JP6655862B1 - 塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液 - Google Patents

塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液 Download PDF

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Abstract

【課題】無機凝集剤とアニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤を併用した水処理方法において、最も汎用的な塩基度50%の水道用PACを用いた場合よりも除濁力に優れる無機凝集剤の開発を課題とする。【解決手段】Al2O3濃度が0.05質量%以上8質量%未満であり、SiO2/Al2O3(モル比)と塩基度(%)が、SiO2/Al2O3(モル比)をX、塩基度(%)をYとしたときに、式1〜式6(式1:X≧0.01、式2:X≦1.50、式3:Y≧3、式4:Y≦83、式5:0.2≦X≦1.2の範囲においてY≧44X-5.8、式6:1.2≦X≦1.5の範囲においてY≧76.667X-45)に囲まれた領域内におけるいずれかの値を取り、Haze率が25%以下であり、且つフロック強度試験に供試したときの濁度差が50度以下である、塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液である。【選択図】図1

Description

本発明は、水処理用途に好適な塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液に関する。
生活排水、工場排水、し尿排水等の排水を被処理水とした水処理において、無機凝集剤とアニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤を併用した水処理方法が広く採用されている。これは、一般に、無機凝集剤単独による水処理方法に比較して、無機凝集剤とアニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤の併用による水処理方法は、フロックを粗大化させ、速やかに沈降させることが可能であり、これによって処理時間を短縮できるからである。また、河川水・湖沼水・地下水等の上水用原水を被処理水とする水処理において、気象変動や環境変化等の影響により被処理水が高濁質化することがあり、そのような被処理水に対して、従来からの無機凝集剤単独による水処理方法では対処が困難となることを想定して、無機凝集剤と高分子凝集剤の併用による水処理方法の実用化研究がなされている。
無機凝集剤に期待される役割は、濁質を凝集させ、微細なフロックを形成させることである。この基本的メカニズムは、マイナスに帯電しているために互いに反発して凝集しない濁質を、加水分解等によりプラス荷電した無機凝集剤によって荷電中和することにより凝集させ、微細なフロックを形成させるものである。また、上記高分子凝集剤に期待される役割は、当該微細なフロックから粗大フロックを形成させることである。形成された粗大フロックを自然沈降や加圧浮上によって分離することで清澄化できる。
水処理に用いられる無機凝集剤と高分子凝集剤の種類は、いずれも多種多様であり、よって無機凝集剤と高分子凝集剤の組合せも多種多様に存在することになる。
無機凝集剤の代表例は、アルミニウム系凝集剤では硫酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、塩化アルミニウム等であり、鉄系凝集剤では塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等である。
アニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤の代表例は、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミドの部分加水分解物、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物等である。なお、構成モノマーの種類や分子量等の違いにより、高分子凝集剤には非常に多くの銘柄が存在している。また、アニオン性の高分子凝集剤は、弱アニオン性、中アニオン性、強アニオン性に分類することができる。
ここで、塩基性塩化アルミニウムは、ポリ塩化アルミニウム(PAC)とも称されるものであり、塩基度の範囲、硫酸根の含有の有無等により種々のものが知られている。日本工業規格には、「水道用ポリ塩化アルミニウム(水道用塩基性塩化アルミニウム)」に関する規格がK1475(1996)において定められており、酸化アルミニウム(Al2O3)濃度は10.0〜11.0質量%の範囲に規定されている。同様に、公益社団法人日本水道協会(JWWA)の「水道用ポリ塩化アルミニウム」に関する規格K154:2016においても、酸化アルミニウム(Al2O3)濃度は10.0〜11.0質量%の範囲に規定されている。以下、上記「水道用ポリ塩化アルミニウム」を「水道用PAC」と称する。上述の無機凝集剤に関する凝集の基本的メカニズムの説明から理解されるように、無機凝集剤においては金属成分が凝集における有効成分として作用するものであるため、酸化アルミニウム(Al2O3)濃度の規定は重要な位置づけとなっている。
特許文献1には、塩基性塩化アルミニウムの1種として、ケイ酸をSiO2/Al2O3のモル比として0.001〜0.1の範囲で含有した高塩基性塩化アルミニウムが開示されている。特許文献1の高塩基性塩化アルミニウムは、上水処理にも適用できることを企図したものであり、よって実施例1におけるAl2O3濃度は、水道用PACの規格内である10.3%となっている。
非特許文献1には、polyaluminum silicate chloride (PASC)に関する技術が記載されている。PASCの製造方法は、塩化アルミニウム溶液にポリケイ酸(polysilicic acid)と水を添加した後、NaOHを滴下するものである。
特許第6186545号公報
非特許文献1に記載のPASCは、SiO2/Al2O3(モル比)が低いと重合ケイ酸が溶解し易いために高い透明性が得られるが、ケイ酸濃度が低いために凝集性能が不十分となる傾向がある。一方、SiO2/Al2O3(モル比)が高いとケイ酸濃度が高いために凝集性能が得られ易い傾向にあるとしても、製造時にはハンドリング性の悪いケイ酸のゲル状物が生成し易く、また、重合ケイ酸の不溶解物、ケイ酸アルミニウムの析出物等と思われる沈殿が生じ易いため、工業的製造には不向きである。
本発明は、無機凝集剤とアニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤を併用した水処理方法において、最も汎用的な塩基度50%の水道用PAC(以下「B50水道用PAC」という)を用いた場合よりも除濁力に優れる無機凝集剤の開発を課題とする。ここで、除濁力に優れるとは、無機凝集剤を被処理水に添加して次にアニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤を添加した後における濁質の除去度合いが高く、且つ、形成される粗大フロックが崩壊し難いことをいう。
本発明者らは上記課題を解決するため、新規な無機凝集剤の開発について鋭意検討を行った結果、驚くべきことに、アルミニウム、ケイ酸及び塩素を構成成分とする塩基性塩のうち、有効成分であるAl2O3濃度を水道用PACの規格よりも低くした上で、SiO2/Al2O3(モル比)及び塩基度を適切な範囲に設定したものであって所定の透明性を有するものが、工業的製造に適し且つB50水道用PACよりも優れた除濁力を有することを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成させたものである。さらに特筆すべきは、B50水道用PACよりも少ないAl2O3注入量にて優れた除濁力が得られることである。
本発明は以下のとおりである。
[1]以下(組成1)と(組成2)で規定される組成を有し、且つ、以下(特性1)と(特性2)で規定される特性を有する、塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液。
(組成1)当該塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液のAl2O3濃度が、0.05質量%以上8質量%未満である。
