JP3768643B2 - トナー画像の定着方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法等において行なわれる被記録材上のトナー画像を定着するための定着方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真法としては、米国特許第2,297,691号明細書、特公昭42−23910号公報(米国特許第3,666,363号明細書)及び特公昭43−24748号公報(米国特許第4,071,361号明細書)等に記載されているごとき多数の方法が知られている。これらの電子写真法を利用した画像形成装置においては、一般に、光導電性物質を利用し、種々の方法により感光体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーで現像して可視像とし、必要に応じて紙等の被転写材にトナー画像を転写した後、該トナー画像を熱や圧力等により定着して複写物を得ている。
【0003】
従来このような画像形成装置におけるトナー画像の定着器としては、一般に定着ローラ方式のものが広く用いられている。又、フィルム加熱方式(定着フィルム式)の加熱装置も定着器として有効であり実用化されている。
図1に定着ローラ方式の定着器の一例を示す概略構成を示す縦断面図を、図2に横断面図を示した。図中の1は、加熱体としての加熱ローラ(定着ローラ、ヒートローラ)であり、その内部には、ハロゲンヒータ等の発熱体3を有しており、加熱可能に構成されている。又、この加熱ローラ1の下側に配置され、且つ該加熱ローラ1に並行に配設されている6は、ばね8及び9によって加熱ローラの下面に、所定の押圧力をもって圧接されるように構成された、加圧部材としての加圧ローラである。
【0004】
そして、上記加熱ローラ1と加圧ローラ6との間に形成される圧接ニップ部(N)に、未定着トナー画像が形成された被加熱材としての被転写材(P)を導入して搬送通過させることにより、加熱体としての加熱ローラ1の熱と、1と6のローラ対の間に加わる圧力とによって、被転写材(シート)上の未定着トナー画像が加熱加圧されて定着して、被転写材(シート)面に固着画像が形成される。
【0005】
従来は、加圧ローラに比べて加熱ローラの直径を小さくすることが一般的であった。この理由は、加熱ローラから定着後の被転写材を剥離し易くすることにあったが、近年の装置の小型化、定着エネルギーの有効利用という点からは、熱の逃げが多く、効率上の問題があった。
【0006】
近年、省エネルギーや、待ち時間短縮を目的とした低温度での定着が求められており、これに対しては、例えば、特開平7−140708号公報、特開平7−181730号公報、特開平8−305080号公報等の提案があった。ここでは、トナーに用いる結着樹脂からのアプローチとして、分子量分布に極大ピークが存在するような分子量等が規定されたものを使用することが提案されているが、該トナーを用いるだけでは必ずしも安定した定着特性を満足することができず、従来の定着装置において、ローラ等の定着部材に対するトナー汚染が生じる等の問題点があった。
更に、定着器における画像の乱れを生じ易く、細線の再現性に優れた高精細画像を得るためには不十分であった。
【0007】
又、特に高速の処理を行う場合には、加熱ローラにトナー画像が貼り付くいわゆるオフセットと呼ばれる現象が生じ易いが、この現象は、更には、定着器内部のローラやその他の部材に移行したトナーによって、後に定着される被転写材にその汚染物が移行することが生じて画像を乱す現象になって現れる。従来、このオフセット現象を解決するための種々の検討がなされている。例えば、特公昭51−23354号公報には、架橋剤と分子量調整剤とを加え、適度に架橋されたビニル系重合体を結着樹脂とするトナーが提案されており、特公昭55−6805号公報には、α,β−不飽和エチレン系単量体を構成単位とし、重量平均分子量と数平均分子量との比が3.5〜40となるように分子量分布を広くしたトナーが提案されている。
【0008】
更に、ビニル系重合体において、ガラス転移点(Tg)、分子量、ゲル含有率等を規定したブレンド系のトナーも提案されている。確かに、これらの提案によるトナーは、分子量分布の狭い単一樹脂からなるトナーに比べてオフセット温度が上昇するものの、その耐久性への影響や、高速機に適応させた場合の性能においては十分ではない。更に、これらの手段によってオフセット対策がなされた場合においては、定着に要する熱量が飛躍的に高くなって、加熱ローラを高温にする必要があるため、消費電力の増加や機内昇温等の問題が生じる。特に高速の処理を行う場合においては、定着が不十分になったり、消費電力が著しく増える等の問題があった。
【0009】
又、別の対策として、例えば、図3及び図4に示すように、加熱ローラ(定着ローラ)或いは加圧ローラの芯金にバイアス電圧がかけられる構成を採ることによってオフセットの防止を図っているものもある。しかし、これだけでは低温での定着や、高速機に適用した場合にその性能が不十分であり、定着が十分にされない等の問題を生じていた。更に、定着時にトナーが飛び散り、細線の再現性が十分に得られない等の問題もあった。
【0010】
ところで、最近の画像形成装置に要求される性能は多岐に渡っている。文字や細線、太線の画像の他に、写真やグラフィック等に含まれるベタ画像やハーフトーン画像においても優れた画像品質が求められている。これらにおいては、定着器においても画像を劣化させないことが必要であり、更なる性能の向上が求められている。
これらの画像を繰り返し出力した場合において生じる問題点としては、前述のオフセットが挙げられる。この現象は特にハーフトーンやベタの部分が多いグラフィック画像において顕著に現れる。この原因として、被転写材上におけるトナーの溶融が不十分であったり、溶融したトナーが十分に被転写材へ付着されないことが挙げられる。この解決のために、定着ローラ表面に離型性オイルを塗布すること等が検討されているものの、未だ満足できるものが得られていない。
【0011】
