JP3771111B2 - 固体電解質膜および固体電解質膜の製造方法 - Google Patents

固体電解質膜および固体電解質膜の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水等を電気分解して水素ガスおよび酸素ガスを発生させる水素酸素発生装置等の水電解装置に関し、詳しくは、水電解装置を構成する際に用いられる固体電解質膜およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水等を電気分解して水素ガスおよび酸素ガスを発生させる電解装置を構成する電解セルとしては、電解質の役割を果たす部材として固体電解質膜を用いたものが、従来から知られている。
【0003】
従来技術に係る電解セルは、固体電解質膜と、この固体電解質膜の両側に設けられた電極板(陽極側および陰極側電極板)と、固体電解質膜と電極板との間に設けられた給電体(陽極側および陰極側給電体)等を用いて構成されている。また、この従来技術に係る電解セルにおいては、固体電解質膜を構成する固体高分子電解質膜の両面に、電極触媒層(陽極側および陰極触媒層)が設けられている。
【0004】
上記従来技術に係る電解セルにおいては、陽極側に純水を供給して、電極板に対して通電することにより、主に陽極触媒層で純水が分解され、酸素ガスが発生することとなる。そして、酸素ガスと同時に生成されたH+イオンは、電場の働きによって固体電解質膜内を移動するため、陰極触媒層においては電子を得て、水素ガスが発生することとなる。
【0005】
上述したように、電解セルを構成する固体電解質膜は、固体高分子電解質膜と、その両面に設けられた電極触媒層とを用いて構成されている。
このような固体電解質膜を製造する方法としては、従来から種々の方法が知られており、例えば、特公昭58−15544号公報に開示された技術(以下、「第一の従来技術」という。)がある。この第一の従来技術においては、白金粉末や白金を担持したカーボン粉末等の触媒粉末とポリテトラフルオロエチレン等の結着剤との混合物を膜に加熱圧着する技術が開示されている。
【0006】
しかし、この第一の従来技術によれば、ポリテトラフルオロエチレン等の結着剤は、プロトン伝導性、電気伝導性がないため、水電解用触媒としては、除くほうが好ましい。すなわち、ポリテトラフルオロエチレン等の結着剤を有することによって、種々の問題があった。
【0007】
そこで、この第一の従来技術に関する問題を解決するための技術としては、例えば、特開平11−16586号公報に開示された技術(以下、「第二の従来技術」という。)が知られている。この第二の従来技術においては、固体高分子電解質樹脂と触媒粉末との分散物を用いて、電極触媒層を形成している。換言すれば、固体高分子電解質樹脂が結着剤として機能することによって、電極触媒層の形成を可能としている。この第二の従来技術によれば、ポリテトラフルオロエチレン等の結着剤を用いることなく、電極触媒層を形成可能であるため、上述した第一の従来技術に関する問題を効果的に解決することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記第二の従来技術においては、電極触媒層内における触媒粉末および固体高分子電解質樹脂の分布状態に応じて、種々の不具合が生ずるという問題があった。
【0009】
具体的には、固体高分子電解質膜と電極触媒層との接合界面近傍において、電極触媒層中(固体高分子電解質樹脂と触媒粉末との分散物中)における固体高分子電解質樹脂の成分濃度が低すぎる場合には、固体高分子電解質膜と電極触媒層との接合性が悪くなるという問題があった。
また、電極触媒層の表面近傍において、電極触媒層中(固体高分子電解質樹脂と触媒粉末との分散物中)における固体高分子電解質樹脂の成分濃度が高すぎる場合には、電極触媒層の抵抗が増加することによって電解電圧が上昇し、電解セルのエネルギ効率が低下するという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は上記従来技術(第二の従来技術)に係る問題を解決するためになされたものであって、電極触媒層中における固体高分子電解質等の分布状態が適切に調整された固体電解質膜を提供することを課題とする。また、電極触媒層中における固体高分子電解質等の分布状態が適切に調整された固体電解質膜を得るための製造方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、上記課題を解決するための本発明は、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜に設けられた電極触媒層とを有する固体電解質膜であって、触媒粒子と前記固体高分子電解質膜の電解質成分とを主成分とする触媒層形成物を用いて前記電極触媒層が形成されており、前記電極触媒層中における前記電解質成分が前記電極触媒層表面近傍に偏在することがないように、即ち、前記電極触媒層が、前記触媒層形成物を下方向に向けた状態で乾燥させることによって形成された複数の層を用いて構成されており、前記固体高分子電解質膜に近い側の一の層と、前記一の層に接して前記固体高分子電解質膜と反対側に位置する他の層とを比較した場合において、前記他の層における前記触媒粒子の含有率が、前記一の層における前記触媒粒子の含有率以上であることを特徴としている。
【0012】
