JP3768682B2 - 樹脂発泡成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品添加物を発泡剤として含有してなる樹脂発泡成形体に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、樹脂発泡成形体の製造においては、加熱により分解して窒素ガスや炭酸ガスを発生する加熱分解型の発泡剤や、低沸点の液体又は液化ガスなどが発泡剤として使用されてきたが、前者の場合、分解残渣がともなうため発泡成形体の悪臭の原因となったり、発泡倍率のコントロールが難しいといった問題があった。他方、後者の場合には、発泡性ビーズ及び発泡体の貯蔵中或いは発泡工程における発泡剤の引火性、爆発性、衛生性などの危険を伴い、取り扱い上の問題があった。
【0003】
ところで、特に食品用容器として使用する場合には、万一にも発泡剤の成分が溶出するようなことがあっても、人体に対する安全性が保証される発泡剤を使用する必要がある。
【0004】
このような観点から、最近、食品添加物として認められている物質を発泡剤として使用する樹脂発泡成形体が開示されている。例えば特公昭63−28455号公報には水性媒体(水)を発泡剤として用いる旨が、特開昭57−63319号公報には無機重炭酸塩(例えばNaHCO3)を発泡剤として用いる旨が、特開平1−99984号公報には炭酸水素ナトリウムとクエン酸モノナトリウムとを併用する旨が、そして特開平4−283242号公報にはイースト、ベーキングパウダー、重炭酸ソーダなどを発泡剤として用いる旨がそれぞれ開示されている。
【0005】
しかしながら、上記の如き食品添加物として認められている物質を発泡剤として使用した場合、所望の高発泡倍率を得ることが難しかったり、表面に凹凸(いわゆるフクレやアバタ)が生じるなどの問題があった。また、成形加工時に物性が急激に変化し製造が困難になるなどの問題も指摘されていた。
【0006】
そこで本発明は、人体に安全な物質を発泡剤に使用してなる樹脂発泡成形体であって、所望の高発泡倍率を得ることができ、しかも成形体表面にフクレやアバタなどの凹凸を生じることがなく、更には成形加工性にも優れた樹脂発泡成形体及びその製造方法を提供せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明者らが鋭意研究を行った結果、グルタミン酸を発泡剤として少量混入するだけで、所望の高発泡倍率を得ることができ、しかも成形体表面を凹凸のない平滑面に仕上げることができ、それでいて成形加工性に優れていることを見い出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明の樹脂発泡成形体は、熱可塑性樹脂中に発泡剤としてグルタミン酸ナトリウムを含有してなる組成を有する樹脂発泡成形体である。
かかる組成からなる樹脂発泡成形体であれば、発泡剤成分が何らかの原因で万一溶出するようなことがあっても人体の安全性を保証することができる。しかも所望の高発泡倍率を得ることができ、さらには平滑で光沢を有する成形体表面を得ることができる。また、グルタミン酸ナトリウムは可塑剤としても機能するため成形加工もしやすくなる。これより、本発明の樹脂発泡成形体は、自動車部品、電気部品、食品用容器、梱包用緩衝材、建築用資材、農業用資材などの種々の分野で使用される発泡成形体として利用できるが、中でも、人体に対する安全性の点から食品用容器や電子レンジ、レトルト、注湯などの加熱による調理用容器として特に好適に利用することができる。
【0009】
グルタミン酸ナトリウムの配合量は、熱可塑性樹脂に対して0.1〜5重量%、特に0.2〜4.0となるように調整するのが好ましい。0.1重量%未満となると所望の高発泡倍率を得るのが難しくなり、5重量%より多くなると表面平滑性を確保するのが難しくなる。
【0010】
本発明において使用される熱可塑性樹脂は特に制限されるものではなく、従来から各種のプラスチック成形に使用されている樹脂を使用することができる。例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル重合体、石油樹脂などのオレフィン系樹脂;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系樹脂;ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのアクリル系樹脂;ポリスチレン(GPPS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;各種ナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂などを挙げることができ、これらはそれぞれ単独で使用することもできるが、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0011】