例えば、特開平8−6418号公報に、加熱ローラにオイル塗布するオイル塗布フェルトと、オイル塗布量を規制するオイルブレードに密着したオイル漏れ防止部材とを加熱ローラの両端部に配設し、オイル供給ユニットを密閉構造とする例が開示されている。しかしながら、この例ではオイル供給機構が必要となる等、構造面での複雑化や大型化の問題、或いは気化したオイルによる機内汚染、廃オイル処理等の手間や維持管理上の煩雑さ等の問題、更に、ランニングコスト面でのデメリットも大きい。
一方で、トナー中に低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等の離型剤を添加することが提案されているものの、定着性と静電荷像保持体(感光体)やキャリア、現像剤担持体(現像ローラとも呼ぶ)に対する耐汚染性等のバランスの点で満足のいくものが得られていない。
【0012】
近年、複写機やプリンターの如き電子写真技術を用いた画像形成装置においては、機能が多様化し、得られる画像の高精細化、高画質化が求められている。そして、これまでに、画質をよくするという目的のために、いくつかの現像剤が提案されている。
例えば、特開昭51−3244号公報には、粒度分布を規定した画質の向上を意図した非磁性トナーが提案されている。このトナーにおいては、8〜12μmの粒径を有するトナーが主体であって、比較的粒径が粗いので潜像への忠実な載りは不十分である。このような、粗めの粒子で、且つブロードな粒度分布を有するトナーを用いて鮮明な画像を形成するためには、トナー粒子を厚く重ねることによってトナー粒子間の間隙を埋める必要があり、所定の画像濃度を出すためには必要なトナー量が増加する。
【0013】
ところで、トナー粒子の粒子径を細かい方向に制御した場合には、トナーの流動性低下の問題が生じる。これに対して、流動性を上げる目的で外添剤のシリカ等の量を増やすと、従来の定着方法では定着時に画質劣化を生じ易くなる。又、低温度で定着可能な比較的に軟らかいトナーを用いた場合においては、ローラの表面物質等に対する汚染が、トナー粒子径が細かいことによって更に生じ易くなることから、長期に渡る使用に限界がある。
以上説明したように、優れた定着性が安定して得られ、低温から高温まで定着可能温度領域が広く、得られる画像が画質に優れ、更に、環境安定性に優れる等、すべてを満足するトナー画像の定着方法は未だ得られていないのが現状である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、優れた定着性が安定して得られ、低温から高温まで定着可能温度領域が広く、多数枚の被転写材を定着させた後においても劣化を生じにくく、画質を乱すことがない定着方法を提供することにある。
更に本発明の目的は、従来技術の欠点を大幅に改良し、低温から高温、低湿から高湿までの幅広い環境下において、定着状態の差が殆ど見られない高品位な画像定着を実現し、長期に渡る使用に耐え得る定着方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、被転写材上に担持されているトナー画像を、加熱ローラと加圧ローラとを少なくとも具備している加熱加圧手段によって該被転写材面に加熱加圧定着する定着方法であって、
トナー画像が、結着樹脂成分及び着色剤が少なくとも含有されたトナーで形成され、
該トナーが、負帯電性であって、且つ、そのTHF可溶成分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)における分子量分布において、分子量2,000〜9,000の領域に少なくとも一つのメインピークを有し、分子量20,000〜600,000の領域にサブピークまたはショルダーを有するものであり、
上記加熱加圧手段の加熱ローラに−600〜−2,300Vの直流バイアス電圧(V t )が印加されているか、或いは、上記加熱加圧手段の加圧ローラに+600〜+2,300Vの直流バイアス電圧(Vt)が印加されており、且つ、加熱ローラの直径(Dh)と加圧ローラの直径(Dp)との比(Dh/Dp)が1.35〜1.90であることを特徴とするトナー画像の定着方法である。
【0016】
本発明のトナー画像の定着方法により、上述の目的が達成される理由は以下の様に推察される。
先ず、トナー画像の定着装置においては、被記録体(シート)(P)上にトナーによって形成された未定着画像は、図1に示したように、定着ローラ1の表面層2とニップ幅(N)をもって当接された加圧ローラ6との間を搬送される間に被転写材に定着される。定着ローラ1は、内部にハロゲンヒータ等の発熱体3を有しており、その表面が加熱されるように構成されている。このような定着ローラ1の例としては、芯金上に、接着層としてのプライマー層を介して表面層を設けたもの等が挙げられる。この際の表面層の形成材料としては、シリコーンゴムやフッ素系樹脂のフィルム又はチューブ等を用いることができる。
【0017】
本発明者らは、トナーの特性と上記した定着装置の構成との関係について鋭意検討を行ったところ、使用するトナーと、定着ローラ及び加圧ローラとの間に、トナー画像の最良の定着状態を達成し得る特定の関係を見い出した。即ち、上記のような構成の本発明のトナー画像の定着方法を利用した装置を用いれば、特に、定着ローラのトナーに対する離型効果が大きいために、鮮明で解像度の高い、得られる画像周囲にトナーの飛び散りの少ない優れた画像を得ることが可能となる。しかも、耐久性、放置安定性に優れ、上記の現像装置の性能が長期に渡って維持することができる。
即ち、本発明の定着方法を利用して画像形成を行なうと、トナー画像の飛び散りを防ぐことができると共に、トナー担持シートと加圧ローラとの付着力を低減できることから、長期間に渡って良好な画像を得ることが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
本発明に用いられる定着器は、加熱ローラと加圧ローラとを少なくとも具備した加熱加圧手段を有し、該定着器と負帯電性のトナーを用いる本発明にかかる定着方法では、加熱ローラに−600〜−2,300Vの直流バイアス電圧(V t )が印加されているか、或いは、加圧ローラに+600〜+2,300Vの直流バイアス電圧(Vt)が印加されており、更に、加熱ローラの直径(Dh)と加圧ローラの直径(Dp)との比(Dh/Dp)が1.35〜1.90である状態で定着を行う。