本発明に係る固体電解質膜によれば、前記触媒粒子と前記電解質成分との分布状態が適切に傾斜しているので、固体高分子電解質膜に接合される陽極側および陰極触媒層の転写面に適切な量の前記電解質成分(イオン交換体)が配され、陽極側および陰極触媒層の表面(電解セル構成時に給電体と接する面)に適切な量の前記触媒粒子が配されることとなる。したがって、本発明によれば、前記固体高分子電解質膜と前記電極触媒層との接合性を向上させると共に、電解セルを構成した際のエネルギ効率の低減をも効果的に防ぐことができる。
【0014】
また、このような構成によれば、前記電極触媒層が、前記触媒層形成物を下方向に向けた状態で乾燥させることによって形成された複数の層を用いて形成されているので、比較的容易に、前記電極触媒層中における前記触媒粒子と前記電解質成分との分布状態を調整することが可能となる。
【0016】
また、本発明に係る固体電解質膜においては、陽極側の前記電極触媒層が二つの層を用いて形成されており、前記固体高分子電解質膜に接している第一の層における前記触媒粒子と前記電解質成分との比が1〜2:1であり、前記第一の層に接している第二の層における前記触媒粒子と前記電解質成分との比が3〜6:1である構成が好ましい。前記第一の層を上述のように定めたのは、前記第一の層における前記触媒粒子が前記電解質成分に対して2より大きくなると、電圧上昇が大きくなり、また1より小さくなると、電解電圧が高くなるからである。また、前記第二の層を上述のように定めたのは、前記第二の層における前記触媒粒子が前記電解質成分に対して6より大きくなると、膜との接合性が悪くなり、また3より小さくなるとと、電解電圧が高くなるからである。
この際、本発明に係る固体電解質膜においては、前記触媒粒子が、酸化イリジウムおよび白金の少なくとも一方であることが好ましい。
【0017】
さらに、上記課題を解決するための本発明は、固体高分子電解質膜に電極触媒層を接合して形成される固体電解質膜の製造方法において、触媒粒子と前記固体高分子電解質膜の電解質成分とを主成分とする触媒層形成物をシート体に塗布する塗布工程と、前記シート体における前記触媒層形成物の塗布面を下方向に向けた状態で前記触媒層形成物を乾燥させる乾燥工程と、前記シート体に形成された前記電極触媒層を前記シート体から前記固体高分子電解質膜に転写させる転写工程とを有していることを特徴としている。
【0018】
また、本発明に係る固体電解質膜の製造方法においては、前記塗布工程と前記乾燥工程とが交互に複数回行われた後に、前記転写工程が行われる構成が好ましい。さらに、本発明に係る固体電解質膜の製造方法においては、前記塗布工程が、スクリーン印刷にて行われる構成が好ましい。また、本発明に係る固体電解質膜の製造方法においては、前記乾燥工程が、前記シート体における前記触媒層形成物の塗布面を鉛直線方向に向けた状態で行われることが好ましい。さらに、本発明に係る固体電解質膜の製造方法においては、前記転写工程が、熱圧着によって行われる構成が好ましい。また、本発明に係る固体電解質膜の製造方法においては、前記触媒粒子として、酸化イリジウムおよび白金の少なくとも一つが用いられることが好ましい。
【0019】
さらに、上記課題を解決するための本発明は、固体高分子電解質膜に電極触媒層を接合して形成される固体電解質膜の製造方法において、触媒粒子と前記固体高分子電解質膜の電解質成分とを主成分とする触媒層形成物をシート体に塗布する塗布工程と、前記シート体における前記触媒層形成物の塗布面を下方向に向けた状態で、前記シート体における前記触媒層形成物の塗布面を乾燥させる乾燥工程と、前記シート体に形成された前記電極触媒層を前記シート体から前記固体高分子電解質膜に転写させる転写工程とを有し、陽極側シート体に形成される陽極触媒層が、前記塗布工程と前記乾燥工程とを二回繰り返すことによって、二つの層から形成されており、前記陽極側シート体に接すべく第一の形成層を塗布する際における前記触媒粒子と前記電解質成分との比が3〜6:1であり、前記第一の形成層に接すべく第二の形成層を塗布する際における前記触媒粒子と前記電解質成分との比が1〜2:1であって、陰極側シート体に形成される陰極触媒層が、前記塗布工程と前記乾燥工程とを行うことによって形成されており、前記転写工程において、前記固体高分子電解質膜の両面から、前記陽極側シート体に形成された陽極触媒層と前記陰極側シート体に形成された陰極触媒層とを熱圧着することを特徴としている。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る固体電解質膜を用いて構成された電解セルの概略断面図を示したものである。
【0022】
図1に示された電解セルは、本実施形態に係る固体電解質膜10と、この固体電解質膜10の両側に設けられた電極板(陽極側電極板12,陰極側電極板13)と、固体電解質膜10と電極板12,13との間に設けられた給電体(陽極側給電体14,陰極側給電体15)等を用いて構成されている。
【0023】
本実施形態に係る固体電解質膜10は、固体高分子電解質を膜状に形成しもの(以下「固体高分子電解質膜」ともいう。)11の両面に、貴金属、特に白金族金属から成る多孔質層(電極触媒層(陽極触媒層16,陰極触媒層17))を設けて構成されている。ここで、固体高分子電解質膜11としては、例えば、プロトン伝導性のカチオン交換膜(フッ素樹脂系スルフォン酸カチオン交換膜(デュポン社製「ナフィオン117」、「ナフィオン115」、「ナフィオン112」等))を用いることが好ましい。
