JP3775500B2 - 半導体薄膜の形成方法及びその装置、並びに触媒ノズル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基体上に多結晶シリコンなどの半導体薄膜を気相成長させる方法及びその装置、並びに触媒ノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)である例えばMOSTFT(TFT:Thin Film Transistor)(薄膜絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)のソース、ドレイン及びチャンネル領域を多結晶シリコン膜で形成するに際し、プラズマCVD(CVD:Chemical Vapor Deposition=化学的気相成長法)や減圧CVD法、触媒CVD法等の気相成長法、固相成長法、液相成長法、エキシマレーザーアニール法等が用いられている。
【0003】
近時、ガラス基板のような絶縁性基板上に、多結晶シリコン膜、窒化シリコン膜等を低温で作製し得る優れた熱CVD法である触媒CVD法が開発され(特公昭63−40314号、特公平8−250438号参照)、実用化の検討が推進されている。
【0004】
こうした従来の触媒CVD法及びその装置は、平面状に張った800〜2000℃(融点未満)の加熱触媒体の上方30〜50mmの位置に配置されたガス拡散板から水素系キャリアガスと原料ガスとの混合ガスを吹き付けて、この少なくとも一部の触媒反応又は熱分解反応によりラジカル、イオン等の堆積種を生成させ、この堆積種を加熱触媒体の下方30〜50mmの位置にセットされ、300〜400℃に加熱した絶縁性基板上に堆積させて薄膜を形成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、触媒CVDでは、図17に示すラマン散乱分光特性のように、多結晶シリコン結晶層、微結晶シリコン層、アモルファスシリコン層の混在した膜が形成され、最適化された条件でも微結晶シリコン層及びアモルファスシリコン層がわずかに存在した多結晶シリコン膜が形成され、ガス圧が高くなる程、又シラン流量が多くなる程、アモルファスシリコン層が多くなる傾向にある。そして、触媒CVDでは、堆積した多結晶シリコン及び微結晶シリコン結晶の間にアモルファスシリコンが介在する、いわゆる柱状構造の多結晶シリコン膜が形成される。
【0006】
この結果、それらを横断して電子/正孔を移動させようとすると、移動度の低い微結晶シリコンやアモルファスシリコンが存在し、かつ多結晶シリコン結晶粒界の障壁が高いので、高い移動度が得られにくい。さらに、発生した平均自由工程の大きいラジカル水素やイオンがチャンバ内壁、内部治具、絶縁性基板などに衝突して、その表面に吸着している水、酸素、二酸化炭素、窒素等をガスアウトさせ、特に、形成した多結晶シリコン及び微結晶シリコン粒界に酸素により低級酸化シリコン膜が形成され、電子/正孔移動度低下の一因となりやすい。
【0007】
本発明の目的は、結晶化率が高くて高移動度、高品質の半導体薄膜を生産性良く形成する方法及びその装置、並びに触媒ノズルを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、基体上に半導体薄膜を形成するに際し、
水素系ガス及び/又は原料ガスの流路と、この流路に配された加熱触媒体とを内蔵し 、かつ、長方形状のガス導出口に向けて断面が縮小した絞り型構造に形成されている触 媒ノズルをチャンバ内に設け、
前記チャンバ内において、
前記水素系ガスを前記加熱触媒体に接触させることによって水素系活性種を生成させ 、この水素系活性種を前記触媒ノズルから導出して前記基体に作用させる第1段階と、
少なくとも前記原料ガスを前記加熱触媒体に接触させることによって活性堆積種を生 成させ、この活性堆積種を前記触媒ノズルから導出して前記基体上に半導体薄膜として 堆積させる第2段階と、
前記水素系ガスを前記加熱触媒体に接触させることによって前記水素系活性種を生成 させ、この水素系活性種を前記触媒ノズルから導出して前記半導体薄膜に作用させる第 3段階と
を有する、半導体薄膜の形成方法に係るものである。
【0009】
また、本発明は、水素系ガス及び/又は原料ガスの流路と、この流路に配された加熱触媒体とを内蔵し、かつ、長方形状のガス導出口に向けて断面が縮小した絞り型構造に形成されている触媒ノズルを提供し、更に、基体上に半導体薄膜を形成するための装置であって、
水素系ガス及び/又は原料ガスの流路と、この流路に配された加熱触媒体とを内蔵し 、かつ、長方形状のガス導出口に向けて断面が縮小した絞り型構造に形成されている触 媒ノズルと、
前記触媒ノズルのガス導出口に対向した前記基体の支持手段と
がチャンバ内に設けられている、半導体薄膜の形成装置をも提供するものである。
【0010】
本発明によれば、前記水素系ガス及び/又は前記原料ガスの流れ方向(流路)に少なくとも1段(例えば、タングステン線2段、タングステン線1段+白金線1段)の前記加熱触媒体を内蔵しかつ長方形状のガス導出口に向けて断面が縮小した絞り型構造を有する前記触媒ノズルをチャンバ内に少なくとも1個設置し、そのガス導出口から水素系活性種、活性堆積種を導出して前記基体に作用させ、第1段階で高温の水素系活性種(水素分子、水素原子、水素ラジカル、水素イオン等:以下、同様)を吹き付けてクリーニングし、第2段階で錫又は他のIV族元素(Pb、Ge等:以下、同様)含有又は非含有の半導体微粒子(多結晶Si、多結晶GeSi等:以下、同様)を吹き付けて半導体薄膜を積層形成し、第3段階で高温の水素系活性種を吹き付けて触媒AHA(Atomic Hydrogen Anneal)処理するので、次の(a)〜()項の顕著な作用効果を奏することができる。
【0011】
(a)前記触媒ノズル内で、前記水素系ガスと前記原料ガスとの混合、及びこれらのガスと前記加熱触媒体との接触が十分となり、前記加熱触媒体による触媒反応及び熱分解反応が十分に行われるので、アモルファスシリコン成分や微結晶シリコン成分が極めて少なく、結晶化率の高い高移動度で高品質の多結晶シリコン膜等の半導体薄膜を形成することができる。
【0012】
(b)前記加熱触媒体による触媒反応及び熱分解反応で前記水素系ガスから発生した高温の前記水素系活性種は、前記触媒ノズルから導出後、これに対向した前記基体に衝突するのみですぐに排出され、前記チャンバの内壁や内部治具に衝突しないので、それらに吸着している水、酸素、二酸化炭素、窒素等のガスアウトがなく、たとえ高温の前記水素系活性種が基体で反射して前記チャンバの内壁や内部治具に衝突してもそのエネルギーが弱いので、酸素等のガスアウトがない。この結果、形成された多結晶シリコン膜等の半導体薄膜中の酸素濃度低減、例えば1×1019atoms/cc以下、好ましくは5×1018atoms/cc以下が可能となり、同時に、窒素、炭素の濃度も1×1019atoms/cc以下にすることができるので、高移動度、高品質の多結晶シリコン膜等の半導体薄膜が形成される。
【0013】
(c)前記触媒ノズル内で、水素系キャリアガス(水素、アルゴン+水素、ヘリウム+ 水素、ネオン+水素等:以下、同様)と前記原料ガスとの混合、及びこれらのガスと前 記加熱触媒体との接触が十分となり、接触触媒反応及び熱分解反応が十分に行われるの で、高結晶化率の半導体薄膜を形成できると共に、前記原料ガスの利用効率が高く、成 膜速度が高いので、生産性向上でのコストダウンを実現できる。
(d)前記触媒ノズルは、長方形状のガス導出口を有しているので、ラインビーム状に 堆積種を吹き付けて大面積に積層するのに好適であり、またこのガス導出口に向けて断 面が縮小した絞り型構造であるため、前記水素系キャリアガス及び前記原料ガスと前記 加熱触媒体との接触反応促進と、堆積種の高密度堆積化及び大粒径化を図れることに加 えて、前記水素系活性種が前記基体以外に飛び出しにくくなる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明においては、冷却された支持体内に前記水素系ガスとしての水素系キャリアガス及び/又は前記原料ガスの流動方向に沿って少なくとも1段の前記加熱触媒体を内蔵した前記触媒ノズルを真空チャンバ内に少なくとも1個設置し、絶縁性基板を往復又は回転移動させながら、前記第1段階で前記水素系活性種を吹き付けて前記絶縁性基板をクリーニングし、前記第2段階で錫又は他のIV族元素含有又は非含有の半導体微粒子からなる前記活性堆積種を吹き付けて前記半導体薄膜を触媒CVDにより形成し、前記第3段階で前記水素系活性種を吹き付けて前記半導体薄膜を触媒AHA処理することが望ましい。
【0015】