【0019】
本発明に用いることができる上記のような定着器としては、例えば、図3及び図4の(a)、(b)及び(d)の概略図に示したものが挙げられる。
図3及び図4に示したように、これらの定着器は、静電荷保持体上のトナーがシートP(被転写材)に転写された後に、シートP上に定着させるためのものであり、構成として、先ず、加熱ローラ1を備えている。該加熱ローラとしては、加熱ローラ1の表面2を加熱状態にすることのできるものであればいずれのものでもよいが、例えば、図3及び図4に示したように、内部に発熱体3を有するアルミニウムや鉄等で形成された円筒状の芯金と、該芯金の表面に設けられた離型性樹脂からなる表面層を有するものが好ましい。芯金の内部に設けられる発熱体としては、例えば、ハロゲンヒーターを使用することができ、該ハロゲンヒーターに、任意の電圧を印加することができるように構成することが好ましい。又、芯金の表面層の形成材料には、フッ素系樹脂であるPFA、PTFE等の離型性樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
又、上記したような加熱ローラには、その表面温度を検知するための温度検知素子、例えば、サーミスターが当接されていてもよく(図示なし)、該サーミスターを温度制御手段に接続しておくことが好ましい。即ち、かかる温度制御手段によって、サーミスターの出力信号に基づいてハロゲンヒーターへの供給電力を制御し、加熱ローラの外周の表面温度を所定の範囲に維持する様に構成することが好ましい。
【0021】
更に、本発明の定着方法で使用する定着器は、少なくとも上記のような加熱ローラと共に加圧ローラが設けられて構成されるが、好ましくは、上記したような構成を有する加熱ローラの下方に、加熱ローラと回転軸が互いに平行となるような位置に加圧ローラが配接されたものを使用する。そして、該加圧ローラとしては、ステンレスや鉄等からなる円筒状の芯金と、該芯金の表面に設けられた離型性樹脂からなる弾性体層を有するものを使用することが好ましい。そして、芯金の外周に設ける弾性体層を、耐熱性及び離型性に優れたシリコンゴムやフッ素ゴム等により形成することが好ましい。
【0022】
上記のような構成を有する加圧ローラは、先に説明した加熱ローラに圧接するように配設される。そして、加熱ローラと加圧ローラとの間に形成される圧接ニップ部に未定着トナー画像が形成された被転写材が導入され、該被転写材が搬送通過される間に、加熱体としての加熱ローラの熱と、加圧ローラと加熱ローラとのローラ対の間に加わる圧力とによって、被転写材上の未定着トナー画像が加熱加圧されて定着される。
更に負帯電性のトナーを用いる本発明においては、上記したような構成の定着器の加圧ローラに+600〜+2,300Vの直流バイアス電圧(Vt)が印加されるか、或いは定着器の加熱ローラに−600〜−2,300Vの直流バイアス電圧(V t )が印加される。例えば、図3及び図4の(a)、(b)及び(d)に示すように、ローラの芯金部分に電源を接続し、バイアス電圧がかけられるように構成する。この結果、細線の再現性の向上、即ち、定着器における画像の乱れを大きく改善することが可能となるという本発明の大きな効果が得られる。
【0023】
更に、上記の特定の直流バイアス電圧を印加させる要件に加えて、加熱ローラの直径(Dh)と加圧ローラの直径(Dp)との比(Dh/Dp)が1.35〜1.90である場合においては、画像の乱れを最小限にすることができる。
即ち、加熱ローラの直径(Dh)と加圧ローラの直径(Dp)との比(Dh/Dp)の値が1.35未満の場合には、定着スピードが高速化されるにつれてバイアスの絶対値をコントロールしても画像のトナー飛び散りを避けることが困難となる。一方、1.90よりも大きい場合には、50g/m2以下の薄い紙を用いた場合において、被転写材が加熱ローラに巻き付き易くなって、加熱ローラから被転写材を分離することがしにくくなる。
【0024】
又、少なくとも加熱ローラ若しくは加圧ローラに印加されるバイアス電圧の絶対値が600V未満の場合には、定着スピードが300mm/秒以上の高速定着を行なう場合に、加熱ローラによる画像の乱れを生じ易くなるので、負帯電性のトナーを用いる本発明においては、定着器の加圧ローラに+600〜+2,300Vの直流バイアス電圧を印加するか、或いは定着器の加熱ローラに−600〜−2,300Vの直流バイアス電圧(V t )が印加する。更に、印加するバイアスの絶対値をこの範囲にすることによって、加熱ローラに対するシートの巻き付きが生じにくくなるので、加熱ローラ径を大きくすることが可能となり、この結果、エネルギーの効率が向上する。更に好ましくは、印加されるバイアス電圧の絶対値が700〜1,800Vである場合には、トナーによるローラ汚染がしにくく、更なる加熱ローラの長寿命化が可能となる。
【0025】
本発明で使用する定着器における上記のような範囲のバイアス電圧のかけ方としては、未定着トナーが形成されている被転写材を挟んだ、加圧ローラ側のみにかける手段(図3(b)及び図4(d)参照)、加熱ローラ側のみにかける手段(図3(a)参照)等、何れの形態をとってもよく特に限定されない。
又、バイアスの極性としては、加熱ローラ側がトナーと同極性、加圧ローラ側がトナーと逆極性となるようにすることが望ましい。
【0026】
尚、本発明で使用する定着器においては、加熱ローラの外周面から被転写材を分離し易くするために、分離爪を設けることも可能である。又、定着ローラクリーニング部材を設けてもよく、その態様としては、巻き取りローラ式、ローラ式、ブレード式等が利用可能であるが、本発明においては必ずしも必要ではない。従って本発明によれば、定着器内のローラに付着したトナーその他の汚染物をクリーニングするためのウェブその他の補助部材を、小型化したり省くことも可能である。
【0027】
