JP3769070B2 - エンジンにおける潤滑オイル戻し通路装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランクケース内に貯留される潤滑オイルを、その下面に接続されるオイルパンに戻すためのエンジンにおける潤滑オイル戻し通路装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来四サイクルエンジンにおいて、上記潤滑オイル戻し通路装置としては、図8に示すものが良く知られている。このものはパイプ部材Piの両端に溶接したバンジョー継手Jを、クランクケース01の底壁に開口した流出口06およびオイルパン02の側壁に開口した流入口08に、オイル通路Pを穿設した専用の接続ボルトBをもってそれぞれ締付固定するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところでかかる従来の潤滑オイル戻し通路装置では、バンジョー継手を設けたパイプ部材および専用の接続ボルトを必要とするため部品点数が多くなり、また接続ボルトの締付作業を必要とするため人手による作業工数が多くなり、全体としてコスト高を招くばかりでなく、接続ボルトおよびパイプ部材よりなるオイル戻し通路の通路断面積が変化するため、潤滑オイルが円滑、迅速に戻りにくく、さらにクランクケース内に残留するエンジンオイルが攪拌されると、クランクケース内のクランクシャフト等の回転部材の回転抵抗が増す等の課題がある。
【0004】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたもので、前記課題をすべて解決した、新規なエンジンにおける潤滑オイル戻し通路装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本請求項1記載の発明によれば、クランクケースの底壁に開口した流出口と、そのクランクケースの底壁に一体に結合されるオイルパンの側壁に開口した流入口とを連通接続し、クランクケース内に貯留される潤滑オイルをオイルパン内に戻すためのオイル戻し通路装置であって、前記クランクケースの底壁に開口した流出口に液体密に嵌合接続されて上下方向に延びる上流端部と、前記オイルパンの側壁に開口した流入口に液体密に嵌合接続されて横方向に延びる下流端部と、前記クランクケースの底壁とオイルパンの側壁とで形成される空間部に配設されて前記上流端部と下流端部とを一体に連通接続する中間部とよりなるオイル戻しパイプを備えると共に、前記流出口と前記上流端部との嵌合方向を、前記クランクケースとオイルパンとの接合面と直交する方向とし、前記クランクケースとオイルパンとの一体結合により、前記流出口と前記流入口とを前記オイル戻しパイプを介して相互に連通接続するようにしたことを特徴としている。
【0006】
上記目的を達成のため、本請求項2記載の発明によれば、前記請求項1記載のものにおいて、前記オイルパン側の下流端部に、前記オイル戻しパイプの抜止め手段が設けられることを特徴としている。
【0007】
上記目的を達成のため、本請求項3記載の発明によれば、前記請求項1又は2に記載のものにおいて、前記クランクケース内でクランクシャフトが水平に配置され、そのクランクケースの、クランクシャフト軸方向の一端部が外方に突出していて、その突出端部の底壁に前記流出口が開口することを特徴としている。
【0008】
上記目的を達成のため、本請求項4記載の発明によれば、車体フレームに対し横置き搭載される自動二輪車用エンジンにおける潤滑オイル戻し通路装置であって、前記請求項3に記載されるものにおいて、前記オイル戻しパイプの直状をなす中間部が、車両進行方向から見てエンジン下方に向かうにつれて前記オイルパンに近づくように傾斜して配設されることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0010】
先ず図1〜3を参照して本発明の第一実施例について説明するに、この実施例は四サイクルエンジンのクランクケースとオイルパンとを連通する潤滑オイルのオイル戻し通路に本発明を実施した場合であり、図1は、本発明を実施した、直列四気筒四サイクルエンジンの一部縦断全体側面図、図2は、図1の一部の拡大図で、エンジンのクランクケースとオイルパンとの接続部の一部の断面図、図3は、図2の3−3線に沿う断面図である。
