JP3769517B2 - ダイオキシン含有ガスの処理装置および処理方法 - Google Patents

ダイオキシン含有ガスの処理装置および処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイオキシン含有ガスの処理装置および処理方法に関し、詳しくはオゾンと過酸化水素とを含む活性水を用いてダイオキシン含有ガスに含まれているダイオキシン類を処理するダイオキシン含有ガスの処理装置および処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記の活性水を用いてダイオキシン類を処理するダイオキシン含有ガスの処理技術に就いては、特開2000−852171号公報により従来から公知である。図10および図11は、同公報に開示された上記の処理技術を説明するものであって、図10は同技術におけるダイオキシン含有ガスの処理装置の概略説明図であり、図11は図10中の活性水供給装置の詳細説明図である。
【0003】
図10および図11において、9は焼却炉、10は排ガス通路、11は減温塔、12は活性水散布部、13は電気集塵機、14は誘引送風機、15は煙突、17はオゾン含有水供給配管、2はオゾン化ガス供給配管、16は活性水供給装置である。活性水供給装置16は、水ポンプ16a、逆止弁16b、逆止弁16c、オゾン発生器16d、エジェクタ16e、気液混合器16f、過酸化水素供給装置16g、および活性水散布部12から構成されている。
【0004】
つぎに図10および図11の装置の動作について説明する。焼却炉9において可燃性の廃棄物などが焼却され、この焼却により850℃程度の高温度の燃焼ガスたる排ガスが発生する。焼却対象とされる上記の廃棄物がポリ塩化ビニルなどの含塩素物質である場合には、上記の排ガスは、ダイオキシン類を含有する場合が多い。排ガスは、ボイラー(図示せず)などを介して650℃程度あるいはそれ以下に冷却され、誘引送風機14により減温塔11に誘引される。減温塔11には、二流体噴霧ノズルを有する活性水散布部12が取り付けられており、減温塔11に誘引された排ガスに向けて活性水散布部12から活性水が粒子状に噴霧される。この活性水は、図11により後記する活性水供給装置16から供給され、冷却水にオゾンと過酸化水素とを含有せしめて得たものであって、排ガスは、活性水の噴霧により200℃程度に急速に冷却されると共にダイオキシン類が分解処理される。冷却した後の当該ガスは、電気集塵機13で煤塵が除去された後、誘引送風機14を経て煙突15から大気中に放出される。
【0005】
図11において、上記の活性水は、空気または酸素を原料としてオゾン発生器16dにおいて製造されたオゾン化ガス(オゾンと空気または酸素との混合ガス)をエジェクタ16eの吸引作用と気液混合器16fの混合作用により冷却水中にオゾン化ガスを溶け込ませて得られたオゾン含有水と過酸化水素供給装置16gから供給される過酸化水素とオゾン化ガスとで生成される。この活性水は、減温塔11内の通路を通過する排ガスに向けて活性水散布部12から粒子状に噴霧される。排ガスは、活性水の噴霧により急速に冷却し、この冷却過程で活性水中に生成しているOHラジカルの強力な酸化作用により排ガス中のダイオキシン類およびダイオキシン類の前駆体は酸化分解する。排ガスは、その後、電気集塵機13で煤塵が除去され、誘引送風機14を経て煙突15から大気中に放出される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記従来技術では、排ガス中に含有されているダイオキシン類の分解度が未だ十分でない、あるいはダイオキシン類の分解度を高めるには多量のオゾンを必要とするなどの問題がある。