JP3769010B2 - 凝集剤、その製造方法及びその凝集剤を用いた凝集方法 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、懸濁液中の懸濁物を凝集する凝集剤、その製造方法及びその凝集剤を用いた凝集方法に関する。
背景技術
従来、各種の用水や排水から懸濁物を取り除くために、凝集剤を用水や排水中に投入して懸濁物を凝集・沈降させて処理する水処理方法が行なわれており、水処理のための凝集剤としては、ポリアクリルアミド、硫酸バンド等が使用されていた。
これらの凝集剤は、水処理時にpHの調整が必要であり、水処理が煩雑になるのみならず、処理後の水の安全性に懸念があった。また、硫酸バンドは、処理水が低温の場合に充分な凝集効果が得られないという問題があった。
これらの問題を解決でき、無毒安全で凝集効果の高い凝集剤として、珪素を溶解した珪素ゾルからなる凝集剤は様々なものが知られている(特許文献1乃至4参照)。
【特許文献1】
特開2003−38908号公報
【特許文献2】
特許2759853号公報
【特許文献3】
特許2732067号公報
【特許文献4】
特公平4−75796号公報
しかし、珪素ゾルは、長期間安定したゾル状態を維持することが困難であり、一般的な珪素溶液である珪酸ソーダ(H4SiO4)は、アルカリ性にして電位によってゾル状態を安定せる必要がある。また、特許文献1乃至4に記載の凝集剤のように、強酸又は強アルカリ性にして珪素ゾルのゾル状態を維持するものは、処理後の水のpH値に懸念が生じると共に、珪素ゾルの中和によるゾル化が不十分となり、処理水のpHの調整が必要であるという課題があった。
発明の開示
本発明は、上記課題を解決するために、希釈することによってゲル化し、ゲル化に伴って懸濁物を凝集する珪素ゾルからなる凝集剤を提供するものである。
また、本発明は、請求項1に記載の凝集剤において、前記珪素ゾルは、珪素含有物質とアルカリ性物質を混合して珪素含有物質の熱融解点以下の温度で熱処理して酸溶解性を与えてなる珪素含有溶質を、酸溶媒に溶解してなる凝集剤を提供するものである。
また、本発明は、請求項2に記載の凝集剤において、前記アルカリ性物質が炭酸カルシウム又は石灰からなる凝集剤を提供するものである。
また、本発明は、請求項2又は3に記載の凝集剤において、前記酸溶媒が希塩酸からなる凝集剤を提供するものである。
また、本発明は、請求項2乃至4のいずれかに記載の凝集剤において、前記酸溶媒が、酢酸、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウムの群から選ばれる1又は2以上のゲル化抑止剤を含有してなる凝集剤を提供するものである。
また、本発明は、請求項2乃至5のいずれかに記載の凝集剤において、前記珪素含有物質が鉄又はアルミニウムを含有してなる凝集剤を提供するものである。
また、本発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の凝集剤において、pH値が2〜3である凝集剤を提供するものである。
また、本発明は、珪素含有物質とアルカリ性物質を混合し、珪素含有物質の熱融解点以下の温度で熱処理して酸溶解性の珪素含有溶質を生成する珪素含有溶質生成手段と、酸溶液からなる溶媒を生成する酸溶媒生成手段と、前記酸溶媒に前記珪素含有溶質を溶解させて珪素ゾルを生成する珪素ゾル生成手段とからなる凝集剤の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、請求項8に記載の凝集剤の製造方法において、前記アルカリ性物質が炭酸カルシウム又は石灰からなる凝集剤の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、請求項8又は9に記載の凝集剤の製造方法において、前記酸溶媒生成手段が、塩酸を希釈して酸溶媒を生成する手段からなる凝集剤の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、請求項8乃至10のいずれかに記載の凝集剤の製造方法において、前記酸溶媒生成手段が、前記酸溶液に、酢酸、