(組成2)当該塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液のSiO2/Al2O3(モル比)と塩基度(%)が、SiO2/Al2O3(モル比)をX、塩基度(%)をYとしたときに、以下の式1〜式6に囲まれた領域内におけるいずれかの値である。
式1:X≧0.01
式2:X≦1.5
式3:Y≧3
式4:Y≦83
式5:Y≧44X-5.8(0.2≦X≦1.2の範囲)
式6:Y≧76.667X-45(1.2≦X≦1.5の範囲)
(特性1)当該塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液のHaze率が25%以下である。
(特性2)当該塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を下記フロック強度試験に供試したときの濁度差が50度以下である。
〔フロック強度試験〕
1Lの平底ガラスビーカー(内径10.5±0.5cm)に収容した1000mLの模擬被処理水(模擬被処理水は蒸留水に多木化学(株)製のペースト肥料「タキペースト14号」を5.0g/Lの濃度となるように添加して調製したもの)に対し、Al2O3として10mgの注入量となるように塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を有姿で注入し、フラットパドル(2枚型。1枚のパドルの大きさは縦25mm×横24mm。パドルの下端は上記平底ガラスビーカーの内側底面から鉛直上方向に5mmの位置に設定)を用いて115rpmで1分間撹拌後、弱アニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤である「タキフロックA-122A」(多木化学(株)の商品名)の1.0mg/mL水溶液を1.0mL注入し、更に115rpmで1分間撹拌し、次いで45rpmで5分間撹拌する。次に、10分間の静置後、デカンテーションにて上澄み100mLを採取し、その濁度を測定し、濁度Aとする。
上記上澄み採取後の残液に対して、フラットパドル(2枚型。1枚のパドルの大きさは縦25mm×横24mm。パドルの下端は上記平底ガラスビーカーの内側底面から鉛直上方向に5mmの位置に設定)を用いて200rpmで5分間撹拌してから10分間の静置を行い、デカンテーションにて上澄み100mLを採取し、その濁度を測定し、濁度Bとする。
濁度差を、濁度差=濁度B−濁度Aの式により算出する。
[2]上記[1]記載の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液と、アニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤とを被処理水に添加し、凝集処理する水処理方法。
[3]上記[1]記載の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液と、当該塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液以外の無機凝集剤と、アニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤とを被処理水に添加し、凝集処理する水処理方法。
[4]以下の(i)又は(ii)の工程を含む、上記[1]記載の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液の製造方法。
(i)塩化アルミニウム及び/又は塩基性塩化アルミニウムと、アルミノケイ酸ナトリウムと、を水存在下で混合する工程。
(ii)塩化アルミニウム及び/又は塩基性塩化アルミニウムと、アルミノケイ酸ナトリウムと、塩基度調整剤と、を水存在下で混合する工程。
[5]上記[1]記載の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を乾燥して得られる粉体。
本発明の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液は、特にアニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤と併用したときにその優れた除濁力が発揮されるため、水処理用凝集剤としての用途に適したものである。
本発明の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液の組成において、SiO2/Al2O3(モル比)をX(横軸)、塩基度(%)をY(縦軸)としたときに、式1:X≧0.01、式2:X≦1.5、式3:Y≧3、式4:Y≦83、式5:Y≧44X-5.8(0.2≦X≦1.2の範囲)、及び式6:Y≧76.667X-45(1.2≦X≦1.5の範囲)によって囲まれた領域を示した図である。 フロック強度試験に用いるフラットパドル(撹拌軸つき)の模式図である。
以下、好ましい実施形態に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
なお、本発明において、数値範囲に関する「数値1〜数値2」という表記は、数値1を下限値とし数値2を上限値とする、両端の数値1及び数値2を含む数値範囲を意味し、「数値1以上数値2以下」と同義である。
本発明の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液(以下「本発明の水溶液」という)は、以下(組成1)と(組成2)で規定される組成を有し、且つ、以下(特性1)と(特性2)で規定される特性を有するものである。
(組成1)本発明の水溶液のAl2O3濃度が、0.05質量%以上8質量%未満である。
(組成2)本発明の水溶液のSiO2/Al2O3(モル比)と塩基度(%)が、SiO2/Al2O3(モル比)をX、塩基度(%)をYとしたときに、以下の式1〜式6に囲まれた領域内におけるいずれかの値である。
式1:X≧0.01
式2:X≦1.5
式3:Y≧3
式4:Y≦83
式5:Y≧44X-5.8(0.2≦X≦1.2の範囲)
式6:Y≧76.667X-45(1.2≦X≦1.5の範囲)
(特性1)本発明の水溶液のHaze率が25%以下である。
(特性2)本発明の水溶液を後掲のフロック強度試験に供試したときの濁度差が50度以下である。
図1は、SiO2/Al2O3(モル比)をX軸にとり、塩基度(%)をY軸にとったときのグラフであり、グラフ中の斜線部分は式1〜式6に囲まれた領域を示したものである。
本発明の水溶液中のAl2O3濃度の上限は、上記のように8質量%未満である。良好なハンドリング性や除濁力の向上効果は、Al2O3濃度が低くなる程、より発揮される傾向にある。Al2O3濃度の上限は、好ましくは7.5質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、更に好ましくは6.5質量%以下であり、更により好ましくは6質量%以下であり、特に好ましくは5.5質量%以下であり、特により好ましくは5質量%以下である。Al2O3濃度の下限については、注入量を増加させることによって所定の除濁力を得ることが可能なため低値であっても構わないが、経済的な観点から0.05質量%である。Al2O3濃度の下限は、好ましくは0.1質量%であり、より好ましくは0.5質量%であり、更により好ましくは1質量%であり、特に好ましくは1.2質量%であり、特により好ましくは1.5質量%である。Al2O3濃度の好ましい範囲として、0.05〜7.5質量%、0.05〜7質量%、0.05〜6.5質量%、0.05〜6質量%、0.05〜5.5質量%、0.05〜5質量%、0.1質量%以上且つ8質量%未満、0.1〜7.5質量%、0.1〜7質量%、0.1〜6.5質量%、0.1〜6質量%、0.1〜5.5質量%、0.1〜5質量%、0.5質量%以上且つ8質量%未満、0.5〜7.5質量%、0.5〜7質量%、0.5〜6.5質量%、0.5〜6質量%、0.5〜5.5質量%、0.5〜5質量%、1質量%以上且つ8質量%未満、1〜7.5質量%、1〜7質量%、1〜6.5質量%、1〜6質量%、1〜5.5質量%、1〜5質量%、1.2質量%以上且つ8質量%未満、1.2〜7.5質量%、1.2〜7質量%、1.2〜6.5質量%、1.2〜6質量%、1.2〜5.5質量%、1.2〜5質量%、1.5質量%以上且つ8質量%未満、1.5〜7.5質量%、1.5〜7質量%、1.5〜6.5質量%、1.5〜6質量%、1.5〜5.5質量%、1.5〜5質量%等を例示することができる。
