JP3772406B2 - 動電型電気音響変換器用磁気回路の組立方法及びこれに用いるゲージ - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、動電型の電気音響変換器の磁気回路に関し、特に磁気回路を構成する各部品の位置関係を正確に保持して優れた外観と性能を保有せしめたスピーカを提供するための構造とその簡単な組立方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来から一般のスピーカ等に使用されている周知の構造の動電型電気音響変換器用の外磁タイプの磁気回路を、図８により実施例と共通する部品は同一の符号を使用して説明すると、磁極となる中心穴１１が穿設されたリング状の上部プレート１´と、リング状のマグネット２と、下部プレート３´及び当該下部プレート３´の中央に突設されたポール４とを同軸に組み合わせ、各部品を接着剤を用いて固着させて、前記上部プレート１とポール４との間に、磁束が放射状に貫流するリング状の磁気空隙５が形成された構造を成している。この様な外磁タイプの磁気回路Ｍ´は、同図に仮想線で示す様に、振動板２１に固定されたボイスコイル２２が、前記磁気空隙５の内部で振動可能な様に、エッジ２３を介してフレーム２４によって保持され、スピーカを形成している。
【０００３】
上記外磁タイプの磁気回路は、上部プレート１´、リング状のマグネット２、下部プレート３´及びポール４がほぼ正確に同心となるように組み立てる必要があり、これ等部品の位置関係が同心円の状態でないと外観が悪くなるだけでなく、磁気空隙５内の磁束分布が不均一となってスピーカの性能、品質に悪影響を及ぼすので、従来は同図に示すように磁気回路の下部プレート３´の、中央に突設させたポール４の周辺に、マグネット２の内径部に嵌合し得る直径の段部３１を形成し、この段部３１によって接着剤が固化するまでの間、マグネット２を正常な位置に保持させている。又、図示は省略するが、上記段部３１に代えて、マグネット２の内径部に嵌合し得る外径と、ポール４に嵌合し得る内径を有するリング状の別部材を使用することもある。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の磁気回路は、その段部３１はポール４と共に下部プレート３´の製造時に金型によって一体として鍛造されるが、段部３１の外径はマグネット２の内径に合わせて設定される必要があり、要求されるスピーカの性能に呼応してマグネット２の内径が変るごとに下部プレート３´（或いはポール４）の鍛造金型を新造しなければならないという欠点があった。又、組み立て時にマグネット２の内周縁部が下部プレート３´の段部３１に当たって、衝撃によって前記内周縁部が欠けることがあり、その破片によって動作不良が発生すると言う、解決しなければならない課題を有していた。
【０００５】
そこで、本発明は、上記した従来の問題点を解消するために、磁気回路の上部プレートについて、その構造とスピーカ製造工程中のマグネット位置決め手段とに工夫を加えることにより、段部がない下部プレートを採用し、いかなる内径のマグネットにも対応し得る構造簡単なゲージを使用して、外観良好で高信頼度のスピーカを得る事ができる磁気回路並びに当該磁気回路の製造方法を提供することを目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
該目的を達成するための本発明にいう動電型電気音響変換器用磁気回路の製造方法を、実施例の外観及び構造の説明に於いて使用する記号を用いて説明すると、本第１発明は、中央にポール (4) が突設された下部プレート (3) と、リング状のマグネット (2) と、リング状の上部プレート (1) と、からなる動電型電気音響変換器用磁気回路の組立方法であって、上部プレート (1) には、その中心穴 (11) の周囲に放射状の切り込み (12) が、各隣り合う放射状の切り込み (12) 同士の最大離隔角度が１８０度以内で少なくとも３箇所以上に形成され、ゲージ (6) は、その内径がポール (4) に嵌合する円筒部 (61) と、放射状の切り込み (12) に嵌合する円筒部 (61) 外周に形成された同形で３個以上の位置決め突起 (62) と、を有し、各位置決め突起 (62) は、ゲージ (6) の円筒部 (61) をポール (4) に嵌合させた時に、その下端部がマグネット (2) の内径より内側に位置し、その上端部がマグネット (2) の内径より外側に位置する斜辺を有し、下部プレート (3) の上にマグネット (2) を接着剤を塗布して載置する工程と、マグネット (2) の上に上部プレート (1) を接着剤を塗布して載置する工程と、ゲージ (6) の円筒部 (61) をポール (4) に嵌合させて、各位置決め突起 (62) の斜辺をマグネット (2) の内径上部に当接させて位置決めを行う工程と、を含む、動電型電気音響変換器用磁気回路の組立方法である。