この場合、冷却水、オイル、ガス(空気、窒素等)等の冷媒で冷却した支持体(石英ガラス、高耐熱金属Mo、W、Ta等)内部に前記水素系キャリアガスと前記原料ガスの流れ方向に複数段(例えば直径0.5mmタングステン線2段、直径0.5mmタングステン線1段+直径0.5mm白金線1段等)の800〜2200℃(融点未満)、好ましくは1600〜2000℃の前記加熱触媒体を内蔵する前記触媒ノズルを設けるのがよい。
【0016】
そして、タングステン、トリア含有タングステン、モリブデン、白金、パラジウム、バナジウム、シリコン、アルミナ、金属を付着したセラミックス、及び炭化ケイ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の材料によって、前記加熱触媒体となる触媒体を形成し、この触媒体を通電によって抵抗加熱することができる。
【0017】
そして、この触媒体及びこれを支持する支持体の純度を99.99wt%(4N)以上、好ましくは99.999wt%(5N)又はそれ以上とすることによって、形成される多結晶性半導体薄膜の重金属汚染を低減することができる。
【0018】
ここで、前記加熱触媒体の加熱温度が800℃未満であると、前記原料ガスの触媒反応又は熱分解反応が不十分となって堆積速度が低下し易く、また2000℃を超えると前記加熱触媒体の構成材料が堆積膜中に混入して膜の電気的特性を阻害し、膜質低下を生じ、また、前記加熱触媒体の融点以上の加熱は、その形態安定性が失われるので、回避するのがよい。前記加熱触媒体の加熱温度は、その構成材料の融点未満であって1100〜2200℃、好ましくは1600〜2000℃である。
【0019】
前記触媒ノズルにおいて、ガス導入部と前記加熱触媒体とガス導出部とをこの順に設け、前記ガス導出部の直下に前記基体を配置するのがよい。
【0020】
このノズル形状は、ラインビーム状に堆積種を吹き付けて大面積に積層するには直方体、即ちガス導出口長方形状とするのがよい。前記ガス導出部の形状は、前記水素系キャリアガス及び前記原料ガスと前記加熱触媒体との接触反応促進と、堆積種の高密度堆積化及び大粒径化、更に発生した前記水素系活性種が前記基体としての絶縁性基板以外に飛び出しにくい構造の点からは、ガス導出口に向けて断面が縮小した絞り型とする
【0021】
減圧下でのガス分子運動予測によれば、図16に示すように、例えばガス圧Pg=0.001Torr(約0.133Pa)では、真空チャンバ内に導入された1個のガス分子は、ガス分子同士、又はチャンバ側壁及び触媒体表面と1秒間に104回程度の衝突をしながら、2、3秒間で排気される。この時、102〜103回分の衝突はチャンバ側壁及び触媒体表面との間で起こり、それぞれとの衝突回数はその表面積比に応じて分配される。
【0022】
したがって、前記真空チャンバ側壁面積:4000cm2、触媒体表面積:10〜100cm2とすると、前記触媒ノズルを用いないで直接前記真空チャンバ内にガスを導入した場合、1個のガス分子は排気されるまでに1〜10回、前記加熱触媒体表面と接触する可能性を持つことになる。しかし、平面に張った前記加熱触媒体の間隔が10〜30mmもあるので、導入された原料ガスの例えばシラン分子が全て前記加熱触媒体に接触して接触触媒反応及び熱分解反応されるとは限らない。
【0023】
一方、前記触媒ノズルを用いれば、ガス分子はガスの流路に配された前記加熱触媒体付近を通過した後に前記真空チャンバ内に導出されるから、前記触媒ノズル内で、前記水素系キャリアガスと前記原料ガスとの混合、及びこれらのガスと前記加熱触媒体との接触が十分となり、接触触媒反応及び熱分解反応が十分に行われるので、高結晶化率の半導体薄膜を形成できる。
【0024】
前記触媒ノズルは、前記真空チャンバ中に少なくとも1個設け、その直下で前記絶縁性基板を移動させながら、次の(1)〜(3)の各段階を行うのがよい。
【0025】
(1)第1の前記触媒ノズル内の複数段の前記加熱触媒体により前記水素系キャリアガスの少なくとも一部を触媒反応又は熱分解反応させ、これによって発生した高温の前記水素系活性種を前記絶縁性基板に吹き付けてクリーニングする。
【0026】
(2)連続して次に、第2の前記触媒ノズル内の複数段の前記加熱触媒体により前記水素系キャリアガスと前記原料ガスの少なくとも一部を触媒反応又は熱分解反応させ、これによって発生したラジカル、イオン等の堆積種を300〜400℃に加熱された前記絶縁性基板上に堆積させる。この時に、例えば錫又は他のIV族元素を1×1018〜1×1020atoms/cc含有させることにより、結晶粒界に存在する結晶不整の低減及び膜ストレスの低減による移動度向上を図ってもよい。
【0027】
(3)連続して次に、第3の前記触媒ノズル内の複数段の前記加熱触媒体により前記水素系キャリアガスの少なくとも一部を触媒反応又は熱分解反応させ、これによって発生した高温の前記水素系活性種を前記絶縁性基板上に堆積した半導体薄膜に吹き付けて触媒AHA処理する。
【0028】
前記触媒ノズルは、単一触媒ノズルとして各段階の処理を共通の前記触媒ノズルで行ってよいが、複数の触媒ノズルからなるマルチ触媒ノズルを用い、これらの各触媒ノズルを並置して各段階をそれぞれ行ってもよい。
【0029】
このような単一触媒ノズル又はマルチ触媒ノズルは、次のような付加段階に用いることもできる。即ち、前記第1段階と前記第2段階との間、又は/及び、前記第3段階の後に、前記原料ガスを前記加熱触媒体に接触させることによって生成する活性堆積種を前記触媒ノズルから導出させて前記基体上に絶縁性微粒子(例えば酸化シリコン等)を吹き付けて絶縁性薄膜を積層する付加段階を行うことができる。
【0030】
上記した各段階において、前記絶縁性基板を挟んで前記触媒ノズルの反対側に、加熱用赤外線ランプを設置して、移動する前記絶縁性基板を300〜400℃に加熱してもよい。又、前記絶縁性基板は前記触媒ノズルに対して水平移動させても、回転移動させてもよい。
【0031】
この時に、電場又は/及び磁場の作用下で、前記第2段階又は前記付加段階でバイアス触媒CVDを行い、前記第3段階又は前記第1段階でバイアス触媒AHA処理を行ってよい。また、電場又は/及び磁場の作用下で、前記単一触媒ノズル又は前記マルチ触媒ノズルを作動させてよい。
【0032】
こうした任意の電場印加(触媒ノズルと絶縁性基板との間、又は真空チャンバの外部との間)、又は磁場印加、又は電場及び磁場印加により、イオン、ラジカル等の堆積種に指向性運動エネルギーを付与して、原料ガス利用効率向上による高効率化及び高速成膜化が可能となり、またシリコン原子の電子スピンを電場又は磁場又は電場及び磁場と相互作用して一定方向に向かせ、この状態から冷却固化する際に一定方向性を持って結晶化させることにより、結晶粒が揃い、高性能(高移動度)で高品質の多結晶シリコン膜を形成することができる。
【0033】
更に、電場又は/及び磁場の印加により、高温の水素系活性種等に指向性運動エネルギーを付与して、熱エネルギーを効率良く移動させてアモルファス構造のシリコンをエッチングして結晶化率を高め、その結晶粒界に存在する結晶不整及び内部応力を低減させ、高移動度、高品質の多結晶シリコン膜を形成することができる。
【0034】
これらの電場又は/及び磁場の印加を各場合に分けてより詳しく説明する。
【0035】
(1)電場印加
触媒ノズルと絶縁性基板との間に、グロー放電開始電圧以下の直流電圧、低周波電圧、高周波電圧、直流電圧に低周波電圧を重畳させた電圧、又は直流電圧に高周波電圧を重畳させた電圧等による電場を印加してイオン、ラジカル等の堆積種に指向性の運動エネルギーを付与することにより、原料ガス利用効率向上による高効率化及び高速成膜化が可能となり、またシリコン原子の電子スピンが電場と相互作用して一定の方向に向き、この状態から冷却固化する際に一定の方向性を持って結晶化させることにより、結晶粒が揃い、高移動度で高品質の半導体薄膜化、更には高絶縁性で高品質の絶縁性薄膜の形成が可能な触媒ノズル吹き付けの電場印加型触媒CVDの製法及び装置を提供することができる。
【0036】
更に、触媒ノズルと絶縁性基板との間に、グロー放電開始電圧以下の直流電圧、低周波電圧、高周波電圧、直流電圧に低周波電圧を重畳させた電圧、又は直流電圧に高周波電圧を重畳させた電圧等による電場を印加して、高温の水素分子、水素原子、水素ラジカル、水素イオンに指向性の運動エネルギーを付与することにより、熱エネルギーを効率良くその膜に移動させてアモルファス構造のシリコンをエッチングして、高結晶性多結晶シリコン膜化を実現し、またその結晶粒界に存在する結晶不整及び内部応力を低減させ、高移動度で高品質の多結晶シリコン膜を得る触媒ノズル吹き付けの電場印加型触媒AHA処理の方法及び装置を提供することができる。
【0037】
なお、触媒ノズルと絶縁性基板との間に電場を印加する以外にも、真空チャンバの外部に電極を形成して電場印加してもよい。
【0038】