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウムの群から選ばれる1又は2以上のゲル化抑止剤を混合する手段を含有する凝集剤の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、請求項8乃至11のいずれかに記載の凝集剤の製造方法において、前記珪素ゾルを濾過して未溶解懸濁物を取り除く濾過手段を付加してなる凝集剤の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、請求項8乃至12のいずれかに記載の凝集剤の製造方法において、前記珪素ゾルに石膏を加えて未溶解懸濁物を団粒化させる団粒化手段を付加してなる凝集剤の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、請求項8乃至13のいずれかに記載の凝集剤の製造方法において、前記珪素ゾルに、鉄又はアルミニウムを加えて珪素ゾルのpH値を調整するpH値調整手段を付加してなる凝集剤の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の凝集剤を懸濁液に混合して懸濁物を凝集する凝集方法を提供するものである。
また、本発明は、請求項15に記載の凝集方法において、懸濁液に更にアルカリ性物質を混合する手段を付加してなる凝集方法を提供するものである。
発明を実施するための最良の形態
本発明に係る凝集剤は、希釈することによってゲル化し、ゲル化に伴って懸濁物を凝集する珪素ゾルからなり、この珪素ゾルは、珪素含有物質とアルカリ性物質を混合して珪素含有物質の熱融解点以下の温度で熱処理して酸溶解性を与えてなる珪素含有溶質を、酸溶媒に溶解してある。
珪素含有物質は、二酸化珪素(SiO2)等の珪素化合物を含有する天然の土類若しくは岩石、又はそれらを含む加工製品からなる。また、珪素含有物質は、鉄又はアルミニウムを含有しているものが好ましい。表1に示すように、二酸化珪素の含有率が高く、酸化鉄(FeO3)及び酸化アルミニウム(Al23)を含有する伊武部白土(沖縄県伊武部地方の土類)を用いることがより好ましい。珪素含有物質が、鉄又はアルミニウムを含有することにより、珪素溶解と同時に溶解される微量の鉄又はアルミニウムの還元作用により、通常の凝集剤では捕らえられない超微粒子、色素粒子(0.01μm以下)は珪素ゾルに取り込まれ、フロック化して凝集する。
また、珪素含有物質としては、入手の容易な普通セメントを用いることも可能である。
【表1】
Figure 0003769010
アルカリ性物質は、珪素含有物質を酸溶解性に変えるために用いるものであり、アルカリ性物質として炭酸カルシウム(CaCO3)又は石灰を珪素含有物質に混ぜ合わせて熱処理すると、生成される珪素含有溶質がパウダー状となり、酸溶媒への溶解性が向上する。
また、熱処理は、珪素含有物質の熱融解点以上の温度で行うとガラス状となり難溶解性になることから、珪素含有物質の熱融解点以下の任意の温度で行う。珪素含有物質が伊武部白土の場合には、伊武部白土の熱融解点である約1300℃以下の任意の温度でよく、熱融解点に近い1150〜1250℃で熱処理することがより好ましい。この好適な熱処理の温度は、珪素含有物質の種類によって異なる。
酸溶媒には、塩酸又は硫酸等の種々の酸溶液を用いることができる。上記アルカリ性物質が炭酸カルシウムの場合には、塩酸はカルシウムの溶解性が高く、中和すると塩化カルシウム(CaCl2)となり安全無毒であるから、酸溶媒に塩酸を用いることが好ましい。また、酸濃度に対する珪素の溶解度は一定であり、液体容積に分散する珪素ゾル密度も一定の水空隙の中でしかゾル状態の安定を保つことができないことから、酸溶媒として塩酸を希釈した希塩酸を用い、特に、3倍〜7倍に希釈した希塩酸を用いることが好ましい。一方、酸溶媒の酸濃度が高い場合には、珪素の溶解は早いが、ゾルの安定密度を保つことができないためにゲル化し易くなる。
また、酸溶媒は、酢酸(C242)、酢酸アンモニウム(CH3COONH4)、塩化アンモニウム(AlCl3)の群から選ばれる1又は2以上のゲル化抑止剤を含有してあることが好ましい。ゲル化抑止剤として酢酸を用いることにより、酢酸のpH緩衝作用とゾル、コロイドの収斂性によって、酢酸の滴加量を調整して珪素ゾルのゲル化を抑止することができる。酢酸アンモニウム又は塩化アンモニウムを希塩酸に加えた混酸によっても、酢酸と同様に珪素ゾルのゲル化を抑止することができる。