よって本発明は、従来技術における上記の問題に鑑みて、ダイオキシン含有ガスに含まれているダイオキシン類を高効率で分解処理が可能な、あるいは従来より少ないオゾン量でダイオキシン類の分解処理が可能なダイオキシン含有ガスの処理装置および処理方法を提案することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係るダイオキシン含有ガスの処理装置は、ダイオキシン含有ガスをガス通路内において一方方向に流すガス輸送装置、および上記ガス通路内に上記ダイオキシン含有ガスの流動方向に間隔を置いて設けられて上記ダイオキシン含有ガスにオゾンと過酸化水素とを含む活性水を散布する複数の活性水散布部を含む活性水供給装置を備えたダイオキシン含有ガスの処理装置であって、上記活性水散布部は、上記ダイオキシン含有ガスの上記ガス通路内における流動方向に上記活性水を散布する2個の順方向活性水散布部分を含み、且つ上記2個の順方向活性水散布部分の設置間隔は、上記ダイオキシン含有ガスの上記2個の順方向活性水散布部分を通過するに要する平均所要時間が、上記活性水に含まれているOHラジカルの常温における半減期の0.3〜2倍程度となるようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項2に係るダイオキシン含有ガスの処理装置は、ダイオキシン含有ガスをガス通路内において一方方向に流すガス輸送装置、および上記ガス通路内に上記ダイオキシン含有ガスの流動方向に間隔を置いて設けられて上記ダイオキシン含有ガスにオゾンと過酸化水素とを含む活性水を散布する複数の活性水散布部を含む活性水供給装置を備えたダイオキシン含有ガスの処理装置であって、上記活性水散布部は、上記ダイオキシン含有ガスの上記ガス通路内における流動方向に上記活性水を散布する順方向活性水散布部分と上記順方向活性水散布部分の下流側に設置されて上記流動方向とは逆の方向に上記活性水を散布する逆方向活性水散布部分を含み、且つ上記順方向活性水散布部分と上記逆方向活性水散布部分との設置間隔は、上記ダイオキシン含有ガスの上記両活性水散布部分を通過するに要する平均所要時間が、上記活性水に含まれているOHラジカルの常温における半減期の0.5〜3倍程度となるようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項3に係るダイオキシン含有ガスの処理装置は、請求項1または請求項2において、上記ガス通路は、ダイオキシン含有ガスを発生する焼却炉に設けられた減温塔内の排ガス通路であり、上記ガス輸送装置は、上記減温塔の下流に設けられた誘引送風機であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項4に係るダイオキシン含有ガスの処理方法は、請求項1〜請求項3のいずれか一項記載のダイオキシン含有ガスの処理装置を用い、上記活性水を100〜650℃程度の高温度のダイオキシン含有ガスに散布することを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下の諸実施の形態においては、前記図10および図11にて表示された部位と同じ部位に就いては同じ符号を付して説明を省略し、また一部の部位の符号付けも省略することがある。
【0012】
実施の形態1.
図1〜図5は、本発明のダイオキシン含有ガスの処理装置および処理方法における実施の形態1を説明するものであって、図1は実施の形態1の処理装置の断面図、図2はダイオキシン含有ガスの滞留時間とOHラジカル量との関係を示すグラフ、図3はオゾン、過酸化水素、およびOHラジカル量の時間的変化を示すグラフ、図4はオゾン、過酸化水素、およびOHラジカル間における簡略化した反応モデルにおける反応スキーム、図5は供給オゾン量とダイオキシン類の分解度との関係を示すグラフである。
【0013】
図1において、10は排ガス通路、11は減温塔、12は活性水散布部、矢印Fは減温塔11内のガス通路における前記ダイオキシン含有ガスの一例としての排ガスの流動方向を示す。なお実施の形態1および後続の実施の形態において、排ガス通路10および減温塔11を含むダイオキシン含有ガスの処理装置の全体につき言及する必要がある場合には前記図10を参照することとする。また活性水散布部12には、前記図11に示す活性水供給装置16から活性水が供給される。