更に、本発明者らは、上記した構成を有する定着器の性能を十分に生かすためには、トナーを構成する結着樹脂のとりわけ分子量分布を調節することが有効であることを見いだした。即ち、本発明の定着方法において用いられるトナーは、トナー中の樹脂分であるトナーのTHF可溶成分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)における分子量分布において、分子量2,000から9,000の領域に少なくとも一つのメインピークを有し、分子量20,000から600,000の領域にサブピーク又はショルダーを有していることがポイントである。ここで、ショルダーとは、GPCチャートにおけるなだらかな曲線斜面に対して、横に突き出ている短い部分をいう。
【0028】
更に、本発明に好適に使用されるトナーとしては、THF可溶成分のGPCにより測定される分子量分布において、重量平均分子量Mwが7万〜85万であることが好ましい。即ち、本発明で使用するトナーの分子量がこの範囲以下である場合には、トナーを製造する場合の原材料の混練時における流動性が高いため、分散させる力を受けにくく、トナー中の各成分の分散混合が不充分となり易くトナーが均質とならないので、加熱ローラの表面の汚染が早く生じ易い。
又、分子量がこの範囲よりも大きい場合は、樹脂の製造上も困難であるばかりではなく、トナー製造上、粉砕性が悪化し易い。
【0029】
一般に、トナーを構成する結着樹脂分の分子量50,000以下の部分が主に定着性を制御する部分であるが、本発明者らは、上記したような構成を有する定着器の性能を生かし、好ましい定着性を得る上で、とりわけ、トナーのTHF可溶成分のGPCにおける分子量分布において、分子量2,000から9,000の領域に少なくとも一つのメインピークを持つことが重要であることを見いだした。ここで、メインピークとはGPCチャート上で最も大きいピークのことである。更に本発明者らは、これらの中でも、特に、図5に示したように、分子量2,000〜6,000の部分の成分が一定量含有されているものを使用することが更に好ましいことを見いだした。特に、トナー中のTHF可溶分についてのGPCチャートにおいてこれらの成分がその面積比で、全体のチャートの25〜45%存在するときに好ましい効果が得られることがわかった。
【0030】
又、分子量が20,000から600,000までのものは、耐ブロッキング性及び高温オフセット性に関係する部分であるので、本発明においては、ここにサブピーク(メインピークよりも小さいピーク)又はショルダーを有するものを使用することによって、トナー同士が凝集を生じにくく、且つ高温オフセット性に対して良好な耐性が得られることを見いだした。
一方、分子量が2,000以下の部分は、トナーにワックスを含有させた場合におけるワックスによる可塑効果に影響を及ぼして、多いと低温から耐ブロッキング性が悪くなり易いので、分子量2,000以下のものの割合を多くすることは必ずしも好ましくない。
【0031】
本発明のトナー画像の定着方法で使用する上記のような特性を有するトナーを構成する結着樹脂の種類としては特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体等のスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂等が使用できる。又、架橋されたスチレン系樹脂も好ましい結着樹脂である。更に、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸等の酸成分を導入することも可能である。又、樹脂の製造方法は従来公知のものが使用でき、先に述べた所望の分子量分布が得られるものであれば、特に限定されない。
【0032】
又、上記のような結着樹脂が含有された本発明で使用するトナーを製造するための樹脂組成物(以下、トナー製造用樹脂組成物と呼ぶ)としては、様々な物性のものを用いることが可能であるが、特に、トナーのTHF可溶成分の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が8〜73であり、更にトナーのメルトインデックス値(MI)が2〜30の範囲内にあることが好ましい。即ち、上記(Mw)/(Mn)の値が8よりも低い場合は分子量分布が狭すぎ、低温定着性と加熱ローラへの耐付着性とを両立させることが困難となる。又、上記比が73よりも大きいと分子量分布が広くなり過ぎ、高分子量成分による静電荷像保持体への傷や低分子量成分による定着器への汚染を生じ易くなる。
又、本発明で使用するトナーが、MI値が2〜30の範囲内にあると好ましい理由としては、先ず、MI値が2未満であると、定着時のトナーの溶融が不十分になり易いため加熱ローラ表面に微小な傷を生じ、ローラの寿命を縮める原因となり易い。一方で、MI値が30を超えるものは溶融し易く、定着時に画質低下を生じ易い。更に、MI値がこの範囲内にあると、トナー製造時における混練時に充分な粘度が得られ、トナー構成成分の分散が良好となる。以上の結果、安定した定着性能、耐加圧ローラ汚染性、耐加熱ローラ汚染性を得ることができる。
【0033】
本発明で使用するトナー製造用樹脂組成物中には、上記したような結着樹脂と共に、通常は着色剤が含有される。この際に使用する着色剤としては、具体的には例えば、顔料として、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等が挙げられる。更に、染料としては、例えば、アントラキノン系染料、キサンテン系、メチン系染料等を挙げることができ、これらを用いる場合には、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部を使用することが好ましい。
本発明で使用するトナー製造用樹脂組成物中には、磁性材料を含有させることもできる。磁性材料としては、例えば、マグネタイト、フェライト、酸化鉄等が挙げられるが、必ずしも含有しなくてもよい。
【0034】