また、本発明に係る凝集剤は、pH値が2〜3に調整してあることが好ましい。凝集剤は、酸性度が強いほど凝集処理に影響を及ぼし、特に赤土のような酸性土壌を含んだ濁水の処理には、濁水に対するpH調整が必要となるために、凝集剤はpH2以上3以下になるように調整することが好ましい。また、実験によってpH3より珪素ゾルのゲル化が確認されたことと、pH4以上で鉄及びアルミニウムの還元が起こることから、凝集剤はpH3以下になるように調整することが好ましい。
この凝集剤を懸濁液に投入し、混ぜ合わせることにより、珪素ゾルはpH3以上になりゲル化し、懸濁物を凝集することができる。凝集剤投入後の懸濁液は、pH4以上で凝集反応が起き、水質安全基準(pH6〜8)において、フロックが大きく、強く、重くなり、最も良い効果を得ることができる。
懸濁液が酸性水の場合は、苛性ソーダ(NaOH)、炭酸カルシウム(CaCO3)又は石灰等のアルカリ性物質で中和を行なうことにより同様の凝集となる。なお、アルカリ性土壌又は有機物を含んだ濁水の場合は、酸性の凝集剤によって中和されるのでpH調整の必要はない。
また、処理対象の懸濁液が有機物を含む場合や低濃度の場合には、懸濁液に更に炭酸カルシウムを混合する手段を付加することにより、軽くて沈降に時間を要するフロックを炭酸カルシウムを核にして凝集させて、短時間で沈降させることができる。
次に、上記凝集剤の製造方法を実施例に基づいて説明する。
本発明に係る凝集剤の製造方法は、珪素含有物質とアルカリ性物質を混合し、珪素含有物質の熱融解点以下の温度で熱処理して酸溶解性の珪素含有溶質を生成する珪素含有溶質生成手段と、酸溶液からなる溶媒を生成する酸溶媒生成手段と、前記酸溶媒に前記珪素含有溶質を溶解させて珪素ゾルを生成する珪素ゾル生成手段とからなる。
(実施例1)
実施例では、珪素含有物質として、二酸化珪素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al23)の高含有天然物である伊武部白土を用い、アルカリ性物質として、炭酸カルシウム(CaCO2)を用いた。
[珪素含有溶質生成手段]
先ず、伊武部白土を乾燥し、200メッシュ程度に粉砕する。また、炭酸カルシウムを主成分とする秩父系石灰岩を200メッシュ程度に粉砕する。そして、粉砕した伊武部白土と秩父系石灰岩を重量比3:7の割合で均一に混ぜ合わせ、電気炉内で1229℃で粉末状になるまで焼く。伊武部白土と秩父系石灰岩の混合物を焼くと、一部は塊状となるが、冷却に伴ってカルシウムの膨張作用により自然崩壊して白色パウダー状の珪素含有溶質が生成される。
[酸溶媒生成手段]
酸溶媒生成手段は、塩酸を希釈して酸溶媒を生成する手段からなり、33%濃度の塩酸(HCl)を5倍に希釈して、6.6%濃度の希塩酸を作る。
また、酸溶媒生成手段は、前記酸溶液に、酢酸、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウムの群から選ばれる1又は2以上のゲル化抑止剤を混合する手段を有し、本実施例では、6.6%濃度の希塩酸1リットルに、ゲル化抑止剤として99%濃度の酢酸(C242)25ccを滴加し、撹拌して酸溶媒を生成する。希塩酸に酢酸を加えた混酸で珪素を溶解すると、ゾル状態の安定期間を長く保つことができる。
[珪素ゾル生成手段]
この酸溶媒1リットルに、珪素含有溶質85gを投入し、スターラーで12時間撹拌して溶解する。酸溶媒に珪素含有溶質を投入すると、反応熱によって39℃まで上昇し、5時間でパウダー状溶質の懸濁の変化はなくなり、溶解飽和して珪素ゾルの飽和溶液となる。そのまま撹拌しながら冷却し、7時間で室温と同じ温度に下がり、溶解反応終了と判断する。溶液中に粒子は見られず、山吹色の懸濁液となる。
そして、本実施例は、珪素ゾルを濾過して未溶解懸濁物を取り除く濾過手段と、珪素ゾルに石膏を加えて未溶解懸濁物を団粒化させる団粒化手段を付加してあり、珪素ゾル中の未溶解懸濁物を濾過する。