【0014】
活性水散布部12は、活性水を排ガスに向けて噴霧するものであって、上記の排ガスの流動方向たる矢印Fの方向に活性水を噴霧する順方向活性水散布部分121と当該部分121の下流側に設置された順方向活性水散布部分122から構成されている。順方向活性水散布部分121、122とも、図11に示す活性水散布部12と同じ構造並びに機能を有する二流体噴霧ノズル構造のものである。
【0015】
しかして実施の形態1の装置は、前記図10に示した従来のダイオキシン含有ガスの処理装置とは、活性水供散布部12が2個の順方向活性水散布部分121、122とから構成されている点において異なり、その他の構成は同じである。
【0016】
図1において、排ガス通路10は焼却炉9の下流にあり、減温塔11の下端には電気集塵機13に繋がる排ガス通路11aが設けられている。順方向活性水散布部分121および122へのオゾン含有水と過酸化水素の供給はオゾン含有水供給配管17から、またオゾン化ガスはオゾン化ガス供給配管2から並列に供給される。順方向活性水散布部分121および122への当該配管17および当該配管2からの供給割合は、1対1とされている。焼却炉9から排ガス通路10を経由して減温塔11に至った600〜650℃程度の高温度の排ガスは、活性水供散布部12からの活性水の噴霧を受けて冷却され、その間にダイオキシンが分解処理され、減温塔11の出口では200℃程度あるいはそれ以下に冷却されて電気集塵機13移送される。
【0017】
つぎに実施の形態1の装置の動作について説明する。順方向活性水散布部分122は、その上流側に設置された順方向活性水散布部分121から矢印Fの方向に間隔Lだけ隔てた設置されており、間隔Lは、上記排ガスが順方向活性水散布部分121、122間を通過するに要する平均所要時間、即ち滞留時間が、上記活性水に含まれているOHラジカルの常温(−30℃〜50℃)における半減期の0.3〜2倍程度となる大きさに設定されている。いま半減期の1倍となる間隔をD(以下同じ)とすると、間隔Lは0.3D〜2D程度と表現される。本発明らの実験によれば、間隔Lが過小でも過大でもOHラジカルによるダイオキシン類の分解効率が低下する傾向があって、しかして間隔Lは、0.5D〜1.5D程度が特に好ましい。なお本発明において、OHラジカルの常温における半減期は、下記の方法にて測定される。
【0018】
OHラジカルの半減期の測定方法:OHラジカルの生成量および生成したOHラジカルの量の時間的変化は、イニシエーション、プロパゲーション、およびターミネーションの3段階に分け、J.Hoigneらの反応モデルに基づき、但し・HO3、・HO4、・O2などのラジカルおよびその生成反応などを考慮せずに簡略化した下記のモデル反応式(1)〜(6)、および図4に示す反応スキームを適用して算出する。
[・HO2]+[O3]+[H+]→[・OH]+[・HO2(・O2 -)]+[O2] (1)
[・HO2(・O2 -)]+[O3] →[・OH]+[O2] (2)
[・OH]+[O3] → [・HO2(・O2 -)]+[O2] (3)
[・OH]+[H22] →[・HO2]+ [H2O] (4)
[・OH]+・OH]+[・HO2(・O2 -)] →[H2O]+[O2] (5)
[R]+[・OH] →[H2O]+[O2] (6)
なお、反応式(1)〜(6)の各反応速度常数(K1)〜(K6)として、5.5×106(K1)、1.0×108(K2)、1.0×108(K3)、2.7×107(K4)、6.6×108(K5)、および8.5×107(K6)をそれぞれ用いる。
【0019】
