JP3769451B2 - 電動パワーステアリング制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ハンドルの戻し操作時におけるオーバーシュートを防止して収斂性を向上させることが可能な電動パワーステアリング制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図10は一般的な電動パワーステアリング装置の構成図、図11は電動パワーステアリング装置のモータ駆動回路を説明する回路図である。図10において、1は操舵用のハンドル、2aないし2dはハンドル1の操舵トルクを伝達するステアリングシャフト、3aと3bとはステアリングシャフト2cと2dとの間、および、ステアリングシャフト2dとピニオン軸4との間を連結するユニバーサルジョイント、5はピニオン軸4の図示しないピニオンと噛み合うラック歯5aを有するラック軸、6aと6bとはラック軸5の両端をタイロッド7aおよび7bに連結するボールジョイントである。
【0003】
8はステアリングシャフト2aと2bの間に設けられたトルクセンサであり、ハンドル1の操舵トルクを検出して制御装置9にトルク値に応じた電気信号を出力する。制御装置9はトルクセンサ8の出力する操舵トルクと車速センサ10の出力する車速とを入力し、モータ11の出力を制御してハンドル1の操舵力をアシストする。12aと12bとは減速機講を構成するギヤであり、ギヤ12aはステアリングシャフト2bと2cとの間に設けられ、ギヤ12bはモータ11に制御装置9により操作されるクラッチ13を介して取り付けられ、モータの回転をステアリングシャフト2cに伝達する。
【0004】
このように構成された一般的な電動パワーステアリング装置のにおいて、高速走行時にハンドルを操作した後、ハンドル戻しのために手放し状態にした場合、車両の前輪に設けられたキャスタの効果により車輪とハンドルとは中立位置に戻ろうとするが、モータ11の慣性により中立位置からオーバーシュートして収斂性が悪くなる。この収斂性の悪化を防止するのがクラッチ13であり、高速走行時にはクラッチ13がオフされるように構成され、モータ11の慣性によるオーバーシュートを防止している。このクラッチ13とクラッチ13を制御するための制御回路とはステアリング装置の構成を複雑化するが、これらを排除して構成を単純化し、ハンドル戻し時の収斂性を維持するようにしたのが、例えば特開平4−19270号公報に開示された技術である。
【0005】
この従来技術は、高速走行時においてハンドルが戻り状態にあるとき、これを電流検出器で検出し、図11に示した駆動回路におけるHブリッジ構成のFETの内、第一あるいは第二のFETの通電制御のデューティ比をゼロとし、モータ11と第三あるいは第四のFETとで構成される短絡回路に回生電流を流してモータ11に回生制動を作用させ、ハンドル戻りの速度を抑制してオーバーシュートを防止し、良好な収斂性を維持しようとするものである。また、車速を検出して車速が所定値以下であれば回生電流を打ち消すようにデューティ比をセットするようにもされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、この従来例ではハンドル戻り状態時の電流を検知してFETを制御しているが、電流の検知はモータ電流の方向の検知であり、モータ電流の方向を検知するためにはモータ線の電流を直接検知するか、モータ制御用のHブリッジ内の回生電流が検出可能な位置にモータ電流を検出する電流検出回路を設ける必要があり、回路が複雑となり高価になるものであった。また、回生制動によるブレーキ力が小さいので、過大な反力によりハンドルが戻された場合、ハンドル戻りの速度を充分に抑制することができず、高速でハンドルが戻るので操縦者に対する負担を充分に軽減させることはできなかった。さらに、低速走行時や操舵角が大きい場合においてもハンドル戻り速度が抑制されるため、ハンドルを戻すことが操縦者にとって負担のかかるものであった。
【0007】
また、特開平7−329804号公報には上記の従来例の課題に対処するために、モータの回転速度を検出し、このモータの回転速度が所定値を越えないように制御することによりハンドル戻り速度を抑制し、中立点通過後のオーバーシュートを低減し、過大な反力が発生した場合の操縦者の負担を低減すると共に、低速走行時にはこのハンドル戻り速度の抑制力を低減し、低速域から高速域までのハンドルの戻り特性を良好なものとする技術が開示されている。しかし、この制御法によっても制御の複雑さは避けられないものであった。