このような電場印加型(バイアス)触媒AHA処理(又はバイアス触媒CVD)における前記電界として、グロー放電開始電圧以下の直流電圧(即ち、パッシェンの法則により決まるプラズマ発生電圧以下、例えば1kV以下、数10V以上)を印加し、前記反応種又は水素系活性種等を前記基体の側へ指向させることが望ましい。また、高周波電圧(RF/VHF)及び/又は低周波電圧(AC/LF)を印加する場合、高周波電圧の周波数を1〜100MHz、低周波電圧の周波数を1MHz未満とするのがよい。
【0039】
(2)磁場印加
真空チャンバの外部に永久磁石又は電磁石の磁極を配置して磁場印加し、シリコン原子の電子スピンが磁場と相互作用して一定の方向に向き、この状態から冷却固化する際に一定の方向性を持って結晶化させることにより、結晶粒が揃い、高移動度、高品質の半導体薄膜化を促進する触媒ノズル吹き付けの磁場印加型触媒CVDの製法及び装置を提供することができる。
【0040】
(3)電場及び磁場印加
真空チャンバの外部に永久磁石又は電磁石の磁極を配置して磁場印加し、更に同じ外部に配置した電極に直流電圧又は交流電圧(高周波電圧又は低周波電圧又はこれらを重畳した電圧)、又は直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧による電場を印加し、シリコン原子の電子スピンが磁場及び電場と相互作用してさらに一定の方向に向き、この状態から冷却固化する際に、さらに一定の方向性を持って結晶化させることにより、さらに結晶粒が揃い、高移動度で高品質の半導体薄膜化させる触媒ノズル吹き付けの磁場及び電場印加型触媒CVDの製法及び装置を提供することができる。
【0041】
なお、真空チャンバの外部に永久磁石又は電磁石の磁極を設置して磁場を印加すると共に、真空チャンバ内の触媒ノズルと絶縁性基板との間に直流電圧又は交流電圧(高周波電圧又は低周波電圧又はこれらの重畳した電圧)、又は直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧による電場を印加することを併用してもよい。
【0042】
本発明により、触媒ノズル内で、水素系キャリアガスと原料ガスとの混合及びこれらのガスと加熱触媒体との接触が十分に行われ、接触触媒反応及び熱分解反応が十分に行われるので、高結晶化率の半導体薄膜を形成できると共に、原料ガスの利用効率が高く、成膜速度が高いので、生産性向上でのコストダウンを実現できる。例えば一辺が1mの正方形ガラス基板の場合、従来は触媒体間隔を20mmとすると、直径0.4mm、長さ1100mmの触媒体が55〜56本程度必要であるが、本発明の場合は触媒ノズル内に直径0.4mm、長さ1100mm程度の触媒体が2本程度で済むので、高価な高純度(99.999wt%(5N)以上)の触媒体(タングステンなど)及び触媒体支持ワイヤ(モリブデンなど)の大幅な削減、消費電力の大幅な削減などによる大幅なコストダウンが可能となる。
【0043】
また、チャンバクリーニング時に、前記触媒ノズルのガス導出口を閉じて、別のノズルからNF3等のエッチングガスを導入すれば、触媒ノズル内の触媒体がエッチングされないので、触媒体の寿命が長くなり、メンテナンス工数が削減され、歩留まり、品質及び生産性が向上し、コストダウンが可能となる。
【0044】
更に、半導体薄膜の成膜時に、絶縁性基板の少なくともTFT形成領域内に、適当な形状/寸法の段差を有する凹部を形成し、その底辺の角をシードにグラフォエピタキシャル成長させて単結晶性半導体薄膜(単結晶性シリコン、単結晶性シリコン−ゲルマニウムなど)を形成することができる。
【0045】
或いは、絶縁性基板の少なくともTFT形成領域内に、単結晶(シリコンなど)と格子整合の良い物質層(結晶性サファイア薄膜など)を形成し、それをシードにヘテロエピタキシャル成長させて単結晶性半導体薄膜(単結晶性シリコン、単結晶性シリコン−ゲルマニウムなど)を形成することができる。
【0046】
上記の方法で得られた半導体膜をMOS型又は接合型の電界効果トランジスタのチャンネル領域、ソース領域及びドレイン領域に適用し、これら各領域に注入した不純物種及び/又はその濃度を制御するのがよい。
【0047】
或いは、半導体膜をバイポーラトランジスタのエミッタ領域、ベース領域、コレクタ領域に適用し、さらに、ダイオード、抵抗、コンデンサ等に適用し、これら各領域に注入された不純物種及び/又はその濃度が制御されるのがよい。
【0048】
上記の薄膜の形成方法は、シリコン半導体装置、シリコン半導体集積回路装置、シリコン−ゲルマニウム半導体装置、シリコン−ゲルマニウム半導体集積回路装置、III族−V族又はII族−VI族化合物半導体装置、III族−V族又はII族−VI族化合物半導体集積回路装置、炭化ケイ素半導体装置、炭化ケイ素半導体集積回路装置、ダイヤモンド半導体装置、ダイヤモンド半導体集積回路装置、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス表示装置、フィールドエミッションディスプレイ(FED)装置、プラズマディスプレイパネル(PDP)装置、発光ポリマー表示装置、発光ダイオード表示装置、CCD(Charge Coupled Device)エリア/リニアセンサ装置、CMOS(Complementary MOS)イメージセンサ装置、光センサ装置、強誘電体または高誘電率半導体メモリー装置、強誘電体または高誘電率半導体メモリー集積回路装置、電子写真感光体装置又は太陽電池装置等の製造に用いられる。
【0049】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に詳細に説明する。
【0050】
触媒ノズルの構成
図1の上図に示すように、触媒ノズル101はその上部に冷却ジャケット102を載置するように作られており、冷却ジャケット102に冷却水、オイル、ガス(空気、窒素、ドライアイスが昇華して生じる低温の二酸化炭素等)等の冷媒103を流すことによって、触媒ノズル101の温度を適温に保ち得るようになっている。
【0051】
触媒ノズル101は、加熱触媒体104を収容する石英ガラス製の箱型の本体容器105と、Mo、W、Ta等の高耐熱性金属からなるホルダー106よりなる。本体容器5の上面とホルダー106の上面との間の空間はガス混合部107を形成する。すなわち、ガス導入管108から導入した、水素系キャリアガス又は/及び原料ガスからなる導入ガス109はガス混合部107で均一に混合し、圧力の偏り等を無くした後、本体105の上面に設けられた多数のガス吹き出し穴111から本体容器5内部に導入する。
【0052】
本体容器105内部には、複数段の加熱触媒体104(例えば、直径0.4mmのタングステン線2段、あるいは直径0.4mmタングステン線1段+直径0.4mmの白金線1段等)をガスの流れの方向に配置する。本体容器105の前面と背面との間隔(加熱触媒体104を前後から挟む面の間隔)は、ガス導出口の半分以下、例えば10〜20mm程度が適切である。
【0053】
図2に示すように、個々の加熱触媒体104は、石英ガラス製支持台112、石英ガラス製支持棒113、触媒体支持ワイヤ(モリブデンMo等、例えば、直径0.8mm)114によって支持し、石英ガラス製支持台112に設けた端子(モリブデンMo等)115をへて触媒体加熱用電源116に接続する。
【0054】
図2(a)には、複数の加熱触媒体104を1つの触媒体加熱用電源116に直列に接続する例を示す。複数の加熱触媒体4を1つの触媒体加熱用電源116に並列に接続してもよい。また、図2(b)のように、複数の加熱触媒体104をそれぞれ独立した触媒体加熱用電源116に接続し、各加熱触媒体104をそれぞれの最適温度に調整するようにしてもよい。加熱触媒体104の加熱温度は、その構成材料の融点未満であって、800〜2200℃、好ましくは1600〜2000℃とする。
【0055】
本体容器105の底部には、真空チャンバへのガス導出口117が設けられている。ガス導出口117の形状は、ラインビーム状に堆積種を吹き付けて大面積に積層するには長方形とする
【0056】
ガス導出口117にいたるガス導出部の流れ方向の形状としては、断面がガス導出口117に近づくほど断面が小さくなる(テーパー状の)絞り型とする。水素系キャリアガス及び原料ガス109と加熱触媒体104との接触反応を促進し、堆積種の高密度堆積化及び大粒径化を実現し、更に発生した水素系活性種が絶縁性基板以外の所に飛び出すのを抑えるには、絞り型とする
【0057】
基板材料の選択
半導体薄膜を形成する基体である絶縁性基板の材質は、加工工程中に基板を加熱するプロセス温度の高低を考慮して選択する。
【0058】
例えば、基板温度を200〜500℃の低温に保つことができる場合には、安価なホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス等のガラス基板を用いることができる。これらのガラス基板では、大きな基板を使用することがコスト的に可能であり、大形の長方形形状のもの、例えば600mm×500mm(厚さは0.5〜1.1mm)等のものが使用できる。なお、基板温度をさらに低い温度に保つことができる場合には、耐熱性樹脂基板を用いてもよい。
