JP3766553B2 - 高温酸素高炉インジェクションシステム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は一般に高炉の運転に関し、詳しくは、噴射空気流れに酸素が添加される高炉の運転に関する。
【0002】
【従来の技術】
高炉は、製鋼のための高純度鉄の主要な供給源である。高純度鉄は、鋼から化学的に除去するのが難しい銅のような有害成分の水準が最小であるべき、最高品質の鋼を製造するために必要である。高炉はまた、フェロマンガンや鉛のようなその他の金属を製造するためにも使用される。
製司コークスは伝統的な一次燃料であり、また、高炉プロセスで消費される還元ガスのための供給源でもある。コークス、フラックスそして鉄鉱石のような鉱石は炉上位置で層状に充填され、炉底には高温の空気が噴入される。この空気はコークスと反応してプロセスのための熱を発生して還元ガスを生じ、この還元ガスがコークス、フラックス及び鉱石を前加熱し、炉を通して流動する鉄鉱石を鉄に変える。ガスは炉上から排出されその一部が、噴入する空気を前加熱するための燃料として使用される。
【0003】
製司コークスは空気の存在しない状態下に石炭を加熱し、石炭の高揮発性成分を放逐させることにより形成する。これらの揮発性成分の多くは環境上及び健康上危険なものであるために、近年ではコークス製造に対する規制が強化されてきている。そうした規制に合わせるためのコストがコークス製造の運転コストを上昇させ、コークス製造のための新規の設備のための要求資本を増大させている。その結果、コークスの供給量は次第に減少し値段は上昇している。こうした要因から、高炉のオペレータはコークス使用量を減少させると共に、炉に噴入される高温空気の供給源にコークスに代わる化石燃料を大量に注入せざるを得なくなっている。注入される化石燃料として最も一般的なものは微粉炭、粒状炭、天然ガスである。微粉炭及び粒状炭は経済的理由から好ましいものである。
【0004】
コークスは、炉を上昇する還元ガスにより前加熱される。対照的に、代替化石燃料は周囲温度下に注入される。従って、そうした代替燃料を噴射空気供給源に添加すると、コークスのみを燃料として使用した場合には生じない熱的負荷が加えられる。高炉のオペレータは、噴射空気中に酸素を添加することでこの問題を解決し、そうすることにによる幾つかの利益も提供された。しかしながら、酸素を添加する場合でさえも、化石燃料の注入水準が高くなると、注入した化石燃料の燃焼が弱くあるいは不完全となることに関連する高炉運転上の問題により、高炉を運転することができない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
噴射空気を燃料及び酸素と共に提供し、次いで高炉に送り込むことにより、高炉の運転を改良させ得る方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に従えば、
噴射流れを高炉内に提供するための方法であって、
(a)噴射空気速度及び噴射空気温度を有する噴射空気流れを確立すること、
(b)噴射空気速度の少なくとも1.5倍の速度を有し、噴射空気温度を超え且つ1200乃至1650℃の範囲内である温度を有し、“酸素”が、酸素濃度が少なくとも50モル%である流体を意味するところの酸素のジェットを噴射空気流れに注入すること、
(c)該噴射空気流れ中に燃料を送り込むこと、
(d)噴射空気流れ内で燃料を酸素と共に燃焼させて高温の噴射流れを創出すること、
(e)高温の噴射流れを高炉内に送り込むこと、
を含み、
前記酸素のジェットを、前記注入される燃料と交差するように噴射空気流れ中に注入することを更に含む噴射流れを高炉内に提供するための方法が提供される。
ここで、“酸素”とは、酸素濃度が少なくとも50モル%である流体を意味し、“高炉”とは、るつぼ状の炉床を覆って竪型煙突を重ねた背高のシャフトタイプの炉を意味する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、噴射空気流れの内部に高温且つ高酸素濃度の帯域を創出することにより、燃料の点火及び燃焼条件が改善される。以下に本発明を図面を参照して詳しく説明する。