なお、固体高分子電解質膜11に対して電極触媒層16,17を設ける方法(いわゆる、固体電解質膜の製造方法)については、後に詳細に説明する。
【0024】
電極触媒層16,17を形成する多孔質層としては、白金族金属のうち白金を用いることが可能であり、必要に応じて、白金とイリジウムとから成る二層構造とすることもできる。例えば、このような二層構造とすれば、長期にわたって、電気分解を行うことが可能である。
【0025】
また、電極触媒層は上記構成に限定されるものではなく、例えば、イリジウムの他に、二種類以上の白金族金属を積層した多層構造の電極触媒層を固体高分子電解質膜11の両面に形成することによって、固体電解質膜10を構成することもできる。
【0026】
さらに、本実施形態に係る固体電解質膜10によれば、固体高分子電解質膜11と電極触媒層16,17との間に水が存在しないので、溶液抵抗やガス抵抗が少ない。したがって、固体高分子電解質膜11と電極触媒層16,17との間の接触抵抗が低くなり、電圧降下が低減して、固体電解質膜10における電流分布が均一となる。その結果、高電流密度化、高温水電解、高圧水電解が可能となり、高純度の水素ガスおよび酸素ガスを効率よく生成させることが可能となる。
【0027】
また、固体電解質膜10の両側には、先に述べたように陽極側電極板12と陰極側電極板13とが設けられている。本実施形態に係る電極板12,13は、それぞれ複極式電極として構成されている。すなわち、陽極側電極板12においては、固体電解質膜10に近接する面が陽極となり、他面が陰極となる。また、陰極側電極板13においては、固体電解質膜10に近接する面が陰極となり、他面が陽極となる。そして、ここでは省略しているが、本実施形態に係る電解装置を成す電解処理部は、図1の電解セルを複数配設して構成されている。
【0028】
本実施形態においては、固体電解質膜10と陽極側電極板12とで挟まれた空間を陽極室といい、固体電解質膜10と陰極側電極板13とで挟まれた空間を陰極室という。また、本実施形態に係る電解セルにおいては、陽極室および陰極室に、陽極側給電体14および陰極側給電体15が設けられている。
【0029】
陽極側電極板12には、純水供給孔12aと、酸素抽出孔12bとが形成されており、純水供給孔12aを介して、電解セル外部から陽極室に対して純水が供給され、酸素抽出孔12bを介して、陽極室にて生成された酸素が電解セル外部に抽出される。陰極側電極板13には、水素抽出孔13bが形成されており、この水素抽出孔13bを介して、陰極室にて生成された水素が電解セル外部に抽出される。
【0030】
本実施形態に係る電解セルは、以上のように構成されており、固体電解質膜10を隔膜として用い、陽極室に設けられた陽極側給電体14に純水を供給し、この純水を電気分解することによって、陽極室側から酸素ガスを発生させ、陰極室側から水素ガスを発生させるべく機能する。
以下、本実施形態に係る電解セルにおける電解処理等について、さらに詳細に説明する。
【0031】
まず、図1に示された本実施形態に係る電解セルにおいては、陽極側電極板12に設けられた純水供給孔12aを介して、電解セルの外部に設けられた純水タンク等(図示省略)から、陽極室に設けられた陽極側給電体14に対して、純水等の供給が行われる。
【0032】
次いで、本実施形態に係る電解セルにおいては、陽極側給電体14へ純水を供給すると共に、各電極板12,13に対して電流を供給する(通電する)ことによって、主に陽極触媒層16で純水が分解され、酸素ガスが発生することとなる。この際、純水の一部は電解セル等を冷却するための冷却水としても機能するため、すべての純水が分解されるわけではない。したがって、本実施形態においては、陽極側電極板14に設けられた酸素抽出孔12bを介して、電解セルの外部に、純水と、分解された酸素ガスとが抽出されることとなる。
【0033】
次いで、本実施形態においては、酸素ガスと同時に生成されたH+イオンが、電場の働きによって固体電解質膜11内を移動する。したがって、本実施形態においては、H+イオンが移動することによって、陰極触媒層17でH+イオンが電子を得ることとなり、水素ガスが発生する。そして、陰極側電極板13に設けられた水素抽出孔13bを介して、電解セルの外部に、発生した水素ガスが抽出されることとなる。
【0034】
以上のように構成され機能する電解セルにおいては、エネルギ効率の低下等を適切に防止するために、電極触媒層を形成する成分の分布状態が適切である固体電解質膜を用いて電解セルを構成する必要がある。
以下、係る固体電解質膜を製造するための具体的方法を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0035】
図2は、本発明の実施形態に係る固体電解質膜を製造する際のフローチャートを示したものである。
【0036】
まず、本実施形態においては、ステップ21にて陽極触媒層形成工程が行われ、ステップ22にて陰極触媒層形成工程が行われる。具体的には、ステップ21にて、シート体上に陽極触媒層を形成させ、ステップ22にて、シート体上に陰極触媒層を形成させる。これらのステップ21およびステップ22については、後に詳細に説明する。
すなわち、本実施形態においては、固体電解質膜を構成する固体高分子電解質膜に対して、直接的に各電極触媒層を形成するのではなく、まずはじめに、シート体上に各電極触媒層を形成させる。
【0037】