ところで、凝集における有効成分として作用するAl2O3濃度について、本発明の水溶液の0.05質量%以上8質量%未満の範囲は、水道用PACのAl2O3濃度規格10.0〜11.0質量%の範囲に比べると低い濃度範囲である。本発明の水溶液が優れた除濁力を発揮することができるのは、この低い濃度範囲に起因して、アルミニウムの存在形態が水道用PACと異なっていることがその理由として考えられる。アルミニウムの存在形態の解析法として、例えば、フェロン法が知られている。フェロン法は、フェロンとアルミニウムとのキレート反応を利用したアルミニウム化学種の分画方法である。フェロン法で分析したところ、本発明の水溶液は、B50水道用PACに比べると、コロイド形態のアルミニウムが多く存在するものであった。これは、ケイ酸の作用によってアルミニウムが多核化したためと考えられる。このコロイド形態のアルミニウムが、本発明の水溶液の除濁力の発揮に貢献していると推測される。
本発明の水溶液は、排水、上水用原水等の各種被処理水に対して使用できるものである。被処理水の種類によっては、リン酸イオンやタンパク質等の凝集阻害物質を多量に含有することがある。B50水道用PACに限らず、一般に水道用PACは、上記凝集阻害物質を含む被処理水に使用した場合、凝集阻害物質によって凝集能力が低下させられることがある。このとき、通常の添加量よりも余分に添加する必要がある。
一方、本発明の水溶液は、コロイド形態のアルミニウムの存在によるものかは不明であるが、本発明の水溶液を使用した水処理試験から得た知見では、凝集阻害物質の影響を受け難いと考えられるものであった。したがって、本発明の水溶液は、B50水道用PACよりも有効成分であるAl2O3注入量が少なくても、上記凝集阻害物質を含む被処理水に対して優れた除濁力を発揮することができるものである。
また、無機凝集剤の使用量が増加するとスラッジ容量が大きくなるが、より少ないAl2O3注入量にて優れた除濁力が得られる本発明の水溶液は、スラッジの減容化にも役立つことができるものである。
本発明において、塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液の塩基度は、下記数式1によって求める。
ここで、Xiはi番目のアニオンの濃度、Yiはi番目のアニオンの価数、Ziはi番目のアニオンの分子量であり、アニオンの種類iは1〜m個である。また、xjはj番目のカチオン(ただしアルミニウムを除く。以下同じ)の濃度、yjはj番目のカチオンの価数、zjはj番目のカチオンの分子量であり、カチオンの種類jは1〜n個である。なお、数式1において、SiO2は塩基度計算の対象外とする。
本発明の水溶液に含有されるケイ酸の量は、式1と式2より、SiO2/Al2O3(モル比)として0.01〜1.5の範囲となる量である。SiO2/Al2O3(モル比)が0.01未満である場合、ケイ酸を含有させたことによる除濁力の向上効果を得ることが困難となる。一方、上記SiO2/Al2O3(モル比)が1.5超である場合、良好なハンドリング性が得られないことがある。式1は、好ましくはX≧0.05であり、より好ましくはX≧0.1であり、更に好ましくはX≧0.15であり、更により好ましくはX≧0.2である。式2は、好ましくはX≦1.4であり、より好ましくはX≦1.3であり、更に好ましくはX≦1.2である。
本発明の水溶液の塩基度の範囲は、式3と式4より、3〜83%である。塩基度が3%未満又は83%超である場合、良好なハンドリング性や凝集剤としての性能が得られ難くなる。式3は、好ましくはY≧5であり、より好ましくはY≧10であり、更に好ましくはY≧15であり、更により好ましくはY≧20であり、特に好ましくはY≧25であり、特により好ましくはY≧30である。式4は、好ましくはY≦80であり、より好ましくはY≦75であり、更に好ましくはY≦70であり、更により好ましくはY≦65であり、特に好ましくはY≦60である。
式5(Y≧44X-5.8)は、0.2≦X≦1.2の範囲で有効であり、当該Xの範囲の両端における(X、Y)の値は、(0.20、3.00)と(1.20、47.00)である。0.2≦X≦1.2の範囲において、Y<44X-5.8の部分は、良好なハンドリング性を得ることが困難である。
式6(Y≧76.667X-45)は、1.2≦X≦1.5の範囲で有効であり、当該Xの範囲の両端における(X、Y)の値は、(1.20、47.00)と(1.50、70.00)である。1.2≦X≦1.5の範囲において、Y<76.667X-45の部分は、良好なハンドリング性を得ることが困難である。なお、式1〜6に囲まれた領域が閉じた領域となるように、特に式5と6から算出される値を適宜四捨五入、切り捨て又は切り上げにより処理することが好ましい。例えば、小数点以下3桁目を処理することが好ましいが、それ以外の桁数であっても構わない。
本発明の水溶液に含有される塩素の量は、Cl/Al2O3(モル比)として1〜12の範囲であることが好ましい。Cl/Al2O3(モル比)の範囲の下限は2であることが好ましく、更に好ましくは3である。また、Cl/Al2O3(モル比)の範囲の上限は11であることが好ましく、更に好ましくは10である。
本発明の水溶液は、一般にチンダル現象が観察されるものであるため、分散液と称することもできるが、水を溶媒とするものであるため便宜上「水溶液」と称するものである。なお、チンダル現象が観察されることは、本発明の構成要件を満たすことの必要条件ではない。
本発明の水溶液の好適な一形態は、良好なハンドリング性を有するものであり、好例は、低粘性のものである。このためには、製造直後において沈殿やゲル化が発生せず、また、20℃で一週間保存後もそれらが発生しないものであることが好ましい。本発明の水溶液は、Al2O3濃度が低いほどハンドリング性が向上する傾向を示すので、ハンドリング性の観点からはAl2O3濃度の上限を5質量%以下とすることが好ましい。より高度なハンドリング性の観点から、特にAl2O3濃度が4〜5質量%の範囲においては、SiO2/Al2O3(モル比)と塩基度を特定の範囲に設定することが好ましく、そのような特定の範囲として、式1〜式6に囲まれた領域内であって、SiO2/Al2O3(モル比)が0.05〜1且つ塩基度が30〜80%の範囲を例示することができる。
本発明の水溶液は、アルミニウム、ケイ酸及び塩素を必須構成要素とするものであるが、本発明の水溶液の構成要件を満たす限りにおいて、他の構成要素を任意成分として含有しても構わない。他の構成要素として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、硫酸イオン等を例示することができる。他の構成要素の含有割合について、例えば、アルカリ金属とアルカリ土類金属については、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属をMとしたときに、M/Al2O3(モル比)=0〜5の範囲であることが好ましい。ここで、Mのモル数は、アルカリ金属のモル数+(アルカリ土類金属のモル数×2)によって求めたものである。M/Al2O3(モル比)の範囲の上限は、4であることがより好ましく、更に好ましくは3である。アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有するときは、例えば、M/Al2O3(モル比)=0.13〜4の範囲であることが好ましい。また、硫酸イオンについては、SO4/Al2O3(モル比)=0〜0.35の範囲であることが好ましい。SO4/Al2O3(モル比)の範囲の上限は、0.32であることがより好ましく、更に好ましくは0.25である。硫酸イオンを含有するときは、例えば、SO4/Al2O3(モル比)=0.01〜0.35の範囲であることが好ましい。
好ましい一形態においては、Mがアルカリ金属のみ(アルカリ土類金属を含有しない)のものである。また、別の好ましい一形態においては、硫酸イオンを含有しないものである。更に別の好ましい一形態においては、Mがアルカリ金属のみ(アルカリ土類金属を含有しない)、且つ、硫酸イオンを含有しないものである。
本発明の水溶液は、透明性の高いものである。透明性の評価法として、濁り度合いの指標であるHaze率を用いたときに、本発明の水溶液はHaze率が25%以下を示すものである。Haze率が25%を超えるようなものは、既にゲル化していたり、沈殿が生じていたりとハンドリング性が悪化したものである。ここで、Haze率測定における本発明の水溶液のAl2O3濃度は0.5質量%である。Al2O3濃度の調整には、水で希釈したり、限外ろ過、エバポレーター等を用いて濃縮したりすればよい。これを光路長10mmのガラスセルに入れ、日本電色工業(株)製 色度・濁度測定器 COH400でHaze率を測定する。なお、測定器として、上記と同等の性能を有するものを用いてもよい。Haze率は、好ましくは20%以下であり、15%以下がより好ましく、10%以下が特に好ましい。Haze率の下限は特に限定されないが、好ましくは0%である。
