、パイプ(縦端太)8bを型枠に当接立設し、外側(バルコニー側)型枠組立て同様に、パイプ(横端太)8a、リブ座金9を用い、フォームタイ6にナット10を締着し、パイプ8a,8bを固定し内型枠を形成する。
【0035】
ロ.〔床スラブ型枠の形成〕
床スラブ型枠は、パイプサポート11を約1.2m間隔で床スラブS1,S2表面に立設し、パイプサポート11の上部にパイプ(大引)8cを載置し、次いで、パイプ(大引)8cに間隔30cmでパイプ(根太)8dを載置配列し、パイプ(根太)8dに型枠合板7a(バルコニー側)、7a´(居住部側)を載置し、桟木4c,4c´及びパイプ(大引)8cに配置した桟木4f(図4)に釘打ち固定して床スラブ型枠を形成する。
次いで、床スラブ型枠上に、居住部R、バルコニーBの順で床スラブ筋を配筋する。
【0036】
ハ.〔バルコニー床スラブ下端筋の配筋〕
バルコニーBの床スラブS1の配筋組立ては、順次、短辺方向の下端筋12a、長辺方向の下端筋12b、長辺方向の上端筋13b、補強筋13c、短辺方向の上端筋13aの順で下部から組み上げる。
即ち、下端筋12は、Y2側(基端側)に床スラブ基端Bbと支持棒2との補強のための長さ200mmの屈曲アンカー部12a´を、Y1側にパラペットPaの縦筋兼用の長さ150mmの屈曲アンカー部12a"(図7)を備えた10mm径の異形棒鋼の短辺方向下端筋12aを間隔200mmでアンカー部12a´,12a"を上向きに配筋し、次に両端に長さ200mmの屈曲アンカー部(図示せず)を備えた13mm径の異形棒鋼の長辺方向下端筋12bを間隔200mmでアンカー部を上向きに配筋し、下端筋12a,12bを針金結束する。
【0037】
ニ.〔支持棒2の配置(図3、図4、図5)〕
支持棒2は、図4(B)に示す如く、径35mm、長さL10が1300mmで、表面に防食、断熱のためのエポキシ樹脂を被覆した異形棒鋼である。
図3(B)に示す如く、力学的に固定端となるX2通から両側にL12(200mm)で1本の支持棒2aを、回転端となるX1通(X3通)にはY1通よりL14(200mm)から間隔L15(300mm)で4本の支持棒2bを、Y2通でX1通からL13(400mm)に、補強支持棒2c1本を、X1通からX2通までに計6本を配置する。
即ち、1つのバルコニー床スラブS1に就いては、中央部Cbに2本、両側基端Bsに各長手方向計8本、基端Bbでの短辺方向計2本の合計12本の支持棒2を適用する。
【0038】
図5(A)は支持棒配置状態の側面図であり、図5(B)は図5(A)の矢印B視図、図5(C)は同矢印C視図である。
支持棒2の取付けは、図5(A)に示す如く、床スラブS1厚の中央で定められた位置に、支持棒挿通用の径90mmの貫通孔H1を断熱層1bに穿設し、貫通孔H1に符号して、中央に40mm径の挿通孔H2を有する直径120mmで2mm厚のプラスチック円板29をバルコニーB側から断熱層1bに貼着し、支持棒2を円板29に貫通してバルコニーB側と居住部R側とに等長(L11)突出し、配筋用の慣用のスペーサー30で支持棒2の適所を支承して姿勢を保持する。
【0039】
次いで、居住部R側より支持棒2と貫通孔H1との空間に、耐火被覆材3としての耐火、耐水、断熱、吸音、遮音機能を具備するブランケット状の繊維系不燃材(商品名カオウール)を充填して、支持棒2の火災時の断熱層1bの燃焼による劣下を阻止する。
そして、居住部R側では断熱層1bと耐火被覆材3とに粘着テープを貼る。
【0040】
ホ.〔バルコニー床スラブ上端筋の配筋〕
