本発明の実施の一形態であるトナーは、結着樹脂、着色剤および離型剤を含有する複数のトナー粒子を含み、トナー粒子の体積平均粒子径は、5μm以上7μm以下であり、全トナー粒子のうち、粒子径が4μm未満であるトナー粒子の割合は、25個数%以上35個数%以下であり、全トナー粒子における離型剤の含有率は、トナー全量の2.0重量%以上5.0重量%以下である。本実施形態では、トナー粒子は、さらに帯電制御剤を含有し、外添剤が外添されて成る。本発明の他の実施形態では、トナーは、帯電制御剤を含有しなくてもよく、外添剤が外添されていなくてもよい。
本実施形態では、前述のように、トナー粒子の体積平均粒子径が5μm以上7μm以下のトナーにおける4μm未満のトナー粒子(以下、「微粉トナー」とも記す)の割合および離型剤の含有率を制御する。
トナー粒子の体積平均粒子径が5μm未満であると、トナー粒子間の流動性が低下することによって、トナーの帯電性が低下し、トナー飛散が生じやすくなる。トナー粒子の体積平均粒子径が7μmを超えると、十分に高精細化および高解像度化された画像を形成することができない。
粒子径4μm未満のトナー粒子の割合が25個数%未満であると、高温オフセットの発生温度が低くなり、低温オフセット発生温度が高くなるので、非オフセット領域が狭くなる。4μm未満のトナー粒子の割合が35個数%を超えると、流動性の低下によってトナーの帯電量が低下し、かぶりが発生する。
全トナー粒子における離型剤の含有率が2.0重量%未満であると、定着機通過中の離型剤の染み出し総量が少なすぎ離型効果を発揮しない。全トナー粒子における離型剤の含有率が5.0重量%を超えると、トナー表面に露出する離型剤量が多くなりすぎ、トナーの保存安定性が著しく悪化するので、感光体などの像担持体へのフィルミングおよびキャリアへのスペントが発生しやすくなる。
トナー粒子の体積平均粒子径が5μm以上7μm以下であるトナーにおいて、4μm未満のトナー粒子の割合および離型剤の含有率を前記範囲にすることによって、十分な非オフセット領域を有し、またフィルミングが発生しにくく、高画質な画像を形成することのできるトナーが得られる。
トナーは、第1のトナー粒子群と第1のトナー粒子群より体積平均粒子径の小さい第2のトナー粒子群とを含み、第2のトナー粒子群のトナー粒子が離型剤を2.0重量%以上3.0重量%以下の含有率で含むことが好ましい。第2のトナー粒子群のトナー粒子の離型剤含有率が2.0重量%未満だと、定着機通過中の離型剤の染み出し総量が少なすぎ離型効果が十分に発揮されない。また、第2のトナー粒子群のトナー粒子の離型剤含有率が3.0重量%を超えると、トナー表面に露出する離型剤量が多くなりすぎることによって、トナーの保存安定性が悪化しやすいので、フィルミングおよび流動性不良が発生しやすく、形成画像の画質が低下するおそれがある。
第2のトナー粒子群における離型剤の含有率は、第2のトナー粒子群全量の2.0重量%以上3.0重量%以下であるので、前述のように粒子径が4μm未満という小粒子径のトナー粒子を25個数%以上35個数%以下と多く含むトナーであっても、小粒径のトナー粒子表面に露出する離型剤量を好適にすることができる。これによって、離型効果を発揮させるとともに、トナー粒子表面に露出する離型剤量が多くなりすぎることによるトナーの保存安定性の低下を防ぐことができ、フィルミングおよび流動性不良による画質の低下を防ぐことができる。したがって、高精細で高解像度の高画質画像を安定して形成することのできるトナーが得られる。
本実施形態における、トナー中の離型剤含有率は、示差走査熱量測定器(Differential Scanning Calorimeter;DSC)として、たとえばThermo plus DSC 8230(理学電気工業株式会社製)を用いて、以下の手順に従って測定される。測定条件は以下の通りである。
使用する離型剤単体10.0±0.5mgを秤量する。サンプルである秤量した離型剤単体をセットして1st runとして先ず、常温から200℃まで20℃/minの割合で昇温させる。次にサンプルを200℃から30℃まで冷却してから、2nd run として30℃から120℃まで10℃/minで昇温させ、2nd runでの離型剤の単位質量あたりの吸熱量[J/g]を測定する。トナーで同様に離型剤由来の単位質量あたりの吸熱量を測定して、トナー中の離型剤の吸熱量と離型剤単体の吸熱量との比から、トナー中に含有されている離型剤量を求める。
「トナーが、第1のトナー粒子群と、第1のトナー粒子群よりも体積平均粒子径の小さい第2のトナー粒子群とを含む」とは、トナーの体積粒度分布を測定したときに、分布曲線に2つのピークが現れる状態をいう。このようなトナーは、後述するように体積平均粒子径の異なる2つのトナー粒子群を混合することによって得られる。混合する2つのトナー粒子群のうち、体積平均粒子径が相対的に大きい方を「第1のトナー粒子群」といい、体積平均粒子径が相対的に小さい方を「第2のトナー粒子群」という。第1および第2のトナー粒子群の体積平均粒子径は、トナーの体積粒度分布曲線において、前述の2つのピークとして現れる。
前述の第2のトナー粒子群における離型剤の含有率は、第1のトナー粒子群と混合される前の第2のトナー粒子群について、トナー中の離型剤の含有率と同様にして測定される値をいう。
全トナー粒子の平均円形度は、0.955以上0.975以下であることが好ましい。平均円形度が0.955未満であると、形状が不定形なトナー粒子(以下、「不定形トナー」とも記す)の含有量が多くなるので、転写率が低下する。平均円形度が0.975を超えると、真球に近い形状のトナー粒子の含有量が多くなるので、転写されずに感光体表面に残ったトナー粒子が、クリーニングブレードに引っ掛かりにくくなる。したがって、記録材へのトナー像の転写後に感光体表面に残留するトナー粒子の除去が困難になるので、クリーニング性が低下するおそれがある。全トナー粒子の平均円形度が、0.955以上0.975以下であるので、記録材への転写率およびクリーニング性を向上させることができる。したがって、高画質な画像をより安定して形成することができる。
粒子径が4μm未満のトナー粒子の平均円形度は、0.940以上0.960以下であることが好ましい。4μm未満のトナー粒子の平均円形度が、0.940未満であると、トナー粒子の形状が不定形となり、トナーの流動性および転写率が低下するおそれがある。4μm未満のトナー粒子の平均円形度が、0.960を超えると、トナー粒子の形状が真球に近い形状となり、転写されずに感光体表面に残ったトナー粒子が、クリーニングブレードに引っ掛かりにくくなり、クリーニング性が低下し、記録材へのトナー像の転写後に感光体表面に残留するトナー粒子の除去が困難になる。4μm未満のトナー粒子の平均円形度を上記範囲に制御することによって、トナーの流動性、転写性およびクリーニング性に影響を及ぼす4μm未満のトナー粒子の形状を好適にすることができるので、流動性不良、転写性不良およびクリーニング不良による画質の低下を防ぐことができる。したがって、高精細で高解像度の高画質画像をより一層安定して形成することができる。
全トナー粒子のうち、粒子径が4μm未満であり、かつ円形度が0.850以下のトナー粒子の割合は10個数%以下であることが好ましい。粒子径が4μm未満であり、円形度が0.850以下のトナー粒子の含有率が10個数%を超えると、不定形トナーの含有量が多くなるので、転写率が低下し、高精細画像を得にくくなる。円形度が0.850以下という不定形のトナー粒子は、転写率が低いが、粒子径が4μm未満であり、円形度が0.850以下であるトナー粒子の割合を10個数%以下とすることによって、不定形トナー粒子の含有量を抑制し、円形度分布を狭くすることができる。したがって、転写性が良好であり、高画質画像をより一層安定して形成することのできるトナーが得られる。
トナー粒子の円形度(ai)は、下記式(1)によって定義される。式(1)に定義されるような円形度(ai)は、たとえばシスメックス株式会社製フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」を用いることによって測定される。またm個のトナー粒子について測定した各円形度(ai)の総和を求め、総和をトナー粒子数mで除算する式(2)によって得られる算術平均値を平均円形度(a)と定義する。
円形度(ai)=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)
/(粒子の投影像の周囲の長さ) …(1)
前記測定装置「FPIA−3000」では、各トナー粒子の円形度(ai)を算出後、得られた各トナー粒子の円形度(ai)を、0.40〜1.00まで0.01毎に61分割した各分割範囲に分けて頻度を求め、各分割範囲の中心値と頻度とを用いて平均円形度の算出を行うという簡易算出法を用いている。この簡易算出法で算出される平均円形度の値と、前記式(2)で与えられる平均円形度(a)の値との誤差は、非常に小さく実質的に無視出来る程度のものなので、本実施の形態では、簡易算出法による平均円形度を、前記式(2)で定義される平均円形度(a)として取扱う。
円形度(ai)の具体的な測定方法は、以下のとおりである。界面活性剤を約0.1mg溶解している水10mLに、トナー5mgを分散させて分散液を調製し、周波数20kHz、出力50Wの超音波を分散液に5分間当て、トナー粒子濃度が5000〜20000個/μLである分散液を調整する。前記装置「FPIA−3000」において、トナー粒子を含む分散液を非常に薄い扁平なセル内に流し、ストロボ光を照射してCCD(charge coupled device)カメラで撮像することによって一つ一つのトナー粒子について粒子径および形状などを計測し、円形度(ai)を求める。
粒子径が4μm未満であるトナー粒子の円形度を求める場合、得られた計測データから、粒子径が4μm未満のトナー粒子のデータを抽出することによって、粒子径が4μm未満であるトナー粒子の円形度を求める。
粒子径が4μm未満であり、かつ円形度が0.850以下のトナー粒子の割合を求める場合、上記計測データから得られる粒子径が4μm未満のトナー粒子のデータから、円形度が0.850以下のトナー粒子の粒子径が4μm未満であるトナー粒子の個数を分散液中の全トナー粒子で徐算することによって求める。
トナー粒子に含有される結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、ブラックトナーまたはカラートナー用の結着樹脂を使用することができる。結着樹脂としては、たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレンおよびスチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。また原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応させて得られる樹脂を用いてもよい。結着樹脂は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。結着樹脂は、上述の中でも特にポリエステル樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂はアクリル樹脂などの他の樹脂と比較して耐久性および透明性に優れ、また軟化温度(Tm)が低い。したがって、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有することにより、耐久性および発色性に優れるトナーを得ることができる。また、より低い温度で定着することのできる低温定着性に優れるトナーを得ることができる。