又、本発明で使用するトナー製造用樹脂組成物中には、必要に応じてワックスを添加して用いることができる。添加されるワックスは特に限定されないが、好ましくは、パラフィンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス、及びその誘導体、フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス及びその誘導体等が用いられるが、誘導体には、酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が含まれる。
これらのワックスの含有量としては、結着樹脂100重量部に対し、0.5重量部以上20重量部以下で用いることが好ましい。又、この場合に、2種以上のワックスを併用することも可能である。
【0035】
更に、本発明で使用するトナー製造用樹脂組成物中には、必要に応じて荷電制御剤を含有させてもよい。荷電制御剤としては特に限定されないが、例えば、モノアゾ染料の金属錯塩、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸又はナフトエ酸の金属錯塩、ニグロシン系化合物、有機四級アンモニウム塩等を用いることが可能である。これらの中でも良好な帯電性を得る上で効果的なものとしては、下記一般式(C)によって表されるモノアゾ系金属化合物が挙げられる。
【0036】
[C式中、Mは配位中心金属を表し、具体的には、Cr、Co、Ni、Mn、Fe、Ti、Al等が挙げられる。Arはアリール基を表し、フェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、これらは置換基を有してもよい。この場合の置換基としては、ニトロ基、ハロゲン基、カルボキシル基、アニリド基及び炭素数1〜18のアルキル基、アルコキシ基が挙げられる。又、X、X’、Y及びY’は、夫々、−O−、−CO−、−NH−、−NR−(Rは炭素数1〜4のアルキル基)のいずれかを表す。A+は、水素、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、又は脂肪族アンモニウムイオンを表す。]
【0037】
又、本発明で使用する荷電制御剤のより好ましいものとして、上記のモノアゾ系金属化合物の中でも下記一般式Dによって表されるモノアゾ系鉄錯体が挙げられる。即ち、アゾ系鉄錯体を使用すると、特に、酸成分を有する結着樹脂に対する分子間相互作用により、好適に分散が達成される。
【0038】
[上記D式中、X1及びX2は、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子のいずれかを表し、m及びm’は1〜3の整数である。Y1及びY3は、水素原子、又はC1〜C18のアルキル、アルケニル、スルホンアミド、メシル、スルホン基、カルボキシエステル、ヒドロキシ、C1〜C18のアルコキシ、アセチルアミノ、ベンゾイル、アミノ基、ハロゲン原子のいずれかを表す。n及びn’は、1〜3の整数であり、Y2及びY4は、水素原子、ニトロ基を表す。尚、X1とX2、mとm’、Y1とY3、nとn’、Y2とY4は同一であっても異なっていてもよい。更に、A+は、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、水素イオンの混合よりなる。]
【0039】
更に、より帯電安定化に効果をもたらす手段としては、先に示したモノアゾ系金属化合物(C式)と、下記一般式Eによって表されるオキシカルボン酸系金属化合物(E式)の2種の荷電制御剤を併用することが挙げられる。
【0040】
[上記のE式中、Mは配位中心金属を表し、Cr、Co、Ni、Mn、Fe、Ti、Al等が挙げられる。Bは、下記のいずれかを表わす。
更に、E式中、A+は、水素、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、又は脂肪族アンモニウムイオンを表す。]
【0041】
この理由としては、上記のようなオキシカルボン酸系金属化合物が結着樹脂を適度に架橋させるので、加熱ローラや、加圧ローラ、トナー担持シート搬送部材等に対する汚染を防ぐ効果と高温オフセットに対する許容幅が増すことが挙げられる。一方、併用するモノアゾ系金属化合物がさらなる帯電安定化に寄与することから、より安定した特性を有するトナーを得ることができる。先に述べたように、オキシカルボン酸系金属化合物と併用させる場合も、モノアゾ系金属化合物中の好ましいものとして、D式で表されるモノアゾ系鉄錯体が挙げられる。
【0042】
又、本発明のトナー画像の定着方法で使用するトナー中には、環境安定性、帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上等のために、無機微粉体或いは疎水性無機微粉体が混合されてもよい。例えば、シリカ微粉体或いは酸化チタン微粉体を単独或いは併用して用いることが好ましい。
本発明で使用するシリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能である。又、乾式シリカに於ては、製造工程において、例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等、他の金属ハロゲン化合物を硅素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能である。
【0043】
更に、本発明で使用する無機微粉体は疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理する方法としては、無機微粉体と反応或いは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的に処理することが挙げられる。その例としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシランカップリング剤で処理した後、或いはシランカップリング剤で処理すると同時にシリコーンオイルのごとき有機ケイ素化合物で処理する方法がある。
【0044】
疎水化処理の際に使用されるシランカップリング剤としては、例えば、下記のものが挙げられる。具体的には、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン及び水酸基を含有したジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0045】