次に、バルコニーBの床スラブS1上端筋13として、両端に長さ200mmの屈曲アンカー部(図示せず)を備えた13mm径の異形棒鋼の長辺方向上端筋13bを間隔200mmでアンカー部を下向きに配置し、各上端筋13b間には13mm径で3500mm長の異形棒鋼の補強筋13cをX2通から長手方向両側に等長延出の形態で配置して、X2通を中心とするL1/4の特に大きな負荷応力に対抗させる。
【0041】
次に、Y2通側(バルコニー基端側)に長さ200mmの屈曲アンカー部13a´(図5(A))を備えた10mm径の異形棒鋼の短辺方向上端筋13aを200mm間隔に配筋し、長辺方向上端筋13bの下方に適宜高さのスペーサー(図示せず)を配置し、上端筋13の高さを保持して上端筋13a,13b,13cを結束維持する。
また、短辺方向下端筋12aと型枠合板7aとの間にはスペーサーブロック(図示せず)を挿入して鉄筋の位置を保持する。
【0042】
ト.〔床スラブS1の形成〕
次に、図7、図8に示す如く、複合パネル1の断熱層1bの上端辺に、幅16w(200mm)の型枠合板16を、断熱層1bから、居住部R側には15mmを、バルコニーB側には110mm突出させて載置し、型枠合板16を適宜間隔(標準:900mm)に配置した支持金具17によって床スラブS1下面の型枠合板7aと固定する。
【0043】
そして、居住部R側床スラブS2型枠、壁型枠、及びバルコニー床スラブS1型枠内にコンクリート打設し、居住部R側床スラブS2にあっては、上端の型枠合板16を表面Sf´の規定定規とし、バルコニーB側床スラブS1にあっては、型枠合板16の下面を床スラブ表面Sfの定規としてコンクリートの鏝仕上げし、バルコニー床スラブS1の表面Sfを居住部R床スラブS2の表面Sf´より段差d3(図5(A)、標準:11mm)保って形成する。
即ち、型枠合板16の使用により、複合パネル1の上端の断熱層1b端面へのコンクリート付着を阻止し、上方複合パネル1の立設が居住部床スラブS2のコンクリート不陸に影響されないようにする。
また、パラペットPaも、バルコニー床スラブS1の型枠形成と同時に、図7に示す如く、型枠18a、型枠18b及び桟木19aで型枠組みし、バルコニー床スラブS1へのコンクリート打設により形成する。
【0044】
〔バルコニーBの仕上げ〕
図1、図2に示す如く、複合パネル1の下部の高さd2(200mm)のセメント板1a欠如部の断熱層1bに、15mm厚のラスモルタル23を塗布し、モルタル23の乾燥後に、モルタル23と、コンクリート打設時に金鏝仕上げした床スラブコンクリート表面Sfにアスファルトプライマーを塗布し、アスファルトルーフィングを載置して歩行用アスファルト防水層20を形成する。
勿論、パラペットPaの立上り部及び上端辺も同様に防水層を形成する。
【0045】
パラペットPa上端辺には、慣用の防水層の押え、及び仕上見切材の笠木21を載置する。
また、複合パネル1の立上り防水層20の上端にも、笠木と同様の役目を成す水切金具22を配置する。
次いで、パラペットPaの上端辺には、後付けアンカー(図示せず)でパラペットPaに固定した底板24bを介して支柱(手摺柱)24aを立設し、手摺(アルミ製)24を設置する。
また、バルコニー床スラブS1の下面の複合パネル1との空間にはシーリング25aを、水切金具22と複合パネル1のセメント板1a下端との空間にはシーリング25bを充填する。
【0046】
〔実施例効果〕
