JP3772232B2 - 組織含有人工真皮及びその製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な人工真皮及びその製造法に関する。詳細には、本発明は創傷や熱傷等により真皮組織まで損傷を被った全層皮膚欠損創の治療において、1回の植皮で表皮及び真皮組織を形成させることにより創を閉鎖することのできる人工真皮、及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱傷、採皮創及び外傷性皮膚欠損創、褥瘡等の疾患ないし創傷により真皮組織を著しく損傷した患者の治療には、壊死した組織を除去して全層真皮欠損創に健常皮膚から分層皮膚を採取して植皮する自家植皮術が施行されている。しかし、損傷範囲が広い場合は、一度の自家植皮術で全層欠損部位を全て被覆することはできず、患者の全身状態を見計らって、2度目、3度目の自家植皮術が適時施行される。
【0003】
しかし、自家植皮術では必要量の分層皮膚が確保できない場合に対応できない等の問題があるため、これに代わり得る新医療技術として培養皮膚並びに人工真皮の適用が注目されている。
【0004】
ところが、培養皮膚は、自家分層植皮と比較すると極めて不完全な構造であり生存率は創面の感染に大きく左右されること、また細胞培養に時間と設備を要し、更には莫大な費用がかかること等、種々の欠点を有するため、実用化に至っていない。
【0005】
一方、人工真皮は種々開発されており、臨床的にもその有用性が確認されている(British J. Plast. Surg.,43,47-54 (1990))。しかし、従来の人工真皮では創面積が大きい場合、真皮様組織は構築されるが表皮組織の再生ができず、このため真皮様組織の構築後、表皮組織構築のために2回目の手術、即ち二次植皮が必須であった。このため、患者の肉体的及び精神的苦痛は大きく、また入院期間の長期化等による経済的負担は大きいものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来の人工真皮の欠点を補うため、真皮様組織の形成及び表皮組織の形成による創閉鎖を早めることにより、2度目の植皮手術を不要とする人工真皮を提供することを目的とする。また、本発明は、上記人工真皮の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、コラーゲンスポンジ層にシリコーン層が積層されてなり該コラーゲンスポンジ層に凹部もしくは孔部を有する特定構造の二層性人工真皮に被検者(患者)自身のもしくは被検者(患者)と免疫学的に類似する皮膚断片を組み込んだ人工真皮を用いることにより、全層皮膚欠損創が比較的広範囲にわたる場合であっても、貼付後直ちに、創傷面及び創辺縁だけでなく該皮膚断片から皮膚組織細胞が再生・侵入することによって皮膚組織の再建が早期に図られること、また、人工真皮に組み込む皮膚断片として表皮及び真皮組織を有するものを使用することにより、2度の手術によって表皮組織を植皮することなく、自然に早く真皮組織の上に表皮組織が形成されることにより創が早期に閉鎖することを見いだして、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、全層皮膚欠損創を一期的に治療するための人工真皮であって、表皮及び真皮組織を含む皮膚組織を入れる凹部もしくは孔部を有するコラーゲンスポンジ層の一方面にシリコーン層が積層されてなる人工真皮を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、凹部もしくは孔部を有するコラーゲンスポンジ層の一方面にシリコーン層が積層されてなる人工真皮であって、該凹部内もしくは孔部内にシリコーン層側から表皮組織、真皮組織の順で表皮及び真皮組織を含む皮膚組織を含有してなる組織含有人工真皮を提供する。