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるが、得られるトナーの定着性および保存安定性などを考慮すると、30℃以上80℃以下であることが好ましい。30℃未満であると、保存安定性が不十分になるので、画像形成装置内部でのトナーの熱凝集が起こりやすくなり、現像不良が発生するおそれがある。また高温オフセット現象が発生し始める温度が低下してしまう。「高温オフセット現象」とは、定着ローラなどの定着部材で加熱および加圧してトナーを記録材に定着させる際に、トナーが過熱されることによってトナー粒子の凝集力がトナーと定着部材との接着力を下回ってトナー層が分断され、トナーの一部が定着部材に付着して取去られる現象のことである。また結着樹脂のガラス転移温度(Tg)が80℃を超えると、定着性が低下するので、定着不良が発生するおそれがある。
結着樹脂の軟化温度(Tm)は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるが、150℃以下であることが好ましく、60℃以上150℃以下であることがさらに好ましい。60℃未満であると、トナーの保存安定性が低下し、画像形成装置内部でトナーの熱凝集が起こりやすくなり、トナーを安定して像担持体に供給することができず、現像不良が発生するおそれがある。また画像形成装置の故障が誘発されるおそれもある。150℃を超えると、後述する溶融混練工程において結着樹脂が溶融しにくくなるので、トナー原料の混練が困難になり、溶融混練物中における着色剤、離型剤および帯電制御剤などの分散性が低下するおそれがある。またトナーを記録材に定着させる際に、トナーが溶融または軟化しにくくなるので、トナーの記録材への定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。
着色剤としては、たとえば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤、およびブラックトナー用着色剤などが挙げられる。
イエロートナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、およびC.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185などの有機系顔料、黄色酸化鉄および黄土などの無機系顔料、C.I.アシッドイエロー1などのニトロ系染料、ならびにC.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19、およびC.I.ソルベントイエロー21などの油溶性染料などが挙げられる。
マゼンタトナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10、およびC.I.ディスパーズレッド15などが挙げられる。
シアントナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー25、およびC.I.ダイレクトブルー86などが挙げられる。
ブラックトナー用着色剤としては、たとえば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、およびアセチレンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。これら各種カーボンブラックの中から、得ようとするトナーの設計特性に応じて、適切なカーボンブラックを適宜選択すればよい。
これらの顔料以外にも、紅色顔料、緑色顔料などを使用できる。着色剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。また、同色系のものを2種以上用いることができ、異色系のものをそれぞれ1種または2種以上用いることもできる。
着色剤は、マスターバッチとして使用されることが好ましい。着色剤のマスターバッチは、たとえば、合成樹脂の溶融物と着色剤とを混練することによって製造することができる。合成樹脂としては、トナーの結着樹脂と同種の樹脂またはトナーの結着樹脂に対して良好な相溶性を有する樹脂が使用される。合成樹脂と着色剤との使用割合は特に制限されないけれども、好ましくは合成樹脂100重量部に対して30重量部以上100重量部以下である。マスターバッチは、たとえば粒子径2〜3mm程度に造粒されて用いられる。
本実施形態のトナーにおける着色剤の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して4重量部以上20重量部以下である。マスターバッチを用いる場合、本発明のトナーにおける着色剤の含有量が上記範囲になるように、マスターバッチの使用量を調整することが好ましい。着色剤を上記範囲で用いることによって、十分な画像濃度を有し、発色性が高く画像品位に優れる良好な画像を形成することができる。
本発明に用いられる離型剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができるけれども、極性の低い離型剤としては、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、ならびにマイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、低分子ポリプロピレンワックスおよびその誘導体、ならびにポリオレフィン系重合体ワックスおよびその誘導体などの炭化水素系合成ワックスが挙げられる。また、極性の高い離型剤としては、カルナバワックスおよびその誘導体、エステル系ワックスなどが挙げられる。離型剤を結着樹脂中に均一に分散させるために、ポリエチレンのような極性の低い結着樹脂には極性の低い離型剤を含有させることが好ましく、ポリエステルのような極性の高い結着樹脂には、極性の高い離型剤を含有させることが好ましい。
本実施形態のトナーには、結着樹脂、着色剤および離型剤の他に添加成分として帯電制御剤が含有される。本発明の他の実施形態のトナーでは、帯電制御剤は含有されなくてもよいが、本実施形態のトナーのように、帯電制御剤を含有することが好ましい。帯電制御剤を含有させることによって、トナーの摩擦帯電量を好適な範囲にすることができる。
帯電制御剤としては、正電荷制御用または負電荷制御用の帯電制御剤を使用できる。正電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、およびアミジン塩などが挙げられる。負電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、オイルブラックおよびスピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩、ホウ素化合物、長鎖アルキルカルボン酸塩、ならびに樹脂酸石鹸などが挙げられる。サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩の金属としては、たとえば、クロム、亜鉛、ジルコニウムなどが挙げられる。
後述するように混練粉砕法によってトナーを製造する場合に、結着樹脂に対して非相溶性の帯電制御剤を用いると、トナー粉砕時に帯電制御剤が粉砕助剤として働き、帯電制御剤が粉砕の起点となる。そのため、トナーの粉砕界面、すなわちトナー粒子の表面に帯電制御剤が存在しやすくなる。したがって、結着樹脂に対して非相溶性の帯電制御剤を含有させることによって、トナー粒子表面に多くの帯電制御剤を存在させることができるので、トナーに優れた帯電能を付与することができる。本実施形態においては、とくに第1のトナー粒子群に、非相溶性の帯電制御剤を用いることが好ましい。
結着樹脂に対して非相溶性の帯電制御剤を使用する場合、結着樹脂に対して非相溶性の帯電制御剤の含有量は、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上3重量部以下であり、より好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上1.5重量部以下である。非相溶性の帯電制御剤が3重量部よりも多く含まれると、トナー表面に露出した帯電制御剤によって、キャリアが汚染され、また帯電量が低下し、トナー飛散が発生するおそれがある。非相溶性の帯電制御剤の含有量が0.5重量部未満であると、トナーに十分な帯電特性を付与することができないおそれがある。たとえば、ポリエステル樹脂に非相溶性の帯電制御剤としては、層状シリカ化合物(商品名:N4P、クリアラントジャパン株式会社製)が挙げられる。
混練粉砕法によって第2のトナー粒子群のような体積平均粒子径がたとえば2μm以上4μm以下と小さいトナー粒子群を製造する場合には、結着樹脂に対して相溶性の帯電制御剤を含有させることが好ましい。体積平均粒子径の小さいトナー粒子群では、帯電制御剤を含有しないトナー粒子および帯電制御剤の含有率が高いトナー粒子が存在しやすくなり、トナー粒子間における帯電制御剤の含有率の差が大きくなる。結着樹脂に対して非相溶性の帯電制御剤を体積平均粒子径の小さいトナー粒子群に用いると、トナー中に帯電制御剤が含まれない粒子、帯電制御剤がトナー粒子表面に存在する粒子および存在しない粒子などが混在し、トナーの帯電特性および現像特性を均一にすることができない。結着樹脂に対して相溶性の帯電制御剤を体積平均粒子径の小さいトナー粒子群に含有させることによって、そのトナー粒子群中の全てのトナー粒子に均一に帯電制御剤を存在させることができ、トナーの帯電特性および現像特性を均一にすることができる。したがって、トナー飛散およびかぶりによる画質低下を抑え、安定して高画質画像を得ることができる。
以上のように、本発明において、第1のトナー粒子群には非相溶性の帯電制御剤を用い、第2のトナー粒子群には相溶性の帯電制御剤を用いることが好ましいが、本実施形態のように同一の溶融混練物から第1および第2のトナー粒子群を製造する場合には、第1および第2のトナー粒子群の両方に相溶性の帯電制御剤を用いることが好ましい。第1および第2のトナー粒子群の両方に相溶性の帯電制御剤を用いることによって、トナーの帯電特性および現像特性を均一にすることができる。したがって、トナー飛散およびかぶりによる画質低下を抑え、安定して高画質画像を得ることができる。