又、有機ケイ素化合物としては、例えば、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度が30〜1,000センチストークスのものが用いられ、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が特に好ましい。この結果、得られる定着画像の鮮明さが湿度等の環境変動を受けにくくなる。
【0046】
シリコーンオイル処理の方法としては、例えば、シランカップリング剤で処理された無機微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合してもよいし、ベースとなる無機微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法を用いてもよい。或いは、適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解又は分散せしめた後、無機微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法でもよい。
【0047】
本発明で使用するトナーとしては、必要に応じて上述以外の添加剤が添加されたものを使用してもよい。例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ロール定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする微粒子等である。
例えば、テフロン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンのごとき滑剤、或いは、酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、或いは、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム等の流動性付与剤が挙げられる。更に、ケーキング防止剤、或いは、例えば、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ等の導電性付与剤が挙げられる。又、逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
トナー中に混合されるこれらの樹脂微粒子又は無機微粉体或いは疎水性無機微粉体等は、トナー100重量部に対して0.1〜10重量部(より好ましくは、0.1〜5重量部)使用するのが好ましい。
【0048】
本発明で使用するトナーを作成するには、例えば、上記に挙げたような材料からなるトナー構成材料を混合機により充分混合してから、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのごとき熱混練機を用いて溶融混練し、更に冷却固化後粉砕、分級を行う方法が挙げられる。又、溶媒中においてトナー構成材料からトナー粒子を直接生成させる重合法等も使用することが可能であって、特に限定されない。
【0049】
本発明のトナー画像定着方法においては、被転写材上に担持されているトナー画像を定着させるが、その際に用いられるトナーを用いて静電潜像を現像して被転写材上にトナー画像を担持させる現像方式としては、トナー層を保持している現像ローラと静電荷像保持体(潜像担持体)とが接しているいわゆる接触現像方式を用いても、接していない非接触現像方式を用いてもよく、特に限定されない。又、その際の現像手段としては、トナーと共にキャリアを用いる二成分現像方式、キャリアを用いない一成分現像方式、補助帯電部材を用いるその他の現像方式等を使用することが可能であり、特に限定されない。
【0050】
以下、本発明において使用する測定方法について述べる。
1.トナー分子量(分布)測定方法
トナー中の樹脂分の分子量分布は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって下記の条件で測定した。測定用試料は、トナーをTHF(テトラヒドロフラン)に溶解し、その後濾過することによって不溶分を除いて調製した。試料の分子量の算出にあたっては、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用した。
・装置 :GPC−150C(ウォーターズ社製)
・カラム:KF801〜7(SHODEX社製)の7連
・温度 :40℃
・溶媒 :THF(テトラヒドロフラン)
・流速 :1.0ml/min.
・試料 :濃度0.05〜0.6重量%の試料を0.1ml注入
【0051】
2.トナーのメルトインデックス(MI)測定方法
メルトインデックス(MI)は、JIS K7210記載の装置を用い、下記測定条件下、手動切り取り法で測定を行った。この時、測定値は10分値に換算した。
・測定温度 :125℃
・荷重 :10kg
・試料充填量:5〜6g
【0052】
3.トナー粒度分布測定方法
粒度分布については、種々の方法によって測定できるが、本発明ではコールターカウンタを用いて測定を実施した。即ち、測定装置としては、コールターカウンタTA−II或いはコールターマルチサイザーII(コールター社製)を用いる。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%NaCl水溶液を調製する。このようなものとしては、例えば、ISOTON−II(コールター社製)が使用できる。
【0053】
測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料が懸濁された電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記の測定装置で、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いてトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。