本発明の水溶液の除濁力は、以下に示すフロック強度試験で評価することができる。フロック強度試験は、本発明の水溶液と弱アニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤を添加した後における濁質の除去度合い、及びこれによって形成される凝集沈殿した粗大フロックに対して、フロック破壊操作を行ったとき、すなわち、フラットパドルによる撹拌という力学的負荷(せん断力)を与えたときの粗大フロックの崩壊性の難易を評価するものである。
〔フロック強度試験〕
模擬被処理水は、蒸留水に多木化学(株)製のペースト肥料「タキペースト14号」を5.0g/Lの濃度となるように調製したものである。模擬被処理水のpHは、およそ8.2程度である。また、模擬被処理水の濁度は、およそ480度程度である。
1Lの平底ガラスビーカー(内径10.5±0.5cm)に収容した1000mLの模擬被処理水に対し、Al2O3として10mgの注入量となるように塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を有姿で注入し、フラットパドル(2枚型。1枚のパドルの大きさは縦25mm×横24mm。パドルの下端は上記平底ガラスビーカーの内側底面から鉛直上方向に5mmの位置に設定)を用いて115rpmで1分間撹拌後、弱アニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤である「タキフロックA-122A」(多木化学(株)の商品名)の1.0mg/mL水溶液を1.0mL注入し、更に115rpmで1分間撹拌し、次いで45rpmで5分間撹拌する(フロック成長操作)。次に、10分間の静置後、デカンテーションにて上澄み100mLを採取し、その濁度を測定し、濁度Aとする。
上記上澄み採取後の残液に対して、フラットパドル(2枚型。1枚のパドルの大きさは縦25mm×横24mm。パドルの下端は上記平底ガラスビーカーの内側底面から鉛直上方向に5mmの位置に設定)を用いて200rpmで5分間撹拌(フロック破壊操作)してから10分間の静置を行い、デカンテーションにて上澄み100mLを採取し、その濁度を測定し、濁度Bとする。
濁度差を、濁度差=濁度B−濁度Aの式により算出する。
上記フロック強度試験における補足及びその他注意点は以下のとおりである。
・「タキペースト14号」は、その製品外装に表示が義務付けられている生産業者保証票の記載事項より、登録番号「生第102719号」、肥料の種類「液状複合肥料」、肥料の名称「多木尿素有機入り液状複合肥料新14号改」、保証成分量:窒素全量14.0%(内アンモニア性窒素1.2%)、可溶性りん酸10.0%(内水溶性りん酸7.2%)、水溶性加里10.0%、く溶性苦土1.0%、窒素全量を保証又は含有する原料(含有量の大きい順):尿素、ホルムアルデヒド加工尿素肥料、乾燥菌体肥料である。このように「タキペースト14号」は、凝集阻害物質としてリン酸イオンとタンパク質(乾燥菌体肥料に由来)を含んだものである。なお、フロック強度試験に「タキペースト14号」を供試するにあたっては、事前によく撹拌することが好ましい。
・塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を有姿で注入するとは、供試する塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を事前に希釈したり濃縮したりすることなく、そのまま原液で注入することを意味する。
・模擬被処理水、並びに上記注入に用いる塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液及び弱アニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤は、液温15±5℃に設定したものを用いることが好ましい。また、試験の実施中も模擬被処理水の液温が15±5℃に保たれるようにすることが好ましい。
・フラットパドルの形状は、図2に示した模式図のものであり、撹拌軸12にフラットパドル15が2枚接合したものである。フラットパドルの厚みは特に限定されない。また、材質も特に限定されない。例えば、材質としてポリ塩化ビニルを用いたときの厚みの一例は、2mmである。
・1Lの平底ガラスビーカーとして、内径10.5±0.5cmのものを用いる。例えば、AGCテクノグラス社製IWAKI 1Lの平底ガラスビーカーが好ましく、その6個の平底ガラスビーカーの内径を測定したところ、10.3〜10.5cmであり、平均値は10.43cmであった。平底ガラスビーカーの底面のおおよそ中心の位置に、フラットパドルの撹拌軸が位置するように設定することが好ましい。
・濁度の測定には、日本電色(株)製の水質計 WA1(セル:2cmセル)を用いることが好ましい。
・比較試験として、塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液に代えて、それ以外のアルミニウム系凝集剤を試験対象とするときは、上記試験において「塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液」を該当するアルミニウム系凝集剤に代えればよい。
ここで、フロック強度試験における濁度A、濁度B及び濁度差について説明する。
濁度Aは、模擬被処理水に対する凝集沈殿度合いを見るための指標である。塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液の注入から弱アニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤の注入とそれに引続いての撹拌に至るまでの一連の操作はフロック成長操作であり、これにより粗大フロックが生成していれば次の静置により沈殿し、濁度Aは低値を示す。
濁質の除去度合いは、濁度Aを用いて、除濁率=(模擬被処理水の濁度−濁度A)÷模擬被処理水の濁度×100の式で算出される除濁率によって評価することができる。本発明の水溶液を供試したときの除濁率は、75%以上であることが好ましい。除濁率が75%以上であれば、優れた濁質除去力を有すると評価することができる。除濁率は、80%以上であることがより好ましく、更により好ましくは85%以上である。
濁度Bは、凝集沈殿した粗大フロックに対して、フラットパドルによる撹拌という力学的負荷(せん断力)を与えたときの粗大フロックの崩壊度合いを見るための指標である。
濁度差は、粗大フロックの崩壊し難さを評価するものである。粗大フロックが崩壊し難ければ、濁度差は低値を示す。濁度差が50度以下であれば、崩壊し難い強度を有する強固な粗大フロックが得られたと判断することができる。濁度差は、より好ましくは30度以下であり、更により好ましくは20度以下であり、特に好ましくは10度以下であり、特により好ましくは5度以下である。特に好適な形態においては、濁度差は負の値となる。
このように、本発明の水溶液を用いることによって、強固な粗大フロックを得ることができる。つまり、本発明の水溶液がいわゆるフロック強固化剤として作用すると言える。粗大フロックが強固なものになれば、せん断力に対する耐久力が高くなるため、フロックが壊れ難くなり、濁質の漏出防止効果が期待できる。
本発明の水溶液が、フロック強固化剤として、どのように作用するかについてのメカニズムは定かではないが、以下のことが推測される。
水道用PACについては、被処理水に添加されることによって濁質を荷電中和し、更にアルミニウムの加水分解物が濁質同士を主に吸着作用によって結合して微細なフロックの形成に関与していると考えられている。
これに対し、本発明の水溶液については、上記吸着作用による結合がケイ酸によって強化されており、この強化された吸着作用がアニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤によって粗大フロックが形成されたときに、粗大フロックの強固化に寄与しているものと推測される。