【0059】
基板温度を600〜1000℃の高温に保つ必要がある場合には、石英ガラス、結晶化ガラス等の耐熱性ガラス基板を用いることが必要になる。この場合、直径が150〜300mm(厚さは700〜800μm)等のものを使用する。
【0060】
基板がナトリウムイオンを含むガラス基板である場合には、ナトリウムイオンの侵入を阻止するために保護膜用の窒化シリコン膜を形成する必要がある。しかし、基板がナトリウムイオンを含まない合成石英ガラス基板や耐熱性樹脂基板である場合には、窒化シリコン膜の形成は不要である。
【0061】
触媒CVD成膜条件
触媒体加熱用電源116の電圧を調節して、加熱触媒体104を抵抗とする抵抗加熱により、加熱触媒体104の温度を所定温度(約1600〜1800℃、ここでは約1700℃に設定)に保つ。
【0062】
加熱触媒体104が酸化され劣化するのを防止するために、加熱触媒体104を加熱している間は触媒ノズル101内に常時水素系キャリアガスを供給する。成膜後も、加熱触媒体104の酸化劣化が起こらない温度まで加熱触媒体104の温度が下がるのを待って、水素系キャリアガスの供給を停止する。
【0063】
成膜中は、触媒ノズル101内の流量と圧力、基体支持手段であるサセプタの温度を次の所定の値に制御する。
水素系キャリアガス流量(混合ガスの場合、水素の比率は80〜90モルパーセント):100〜200sccmに設定。
チャンバ内圧力:0.1〜10Pa程度、1Paに設定。
サセプタ温度:基板温度が300〜400℃になるように設定。
【0064】
薄膜の種類ごとの成膜条件は、次の通りである。
【0065】
窒化シリコン(Si34)膜は、50〜200nmの厚さに形成する。キャリアガスには水素H2を用い、原料ガスとしてはモノシランSiH4にアンモニアNH3を適量比率混合した混合ガスを用いる。各ガスの流量は次の通りである。
2流量:100〜200sccm、SiH4流量:1〜5sccm、
NH3流量:5〜10sccm
【0066】
酸化シリコン(SiO2)膜は、50〜100nmの厚さに形成する。キャリアガスには水素H2を用い、原料ガスとしてはモノシランSiH4にヘリウムHeで希釈した酸素O2を適量比率混合した混合ガスを用いる。各ガスの流量は次の通りである。
2流量:100〜200sccm、SiH4流量:1〜5sccm、
He希釈O2流量:0.1〜0.5sccm
【0067】
錫含有多結晶シリコン(Si)膜は、50〜100nmの厚さに形成する。キャリアガスには水素H2を用い、原料ガスとしてはモノシランSiH4に水素化スズSnH4を適量比率混合した混合ガスを用いる。各ガスの流量は次の通りである。
2流量:100〜200sccm、SiH4流量:1〜5sccm、
SnH4流量:1〜5sccm
【0068】
多結晶シリコン膜は、50〜100nmの厚さに形成する。キャリアガスには水素H2を用い、原料ガスとしては水素にモノシランSiH4を適量比率混合した混合ガスを用いる。各ガスの流量は次の通りである。
2流量:100〜200sccm、SiH4流量:1〜5sccm
【0069】
触媒AHA処理条件
触媒体加熱用電源116の電圧を調節して、加熱触媒体104を抵抗とする抵抗加熱により、加熱触媒体104の温度を所定温度(約1600〜1800℃、ここでは約1700℃に設定)に保つ。
【0070】
加熱触媒体104が酸化され劣化するのを防止するために、加熱触媒体104を加熱している間は触媒ノズル101内に常時水素系キャリアガスを供給する。処理後は、加熱触媒体104の酸化劣化が起こらない温度まで加熱触媒体104の温度が下がった後に水素系キャリアガスの供給を停止する。
【0071】
触媒ノズル101内の流量と圧力、サセプタ温度を次の所定の値に制御する。高温の水素系活性種を多量に発生させるために、水素系キャリアガス流量(混合ガスの場合、水素の比率は80〜90モルパーセント)を多くし、例えば300〜1000sccmとする。
チャンバ内圧力:10〜50Pa程度、例えば30Paに設定。
サセプタ温度:基板温度が300〜400℃になるように設定。
【0072】
以下、本発明の好ましい実施の形態を具体的に例示する。なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものでなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形することができる。
【0073】
例1.非バイアス触媒CVD及びAHA処理の実施の形態
図3(A)は、単一の触媒ノズル101を用いて非バイアス触媒CVD及びAHA処理を行う場合の、実施の形態の装置における真空チャンバ内での配置を表す概略構成図である。但し、触媒ノズル101は概略的に図示する(以下、同様)。
【0074】
真空チャンバ内で絶縁性基板121は、その支持手段であるサセプタ122の上に移動可能なように載置する。サセプタ122には、基板121を所定の温度に加熱するための赤外線ランプ123を設ける。直方体形の触媒ノズル101は、ガス導出部の断面がガス導出口117に向けて縮小していく絞り型のガス導出部をもつ。触媒ノズル101は絶縁性基板121の上部に配置し、ガス導出口117の直下の適当な距離(30〜50mm)を隔てた位置に絶縁性基板121が来るように調節する。
【0075】
加熱触媒体の酸化による劣化を防止するために常時水素系キャリアガスを流し、絶縁性基板を往復移動又は回転移動させながら、次の<工程1>〜<工程7>を行うのがよい。この時に、絶縁性基板の下側から赤外線ランプ123で加熱し、絶縁性基板の温度を300〜400℃に保つようにしてもよい。
【0076】
<工程1 高温の水素系活性種による絶縁性基板のクリーニング>
触媒ノズル101内の複数段の加熱触媒体104により水素系キャリアガスの少なくとも一部を触媒反応又は熱分解反応させ、これによって発生した高温の水素系活性種を絶縁性基板121に吹き付けて、水、酸素、二酸化炭素、有機汚染物等を除去する。絶縁性基板121を往復移動又は回転移動させることで、絶縁性基板121の全面をクリーニングする。
【0077】
<工程2 窒化シリコン成膜>
連続して次に、水素系キャリアガスにシランSiH4及びアンモニアNH3を適量比率混合して導入し、少なくともその一部を加熱触媒体104により触媒反応又は熱分解反応させ、発生したラジカル、イオン等の堆積種を絶縁性基板121上に堆積させて、所定膜厚50〜200nmの窒化シリコン膜を形成する。絶縁性基板121を往復移動又は回転移動させることで、絶縁性基板121の全面に薄膜を形成する。
【0078】
<工程3 酸化シリコン成膜>
連続して次に、水素系キャリアガスにシランSiH4とHe希釈O2を適量比率混合して導入し、少なくともその一部を加熱触媒体104により触媒反応又は熱分解反応させ、発生したラジカル、イオン等の堆積種を絶縁性基板121上に堆積させて、所定膜厚50〜100nmの酸化シリコン膜を形成する。絶縁性基板121を往復移動又は回転移動させることで、絶縁性基板121の全面に薄膜を形成する。
【0079】
<工程4 多結晶シリコン成膜>
連続して次に、水素系キャリアガスにシランSiH4を適量比率混合して導入し、少なくともその一部を加熱触媒体104により触媒反応又は熱分解反応させ、発生したラジカル、イオン等の堆積種を絶縁性基板121上に堆積させて、所定膜厚50〜100nmの高結晶化率多結晶シリコン膜を形成する。絶縁性基板121を往復移動又は回転移動させることで、絶縁性基板121の全面に薄膜を形成する。
【0080】
この時、反応ガスに例えばSnH4を加えておくと、シリコン膜の中に錫を混入させることができる。このようにして、錫あるいは他の四族元素を1×1018〜1×1020atoms/cc含有させることにより、多結晶シリコン結晶粒界に存在する結晶不整の低減及び膜ストレスの低減による移動度向上を図ってもよい。
【0081】
<工程5 高温の水素系活性種を多結晶シリコン膜に吹き付けて触媒AHA処理>
連続して次に、水素系キャリアガスの少なくとも一部を触媒反応又は熱分解反応させ、これによって発生した高温の水素系活性種を絶縁性基板121上に堆積した高結晶化率多結晶シリコン膜に吹き付けて、残存するアモルファス構造シリコンをエッチングしてさらに高結晶化率多結晶シリコン膜化する、いわゆる触媒AHA処理を行う。
【0082】
以上のシーケンス以外に、必要に応じて、<工程5>に続いて<工程6>、<工程7>として上記の<工程3>、<工程2>と同じ工程を行い、ゲート絶縁膜用の酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層膜を形成してもよい。
【0083】