【０００７】
又、第２発明は、上記第１発明の下部プレート (3) と、リング状のマグネット (2) と、リング状の上部プレート (1) からなる動電型電気音響変換器用磁気回路の組立に用いるゲージであって、下部プレート (3) は、中央にポール (4) が突設され、上部プレート (1) には、その中心穴 (11) の周囲に放射状の切り込み (12) が、各隣り合う放射状の切り込み (12) 同士の最大離隔角度が１８０度以内で少なくとも３箇所以上に形成され、ゲージ (6) は、その内径がポール (4) に嵌合する円筒部 (61) と、放射状の切り込み (12) に嵌合する円筒部 (61) 外周に形成された同形で３個以上の位置決め突起 (62) と、を有し、各位置決め突起 (62) は、ゲージ (6) の円筒部 (61) をポール (4) に嵌合させた時に、その下端部がマグネット (2) の内径より内側に位置し、その上端部がマグネット (2) の内径より外側に位置する斜辺を有する、動電型電気音響変換器用磁気回路の組立に用いるゲージ、ならびに、円筒部 (61) の内径を形成するＡ部と、３個以上の位置決め突起 (62) を有するＢ部とが、同軸に組み合わされて形成される、動電型電気音響変換器用磁気回路の組立に用いるゲージ、である。
【０００８】
【発明の実施の形態】
このような構成とした動電型電気音響変換器用磁気回路を実施するに当たっては、下部プレート３は従来例の欄で説明したマグネット位置決め用の段部がない最も簡単な形状とし、従来と同様にポール４と共に金型で一体に鍛造成型する。マグネット２は必要とされる所望の寸法で、従来と同一のものを使用する。又、上部プレート１は中心穴１１と共に放射状の切り込み１２を少なくとも３箇所以上、打ち抜きによって形成する。切り込み１２の半径方向の長さｄは、使用が想定されるマグネットの内径寸法を包含する寸法とし、円周方向の幅ｗは後述するゲージ６が嵌合可能で且つ磁気空隙５の磁束分布をあまり乱さない範囲とし、中心穴１１の周囲長さの１％〜３％程度が適当である。
【０００９】
組立に際して、上部プレート１と当該マグネット２及びポール４の相互位置関係を確保するためのゲージ６は、上部プレート１とポール４とを磁気空隙５を隔てて相互位置を設定する従来のギャップゲージと類似した構造の円筒部６１を有するＡ部と、前記上部プレート１と当該マグネット２との相互位置関係を設定する、前記上部プレート１の切り込み１２に嵌合し且つ前記マグネット２の内径に等しい寸法を具備する高さに突出させた位置決め突起６２を有するＢ部とからなり、Ｂ部は係合穴６４よってＡ部のつまみ部６３に係合させ、同軸に組み合わせて使用するようになっている。ゲージ６をこの様な構造とすることで、Ａ部は従来のギャップゲージを使用し、Ｂ部のみを治工具として準備すればよいことになる。
【００１０】
磁気回路の組み立て手順は従来と同じく下部プレート３の上にリング状のマグネット２を接着剤を塗布して載置し、当該マグネット２の上に、中心穴１１と該中心穴１１の周囲に放射状の切り込み１２が形成されたリング状の上部プレート１を同じく接着剤を塗布して載置してから、上記ゲージ６を上部プレート１とポール４との間の空隙及び上部プレート１の切り込み１２に跨がって挿入嵌合し、接着剤が固化してからゲージ６を抜去して、磁気空隙５を形成し且つマグネット２を正確な位置に保持せしめて磁気回路を完成させる。
【００１１】
【実施例】
図１は実施例の組み立て中の状態を示す説明図、図２は実施例の正面図、図３は図２におけるＸ，Ｘ方向の側面断面図である。磁気回路の基本構造は、図２〜図３に示すように、中心穴１１と該中心穴１１の周囲に長さがｄで幅がｗの放射状の切り込み１２が３箇所形成されたリング状の上部プレート１と、リング状のマグネット２と、下部プレート３及び当該下部プレート３の中央に突設させたポール４とを同心円状に組み合わせて、前記上部プレート１とポール４との間にリング状の磁気空隙５が形成された構造となっている。この様な磁気回路Ｍは、図３に、又、従来例を示す図８に仮想線で示されたようにフレーム２４の底部に固定され、振動板２１に固定されたボイスコイル２２が、前記磁気空隙５の内部で振動可能な様に、エッジ２３を介してフレーム２４の内部に保持されてスピーカを形成している。