本発明の水溶液をフロック強固化剤として作用させるという観点においては、本発明の水溶液のAl2O3濃度の上限は5質量%以下とすることが好ましい。より強力なフロック強固化剤として作用させる観点から、特にAl2O3濃度が4〜5質量%の範囲においては、SiO2/Al2O3(モル比)と塩基度を特定の範囲に設定することが好ましく、そのような特定の範囲として、式1〜式6に囲まれた領域内であって、SiO2/Al2O3(モル比)が0.1〜0.6且つ塩基度が30〜70%の範囲を例示することができる。
本発明の水溶液を用いた水処理方法の好適な形態(第一形態)は、本発明の水溶液と、アニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤とを被処理水に添加し、凝集処理するものである。なお、凝集処理においては、撹拌等の操作を適宜行うことが好ましい。好適な添加順序は、最初に本発明の水溶液、次にアニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤である。この添加順序は、本発明の水溶液によって濁質を凝集させて微細なフロックを形成させた後、上記高分子凝集剤によって当該微細なフロックから粗大フロックを形成させることに好都合である。
アニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤として、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミドの部分加水分解物、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、上記高分子凝集剤の重量平均分子量の範囲は、200万〜2000万程度であることが好ましい。なお、アニオン性の高分子凝集剤の範囲には、弱アニオン性、中アニオン性、強アニオン性が含まれる。
アニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤は、市販の各種製品を使用することができる。ここで、多木化学(株)の商品名で例示すると、「タキフロックN-100T」、「タキフロックN-131」(以上、ノニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤)、「タキフロックA-102」、「タキフロックA-102T」、「タキフロックA-112T」、「タキフロックA-122A」、「タキフロックA-132」(以上、弱アニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤)、「タキフロックA-103」、「タキフロックA-103E」、「タキフロックA-103T」、「タキフロックA-103TE」、「タキフロックA-113T」、「タキフロックA-133」、「タキフロックA-104」、「タキフロックA-104T」、「タキフロックA-105T」、「タキフロックA-106T」、「タキフロックAL-50」、「タキフロックAL-65」(以上、中アニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤)、「タキフロックA-177T」(強アニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤)、「タキフロックA-108T」(強アニオン性ポリアクリル酸ソーダ系高分子凝集剤)、「タキフロックA-122T」(ノニオン性変性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤)、「タキフロックA-142」、「タキフロックA-162」(以上、中アニオン性変性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤)等が挙げられる。また、上水用の高分子凝集剤としては、MTアクアポリマー(株)の「A-95PWG-S」(弱アニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤)、「A-110PWG-S」、「A-125PWG-S」(以上、中アニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤)等が挙げられる。
本発明の水溶液と、アニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤の添加量は、被処理水により適宜設定することが好ましいが、例えば、本発明の水溶液は被処理水に対しAl2O3として1〜1,000ppmであり、アニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤は被処理水に対し0.5〜100ppmである。
また、本発明の水溶液を用いた水処理方法の別の好適な形態(第二形態)は、上記第一形態のうち、無機凝集剤として、本発明の水溶液の他に、本発明の水溶液以外の無機凝集剤(以下「無機凝集剤A」という)を用いるものである。すなわち、本発明の水溶液と、無機凝集剤Aと、アニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤とを被処理水に添加し、凝集処理するものである。無機凝集剤Aの例として、アルミニウム系凝集剤では硫酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、塩化アルミニウム等が挙げられ、鉄系凝集剤では塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等が挙げられる。好適な添加順序は、最初に本発明の水溶液と無機凝集剤A、次にアニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤である。また、本発明の水溶液と無機凝集剤Aの添加順序については、いずれを先に添加してもよいし、両者を同時に添加してもよい。第二形態は、無機凝集剤として無機凝集剤Aのみを添加する場合と比べて、無機凝集剤の添加量を削減することが可能であり、また、スラッジを減容化させることも可能である。
本発明の水溶液と無機凝集剤Aの添加割合は、被処理水の種類や処理条件に応じて適宜設定することが好ましい。設定例として、本発明の水溶液のAl2O3に対する無機凝集剤Aの金属酸化物換算のモル比として、0.1〜1000倍の範囲を挙げることができる。例えば、無機凝集剤Aがアルミニウム系凝集剤であり、本発明の水溶液の添加量がAl2O3で1mg/Lの場合、上記モル比の範囲に対応するアルミニウム系凝集剤の添加量の範囲は、Al2O3として0.1〜1000mg/Lである。また、同様に、無機凝集剤Aが第二鉄系凝集剤の場合、第二鉄系凝集剤の添加量の範囲は、Fe2O3として0.16〜1566mg/Lである。上記モル比の範囲は、好ましくは、1〜1000倍であり、より好ましくは1〜100倍である。
(製造方法)
本発明の水溶液の製造方法は、(i)塩化アルミニウム及び/又は塩基性塩化アルミニウムとアルミノケイ酸ナトリウムとを水存在下で混合する工程を含むもの、又は、(ii)塩化アルミニウム及び/又は塩基性塩化アルミニウムとアルミノケイ酸ナトリウムと塩基度調整剤とを水存在下で混合する工程を含むもの、である。なお、(i)と(ii)はいずれも水存在下で実施する工程であるため、原料のすべてが固体であるときは、適当量の水を添加する。また、前記(組成1)と(組成2)で規定される本発明の水溶液の組成を満たすように、原料の混合割合を適宜設計する。
塩化アルミニウム(AlCl3)は、固体と液体のいずれを用いてもよい。固体の塩化アルミニウムは、例えば、塩化アルミニウム・6水和物である。また、液体の塩化アルミニウムの製造方法の一例は、水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物を塩酸で溶解するものである。上記溶解においては、加熱によって溶解させることが好ましい。加熱時の圧力条件は、常圧及び高圧のいずれであってもよい。
塩基性塩化アルミニウムも固体と液体のいずれを用いてもよい。液体の塩基性塩化アルミニウムは常法によって製造することができ、製造方法の一例は、水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物と塩酸をオートクレーブに入れ水熱処理するものである。これを乾燥することによって、固体の塩基性塩化アルミニウムを得ることができる。乾燥方法は、噴霧乾燥、通気乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を例示できる。塩基性塩化アルミニウムの組成の好例は、塩基度が40〜50%の範囲、即ち、Cl/Al2O3(モル比)=3.0〜3.6の範囲のものである。