図3(B)は、4つの触媒ノズルを用いるマルチ触媒ノズル構成で、非バイアス触媒CVD及びAHA処理を行う実施の形態の装置における、真空チャンバ内での位置関係を表す概略構成図である。
【0084】
図3(A)と同様、真空チャンバ内で絶縁性基板121は、赤外線ランプ123を備えたサセプタ122の上に移動可能なように載置する。4つの触媒ノズル110、120、130、140を絶縁性基板121の上部に配置し、それぞれのガス導出口117の直下の適当な距離(30〜50mm)を隔てた位置に絶縁性基板121が来るように調節する。
【0085】
図3(B)の装置を用いて、例えば上述の<工程1>〜<工程4>の4つの工程を絶縁性基板121に施す場合、4つの触媒ノズル110、120、130、140のそれぞれに、上述の<工程1>〜<工程4>の4つの工程を割り振っておく。そして、これら4つの触媒ノズルを作動させながら、絶縁性基板121を左から右へ一方向に徐々に移動させる。その結果、絶縁性基板121上の各点は、4つの触媒ノズル110、120、130、140の真下を順次通過することになり、<工程1>〜<工程4>の処理を順次受けることになる。
【0086】
すなわち、触媒ノズル110には水素系キャリアガスを導入し、発生した高温の水素系活性種で絶縁性基板121をクリーニングする役割をもたせる。触媒ノズル120には水素系キャリアガスにシランとアンモニアを適量混合して導入し、絶縁性基板121上に窒化シリコン膜を形成する役割をもたせる。触媒ノズル130には水素系キャリアガスにシランとHe希釈O2を適量混合して導入し、酸化シリコン膜を形成する役割をもたせる。触媒ノズル140には水素系キャリアガスにシランを適量混合して導入し、高結晶化率多結晶シリコン膜を形成する役割をもたせる。
【0087】
引き続き、<工程5>の触媒AHA処理を行うには、他のノズルは休止させた状態で、絶縁性基板121を再び触媒ノズル110の真下を通過させる。触媒ノズル110には多量の水素系キャリアガスが導入されているから、絶縁性基板121上に堆積した高結晶化率多結晶シリコン膜に多量の水素系活性種を吹き付けて、触媒AHA処理を行うことができる。
【0088】
また、<工程5>と同時に<工程6>と<工程7>を行い、絶縁性薄膜を積層するには、触媒ノズル120に酸化シリコン膜を形成する役割をもたせ、触媒ノズル130に窒化シリコン膜を形成する役割をもたせて、絶縁性基板121を左から右へ一方向に徐々に移動させる。この時、休止中の触媒ノズル140には、加熱触媒体の酸化劣化防止のために水素系キャリアガスを流しておく。
【0089】
上記のように、休止中の触媒ノズルは、休止中といっても水素系キャリアガスが流れ、高温の水素系活性種を生成しているので、絶縁性基板表面や成膜中の半導体薄膜又は絶縁性膜表面をクリーニングする働きを有する。
【0090】
なお、マルチ触媒ノズル構成をとる場合、各ノズルからの反応ガスが互いに干渉し合わないように、ノズル間に十分な間隔aをとることが必要である。aは、ノズル寸法、基板寸法、真空チャンバの寸法等に基づいて決定する。
【0091】
例2.電場印加型触媒CVD及びAHA処理の実施の形態
図4は、単一触媒ノズル又はマルチ触媒ノズルを用いて電場印加型触媒CVD及びAHA処理を行う場合の、実施の形態の装置における真空チャンバ内での配置を表す概略構成図である。図4の(A)及び(B)の装置は、それぞれ、触媒ノズル101又は110〜140と絶縁性基板121の間に電場を印加するための手段131(電源131a、電極131b)を図3の(A)及び(B)の装置に付加したものである。
【0092】
単一触媒ノズルの場合は、印加する電圧はグロー放電開始電圧未満であって、1.直流電圧(例えば500V)
2.低周波電圧(例えば500Vp-p/400kHz)
3.高周波電圧(例えば500Vp-p/13.56MHz)
4.低周波電圧に高周波電圧を重畳させた電圧(例えば500Vp-p/400kHz+100Vp-p/13.56MHz)
5.直流電圧に低周波電圧を重畳させた電圧(例えば500V+200Vp-p/400kHz)
6.直流電圧に高周波電圧を重畳させた電圧(例えば500V+200Vp-p/13.56MHz)
7.直流電圧に低周波電圧高周波電圧を重畳させた電圧(例えば500V+200Vp-p/400kHz+100Vp-p/13.56MHz)
等である。
【0093】
マルチ触媒ノズルの場合は、印加する電圧はグロー放電開始電圧未満であって、
1.直流電圧(例えば500V)
2.低周波電圧(例えば500Vp-p/400kHz)
3.高周波電圧(例えば500Vp-p/13.56MHz)
4.低周波電圧に高周波電圧を重畳させた電圧(例えば500Vp-p/400kHz+100Vp-p/13.56MHz)
5.直流電圧に低周波電圧を重畳させた電圧(例えば500V+200Vp-p/400kHz)
6.直流電圧に高周波電圧を重畳させた電圧(例えば500V+200Vp-p/13.56MHz)
等である。
【0094】
グロー放電開始電圧以下の任意の電場を印加することで、イオン、ラジカル等の堆積種に指向性の運動エネルギーを付与して、原料ガスの利用効率を向上し、高効率/高速成膜化を可能にする。また、シリコン原子の電子スピンを電場と相互作用させて一定の方向を向かせ、冷却されて凝固する際に、一定の方向性を持って結晶化するようにさせることで、結晶粒がそろった高移動度/高品質の半導体膜や高絶縁性で高品質の絶縁性膜(酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸窒化シリコン膜等)を得るのが、電場印加型触媒CVDの特徴である。
【0095】
更に、水素系キャリアガスの少なくとも一部を加熱触媒体により触媒反応又は熱分解反応させ、これによって発生した高温の水素系活性種によってAHA処理を行うときに、グロー放電開始電圧以下の任意の電場を印加することで、高温の水素系活性種に指向性の運動エネルギーを付与して、熱エネルギーを効率よく薄膜に移動させることによってAHA処理の効果を高めるのが、電場印加型触媒AHA処理の特徴である。
【0096】
つまり、形成したシリコン膜に含まれるアモルファス構造の部分をエッチングして結晶化率を高め、大粒径多結晶シリコン膜とし、その結晶粒界に存在する結晶不整及び内部応力を低減させ、高移動度/高品質の多結晶シリコン膜を形成する。また絶縁性基板表面に吸着している水、窒素、酸素、二酸化炭素、有機汚染物等を物理的作用(衝撃による脱着の促進)や化学的作用(還元作用)によって除去し、形成された薄膜表面をクリーニングする。
【0097】
図5の装置は、真空チャンバ201の外部に電源233と電極234を設け、電場の作用下で電場印加型触媒CVD及びAHA処理を行う実施の形態の装置の概略構成図である。
【0098】
図6〜8の装置は、上記した触媒ノズル101と同様の触媒ノズル41とサセプタ45を電極として真空チャンバ44の内部に電場を形成するようにした装置である。図6は可変の直流電源(1kV以下、例えば500V)49に接続して直流バイアス電圧を印加する場合である。図7は直流電圧に高周波交流電圧を重畳させた電圧を印加する場合で、電場印加用の高周波交流電源315、ローパスフィルター(LPF)313、整合回路(MC)314を設ける。図8は直流電圧に低周波交流電圧を重畳させた電圧を印加する場合で、図7の高周波交流電源の代わりに低周波交流電源325を設ける。
【0099】
図6〜8の装置では、ガス導入管から導入された水素系キャリアガスと原料ガスからなるガス40は、触媒ノズル42内の加熱触媒体46での触媒反応及び熱分解反応により、反応種50となり絶縁性基板1に吹き付けられる。加熱触媒体46の両端子は直流又は交流の触媒体加熱用電源48に接続され、この電源からの通電により所定温度に加熱される。
【0100】
更に、反応種50の絶縁性基板1への流れを遮りうるようにシャッター47を設け、反応種50の生成が安定するまではシャッター47を閉じ、反応種50の生成が安定した後にシャッター47を開いて反応種50が絶縁性基板1に到達するようにして、高品質の膜を形成できるようにする。
【0101】
図9の(a)と(d)、(b)と(e)、(c)と(f)は、それぞれ、図6〜8の装置で印加される電圧の例である。いずれの場合も、触媒ノズル42が高電位、絶縁性基板1が低電位になるようにバイアス電圧を印加して、反応種50を効率よく絶縁性基板1へ導き堆積させる。例えば、(a)、(b)、(c)の場合は、触媒ノズルが正電位(+500V)、基板が負電位(0V)、(d)、(e)、(f)の場合は、触媒ノズルが正電位(0V)、基板が負電位(−500V)となり、いずれも正バイアス印加であって、発生する反応種を効率良く基板へ導き、堆積させる。
【0102】
なお、上述したのと同様に、この時に絶縁性基板1の下側からランプ加熱して絶縁性基板1を300〜400℃にしてもよい。