濾過を容易にするために、珪素ゾル中に石膏(CaSO4)10gを投入し、約20分間(石膏の固化反応の起きる時間)撹拌し混ぜ合わせ、未溶解微粒子を取り込み団粒化させる。その後、コーヒードリッパ濾紙を使用して珪素ゾルを濾過すると、黄色透明なpH1.8の酸性珪素ゾル飽和溶液を得ることができ、約2時間の濾過で濾紙中に液は認められない。一方、石膏を混ぜずに濾過すると、24時間かけても完全に濾過することができず、濾紙中に液が残る。
珪素ゾルに石膏を混ぜたのは、濾過性向上のためで、その作用は石膏は酸性溶液中でも固化能力があり、濾紙の目詰まりの原因となる未溶解微粒子を取り込み団粒化させ、通水間隙を造るためであり、また、石膏は凝集剤のpHへの影響が少ないからである。
さらに、pH値調整手段によって、珪素ゾルに、鉄又はアルミニウムを加えて珪素ゾルのpH値を調整する。上記の黄色透明でpH1.8の酸性珪素ゾル飽和溶液に、鉄釘100gを投入し、約10時間でpH2.6になったところで終了し濾過する。珪素ゾルへの鉄の溶解量は微量であるから、鉄釘の投入量は少なくて良いが、反応時間を早めるために多めに投入している。処理の結果、pH2.6の無色に近い薄黄色の透明な液となった。pHの調整は、鉄の塩素反応によって水素を発生し、2価の鉄イオン(Fe2+)が生成され、そのとき、塩酸(HCl)の塩素(Cl)を消耗することにより、pH値が上昇することを利用したものである。なお、鉄釘に替えてアルミニウムを投入することによっても同様の結果を生ずるが、実施例では安全性の高い鉄を使用した。
以上の工程によって得られた珪素ゾルの酸性飽和溶液を使用して、無機物懸濁液及び有機物懸濁液中の懸濁物の凝集試験を行った。
【表2】
Figure 0003769010
表2は、無機物懸濁液として、赤土(酸性土)を含む濁水の凝集試験結果を示す。濁水の濁度を20,000ppmに調整し、この濁水を希釈して濁度を調整した濁水サンプルを用意した(表2の1〜11)。
各濁度の濁水サンプル1リットルをビーカーに取り、スターラーで撹拌しながら上記実施例1で製造した凝集剤を計量して滴加し、撹拌時間を計り、撹拌時間経過後、メスシリンダーに移して撹拌終了とする。そして、静止時間を計り、静止時間経過後、沈降フロック量をメスシリンダーの目盛で計り、懸濁液量に対する百分率で求め、上澄水を30cmの透視度計で透視度(cm)を計り、換算表により濁度(ppm)に換算した。
表2に示すように、全ての濁水サンプルについて、凝集処理後の上澄水の濁度が20ppm以下になった。従って、懸濁液の処理濃度幅は、高濃度(20,000ppm)のものから低濃度(20ppm以下)のものまで懸濁物を凝集することが可能である。但し、懸濁液が低濃度の場合には、フロックが小さく沈降に時間を要するために、静止時間を長くした。
【表3】
Figure 0003769010
表3は、有機物懸濁液として、青粉を含む濁水の凝集試験結果を示す。青粉の発生している池から濁水を採取し、濁度を測定すると700ppmであった。この濁水を希釈して濁度を調整した濁水サンプルを用意した(表3の1〜9)。
各濁度の濁水サンプル1リットルをビーカーに取り、フロックの沈降を早めるために、重りと凝集核としての炭酸カルシウム0.5gをスターラーで撹拌しながら投入した。そそて、上記実施例1で製造した凝集剤を計量して滴加し、撹拌時間を計り、撹拌時間経過後、メスシリンダーに移して撹拌終了とする。そして、静止時間を計り、静止時間経過後、沈降フロック量をメスシリンダーの目盛で計り、懸濁液量に対する百分率で求め、上澄水を30cmの透視度計で透視度(cm)を計り、換算表により濁度(ppm)に換算した。
表3に示すように、全ての濁水サンプルについて、凝集処理後の上澄水の濁度が20ppm以下になった。従って、有機物懸濁液の場合でも、高濃度(700ppm)のものから低濃度(20ppm以下)のものまで懸濁物を凝集することが可能である。
また、濁水中に炭酸カルシウムを投入しない場合には、凝集フロックが軽く水中を浮遊して沈降しないが、水とは分離していることから、濾過することにより濾液の濁度は20ppm以下になる。
本発明に係る凝集剤は、単独で使用して上記の効果を得ることができるが、他の凝集剤の前処理、凝集起剤として組み合わせると、微量で更に高い能力を発揮することができる。