【0011】
図1において、直列四気筒四サイクルエンジンのエンジンブロックEは、シリンダブロックCBと、そのデッキ面上にガスケットを介して一体に結合されるシリンダヘッドCHとよりなり、シリンダブロックCBの下部に一体成形されるクランクケース1の開口底面には、オイルパン2がパッキン3を介して複数の連結ボルト4を介して一体に結合されている。シリンダブロックCB上部のシリンダバレル部に直列される四つのシリンダボア14には、それぞれピストン15が摺動自在に嵌合され、これらのピストン15は、コンロッド16を介してクランクケース1に回転自在に支持されるクランクシャフト17のクランクピン部に連接される。クランクシャフト17の一端は調時伝動機構18を介してシリンダヘッドCH上に回転自在に支持されるカムシャフト19に連動されており、クランクシャフト17の回転は1/2に減速比をもってカムシャフト19に伝達される。そしてこのカムシャフト19の回転により、動弁機構20を介して吸、排気弁が所定のタイミングをもって開閉作動される。
【0012】
前記シリンダブロックCBのクランクケース1と、その下面に結合されるオイルパン2間の、クランクシャフト17の軸方向の一端部には、本発明戻し通路装置が設けられる。
以下、この装置について主に図2,3を参照して詳細に説明するに、クランクケース1の、クランクシャフト17の軸方向の一端部の底壁11 に一体に形成したボス部5には、クランクケース1内のクランク室C1 と、外部とを連通する流出口6が、略鉛直方向に穿設されており、またオイルパン2の、前記底壁11 に対応する側壁21 に一体に形成したボス部7には、オイルパン室C2 と外部とを連通する、流入口8が略水平方向に穿設されており、流出口6と、流入口8には、鋼管等の剛性管により形成されて、クランクケース1の底壁11 と、オイルパン2の側壁21 間に形成される空間部に配設される、オイル戻しパイプ9の上流端部9uおよび下流端部9dがそれぞれ抜差自在に嵌合接続され、クランク室C1 内に残留する潤滑オイルは、このオイル戻しパイプ9を通してオイルパン室C2 に戻される。
【0013】
前記オイル戻しパイプ9は、略鉛直方向に延びる上流端部9uと、略水平方向に延びる下流端部9dと、それらを湾曲部を介して滑らかに連続し、前記クランクケース1の底壁11 とオイルパン2の側壁21 に対して斜めに配設(即ち車両進行方向から見てエンジン下方に向かうにつれてオイルパン2に近づくように傾斜して配設)される直状の中間部9nとより形成されており、上流端部9uと下流端部9dの外周部には、それぞれフランジ10,11が一体に形成されている。
【0014】
クランクケース1の底壁11 の流出口6は、オイル戻しパイプ9の嵌合接続される嵌合孔61 と、これに段部63 を介して連続し、それよりも若干径大に形成されるOリング溝62 と、このOリング溝62 から外側に向かって末広状に拡がる案内孔64 とを有し、前記オイル戻しパイプ9の上流端部9uは、前記案内孔64 に案内されつつ前記嵌合孔61 に密に嵌合される。また前記Oリング溝62 とオイル戻しパイプ9の上流端部9u間にはOリング12が介装され、このOリング12は、前記段部63 とフランジ10間に挟持されて、オイル戻しパイプ9と流出口6間を油密に封緘する。
【0015】
またオイルパン2の側壁21 の流入口8も、オイル戻しパイプ9の嵌合接続される嵌合孔81 と、これに段部83 を介して連続し、それよりも若干径大に形成されるOリング溝82 と、このOリング溝82 から外側に向かって末広状に拡がる案内孔84 とを有し、前記オイル戻しパイプ9の下流端部9dは、前記案内孔84 に案内されつつ前記嵌合孔81 に密に嵌合される。また前記Oリング溝82 とオイル戻しパイプ9の下流端部9d間にはOリング13が介装され、このOリング13は、前記段部83 とフランジ11間に挟持されて、オイル戻しパイプ9と流入口8間を油密に封緘する。
【0016】
ところでオイル戻しパイプ9の、上流端部9uおよび下流部9dを前述したように流出口6および流入口8に嵌合接続した状態で、クランクケース1に、オイルパン2を一体に結合すれば、このオイル戻しパイプ9は、クランクケース1の底壁11 と、オイルパン2の側壁21 との間に挟持されて、他に抜止め手段を施さなくとも、このオイル戻しパイプ9が、それらから抜け出ることがない。