【0103】
成膜の工程は例1に示した<工程1>〜<工程5>又はマルチ触媒ノズル使用のプロセスに準ずる。違いは直流電圧又は交流電圧(低周波電圧又は高周波電圧又はその重畳した電圧)又は直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧を印加する事である。
【0104】
例3.磁場印加型触媒CVD及びAHA処理の実施の形態
図10の(A)及び(B)の装置は、それぞれ、真空チャンバ201の外部に永久磁石231又は電磁石232を設け、磁場の作用下で磁場印加型触媒CVD及びAHA処理を行う実施の形態の装置の概略構成図である。
【0105】
シリコン原子の電子スピンを磁場と相互作用させて一定の方向を向かせ、冷却されて凝固する際に、一定の方向性を持って結晶化するようにさせることで、結晶粒がそろった高移動度/高品質の半導体膜や高絶縁性で高品質の絶縁性膜(酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸窒化シリコン膜等)を得るのが、磁場印加型触媒CVDの特徴である。
【0106】
なお、上述したのと同様に、この時に絶縁性基板の下側からランプ加熱して絶縁性基板を300〜400℃にしてもよい。
【0107】
成膜の工程は例1に示した<工程1>〜<工程5>又はマルチ触媒ノズル使用のプロセスに準ずる。違いは真空容器の外部に設置した永久磁石231又は電磁石232による適当な強さ、例えば0.32テスラの磁場を印加する事である。
【0108】
例4.電場及び磁場印加型触媒CVD及びAHA処理の実施の形態
図11の装置は、触媒ノズル101と絶縁性基板100の間に電場を印加するための手段233、234を設け、さらに、真空容器の外部に永久磁石231を設け、電場と磁場の両方の作用下で触媒CVD及びAHA処理を行う実施の形態の装置の概略構成図である。加える電圧は、直流電圧又は交流電圧(低周波電圧又は高周波電圧又はその重畳した電圧)又は直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧である。
【0109】
グロー放電開始電圧以下の任意の電場を印加することで、イオン、ラジカル等の堆積種に指向性の運動エネルギーを付与して、原料ガスの利用効率を向上し、高効率/高速成膜化を可能にする。また、シリコン原子の電子スピンを電場及び磁場と相互作用させて一定の方向を向かせ、冷却されて凝固する際に、一定の方向性を持って結晶化するようにさせることで、結晶粒がそろった高移動度/高品質の半導体膜や高絶縁性で高品質の絶縁性膜(酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸窒化シリコン膜等)を得るのが、電場及び磁場印加型触媒CVDの特徴である。
【0110】
更に、水素系キャリアガスの少なくとも一部を加熱触媒体により触媒反応又は熱分解反応させ、これによって発生した高温の水素系活性種によって触媒AHA処理を行うときに、グロー放電開始電圧以下の任意の電場を印加することで、高温の水素系活性種に指向性の運動エネルギーを付与して、熱エネルギーを効率よく薄膜に移動させることによってAHA処理の効果を高める電場印加型触媒AHA処理の特徴は、電場及び磁場印加型触媒AHA処理でも有効である。
【0111】
つまり、形成したシリコン膜に含まれるアモルファス構造の部分をエッチングして結晶化率を高め、大粒径多結晶シリコン膜とし、その結晶粒界に存在する結晶不整及び内部応力を低減させ、高移動度/高品質の多結晶シリコン膜を形成する。また絶縁性基板表面に吸着している水、窒素、酸素、二酸化炭素、有機汚染物等を物理的作用(衝撃による脱着の促進)や化学的作用(還元作用)によって除去し、形成された薄膜表面をクリーニングする。
【0112】
なお、上述したのと同様に、この時に絶縁性基板の下側からランプ加熱して絶縁性基板を300〜400℃にしてもよい。
【0113】
成膜の工程は例1に示した<工程1>〜<工程5>又はマルチ触媒ノズル使用のプロセスに準ずる。違いは真空容器の外部に設置した永久磁石231による適当な強さ、例えば0.32テスラの磁場の作用下で、直流電圧又は交流電圧(低周波電圧又は高周波電圧又はその重畳した電圧)又は直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧を印加する事である。
【0114】
以下、本発明に基づく触媒CVD法による薄膜形成方法をトップゲート型多結晶シリコンCMOSTFTの製造に適用した例を図12〜図15に示す。
【0115】
ここでは、絶縁性基板1のクリーニング、薄膜の形成、触媒AHA処理はいずれも図1、図2、及び図3の(a)又は(b)に示した装置で行い、加熱触媒体104の温度は所定温度(約1600〜1800℃、例えば約1700℃)に保ち、酸化劣化防止のために、触媒ノズル101には休止中も常に水素系キャリアガスを流し続けるものとする。
【0116】
そして、水素系活性種によるクリーニング及び触媒AHA処理では、触媒ノズル内の流量と圧力、サセプタの温度を次の所定の値に制御する。
チャンバ内圧力:10〜50Pa程度、30Pa
サセプタ温度:基板温度が300〜400℃になるように設定。
水素系キャリアガス流量(混合ガスの場合、水素の割合は80〜90mol%):300〜1000sccm
【0117】
また、成膜中は、触媒ノズル内の流量と圧力、サセプタの温度を次の所定の値に制御する。
チャンバ内圧力:0.1〜10Pa程度、1Pa
サセプタ温度:基板温度が300〜400℃になるように設定。
水素系キャリアガス流量(混合ガスの場合、水素の比率は80〜90mol%):100〜200sccm
【0118】
まず、図12の(1)に示すように、絶縁性基板1を加熱触媒体104によって生成した水素系活性種によってクリーニングする。絶縁性基板1の材質は、TFT形成工程での絶縁性基板1のプロセス温度を考慮して選択する。
【0119】
触媒CVD法を採用すると、例えば多結晶シリコン膜の形成工程における基板温度は、300〜400℃程度の比較的低温に維持される。このような場合には、安価なホウケイ酸ガラス基板やアルミノケイ酸ガラス基板を使用できる。これらのガラス基板では、大きな基板を使用することがコスト的に可能であり、例えば600mm×500mmの大きさで0.5〜1.1mmの厚さのものが使用できる。可能なら、耐熱性樹脂基板を用いてもよい。
【0120】
TFT形成工程において、基板温度が600〜1000℃程度の比較的高温となる場合は、石英ガラス、結晶化ガラス等の耐熱性ガラス基板を用いる。耐熱性ガラス基板は、例えば、直径150〜300mmの大きさで、700〜800μmの厚さとする。
【0121】
次に、図12の(2)に示すように、絶縁性基板1の少なくともTFT形成領域に、触媒CVD法で保護用の窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜の積層膜からなる下地保護膜100を形成する。条件等は、次の通りである。
【0122】
窒化シリコン(Si34)膜は、50〜200nmの厚さに形成する。
2流量:100〜200sccm
SiH4流量:1〜5sccm
NH3流量:5〜10sccm
【0123】
酸化シリコン(SiO2)膜は、50〜100nmの厚さに形成する。
2流量:100〜200sccm
SiH4流量:1〜5sccm
He希釈O2流量:0.1〜0.5sccm
【0124】
窒化シリコン膜は、絶縁性基板1としてホウケイ酸ガラス基板又はアルミノケイ酸ガラス基板を用いた場合、ナトリウムイオンが絶縁性基板1から薄膜側へ侵入してくるのを阻止するためのものである。したがって、基板1として合成石英ガラスを使用する場合には、窒化シリコン膜は不要である。
【0125】
次いで、図12の(3)に示すように、触媒CVD法によって多結晶シリコン膜7を50〜100nmの厚さに形成する。各ガスの流量は次の通りである。
2流量:100〜200sccm
SiH4流量:1〜5sccm
【0126】
周期表IV族元素、例えば錫を1018〜1020atoms/ccドープした多結晶シリコン膜7を50〜100nmの厚さに形成することもできる。この時の各ガスの流量は次の通りである。
2流量:100〜200sccm
SiH4流量:1〜5sccm
SnH4流量:1〜5sccm
【0127】
次に、図13の(4)に示すように、絶縁性基板1上に形成された多結晶シリコン膜7を水素系活性種によって触媒AHA処理し、多結晶シリコン膜7を高結晶化膜化する。
【0128】
続いて、多結晶性シリコン膜7をソース領域、チャンネル領域、及びドレイン領域とするMOSTFTの作製を行なう。
【0129】