次に、本実施形態においては、ステップ23にて、転写工程が行われる。すなわち、各シート上に形成された電極触媒層を固体高分子電解質膜上に転写させる。なお、この転写工程については、後に詳細に説明する。
【0038】
そして、本実施形態においては、ステップ24にて、後処理工程が行われる。すなわち、このステップ24においては、転写工程が終了した固体電解質膜の後処理が行われる。
【0039】
次に、図2に示した各ステップにて行われる各工程について、具体的に説明する。
【0040】
図3は、図2における陽極触媒層形成工程の一態様を示すフローチャートを示したものである。また、図4は、陽極触媒層形成工程の概略工程図を示したものである。以下、この図3および図4に基づいて陽極触媒層形成工程について説明する。
【0041】
本実施形態に係る陽極触媒層形成工程においては、まずはじめに、図4(a)に示すべく、シート体40に対して、第一の塗布工程が行われる(ステップ31)。この第一の塗布工程においては、シート体40に第一の陽極触媒層41を形成するために、第一の触媒層形成物41aの塗布が行われる。
また、この第一の塗布工程においては、スクリーン印刷によって、シート体40上に第一の触媒層形成物41aの塗布が行われる。
さらに、ここで用いられる第一の触媒層形成物41aは、触媒粒子としての酸化イリジウム粒子と、固体高分子電解質膜のプロトン伝導性を有する電解質成分(以下、「イオン交換体」という。)とを主成分として混合されたものである。塗布には、酸化イリジウム、イオン交換体および溶媒を混合して調整した触媒・イオン交換体混合液(この「触媒・イオン交換体混合液」は、「触媒層形成物」ともいう。)が用いられる。ここで、イオン交換体としては、例えば、固体高分子電解質膜と同じ電解質成分を含むデュポン社製のナフィオン液(ナフィオン含有率5〜10重量%)が用いられ、溶媒としては純水が用いられる。そして、本実施形態においては、第一の触媒層形成物41aを構成する酸化イリジウム粒子とイオン交換体との比(重量比)が、下式[数1]の如く定められている。
【数1】
酸化イリジウム粒子:イオン交換体=3〜6:1
【0042】
次に、第一の塗布工程の後に、図4(b)に示すべく、第一の触媒層形成物41aを乾燥させるために(第一の陽極触媒層41を形成するために)、第一の乾燥工程が行われる(ステップ32)。この第一の乾燥工程においては、シート体40における第一の触媒層形成物41aを塗布した面を下方向(鉛直線方向)に向けた状態で、乾燥工程が行われる。
また、この工程においては、第一の触媒層形成物41aは完全に乾燥させるのではなく、次に印刷したときに逆に版の裏につかない程度の乾燥状態とする。これは、次工程以降にて形成される第二の陽極触媒層と第一の陽極触媒層41との接合性を高めるためである。そのために、この工程においては、例えば、室温にて、1〜2時間程度の乾燥処理が行われ、急ぐ場合は、90〜100℃で30分程度の乾燥処理が行われる。
【0043】
次に、図4(c)に示すべく、シート体40に形成された第一の陽極触媒層41上に対して、第二の塗布工程が行われる(ステップ33)。この第二の塗布工程においては、第一の陽極触媒層41上に第二の陽極触媒層42を形成するために、第二の触媒層形成物42aの塗布が行われる。
また、この第二の塗布工程においても、第一の塗布工程の場合と同様に、スクリーン印刷によって、第二の触媒層形成物42aの塗布が行われる。
さらに、ここで用いられる第二の触媒層形成物42aも、第一の触媒層形成物41aと同様に、酸化イリジウム粒子とイオン交換体とを主成分として混合されたものである。塗布には、酸化イリジウム、イオン交換体および溶媒を混合して調整した触媒・イオン交換体混合液が用いられる。そして、本実施形態においては、第二の触媒層形成物42aを構成する酸化イリジウム粒子とイオン交換体との比(重量比)が、下式[数2]の如く定められている。
【数2】
酸化イリジウム粒子:イオン交換体=3〜6:1
【0044】
次に、第二の塗布工程の後に、図4(d)に示すべく、第二の触媒層形成物42aを乾燥させるために(第二の陽極触媒層42を形成するために)、第二の乾燥工程が行われる(ステップ34)。この第二の乾燥工程においても、第一の乾燥工程と同様に、シート体40における第二の触媒層形成物42aを塗布した面を下方向(鉛直線方向)に向けた状態で、乾燥工程が行われる。
また、この工程においても、第一の乾燥工程と同様に、第二の触媒層形成物42aは完全に乾燥させるのではなく、次に印刷したときに逆に版の裏につかない程度の乾燥状態とする。これは、次工程以降にて形成される第三の陽極触媒層と第二の陽極触媒層42との接合性を高めるためである。そのために、この工程においては、例えば、室温にて、1〜2時間程度の乾燥処理が行われ、急ぐ場合は、90〜100℃の環境下にて30分程度の乾燥処理が行われる。
【0045】
次に、図4(e)に示すべく、第二の陽極触媒層42上に対して、第三の塗布工程が行われる(ステップ35)。この第三の塗布工程においては、第二の陽極触媒層42上に第三の陽極触媒層43を形成するために、第三の触媒層形成物43aの塗布が行われる。