得られるバルコニーBにあっては、使用した計12本の支持棒2a,2b,2cの断熱層1b貫通部での合計断面積が、同一バルコニーを従来例イ(図11(A))、ロ(図11(B))で形成する場合のバルコニー側から耐力壁側へ連通する配向鉄筋(連通床スラブ筋)の合計断面積の略半分(片持スラブでは35〜45%となる)と出来ること、バルコニー床スラブS1のコンクリートと建物コンクリート躯体とを、75mm厚の硬質ウレタンフォーム断熱層1bで完全遮断したことにより、熱橋作用は従来例イ(図11(A))、ロ(図11(B))のもののコンクリート打ち放しバルコニーの1/2以下に軽減出来る。
【0047】
また、バルコニー床スラブS1は、コンクリート打設形成のみで建物のコンクリート躯体CRとは熱的に遮断されたバルコニーBとなるため、その後の、例えば従来例イでのコンクリート躯体内側での断熱材付与、従来例ロ(図11(B))でのバルコニー全周面への断熱層付与等の熱橋抑制対策が不要であり、バルコニーBの形成が工数少なく、且つ、従来例イ、ロのバルコニーよりも遥かに低コストで形成出来る。
【0048】
また、支持棒への耐火被覆材3の付与作業はあるものの、支持棒2の配置はバルコニーB及び居住部Rへのコンクリート配筋時に施工出来、バルコニー床スラブS1の型枠組み、配筋、コンクリート打設が、建物コンクリート躯体側(耐力壁W1及び居住部床スラブS2)と同時並行的に実施出来、従来のバルコニーの最も作業性の良い図11(A)(従来例イ)でのコンクリート打ち放し状態までと略同等の作業性で遂行出来る。
また、支持棒2の断熱層1bの貫通孔H1への配置に際しては、円板29を予め断熱層1bのバルコニー側に貼着するため、耐火被覆材3(カオウール)の充填が簡単な手作業で容易に実施出来る。
【0049】
〔例2(図9)〕
図9に示す如く、支持棒挿通孔H15を支持棒配置間隔に穿設した溝形鋼片15を断熱層1bのバルコニー側に当接配置する。
この場合、溝形鋼片15として、高さ150mm、上下ウエブ15b厚が6.5mm、フランジ15a厚が10mm、挿通孔H15から側方に75mm突出させる。
溝形鋼片15の固定は、下方フランジ15bの両端の取付孔(図示せず)を介して床スラブ型枠7aに洋釘で固定すれば良い。
そして、溝形鋼片15の側端部には鉄筋アンカー片28を予め溶接固定しておく。
また、支持棒2には、バルコニー側、居住部側共に補強筋14を上下から挟着形態に結束する。
【0050】
従って、耐火被覆材3の充填作業に際しては、溝形鋼片15が、例1での円板29同様に、断熱層1bのバルコニー側で貫通孔H1を閉止するため、充填作業が容易であり、支持棒2への負荷応力の補強筋14を会した分散効果と、上下ウエブ、特に上方ウエブ15bによるバルコニー床スラブ基端Beのコンクリート補強により、バルコニー床スラブS1のコンクリート厚を例1のものより薄く出来る。
即ち、例1のバルコニーBは安全率を勘案してコンクリート基端Bb厚T3を250mmとしたが、例2の手段を適用すれば構造計算上は、コンクリート基端Bbの厚さT3は、150mmに減少可能となる。
【0051】
〔例3(図9(C))〕
図9(C)は、居住部床スラブS2の表面Sf´とバルコニー床スラブS1の表面Sfとの段差d4が大きい場合の例1の対処実施例である。
即ち、居住部RからバルコニーB側への出入口穴によって100mm程度の段差が生ずる場合は、居住部床スラブS2の下部に段差d4と同じ高さの段差d5の梁型状のドロップパネル26を設けて支持棒2を定着する。
この場合、ドロップパネル26の幅L16は650mmとすれば構造計算上、支持棒2のコンクリート躯体CR側の600mm延長部のドロップパネル26内での保持は可能である。
また、ドロップパネル26内では、直径10mmの異形棒鋼の肋筋27を100mm間隔で配筋し、肋筋27の内側には直径13mmの異形棒鋼の鉄筋31を間隔100mmで配筋すれば良い。