図1を参照するに、周囲空気1がヒータ2を通過するに際して加熱され、ヒータ2から、一般に毎秒125乃至275メートル(mps)の範囲内の速度と、870乃至1320℃の範囲内の温度とを有する噴射空気流れ3として送り出される。噴射空気流れは、高炉の側壁内の羽口と連通する噴射パイプ内を通して移動する。
【0008】
燃料4が、噴出パイプあるいは羽口の何れかの内部の噴射空気流れに添加される。燃料は、酸素と燃焼する任意の有効な燃料とすることができる。そうした燃料には、微粉炭、粒状炭あるいは粉炭のような石炭や天然ガスそしてコークス炉ガスがある。好ましい燃料は微粉炭、粒状炭あるいは粉炭である。
【0009】
酸素ジェット5が、噴射パイプあるいは羽口の何れかの内部の噴射空気流れに注入される。酸素ジェットは酸素濃度が少なくとも50モル%あるいはそれ以上であり得、速度は一般に350乃至850mpsの範囲内であり、少なくとも音速の半分であり、噴射空気速度の少なくとも1.5倍であるのが好ましい。音速は、例えば1370℃では約780mpsであり、1650℃では850mpsである。酸素ジェットの温度は噴射空気流れ3のそれよりも高く、一般に1200乃至1650℃の範囲内である。本発明の定義する高温の酸素ジェットを確立するための任意の好適な手段を使用することができる。本発明の定義する高温の酸素ジェットを発生させるために特に好ましい方法は米国特許第5,266,024号に記載される。
【0010】
図2には噴射空気流れ中に燃料及び高温の酸素を提供するための1実施例の詳細が示される。この図2を参照するに、噴射空気流れ3は高炉の側壁内の羽口と連通する噴射パイプ内を流動する。実際は高炉の周囲には複数の羽口が設けられ、本発明を実施することにより発生した噴射空気流れがそうした羽口の1つ以上を通して高炉に送り込まれる。燃料、例えば微粉炭、粉炭あるいは粒状炭が燃料ランス8を通して噴射パイプ6内の噴射空気流れ3中に提供され、高温酸素ランス9を通して噴射パイプ6内の噴射空気流れ3中に高温の酸素が提供される。
【0011】
高速の、かくして高運動量の高温の酸素ジェットが、燃料をこの酸素ジェット中に混合あるいは連行する強い混合作用を創出する。更には、酸素ジェットが高温であることにより、燃料が揮発性成分を含んでいる場合にはそれらの揮発性成分を急速に揮発させる。酸素ジェットが高温であることにより、燃料の燃焼を開始させるための何らの追加的混合も不要である。それとは逆に、酸素ジェットが周囲温度あるいは周囲温度に近い温度で注入される場合には、燃料を着火させるための十分な熱を提供するための噴射空気との混合が必要となる。酸素ジェットをそのように噴射空気流れと混合させと酸素ジェット内の酸素濃度は低下する。酸素濃度の低下は着火及び燃焼にとって有害である。斯くして、本発明においては注入される高温の酸素ジェットが、高酸素濃度部分で着火が生じ得る条件を創出することにより燃焼を増長させるために有効に使用される。本発明の方法は、化石燃料の注入速度上の制限事項をもたらすところの、注入される燃料の燃焼が弱くなるあるいは不完全となることに関する従来からの高炉運転上の問題を解決する。
【0012】
高温酸素ランスは噴射パイプの壁を燃料ランスの角度と等しいあるいは類似の角度でもって貫き、この高温酸素ランスの先端部が、酸素ジェットと、注入される燃料とが、燃料ランスの先端部と実用的な近さで交差するように位置決めされる。これら2つのランスの先端どうしの距離は、酸素ジェットの初期の直径を確定するところの、高温酸素ジェットの出口ノズルの直径の約5乃至50倍とすることができる。この距離を近づけるほど混合のために伝達される運動量は大きくなるが、燃料ランスが加熱する恐れが出てくる。前記距離が大きすぎると希釈度が過剰となり、高温の酸素ジェットの流れは噴射空気によって冷却されてしまう。しかしながら、前述の距離の範囲内であれば高温酸素ランスの先端部を噴射パイプの壁と面一状態として酸素ジェットを噴射空気から保護し、またランス寿命を延ばすようにすることもできる。高温酸素のジェットは高速且つ高運動量であることから、噴射空気流れを横断方向に貫き、注入された燃料と混合することができる。