【００１２】
図４はゲージ６の上面図、図５は図４に於けるＹ方向の側面半断面図である。本実施例のゲージ６はＡ部とＢ部に別れ、磁気空隙５を規定する円筒部６１を有するＡ部は従来のギャップゲージと類似した構造のものを使用しているが、敢えて新造する必要はなく、可能な場合は従来のギャップゲージをそのまま利用してもよい。
【００１３】
ゲージ６のＢ部は、上記Ａ部のつまみ部６３に係合させて一体として使用するもので、プレート１の切り込み１２に嵌合し且つ前記マグネット２の内径に等しい寸法を具備する高さに突出させた位置決め突起６２と前記つまみ部６３に係合する係合穴６４を有する構造となっている。本実施例の位置決め突起６２は、マグネット２の内径に相当する斜辺の高さは上端部で高く、下端部では低くなって全体として先端がつぼまった形状を成し、挿入する深さによってマグネット内径の広範囲な変化にも対応し得ると共に、マグネット２とゲージ６との間に遊びが出来ない構造となっている。
【００１４】
図６はゲージ６の変形例の断面を示す。この変型例は、前記Ａ部の円筒部６１の厚さが先端に近ずくほど薄くなり、磁気空隙部に挿入する深さによっていかなる空隙長の磁気回路にも適応可能であり、上記実施例のＢ部と組合わせることで極めて広範囲の寸法の磁気回路に対して、その製造組み立てに使用することが出来るものである。
【００１５】
図７は他の変形例の断面を示し、前記実施例のＡ部とＢ部とが一体成型された構造となっている。前記図６の変形例と比較して利用範囲は制約されるが、安価に製造できる特徴を有している。
【００１６】
以上本発明の代表的と思われる実施例、変形例について説明したが、本発明は必ずしもこれらの実施例、変形例の構造のみに限定されるものではなく、本発明にいう前記の構成要件を備え、本発明にいう目的を達成し、以下にいう効果を有する範囲内において適宜改変して実施することができるものである。
【００１７】
【発明の効果】
本発明にいう動電型電気音響変換器用磁気回路及びその組立方法は、マグネットの位置決め用の段部がない下部プレートを使用することができるので、各種の内径のマグネットに対応する事ができ、下部プレートの品種を少なくして部品を標準化し、結果として製造価格並びに管理費を低減させる事になる。又、下部プレートの品種が少なくなるので金型費が削減できる。従ってスピーカの製造コスト引き下げに大きく寄与させることができる。
【００１８】
磁気回路の広範囲な寸法に対応できるゲージを使用し、且つ部品の種類が少なくなることで、製造工程の管理が容易となり、作業が能率的で工費を節減することができる。
【００１９】
マグネット内周とゲージとの間に遊びがないので、組み立て後のマグネットの偏心は殆ど無く、外観の優れた製品を得ることができると共に、マグネット偏心による性能上のトラブルを無くすことが可能である。
【００２０】
製造工程中にマグネットが欠けることによる動作不良の発生を阻止することができ、製品の信頼性が向上する。従って、作業の簡便性、及び製造原価の低減等の極めて有用な上記各効果と相俟って、品質が優れたスピーカを安価に提供できるという極めて有用な効果が得られるに至ったのである。
【図面の簡単な説明】
【図１】実施例の組み立て中の状態を示す説明図。
【図２】実施例の正面図。
【図３】図２に於ける側面断面図。
【図４】実施例のゲージの上面図。
【図５】図４に於ける側面半断面図。
【図６】変形例のゲージの側面半断面図。
【図７】他の変形例の側面半断面図。
【図８】従来例の磁気回路の説明図。
【符号の説明】
１ 上部プレート
１１ 中心穴
１２ 切り込み
２ マグネット
３ 下部プレート
４ ポール
５ 磁気空隙
６ ゲージ
６１ 円筒部
６２ 位置決め突起
６３ つまみ部
６４ 係合穴
２１ 振動板
２２ ボイスコイル
２３ エッジ
２４ フレーム
【発明の属する技術分野】