【0010】
さらに本発明は、真皮及び表皮組織を含む皮膚組織を入れる凹部もしくは孔部を有するコラーゲンスポンジ層の一方面にシリコーン層が積層されてなる人工真皮の、全層皮膚欠損創を一期的に治療する上記組織含有人工真皮の製造のための使用に関する。
【0011】
さらにまた本発明は、凹部もしくは孔部を有するコラーゲンスポンジ層の一方面にシリコーン層が積層されてなる人工真皮の凹部もしくは孔部に、表皮及び真皮組織を含む皮膚組織を入れる工程を備えた前記の組織含有人工真皮の製造方法に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の人工真皮は、全層皮膚欠損創を一期的に治療する人工真皮であることを特徴とし、例えば図1に示すように、表皮及び真皮組織を含む皮膚組織を入れる凹部もしくは孔部(符号1)を有するコラーゲンスポンジ層(符号2)の一方面にシリコーン層(符号3)が積層されてなるものである。
【0013】
本発明において「全層皮膚欠損創」とは、熱傷、採皮創及び外傷性皮膚欠損創、褥瘡等の疾患ないし創傷、もしくは壊死組織を除去することにより、表皮組織のみならず真皮組織までもが喪失、欠損してなる創をいう。ただし、その創の範囲は特に制限されず、広い範囲にわたり全層皮膚組織が喪失、欠損しているもののみならず、一部の全層皮膚組織が喪失、欠損してなる創をも包含する。
【0014】
また本発明で「一期的に」とは、2度目、3度目の植皮処置もしくは分層植皮処置をすることなく、1回の植皮だけで、という意味で用いられ、「治療する」とは、全層皮膚欠損創が治癒・改善すること、具体的には真皮組織が形成されるとともに、表皮組織が受傷真皮上に伸展形成されることにより創が閉鎖することを意味する。
【0015】
従って、本発明の人工真皮は、真皮、表皮組織の再生が困難な全層皮膚欠損創に適用されて特に有用である。
【0016】
本発明で用いられるコラーゲンスポンジ層(図1、符号2)は、生体適合性の高い含水性高分子であるコラーゲンを物理的もしくは化学的に処理して一定の強度を有するようにスポンジ状もしくは発泡体状としたものが用いられる。
【0017】
一般にコラーゲン自体は生体由来材料であるため、細胞、組織に対する親和性が大きく、生体適合性に優れる好適な材料であるが、その反面、コラーゲンは生体内で容易に分解・吸収されるため、物性面での強化を図る工夫が必要とされる。
【0018】
かかる見地から、本発明のコラーゲンスポンジは、化学架橋等を導入して、真皮様組織ができるまでは分解してしまわず、かつ植皮後2〜3週間程度で真皮様組織に置き換わるように設計される。例えば、この目的のためには、コラーゲンスポンジを熱脱水架橋したり、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、エポキシ等によって化学架橋を施す等の方法が挙げられるが、好ましくは、真空下で105℃程度で約24時間処理することにより分子内架橋し、次いで0.2%程度のグルタルアルデヒド溶液(0.05N 酢酸)に約24時間浸漬することにより分子間架橋を行う方法である。
【0019】
また、コラーゲンスポンジの密度として、特に限定はされないが、0.001〜0.1g/cm3、好ましくは0.003〜0.03g/cm3、より好ましくは0.005〜0.015g/cm3の範囲であり、中でも0.01g/cm3前後であることが一層望ましい。但し、0.005〜0.01g/cm3未満の範囲であってもよい。
【0020】
使用するコラーゲンは、抗原性の発現抑制の面から抗原決定基が酵素で除去されたアテロコラーゲンが望ましい。
【0021】