結着樹脂に対して相溶性の帯電制御剤を使用する場合、結着樹脂に対して相溶性の帯電制御剤の使用量は、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下であり、より好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上3重量部以下である。相溶性の帯電制御剤が5重量部よりも多く含まれると、トナー表面に露出した帯電制御剤によって、キャリアが汚染され、また帯電量が低下し、トナー飛散が発生するおそれがある。相溶性の帯電制御剤の含有量が0.5重量部未満であると、トナーに十分な帯電特性を付与することができない。たとえば、ポリエステル樹脂に相溶性の帯電制御剤としては、ホウ素系化合物(商品名:LR-147、日本カーリット株式会社製)およびアルキルサリチル酸金属塩(商品名:BONTRON E−84、オリエント化学株式会社製)が挙げられる。
帯電制御剤が結着樹脂に対して相溶性か非相溶性かどうかは、結着樹脂の種類によって決まり、以下の方法によって判断する。
結着樹脂99重量%と、帯電制御剤1重量%とを、ヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)によって10分間混合し、得られた混合物を、二軸押出混練機(商品名:PCM−65、株式会社池貝製)にて溶融混練した後、室温まで冷却し、固化させて溶融混錬物を得る。得られた溶融混練物10mgを分取してスライドガラス上で溶融させ、カバーガラスで挟んで薄く延ばしたものを光学顕微鏡(商品名:VHX−600、株式会社キーエンス製)にて2000倍の倍率で観察し、観察される帯電制御剤の凝集物を楕円と近似した場合に、その長径が1μm以上の凝集物が確認された場合の帯電制御剤を結着樹脂に対して非相溶性であると判断し、上記凝集物が確認されなかった場合の帯電制御剤を結着樹脂に対して相溶性であると判断する。
以下に、本実施形態のトナーの製造方法について説明する。本実施形態において、トナーは混練粉砕法によって製造する。
図1は、本実施形態におけるトナーの製造方法を示すフローチャートである。図1に示すトナーの製造方法は、結着樹脂、着色剤および離型剤を含むトナー原料を混合して混合物を作製する前混合工程S1と、混合物を溶融混練して溶融混練物を作製する溶融混練工程S2と、溶融混練物を粉砕して粉砕物を作製する粉砕工程S3と、粉砕物を少なくとも第1のトナー粒子群と、第1のトナー粒子群よりも体積平均粒子径の小さい第2のトナー粒子群とに分級する分級工程S4と、第1のトナー粒子群と第2のトナー粒子群とを混合する混合工程S5とを含む。
以下に、ステップS1〜ステップS5の各製造工程について詳細に説明する。
[前混合工程S1]
ステップS1の前混合工程では、結着樹脂、着色剤、離型剤および帯電制御剤を混合機によって乾式混合し、混合物を作製する。トナーには、結着樹脂、着色剤、離型剤および帯電制御剤の他に、その他のトナー添加成分が含有されていてもよい。その他のトナー添加成分の各原料およびその使用量においては、特に制限されるものではなく、公知のものを一般的な使用量で用いることができる。
乾式混合に用いられる混合機としては、公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
[溶融混練工程S2]
ステップS2の溶融混練工程では、前混合工程S1で作製された混合物を溶融混練して溶融混練物を作製する。混合物の溶融混練は、結着樹脂の軟化温度以上、熱分解温度未満の温度に加熱して行われ、結着樹脂を溶融または軟化させて結着樹脂中に、着色剤、離型剤および帯電制御剤などの結着樹脂以外のトナー原料を分散させる。溶融混練時における具体的な加熱温度としては、たとえば80℃以上200℃以下であることが好ましく、100℃以上150℃以下であることがさらに好ましい。
溶融混練には、公知の混練機を使用でき、たとえば、二軸押出し機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。このような混練機としては、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられる。これらの中でも、オープンロール方式の混練機が好ましい。トナー原料混合物は、複数の混練機を用いて溶融混練されてもよい。
[粉砕工程S3]
ステップS3の粉砕工程では、溶融混練工程S2にて得られた溶融混練物を冷却して固化させた後、粉砕して粉砕物を作製する。冷却および固化された溶融混練物は、まずハンマーミルまたはカッティングミルなどによって、たとえば体積平均粒子径100μm以上5mm以下程度の粗粉砕物に粗粉砕される。その後、得られた粗粉砕物は、たとえば体積平均粒子径が15μm以下の粉砕物にまでさらに粉砕される。粗粉砕物の粉砕には、たとえば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子、すなわちロータと固定子、すなわちライナとの間に形成される空間に粗粉砕物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機などを用いることができる。また、冷却および固化された溶融混練物は、ハンマーミルまたはカッティングミルなどによる粗粉砕を経ることなく、直接ジェット式粉砕機または衝撃式粉砕機などによって粉砕されてもよい。
[分級工程S4]
ステップS4の分級工程では、粉砕工程S3で作製された粉砕物を分級して、第1のトナー粒子群(以下「分級品A」という)と、分級品Aよりも体積平均粒子径の小さい第2のトナー粒子群(以下「分級微粉B」という)と、分級品Aおよび分級微粉Bよりも体積平均粒子径の小さい、たとえば体積平均粒子径3.0μm以下の過粉砕トナー粒子とに分級する。過粉砕トナー粒子は、他のトナーの製造に再利用するために回収される。
分級は、分級条件を適宜調整して、分級後に得られる分級品Aの体積平均粒子径が5μm以上8μm以下となるように行われることが好ましい。分級品Aの体積平均粒子径が5μm以上8μm以下であることによって、トナー粒子の体積平均粒子径を5μm以上7μm以下とし、全トナー粒子のうち、粒子径が4μm未満であるトナー粒子の割合を容易に好適な範囲に調整することができる。したがって、流動性に優れ、高精細で高解像度の高画質画像を安定して形成することができる本発明のトナーを容易に製造することができる。
分級品Aの体積平均粒子径が5μm未満であると、トナー粒子間の凝集力によって流動性が悪化する。また、流動性が悪化することによるトナー帯電性低下によって転写率が悪化し、トナー飛散およびかぶりが生じる。また、クリーニング性が低下するおそれがあり、トナーの製造も困難になるおそれがある。分級品Aの体積平均粒子径が8μmを超えると、全トナー粒子の体積平均粒子径が大きくなりすぎるので、高精細な画像を得ることができないおそれがある。
また、分級は分級条件を適宜調整して、分級後に得られる分級微紛Bの体積平均粒子径が2μm以上4μm以下となるように行われることが好ましい。分級微粉Bの体積平均粒子径が2μm以上4μm以下であることによって、トナー粒子の体積平均粒子径を5μm以上7μm以下とし、全トナー粒子のうち、粒子径が4μm未満であるトナー粒子の割合を容易に好適な範囲に調整することができる。したがって、流動性に優れ、高精細で高解像度の高画質画像を安定して形成することができる本発明のトナーを容易に製造することができる。
分級微紛Bの体積平均粒子径が2μm未満であると、分級が困難になるので、トナーの製造が困難になるおそれがある。4μmを超えると、解像度が悪化し、十分に高精細化および高解像度化された高画質画像を得られないおそれがある。
分級には、遠心力による分級および風力による分級によって過粉砕トナー粒子を除去できる公知の分級機を使用することができ、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などを使用することができる。
上述の調整すべき分級条件とは、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)における分級ロータの回転速度などである。
[混合工程S5]
ステップS5の混合工程では、分級工程S4で得られた分級品Aと分級微紛Bとを混合機で混合することによってトナーを製造する。混合工程S5において、分級品Aと分級微紛Bとの混合割合は、100:2〜100:8であることが好ましい。分級品Aと分級微紛Bとを上記の混合割合で混合することによって、トナーを、トナー粒子の体積平均粒子径が5μm以上7μm以下であり、全トナー粒子のうち粒子径が4μm未満のトナー粒子が25個数%以上35個数%以下となるようにより確実に調整することができる。したがって、非オフセット領域が広く、高画質な画像を安定して形成することができる本発明のトナーをより確実に製造することができる。分級品Aの混合割合を100としたときの分級微紛Bの混合割合が2未満であると、解像度が悪化し、十分に高精細化および高解像度化された高画質画像を得られなくなるおそれがある。また分級品Aの混合割合を100としたときの分級微紛Bの混合割合が8を超えると、トナー粒子間の凝集力によって流動性が悪化する。また、流動性が悪化することによるトナー帯電性低下によって転写率が悪化し、トナー飛散およびかぶりが生じ、トナーが感光体の表面に入り込むことによって、クリーニング性も低下するおそれがある。
混合に用いられる混合機としては、公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
以上のようにして製造されたトナー粒子には、外添剤が外添される。外添剤は、外添されなくてもよいが、外添剤を外添することによって、粉体流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性、長期保存性改善、クリーニング特性改善および感光体表面磨耗特性制御などの効果がある。外添剤としては、たとえば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末およびアルミナ微粉末などが挙げられる。外添剤は、1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。外添剤の添加量としては、トナーに必要な帯電量、外添剤を添加することによる感光体の摩耗に対する影響、トナーの環境特性などを考慮して、トナー粒子100重量部に対し3重量部以下が好適である。
本発明の他の実施形態のトナーの製造方法では、ステップS4の分級工程とステップS5の混合工程との間に、ステップS7の球形化工程が設けられる。球形化工程S7では、少なくとも分級品Aまたは分級微粉Bのいずれか一方を球形化処理するが、分級品Aを球形化処理することが好ましい。
球形化工程S7が設けられ、少なくとも分級品Aまたは分級微粉Bのうちいずれか一方が球形化処理されることによって、全トナー粒子の平均円形度および円形度分布を制御することができるので、トナーの形状を好適にすることができる。したがって、球形化工程S7を含む製造方法によって製造されたトナーは、転写率を高い水準に保つことができ、高画質な画像を安定して形成することができる。球形化工程S7が設けられない場合には、不定形トナーの含有量が多くなりやすいので、転写率が低下し、高画質画像を安定して形成できないおそれがある。