また、この第三の塗布工程においても、第一および第二の塗布工程の場合と同様に、スクリーン印刷によって、第三の触媒層形成物43aの塗布が行われる。さらに、ここで用いられる第三の触媒層形成物43aも、第一および第二の触媒層形成物41a,42aと同様に、酸化イリジウム粒子とイオン交換体とを主成分として混合されたものである。塗布には、酸化イリジウム、イオン交換体および溶媒を混合して調整した触媒・イオン交換体混合液が用いられる。そして、本実施形態においては、第三の触媒層形成物43aを構成する酸化イリジウム粒子とイオン交換体との比(重量比)が、下式[数3]の如く定められている。
【数3】
酸化イリジウム粒子:イオン交換体=1〜2:1
なお、この[数3]において、電解電圧の安定性の点から好ましいのは、酸化イリジウム粒子とイオン交換との比が、1.5〜1.7:1の範囲にある場合である。
【0046】
次に、第三の塗布工程の後に、図4(f)に示すべく、第三の触媒層形成物43aを乾燥させるために(第三の陽極触媒層43を形成するために)、第三の乾燥工程が行われる(ステップ36)。この第三の乾燥工程においても、第一および第二の乾燥工程と同様に、シート体40における第三の触媒層形成物43aを塗布した面を下方向(鉛直線方向)に向けた状態で、乾燥工程が行われる。
また、この工程においても、第一および第二の乾燥工程と同様に、第三の触媒層形成物43aは完全に乾燥させるのではなく、次に印刷したときに逆に版の裏につかない程度の乾燥状態とする。これは、次工程たる転写工程(後述する)における固体高分子電解質膜との接合性を高めるためである。そのために、この工程においては、例えば、室温にて、1〜2時間程度の乾燥処理が行われ、急ぐ場合は、90〜100℃の環境下にて30分程度の乾燥処理が行われる。
【0047】
以上の工程を経ることによって、図4(g)に示すべく、第一〜第三の陽極触媒層41,42,43から成る陽極触媒層16がシート体40上に形成されることとなる。このシート体40上に形成された陽極触媒層16は、後述する転写工程を経て、固体高分子電解質膜に適切に接合されることとなる。
【0048】
本実施形態によれば、固体高分子電解質膜に対する陽極触媒層16の接合性が、従来よりも格段に向上することとなる。また、本実施形態によって得られた固体電解質膜によれば、電解セルのエネルギ効率の低下を効果的に防止することが可能となる。このような効果を得ることができるのは、本実施形態における乾燥工程において、「逆さ乾燥」を行っているからである。以下、具体的に説明する。
【0049】
図5は、図4(a)のA部拡大図を示したものであり、図6は、図4(b)のB部拡大図を示したものである。
【0050】
先に説明したように、第一の塗布工程においては、触媒粒子41bとイオン交換体41cと溶媒とから成る第一の触媒層形成物が、シート体40上に塗布される。この際、図5から明らかなように、矢印Z方向が鉛直線方向(重力が作用する方向)の場合には、シート体40上に(重力が作用する下方向に)、イオン交換体41cが偏在することとなる。
従来であれば、このようにイオン交換体が偏在した状態で乾燥処理等が行われていたので、固体高分子電解質膜との接合性不良等の種々の問題が発生していた。
【0051】
しかしながら、本実施形態においては、先に説明したように、乾燥工程としては「逆さ乾燥」(図4および図6参照)を採用しているので、上述した問題を効果的に解消することができる。
【0052】
すなわち、本実施形態によれば、第一の触媒層形成物41aを塗布した面を矢印Z方向(鉛直線方向)に向けることによって、シート体40上のイオン交換体41cが、下方向(矢印Z方向)に流れることとなる。そして、イオン交換体41cが流れることによって、図6に示すように、イオン交換体41cの偏在状態が解消されつつ、第一の触媒層形成物41aの乾燥工程が行われることとなる。
【0053】
ここでは、図5および図6を用いて、第一の塗布工程および第一の乾燥工程について説明したが、本実施形態においては、第二の乾燥工程および第三の乾燥工程を行う場合にも、「逆さ乾燥」(図4参照)を採用している。したがって、第一の乾燥工程の場合と同様に、簡単に、イオン交換体の偏在状態を解消しつつ、各触媒層形成物41a,42a,43aの乾燥工程が行われることとなる。
【0054】
また、本実施形態においては、「逆さ乾燥」を行うと共に、各陽極触媒層41,42,43を形成する際における各触媒層形成物41a,42a,43a中の触媒粒子(酸化イリジウム粒子)とイオン交換体との比(重量比)を、上記[数1]〜[数3]の通りに定めている。
すなわち、固体高分子電解質膜と接する面近傍については、適切なイオン交換体を有するべく、また、シート体表面(シート体40と第一の陽極触媒層41とが接している面)近傍については、適切な触媒粒子を有するべく、「逆さ乾燥」を行う際の各種条件、および触媒粒子とイオン交換体との比を定めている。
【0055】
したがって、このようにして形成された陽極触媒層16(図4(e)参照)によれば、固体高分子電解質膜に接合される陽極触媒層16の転写面(第三の陽極触媒層43において、第二の陽極触媒層42と接している面に対向している面)に、適切な量のイオン交換体(固体高分子電解膜を形成する樹脂成分)が設けられ、陽極触媒層16の表面(第一の陽極触媒層41において、シート体40と接している面)に適切な量の触媒粒子が設けられることとなる。
【0056】
次に、図2のステップ22における陰極触媒層形成工程について説明する。
【0057】
図7は、図2における陰極触媒層形成工程の一態様を示すフローチャートを示したものである。また、図8は、陰極触媒層形成工程の概略工程図を示したものである。
【0058】