当該コラーゲンスポンジの発泡構造の泡の平均径は、10〜500μm、好ましくは50〜300μmであることが望ましい。かかる発泡構造を有することにより、線維芽細胞の侵入を容易にし、それに伴う肉芽組織の形成を向上させることができると同時に、生体由来の浸出液や血液の排泄を容易にして該体液等の残留を防止し、本発明の人工真皮との生着性を高めることができる。
【0022】
スポンジ層の厚さは0.5〜10mm、好ましくは1〜7mm、より好ましくは真皮層の厚さ及び含有させる組織断片の厚み等を考慮して、2〜4mmである。
【0023】
本発明の人工真皮は、基本構造として、前述のコラーゲンスポンジ層の一方面にシリコーン層(符号3)が積層されてなるものである。
【0024】
当該シリコーン層は、不感蒸泄の抑制と感染の防止を目的とするものであって、シリコーン層下に真皮、表皮組織が形成された後、最終的に除去されるものである。
【0025】
本発明で用いられるシリコーン層は、水蒸気透過性が通常0.1〜100mg/cm2/h、好ましくは0.5〜10mg/cm2/h、より好ましくは1〜5mg/cm2/hの範囲にあることを特徴とするものであれば特に制限されない。また、かかる水蒸気透過性を備えるものであれば、シリコーン以外のものであってもよい。
【0026】
本発明の人工真皮は、上記の二層性構造において、コラーゲンスポンジ層に凹部もしくは図1の符号1で例示される孔部を有することを特徴とする。当該凹部もしくは孔部は、その中に表皮及び真皮組織を含む皮膚組織を入れることを目的として形成されており、その目的のために使用されるものである。従って、かかる目的が達成できる限りにおいて、凹部もしくは孔部の形状、凹部の深さ、大きさ、孔径等は特に制限されない。
【0027】
なお、本発明において凹部とは、コラーゲンスポンジ層を貫通することなく形成されてなる穴、へこみもしくは窪みを意味するものであり、凹部(窪み)の深さは、特に限定されないが、通常表皮及び真皮組織を含む皮膚組織が入る程度であって、コラーゲンスポンジ層の厚さ未満の深さ、具体的には2〜4mm程度の深さが挙げられる。一方孔部とは、少なくともコラーゲンスポンジ層を貫通してなる穴を意味する。かかる孔部は、コラーゲンスポンジ層及びシリコーン層の二層に連続して形成されていてもよいが、本発明人工真皮貼付の期間中における患部の雑菌感染を防止する観点からは、シリコーン層を貫通しない孔であることが好ましい。
【0028】
本発明の好ましい態様として、凹部もしくは孔部の孔径は特に限定されるものではないが、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは1〜5mmの範囲である。
【0029】
人工真皮に形成される凹部もしくは孔部の孔径及び数は、そこに入れる皮膚組織の大きさ及び数に対応するものであり、径が大きければ大きい程(もしくは数が多ければ多いほど)創閉鎖(治療)も早くなるが、その一方で採取する健常皮膚組織も多くなり健常組織の損傷は免れない。従って、人工真皮に形成される凹部もしくは孔部の孔径及び数は、創閉鎖の早さと健常皮膚の採取との関係から適宜調整することができる。
【0030】
一般に、人工真皮を入れる凹部もしくは孔部の総孔面積に対する人工真皮全体の面積の割合(以下、これを「拡大率」という。)が、小さい程早く創閉鎖するが、上記の関係から、通常5〜100倍の範囲、好ましくは10〜50倍の範囲の拡大率が例示される。
【0031】
以上説明した本発明の人工真皮は、そのコラーゲンスポンジ層の凹部内もしくは孔部内に表皮及び真皮細胞を含む皮膚組織を組み込んで使用される。用いられる皮膚組織は、当該人工真皮の適用を受ける被検者の免疫原性が近似するかもしくは同一であり、植皮することにより免疫学的な拒絶反応が生じないものであれば特に制限されないが、より好ましくは人工真皮の適用を受ける被検者自身の健常な皮膚組織である。また、当該皮膚組織は、少なくとも表皮組織及び真皮組織を含有することが必要とされる。