アルミノケイ酸ナトリウムは、例えば、ケイ酸含有水溶液とアルミニウム含有水溶液とをアルカリ条件下で混合し、必要に応じて加熱して得られる固形状物である。アルカリ条件下とするために、アルカリ剤、例えば水酸化ナトリウム等を使用してもよい。ケイ酸含有水溶液としては、例えば、3号水ガラス、メタケイ酸ナトリウム水溶液、オルトケイ酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。アルミニウム含有水溶液としては、例えば、アルミン酸ナトリウム水溶液、塩化アルミニウム水溶液、硫酸アルミニウム水溶液等が挙げられる。また、容易に入手できるアルミノケイ酸ナトリウムとして、A型ゼオライトを例示できる。アルミノケイ酸ナトリウムの組成は、40℃で乾燥した乾燥粉において、例えば、Al2O3は10〜40質量%、SiO2は15〜45質量%、Naは10〜20質量%の範囲のものである。
アルミノケイ酸ナトリウムの組成を分析する好適な一方法は、アルミノケイ酸ナトリウムを希硝酸等の鉱酸に溶解して得られた水溶液を適宜希釈し、Al2O3はキレート滴定法によって、SiO2とNaはICP-AESによって分析する方法である。
塩基度調整剤としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、アルカリ土類金属の炭酸水素塩、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、塩酸、硫酸、硫酸アルミニウム、アルミナゲルスラリー等が挙げられる。アルカリ金属とアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩の具体例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム等である。アルミナゲルスラリーは、必須成分としてAl、Cl、Naを含有し、任意成分としてSO4を含有するものであって、Al2O3濃度が3〜15質量%、Cl/Al2O3(モル比)が1〜4、Na/Al2O3(モル比)が0.5〜3、SO4/Al2O3(モル比)が0〜2、塩基度が70〜100%の範囲のものが好例であり、更に好ましくはAl2O3濃度が8〜12質量%、Cl/Al2O3(モル比)が1.5〜3.5、Na/Al2O3(モル比)が1〜3、SO4/Al2O3(モル比)が0〜1.5、塩基度が80〜100%の範囲のものである。アルミナゲルスラリーは酸性のアルミニウム水溶液に易溶解性のものが好ましい。当該易溶解性の評価は、例えば、塩基性塩化アルミニウム水溶液(Al2O3=14.2質量%、Cl=16.8質量%、塩基度=43%)、蒸留水及び当該アルミナゲルスラリーを、Al2O3=10.2質量%、塩基度50%になるように混合し、50℃で1時間の加熱を行った後の未溶解残渣の湿重量を仕込総量で除して算出される残渣率が0.2重量%を下回るものであれば、易溶解性と評価することができる。なお、アルミナゲルスラリーは、例えば、特許第5986448号公報に記載の方法によって製造することができる。
(i)又は(ii)の工程において、各原料の混合順は特に限定されることはなく、例えば、全原料を同時に添加して混合してもよい。また、例えば、順番に添加して混合してもよく、これにあたり予混合しておいてもよい。また、濃度調整等のために、水を適宜添加してもよい。混合だけでは溶解(ただし、ここでの溶解は、肉眼観察で原料が溶解したと認められる状態であって、チンダル現象が観察されてもよい)が不十分なときは、(i)又は(ii)の工程の後に加熱工程を設けてもよい。加熱は溶解させるのに適した条件で行えばよく、例えば30〜100℃で5分〜6時間である。また、本発明の水溶液の製造方法には、上記(i)又は(ii)の工程により製造した塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を所定のAl2O3濃度となるように水で希釈する方法が含まれる。
本発明の水溶液は、これを乾燥することによって粉体(以下「粉体A」という)とすることができる。乾燥方法は、噴霧乾燥、通気乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を例示でき、これらのうち工業的製造の観点からは噴霧乾燥が好ましい。粉体Aを所定量の水と混合することにより、水処理用途に好適な塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を得ることができる。なお、粉体Aから作製した塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液におけるAl2O3濃度は8質量%未満とすることが好ましく、より好ましくは7.5質量%以下であり、更に好ましくは7質量%以下であり、更により好ましくは6.5質量%以下であり、特に好ましくは6質量%以下であり、特により好ましくは5.5質量%以下であり、特により一層好ましくは5質量%以下である。
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
各実施例及び比較例は、表1〜表5に示した仕込み組成において、次の手順により塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を作製した。
(手順)
塩化アルミニウム水溶液に蒸留水を添加し、次いで21質量%の炭酸ナトリウム水溶液又は35%塩酸を添加した後、液が透明になるまで撹拌し、次にA型ゼオライト(富士フイルム和光純薬(株)「合成ゼオライトA-4、粉末、75μm(200mesh)通過」)の20質量%スラリーを添加し充分に撹拌して、塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を作製した。
ここで一例として、実施例59における各原料の配合割合を紹介すると、塩化アルミニウム水溶液(Al2O3=11.17質量%、Cl=23.65質量%):30.39g、蒸留水:43.80g、21質量%の炭酸ナトリウム水溶液:18.40g、A型ゼオライトの20質量%スラリー:9.01gである。
なお、塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液の設計Al2O3濃度が1質量%以下であって、A型ゼオライトが溶解しにくかったもの(実施例1、2、7、13、14、18、19、20、25、26、27、31、36、40及び44)については、高めのAl2O3濃度(例えば、Al2O3=4〜6質量%)で作製した塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を水で希釈することにより作製した。
実施例1〜103の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液は、製造直後において沈殿やゲル化は発生せず、また、20℃で1週間保存後もそれらは発生しなかった。
比較例7〜62の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液のうち、塩基度が90%のものは特にA型ゼオライトが溶解し切らない傾向を示し、それ以外のものはA型ゼオライトが一旦溶解してもゲル化が起きたため、ハンドリング性に劣るものであった。
(Haze率の測定)
Haze率は、塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液のAl2O3濃度を0.5質量%に調整したものを光路長10mmのガラスセルに入れ、日本電色工業(株)製 色度・濁度測定器 COH400で測定した。なお、Al2O3の濃度調整において、希釈には蒸留水を用いた。また、Al2O3濃度が0.5質量%未満である実施例1〜7のうち、実施例1、2及び7は高めのAl2O3濃度で作製した塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を蒸留水で希釈することにより濃度調整し、それ以外についてはエバポレーターを用いて濃縮し濃度調整した。
実施例1〜103の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液のHaze率は、いずれも5%以下であった。また、比較例1〜6の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液のHaze率も5%以下であった。
以下のフロック強度試験には、実施例1〜103及び比較例1〜6で得られた各塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を供試した。