球形化処理の方法としては、たとえば、機械的衝撃力によって球形化する方法および熱風によって球形化する方法などが挙げられる。機械的衝撃力による球形化処理に用いられる衝撃式球形化装置としては、市販されているものを使用することができ、たとえば、ファカルティ(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)などを用いることができる。熱風による球形化処理に用いられる熱風式球形化装置としては、市販されているものを使用することができ、たとえば、表面改質機メテオレインボー(商品名、日本ニューマチック工業株式会社製)などを用いることができる。
このようにして製造される本発明のトナーは、そのまま1成分現像剤として使用することができ、また本発明のトナーとキャリアとを混合して2成分現像剤として使用することができる。現像剤は、本発明のトナーを含む。これによって、非オフセット領域が広く、高画質な画像が形成でき、長期の使用にわたり特性の安定した現像剤とすることができるので、良好な現像性を維持することのできる現像剤が得られる。
本発明のトナーは、トナーとキャリアとから成る2成分現像剤に好適に用いられる。本発明のトナーは、保存安定性および流動性に優れるので、キャリアのスペントの発生を抑え、帯電特性および現像性の良好な2成分現像剤が得られる。このような2成分現像剤を用いることによって、トナー飛散およびかぶりによる画質低下を抑え、高画質な画像を安定して形成することができる。
キャリアとしては、磁性を有する粒子を使用することができる。磁性を有する粒子の具体例としては、たとえば、鉄、フェライトおよびマグネタイトなどの金属、これらの金属とアルミニウムまたは鉛などの金属との合金などが挙げられる。これらの中でも、フェライトが好ましい。
磁性を有する粒子に樹脂を被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどをキャリアとして用いてもよい。磁性を有する粒子を被覆する樹脂としては特に制限はないけれども、たとえば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、シリコン系樹脂、エステル系樹脂、およびフッ素含有重合体系樹脂などが挙げられる。また樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂として、特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。キャリアの粒子径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、好ましくは10μm以上100μm以下、さらに好ましくは20μm以上50μm以下である。キャリアの抵抗率は、好ましくは108Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上である。キャリアの抵抗率は、キャリアを0.50cm2の断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子におもりによって1kg/cm2の荷重を掛け、おもりと底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読取ることから得られる値である。キャリアの抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアに電荷が注入され、感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10emu/g以上、60emu/g以下、さらに好ましくは15emu/g以上、40emu/g以下である。磁化強さは現像ローラの磁束密度にもよるけれども、現像ローラの一般的な磁束密度の条件下においては、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また磁化強さが60emu/gを超えると、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎる非接触現像では、像担持体と非接触状態を保つことが困難になる。また接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。
2成分現像剤におけるトナーとキャリアとの使用割合は特に制限されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できるけれども、樹脂被覆キャリア(密度5〜8g/cm2)を例にとれば、現像剤中に、トナーが現像剤全量の2重量%以上30重量%以下、好ましくは2重量%以上20重量%以下含まれるように、トナーを用いればよい。また2成分現像剤において、トナーによるキャリアの被覆率は、40〜80%であることが好ましい。
図2は、本発明の実施の一形態である画像形成装置1の構成を模式的に示す概略図である。画像形成装置1は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録材にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置1は、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびFAXモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、後述する制御部によって、印刷モードが選択される。
画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、転写手段3と、定着手段4と、記録材供給手段5と、排出手段6とを含む。トナー像形成手段2を構成する各部材および転写手段3に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
トナー像形成手段2は、感光体ドラム11と、帯電手段12と、露光ユニット13と、現像手段14と、クリーニングユニット15とを含む。帯電手段12、現像手段14およびクリーニングユニット15は、感光体ドラム11まわりに、この順序で配置される。帯電手段12は、現像手段14およびクリーニングユニット15よりも鉛直方向下方に配置される。帯電手段12および露光ユニット13は、潜像形成手段に相当する。
像担持体である感光体ドラム11は、図示しない駆動手段によって、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属およびこれらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルムまたは紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、ならびに導電性粒子および/または導電性ポリマーを含有する樹脂組成物などが挙げられる。導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けるのが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止する、低温および/または低湿環境下における感光層の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。また最上層に感光体表面保護層を設けた耐久性の大きい三層構造の積層感光体であってもよい。
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環および/またはフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対して好ましくは5重量部以上500重量部以下、さらに好ましくは10重量部以上200重量部以下である。
電荷発生層用の結着樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミドおよびポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することによって形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上2.5μm以下である。
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒ縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニルおよびベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送物質中の結着樹脂100重量部に対して10重量部以上300重量部以下、さらに好ましくは30重量部以上150重量部以下である。
電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、ならびに有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01重量%以上10重量%以下、好ましくは0.05重量%以上5重量%以下である。
電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することによって形成できる。このようにして得られる電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。
なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるけれども、それに代えて、シリコンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。
帯電手段12は、感光体ドラム11を臨み、感光体ドラム11の長手方向に沿って感光体ドラム11表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム11表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電手段12には、たとえば、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置などを使用できる。本実施の形態では、帯電手段12は感光体ドラム11表面から離隔するように設けられるけれども、それに限定されない。たとえば、帯電手段12として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラムとが圧接するように帯電ローラを配置してもよく、帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いてもよい。