従って、本願発明は、居住部Rの床スラブS2と段差d4のあるバルコニーBも、ドロップパネル26の配置により形成出来る。
【0052】
〔例4(図10)〕
例4は、例1に対して支持棒の配置形態を変更するものであり、図10(A)は支持棒2の配置状態側面図であり、(B)は図(A)の矢印B視図である。
図示のとおり、支持棒2を上端配筋13側と下端筋12側との上下2層配置とし、上部支持棒2uとして、異形棒鋼の3倍の強度を有するPC鋼棒の22mm径をバルコニー床スラブS1の幅L3の50%を越える状態に配置して、バルコニー基端Bbの引張力に対抗させ、下部支持棒2dとして、35mm径の短寸の異形棒鋼を配置して、バルコニー下部の圧縮力に対抗させるものである。
【0053】
そして、引張支持棒2uの居住部R側端部には、厚さ9mmで65mm辺の正方形座金41をナット42で固定した定着板43を配置し、圧縮支持棒2dの居住部R側端部には、厚さ14mmで1辺100mmの正方形座金41をナット42で固定した定着板43を配置し、バルコニーB側では、上部支持棒2uを上端筋13と、下部支持棒2dを下端筋12と結束し、各引張棒2u及び圧縮棒2d共、居住部側で強固に保持するものである。
本例では、1本の長尺引張棒(PC鋼棒)2uに対応して2本の短寸圧縮棒2dを採用したが、引張棒2u及び圧縮棒2dの配置形態、本数等は、構造計算上の許容範囲内で適宜選択決定する。
【0054】
従って、例4にあっては、バルコニー床スラブS1の引張応力及び圧縮応力に好適に対処出来るため、突出長さの大きなバルコニーへの適用に有利であり、片持ちスラブ形式のバルコニー形成に適している。
そして、各支持棒2u,2dの居住部R側端での定着板43によるコンクリート保持力を増大させたことにより、大きく突出したバルコニーB内へのPC鋼棒の引張棒2uの必要長(バルコニー突出長L3の1/2以上)配置が、居住部R内での支持棒の短寸配置の下に可能となる。
勿論、この場合も、引張支持棒2u、圧縮支持棒2d共、全周面に断熱性合成樹脂を塗布し、断熱性及び防食性(防錆性)を付与するのが、熱橋阻止及び耐久性面から好ましい。
【0055】
〔その他〕
本発明バルコニーBを付設する外壁面の耐力壁W1以外の開口部を有する非耐力壁AW部は、耐力壁W1同様に複合パネル1と壁コンクリートWCで形成しても良いが、本出願人等の所有する特許第2999980号の断熱複合パネルのみの帳壁とするのが好ましく、この場合は非耐力壁AW部は、もはや壁コンクリートWCが存在せず、従って外壁AW部での壁型枠組み、及びコンクリート打設が不要となり、建築施工が合理化出来る。
また、支持棒2として、実施例で採用した低コストの異形棒鋼に替えて、鋼材より遥かに機械的物性に優れたアラミド系等の高強度プラスチック棒材や高強度プラスチック複合材棒を採用すれば、熱橋防止効果のより大きなバルコニーが得られる。
【0056】
【発明の効果】
本発明バルコニーBは、鉄筋コンクリート造外断熱建物から突出形態の鉄筋コンクリート造バルコニーでありながら、コンクリート躯体CR側からバルコニー床スラブS1側に差し渡した支持棒2群がコンクリート打設によって埋設一体化出来るため、バルコニーBの基端Bb,Bsと断熱層1bとの当接一体化が容易に形成出来、バルコニーBの形成が容易である。
しかも、バルコニー床スラブS1の基端Bb,Bsとコンクリート躯体CRとは、外壁の断熱層1bで熱的に完全遮断し、支持棒2群も外気熱の直接伝達を阻止しているため、バルコニー床スラブS1から建物コンクリート躯体CRへの熱橋は、バルコニーコンクリート床スラブS1→埋設支持棒2→コンクリート躯体CRの経路のみとなり、大幅に抑制出来る。