【表4】
Figure 0003769010
【表5】
Figure 0003769010
表4は、有機物懸濁液として、畜舎排水の原水の凝集試験結果を示す。表4に示す畜舎排水の原水1Lに、上記実施例1で製造した凝集剤5mlを投入しながら1分程度撹拌し、30分間静止した。その上澄液を採取したものが処理水である。原水と処理水は、財団法人沖縄県環境科学センターにおいて測定を行い、9項目について表5に示す分析方法で測定し比較した。
測定項目中の浮遊物質量は、原水には4500mg/L存在したが、水処理後は22mg/Lに激減し、1回の水処理で排水基準を達成することができた。また、試験には有機物懸濁液としては過酷な条件の畜舎排水を使用したことから、一部項目について排水基準を達成していないものもあるが、原水に対して処理水では数値が大きく改善しており、本凝集剤による水処理を繰り返し行ったり、他の凝集剤の前処理、凝集起剤として組み合わせたりすることにより、排水基準を達成することは可能である。
産業上の利用の可能性
本発明に係る凝集剤によれば、希釈することによってゲル化し、ゲル化に伴って懸濁物を凝集する珪素ゾルからなる構成を有することにより、用水や排水等の懸濁液中に凝集剤を入れて凝集剤が希釈されることによって珪素ゾルが懸濁液中の懸濁物を包み込んでゲル化し、凝集することができるから、上水処理場、下水処理場、工業排水などの用水や排水等の権濁液を簡易、安全かつ迅速に処理することができる効果がある。
処理対象としては、上水場(簡易施設又は災害時の非常用給水設備)、下水汚水処理場、コンポストの排水処理施設、公園、ゴルフ場の池(農業用給水池)、ダムなど夏場の青粉対策、水産養殖場の排水、自家汚染対策、養豚、養鶏の畜舎排水、屠殺場畜肉加工施設排水、水産物加工場排水、給食関連炊飯センター、乳製品工場、パンめん製造工場、ホテル・レストランなど大型飲食店、酒造排水、豆腐製造業、大型クリーニング工場、病院排水、リゾート地域の環境保持施設、染物工場排水、製紙工場排水、プール、浴場の水のリサイクル、味噌・醤油・ビールの製造排水等がある。
また、本発明は、請求項1に記載の凝集剤において、前記珪素ゾルは、珪素含有物質とアルカリ性物質を混合して珪素含有物質の熱融解点以下の温度で熱処理して酸溶解性を与えてなる珪素含有溶質を、酸溶媒に溶解してなる構成を有することにより、この珪素含有溶質は酸溶解性を具備するから、この珪素含有溶質は容易に酸溶媒に溶解することによって安定した珪素ゾルを生成することができる効果がある。
また、本発明は、請求項2に記載の凝集剤において、前記アルカリ性物質が炭酸カルシウム又は石灰からなる構成を有することにより、珪素含有溶質がパウダー状となるから、酸溶媒への溶解性を向上させることができる効果がある。
また、本発明は、請求項2又は3に記載の凝集剤において、前記酸溶媒が希塩酸からなる構成を有することにより、塩酸濃度に対する珪素の溶解度は一定であるから、酸溶媒の塩酸濃度を下げることによって溶液中に分散するゾル密度も疎となり、珪素ゾルは一定の水空隙を有する安定密度となるから、安定したゾル状態を保つことができる。また、塩酸はカルシウムの溶解性が高く、中和すると塩化カルシウム(CaCl2)になるから安全無毒の凝集剤を生成することができる効果がある。
また、本発明は、請求項2乃至4のいずれかに記載の凝集剤において、前記酸溶媒が、酢酸、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウムの群から選ばれる1又は2以上のゲル化抑止剤を含有してなる構成を有することにより、ゲル化抑止剤によって珪素ゾルのゲル化を抑止して安定したゾル状態を長期間維持することができる効果がある。
また、本発明は、請求項2乃至5のいずれかに記載の凝集剤において、前記珪素含有物質が鉄又はアルミニウムを含有してなる構成を有することにより、鉄又はアルミニウムが酸溶媒に珪素と共に溶解され、凝集剤の使用時に、この鉄又はアルミニウムの還元作用によって、通常の凝集剤では捕らえることができない微粒子・色素粒子をゲルに取り込み、フロック化して凝集することができる効果がある。