図3(a)、(b)、および(C)は、活性水中でのオゾンと過酸化水素との接触混合に基づく化学反応によるオゾン量、過酸化水素量、および生成したOHラジカル量の時間的変化を上記モデル反応式(1)〜(6)および各反応速度常数(K1)〜(K6)に基づいてシミュレーションした結果を示し、横軸はオゾンと過酸化水素とが互いに接触し混合した時点を0秒としてその後の経過時間(秒)であり、縦軸は上記各物質の量である。この計算例によれば、オゾンと過酸化水素の初期濃度が、いずれも10×10-4mol/リットルである場合、両者の接触混合の6ミリ秒後にOHラジカルの生成量が最大(約0.5×10-7mol/リットル)となり、その0.4秒後に自己分解によりOHラジカルの量が半減することが分かる。なお上記シミュレーションでは、オゾンと過酸化水素との各全量が瞬時に接触混合するとして計算しているが、実際には瞬時ではなく本発明者の研究によれば0.1秒程度の遅れが生じる。よって、上記の例ではOHラジカルの半減期は、上記シミュレーションで計算された半減期に0.1秒の遅れを加算した値、即ち0.5秒とする。
【0020】
OHラジカルの半減期が0.5秒であることから、図2は、図1における順方向活性水散布部分121と順方向活性水散布部分122との間隔Lを0.5Dに設定した場合における上記両散布部分121、122から粒子状に噴霧された活性水中のOHラジカル量と経過時間の関係をシミュレーションした結果を示す。図2において、横軸は減温塔11内での排ガスの滞留時間であり、縦軸はOHラジカル量、並びに排ガスと噴霧された活性水の粒子との接触面積である。横軸のA点は順方向活性水散布部分121の活性水噴霧位置を示し、B点は順方向活性水散布部分122の活性水噴霧位置を示す。また図2において、曲線G1は図1の装置におけるOHラジカル量の変化を示し、曲線G2は図10の従来装置におけるOHラジカル量の変化を示し、曲線G3は排ガスと活性水粒子との接触面積の変化を示す。その際、活性水の総噴霧量をNリットルとすると、曲線G1では順方向活性水散布部分121と順方向活性水散布部分122とから互いに等量のN/2ずつが噴霧されており、曲線G2では図10の活性水散布部12からNリットルが噴霧されている。
【0021】
図2の曲線G2から明らかな通り、従来装置ではOHラジカル量は、活性水を排ガスに噴霧した直後が最大であり、その後、自己分解、熱分解、排ガス中の有機物との反応などにより急激に減少する。一方、曲線G3から、OHラジカル量が急激に減少した直後であっても排ガスと噴霧された活性水の粒子との接触面積は、ピーク値の未だ1/4程度に過ぎず、したがって大部分のOHラジカルは排ガスと、換言すると同ガス中のダイオキシンと未接触のままで消費されることが分かる。
【0022】
これに対して、曲線G1ではOHラジカル量は二つのピークを持ち、このために実施の形態1の処理装置では、活性水の粒子と排ガスとの接触が100%となる滞留時間領域において多量のOHラジカルが存在し、このためにOHラジカルによるダイオキシン類の分解効率が向上して、所定のダイオキシン分解率を得るために必要とされるオゾンおよび過酸化水素の各量を低減可能なことが分かる。
【0023】
図5は、図2におけるシミュレーションの結果を実験により明らかにしたものであって、順方向活性水散布部分121、122間の間隔Lの大きさをパラメータとし、縦軸は減温塔11の入り口において実測された排ガス中のダイオキシン類量に対する減温塔11の出口で実測されたダイオキシン類の残留量との比(DXNs)であり、横軸は減温塔11内での排ガスの通過流量と順方向活性水散布部分121、122に供給された合計オゾン量から計算された排ガス中のオゾン濃度(g/Nm3)である。図5において、曲線G4は参考の目的で取り上げた従来装置の場合、曲線G5は実施の形態1の装置おける間隔Lが1.0Dの場合、曲線G6は同間隔Lが0.7Dの場合である。図5から、DXNsを0.01とするためには、実施の形態1の装置では従来装置の場合より供給オゾン量が1/2程度にできること、並びに供給オゾン量を増やせばDXNsを0.001程度あるいはそれ以下とし得ることも明らかである。
【0024】
実施の形態2.