従って、鉄筋コンクリートバルコニーBの形成後は、何ら熱橋防止処置を施す必要がなく、建物コンクリート躯体内部の壁及び床は、コンクリート打ち放しの状態で使用に供することが可能となる。
【0057】
また、バルコニー床スラブS1と建物コンクリート躯体とは、単に支持棒2のみで連結するだけであって、バルコニーB側の配筋と建物躯体(居住部)側の配筋の連続性が無いため、バルコニーB側の型枠組み、配筋、コンクリート打設作業が、建物コンクリート躯体CRのそれと同時並行的にも、別作業としても遂行可能となり、鉄筋コンクリート造バルコニーの建築の作業性が良い。
そして、支持棒2の配置形態、配置本数は、構造計算に基づいて自在であるため、連続したバルコニーや、床スラブが突出した庇、及び外廊下等への採用も自在である。
従って、本発明は、耐力壁W1を含む外壁の配置形態と、支持棒の材料、寸法の選択とも併せ、機能上からも、美観上からの建物の設計の自由度が大となり、需要者(建築主)の要望に応えたバルコニー付住宅の提供を、しかも低コストでの提供を可能とする、極めて実用性の高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明バルコニーの一部切欠斜視図である。
【図2】図1のバルコニーの縦断側面図である。
【図3】本発明実施例建物の間取図であり、(A)は全体図、(B)は(A)の要部拡大図である。
【図4】実施例説明図であって、(A)は図3(B)のA−A線断面図、(B)は支持棒2の外観図である。
【図5】本発明実施例説明図であって、(A)は配筋状態説明断面図、(B)は(A)の矢印B視図、(C)は(A)の矢印C視図である。
【図6】本発明の耐力壁に用いる複合パネル1の一部切欠全体斜視図である。
【図7】本発明のバルコニー型枠及び配筋状態説明斜視図である。
【図8】本発明の型枠組みの一部切欠縦断面図である。
【図9】本発明の変形例図であって、(A)は例2の要部断面図、(B)は(A)のB部拡大斜視図、(C)は例3の要部断面図である。
【図10】本発明の例4の説明図であって、(A)は要部断面図、(B)は(A)の矢印B視図である。
【図11】従来例説明斜視図であって、(A)は従来例イを、(B)は従来例ロを、(C)は従来例ハを示す図である。
【符号の説明】
1,1´:複合パネル、 1a:セメント板、
1b,1b´:断熱層、 2,2a,2b,2c:支持棒、
2d:下部支持棒(圧縮棒、支持棒)、
2u:上部支持棒(引張棒、支持棒)、
3:耐火被覆材、
4a,4b,4c,4d、4e,4f:桟木、
5a:セパレータ、 5b:Pコン、
5c:KPコン、 6:フォームタイ、
7a,7a´,7b:型枠合板、
8a,8b,8c,8d:型枠パイプ、 9:リブ座金、
10:ナット、 11:パイプサポート、
12:下端筋(下端配筋)、 12a:短辺方向下端筋、
12a´,13a´:屈曲アンカー部、 12b:長辺方向下端筋、
13:上端筋(上端配筋)、 13a:短辺方向上端筋、
13b:長辺方向上端筋、 13c:補強筋、
14:補強筋、 15:溝形鋼片、
15a:フランジ、 15b:ウエブ、
16:型枠合板、 17:支持金具、
18a,18b:型枠、 19a,19b:桟木、
20:防水層、 21:笠木、
22:水切金具、 23:モルタル(ラスモルタル)、
24:手摺、 24a:手摺柱、
24b:底板、 25a,25b:シーリング、
26:ドロップパネル、 27:肋筋、
28:アンカー片、 29:円板、