まず、nMOSTFT用のチャンネル領域の不純物濃度を制御してしきい値(Vth)を最適化するために、図13の(5)に示すように、pMOSTFT部をフォトレジスト9でマスクし、イオン注入又はイオンドーピングによりp型不純物イオン(例えばボロンイオンB+)10を例えば5×1011atoms/cm2のドーズ量でドーピングし、1×1017atoms/ccのアクセプタ濃度に設定し、多結晶シリコン膜7の導電型をp型化した多結晶性シリコン膜11とする。
【0130】
更に、pMOSTFT用のチャンネル領域の不純物濃度を制御してしきい値(Vth)を最適化するために、図13の(6)に示すように、今度はnMOSTFT部をフォトレジスト12でマスクし、イオン注入又はイオンドーピングによりn型不純物イオン(例えば燐イオンP+)13を例えば1×1012atoms/cm2のドーズ量でドーピングし、2×1017atoms/ccのドナー濃度に設定し、多結晶性シリコン膜7の導電型をn型化した多結晶性シリコン膜14とする。
【0131】
次に、図14の(7)に示すように、触媒CVD等によりゲート絶縁膜用の酸化シリコン膜(50nm厚)8を形成した後、ゲート電極材料としてのリンドープド多結晶シリコン膜15を例えば2〜20sccmのPH3及び20sccmのSiH4の供給下での上記と同様の触媒CVD法によって厚さ例えば400nm厚に堆積させる。
【0132】
次に、図14の(8)に示すように、フォトレジスト16を所定パターンに形成し、これをマスクにしてリンドープド多結晶シリコン膜15をゲート電極形状にパターニングし、更に、フォトレジスト16の除去後に図14の(9)に示すように、例えば触媒CVD等により酸化シリコン膜17を20nm厚に形成する。
【0133】
次いで、図14の(10)に示すように、pMOSTFT部をフォトレジスト18でマスクし、イオン注入又はイオンドーピングによりn型不純物イオン(例えば燐イオンP+)19を例えば1×1015atoms/cm2のドーズ量でドーピングし、2×1020atoms/ccのドナー濃度に設定し、nMOSTFTのn+型ソース領域20及びドレイン領域21をそれぞれ形成する。
【0134】
次いで、図15の(11)に示すように、nMOSTFT部をフォトレジスト22でマスクし、イオン注入又はイオンドーピングによりp型不純物イオン(例えばボロンイオンB+)23を例えば1×1015atoms/cm2のドーズ量でドーピングし、2×1020atoms/ccのアクセプタ濃度に設定し、pMOSTFTのp+型ソース領域24及びドレイン領域25をそれぞれ形成する。この後に、N2中、約900℃で5分間程度のアニールにより、各領域にドーピングされた不純物イオンを活性化させ、各々を設定された不純物キャリア濃度に設定する。
【0135】
次いで、上記したと同様の触媒CVD法によって、図15の(12)に示すように、全面にオーバーコート絶縁膜を形成する。つまり、まず、水素系キャリアガス100〜200sccmを共通として、1〜5sccmのSiH4と0.1〜0.5sccmのHe希釈のO2との供給下で酸化シリコン膜26を例えば50nm厚に形成し、次に、1〜5sccmのSiH4と5〜20sccmのPH3と0.1〜0.5sccmのHe希釈のO2との供給下でフォスフィンシリケートガラス(PSG)膜27を例えば400nm厚に形成し、更に、1〜5sccmのSiH4と5〜10sccmのNH3との供給下で窒化シリコン膜28を例えば200nm厚に形成して、積層する。
【0136】
次いで、図15の(13)に示すように、上記の絶縁膜の所定位置にコンタクト窓開けを行う。即ち、汎用フォトリソグラフィ及びエッチング技術によりnMOSTFT及びpMOSTFTのゲート、ソース、ドレイン電極窓開けをフォトレジストパターンで形成し、CF4、SF6等でパッシベーション用窒化シリコン膜をプラズマエッチングし、酸化シリコン膜及びPSG膜をフッ酸系エッチング液でエッチングし、有機溶剤等でフォトレジストを洗浄除去して、nMOSTFT及びpMOSTFTのゲート、ソース、ドレイン領域を露出形成する。
【0137】
次いで、各コンタクトホールを含む全面に1%Si入りアルミニウムなどの電極材料をスパッタ法等で150℃で1μmの厚みに堆積し、これをパターニングして、pMOSTFT及びnMOSTFTのそれぞれのソース電極又はドレイン電極29(S又はD)とゲート取出し電極又は配線30(G)を形成し、トップゲート型の各CMOSTFTを形成する。この後に、フォーミングガス中で400℃で1時間水素化処理及びシンター処理をする。尚、触媒CVD法により、アルミニウム化合物ガス(例えばAlCl3)を供給し、アルミニウムを形成してもよい。
【0138】
なお、上記のゲート電極の形成に代えて、全面にMo−Ta合金等の耐熱性金属のスパッタ膜(100〜500nm厚)を形成し、汎用フォトリソグラフィ及びエッチング技術により、nMOSTFT及びpMOSTFTのゲート電極を形成してよい。
【0139】
以上に説明した実施の形態は、本発明の技術的思想に基づいて更に変形が可能であることは言うまでもない。
【0140】
例えば、図1、2に示した触媒ノズルの例では、加熱触媒体は流れ方向に一列に配置されているが、これを変更して複数列の加熱触媒体を配置してもよい。要は、ガスの流れを制限して、ガスが加熱触媒体付近を必ず通過した後、真空チャンバに導出されるようになっていればよい。
【0141】
また、実施の形態の例1では、基板全体に多結晶シリコン膜を形成するに際し、触媒ノズルを固定し、触媒ノズルの作用が基板全体に及ぶように基板を移動させた。基板が比較的小さい場合には、基板を移動させる方が簡便である。しかし、基板が大きい場合、基板を移動させると真空チャンバが大きくなりすぎることがある。このような場合には、逆に、基板を固定し、触媒ノズルを移動させるようにしてもよい。
【0142】
【発明の作用効果】
本発明によれば、水素系ガス及び/又は原料ガスの流れ方向(流路)に少なくとも1段の加熱触媒体を内蔵しかつ長方形状のガス導出口に向けて断面が縮小した絞り型構造を有する触媒ノズルをチャンバ内に少なくとも1個設置し、そのガス導出口から水素系活性種、活性堆積種を導出して基体に作用させ、第1段階で高温の水素系活性種を吹き付けてクリーニングし、第2段階で錫又は他のIV族元素含有又は非含有の半導体微粒子を吹き付けて半導体薄膜を積層形成し、第3段階で高温の水素系活性種を吹き付けて触媒AHA処理するので、次の(a)〜()項の顕著な作用効果を奏することができる。
【0143】
(a)触媒ノズル内で、水素系ガスと原料ガスとの混合、及びこれらのガスと加熱触媒体との接触が十分となり、加熱触媒体による触媒反応及び熱分解反応が十分に行われるので、アモルファスシリコン成分や微結晶シリコン成分が極めて少なく、結晶化率の高い高移動度で高品質の多結晶シリコン膜等の半導体薄膜を形成することができる。
【0144】
(b)加熱触媒体による触媒反応及び熱分解反応で水素系ガスから発生した高温の水素系活性種は、触媒ノズルから導出後、これに対向した基体に衝突するのみですぐに排出され、チャンバの内壁や内部治具に衝突しないので、それらに吸着している水、酸素、二酸化炭素、窒素等のガスアウトがなく、たとえ高温の水素系活性種が基体で反射してチャンバの内壁や内部治具に衝突してもそのエネルギーが弱いので、酸素等のガスアウトがない。この結果、形成された多結晶シリコン膜等の半導体薄膜中の酸素等の濃度低減が可能となるので、高移動度、高品質の多結晶シリコン膜等の半導体薄膜が形成される。
【0145】
(c)触媒ノズル内で、水素系キャリアガスと原料ガスとの混合、及びこれらのガスと加熱触媒体との接触が十分となり、接触触媒反応及び熱分解反応が十分に行われるので、高結晶化率の半導体薄膜を形成できると共に、原料ガスの利用効率が高く、成膜速度が高いので、生産性向上でのコストダウンを実現できる。
【0146】
(d)高価な高純度の加熱触媒体及び触媒体支持ワイヤの大幅な削減、消費電力の大幅な削減などによる大幅なコストダウンが可能になる。
【0147】
(e)触媒ノズルのガス導出口を閉じてチャンバクリーニングすると、加熱触媒体の寿 命が長くなり、メンテナンス工数が削減され、歩留まり、品質、及び生産性が向上し、 コストダウンが可能になる。
(f)触媒ノズルは、長方形状のガス導出口を有しているので、ラインビーム状に堆積 種を吹き付けて大面積に積層するのに好適であり、またこのガス導出口に向けて断面が 縮小した絞り型構造であるため、水素系キャリアガス及び原料ガスと加熱触媒体との接 触反応促進と、堆積種の高密度堆積化及び大粒径化を図れることに加えて、水素系活性 種が基体以外に飛び出しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による触媒ノズルの概略斜視図である。
【図2】同、加熱触媒体とその支持部を示す概略斜視図である。
【図3】同、非バイアス触媒CVD及び触媒AHA処理を行う実施の形態の装置の概略構成図である。