また、本発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の凝集剤において、pH値が2〜3である構成を有することにより、pH指数が数値で3以下において珪素ゾルのゾル状態を保つことができ、pH指数が数値で2以上としたことによって、酸性の懸濁液を処理する際にpH調整を不要又は軽減することができる。従って、好ましくはpH3付近にすることによって、より酸性度の強い懸濁液を処理することができる効果がある。
また、本発明に係る凝集剤の製造方法によれば、珪素含有物質とアルカリ性物質を混合し、珪素含有物質の熱融解点以下の温度で熱処理して酸溶解性の珪素含有溶質を生成する珪素含有溶質生成手段と、酸溶液からなる溶媒を生成する酸溶媒生成手段と、前記酸溶媒に前記珪素含有溶質を溶解させて珪素ゾルを生成する珪素ゾル生成手段とからなる構成を有することにより、珪素含有溶質は酸溶解性を具備するから、珪素含有溶質を容易に酸溶媒に溶解させることによって安定した珪素ゾルを生成することができる。また、凝集剤を用水や排水等の懸濁液中に入れると、凝集剤が希釈されることによって珪素ゾルが懸濁液中の懸濁物を包み込んでゲル化し、凝集することができるから、簡易かつ安全に懸濁液を処理することができる効果がある。
また、本発明は、請求項8に記載の凝集剤の製造方法において、前記アルカリ性物質が炭酸カルシウム又は石灰からなる構成を有することにより、珪素含有溶質がパウダー状となるから、酸溶媒への溶解性を向上させることができる効果がある。
また、本発明は、請求項8又は9に記載の凝集剤の製造方法において、前記酸溶媒生成手段が、塩酸を希釈して酸溶媒を生成する手段からなる構成を有することにより、塩酸濃度に対する珪素の溶解度は一定であるから、酸溶媒の塩酸濃度を下げることによって溶液中に分散するゾル密度も疎となり、珪素ゾルは一定の水空隙を有する安定密度となるから、安定したゾル状態を保つことができる。また、塩酸はカルシウムの溶解性が高く、中和すると塩化カルシウム(CaCl2)になるから安全無毒の凝集剤を生成することができる効果がある。
また、本発明は、請求項8乃至10のいずれかに記載の凝集剤の製造方法において、前記酸溶媒生成手段が、前記酸溶液に、酢酸、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウムの群から選ばれる1又は2以上のゲル化抑止剤を混合する手段を含有する構成を有することにより、ゲル化抑止剤によって珪素ゾルのゲル化を抑止して安定したゾル状態を長期間維持することができる効果がある。
また、本発明は、請求項8乃至11のいずれかに記載の凝集剤の製造方法において、前記珪素ゾルを濾過して未溶解懸濁物を取り除く濾過手段を付加してなる構成を有することにより、珪素ゾル中の未溶解懸濁物を取り除き、珪素ゾルの酸性飽和溶液を生成することができる効果がある。
また、本発明は、請求項8乃至12のいずれかに記載の凝集剤の製造方法において、前記珪素ゾルに石膏を加えて未溶解懸濁物を団粒化させる団粒化手段を付加してなる構成を有することにより、石膏の固化能力によって濾紙の目詰まりの原因となる未溶解微粒子を取り込み団粒化させ、通水間隙を造って濾過性を向上させることができる効果がある。
また、本発明は、請求項8乃至13のいずれかに記載の凝集剤の製造方法において、前記珪素ゾルに、鉄又はアルミニウムを加えて珪素ゾルのpH値を調整するpH値調整手段を付加してなる構成を有することにより、還元作用によって色素粒子とか微粒子をゲルに取り込むことができる鉄又はアルミニウムを用いてpH値を調整することができると共に、珪素ゾルのゾル状態を保つことができるpH指数の数値で3以下において、好ましくはpH3付近に調整することによって、より酸性度の強い懸濁液を処理することができる効果がある。
また、本発明に係る凝集方法によれば、珪素からなる無害な請求項1乃至7のいずれかに記載の凝集剤を懸濁液に混合して懸濁物を凝集する構成を有することにより、上水処理場、下水処理場、工業排水などの用水や排水等の懸濁液中に凝集剤を混合して、懸濁液中の懸濁物を包み込んで迅速に凝集することができるから、簡易かつ安全にどのような場所でも懸濁液を処理することができる効果がある。