【0017】
次にこの実施例の作用について説明するに、エンジンの各被潤滑部を潤滑した後、クランク室C1 内に貯留された潤滑オイルは、流出口6よりオイル戻しパイプ9を通り、流入口8よりオイルパン室C2 内に戻される。この場合このオイル戻しパイプ9は、その上流端部9uおよび下流端部9dを、流出口6および流入口8にそれぞれ単に嵌合接続するだけであり、オイル戻し通路は、その全長にわたり通路の断面変化が殆どないので、クランク室C1 内の潤滑オイルは、抵抗少なく迅速にオイルパン室C2 内に戻すことができ、またこのオイル戻しパイプ9は、クランクケース1とオイルパン2との一体結合により、抜け止めが阻止されるので、他に抜止め手段が不要になる。
【0018】
またオイル戻しパイプ9は、その直状の中間部9nが、クランクケース1の底壁11 およびオイルパン2の側壁21 に対して斜めに配設されていることにより、このオイル戻しパイプ9がクランクケース1とオイルパン2より外方に大きく出張ることがなく、特に車体フレームに対して横置き搭載される、自動二輪車用エンジンに、この潤滑オイル戻し通路装置を適用すれば、この自動二輪車のバンク角を大きくとることが可能になる。
【0019】
次に本発明の第二実施例について図4,5を参照して説明するに、図4は、四サイクルエンジンのクランクケースとオイルパンとの接続部の一部の断面図、図5は、図4の5−5線に沿う断面図であり、前記第一実施例と同一要素には同一符号が付される。
【0020】
この第二実施例は、前記第一実施例のものにおいて、オイル戻しパイプ9の上流端部9uを、クランクケース1の流出口6に嵌合接続した際(クランクケース1とオイルパン2とが未結合の状態)に、該オイル戻しパイプ9がその流出口6から抜け出ないようにした場合であり、クランクケース1の底壁11 の、前記流出口6の近傍には、抜止め手段としての止部材20がボルト21により固着される。この止部材20は、オイル戻しパイプ9の上流端部9uの外周半部を囲む弧状の止片201 と、その内周縁より起立する起立片202 とを備えており、この起立片202 は、流出口6内に突入して、これがオイル戻しパイプ9の上流端部9uのフランジ10と係合することにより、クランクケース1がオイルパン2と未だ結合されていない状態において、該オイル戻しパイプ9の抜け出しが防止される。
【0021】
次に本発明の第三実施例について図6,7を参照して説明するに、図6は、四サイクルエンジンのクランクケースとオイルパンとの接続部の一部の断面図、図7は、図6の7−7線に沿う断面図であり、前記第一実施例と同一要素には同一符号が付される。
【0022】
この第三実施例は、前記第一実施例において、オイル戻しパイプ9の下流端部9dを、オイルパン2の流入口8に嵌合接続した際(クランクケース1とオイルパン2とが未結合の状態)に該オイル戻しパイプ9がその流入口8から抜け出ないようにした場合であり、オイルパン2の側壁22 の、前記流入口8の近傍には、止部材30がボルト31により固着される。この止部材30は、オイル戻しパイプ9の下流段部9dの外周半部を囲む弧状の止片301 と、その内周縁より起立する起立片302 とを備えており、この起立片302 は、流入口8内に突入して、これがオイル戻しパイプ9の下流端部9dのフランジ11と係合することにより、オイルパン2がクランクケース1と未だ結合されていない状態において、該オイル戻しパイプ9の抜け出しが防止される。
【0023】
而して前記第二、第三実施例のものも、前記第一実施例の前記作用効果と同等の作用効果を奏する。
【0024】
以上、本発明の第一〜第三実施例について説明したが、本発明はそれらの実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。たとえば前記実施例では、四サイクルエンジンにおいて、クランクケースからオイルパンに潤滑オイルを戻す、オイル戻し通路について説明したが、一体結合される一般のクランクケースと、オイルパンとを連通接続するオイル戻し通路として本発明を実施できることは勿論であり、また前記抜止め手段をオイル戻しパイプの上流端部および下流端部の両方に設けるようにしてもよい。