【0008】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、より容易な制御によりハンドルの戻り特性を改善し、収斂性が良好で操縦者への負担を軽減することが可能な電動パワーステアリング制御装置を得ることを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明に係わる電動パワーステアリング制御装置は、ステアリングシャフトに結合されて操舵補助トルクと制動トルクとを付与するモータと、ステアリングシャフトに加わる操舵トルクを検出して操舵補助トルク用のモータ電流を設定する第一の目標電流設定手段と、モータの回転速度を検出して制動トルク用のモータ電流を設定する第二の目標電流設定手段と、第一の目標電流設定手段と第二の目標電流設定手段との出力からモータの駆動電流を決定する目標電流決定手段とを備え、第二の目標電流設定手段の設定する電流を、モータの所定の回転速度以下では回転速度に対して二次関数的に増加するように設定したものである。
【0010】
また、制御装置が記憶手段を有しており、この記憶手段にモータの回転速度に対応する電流値の特性MAPが格納され、第二の目標電流設定手段がこの特性MAPに基づきモータ電流を設定するようにしたものである。
さらに、制御装置が車速を検出する車速検出手段を備えており、第二の目標電流設定手段の設定電流値が、車速に基づく第一の係数と、モータの回転速度に基づく第二の係数との演算により設定されるように構成したものである。
また、制御装置が電流検出手段と電圧検出手段とを有しており、モータの電流値とモータの電圧値とを検出してこの両者からモータの回転速度を推定し、この回転速度の推定値に応じて第二の目標電流設定手段が電流値を設定するように構成したものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1ないし図4は、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング制御装置を説明するためのものであり、図1は制御装置の構成を示すブロック図、図2は動作を説明するフローチャート、図3と図4とは動作を説明する特性図であり、以下の説明において、電動パワーステアリング装置の構成部品については図10に示した従来例と同一符号を付与して説明する。図1において、20はトルクセンサ8の信号を入力して操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段、21は操舵トルク検出手段20の出力によりハンドル操作のアシスト力を設定し、アシスト力に相当するモータ11の目標電流を設定する第一の目標電流設定手段、22はモータ11の回転速度を検出するモータ回転速度検出手段、23はモータ回転速度検出手段22の出力によりモータ11の回転速度に応じて後述するように目標電流を設定する第二の目標電流設定手段である。
【0012】
第一の目標電流設定手段21が設定した第一の目標電流値と第二の目標電流設定手段23が設定した第二の目標電流値とは結合子24で加算され、目標電流決定手段25に出力される。ここで、第二の目標電流はモータ11の回転を抑制するための成分であり、第一の目標電流とは逆極性にされる。目標電流決定手段25は結合子24の出力によりモータ11に供給すべき電流値を決定して出力し、モータ11に供給されている実電流がモータ電流検出手段26に検出されてこの両者が結合子27に供給され、両者の偏差が算出されてモータ出力決定手段28に出力される。
【0013】
モータ出力決定手段28はこの偏差によりモータ11の出力値を設定し、例えばFETのブリッジ回路などからなるモータ出力手段29に出力し、モータ出力手段29がモータ11を駆動する。この結果が操舵トルク、モータ実電流、モータ回転速度として検出され、操舵トルク検出手段20とモータ電流検出手段26とモータ回転速度検出手段22とにフィードバックされてフィードバック制御が行われる。
【0014】
このように構成された電動パワーステアリング制御装置の動作を図2のフローチャートにて説明する。なお、この図2のルーチンは所定の時間毎に繰り返し実行されるものである。ルーチンがスタートすると、まず、ステップ201にてトルクセンサ8から操舵トルク検出手段20に操舵トルク値が入力され、このトルク値が図示しない記憶手段に記憶される。ステップ202ではモータ回転速度検出手段22がモータ11の回転速度を検出し、この回転速度も図示しない記憶手段に記憶される。