【0054】
【実施例】
以上、本発明の基本的な構成と特徴について述べたが、更に、本発明の実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、これらによって本発明の実施形態が限定されるものではない。尚、文中「部」及び「%」とあるのは、特に示さない限り重量基準である。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
上記材料をヘンシェルミキサーでよく混合した後、130℃に設定したエクストルーダーでよく混合し、冷却後、カッターミルで粗粉砕した後、機械式粉砕機で微粉砕した。その後、風力分級器で分級し、黒色微粉体を得た。得られた黒色微粉体100部に、コロイダルシリカ1.1部を加え、ヘンシェルミキサーで混合してトナーを得、下記の定着方法に使用した。
【0059】
本実施例では、市販のレーザービームプリンターLBP−WX(キヤノン製)を下記のように改造して用いた。先ず、加熱ローラには、表面にPFA層をもった45φのものを用い、加圧ローラには、導電材を分散させたPFA層を表面にもった32φのものを用いた。又、加圧ローラの加熱ローラへの加圧力は28kgfとした。クリーニングウェブ、定着オイルは使用しなかった。被転写材としては、市販の複写機用普通紙を用いた。
【0060】
本実施例では、図1に示したような概略構成を有する定着ローラ式の定着器を用いた。図1にその縦断面図を、図2に横断面図を示した。又、バイアス印加の方式は図3(a)のものを用い、加熱ローラに、−800Vのバイアスを印加した。以下、この加熱定着装置の概略を説明する。
図中、1は加熱体としての加熱ローラ(定着ローラ、ヒートローラ)であり、内部にハロゲンヒータを有しており加熱される。6は、加熱ローラ1の下側において、該加熱ローラに並行に配設され、ばね8及び9によって加熱ローラの下面に所定の押圧力をもって圧接された加圧部材としての加圧ローラである。
【0061】
上記加熱ローラ1と加圧ローラ6との間に形成される圧接ニップ部(N)に、被加熱材としてのトナー担持シート(P)(未定着トナー画像)を導入して搬送通過させることにより、加熱体としての加熱ローラ1の熱と、ローラ対1と6との加圧によって、シート(被転写材)上のトナー画像が加熱加圧されて固着画像としてシート(被転写材)面に定着される。
【0062】
以上のような加熱定着装置と、先のようにして得られたトナーとを用いて、低温低湿環境(15℃/10%RH)下、常温常湿環境(23℃/60%RH)下、高温高湿環境(32.5℃/80%RH)下で画出しを行った。本実施例で使用した加熱定着装置の定着器は、表3に示した定着器No.1の構成のものを使用した。そして、得られた画出し試験の結果を表5に示した。その際の定着性の評価は、下記の項目について下記の方法及び基準で行なった。
【0063】
定着性評価
(1)定着開始温度
定着性は、50g/cm2の荷重をかけ、柔和な薄紙により定着画像を摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)を算出して評価した。画像濃度変動が5%以下となった温度を定着開始温度として表5に記載した。
【0064】
(2)高温オフセット
画像先端半分がベタ黒(トナーののり量はほぼ一定にする)で、残り半分がトナーなし(ベタ白)のトナー画像をシート上に形成し、定着器を通過させ、画像を観察し、ベタ白部に汚れを生じた時点の温度を高温オフセット温度とし、表5に示した。
【0065】
更に、定着可能温度範囲において、上記の(2)高温オフセットの場合と同様の画像を連続25,000枚にわたり形成して定着試験を行い、得られた結果を下記項目(3)及び(4)について評価した。
(3)画像汚れ
耐久試験中に1,000枚おきに白紙を5枚づつ定着器を通過させ、この白紙上に生じた汚れに付着した汚れを『リフレクトメーター』(東京電色社製)により測定して評価した。即ち、定着器通過の白地部分の白色度と、定着器通過前の転写紙の白色度の関係から汚れ量(%)を算出し、画像汚れを評価した。表5には、3環境における最悪値を記載した。
【0066】
(4)画像飛び散り
10,000枚及び20,000枚め定着時に細線画像(7本/1mm)を定着し、その解像度をルーペを用いて観察し、トナーの飛び散り、解像度が落ちた度合いについて確認して評価した。即ち、判別可能なライン数を下記の基準で評価した。この際、判別可能なライン数は、縦方向のライン横方向のライン夫々10カ所の平均値とした
◎:7本
○:5〜6本
△:3〜4本
×:2本以下
【0067】
(5)ベタ画像汚れ
ベタ画像(同一画像濃度)を40枚連続で定着し、引き続き定着した白紙上における紙上の汚れをルーペ(×30)にて観察し、下記の基準で評価して結果を表5に示した。
○(良好):付着物は殆ど見られない。
△(可):付着物は極めて少なく、画像も問題ないレベル。
×(不可):付着物が多く、画像欠陥を生じる可能性がある。
【0068】
(6)加熱ローラ汚れ
上記の定着試験終了後、加熱ローラ表面を観察して残留トナーの固着の様子と定着画像への影響について調べた。評価は、下記の基準で行ない、結果を表5に示した。
◎(非常に良好):付着物は殆ど見られず、画像品位も初期に匹敵する。
○(良好):付着物は殆ど見られず、画像品位の変化が極めて少ない。
△(可):付着物は極めて少なく、画像も問題ないレベル。
×(不可):固着が多く、画像ムラを生じる。
【0069】
(8)加圧ローラ汚れ
上記の定着試験終了後、加圧ローラ表面への異物の付着の様子を観察し、これに基づいて加圧ローラの耐久性への影響について評価を行った。評価は、下記の基準で行ない、結果を表5に示した。
◎(非常に良好):付着物は殆ど見られず、画像上も影響が小さい。
○(良好):付着物はほとんど見られず、画像品位の変化が少ない。
△(可):付着物は極めて少なく、画像も問題ないレベル。
×(不可):付着物が多く、画像欠陥を生じる。
【0070】
(9)加熱ローラ傷
耐久試験終了後、加熱ローラ表面の様子を表面粗さ計を用いて、初期の状態からの表面粗さの変化ΔRaを測定し、下記の基準で評価を行ない、結果を表5に示した。