本実施形態に係る陰極触媒層形成工程においては、まずはじめに、図8(a)に示すべく、シート体80に対して、第一の塗布工程が行われる(ステップ71)。この第一の塗布工程においては、シート体80に第一の陰極触媒層81を形成するために、第一の触媒層形成物81aの塗布が行われる。
また、この第一の塗布工程においては、スクリーン印刷によって、シート体80上に第一の触媒層形成物81aの塗布が行われる。
さらに、ここで用いられる第一の触媒層形成物81aは、触媒粒子としての白金(あるいは白金黒)粒子(以下、単に「白金粒子」という。)と、イオン交換体とを主成分として混合されたものである。
塗布には、白金粒子、イオン交換体および溶媒を混合して調整した触媒・イオン交換体混合液が用いられる。イオン交換体としては、例えば、固体高分子電解質膜と同じ成分を用いる。また、溶媒としては、純水が用いられる。そして、本実施形態においては、第一の触媒層形成物81aを構成する白金粒子とイオン交換体との比(重量比)が、下式[数4]の如く定められている。
【数4】
白金粒子:イオン交換体=4〜6:1
【0059】
次に、第一の塗布工程の後に、図8(b)に示すべく、第一の触媒層形成物81aを乾燥させるために(第一の陰極触媒層81を形成するために)、第一の乾燥工程が行われる(ステップ72)。この第一の乾燥工程においては、上向き乾燥、あるいは先に説明した「逆さ乾燥」が行われる。
また、この工程においては、第一の触媒層形成物81aは完全に乾燥させるのではなく、次に印刷したときに逆に版の裏につかない程度の乾燥状態とする。これは、次工程以降にて形成される第二の陰極触媒層と第一の陰極触媒層81との接合性を高めるためである。そのために、この工程においては、例えば、室温にて、1〜2時間程度の乾燥処理が行われ、急ぐ場合は、90〜100℃の環境下にて30分間程度の乾燥処理が行われる。
【0060】
次に、図8(c)に示すべく、シート体80に形成された第一の陽極触媒層81上に対して、第二の塗布工程が行われる(ステップ73)。この第二の塗布工程においては、第一の陰極触媒層81上に第二の陰極触媒層82を形成するために、第二の触媒層形成物82aの塗布が行われる。
また、この第二の塗布工程においても、第一の塗布工程の場合と同様に、スクリーン印刷によって、第二の触媒層形成物82aの塗布が行われる。
さらに、ここで用いられる第二の触媒層形成物82aも、第一の触媒層形成物81aと同様に、白金粒子とイオン交換体とを主成分として混合されたものである。塗布には、白金粒子、イオン交換体および溶媒を混合して調整した触媒・イオン交換体混合液が用いられる。そして、本実施形態においては、第二の触媒層形成物42aを構成する白金粒子とイオン交換体との比(重量比)が、下式[数5]の如く定められている。
【数5】
白金粒子:イオン交換体=4〜6:1
【0061】
次に、第二の塗布工程の後に、図8(d)に示すべく、第二の触媒層形成物82aを乾燥させるために(第二の陰極触媒層82を形成するために)、第二の乾燥工程が行われる(ステップ74)。この第二の乾燥工程においても、上向き乾燥、あるいは第一の乾燥工程と同様に、「逆さ乾燥」が行われる。
また、この工程においても、第一の乾燥工程と同様に、第二の触媒層形成物42aは完全に乾燥させるのではなく、次に印刷したときに逆に版の裏につかない程度の乾燥状態とする。これは、次工程たる転写工程(後述する)における固体高分子電解質膜との接合性を高めるためである。そのために、この工程においては、例えば、例えば、室温にて、1〜2時間程度の乾燥処理が行われ、急ぐ場合は、90〜100℃の環境下にて30分間程度の乾燥処理が行われる。
【0062】
以上の工程を経ることによって、図8(e)に示すべく、第一および第二の陰極触媒層81,82から成る陰極触媒層17がシート体80上に形成されることとなる。このシート体80上に形成された陰極触媒層17も、先に説明した陽極触媒層16と同様に、後述する転写工程を経て、固体高分子電解質膜に適切に接合されることとなる。
【0063】
すなわち、ここで説明した陰極触媒層17も、陽極触媒層16と同様に、「逆さ乾燥」を行うと共に、各陰極触媒層81,82を形成する際における各触媒層形成物81a,82a中の触媒粒子(白金粒子)とイオン交換体との比(重量比)を、上記[数4]および[数5]の通りに定めている。
すなわち、陰極触媒層に適切な触媒粒子を有するべく、触媒粒子とイオン交換体との比を定めている。
【0064】
したがって、このようにして形成された陰極触媒層17(図8(e)参照)によれば、陽極触媒層16と同様に、固体高分子電解質膜に接合される陰極触媒層17の表面に、適切な量の触媒粒子が設けられることとなる。
【0065】
次に、図2のステップ23における転写工程について説明する。
【0066】
図9は、転写工程の概略工程図を示したものである。本実施形態においては、上述したように、シート体40,80上に、それぞれ、イオン交換体の分布状態等が適切に調整された触媒層16,17が形成されている。そして、図9に示すべく、陽極触媒層16と、陰極触媒層17とが、固体高分子電解質膜11(イオン交換体と同じ成分で形成されているナフィオン膜(例えば、ナフィオン117))の各面に転写される。
【0067】
ここで、本実施形態においては、各触媒層16,17を熱圧着によって転写している。具体的には、ホットプレス機等を用いて、転写工程を行っている。