露光ユニット13は、露光ユニット13から出射される各色情報の光が、帯電手段12と現像手段14との間を通過して感光体ドラム11の表面に照射されるように配置される。露光ユニット13は、画像情報を該ユニット内でブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色情報の光に分岐し、帯電手段12によって一様な電位に帯電された感光体ドラム11表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット13には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLEDアレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
クリーニングユニット15は、記録材にトナー像を転写した後に、感光体ドラム11の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化する。クリーニングユニット15には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。本発明の画像形成装置1において、感光体ドラム11として、主に有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電装置によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット15よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット15を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット15を設けなくてもよい。
トナー像形成手段2によれば、帯電手段12によって均一な帯電状態にある感光体ドラム11の表面に、露光ユニット13から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像手段14からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト25に転写した後に、感光体ドラム11表面に残留するトナーをクリーニングユニット15で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
転写手段3は、感光体ドラム11の上方に配置され、中間転写ベルト25と、駆動ローラ26と、従動ローラ27と、中間転写ローラ28と、転写ベルトクリーニングユニット29、転写ローラ30とを含む。
中間転写ベルト25は、駆動ローラ26と従動ローラ27とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向に回転駆動する。中間転写ベルト25が、感光体ドラム11に接しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に対向配置される中間転写ローラ28から、感光体ドラム11表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト25上へ転写される。フルカラー画像の場合、各感光体ドラム11で形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト25上に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。
駆動ローラ26は図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト25を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ27は駆動ローラ26の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト25が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト25に付与する。中間転写ローラ28は、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ28は、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム11表面のトナー像を中間転写ベルト25に転写する機能を有する。
転写ベルトクリーニングユニット29は、中間転写ベルト25を介して従動ローラ27に対向し、中間転写ベルト25の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト25に付着するトナーは、記録材の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット29が中間転写ベルト25表面のトナーを除去し回収する。
転写ローラ30は、中間転写ベルト25を介して駆動ローラ26に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ30と駆動ローラ26との圧接部、すなわち転写ニップ部において、中間転写ベルト25に担持されて搬送されるトナー像が、後述する記録材供給手段5から送給される記録材に転写される。トナー像を担持する記録材は、定着手段4に送給される。
転写手段3によれば、感光体ドラム11と中間転写ローラ28との圧接部において感光体ドラム11から中間転写ベルト25に転写されるトナー像が、中間転写ベルト25の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録材に転写される。
定着手段4は、転写手段3より記録材の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ31と加圧ローラ32とを含む。定着ローラ31は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録材に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録材に定着させる。定着ローラ31の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ31表面が所定の温度(加熱温度)になるように定着ローラ31を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着条件制御手段による加熱温度の制御については、後に詳述する。定着ローラ31表面近傍には温度検知センサが設けられ、定着ローラ31の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御手段の記憶部に書き込まれる。
加圧ローラ32は定着ローラ31に圧接するように設けられ、加圧ローラ32の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ32は、定着ローラ31によってトナーが溶融して記録材に定着する際に、トナーと記録材とを押圧することによって、トナー像の記録材への定着を補助する。定着ローラ31と加圧ローラ32との圧接部が定着ニップ部である。
定着手段4によれば、転写手段3においてトナー像が転写された記録材が、定着ローラ31と加圧ローラ32とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録材に押圧されることによって、トナー像が記録材に定着され、画像が形成される。
記録材供給手段5は、自動給紙トレイ35と、ピックアップローラ36と、搬送ローラ37と、レジストローラ38、手差給紙トレイ39を含む。自動給紙トレイ35は画像形成装置1の鉛直方向下部に設けられ、記録材を貯留する容器状部材である。記録材には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。ピックアップローラ36は、自動給紙トレイ35に貯留される記録材を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。搬送ローラ37は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録材をレジストローラ38に向けて搬送する。レジストローラ38は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、搬送ローラ37から送給される記録材を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。手差給紙トレイ39は、手動動作によって記録材を画像形成装置1内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ39から取り込まれる記録材は、搬送ローラ37によって用紙搬送路S2内を通過し、レジストローラ38に送給される。記録材供給手段5によれば、自動給紙トレイ35または手差給紙トレイ39から1枚ずつ供給される記録材を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
排出手段6は、搬送ローラ37と、排出ローラ40と、排出トレイ41とを含む。搬送ローラ37は、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段4によって画像が定着された記録材を排出ローラ40に向けて搬送する。排出ローラ40は、画像が定着された記録材を、画像形成装置1の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ41に排出する。排出トレイ41は、画像が定着された記録材を貯留する。
画像形成装置1は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、画像形成装置1の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、画像形成装置1の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置1内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録材判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。
外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビ、ビデオレコーダ、DVDレコーダ、HDDVD、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。
演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ、すなわち、画像形成命令、検知結果、画像情報など、および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(Central Processing Unit;CPU)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置内部における各装置にも電力を供給する。