【0025】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、クランクケースの底壁に開口される流出口と、オイルパンの側壁に開口される流入口とに、オイル戻しパイプの下方向に延びる上流端部と、横方向に延びる下流端部とを嵌合接続し、クランクケースとオイルパンとを一体に結合することにより、オイル戻し通路装置が構成されるので、従来のような専用の接続ボルトが不要となり、部品点数が削減されるとともにオイル戻しパイプの接続作業が簡略化され、その結果、クランクケースからオイルパンへのオイル戻し通路装置の大幅なコストダウンを達成することができ、またオイル戻しパイプは、その全長にわたり断面変化が殆どないので、クランクケース内の貯留オイルを抵抗少なく迅速、円滑にオイルパンに戻すことができる。
【0026】
また特に請求項2の発明によれば、前記特徴に加え、クランクケースおよびオイルパンの未結合状態においても、オイル戻しパイプがオイルパンから抜け出ることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施した直列四気筒四サイクルエンジンの一部縦断全体側面図(第一実施例)
【図2】 図1の一部の拡大図で、エンジンのクランクケースとオイルパンとの接続部の一部の断面図
【図3】 図2の3−3線に沿う断面図
【図4】 四サイクルエンジンのクランクケースとオイルパンとの接続部の一部の断面図(第二実施例)
【図5】 図4の5−5線に沿う断面図
【図6】 四サイクルエンジンのクランクケースとオイルパンとの接続部の一部の断面図(第三実施例)
【図7】 図6の7−7線に沿う断面図
【図8】 従来のオイル戻し通路装置の断面図
【符号の説明】
1・・・・・・・・クランクケース
11 ・・・・・・・底壁
2・・・・・・・・オイルパン
21 ・・・・・・・側壁
6・・・・・・・・流出口
8・・・・・・・・流入口
9・・・・・・・・オイル戻しパイプ
9u・・・・・・・上流端部
9d・・・・・・・下流端部
9n・・・・・・・中間部
20・・・・・・・抜止め手段(止部材)
30・・・・・・・抜止め手段(止部材)
Claims (4)
- クランクケース(1)の底壁(11 )に開口した流出口(6)と、そのクランクケース(1)の底壁(11 )に一体に結合されるオイルパン(2)の側壁(21 )に開口した流入口(8)とを連通接続し、クランクケース(1)内に貯留される潤滑オイルをオイルパン(2)内に戻すための潤滑オイル戻し通路装置であって、
前記クランクケース(1)の底壁(11 )に開口した流出口(6)に液体密に嵌合接続されて上下方向に延びる上流端部(9u)と、前記オイルパン(2)の側壁(21 )に開口した流入口(8)に液体密に嵌合接続されて横方向に延びる下流端部(9d)と、前記クランクケース(1)の底壁(11 )とオイルパン(2)の側壁(21 )とで形成される空間部に配設されて前記上流端部(9u)と下流端部(9d)とを一体に連通接続する中間部(9n)とよりなるオイル戻しパイプ(9)を備えると共に、前記流出口(6)と前記上流端部(9u)との嵌合方向を、前記クランクケース(1)とオイルパン(2)との接合面と直交する方向とし、
前記クランクケース(1)とオイルパン(2)との一体結合により、前記流出口(6)と前記流入口(8)とを前記オイル戻しパイプ(9)を介して相互に連通接続するようにしたことを特徴とする、エンジンにおける潤滑オイル戻し通路装置。 - 前記オイルパン(2)側の下流端部(9d)に、前記オイル戻しパイプ(9)の抜止め手段(30)が設けられることを特徴とする、前記請求項1に記載のエンジンにおける潤滑オイル戻し通路装置。
- 前記クランクケース(1)内でクランクシャフト(17)が水平に配置され、そのクランクケース(1)の、クランクシャフト軸方向の一端部が外方に突出していて、その突出端部の底壁(11 )に前記流出口(6)が開口することを特徴とする、前記請求項1又は2に記載のエンジンにおける潤滑オイル戻し通路装置。
- 車体フレームに対し横置き搭載される自動二輪車用エンジンにおける潤滑オイル戻し通路装置であって、前記請求項3に記載されるものにおいて、
前記オイル戻しパイプ(9)の直状をなす中間部(9n)が、車両進行方向から見てエンジン下方に向かうにつれて前記オイルパン(2)に近づくように傾斜して配設されることを特徴とする、エンジンにおける潤滑オイル戻し通路装置。
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