【0032】
例えば、本発明と同様にコラーゲンスポンジ層とシリコーン層からなる二層性被覆材ではあるが、皮膚組織を含有しないものを全層皮膚欠損創に貼付する場合は、創面及びその辺縁部から線維芽細胞及び毛細血管が侵入し、スポンジの空孔部を自己のコラーゲン組織で満たし、最終的に真皮様組織を再生する。しかし、創面積が大きい場合は、表皮層は再生しないため、この上に薄い植皮をすることによって真皮層を閉鎖する必要がある(これを二次植皮という)。
【0033】
しかし、二層性人工真皮に凹部もしくは孔部を設けた本発明の人工真皮の該孔部内に表皮及び真皮組織を含む皮膚組織を入れて、全層皮膚欠損創に貼付・植皮すると、直ちに組み込まれた皮膚組織から皮膚細胞が周囲に増殖するため、真皮組織の構築を早期に達成することができ、また人工真皮に組み込まれた皮膚組織には表皮細胞が含まれているため、そこから表皮組織が伸展し、創周囲からだけでなく創の中心部の数箇所から創の閉鎖が図られる。
【0034】
従って、本発明によれば、創面積が大きく従来法では二次植皮をしなくてはならないような全層皮膚欠損創等の場合であっても、一回の植皮によって早期に創を閉鎖・治癒させるという利点がある。
【0035】
使用される組織は、簡便性等の面からは、組織採取用の皮膚トレパン等で採取した被検者の健常皮膚の断片をそのまま使用することが好ましいが、細菌等による感染を防ぎ、生着率を高めるように抗菌処理等の何らかの処理を施すこともできる。また、予め組織断片を入れるための二層性人工真皮を抗菌性を有する材料で調製してもよいし、または該人工真皮を組織断片を入れる前に抗菌処理等しておいてもよい。
【0036】
健常皮膚から採取された皮膚組織は、前述の人工真皮の凹部もしくは孔部内に表皮組織及び真皮組織の順で、シリコーン層側に表皮組織が来るように入れられる。
【0037】
また、本発明は、前述の人工真皮において、コラーゲンスポンジ層の凹部もしくは孔部に皮膚組織を含有してなるもの、そのものをも提供する。
【0038】
用いられる皮膚組織は、前述と同様に、免疫原性が人工真皮が適用される被検者と近似もしくは同一であって、少なくとも表皮及び真皮組織を含むものが好ましい。
【0039】
本発明の組織含有人工真皮は、図2に例示するようにかかる皮膚組織(符号4)がコラーゲンスポンジ層(符号2)に形成された凹部内もしくは孔部内(符号1)に表皮組織(符号5)、真皮組織(符号6)の順でシリコーン層側(符号3)に表皮組織が来るように配置されていることを特徴とする。
【0040】
かかる組織含有人工真皮の製造方法は、特に制限されないが、通常、凹部もしくは孔部を有するコラーゲンスポンジ層の一方面にシリコーン層が積層されてなる人工真皮を調製した後、該人工真皮の凹部もしくは孔部に、表皮及び真皮組織を含む皮膚組織を入れることにより製造される。
【0041】
なお、凹部もしくは孔部を有するコラーゲンスポンジ層の一方面にシリコーン層が積層されてなる人工真皮は、その製造法により特に制限されない。例えば、コラーゲンスポンジ層とシリコーン層とからなる二層性人工真皮を作製した後、コラーゲンスポンジ層に凹部もしくは孔部を形成してもよいし、また凹部もしくは孔部を有するコラーゲンスポンジ層を作製後、穴を塞がないようその一方面にシリコーン層を積層することにより製造してもよい。
【0042】
このようにして得られた凹部もしくは孔部を有する二層性人工真皮の該凹部もしくは孔部に、人工真皮が適用される被検者と免疫原性が近似もしくは同一の皮膚組織であって少なくとも表皮及び真皮組織を含むものを、シリコーン層側に表皮組織がくるように、表皮組織、真皮組織の順で入れる。