本発明におけるグルタミン酸ナトリウムは、それのみを単独で発泡剤として使用することも可能であるが、重曹、ベーキングパウダー、イースト、酒石酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム、塩化アンンモニウムなどの従来から食品膨張剤として使用されてきた物質のいずれか、或いはこれらの2種類以上の混合物と組み合せて発泡剤として使用することもできる。その場合の配合比率は、食品膨張剤に対してグルタミン酸ナトリウムを1:1〜10:1の割合で配合するのが好ましく、中でも2:1〜8:1の割合で配合するのが特に好ましい。
このように食品膨張剤とグルタミン酸ナトリウムとを組み合わせて使用することにより、当該食品膨張剤の発泡能力をより一層高めることができるばかりか、グルタミン酸ナトリウムの添加によって可塑性を付与することができる。当該食品膨張剤のみの添加では成形加工性が低下するような場合であってもグルタミン酸を配合することにより成形加工しやすくすることができる。更に、食品膨張剤のみの添加では成形体表面にいわゆるフクレやアバタが生じることがあっても、グルタミン酸を配合することにより成形体表面を平滑に仕上げることができ、更には光沢を与えることもできる。
【0012】
本発明の樹脂発泡成形体を製造するには、先ず、熱可塑性樹脂と、グルタミン酸ナトリウム若しくはグルタミン酸ナトリウム食品膨張剤とを所定の比率で配合して原料を調製し、この原料を混合機で攪拌混合する。次に、この攪拌混合した原料(いわゆるMB:モールドバッチ)を、押出機内に供給し、ここで発泡剤が発泡または分解しない温度すなわち160〜250℃に加熱しながら型に押出してシート成形する。その後、必要に応じて再び加熱処理して発泡剤を発泡させて目的の樹脂発泡成形体を得るか、或いは、成形体の種類によっては、一旦上記シート成形物を真空成形や圧空成形によって二次成形して目的の樹脂発泡成形体を得るようにすればよい。
【0013】
なお、本発明の樹脂発泡成形体及びその製造方法においては、目的の成形体の種類によっては、フィラー(好ましくはそば及びそば殻、おから、お茶、ふすまなどの食用化することができる充填物が安全性の観点から好ましい)、酸化防止剤、難燃剤、顔料、染料、帯電防止剤、タルクなどの核剤物などその他の添加物を混入することも可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。
【0015】
(実施例1)
先ず、押出用成形用に調整されたポリプロピレン−1(商品名:E−105GM、出光石油化学社)と、メタロセン触媒で予め処理したポリプロピレン−2(商品名:MD−632、モンテルJPO社)と、低密度ポリエチレン(商品名:LF240、日本ポリケム社)と、タルクのマスターバッチ(商品名:TX1778MB、日本ポリケム社)と、重曹と、グルタミン酸ナトリウムとを以下の配合でよく混合して原料を調製した。
【0016】
【0017】
次に、上記の如く調整した原料を混合機で攪拌混合し、この攪拌混合した原料を、押出機のホッパーに投入し、加熱溶融しながらスクリューで混練させながら前進させ、溶融した混合物をダイスから押し出して発泡倍率1.5〜2.0のシート成形体を得た。この時、押出成形機の温度は約200℃に設定した。
その後、得られたシート成形体を真空成形して発泡倍率1.5〜2.0のボール型食品容器を得た。
【0018】
(実施例2)
先ず、押出用成形用に調整されたポリプロピレン−1(商品名:E−105GM、出光石油化学社)と、メタロセン触媒で予め処理したポリプロピレン−2(商品名:MD−632、モンテルJPO社)と、低密度ポリエチレン(商品名:LF240、日本ポリケム社)と、タルクのマスターバッチ(商品名:TX1778MB、日本ポリケム社)と、粒径0.5mm以上のものを除いたそば粉(日本産、灰分3重量%)と、重曹と、グルタミン酸ナトリウムとを以下の配合でよく混合して原料を調製した。
【0019】
【0020】
次に、上記の如く調整した原料を、実施例1と同様に押出成形し、発泡倍率1.5〜2.0のシート成形体を得た。このシート成形体を真空成形して発泡倍率1.8のボール型食品容器を得た。
【0021】
(比較例1)
グルタミン酸ナトリウムを配合せず、以下の配合割合でよく混合して原料を調製した。次に、この原料を、実施例1と同様に押出成形し、得られた発泡倍率1.2〜1.8のシート成形体を真空成形して発泡倍率1.4のボール型食品容器を得た。
【0022】
【0023】
(実施例1、2、比較例1により得られた樹脂発泡成形体の評価)
実施例1、2により得られた樹脂発泡成形体は、表面が平滑でしかも光沢を生じていた。また、静電気を防止する特性をも備えていた。
これに対し、グルタミン酸ナトリウムを添加しない比較例1により得られた樹脂発泡成形体は、発泡倍率が低かったばかりか、表面にいわゆるアバタが生じ、しかも光沢もなかった。
Claims (3)
- 熱可塑性樹脂中に発泡剤としてグルタミン酸ナトリウムを含有してなる組成を有する樹脂発泡成形体。
- 熱可塑性樹脂中に発泡剤として食品膨張剤とグルタミン酸ナトリウムとを含有してなる組成を有する樹脂発泡成形体。
- 熱可塑性樹脂とグルタミン酸ナトリウムとを混練し、これを成形機に供給し、160〜250℃に加熱しながら押し出して発泡シートを成形することを特徴とする工程を有する樹脂発泡成形体の製造方法。
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