また、本実施形態においては、この熱圧着を行う際に、150℃程度の温度にて40kg/cm2 程度の圧力を加えた状態で10分間程度保持するような条件を与えている。
【0068】
そして、この転写工程を経た固体電解質膜に対して、先に説明した後処理工程を施すことによって(図2参照)、図1にて用いられる固体電解質膜10が得られることとなる。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る固体電解質膜における陽極側および陰極触媒層16,17は、「逆さ乾燥」を行うと共に、各触媒層41,42,43,81,82を形成する際における各触媒層形成物41a,42a,43a,81a,82a中の触媒粒子とイオン交換体との比(重量比)を、上記[数1]〜[数5]の通りに定めることによって形成されている。すなわち、固体高分子電解質膜と接する面(転写工程にて接合される面)近傍については、適切なイオン交換体を有するべく、また、シート体表面近傍については、適切な触媒粒子を有するべく、「逆さ乾燥」を行う際の各種条件、および触媒粒子とイオン交換体との比が定められている。
【0070】
よって、本実施形態によれば、固体高分子電解質膜に接合される陽極側および陰極触媒層16,17の転写面に適切な量のイオン交換体が設けられ、陽極側および陰極触媒層16,17の表面(電解セル構成時に給電体と接する面)に適切な量の触媒粒子が設けられた状態で、上述した転写工程が行われることとなる。
【0071】
したがって、本実施形態によれば、固体高分子電解質膜11と電極触媒層16,17との接合界面近傍において、電極触媒層16,17中における固体高分子電解質樹脂の成分濃度を適切な状態に維持することが可能となるので、固体高分子電解質膜11と電極触媒層16,17と接合性を向上させることができる。
また、電極触媒層16,17の表面近傍においても、固体高分子電解質樹脂の成分濃度を適切な状態に維持することが可能となるので、電極触媒層16,17における抵抗の増加、延いては電解電圧の上昇を防ぎ、電解セルのエネルギ効率の低下を防止することができる。本実施形態に係る固体電解質膜10によれば、電解電圧を1.85〜1.90V以下に維持可能な電解セルを得ることができる。
具体的に、従来技術に係る固体電解質膜を用いて構成された電解セルによれば、電解時間の経過に伴って電圧の上昇(300時間で約0.5Vの上昇)がみられたが、本発明に係る固体電解質膜を用いて構成された電解セルによれば、係る電圧上昇はみられなかった。例えば、陽極触媒層の第一の層を、IrO2:ナフィオン=3:1、第二の層を、IrO2:ナフィオン=1.67:1とし、陰極触媒層を、Pt:ナフィオン=4:1として、「ナフィオン117」を用いた場合には、長時間電解処理を行った場合であっても、電解電圧は、1.77〜1.80V(80℃、1.4A/cm2)にて維持され、特に電圧上昇を示すことはなかった。また、「ナフィオン112」を用いた場合には、「ナフィオン117」よりも膜厚が薄いため、膜厚抵抗が下がり、長時間電解処理を行った場合であっても、電解電圧は、1.59〜1.62V(80℃、1.4A/cm2)にて維持され、特に電圧上昇を示すことはなかった。
【0072】
なお、本実施形態においては、シート体40,80の材質等については、特に説明しなかったが、電極触媒層16,17を転写させる際の転写率、耐熱性等を鑑みれば、ポリイミド、PTFE等を用いることが好ましい。
【0073】
また、本実施形態においては、塗布工程の際にスクリーン印刷を利用する場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、スプレー等を利用して塗布工程を行ってもよい。
【0074】
また、陽極電極触媒層16の触媒粒子は、本実施形態にて説明したものに限定されるわけではなく、白金、酸化ルテニウム(RuO2)等を用いてもよい。また、陽極電極触媒層16は、一種類の触媒粒子を用いて形成される場合には限定されず、複数種の触媒粒子(例えば、IrO2とPt、あるいはRuO2とPt)を用いて形成してもよい。この際の各粒子の成分濃度等は、IrO2:Pt=50:50〜100:0(重量%)、RuO2:Pt=50:50〜100:0(重量%)程度であることが好ましい。
さらに、陰極電極触媒層17の触媒粒子は、本実施形態にて説明したものに限定されるわけではなく、白金黒等を用いてもよい。また、陰極電極触媒層17は、一種類の触媒粒子を用いて形成される場合には限定されず、複数種の触媒粒子を用いて形成してもよい。
【0075】
また、本実施形態においては、陽極側が三層である場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。したがって、例えば、必要に応じて、一つ、あるいは四つ以上の層から形成されてもよい。ただし、比較的簡単に十分な濃度勾配を得るためには、二層以上であることが好ましい。
このように三層以外の構造とした場合であっても、本実施形態にて説明した製造方法における乾燥工程等を行えば、比較的容易に、電極触媒層中における固体高分子電解質等の分布状態が適切に調整された固体電解質膜を得ることができる。
【0076】