(フロック強度試験)
模擬被処理水として、蒸留水に多木化学(株)製のペースト肥料「タキペースト14号」を5.0g/Lの濃度となるように添加し、混合したものを用いた。
AGCテクノグラス社製IWAKI 1Lの平底ガラスビーカー(内径:10.5cm)に収容した1000mLの模擬被処理水に対し、Al2O3として10mgの注入量となるように塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を有姿で注入し、フラットパドル(2枚型。1枚のパドルの大きさは縦25mm×横24mm。パドルの下端は上記平底ガラスビーカーの内側底面から鉛直上方向に5mmの位置に設定)を用いて115rpmで1分間撹拌後、弱アニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤である「タキフロックA-122A」(多木化学(株)の商品名)の1.0mg/mL水溶液を1.0mL注入し、更に115rpmで1分間撹拌し、次いで45rpmで5分間撹拌した(フロック成長操作)。次に、10分間の静置後、デカンテーションにて上澄み100mLを採取し、pH(表1〜5において「処理水pH」と表記)と濁度を測定した。濁度は、日本電色(株)製の水質計 WA1(セル:2cmセル)にて測定し、濁度Aとした。
上記上澄み採取後の残液に対して、上記フラットパドル(パドル位置も上記と同じ)を用いて200rpmで5分間撹拌(フロック破壊操作)してから10分間の静置を行い、デカンテーションにて上澄み100mLを採取し、その濁度を上記同様に測定し、濁度Bとした。
除濁率は、除濁率=(模擬被処理水の濁度−濁度A)÷模擬被処理水の濁度×100の式から算出した。
濁度差は、濁度差=濁度B−濁度Aの式から算出した。
なお、上記試験において、模擬被処理水、並びに上記注入に用いた塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液及び弱アニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤の液温は、15℃前後であった。
フロック強度試験の結果を表1〜5の「フロック強度試験」欄に示した。実施例1〜103において、除濁率は80%以上であり、また、濁度差は10度以下でありしかも大半が0度未満であった。このことから、実施例1〜103で得られた塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液は、優れた除濁力を有したもの、すなわち、濁質除去力が高く且つフロック強固化剤として有効に機能したものであったと判断できる。
一方、比較例1〜6は、除濁率は70〜85%程度であったため、濁質除去力を有すると評価することができたが、濁度差が200度以上であったため、形成された粗大フロックは軟弱なものであったと判断できる。
以上より、実施例1〜103で得られた塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液は、水処理用凝集剤としての用途に適したものであることが分かった。
〔乾燥粉溶解液によるフロック強度試験〕
実施例54及び実施例63で得られた各塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を凍結乾燥し、乾燥粉を得た。乾燥粉のAl2O3濃度について、実施例54は20.9質量%であり、実施例63は22.3質量%であった。
乾燥粉0.5gを水4.5gに溶解し、この溶解液をフロック強度試験に供した。結果を表6に示した。
表6より、いずれも除濁率が90%以上であり、濁度差は0度未満であった。また、除濁率と濁度差は、乾燥前の値(表2参照)と同等であった。このことから、乾燥粉溶解液であっても優れた除濁力を有し、水処理用凝集剤としての用途に適したものであることが分かった。
〔比較例63(B50水道用PAC相当品)〕
B50水道用PAC相当品は、B50水道用PACに該当するものである。以下、「B50PAC」と称する。
B50PACは、Al2O3濃度:10.2質量%、SO4濃度:2.8質量%、塩基度50%を目標組成として、以下により製造した。
(原料:塩基性塩化アルミニウムAの調製)
水酸化アルミニウムと塩酸を、オートクレーブを用いて水熱処理条件下で反応させることにより、Al2O3濃度:14.2質量%、Cl濃度:16.8質量%、塩基度43%の塩基性塩化アルミニウムAを得た。
(原料:アルミナゲルスラリーAの調製)
蒸留水1055gを5Lビーカー中で撹拌しながら、塩基性塩化アルミニウムA 1243gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al2O3濃度:17.6質量%、Na濃度:13.5質量%)702gをそれぞれ同時にペリスタポンプで30分かけて添加し、Al2O3濃度:10.0質量%、Cl濃度:7.0質量%、Na濃度:3.2質量%のアルミナゲルスラリーAを3000g得た。
(製造)
塩基性塩化アルミニウムA 96gを撹拌装置、温度計を備えた500mLの四つ口フラスコに入れた後、撹拌しながら、硫酸アルミニウム水溶液(Al2O3濃度:8.0質量%、SO4濃度:23.0質量%)24g、アルミナゲルスラリーA 48g及び蒸留水32gを順番に添加し混合した。次いで、この混合液に対して50℃で1.0時間の加熱を行った後、No.5Cろ紙にて吸引ろ過することによってB50PACを製造した。
B50PACを上記同様にフロック強度試験に供試した。
なお、フロック強度試験においては、B50PACの注入量として、以下の2段階を設定した。
・設定1:Al2O3として10mg(上記フロック強度試験と同じ注入量)
・設定2:Al2O3として50mg(上記フロック強度試験の5倍注入量)
結果を表8に示した。
表1〜2と表7を比較すれば明らかなように、Al2O3注入量が同じ10mgでは、除濁率は実施例1〜103の方が設定1よりも優位に高く、しかも濁度差に至っては歴然の差があった。また、B50PACのAl2O3注入量を50mgとしたとき(設定2)は、除濁率において実施例1〜103とほぼ同等レベルであったが、それでも濁度差においてはまだ歴然の差があった。
以上より、本発明の水溶液は、B50水道用PACよりも少ないAl2O3注入量にて優れた除濁力が得られるものであり、特にその強固なフロック形成能力により水処理用途に適したものであることが確認された。
〔B50PACとの併用によるフロック強度試験〕
塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液として、実施例33の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を使用した。また、無機凝集剤Aとして、B50PACを使用した。
フロック強度試験は、実施例中の前記フロック強度試験と同様に実施したが、「Al2O3として10mgの注入量となるように塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を有姿で注入」する代わりに、「表8の試験区1-1〜3-4に示したAl2O3注入量となるように無機凝集剤を有姿で注入」した。また、「弱アニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤である「タキフロックA-122A」(多木化学(株)の商品名)の1.0mg/mL水溶液を1.0mL注入」する代わりに、「弱アニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤である「タキフロックA-132」(多木化学(株)の商品名)の1.0mg/mL水溶液を1.0mL注入」した。なお、試験区2-1〜3-4では、B50PACと実施例33の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を同時に注入した。
表8のフロック強度試験の結果より、B50PAC単独の試験区1-1〜1-4に比べると、試験区2-1〜3-4のようにB50PACと実施例33の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を併用することによって、除濁率が向上したことが分かった。例えば、試験区2-1は試験区1-2を上回る高い除濁率を示し、試験区3-1は試験区1-4と同程度の高い除濁率を示した。また、試験区2-3、2-4、3-2〜3-4は、B50PAC単独の試験区1-1〜1-4よりも高い除濁率を示した。濁度差についても、試験区2-1〜3-4は、5度以下であり、しかも大半が0度未満であったことから、崩壊し難い強固な粗大フロックが得られたことが分かった。