【0013】
燃料と高温の酸素とが噴射空気流れの中で燃焼することにより、高温の噴射流れ10が形成される。図1を参照するに、この高温の噴射流れ10は高炉11内に送られ、高炉内に熱と還元ガスとを発生させるために使用される。廃棄ガスは高炉11からの廃棄流れ12の中に排出される。
以下の例は本発明を更に説明するためのものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
図3及び図4には、パイロット規模での噴射パイプにおいて検討した4つのケース、即ち、(1)噴射空気流れに酸素を提供しなかった場合である“ベース”ケースと、(2)噴射空気ヒータの上流側に周囲温度酸素を提供した“富化”ケースと、(3)酸素を図2に示すと類似の態様で、しかし周囲温度で噴射空気流れに提供した“低温注入”ケースと、(4)図2に示すと類似の態様で本発明の方法を用いた“高温注入”ケースと、における完全燃焼率と、揮発性成分放出率(VM)と、固定炭素燃焼率(FC)とをグラフ化したものである。何れの場合でも噴射空気流れの噴射空気速度は160mpsであり、温度は900℃であった。燃料は高揮発性を有する微粉炭であった。この微粉炭は表1に示すような分析成分を有し、商業的な高炉運転に際して使用される代表的な種類のものであった。燃料は2つの流量、即ち、図3に示す結果を伴うところの、毎時7.5キログラム(kg/hr)と、図4に示す結果を伴うところの、毎時9.5キログラム(kg/hr)とにおいて噴射空気流れ中に提供された。
【0015】
【表1】
Figure 0003766553
【0016】
石炭注入ポイントの0.75メートル下流側で水により急冷させることによりチャコールを収集した。石炭の完全燃焼の画分“T”は、本来の石炭の灰分含有量“A0”と、収集されたチャコールの灰分含有量“A1”とを式、
T=(A1−A0)/A1(1−A0)に従って化学的に分析することにより決定した。
【0017】
揮発性成分の放出率Rと、固定炭素の燃焼率Cとは、石炭中の灰分、揮発性物質(V0)及び固定炭素(F0)と、チャコール中の灰分、揮発性物質(V1)及び固定炭素(F1)とを、式:R=1-V10/V01及び式C=1-F10/F01に従い分析することにより決定された。
【0018】
酸素を使用する各ケースでは3.7Nm3/hrの空気流れを酸素で代替した。富化ケースでは、空気と酸素とを周囲温度下に混合し、この混合物を900℃に加熱して、ガスの合計流量と速度及び温度とがベースケースの場合と同じになるようにした。室温注入ケースでは、900℃での噴射のために93.7Nm3/hrの空気を使用し、3.7Nm3/hrの酸素を酸素ランスを通して注入した。ガスの合計流量はベースケースのそれと同じであり、一方、ガス温度は、添加される酸素が加熱されないことからベースケースの場合よりも低かった。
【0019】
周囲温度の酸素のノズル速度は約60mps、即ち、噴射空気流れの速度の0.375倍であった。低温注入ケースで使用した酸素は純度が約99.99%であった。高温注入ケースでの条件は、酸素が米国特許第5,266,024号に記載される方法を使用して発生され、高温酸素ランスから噴射空気流れ中に送り込まれることにより、速度が約375mps、即ち、噴射空気流れの速度の2.34倍であり、温度が1565℃である高温酸素を提供する点を除き、低温注入ケースのそれと同じであった。
【0020】
図3及び4には、石炭注入量が毎時7.5k及び9.5kgである夫々のケースについての完全燃焼率、揮発性成分放出率、固定炭素燃焼率の比較が示されている。これらの図からわかるように、高温酸素を使用した場合は各カテゴリーでのパフォーマンスが一貫して高いことが示される。実際、石炭注入量を毎時9.5kgとした時の、高温酸素を伴う場合の完全燃焼率は、石炭注入量が毎時7.5kgの時のその他の何れの場合よりも高く、高温酸素を使用する場合に石炭が高い流量で成功裡に注入され得ることが示された。