この発明は、動電型の電気音響変換器の磁気回路に関し、特に磁気回路を構成する各部品の位置関係を正確に保持して優れた外観と性能を保有せしめたスピーカを提供するための構造とその簡単な組立方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来から一般のスピーカ等に使用されている周知の構造の動電型電気音響変換器用の外磁タイプの磁気回路を、図８により実施例と共通する部品は同一の符号を使用して説明すると、磁極となる中心穴１１が穿設されたリング状の上部プレート１´と、リング状のマグネット２と、下部プレート３´及び当該下部プレート３´の中央に突設されたポール４とを同軸に組み合わせ、各部品を接着剤を用いて固着させて、前記上部プレート１とポール４との間に、磁束が放射状に貫流するリング状の磁気空隙５が形成された構造を成している。この様な外磁タイプの磁気回路Ｍ´は、同図に仮想線で示す様に、振動板２１に固定されたボイスコイル２２が、前記磁気空隙５の内部で振動可能な様に、エッジ２３を介してフレーム２４によって保持され、スピーカを形成している。
【０００３】
上記外磁タイプの磁気回路は、上部プレート１´、リング状のマグネット２、下部プレート３´及びポール４がほぼ正確に同心となるように組み立てる必要があり、これ等部品の位置関係が同心円の状態でないと外観が悪くなるだけでなく、磁気空隙５内の磁束分布が不均一となってスピーカの性能、品質に悪影響を及ぼすので、従来は同図に示すように磁気回路の下部プレート３´の、中央に突設させたポール４の周辺に、マグネット２の内径部に嵌合し得る直径の段部３１を形成し、この段部３１によって接着剤が固化するまでの間、マグネット２を正常な位置に保持させている。又、図示は省略するが、上記段部３１に代えて、マグネット２の内径部に嵌合し得る外径と、ポール４に嵌合し得る内径を有するリング状の別部材を使用することもある。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の磁気回路は、その段部３１はポール４と共に下部プレート３´の製造時に金型によって一体として鍛造されるが、段部３１の外径はマグネット２の内径に合わせて設定される必要があり、要求されるスピーカの性能に呼応してマグネット２の内径が変るごとに下部プレート３´（或いはポール４）の鍛造金型を新造しなければならないという欠点があった。又、組み立て時にマグネット２の内周縁部が下部プレート３´の段部３１に当たって、衝撃によって前記内周縁部が欠けることがあり、その破片によって動作不良が発生すると言う、解決しなければならない課題を有していた。
【０００５】
そこで、本発明は、上記した従来の問題点を解消するために、磁気回路の上部プレートについて、その構造とスピーカ製造工程中のマグネット位置決め手段とに工夫を加えることにより、段部がない下部プレートを採用し、いかなる内径のマグネットにも対応し得る構造簡単なゲージを使用して、外観良好で高信頼度のスピーカを得る事ができる磁気回路並びに当該磁気回路の製造方法を提供することを目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
該目的を達成するための本発明にいう動電型電気音響変換器用磁気回路の製造方法を、実施例の外観及び構造の説明に於いて使用する記号を用いて説明すると、本第１発明は、中央にポール (4) が突設された下部プレート (3) と、リング状のマグネット (2) と、リング状の上部プレート (1) と、からなる動電型電気音響変換器用磁気回路の組立方法であって、上部プレート (1) には、その中心穴 (11) の周囲に放射状の切り込み (12) が、各隣り合う放射状の切り込み (12) 同士の最大離隔角度が１８０度以内で少なくとも３箇所以上に形成され、ゲージ (6) は、その内径がポール (4) に嵌合する円筒部 (61) と、放射状の切り込み (12) に嵌合する円筒部 (61) 外周に形成された同形で３個以上の位置決め突起 (62) と、を有し、各位置決め突起 (62) は、ゲージ (6) の円筒部 (61) をポール (4) に嵌合させた時に、その下端部がマグネット (2) の内径より内側に位置し、その上端部がマグネット (2) の内径より外側に位置する斜辺を有し、下部プレート (3) の上にマグネット (2) を接着剤を塗布して載置する工程と、マグネット (2) の上に上部プレート (1) を接着剤を塗布して載置する工程と、ゲージ (6) の円筒部 (61) をポール (4) に嵌合させて、各位置決め突起 (62) の斜辺をマグネット (2) の内径上部に当接させて位置決めを行う工程と、を含む、動電型電気音響変換器用磁気回路の組立方法である。
【０００７】