図3は、図2に示す現像装置20を示す断面図である。現像手段14は、現像槽20とトナーホッパ21とを含む。現像槽20は感光体ドラム11表面を臨むように配置され、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する容器状部材である。現像槽20は、その内部空間にトナーを収容しかつ現像ローラ110、供給ローラ111、撹拌ローラ112などのローラ部材またはスクリュー部材を収容して回転自在に支持する。現像槽20の感光体ドラム11を臨む側面には開口部114が形成され、この開口部114を介して感光体ドラム11に対向する位置に現像ローラ110が回転駆動可能に設けられる。
現像ローラ110は、感光体ドラム11との圧接部または最近接部において感光体11表面の静電潜像にトナーを供給するローラ状部材である。トナーの供給に際しては、現像ローラ110表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下単に「現像バイアス」とする)として印加される。これによって、現像ローラ110表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御できる。
供給ローラ111は現像ローラ110を臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ110周辺にトナーを供給する。攪拌ローラ112は供給ローラ111を臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、トナーホッパ21から現像槽20内に新たに供給されるトナーを供給ローラ111周辺に送給する。
トナーホッパ21は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口113と、現像槽20の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口115とが連通するように設けられ、現像槽20のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。またトナーホッパ21を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成しても構わない。
このように、本発明の現像装置は、本発明の現像剤を用いて潜像を現像するので、像担持体に高精細で高解像度のトナー像を安定して形成することができる。したがって、高画質の画像を安定して形成することができる。また、本発明の画像形成装置は、潜像が形成される像担持体と、像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、高精細で高解像度のトナー像を形成可能な本発明の現像装置とを備えて画像形成装置が実現される。このような画像形成装置で画像を形成することによって、高精細で高解像度の画像を安定して形成することができる。
実施例および比較例におけるトナー粒子の体積平均粒子径(D50V)および微粉トナーの割合(体積%、個数%)、結着樹脂のガラス転移点(Tg)、結着樹脂の軟化温度(Tm)および離型剤の融点は、次のようにして測定した。
〔体積平均粒子径(D50V)および微粉トナーの割合(個数%)〕
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター株式会社製)50mLに、試料20mgおよび分散剤としてアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mLを加え、超音波分散器(商品名:UH−50、STM社製)によって超音波周波数20kHzで3分間分散処理を行い、測定用試料を調製した。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター株式会社製)を用い、アパーチャ径が100μm、測定粒子数が50000カウントの条件下に測定を行った。解析ソフトは、コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン1.19(ベックマン・コールター株式会社製)を用いた。得られた測定結果から、試料粒子の体積粒度分布および個数粒度分布を求め、体積粒度分布から、体積平均粒子径(D50V)を求めた。また、個数粒度分布から、微粉トナーの割合(個数%)を求めた。
〔結着樹脂のガラス転移点(Tg)〕
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度を結着樹脂のガラス転移点(Tg)として求めた。
〔結着樹脂の軟化温度(Tm)〕
結着樹脂の軟化温度は流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。流動特性評価装置(フローテスターCFT−100C)において、荷重10kgf/cm2(9.8×105Pa)与えて試料1gがダイ(ノズル、口径1mm、長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求め、結着樹脂の軟化温度とした。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、試料1gを温度20℃から昇温速度毎分10℃で200℃まで昇温させ、次いで200℃から20℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの頂点の温度を離型剤の融点として求めた。
〔離型剤の平均分散粒径〕
透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:略称TEM)を用いてトナー粒子の断面TEM写真を撮影し、得られた断面TEM写真からトナー粒子中に含まれる離型剤粒子50個の長軸の長さをそれぞれ求め、それらの平均値を算出し、これを離型剤の平均分散粒径(μm)とした。
(実施例1)
ポリエステル樹脂(結着樹脂、商品名:タフトン”TTR−5、花王株式会社製、ガラス転移点(Tg)60℃、軟化温度(Tm)100℃)83重量部、ポリエステル樹脂(商品名:FC1494、三菱レイヨン株式会社製)を用いたマスターバッチ(着色剤、C.I.Pigment Red57:1を40重量%含有)12重量部、カルナバワックス(離型剤、REFINEDCARNAUBAWAX、株式会社加藤洋行製、融点83℃)3重量部、アルキルサリチル酸金属塩(結着樹脂に対して相溶性の帯電制御剤、商品名:BONTRON E−84、オリエント化学株式会社製)2重量部を、ヘンシェルミキサによって10分間混合した後、二軸押出混練機(商品名:PCM65、株式会社池貝製)にて溶融混練した。
この溶融混練物をカッティングミル(商品名:VM−16、オリエント株式会社製)で粗粉砕した後、カウンタジェットミルで微粉砕し、ロータリー式分級機にて過粉砕トナーを分級除去し、体積平均粒子径6.05μmの分級品Aと体積平均粒子径5.10μmの分級微紛Bをそれぞれ作製した。分級品Aと分級微紛Bとを30部:70部(A:B)の割合で混合することで、離型剤含有率が3.0重量%、体積平均粒子径(D50V)が5.39μm、粒子径4μm未満のトナー粒子の割合が30個数%であるトナーを得た。このトナー100重量部に対して、シリカR974(商品名、日本アエロジル株式会社製、体積平均粒子径12nm)1重量部、酸化チタンMT−600B(商品名、テイカ社製、体積平均粒子径50nm)0.6重量部、シリカNAX−50(商品名、日本アエロジル株式会社製、体積平均粒子径30nm)0.4重量部をヘンシェルミキサで混合して、実施例1のトナーを得た。
(実施例2)
離型剤の配合量を変えた材料にて、体積平均粒子径6.05μmの分級品Aを作成し、この分級品Aのみを用いたこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が2.0重量%、体積平均粒子径が(D50V)が6.05μm、粒子径4μm未満のトナー粒子が27個数%である実施例2のトナーを得た。
(実施例3)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径7.10μmの分級品Aと体積平均粒子径6.35μmの分級微紛Bをそれぞれ作製し、分級品Aと分級微紛Bとを50部:50部の割合で混合したこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が5.0重量%、体積平均粒子径(D50V)が6.80μm、粒子径4μm未満のトナー粒子が25個数%である実施例3のトナーを得た。
(実施例4)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径5.18μmの分級品Aを作成し、この分級品Aのみを用いたこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が4.0重量%、体積平均粒子径が(D50V)が5.18μm、粒子径4μm未満のトナー粒子が35個数%である実施例4のトナーを得た。
(実施例5)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径6.05μmの分級品Aと体積平均粒子径5.00μmの分級微紛Bをそれぞれ作製し、分級品Aと分級微紛Bとを70部:30部の割合で混合したこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が3.0重量%、体積平均粒子径(D50V)が5.35μm、トナー粒子径4μm未満のトナー粒子が33個数%である実施例5のトナーを得た。
(実施例6)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径6.05μmの分級品Aと体積平均粒子径5.00μmの分級微紛Bをそれぞれ作製し、分級品Aと分級微紛Bとを70部:30部の割合で混合したこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が3.0重量%、体積平均粒子径(D50V)が5.35μm、トナー粒子径4μm未満のトナー粒子が34個数%である実施例6のトナーを得た。
(実施例7)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径6.05μmの分級品Aと体積平均粒子径5.00μmの分級微紛Bをそれぞれ作製し、分級品Aと分級微紛Bとを70部:30部の割合で混合したこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が3.0重量%、体積平均粒子径(D50V)が5.35μm、トナー粒子径4μm未満のトナー粒子が32個数%である実施例7のトナーを得た。