【0015】
続いてステップ203では記憶手段に記憶されたトルク値から第一の目標電流値が設定され、ステップ204では記憶されたモータ11の回転速度から第二の目標電流値が設定される。ここで、第一の目標電流値は、制御装置に使用されるマイコン内のデータ領域に書き込まれたMAPデータからトルク値に対応する電流値を読み出すように設定することができ、また、第二の目標電流値はマイコン内のデータ領域に図3または図4に示すようなMAPデータを書き込んでおき、モータの回転速度に対応する電流値を読み出すように設定することができる。
【0016】
図3のMAP特性は、モータ11の回転速度が所定値a以上の場合にはモータ11の回転速度に比例した電流値とされ、回転速度がゼロから所定値aまでの間はモータ11の回転速度に対して二次関数的に電流値が増加するように設定されたものであり、この回転速度の所定値aは、例えばハンドルの手放し状態における戻り時のモータ11の回転速度を基準として設定することができ、また、急操舵時におけるモータ11の回転速度に基づき設定することができる。さらに、第二の目標電流値のMAP特性は図4に示すように、ハンドルの戻り特性を任意の特性に設定するために任意のMAP特性に設定することもできるものである。
【0017】
ステップ205ではステップ203とステップ204とで設定した第一の目標電流値と第二の目標電流値とを加算し、モータ11の定格から決定されるモータ出力の範囲内において目標電流値が決定される。ステップ206ではモータ11の実電流値が検出されて図示しない記憶手段に記憶され、ステップ207ではステップ205で決定された目標電流値とステップ206で検出された実電流値との偏差を求め、この偏差に応じたモータ出力が設定され、ステップ208にてモータ11に出力される。
【0018】
このように構成され、設定されることにより、ハンドルを低速にて操作するときにはモータ11の回転速度が小さいので第二の目標電流、すなわち、制動力も小となり、操作時の引っかかりがなくて操舵フィーリングは良好となり、また、高速時のハンドル手放し状態での戻し時にはモータ11の回転速度が大であり第二の目標電流による制動効果も大となって収斂性が良好となる。特に、モータ11の回転速度が低速域では第二の目標電流値を回転速度に対して二次関数的に変化させるようにしたので、ハンドル操作開始時の操作フィーリングを良好にしながら高速回転域での制動効果が損なわれず、低速域から高速域まで操作フィーリングの良好な操舵装置を得ることができるものである。
【0019】
実施の形態2.
図5ないし図8は、この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング制御装置を説明するためのものであり、図5は制御装置の構成を示すブロック図、図6ないし図8は動作を説明する特性図であり、この実施の形態は、実施の形態1による電動パワーステアリング制御装置に対し、制御装置に車速を検出する車速検出手段30を設け、第一の目標電流設定手段21が設定する第一の目標電流値と、第二の目標電流設定手段23が設定する第二の目標電流値とが車速により制御されるようにしたものである。
【0020】
すなわち、操舵時のアシスト力を設定する第一の目標電流値は入力される操舵トルクが一定の場合には車速が大であるほど小さな値とされ、また、抑制力を設定する第二の目標電流値は、例えば図6に示す車速に対する第一の係数と、図7に示すモータ11の回転速度に対する第二の係数とを設定し、これらを乗算することによりモータ11の回転速度に対する第二の目標電流特性を図8に示すように設定する。ここで、図7のd点以下では係数がゼロであり、e点以上では一定値とすることにより、図8に示すように、d点以下では第二の目標電流がゼロであり、d点とe点との間では二次関数になり、e点以上では一次関数の第二の目標電流特性が得られる。また、図8に示すように、車速に応じて複数の特性に設定することもできる。
【0021】
このように設定することにより、実施の形態1の場合の効果に加えて、車速に応じた適切な操舵フィーリングを得ることができ、また、冗長性の高い操舵フィーリングを得ることができることになる。なお、図8の特性は車速に応じて複数段に切り換えてもよく、また車速に応じて連続的に変化させることもできる。
【0022】
実施の形態3.