又、第２発明は、上記第１発明の下部プレート (3) と、リング状のマグネット (2) と、リング状の上部プレート (1) からなる動電型電気音響変換器用磁気回路の組立に用いるゲージであって、下部プレート (3) は、中央にポール (4) が突設され、上部プレート (1) には、その中心穴 (11) の周囲に放射状の切り込み (12) が、各隣り合う放射状の切り込み (12) 同士の最大離隔角度が１８０度以内で少なくとも３箇所以上に形成され、ゲージ (6) は、その内径がポール (4) に嵌合する円筒部 (61) と、放射状の切り込み (12) に嵌合する円筒部 (61) 外周に形成された同形で３個以上の位置決め突起 (62) と、を有し、各位置決め突起 (62) は、ゲージ (6) の円筒部 (61) をポール (4) に嵌合させた時に、その下端部がマグネット (2) の内径より内側に位置し、その上端部がマグネット (2) の内径より外側に位置する斜辺を有する、動電型電気音響変換器用磁気回路の組立に用いるゲージ、ならびに、円筒部 (61) の内径を形成するＡ部と、３個以上の位置決め突起 (62) を有するＢ部とが、同軸に組み合わされて形成される、動電型電気音響変換器用磁気回路の組立に用いるゲージ、である。
【０００８】
【発明の実施の形態】
このような構成とした動電型電気音響変換器用磁気回路を実施するに当たっては、下部プレート３は従来例の欄で説明したマグネット位置決め用の段部がない最も簡単な形状とし、従来と同様にポール４と共に金型で一体に鍛造成型する。マグネット２は必要とされる所望の寸法で、従来と同一のものを使用する。又、上部プレート１は中心穴１１と共に放射状の切り込み１２を少なくとも３箇所以上、打ち抜きによって形成する。切り込み１２の半径方向の長さｄは、使用が想定されるマグネットの内径寸法を包含する寸法とし、円周方向の幅ｗは後述するゲージ６が嵌合可能で且つ磁気空隙５の磁束分布をあまり乱さない範囲とし、中心穴１１の周囲長さの１％〜３％程度が適当である。
【０００９】
組立に際して、上部プレート１と当該マグネット２及びポール４の相互位置関係を確保するためのゲージ６は、上部プレート１とポール４とを磁気空隙５を隔てて相互位置を設定する従来のギャップゲージと類似した構造の円筒部６１を有するＡ部と、前記上部プレート１と当該マグネット２との相互位置関係を設定する、前記上部プレート１の切り込み１２に嵌合し且つ前記マグネット２の内径に等しい寸法を具備する高さに突出させた位置決め突起６２を有するＢ部とからなり、Ｂ部は係合穴６４よってＡ部のつまみ部６３に係合させ、同軸に組み合わせて使用するようになっている。ゲージ６をこの様な構造とすることで、Ａ部は従来のギャップゲージを使用し、Ｂ部のみを治工具として準備すればよいことになる。
【００１０】
磁気回路の組み立て手順は従来と同じく下部プレート３の上にリング状のマグネット２を接着剤を塗布して載置し、当該マグネット２の上に、中心穴１１と該中心穴１１の周囲に放射状の切り込み１２が形成されたリング状の上部プレート１を同じく接着剤を塗布して載置してから、上記ゲージ６を上部プレート１とポール４との間の空隙及び上部プレート１の切り込み１２に跨がって挿入嵌合し、接着剤が固化してからゲージ６を抜去して、磁気空隙５を形成し且つマグネット２を正確な位置に保持せしめて磁気回路を完成させる。
【００１１】
【実施例】
図１は実施例の組み立て中の状態を示す説明図、図２は実施例の正面図、図３は図２におけるＸ，Ｘ方向の側面断面図である。磁気回路の基本構造は、図２〜図３に示すように、中心穴１１と該中心穴１１の周囲に長さがｄで幅がｗの放射状の切り込み１２が３箇所形成されたリング状の上部プレート１と、リング状のマグネット２と、下部プレート３及び当該下部プレート３の中央に突設させたポール４とを同心円状に組み合わせて、前記上部プレート１とポール４との間にリング状の磁気空隙５が形成された構造となっている。この様な磁気回路Ｍは、図３に、又、従来例を示す図８に仮想線で示されたようにフレーム２４の底部に固定され、振動板２１に固定されたボイスコイル２２が、前記磁気空隙５の内部で振動可能な様に、エッジ２３を介してフレーム２４の内部に保持されてスピーカを形成している。
【００１２】
図４はゲージ６の上面図、図５は図４に於けるＹ方向の側面半断面図である。本実施例のゲージ６はＡ部とＢ部に別れ、磁気空隙５を規定する円筒部６１を有するＡ部は従来のギャップゲージと類似した構造のものを使用しているが、敢えて新造する必要はなく、可能な場合は従来のギャップゲージをそのまま利用してもよい。
【００１３】