てた。
◎:1.5μm未満
○:1.5〜2.3μm
△:2.4〜3.2μm
×:3.3μm以上
【0071】
実施例2〜17及び比較例1〜6
表1及び表2に示す特性を有する夫々のトナーと、表3に示した夫々の特性を有する定着器とを、表4に示したように組み合わせて用い、更に、定着条件を表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして定着性試験をして評価を行った。その結果を、実施例1の場合と同様に表5に示した。
尚、トナー5については(F)に示す化合物を3部を荷電制御剤として使用し、トナー6についてはアゾ系クロム錯体(商品名スピロンブラックTRH)3部を荷電制御剤に使用した。
【0072】
【0073】
表1:トナー中の樹脂成分
【0074】
表2:実施例及び比較例で使用したトナーの粒度分布
【0075】
表3:実施例及び比較例で使用した定着器の定着ローラの特性
【0076】
表4:実施例及び比較例の定着条件
【0077】
表5:評価結果
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、加熱ローラ及び加圧ローラを少なくとも具備している加熱加圧手段によってトナー画像を被転写材表面に加熱加圧定着する場合に、トナー中の樹脂分が特定の分子量分布を有する負帯電性のトナーを用い、加熱ローラに−600〜−2,300Vの直流バイアス電圧(V t )が印加されているか、或いは、上記加熱加圧手段の加圧ローラに+600〜+2300Vの直流バイアスが印加されており、加熱ローラの直径(Dh)と加圧ローラの直径(Dp)との比(Dh/Dp)が1.35〜1.90である定着手段を採用することにより、低温から高温までの定着可能温度領域が広く、多数枚の被転写材を定着させた後においても加熱ローラ及び加圧ローラの劣化を生じにくく、得られる定着画像の画質に優れ、且つ周囲の温度や湿度環境の影響も小さく、更にそれらを長期にわたって維持することができ、長期間安定した定着を実現することが可能なトナー画像の定着方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の定着方法を適用する場合に好適な装置の一例を示す縦断面概略図である。
【図2】図1の装置の横断面概略図である。
【図3】本発明の定着方法に好適な装置(バイアス電圧印加)の一例を示す横断面概略図である。
【図4】本発明の定着方法に好適な装置(バイアス電圧印加)の別の一例を示す横断面概略図である。
【図5】本発明におけるGPCチャート上のメインピーク位置及びショルダー位置の説明図である。
【符号の説明】
1:加熱ローラ
2:加熱ローラ表面層
3:発熱体
6:加圧ローラ
8、9:ばね
10:バイアス電源
N:(圧接)ニップ部
P:被転写材(シート)
Claims (13)
- 被転写材上に担持されているトナー画像を、加熱ローラと加圧ローラとを少なくとも具備している加熱加圧手段によって該被転写材面に加熱加圧定着する定着方法であって、
トナー画像が、結着樹脂成分及び着色剤が少なくとも含有されたトナーで形成され、該トナーが、負帯電性であって、且つ、そのTHF可溶成分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)における分子量分布において、分子量2,000〜9,000の領域に少なくとも一つのメインピークを有し、分子量20,000〜600,000の領域にサブピークまたはショルダーを有するものであり、
上記加熱加圧手段の加熱ローラに−600〜−2,300Vの直流バイアス電圧(V t )が印加されているか、或いは、上記加熱加圧手段の加圧ローラに+600〜+2,300Vの直流バイアス電圧(Vt)が印加されており、且つ、
加熱ローラの直径(Dh)と加圧ローラの直径(Dp)との比(Dh/Dp)が1.35〜1.90であることを特徴とするトナー画像の定着方法。 - トナー中に、シリコーンオイルまたはシリコーンオイル誘導体を少なくとも含有する外添剤が含有されている請求項1に記載のトナー画像の定着方法。
- 外添剤が、少なくともシリコーンオイルまたはシリコーンオイル誘導体を5〜18重量%有する無機微粉体である請求項2に記載のトナー画像の定着方法。
- トナー画像が150〜570mm/秒の定着スピードで被転写材上に加熱加圧定着される請求項1に記載のトナー画像の定着方法。
- 加熱ローラが、直径(Dh)42〜82mmの円筒形状を有し、少なくとも発熱手段が内包された芯金と、該芯金の表面に設けられたフッ素系樹脂表面層とからなり、且つ、加圧ローラが、直径が31〜48mmの円筒形状を有する請求項1に記載のトナー画像の定着方法。
- 加熱ローラにオイル塗布手段が具備されていない請求項1に記載のトナー画像の定着方法。
- トナー中の分子量2,000〜6,000の成分の割合が25%〜45%である請求項1に記載のトナー画像の定着方法。
- 直流バイアス電圧が600V〜1,700Vである請求項1に記載のトナー画像の定着方法。
- トナーの重量平均径D4(μm)が3.5≦D4≦9.5であり、且つ該重量平均径D4と個数粒度分布における粒径3.17μm以下の粒子の存在割合N(個数%)との関係が下記の式を満足する粒度分布を有する請求項1に記載のトナー画像の定着方法。
35−D4×5≦N≦180−D4×25 - トナーのTHF可溶成分の重量平均分子量(Mw)が7万〜85万であり、且つ重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が8〜73であり、更にトナーのメルトインデックス値(MI)が2〜30の範囲内にある請求項1に記載のトナー画像の定着方法。
- トナーがモノアゾ系金属化合物を含有する請求項1に記載のトナー画像の定着方法。
- トナーがモノアゾ系鉄錯体化合物を含有する請求項11に記載のトナー画像の定着方法。
- トナーがモノアゾ系金属化合物とオキシカルボン酸系金属化合物とを含有する請求項11に記載のトナー画像の定着方法。
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