【図4】同、電場印加型触媒CVD及び触媒AHA処理を行う実施の形態の装置の概略構成図である。
【図5】同、実施の形態の装置の概略構成図である(外部電場)。
【図6】同、実施の形態の装置の概略構成図である(直流電圧を印加する場合)。
【図7】同、実施の形態の装置の概略構成図である(直流電圧に高周波交流電圧を重畳した電圧を印加する場合)。
【図8】同、実施の形態の装置の概略構成図である(直流電圧に低周波交流電圧を重畳した電圧を印加する場合)。
【図9】同、電場印加型触媒CVDにおいて印加する電圧波形の例を示すグラフである。
【図10】同、磁場印加型触媒CVD及び触媒AHA処理を行う実施の形態の装置の概略構成図である。
【図11】同、電場及び磁場印加型触媒CVD及び触媒AHA処理を行う実施の形態の装置の概略構成図である。
【図12】同、実施の形態による薄膜形成方法を適用したCMOSTFTの製造プロセスを工程順に示す断面図である。
【図13】同、製造プロセスを工程順に示す断面図である。
【図14】同、製造プロセスを工程順に示す断面図である。
【図15】同、製造プロセスを工程順に示す断面図である。
【図16】減圧下でのガス分子の運動を表す概略断面図である。
【図17】シリコン半導体膜のラマンスペクトルを比較して示すグラフである。
【符号の説明】
40…原料ガス、42…触媒ノズル、44…真空チャンバ、45…サセプタ、
46…加熱触媒体、47…シャッター、48…触媒体加熱用電源、
49…可変直流電源、50…反応種、
100…窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜からなる下地保護膜、
101、110、120、130、140…触媒ノズル、
102…冷却ジャケット、103…冷却水等の冷媒、
104…加熱触媒体、105…触媒ノズルの本体容器(石英ガラス製)、
106…触媒ノズルの支持部(Mo、W、Ta等)、
107…ガス混合部、108…ガス導入管、109…導入ガス、
111…ガス吹き出し穴、112…石英ガラス製支持台、
113…石英ガラス製支持棒、114…加熱触媒体支持ワイヤ、
115…端子、116…触媒体加熱用電源、117…ガス導出口、
118…反応種、121…絶縁性基板、122…サセプタ、
123…赤外線ランプ、231…磁極、232…電磁石、
233…電源、234…電極、235…絶縁膜、
313…ローパスフィルター(LPF)、314…整合回路(MC)、
315…高周波交流電源、325…低周波交流電源

Claims (18)

  1. 基体上に半導体薄膜を形成するに際し、
    水素系ガス及び/又は原料ガスの流路と、この流路に配された加熱触媒体とを内蔵し 、かつ、長方形状のガス導出口に向けて断面が縮小した絞り型構造に形成されている触 媒ノズルをチャンバ内に設け、
    前記チャンバ内において、
    前記水素系ガスを前記加熱触媒体に接触させることによって水素系活性種を生成させ 、この水素系活性種を前記触媒ノズルから導出して前記基体に作用させる第1段階と、
    少なくとも前記原料ガスを前記加熱触媒体に接触させることによって活性堆積種を生 成させ、この活性堆積種を前記触媒ノズルから導出して前記基体上に半導体薄膜として 堆積させる第2段階と、
    前記水素系ガスを前記加熱触媒体に接触させることによって前記水素系活性種を生成 させ、この水素系活性種を前記触媒ノズルから導出して前記半導体薄膜に作用させる第 3段階と
    を有する、半導体薄膜の形成方法。
  2. 冷却された支持体内に前記水素系ガスとしての水素系キャリアガス及び/又は前記原料ガスの流動方向に沿って少なくとも1段の前記加熱触媒体を内蔵した前記触媒ノズルを真空チャンバ内に少なくとも1個設置し、絶縁性基板を往復又は回転移動させながら、前記第1段階で前記水素系活性種を吹き付けて前記絶縁性基板をクリーニングし、前記第2段階で錫又は他のIV族元素含有又は非含有の半導体微粒子からなる前記活性堆積種を吹き付けて前記半導体薄膜を触媒CVD(Chemical Vapor Deposition)により形成し、前記第3段階で前記水素系活性種を吹き付けて前記半導体薄膜を触媒AHA(Atomic Hydrogen Anneal)処理することにより、高移動度、高品質の半導体薄膜を形成する、請求項1に記載した半導体薄膜の形成方法。
  3. 前記触媒ノズルにおいて、ガス導入部と前記加熱触媒体とガス導出部とをこの順に設け、前記ガス導出部の直下に前記基体を配置する、請求項1に記載した半導体薄膜の形成方法。
  4. タングステン、トリア含有タングステン、モリブデン、白金、パラジウム、バナジウム、シリコン、アルミナ、金属を付着したセラミックス、及び炭化ケイ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の材料によって、前記加熱触媒体となる触媒体を形成し、この触媒体を通電によって抵抗加熱する、請求項1に記載した半導体薄膜の形成方法。
  5. 前記第1段階と前記第2段階との間、又は/及び、前記第3段階の後に、前記原料ガスを前記加熱触媒体に接触させることによって生成する活性堆積種を前記触媒ノズルから導出して前記基体上に絶縁性薄膜を積層する付加段階を有する、請求項1に記載した半導体薄膜の形成方法。
  6. 電場又は/及び磁場の作用下で、前記第2段階又は前記付加段階でバイアス触媒CVDを行い、前記第3段階又は前記第1段階でバイアス触媒AHA処理を行う、請求項2又はに記載した半導体薄膜の形成方法。
  7. 前記触媒ノズルとして単一触媒ノズル又はマルチ触媒ノズルを用い、前記単一触媒ノズルで前記第1、第2、第3段階及び付加段階をそれぞれ行い、前記マルチ触媒ノズルの各触媒ノズルを並置して前記第1、第2、第3段階及び付加段階をそれぞれ行う、請求項2又はに記載した半導体薄膜の形成方法。
  8. 電場又は/及び磁場の作用下で、前記単一触媒ノズル又はマルチ触媒ノズルを作動させる、請求項に記載した半導体薄膜の形成方法。
  9. 水素系ガス及び/又は原料ガスの流路と、この流路に配された加熱触媒体とを内蔵し、かつ、長方形状のガス導出口に向けて断面が縮小した絞り型構造に形成されている触媒ノズル。
  10. 冷却された支持体内に前記水素系ガスとしての水素系キャリアガス及び/又は前記原料ガスの流動方向に沿って少なくとも1段の前記加熱触媒体を内蔵した、請求項に記載した触媒ノズル。
  11. ガス導入部と前記加熱触媒体とガス導出部とをこの順に設けた、請求項に記載した触媒ノズル。
  12. タングステン、トリア含有タングステン、モリブデン、白金、パラジウム、バナジウム、シリコン、アルミナ、金属を付着したセラミックス、及び炭化ケイ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の材料によって、前記加熱触媒体となる触媒体を形成し、この触媒体を通電によって抵抗加熱する、請求項に記載した触媒ノズル。
  13. 基体上に半導体薄膜を形成するための装置であって、
    水素系ガス及び/又は原料ガスの流路と、この流路に配された加熱触媒体とを内蔵し 、かつ、長方形状のガス導出口に向けて断面が縮小した絞り型構造に形成されている触 媒ノズルと、
    前記触媒ノズルのガス導出口に対向した基体支持手段と
    がチャンバ内に設けられている、半導体薄膜の形成装置。
  14. 冷却された支持体内に前記水素系ガスとしての水素系キャリアガス及び/又は前記原料ガスの流動方向に沿って少なくとも1段の前記加熱触媒体を内蔵した前記触媒ノズルが真空チャンバ内に少なくとも1個設置されると共に、絶縁性基板を往復又は回転移動させながら前記触媒ノズルから水素系活性種又は/及び活性堆積種が前記絶縁性基板に吹き付けられるように構成した、請求項13に記載した半導体薄膜の形成装置。
  15. 前記触媒ノズルにおいて、ガス導入部と前記加熱触媒体とガス導出部とがこの順に設けられ、前記ガス導出部の直下に前記基体支持手段が配置されている、請求項13に記載した半導体薄膜の形成装置。
  16. タングステン、トリア含有タングステン、モリブデン、白金、パラジウム、バナジウム、シリコン、アルミナ、金属を付着したセラミックス、及び炭化ケイ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の材料によって、前記加熱触媒体となる触媒体が形成され、この触媒体が通電によって抵抗加熱される、請求項13に記載した半導体薄膜の形成装置。
  17. 電場又は/及び磁場を前記チャンバ内に印加する印加手段を有する、請求項13に記載した半導体薄膜の形成装置。
  18. 前記触媒ノズルが、単一触媒ノズル、又は、各触媒ノズルを並置したマルチ触媒ノズルからなる、請求項13に記載した半導体薄膜の形成装置。
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