図6および図7は、本発明のダイオキシン含有ガスの処理装置および処理方法における実施の形態2を説明するものであって、図6は実施の形態2の処理装置の断面図、図7は排ガスの滞留時間とOHラジカル量との関係を示すグラフである。図6において、123は逆方向活性水散布部分である。よって実施の形態2における活性水散布部12は、順方向活性水散布部分121とその下流側に設置された逆方向活性水散布部分123とから構成されており、且つ両散布部分121、123の設置間隔Lは、ダイオキシン含有ガスが両散布部分121、123間を通過するに要する平均所要時間、即ち滞留時間が、上記活性水に含まれているOHラジカルの常温(−30℃〜50℃)における半減期の0.5〜3倍程度となる大きさ、即ち0.5D〜3Dとされている。
【0025】
しかして実施の形態2の処理装置は、前記実施の形態1の処理装置とは順方向活性水散布部分122に代えて逆方向活性水散布部分123が採用されると共に設置間隔Lが0.5D〜3Dとされた点において異なり、その他の構成は同じである。なお上記設置間隔Lは、特に好ましくは0.7D〜2.5Dである。逆方向活性水散布部分123は、順方向活性水散布部分121と同じ構造を有し、活性水の散布方向が逆なだけである。順方向活性水散布部分121および逆方向活性水散布部分123へのオゾン含有水と過酸化水素の供給はオゾン含有水供給配管17から、またオゾン化ガスはオゾン化ガス供給配管2から並列に供給される。順方向活性水散布部分121および逆方向活性水散布部分123への当該配管17および当該配管2からの供給割合は、1対1とされている。
【0026】
つぎに実施の形態2の装置の動作について説明する。逆方向活性水散布部分123からは、排ガスの流動方向Fとは逆方向に活性水が噴霧されるので、両散布部分121、123からの噴霧は両者の中間辺りで互いに衝突し合って乱流を生ぜしめる。このために、排ガスと活性水の粒子との混合が良好となって接触面積が増大し、OHラジカルによるダイオキシン類の分解が促進される。
【0027】
図7では、上記設置間隔Lを0.9Dとした場合において、上記両散布部分121、123から粒子状に噴霧された活性水中のOHラジカル量と経過時間の関係をシミュレーションした結果を示す。図7において、横軸は減温塔11内での排ガスの滞留時間であり、縦軸はOHラジカル量、並びに排ガスと噴霧された活性水の粒子との接触面積である。横軸のA点は順方向活性水散布部分121の活性水噴霧位置を示し、C点は逆方向活性水散布部分123の活性水噴霧位置を示す。また図7において、曲線G7は図6の処理装置におけるOHラジカル量の変化を示し、曲線G2は前記図2での曲線G2の採録であり、曲線G8は排ガスと活性水粒子との接触面積の変化を示す。その際、活性水の総噴霧量をNリットルとして、曲線G7では順方向活性水散布部分121と逆方向活性水散布部分123とから互いに等量のN/2ずつが噴霧されており、曲線G2では図10の活性水散布部12からNリットルが噴霧されている。
【0028】
図7から、実施の形態2の処理装置では順方向活性水散布部分121からの噴霧直後から既に排ガスと活性水の粒子との接触が始まっていることが分かり、減温塔11内ではOHラジカルが排ガスの流れ方向に均一分散しているものと思われる。この結果、排ガス中のダイオキシン類の分解がコンパクトな空間で効果的に達成され、しかしてダイオキシン類の分解に必要なオゾンや過酸化水素の量の低減が可能となる。
【0029】
実施の形態3.
図8は、本発明のダイオキシン含有ガスの処理装置における実施の形態3の断面図であって、活性水散布部12は2個の、排ガスの流動方向たる矢印Fの方向に活性水を散布する順方向活性水散布部分124、125から構成されており、上記両散布部分124、125とも、複数の散布口aを備えている。このために上記両散布部分124、125の各散布口aから噴霧された活性水の粒子は、実施の形態1で用いられた、単一散布口を備えた順方向活性水散布部分121、122から噴霧された場合よりも減温塔11の内部の隅々にまで行き渡り易い利点がある。オゾンと過酸化水素とでダイオキシン類を分解する技術においては、短寿命のOHラジカルをごく短時間内で効率よく排ガスと均一に接触させることが要求されるところ、実施の形態3の処理装置はかかる要求に応える得る効果を有する。
【0030】
実施の形態4.