(実施例8)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径6.20μmの分級品Aと体積平均粒子径5.20μmの分級微紛Bをそれぞれ作製し、分級品Aと分級微紛Bとを50部:50部の割合で混合したこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が2.5重量%、体積平均粒子径(D50V)が6.00μm、トナー粒子径4μm未満のトナー粒子が28個数%である実施例8のトナーを得た。
(実施例9)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径5.80μmの分級品Aと体積平均粒子径5.10μmの分級微紛Bをそれぞれ作製し、分級品Aと分級微紛Bとを50部:50部の割合で混合したこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が3.0重量%、体積平均粒子径(D50V)が5.50μm、トナー粒子径4μm未満のトナー粒子が35個数%である実施例9のトナーを得た。
(実施例10)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径6.04μmの分級品Aと体積平均粒子径5.08μmの分級微紛Bをそれぞれ作製し、分級品Aと分級微紛Bとを30部:70部の割合で混合したこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が3.0重量%、体積平均粒子径(D50V)が5.40μm、トナー粒子径4μm以下のトナー粒子が30個数%である実施例10のトナーを得た。
(実施例11)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径6.03μmの分級品Aと体積平均粒子径5.13μmの分級微紛Bをそれぞれ作製し、分級品Aと分級微紛Bとを30部:70部の割合で混合したこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が3.0重量%、体積平均粒子径(D50V)が5.39μm、トナー粒子径4μm未満のトナー粒子が31個数%である実施例11のトナーを得た。
(実施例12)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径6.02μmの分級品Aと体積平均粒子径5.11μmの分級微紛Bをそれぞれ作製し、分級品Aと分級微紛Bとを30部:70部の割合で混合したこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が3.0重量%、体積平均粒子径(D50V)が5.42μm、トナー粒子径4μm未満のトナー粒子が29個数%である実施例12のトナーを得た。
(実施例13)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径6.05μmの分級品Aと体積平均粒子径5.21μmの分級微紛Bをそれぞれ作製し、分級品Aと分級微紛Bとを30部:70部の割合で混合したこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が2.8重量%、体積平均粒子径(D50V)が5.83μm、トナー粒子径4μm未満のトナー粒子が32個数%である実施例13のトナーを得た。
(比較例1)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径8.20μmの分級品Aと体積平均粒子径7.12μmの分級微紛Bをそれぞれ作製し、分級品Aと分級微紛Bとを50部:50部の割合で混合したこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が3.0重量%、体積平均粒子径(D50V)が7.49μm、トナー粒子径4μm未満のトナー粒子が25個数%である比較例1のトナーを得た。
(比較例2)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径4.50μmの分級品Aを作製し、この分級品Aのみを用いたこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が3.0重量%、体積平均粒子径(D50V)が4.50μm、トナー粒子径4μm未満のトナー粒子が48個数%である比較例2のトナーを得た。
(比較例3)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径6.05μmの分級品Aを作製し、この分級品Aのみを用いたこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が3.0重量%、体積平均粒子径(D50V)が6.05μm、トナー粒子径4μm未満のトナー粒子が21個数%である比較例3のトナーを得た。
(比較例4)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径6.15μmの分級品Aを作製し、この分級品Aのみを用いたこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が1.5重量%、体積平均粒子径(D50V)が6.15μm、トナー粒子径4μm未満のトナー粒子が29個数%である比較例4のトナーを得た。
(比較例5)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径6.00μmの分級品Aを作製し、この分級品Aのみを用いたこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が5.5重量%、体積平均粒子径(D50V)が6.00μm、トナー粒子径4μm未満のトナー粒子が30個数%である比較例5のトナーを得た。
(比較例6)
体積平均粒子径5.70μmの分級品Aと体積平均粒子径5.10μmの分級微紛Bをそれぞれ作製し、分級品Aと分級微紛Bとを30部:70部の割合で混合したこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が3.0重量%、体積平均粒子径(D50V)が5.50μm、トナー粒子径4μm未満のトナー粒子が37個数%である比較例6のトナーを得た。
(比較例7)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径6.25μmの分級品Aを作製し、分級品Aのみを用いたこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が5.5重量%、体積平均粒子径(D50V)が6.25μm、トナー粒子径4μm未満のトナー粒子が30個数%である比較例7のトナーを得た。
(比較例8)
離型剤の配合量を変えた材料にて体積平均粒子径6.00μmの分級品Aを作製し、分級品Aのみを用いたこと以外は実施例1と同様にして、離型剤含有率が10.0重量%、体積平均粒子径(D50V)が6.00μm、トナー粒子径4μm未満のトナー粒子が14個数%である比較例8のトナーを得た。
実施例1〜13および比較例1〜8のトナーの物性を表1に示す。
実施例1〜13および比較例1〜8のトナーをそれぞれ用い、キャリアとして体積平均粒子径45μmのフェライトコアキャリアを用いて、キャリアに対する実施例1〜13および比較例1〜8のトナーの被覆率が60%となるようにV型混合機(商品名:V−5、株式会社特寿工作所製)にて20分間混合して、2成分現像剤を作製した。
実施例1〜13および比較例1〜8のトナーをそれぞれ含む2成分現像剤を用いて、低温オフセット、高温オフセット、かぶり、フィルミング、解像性、保存安定性、転写性およびクリーニング性を下記の方法によって評価した。以下の評価には、特に言及しない限り、市販の複写機(商品名:MX−2300G、シャープ株式会社製)を用いた。
〔低温オフセット〕
紙面上にトナー付着量0.8mg/cm2のベタの未定着画像を形成する。外部定着器の定着ローラ温度をモニタしながら定着ローラと加圧ローラとの間に未定着画像を形成した紙を通す。オフセットが発生しない非オフセット温度から5℃刻みで定着ローラ温度を下げていき、初めてオフセットが発生する温度を低温オフセット発生温度とする。評価基準は次のとおりである。
◎:非常に良好。低温オフセット発生温度が165℃未満である。
○:良好。低温オフセット発生温度が165℃以上170℃未満である。
△:実使用上問題なし。低温オフセット発生温度が170℃以上175℃未満である。
×:実使用不可。低温オフセット発生温度が175℃以上である。
〔高温オフセット〕
紙面上にトナー付着量0.4mg/cm2のベタの未定着画像を形成する。外部定着器の定着ローラ温度をモニタしながら定着ローラと加圧ローラとの間に未定着画像を形成した紙を通す。非オフセット温度から5℃刻みで定着ローラ温度を上げていき、初めてオフセットが発生する温度を高温オフセット発生温度とする。評価基準は次のとおりである。
◎:非常に良好。高温オフセット発生温度が215℃以上である。
○:良好。高温オフセット発生温度が200℃以上215℃未満である。
△:実使用上問題なし。高温オフセット発生温度が190℃以上200℃未満である。
×:実使用不可。高温オフセット発生温度が190℃未満である。
〔解像性〕
上記複写機によって画像濃度が0.3であり、直径が5mmであるハーフトーン画像を、画像濃度0.3以上0.5以下で複写できる条件において、線幅が正確に100μmである細線のオリジナル画像が形成される原稿を複写し、得られたコピー画像を測定用サンプルとした。この測定サンプルを、粒子アナライザ(商品名:ルーゼックス450、株式会社ニレコ製)を用いて100倍に拡大したモニタ画像から、インジケータによって測定サンプルに形成される細線の線幅を測定した。画像濃度は、反射濃度計(商品名:RD−918、マクベス社製)によって測定された光学反射濃度である。細線には凹凸があり、線幅は測定位置によって異なるので、複数の測定位置において線幅を測定して平均値をとり、この線幅の平均値を測定用サンプルの線幅とした。測定用サンプルの線幅を、原稿の線幅である100μmで除し、得られた値を100倍したものを細線再現性の値として得た。この細線再現性の値が100に近いほど、細線の再現性がよく、解像性に優れることを示す。評価基準は次のとおりである。
◎:非常に良好。細線再現性の値が100以上105未満である。
○:良好。細線再現性の値が105以上115未満である。
△:実使用上問題なし。細線再現性の値が115以上125未満である。
×:実使用不可。細線再現性の値が125以上である。
〔保存安定性〕
本実施形態において、保存安定性は、温度50℃、相対湿度50%で放置する前と放置した後でのトナーの嵩密度の変化の大小で表わされる。たとえば、保存安定性が悪いトナーは、放置することでトナー同士が融着および凝集を起こし、流動性が悪くなる。流動性が悪くなると、トナーがブロッキングし、トナー粒子がトナー粒子間に流れ込みにくくなることによって嵩密度は低くなる。トナーの嵩密度は、以下の方法によって測定される。