30:スペーサー、 31:鉄筋、
41:座金、 42:ナット、
43:定着板、
B:バルコニー、 Bb:基端(バルコニー基端)、
Bs:両側基端(バルコニー基端)、 Bt:先端(バルコニー先端)、
Cb:基端中央、 Ct:先端中央、
H1:貫通孔(孔)、 H2:挿通孔(挿入用孔)、
H15:支持棒挿通孔(挿入用孔)、 R:居住部、
S1:バルコニー床スラブ(床スラブ)、
S2:居住部床スラブ(床スラブ)、 Sf,Sf´:床スラブ表面、
L1:バルコニー長、 L2:洋間の長さ、
L3:バルコニー幅、 L4:居間、台所の長さ、
W1:耐力壁(外壁)、 W2:補助壁(耐力壁支持部)、
AW:窓、出入口開口部(非耐力壁)
Claims (11)
- セメント板(1a)と断熱層(1b)から成る複合パネル(1)の断熱層(1b)で壁コンクリート(WC)の外面を熱的に被覆したコンクリート躯体(CR)の外壁(W,AW)に、鉄筋コンクリート造のバルコニー床スラブ(S1)を突出付設して支持棒(2)群のみによって支持した構造であって、バルコニー床スラブ(S1)は、形成時のコンクリート打設によって基端(Bb,Bs)を、複合パネル(1)のむきだしとなった断熱層(1b)と当接一体化して、断熱層(1b)によって建物のコンクリート躯体(CR)と熱的に遮断し、支持棒(2)群は、耐力壁(W1)部で、バルコニー床スラブ(S1)の内部から断熱層(1b)の貫通孔(H1)を通って建物のコンクリート躯体(CR)の居住部床スラブ(S2)内部に延出し、形成時のコンクリート打設によってバルコニー床スラブ(S1)側、及びコンクリート躯体(CR)側に固定支持した、鉄筋コンクリート造外断熱建物に於けるバルコニー。
- 支持棒(2)が、断熱層(1b)の貫通孔(H1)部では耐火被覆材(3)によって被覆保護されている、請求項1のバルコニー。
- 支持棒(2)外面が、エポキシ樹脂等の断熱性の合成樹脂で被覆されている請求項1又は2のバルコニー。
- 断熱層(1b)の貫通孔(H1)のバルコニー(B)側を、支持棒(2)挿通孔(H2)を有する円板(29)で閉止して耐火被覆材(3)を充填した、請求項1乃至3のいずれか1項のバルコニー。
- バルコニー床スラブ(S1)の支持位置(Bb,Bs)には溝形鋼片(15)のフランジ(15a)を断熱層(1b)に当接配置し、溝形鋼片(15)の孔(H15)に各支持棒(2)を挿通した、請求項1乃至3のいずれか1項のバルコニー。
- 支持棒(2)が、バルコニー床スラブ(S1)内で直交する補強筋(14)を備えている、請求項1乃至5のいずれか1項のバルコニー。
- 支持棒(2)が、断熱層(1b)から居住部床スラブ(S2)側とバルコニー床スラブ(S1)側とに略等長に延びている、請求項1乃至6のいずれか1項のバルコニー。
- 支持棒(2)が、居住部(R)側の端部に定着板(43)を備えている、請求項1乃至7のいずれか1項のバルコニー。
- 支持棒(2)が、バルコニー床スラブ(S1)中では、上端配筋(13)部の上部支持棒(2u)と、下端配筋(12)部の下部支持棒(2d)との上下2層配置である、請求項1乃至7のいずれか1項のバルコニー。
- 上層の支持棒(2u)が抗張力鋼棒であり、下層の支持棒(2d)が抗圧縮鋼棒である、請求項9のバルコニー。
- バルコニー(B)の基端中央(Cb)及び両側基端(Bs)は耐力壁(W1)部であり、バルコニー(B)の先端中央(Ct)に支持部(W2)が存在する、請求項1乃至10のいずれか1項のバルコニー。
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