【0043】
【発明の効果】
本発明の人工真皮によれば、真皮組織を喪失し、再生が困難な創傷部(全層皮膚欠損創部)であっても、2度の植皮をすることなく一期的に早期に上皮化させることができる。従って、本発明の人工真皮を使用することにより、簡便にかつ患者に対する精神的及び肉体的負担を少なくして、全層皮膚欠損創の治療を行うことができる。
【0044】
また、本発明は、採取する健常皮膚組織としてわずかな皮膚組織を必要とするだけであるので、狭い範囲、屈曲部からでも容易に採皮でき、健常皮膚部に及ぼす影響が少なくて済む。また、広範囲の熱傷等、採皮部の多い場合にも有用である。さらに、本発明の人工真皮は従来の人工真皮と異なり、細胞培養を必要としないため、短期間で植皮ができ、菌の感染などの心配が少なく、また一般施設での熱傷治療に広く応用できる実用的なものである。
【0045】
【実施例】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
実施例1
(1)人工真皮の作製
豚腱由来のI型コラーゲンを酵素処理して調製したアテロコラーゲン(新田ゼラチン社製)を希塩酸でpH3に調整した。これをホモジナイザーで高速撹拌(10,000rpm、10分間)することによって発泡させ、直ちにステンレス容器に流し込み、−40℃にて凍結させた。更にこれを真空凍結乾燥することによって、コラーゲンスポンジを作製した。次にこのコラーゲンスポンジを105℃、真空下(0.01torr.以下)で24時間熱脱水架橋を導入し、不溶化させた。得られたコラーゲンスポンジをテフロン平板上に製膜したシリコーン薄膜上に貼付し、十分に乾燥させた。こうして得られた2層性材料を0.2%グルタルアルデヒド溶液(0.05N 酢酸溶液)に浸漬(24時間、5℃)し、化学架橋を導入した。これをイオン交換水にて十分に洗浄、架橋剤を除去した後、洗浄液を15%エタノール溶液と置換後、−135℃にて急速に凍結させ、更に真空凍結乾燥した。
【0047】
得られた二層性材料を(30mm×30mm)、3mm径の皮膚トレパン(スティーフェル・ラボラトリウム社製)を使用して、該シリコーン層を傷つけないようにしてコラーゲンスポンジ層に約8mm間隔で、皮膚組織を入れるための9個の穴を作製した(拡大率14倍:(3×3)÷(0.15×0.15×3.14×9)=14)。
【0048】
(2)組織含有人工真皮の作製
一方、同じ皮膚トレパンを使用して健常皮膚から表皮及び真皮を含む全層皮膚を9断片採取し、該皮膚断片を、予め穴をあけて調製しておいた人工真皮のコラーゲンスポンジ層の中に、シリコンシート側に表皮組織側が接するようにいれて、本発明の組織含有人工真皮を調製した。
【0049】
【試験】
移植試験1
実施例1で得られた組織含有人工真皮をモルモット(近交系モルモット、Strain 2 Slc、日本SLC社製、体重約300g)の背部の白色皮膚に移植して創傷部の治癒の状況をみた。なお、人工真皮に組み込まれる皮膚として被移植モルモットの黒色皮膚部分を使用した。
【0050】
まず、モルモットをネンブタール麻酔下で除毛し、イソジン消毒したモルモット背部白色皮膚に脂肪層が完全に露出した創面30×30mmの全層皮膚欠損創を作製し、止血、乾燥した後、上記で調製した人工真皮に黒色皮膚組織を組み込んだ組織含有人工真皮を移植し、辺縁をナイロン糸で縫合した後、ガーゼをあててタイオーバー固定した。尚、タイオーバー固定とは治療面の上にガーゼをあて、その周囲に縫合した縫合糸をガーゼの上を越えるようにして反対側の縫合糸と結紮する固定方法をいう。
【0051】
移植後1週間めに、移植部位を切除して10%ホルマリンで固定して組織標本を作製してHE(ヘマトキシリン・エオシン)染色を行い、組織含有人工真皮の生着状態を調べた。その結果、皮膚トレパンで採取して二層性人工真皮の中に移植・組み込んだ健常黒色皮膚は毛根を含んで生着しており、その部分には炎症所見は認められなかった。