また、本発明は、請求項15に記載の凝集方法において、懸濁液に更にアルカリ性物質を混合する手段を付加してなる構成を有することにより、懸濁液の酸性度が強い場合でも珪素ゾルを中和して、珪素ゾルのゲル化に伴って懸濁物を凝集することができる。また、アルカリ性物質として炭酸カルシウムや石灰等の粉末を使用することにより、フロックが小さく沈降に時間を要する低濃度懸濁液の場合や、フロックが軽く沈降に時間を要する有機物を含む懸濁液の場合に、炭酸カルシウムや石灰等の粉末を核にして凝集させることによって短時間で迅速に沈降させることができる効果がある。
なお、本発明は、酸性(pH3近く)で一定期間(1年以上)珪素ゾル状態を維持することができ、凝集剤を使用時の希釈によって、ゾル状態の安定のバランスを失い、珪素ゾル溶液のゲルに変化する特性を活用し、水中の懸濁微粒子をゲルで包み収斂により、フロック化し水と分離することができる凝集剤を提供するものである。

Claims (15)

  1. 希釈することによってゲル化し、ゲル化に伴って懸濁物を凝集する珪素ゾルからなる凝集剤であって、前記珪素ゾルは、珪素含有物質とアルカリ性物質を混合して珪素含有物質の熱融解点以下の温度で熱処理して酸溶解性を与えてなる珪素含有溶質を、酸溶媒に溶解してなる凝集剤。
  2. 請求項1に記載の凝集剤において、前記アルカリ性物質が炭酸カルシウム又は石灰からなる凝集剤。
  3. 請求項1又は2に記載の凝集剤において、前記酸溶媒が希塩酸からなる凝集剤。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の凝集剤において、前記酸溶媒が、酢酸、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウムの群から選ばれる1又は2以上のゲル化抑止剤を含有してなる凝集剤。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の凝集剤において、前記珪素含有物質が鉄又はアルミニウムを含有してなる凝集剤。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の凝集剤において、pH値が2〜3である凝集剤。
  7. 珪素含有物質とアルカリ性物質を混合し、珪素含有物質の熱融解点以下の温度で熱処理して酸溶解性の珪素含有溶質を生成する珪素含有溶質生成手段と、酸溶液からなる溶媒を生成する酸溶媒生成手段と、前記酸溶媒に前記珪素含有溶質を溶解させて珪素ゾルを生成する珪素ゾル生成手段とからなる凝集剤の製造方法。
  8. 請求項7に記載の凝集剤の製造方法において、前記アルカリ性物質が炭酸カルシウム又は石灰からなる凝集剤の製造方法。
  9. 請求項7又は8に記載の凝集剤の製造方法において、前記酸溶媒生成手段が、塩酸を希釈して酸溶媒を生成する手段からなる凝集剤の製造方法。
  10. 請求項7乃至9のいずれかに記載の凝集剤の製造方法において、前記酸溶媒生成手段が、前記酸溶液に、酢酸、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウムの群から選ばれる1又は2以上のゲル化抑止剤を混合する手段を含有する凝集剤の製造方法。
  11. 請求項7乃至10のいずれかに記載の凝集剤の製造方法において、前記珪素ゾルを濾過して未溶解懸濁物を取り除く濾過手段を付加してなる凝集剤の製造方法。
  12. 請求項7乃至11のいずれかに記載の凝集剤の製造方法において、前記珪素ゾルに石膏を加えて未溶解懸濁物を団粒化させる団粒化手段を付加してなる凝集剤の製造方法。
  13. 請求項7乃至12のいずれかに記載の凝集剤の製造方法において、前記珪素ゾルに、鉄又はアルミニウムを加えて珪素ゾルのpH値を調整するpH値調整手段を付加してなる凝集剤の製造方法。
  14. 請求項1乃至6のいずれかに記載の凝集剤を懸濁液に混合して懸濁物を凝集する凝集方法。
  15. 請求項14に記載の凝集方法において、懸濁液に更にアルカリ性物質を混合する手段を付加してなる凝集方法。
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