図9は、本発明のダイオキシン含有ガスの処理装置における実施の形態4の断面図であって、活性水散布部12は、順方向活性水散布部分124と逆方向活性水散布部分126から構成されており、散布部分124、126とも、複数の散布口aを備えている。このために上記両散布部分124、126の各散布口aから噴霧された活性水の粒子は、実施の形態3の処理装置と同様に活性水の粒子が減温塔11の内部の隅々にまで行き渡り易い利点に加えて、前記実施の形態2において説明した両散布部分124、126の中間での粒子同士の衝突に基づく乱流発生の効果もある。
【0031】
以上実施の形態1〜4により本発明のダイオキシン含有ガスの処理装置および処理方法を詳細に説明したが、本発明は、それら実施の形態に限定されるものではなく、本発明の課題並びに解決手段の精神に沿った種々の変形実施をも包含する。例えば活性水散布部は、実施の形態1〜4では合計2個の散布部分が採用されたが、本発明では活性水散布部は合計3個以上の順方向活性水散布部分および/または逆方向活性水散布部分から構成されてもよい。さらにいま順方向活性水散布部分をXと、逆方向活性水散布部分をYと略称すると、活性水散布部内でのXとYの配列も任意であってよく、例えば、XXXX、YYYY、XYXY、XYYY(文字列の左端は上流側とする。)などである。
【0032】
さらに上記配列中での各順方向活性水散布部分および逆方向活性水散布部分としては、実施の形態1、2で採用されたような単一ノズル型のものであってもよく、実施の形態3、4で採用されたような複数ノズル型のものであってもよい。
【0033】
本発明におけるダイオキシン含有ガスを流す前記のガス通路やガス輸送手段としても、焼却炉に設けられた減温塔や誘引送風機に限らず、ダイオキシン含有ガスを流し得る種々の管路やガス移送手段であってもよい。また本発明のダイオキシン含有ガスの処理方法において、処理対象とされるダイオキシン含有ガスは、焼却炉からの排ガスに限らず、ダイオキシンを含有する種々のガスを処理対象とすることができる。処理対象とするダイオキシン含有ガスは、100〜650℃程度の温度範囲において活性水が散布されるが、上記温度範囲は、150〜600℃程度が特に好ましい。かくすることにより、一層高効率でダイオキシン類を処理することができる。
【0034】
活性水を製造する際の過酸化水素とオゾンの各使用量および過酸化水素とオゾンの使用量比については特に制限はないが、例えば使用量に就いては過酸化水素とオゾンとも水中濃度にして1×10-5mol/リットル〜1×10-2mol/リットル程度であり、過酸化水素/オゾンの使用量比は、例えば0.1〜2程度である。
【0035】
【発明の効果】
本発明のダイオキシン含有ガスの処理装置は、以上説明した通り、オゾンと過酸化水素とを含む活性水をダイオキシン含有ガスに散布するダイオキシン含有ガスの処理装置であって、上記ダイオキシン含有ガスをガス通路内において一方方向に流すガス輸送装置、および上記ガス通路内に上記ダイオキシン含有ガスの流動方向に間隔を置いて設けられて上記ダイオキシン含有ガスに上記活性水を散布する複数の活性水散布部を含む活性水供給装置を備えたことを特徴とするものであるので、上記活性水に生成しているごく短寿命のOHラジカルを効果的にダイオキシン類の酸化分解に活用することができ、この結果、所定のダイオキシン分解率を得るために必要とされるオゾンおよび過酸化水素の各使用量を低減することができる。
【0036】
また上記活性水散布部は、上記ダイオキシン含有ガスの上記ガス通路内における流動方向に上記活性水を散布する順方向活性水散布部分または上記流動方向とは逆の方向に上記活性水を散布する逆方向活性水散布部分を少なくとも1個含み、さらに上記活性水散布部は、2個の順方向活性水散布部分を含み、且つ上記2個の順方向活性水散布部分の設置間隔は、上記ダイオキシン含有ガスの上記2個の順方向活性水散布部分を通過するに要する平均所要時間が、上記活性水に含まれているOHラジカルの常温における半減期の0.3〜2倍程度となるようにし、あるいは上記活性水散布部は、上記順方向活性水散布部分と上記順方向活性水散布部分の下流側に設置された逆方向活性水散布部分とを含み、且つ上記順方向活性水散布部分と上記逆方向活性水散布部分との設置間隔は、上記ダイオキシン含有ガスの上記両活性水散布部分を通過するに要する平均所要時間が、上記活性水に含まれているOHラジカルの常温における半減期の0.5〜3倍程度となるようにしたことにより、OHラジカルを一層効果的にダイオキシン類の酸化分解に活用することができ、この結果、所定のダイオキシン分解率を得るために必要とされるオゾンおよび過酸化水素の各使用量を一層低減することができる。