図9は、この発明の実施の形態3による電動パワーステアリング制御装置の構成を示すブロック図であり、この実施の形態は、実施の形態1の電動パワーステアリング制御装置に示したモータ回転速度検出手段22に替わり、モータ11の印可電圧を検出するモータ印可電圧検出手段31と、このモータ印可電圧検出手段31の出力とモータ電流検出手段26の出力とからモータ11の回転速度を推定するモータ回転速度推定手段32とを設け、このモータ回転速度推定手段32の出力により第二の目標電流を設定するようにしたものである。
【0023】
このように構成することによりモータ11の回転速度を検出するハードウエアとしての回転速度センサが不要になり、実施の形態1と同様の効果を得ながら、より安価なシステムを構成することができるものである。なお、モータの印可電圧の検出に替わり、モータ11の出力値からモータ11に対する印可電圧を推定することもできるものである。
【0024】
【発明の効果】
以上に説明したようにこの発明の電動パワーステアリング制御装置によれば、操舵のアシスト力を設定する第一の目標電流設定手段と、抑制力を設定する第二の目標電流設定手段とを設け、第二の目標電流設定手段が設定する電流をモータの回転速度が所定値以下のときに、モータの回転速度に対して二次関数的に増加するようにしたので、高速走行時における過大な反力によりハンドルが戻される場合にはハンドル戻りの速度を充分に抑制してオーバーシュートを防止することができて収斂性が良好となり、ハンドルの低速操作時には抑制力が小さくなるので、低速域から高速域まで操作フィーリングの良好な操舵装置を得ることができるものである。また、車両の特性に適合した第二の目標電流をMAPとしてデータ領域に書き込んでおくことにより車種毎に適正な操舵フィーリングを得ることができ、さらに、第二の目標電流をモータの回転速度と車速とに応じて設定するようにしたので、車速に応じた適切な操舵フィーリングを得ることができ、モータ電流とモータ電圧とからモータの回転速度を推定するようにしたのでシステムを安価に構成できるなど、優れた電動パワーステアリング制御装置を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】 この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング制御装置の動作を説明する特性図である。
【図4】 この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング制御装置の動作を説明する特性図である。
【図5】 この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】 この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング制御装置の動作を説明する特性図である。
【図7】 この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング制御装置の動作を説明する特性図である。
【図8】 この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング制御装置の動作を説明する特性図である。
【図9】 この発明の実施の形態3による電動パワーステアリング制御装置の構成を示すブロック図である。
【図10】 従来の電動パワーステアリングの構成図である。
【図11】 一般的な電動パワーステアリングのモータ駆動回路の回路図である。
【符号の説明】
1 ハンドル、8 トルクセンサ、11 モータ、
20 操舵トルク検出手段、21 第一の目標電流設定手段、
22 モータ回転速度検出手段、23 第二の目標電流設定手段、
24、27 結合子、25 目標電流決定手段、
26 モータ電流検出手段、28 モータ出力決定手段、
29 モータ出力手段、30 車速検出手段、
31 モータ印可電圧検出手段、32 モータ回転数推定手段。
Claims (4)
- ステアリングシャフトに結合されて操舵補助トルクと制動トルクとを付与するモータ、前記ステアリングシャフトに加わる操舵トルクを検出して操舵補助トルク用のモータ電流を設定する第一の目標電流設定手段、前記モータの回転速度を検出して前記制動トルク用のモータ電流を設定する第二の目標電流設定手段、前記第一の目標電流設定手段と前記第二の目標電流設定手段との出力から前記モータの駆動電流を決定する目標電流決定手段を備え、前記第二の目標電流設定手段の設定する電流が、前記モータの所定の回転速度以下では前記モータの回転速度に対して二次関数的に増加するように設定されたことを特徴とする電動パワーステアリング制御装置。
- 制御装置が記憶手段を有しており、この記憶手段にモータの回転速度に対応する電流値の特性MAPが格納され、第二の目標電流設定手段がこの特性MAPに基づきモータ電流を設定することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング制御装置。
- 制御装置が車速を検出する車速検出手段を備えており、第二の目標電流設定手段の設定電流値が、車速に基づく第一の係数と、モータの回転速度に基づく第二の係数との演算により設定されるように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動パワーステアリング制御装置。
- 制御装置が電流検出手段と電圧検出手段とを有しており、モータの電流値とモータの電圧値とを検出してこの両者からモータの回転速度を推定し、この回転速度の推定値に応じて第二の目標電流設定手段が電流値を設定するように構成したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング制御装置。
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