ゲージ６のＢ部は、上記Ａ部のつまみ部６３に係合させて一体として使用するもので、プレート１の切り込み１２に嵌合し且つ前記マグネット２の内径に等しい寸法を具備する高さに突出させた位置決め突起６２と前記つまみ部６３に係合する係合穴６４を有する構造となっている。本実施例の位置決め突起６２は、マグネット２の内径に相当する斜辺の高さは上端部で高く、下端部では低くなって全体として先端がつぼまった形状を成し、挿入する深さによってマグネット内径の広範囲な変化にも対応し得ると共に、マグネット２とゲージ６との間に遊びが出来ない構造となっている。
【００１４】
図６はゲージ６の変形例の断面を示す。この変型例は、前記Ａ部の円筒部６１の厚さが先端に近ずくほど薄くなり、磁気空隙部に挿入する深さによっていかなる空隙長の磁気回路にも適応可能であり、上記実施例のＢ部と組合わせることで極めて広範囲の寸法の磁気回路に対して、その製造組み立てに使用することが出来るものである。
【００１５】
図７は他の変形例の断面を示し、前記実施例のＡ部とＢ部とが一体成型された構造となっている。前記図６の変形例と比較して利用範囲は制約されるが、安価に製造できる特徴を有している。
【００１６】
以上本発明の代表的と思われる実施例、変形例について説明したが、本発明は必ずしもこれらの実施例、変形例の構造のみに限定されるものではなく、本発明にいう前記の構成要件を備え、本発明にいう目的を達成し、以下にいう効果を有する範囲内において適宜改変して実施することができるものである。
【００１７】
【発明の効果】
本発明にいう動電型電気音響変換器用磁気回路及びその組立方法は、マグネットの位置決め用の段部がない下部プレートを使用することができるので、各種の内径のマグネットに対応する事ができ、下部プレートの品種を少なくして部品を標準化し、結果として製造価格並びに管理費を低減させる事になる。又、下部プレートの品種が少なくなるので金型費が削減できる。従ってスピーカの製造コスト引き下げに大きく寄与させることができる。
【００１８】
磁気回路の広範囲な寸法に対応できるゲージを使用し、且つ部品の種類が少なくなることで、製造工程の管理が容易となり、作業が能率的で工費を節減することができる。
【００１９】
マグネット内周とゲージとの間に遊びがないので、組み立て後のマグネットの偏心は殆ど無く、外観の優れた製品を得ることができると共に、マグネット偏心による性能上のトラブルを無くすことが可能である。
【００２０】
製造工程中にマグネットが欠けることによる動作不良の発生を阻止することができ、製品の信頼性が向上する。従って、作業の簡便性、及び製造原価の低減等の極めて有用な上記各効果と相俟って、品質が優れたスピーカを安価に提供できるという極めて有用な効果が得られるに至ったのである。
【図面の簡単な説明】
【図１】実施例の組み立て中の状態を示す説明図。
【図２】実施例の正面図。
【図３】図２に於ける側面断面図。
【図４】実施例のゲージの上面図。
【図５】図４に於ける側面半断面図。
【図６】変形例のゲージの側面半断面図。
【図７】他の変形例の側面半断面図。
【図８】従来例の磁気回路の説明図。
【符号の説明】
１ 上部プレート
１１ 中心穴
１２ 切り込み
２ マグネット
３ 下部プレート
４ ポール
５ 磁気空隙
６ ゲージ
６１ 円筒部
６２ 位置決め突起
６３ つまみ部
６４ 係合穴
２１ 振動板
２２ ボイスコイル
２３ エッジ
２４ フレーム
Claims (3)
- 中央にポール (4) が突設された下部プレート (3) と、リング状のマグネット (2) と、リング状の上部プレート (1) と、からなる動電型電気音響変換器用磁気回路の組立方法であって、
上部プレート (1) には、その中心穴 (11) の周囲に放射状の切り込み (12) が、各隣り合う放射状の切り込み (12) 同士の最大離隔角度が１８０度以内で少なくとも３箇所以上に形成され、
ゲージ (6) は、その内径がポール (4) に嵌合する円筒部 (61) と、放射状の切り込み (12) に嵌合する円筒部 (61) 外周に形成された同形で３個以上の位置決め突起 (62) と、を有し、
各位置決め突起 (62) は、ゲージ (6) の円筒部 (61) をポール (4) に嵌合させた時に、その下端部がマグネット (2) の内径より内側に位置し、その上端部がマグネット (2) の内径より外側に位置する斜辺を有し、
下部プレート (3) の上にマグネット (2) を接着剤を塗布して載置する工程と、
マグネット (2) の上に上部プレート (1) を接着剤を塗布して載置する工程と、
ゲージ (6) の円筒部 (61) をポール (4) に嵌合させて、各位置決め突起 (62) の斜辺をマグネット (2) の内径上部に当接させて位置決めを行う工程と、を含む、