【0037】
また上記ガス通路は、ダイオキシン含有ガスを焼却炉に設けられた減温塔内の排ガス通路であり、上記ガス輸送装置は、上記減温塔の下流に設けられた誘引送風機であると、全国に多数存在する焼却炉から発生するダイオキシン含有ガスを効果的に且つ経済的に処理することができる。
【0038】
本発明のダイオキシン含有ガスの処理方法は、請求項1〜請求項3のいずれか一項記載のダイオキシン含有ガスの処理装置を用い、上記活性水を100〜650℃程度の高温度のダイオキシン含有ガスに散布することを特徴とするものであって、上記高温度のダイオキシン含有ガスを処理対象とすることにより、一層高効率でダイオキシン類を処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1の処理装置の断面図。
【図2】 ダイオキシン含有ガスの滞留時間とOHラジカル量との関係を示すグラフ。
【図3】 オゾン、過酸化水素、およびOHラジカル量の時間的変化を示すグラフ。
【図4】 オゾン、過酸化水素、およびOHラジカル間における簡略化したモデルの反応スキーム。
【図5】 供給オゾン量に対するダイオキシンの分解度との関係を示すグラフ。
【図6】 実施の形態2の処理装置の断面図。
【図7】 ダイオキシン含有ガスの滞留時間とOHラジカル量との関係を示すグラフ。
【図8】 実施の形態3の処理装置の断面図。
【図9】 実施の形態4の処理装置の断面図。
【図10】 従来の処理装置の概略説明図。
【図11】 図10の一部詳細説明図。
分拡大説明図。
【符号の説明】
9 焼却炉、10 排ガス通路、11 減温塔、12 活性水散布部、
13 電気集塵機、14 誘引送風機、15 煙突、16 活性水供給装置、
2 オゾン化ガス供給配管、16d オゾン発生器、16e エジェクタ、
16f 気液混合器、16g 過酸化水素供給装置、
2 オゾン化ガス供給配管、17 オゾン含有水供給配管。

Claims (4)

  1. ダイオキシン含有ガスをガス通路内において一方方向に流すガス輸送装置、および上記ガス通路内に上記ダイオキシン含有ガスの流動方向に間隔を置いて設けられて上記ダイオキシン含有ガスにオゾンと過酸化水素とを含む活性水を散布する複数の活性水散布部を含む活性水供給装置を備えたダイオキシン含有ガスの処理装置であって、上記活性水散布部は、上記ダイオキシン含有ガスの上記ガス通路内における流動方向に上記活性水を散布する2個の順方向活性水散布部分を含み、且つ上記2個の順方向活性水散布部分の設置間隔は、上記ダイオキシン含有ガスの上記2個の順方向活性水散布部分を通過するに要する平均所要時間が、上記活性水に含まれているOHラジカルの常温における半減期の0.3〜2倍程度となるようにしたことを特徴とするダイオキシン含有ガスの処理装置。
  2. ダイオキシン含有ガスをガス通路内において一方方向に流すガス輸送装置、および上記ガス通路内に上記ダイオキシン含有ガスの流動方向に間隔を置いて設けられて上記ダイオキシン含有ガスにオゾンと過酸化水素とを含む活性水を散布する複数の活性水散布部を含む活性水供給装置を備えたダイオキシン含有ガスの処理装置であって、上記活性水散布部は、上記ダイオキシン含有ガスの上記ガス通路内における流動方向に上記活性水を散布する順方向活性水散布部分と上記順方向活性水散布部分の下流側に設置されて上記流動方向とは逆の方向に上記活性水を散布する逆方向活性水散布部分を含み、且つ上記順方向活性水散布部分と上記逆方向活性水散布部分との設置間隔は、上記ダイオキシン含有ガスの上記両活性水散布部分を通過するに要する平均所要時間が、上記活性水に含まれているOHラジカルの常温における半減期の0.5〜3倍程度となるようにしたことを特徴とするダイオキシン含有ガスの処理装置。
  3. 上記ガス通路は、ダイオキシン含有ガスを発生する焼却炉に設けられた減温塔内の排ガス通路であり、上記ガス輸送装置は、上記減温塔の下流に設けられた誘引送風機であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のダイオキシン含有ガスの処理装置。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか一項記載のダイオキシン含有ガスの処理装置を用い、上記活性水を100〜650℃程度の高温度のダイオキシン含有ガスに散布することを特徴とするダイオキシン含有ガスの処理方法。
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