【0052】
また、人工真皮の下の滲出液の貯留の有無を観察したが、滲出液に貯留はなく、人工真皮と創傷部位との密着性は良好であった。
【0053】
移植後3週間めには、コラーゲンスポンジの空隙内に新しく再生されたコラーゲン組織が充満し、肉芽組織が完成し、コラーゲンスポンジが消失したように見えた。また、二層性人工真皮のなかに移植・組み込んだ皮膚の表皮部分より上皮化が進み、移植した黒色皮膚が生着しているのが確認された。
【0054】
移植後1ヶ月目には、正常皮膚に比べてやや薄いが、表皮の上層は十分に角質化しており、表皮化及び皮膚の再建はほぼ完了していた。
【0055】
さらに長期間経過することにより、移植した黒色皮膚は完全に生着し、黒色の毛が伸びていることが確認された。
【0056】
なお、移植後、移植面の創収縮は観察されなかった。
【0057】
移植試験2
人工真皮のサイズを1辺30mmから50mmに大きくし、3mm径の皮膚トレパンで採取した皮膚9個を含む組織含有人工真皮(拡大率39倍、図3(a))、皮膚25個を含む組織含有人工真皮(拡大率14倍、図3(b))、及び比較のため皮膚組織を含まない二層性人工真皮(図3(c))を用いて、移植試験1で示した方法と同じ方法でモルモットに移植を行い、比較をした。
【0058】
皮膚25個を含む人工真皮を植皮した場合、約2週間後には上皮化していることが確認された。また皮膚9個を含む人工真皮を植皮した場合は、約3週間後には上皮化した。一方、皮膚を含まない二層性人工真皮を使用した場合は、約2週間で肉芽組織の形成は確認されたが、上皮化には4週間以上の期間を要した。
【図面の簡単な説明】
【図1】皮膚組織を入れる凹部もしくは孔部をコラーゲンスポンジ層に有する本発明の二層性人工真皮のコラーゲンスポンジ層側からみた平面図(a)と断面図(b)を示す。
【図2】コラーゲンスポンジ層の凹部もしくは孔部に、少なくとも表皮及び真皮組織を含む皮膚組織を入れてなる本発明の組織含有人工真皮のコラーゲンスポンジ層側からみた平面図(a)と断面図(b)を示す。
【図3】移植試験2で使用した50mm×50mmサイズの人工真皮の平面図を示す。尚、(a)は皮膚9個を含む組織含有人工真皮(拡大率39倍)(b)は皮膚25個を含む組織含有人工真皮(拡大率14倍)、及び(C)は比較のための皮膚組織を含まない二層性人工真皮を示す。
【符号の説明】
1 孔部
2 コラーゲンスポンジ層
3 シリコーン層
4 皮膚組織
5 表皮組織
6 真皮組織

Claims (4)

  1. 全層皮膚欠損創を一期的に治療するための人工真皮であって、表皮及び真皮組織を含む皮膚組織を入れる凹部もしくは孔部を有するコラーゲンスポンジ層の一方面にシリコーン層が積層されてなる人工真皮。
  2. 凹部もしくは孔部を有するコラーゲンスポンジ層の一方面にシリコーン層が積層されてなる人工真皮であって、該凹部内もしくは孔部内に、シリコーン層側から表皮組織、真皮組織の順で表皮及び真皮組織を含む皮膚組織を含有してなる組織含有人工真皮。
  3. 表皮及び真皮組織を含む皮膚組織を入れる凹部もしくは孔部を有するコラーゲンスポンジ層の一方面にシリコーン層が積層されてなる人工真皮の、全層皮膚欠損創を一期的に治療する請求項2記載の組織含有人工真皮の製造のための使用。
  4. 凹部もしくは孔部を有するコラーゲンスポンジ層の一方面にシリコーン層が積層されてなる人工真皮の凹部内もしくは孔部内に、表皮及び真皮組織を含む皮膚組織を入れる工程を備えた請求項2記載の組織含有人工真皮の製造方法。
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