また、本実施形態においては、乾燥工程としては、「逆さ乾燥」を行う場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、固体高分子電解質樹脂の偏在を防止可能であれば、如何なる方法でもよい。したがって、例えば、遠心力等を用いて固体高分子電解質樹脂の偏在を解消しつつ、乾燥処理を行ってもよい。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、電極触媒層中における固体高分子電解質等の分布状態が適切に調整された固体電解質膜を得ることができる。また、電極触媒層中における固体高分子電解質等の分布状態が適切に調整された固体電解質膜を得るための製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る固体電解質膜を用いて構成された電解セルの一態様を示す概略断面図
【図2】本発明の実施形態に係る固体電解質膜を製造する際のフローチャート
【図3】図2における陽極触媒層形成工程の一態様を示すフローチャート
【図4】図2における陽極触媒層形成工程を示す概略工程図
【図5】図4(a)のA部拡大図
【図6】図4(b)のB部拡大図
【図7】図2における陰極触媒層形成工程の一態様を示すフローチャート
【図8】図2における陰極触媒層形成工程を示す概略工程図
【図9】図2における転写工程を示す概略図
【符号の説明】
10…固体電解質膜、11…固体高分子電解質膜、12…陽極側電極板、12a…純水供給孔、12b…酸素抽出孔、13…陰極側電極板、14…陽極側給電体、15…陰極側給電体、16…陽極触媒層、17…陰極触媒層、40…シート体(陽極側シート体)、41…第一の陽極触媒層、41a…第一の触媒層形成物、41b…触媒粒子、41c…イオン交換体、42…第二の陽極触媒層、42a…第二の触媒層形成物、43…第三の陽極触媒層、43a…第三の触媒層形成物、80…シート体(陰極側シート体)、81…第一の陰極触媒層、81a…第一の触媒層形成物、82…第二の陰極触媒層、82a…第二の触媒層形成物

Claims (9)

  1. 固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜に設けられた電極触媒層とを有する固体電解質膜であって、触媒粒子と前記固体高分子電解質膜の電解質成分とを主成分とする触媒層形成物を用いて前記電極触媒層が形成され、前記電極触媒層が、前記触媒層形成物を下方向に向けた状態で乾燥させることによって形成された複数の層を用いて構成されており、前記固体高分子電解質膜に近い側の一の層と、前記一の層に接して前記固体高分子電解質膜と反対側に位置する他の層とを比較した場合において、前記他の層における前記触媒粒子の含有率が、前記一の層における前記触媒粒子の含有率以上であることを特徴とする固体電解質膜。
  2. 陽極側の前記電極触媒層が二つの層を用いて形成されており、前記固体高分子電解質膜に接している第一の層における前記触媒粒子と前記電解質成分との比が1〜2:1であり、前記第一の層に接している第二の層における前記触媒粒子と前記電解質成分との比が3〜6:1である請求項1に記載の固体電解質膜。
  3. 前記触媒粒子が、酸化イリジウムおよび白金の少なくとも一方である請求項1または2に記載の固体電解質膜。
  4. 固体高分子電解質膜に電極触媒層を接合して形成される固体電解質膜の製造方法において、触媒粒子と前記固体高分子電解質膜の電解質成分とを主成分とする触媒層形成物をシート体に塗布する塗布工程と、前記シート体における前記触媒層形成物の塗布面を下方向に向けた状態で前記触媒層形成物を乾燥させる乾燥工程と、前記シート体に形成された前記電極触媒層を前記シート体から前記固体高分子電解質膜に転写させる転写工程とを有していることを特徴とする固体電解質膜の製造方法。
  5. 前記塗布工程と前記乾燥工程とが交互に複数回行われた後に、前記転写工程が行われる請求項4に記載の固体電解質膜の製造方法。
  6. 前記塗布工程が、スクリーン印刷を用いて行われる請求項4または5に記載の固体電解質膜の製造方法。
  7. 前記転写工程が、熱圧着によって行われる請求項4から6のいずれか1項に記載の固体電解質膜の製造方法。
  8. 前記触媒粒子として、酸化イリジウムおよび白金の少なくとも一つが用いられる請求項4から7のいずれか1項に記載の固体電解質膜の製造方法。
  9. 固体高分子電解質膜に電極触媒層を接合して形成される固体電解質膜の製造方法において、
    触媒粒子と前記固体高分子電解質膜の電解質成分とを主成分とする触媒層形成物をシート体に塗布する塗布工程と、前記シート体における前記触媒層形成物の塗布面を下方向に向けた状態で、前記シート体における前記触媒層形成物の塗布面を乾燥させる乾燥工程と、前記シート体に形成された前記電極触媒層を前記シート体から前記固体高分子電解質膜に転写させる転写工程とを有し、
    陽極側シート体に形成される陽極触媒層が、前記塗布工程と前記乾燥工程とを二回繰り返すことによって、二つの層から形成されており、前記陽極側シート体に接すべく第一の形成層を塗布する際における前記触媒粒子と前記電解質成分との比が3〜6:1であり、前記第一の形成層に接すべく第二の形成層を塗布する際における前記触媒粒子と前記電解質成分との比が1〜2:1であって、陰極側シート体に形成される陰極触媒層が、前記塗布工程と前記乾燥工程とを行うことによって形成されており、前記転写工程において、前記固体高分子電解質膜の両面から、前記陽極側シート体に形成された陽極触媒層と前記陰極側シート体に形成された陰極触媒層とを熱圧着することを特徴としている固体電解質膜の製造方法。
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