【0021】
噴射パイプ及び羽口内で燃焼しなかったチャコールは炉に入り、コークスと共に燃焼する。チャコールは十分な反応性を有していない場合には炉上に上昇して鉱物/コークス床を詰まらせ得る。収集されたチャコールを使用して、炉条件下でのその反応性を見るための追加的な試験を実施した。チャコールサンプルが、熱重量分析装置内で、2%酸素及び5%酸素を含有し、残余分が10%の二酸化炭素を含有する窒素である雰囲気中で1700℃の温度下に反応された。
【0022】
チャコールの重量損失率から反応性が測定された。図5には各ケースで収集されたチャコールのための結果と、高炉の羽口での試験において収集されたコークスサンプルのための結果とが示される。全チャコールサンプルは羽口で収集されたコークスサンプルよりも反応性が強く、コークスよりも先に燃焼し、従って炉上に漏出して鉱物/コークス床を詰まらせる原因とはならないことが示された。高温酸素を使用することに伴い発生するチャコールは反応性が最も強く、高温酸素を使用する本発明をして、高炉運転に際しての酸素を使用する従来方法に勝る更なる利益を提供するものである。
以上、本発明を実施例を参照して説明したが、本発明の内で種々の変更をなし得ることを理解されたい。
【0023】
【発明の効果】
化石燃料の注入速度上の制限事項をもたらすところの、注入される燃料の燃焼が弱くなるあるいは不完全となることに関する従来からの高炉運転上の問題が解決され、また、反応性の強いチャコールを発生させることが可能な、高炉の運転を改良させることのできる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の方法を実施し得るシステムの簡略化した概略図である。
【図2】図2は燃料及び酸素を高炉の上流側で噴射空気流れに提供するための好ましいシステムの詳細断面図である。
【図3】図3は本発明の方法を実施して得られる結果を、従来プラクティスを使用して得られる結果と比較する目的のためのグラフである。
【図4】図4は本発明の方法を実施して得られる結果を、従来プラクティスを使用して得られる結果と比較する目的のための別のグラフである。
【図5】図5は本発明の方法を実施して得られる結果を、従来プラクティスを使用して得られる結果と比較する目的のための更に別のグラフである。
【符号の説明】
3 噴射空気流れ
4 燃料
5 酸素ジェット
6 噴射パイプ
8 燃料ランス
9 高温酸素ランス
10 高温の噴射流れ
11 高炉
12 廃棄流れ

Claims (4)

  1. 噴射流れを高炉内に提供するための方法であって、
    (a)噴射空気速度及び噴射空気温度を有する噴射空気流れを確立すること、
    (b)噴射空気速度の少なくとも1.5倍の速度を有し、噴射空気温度を超え且つ1200乃至1650℃の範囲内である温度を有し、“酸素”が、酸素濃度が少なくとも50モル%である流体を意味するところの酸素のジェットを噴射空気流れに注入すること、
    (c)該噴射空気流れ中に燃料を注入すること、
    (d)噴射空気流れの内部で燃料と酸素とを燃焼させ、高温の噴射流れを創出すること、
    (e)該高温の噴射流れを高炉内に送り込むこと、
    含み、
    前記酸素のジェットを、前記注入される燃料と交差するように噴射空気流れ中に注入することを更に含む噴射流れを高炉内に提供するための方法。
  2. 燃料が石炭を含んでいる請求項1の方法。
  3. 噴射空気流れに注入される酸素の速度が音速の少なくとも半分である請求項1の方法。
  4. 酸素のジェットが、噴射空気流れに注入される際に初期直径を有し、酸素のジェットが、燃料を噴射空気流れに送り込む位置から前記初期直径の5乃至50倍の範囲内の距離の位置において前記噴射空気流れに注入される請求項1〜3の何れかの方法。
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