トナー30gを50ccのポリ瓶に容れ、温度50℃、相対湿度50%の常温常湿環境下において48時間放置する。放置する前の嵩密度および48時間放置後の嵩密度をJIS(K5101−12−2)に記載の方法によってそれぞれ測定する。具体的には、見かけ密度測定器を水平に調節して漏斗台に漏斗を取り付け、漏斗上に目開き0.5mmのふるいを載せ、受器台に受器を置く。トナーをふるいの上に載せ、刷毛でふるいの全面を均等に軽く掃きふるいを通ったトナーを受器で受ける。トナーが受器に山盛りとなるまで繰り返す。受器に山盛りとなったトナーの山の部分を、へらで受器の高さに水平に削り取り、受器に入ったトナーの重量を、受器の既知の体積で除して嵩密度を測定する。放置前および放置後に測定した嵩密度から下記式(3)で求められる値を嵩密度減衰率とし、保存安定性を評価した。
[1−(放置後の嵩密度)/(放置前の嵩密度)]×100 …(3)
評価基準は次のとおりである。
◎:非常に良好。嵩密度減衰率が3%未満である。
○:良好。嵩密度減衰率が3%以上5%未満である。
△:実使用上問題なし。嵩密度減衰率が5%以上7%未満である。
×:実使用不可。嵩密度減衰率が7%以上である。
〔転写性〕
温度25℃、相対湿度50%の常温常湿環境中で感光体上に付着量0.5mg/cm2の3cm×3cmの単色パッチを形成する。感光体から紙または中間転写体などの転写媒体に転写させた後、転写媒体上の付着量(mg/cm2)を測定し、
(転写媒体上の付着量[mg/cm2])/0.5[mg/cm2]・・・(4)
を計算する。上記のパッチを500枚印字し、50枚目、100枚目、150枚目、200枚目、250枚目、300枚目、350枚目、400枚目、450枚目、500枚目の時点でそれぞれ式(4)の値を測定し、これらの平均値を転写率とする。評価基準は次のとおりである。この転写率が高いほど転写性が良い。
◎:非常に良好。転写率が95%以上100%以下である。
○:良好。転写率が90%以上95%未満である。
△:実使用上問題なし。転写率が85%以上90%未満。
×:実使用不可。転写率が85%未満である。
〔かぶり〕
市販複写機(商品名:MX−2300G、シャープ株式会社製)に備わるクリーニングユニットのクリーニングブレードが感光体ドラムに当接する圧力であるクリーニングブレード圧を、初期線圧で25gf/cm(2.45×10-1N/cm)となるように調整した。この複写機に実施例1〜13および比較例1〜8のトナーをそれぞれ含む2成分現像剤を充填し、温度25℃、相対湿度50%の常温常湿環境下で印字率5%の文字テストチャートを記録紙10万枚に画像形成した。画像形成前(初期)、5,000枚印字後、10,000枚印字後および100,000枚印字後の各段階において、形成された画像のかぶり量Wkを求めた。
形成画像のかぶり量Wkは、日本電色工業株式会社製Z−Σ90 COLORMEASURINGSYSTEMを用いて反射濃度を測定し、次のようにして求めた。まず画像形成前の記録紙の反射平均濃度Wrを測定した。次に上記複写機によって、記録紙の縦方向の中央かつ記録紙の紙送り方向に向かって横方向左側、記録紙の縦方向中央かつ記録紙の紙送り方向に向かって横方向中央、記録紙の縦方向中央かつ記録紙の紙送り方向に向かって横方向右側の3箇所それぞれに直径3cmの円が記載された画像を形成した。このとき、記録紙の紙送り方向を縦方向とし、縦方向に対して直交する方向を横方向する。画像形成後、3箇所の円内の白地部分において、1箇所の円につき3点ずつ、合計9点の反射濃度を測定した。記録紙一枚あたり合計9点の反射濃度の平均値を各段階の反射濃度Wsと定義し、反射濃度Wsと、前記反射平均濃度Wrとから、下記式(5)で求められる値をかぶり量Wk(%)と定義した。
Wk(%)=100×{(Ws−Wr)/Wr} …(5)
各段階において求められたかぶり量Wkのうち、もっともかぶりの多かった段階のかぶり量Wkの値を用い、かぶりの評価を行った。
評価基準は次のとおりである。
◎:非常に良好。かぶり量Wkが3%未満である。
○:良好。かぶり量Wkが3%以上5%未満である。
△:実使用上問題なし。かぶり量Wkが5%以上10%未満である。
×:実使用不可。かぶり量Wkが10%以上である。
〔フィルミング〕
市販複写機(商品名:MX−2300G、シャープ株式会社製)に備わるクリーニングユニットのクリーニングブレードが感光体ドラムに当接する圧力であるクリーニングブレード圧を、初期線圧で25gf/cm(2.45×10−1N/cm)となるように調整した。この複写機に実施例1〜13および比較例1〜8のトナーをそれぞれ含む二成分現像剤を充填し、温度25℃、相対湿度50%の常温常湿環境中で印字率5%の文字テストチャートを記録紙10万枚に印字した。10万枚印字後の感光体ドラム表面の状態を光学顕微鏡で観察することによってフィルミングの発生の確認を行うとともに、記録紙に印字された画像において画像欠陥の有無を目視で確認した。評価基準は次のとおりである。
◎:非常に良好。感光体ドラムのフィルミングおよび画像欠陥の両方が確認されない。
○:良好。フィルミングは存在するが、画像欠陥は確認されない。
△:実使用上問題なし。フィルミングおよび画像欠陥が存在するが、実使用上問題ない程度である。
×:実使用不可。フィルミングおよび画像欠陥が存在し、さらに感光体ドラム表面に傷が発生する。
〔クリーニング性〕
市販複写機(商品名:MX−2300G、シャープ株式会社製)に備わるクリーニングユニットのクリーニングブレードが感光体ドラムに当接する圧力であるクリーニングブレード圧を、初期線圧で25gf/cm(2.45×10-1N/cm)となるように調整した。この複写機に実施例1〜13および比較例1〜8のトナーをそれぞれ含む2成分現像剤を充填し、温度25℃、相対湿度50%の常温常湿環境下で印字率5%の文字テストチャートを記録紙10万枚に画像形成し、クリーニング性の確認を行った。
クリーニング性は、画像形成前(初期)、5,000枚印字後、10,000枚印字後および100,000枚印字後の各段階において、形成された画像を目視で確認することによって、画像部と非画像部との境界部の鮮明度および感光体ドラムの回転方向へのトナー漏れによって形成される黒すじの有無、および前記かぶり量Wkによってクリーニング性を評価した。評価基準は次のとおりである。
◎:非常に良好。鮮明度が良く、黒すじなし。またかぶり量Wkが3%未満である。
○:良好。鮮明度が良く、黒すじなし。またかぶり量Wkが3%以上5%未満である。
△:実使用上問題なし。鮮明度が実使用上問題のないレベルであり、黒すじの長さが2.0mm以下かつ5個以下である。またかぶり量Wkが5%以上10%未満である。
×:実使用不可。鮮明度が実使用上問題あり、黒すじの長さが2.0mmを超えるか、または黒すじが6個以上の少なくともいずれかである、またはかぶり量Wkが10%以上である。
〔総合評価〕
以上の評価結果に基づいて、総合評価を行った。
総合評価の評価基準は次の通りである。
◎:非常に良好。低温オフセット発生温度、高温オフセット発生温度、かぶり、解像性、保存安定性、転写性、クリーニング性の評価結果に△および×がない。
○:良好。低温オフセット発生温度、高温オフセット発生温度、かぶり、解像性、保存安定性、転写性、クリーニング性の評価結果に×がなく、△が1個以下である。
△:実使用上問題なし。低温オフセット発生温度、高温オフセット発生温度、かぶり、解像性、保存安定性、転写性、クリーニング性の評価結果に×がなく、△が2個以上である。
×:不良。低温オフセット発生温度、高温オフセット発生温度、かぶり、解像性、保存安定性、転写性、クリーニング性の評価結果に×がある。
実施例1〜13および比較例1〜8のトナーの評価結果および総合評価結果を表2に示す。
以上のことから、本発明のトナーは、高温オフセットの発生温度を高くする効果を有することが判る。これは、粒子径が4μm未満であるトナー粒子の割合が25個数%以上35個数%以下であることによる作用であると考えられる。
図4は、定着時におけるトナーの状態を模式的に示す図である。図4(a)、(c)は本発明のトナーの状態を示し、図4(b)、(d)は従来技術のトナーの状態を示す。図4(a)に示すように、トナー粒子の体積平均粒子径が5μm以上7μm以下であり、全トナー粒子のうち、粒子径が4μm未満であるトナー粒子120を25個数%以上35個数%以下含む、本発明のトナーから成るトナー層121は、図4(b)に示す比較的大きな粒子、たとえば粒子径が7μmのトナー粒子122のみからなるトナー層123と比べて見かけ密度が小さく、空隙を多く含む。したがって、本発明のトナーから成るトナー層は、トナー層に空気を含んだ状態で定着器を通過し、その際にトナー層内の空気が断熱層として働くことによって高温オフセットの発生が抑制される。
図5は、粒子の凝集体における粒子間の空間率と粒子径との関係を示すグラフである。図5によれば、粒子径が小さくなるほど、空間率、すなわち粒子間の隙間の割合が増加していることがわかる。これは、粒子が小さいほど粒子間の凝集力が大きくなり、粒子間の流動性が悪くなるためである。したがって、前述のように粒子径が4μm未満のトナー粒子を含ませることによって、トナー層に空気を含ませ、高温オフセットの発生を抑制することができる。
低温オフセット発生温度に関しても、粒子径が4μm未満であるトナー粒子が有利に働くことが判った。図4(d)に示すように、比較的大きな粒子、たとえば粒子径が7μmのトナー粒子は、記録材124、たとえば紙の表面の凹凸に対して入り込むことができず、紙面の凹凸が空気の断熱層を形成してしまうので、定着ローラからの熱伝導を妨げてしまう。しかし、粒子径が4μm未満であるトナー粒子は紙面の凹凸に入り込み、確実に定着ローラからの熱を紙に伝えることができる。したがって、粒子径が4μm未満のトナー粒子を含ませることによって、低温オフセットの発生を抑制することができる。ただし、粒子径が4μm未満のトナー粒子が多すぎると、空間率が高くなりすぎるので、低温オフセットの発生温度は高くなる。
したがって、低温オフセットおよび高温オフセットの発生温度に影響を与える、粒子径が4μm未満であるトナー粒子の含有量のバランスをとることが重要である。表2に示す結果から、本発明のように、粒子径が4μm未満のトナー粒子の割合を25個数%以上35個数%以下とすることによって、非オフセット領域の広いトナーを実現することができることがわかる。
また、比較例8は、特許文献1に開示のトナーであるが、本発明のトナーの方が良い結果になっていることがわかる。
このような本発明のトナーは、カートリッジ内において、保存安定性が良好であるので、長期にわたって良好な流動性を保ち、それによって画像形成装置内部におけるトナー飛散、かぶりおよびフィルミングがほとんど発生することがない。また、非オフセット領域が広く、クリーニング性も良好である。したがって、高画質な画像を形成することができ、画像形成装置の信頼性が向上する。