〔ポリ硫酸第二鉄との併用によるフロック強度試験〕
模擬被処理水として飲料工場排水(pH8.4、濁度88.2度)を用い、また、B50PACの代わりに市販のポリ硫酸第二鉄(Fe2O3:16.7質量%)を用いて、前記「B50PACとの併用によるフロック強度試験」を踏襲してフロック強度試験を実施した。表9に無機凝集剤の注入量を示した。なお、試験区5-1と5-2では、ポリ硫酸第二鉄と実施例33の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を同時に注入した。
除濁率と濁度差について、同じFe2O3注入量で対比すると、すなわち、試験区4-1と試験区5-1、試験区4-2と試験区5-2を対比すると、除濁率については試験区4-2と試験区5-2は同程度であったが、それ以外では試験区5-1と5-2の方が良好な結果が得られたことが分かった。
〔比較例64〜66(非特許文献1のPASC)〕
非特許文献1に記載のPASCとして、比較例64〜66のPASCを製造した。製造手順は、表10の原料欄に記載の原料を用いて、塩化アルミニウム溶液にポリケイ酸と水を添加した後、NaOHを滴下により添加し、最後にAl2O3濃度が0.5質量%となるように水で希釈した。
比較例64〜66のPASCのフロック強度試験は、実施例1〜103及び比較例1〜6と同じ方法により実施した。表10より、比較例64と65のPASCは、Haze率が低値を示したが、濁度差が50度をはるかに上回るものであったため、形成された粗大フロックは軟弱なものであったと判断できる。また、比較例66のPASCは、濁度差は0度未満であったが、Haze率が25%を上回るものであった。比較例66のPASCは、製造途中では不溶解物の生成、製造直後には沈殿の発生が認められた。ちなみに、比較例66のPASCは、その製造時において、塩化アルミニウム溶液とポリケイ酸を極めて迅速に要領よく混合しなければゲル化してしまうものであった。仮にゲル化を防ぐことができても、上記のように沈殿が生じるものであるため、実用化には適さないものであった。
〔比較例67、68(ケイ酸源:シリカゾル)〕
ケイ酸源としてシリカゾルを用いた比較例67と68の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を製造した。仕込み組成を表11に示した。
製造手順は、塩基性塩化アルミニウムAを撹拌装置、温度計を備えた500mLの四つ口フラスコに入れた後、撹拌しながら、塩酸及び蒸留水を順番に添加し混合することでAl2O3=10.9〜11.1質量%、Cl=15.8〜16.1質量%、塩基度31%の塩基性塩化アルミニウムを得た。次いで、この塩基度31%の塩基性塩化アルミニウムにシリカゾルを添加し、室温で0.5時間反応させ、水で希釈した後、No.5Cろ紙にて吸引ろ過することによって、透明な塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を作製した。なお、シリカゾルは、比較例67では(株)ADEKA製「アデライトAT-20Q」(SiO2=20.0質量%)を用い、比較例68では日産化学工業(株)製「スノーテックスOUP」(SiO2=15.3質量%)を用いた。
比較例67と68の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液のフロック強度試験は、実施例1〜103及び比較例1〜6と同じ方法により実施した。表11より、比較例67と68の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液は、濁度差が50度をはるかに上回るものであったため、形成された粗大フロックは軟弱なものであったと判断できる。
12 撹拌軸、15 フラットパドル

Claims (5)

  1. 以下(組成1)と(組成2)で規定される組成を有し、
    且つ、以下(特性1)と(特性2)で規定される特性を有する、
    塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液。
    (組成1)当該塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液のAl2O3濃度が、0.05質量%以上8質量%未満である。
    (組成2)当該塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液のSiO2/Al2O3(モル比)と塩基度(%)が、SiO2/Al2O3(モル比)をX、塩基度(%)をYとしたときに、以下の式1〜式6に囲まれた領域内におけるいずれかの値である。
    式1:X≧0.01
    式2:X≦1.5
    式3:Y≧3
    式4:Y≦83
    式5:Y≧44X-5.8(0.2≦X≦1.2の範囲)
    式6:Y≧76.667X-45(1.2≦X≦1.5の範囲)
    (特性1)当該塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液のHaze率が25%以下である。
    (特性2)当該塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を下記フロック強度試験に供試したときの濁度差が50度以下である。
    〔フロック強度試験〕
    1Lの平底ガラスビーカー(内径10.5±0.5cm)に収容した1000mLの模擬被処理水(模擬被処理水は蒸留水に多木化学(株)製のペースト肥料「タキペースト14号」を5.0g/Lの濃度となるように添加して調製したもの)に対し、Al2O3として10mgの注入量となるように塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を有姿で注入し、フラットパドル(2枚型。1枚のパドルの大きさは縦25mm×横24mm。パドルの下端は上記平底ガラスビーカーの内側底面から鉛直上方向に5mmの位置に設定)を用いて115rpmで1分間撹拌後、弱アニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤である「タキフロックA-122A」(多木化学(株)の商品名)の1.0mg/mL水溶液を1.0mL注入し、更に115rpmで1分間撹拌し、次いで45rpmで5分間撹拌する。次に、10分間の静置後、デカンテーションにて上澄み100mLを採取し、その濁度を測定し、濁度Aとする。
    上記上澄み採取後の残液に対して、フラットパドル(2枚型。1枚のパドルの大きさは縦25mm×横24mm。パドルの下端は上記平底ガラスビーカーの内側底面から鉛直上方向に5mmの位置に設定)を用いて200rpmで5分間撹拌してから10分間の静置を行い、デカンテーションにて上澄み100mLを採取し、その濁度を測定し、濁度Bとする。
    濁度差を、濁度差=濁度B−濁度Aの式により算出する。
  2. 請求項1記載の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液と、アニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤とを被処理水に添加し、凝集処理する水処理方法。
  3. 請求項1記載の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液と、当該塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液以外の無機凝集剤と、アニオン性又はノニオン性の高分子凝集剤とを被処理水に添加し、凝集処理する水処理方法。
  4. 以下の(i)又は(ii)の工程を含む、請求項1記載の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液の製造方法。
    (i)塩化アルミニウム及び/又は塩基性塩化アルミニウムと、アルミノケイ酸ナトリウムと、を水存在下で混合する工程。
    (ii)塩化アルミニウム及び/又は塩基性塩化アルミニウムと、アルミノケイ酸ナトリウムと、塩基度調整剤と、を水存在下で混合する工程。
  5. 請求項1記載の塩基性塩化ケイ酸アルミニウム水溶液を乾燥して得られる粉体。
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