動電型電気音響変換器用磁気回路の組立方法。 - 下部プレート (3) と、リング状のマグネット (2) と、リング状の上部プレート (1) からなる動電型電気音響変換器用磁気回路の組立に用いるゲージであって、
下部プレート (3) は、中央にポール (4) が突設され、
上部プレート (1) には、その中心穴 (11) の周囲に放射状の切り込み (12) が、各隣り合う放射状の切り込み (12) 同士の最大離隔角度が１８０度以内で少なくとも３箇所以上に形成され、
ゲージ (6) は、その内径がポール (4) に嵌合する円筒部 (61) と、放射状の切り込み (12) に嵌合する円筒部 (61) 外周に形成された同形で３個以上の位置決め突起 (62) と、を有し、
各位置決め突起 (62) は、ゲージ (6) の円筒部 (61) をポール (4) に嵌合させた時に、その下端部がマグネット (2) の内径より内側に位置し、その上端部がマグネット (2) の内径より外側に位置する斜辺を有する、
動電型電気音響変換器用磁気回路の組立に用いるゲージ。 - 前記ゲージ (6) は、円筒部 (61) の内径を形成するＡ部と、３個以上の位置決め突起 (62) を有するＢ部とが、同軸に組み合わされて形成される、
請求項２記載の動電型電気音響変換器用磁気回路の組立に用いるゲージ。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP23717496A JP3772406B2 (ja) | 1996-08-19 | 1996-08-19 | 動電型電気音響変換器用磁気回路の組立方法及びこれに用いるゲージ |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP23717496A JP3772406B2 (ja) | 1996-08-19 | 1996-08-19 | 動電型電気音響変換器用磁気回路の組立方法及びこれに用いるゲージ |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH1066192A JPH1066192A (ja) | 1998-03-06 |
| JP3772406B2 true JP3772406B2 (ja) | 2006-05-10 |
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ID=17011480
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| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP23717496A Expired - Fee Related JP3772406B2 (ja) | 1996-08-19 | 1996-08-19 | 動電型電気音響変換器用磁気回路の組立方法及びこれに用いるゲージ |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3772406B2 (ja) |
Cited By (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| CN104093115A (zh) * | 2014-06-23 | 2014-10-08 | 梧州恒声电子科技有限公司 | 一种电镀扬声器盆架的制作工艺 |
-
1996
- 1996-08-19 JP JP23717496A patent/JP3772406B2/ja not_active Expired - Fee Related
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| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| CN104093115A (zh) * | 2014-06-23 | 2014-10-08 | 梧州恒声电子科技有限公司 | 一种电镀扬声器盆架的制作工艺 |
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| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH1066192A (ja) | 1998-03-06 |
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