JP3764867B2 - ミシンの押え上げ装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、押え金の近傍に先引きローラを配置したミシンに関し、特に、押え金と先引きローラとを押え上げ操作具で針板より離間させるようにしたミシンの押え上げ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のミシンに関する押え上げ装置としては、特開平8−38761号公報に開示されているように、押え金の近傍に先引きローラが配置されている。図5は、この従来装置の要部に関する部品展開図であり、図6は、同装置の押え棒に付勢される弾性体を示す部品展開図である。押え金1は垂直方向に延びる押え棒2にネジ2aで固定され、押え棒2はミシン機枠Aに螺合されたブッシュ3に上下スライド可能に支持されている。押え棒2の上端は当金4に嵌合され、当金はアーチばね5(第1弾性体)により下方に付勢される。アーチばね5により付勢された当金4は、押え棒2を介して押え金1を針板6に付勢することとなる。
【0003】
先引きローラ7は支持軸7aを介してハウジング9に回転可能に支持され、支持軸7aのギヤ7bは伝達軸21のギヤ21bを介してワンウェイクラッチ8に連結されている。ワンウェイクラッチ8は、図4に示すように、ジョイント部材10を介してベルクランクレバー11の一端に連結され、ベルクランクレバー11の他端は主軸Sの偏心部に介装されたロッド12に連結されている。ハウジング9は垂直方向に延びる支持棒13を有し、支持棒13はコイルばね14の一方を支持するストッパ片13aを有する。コイルばね14は支持棒13に介装され、ハウジング9はコイルばね14(第2弾性体)により針板6側へ付勢される。
【0004】
押え金1の押え棒2とハウジング9の支持棒13とは、図5に示すように、個別のリンク部材15,16を介して押え上げレバー17に夫々連結されている。押え上げレバー17はネジ17aの弛緩操作により分解できる。また、押え上げレバー17は連杆18を介して押え上げ操作具19に連結されている。押え上げ操作具19は、図示しない足踏みペダルやソレノイドによって作動するように構成されている。
【0005】
ミシンを駆動させるために主軸Sを回転させると、ワンウェイクラッチ8を介して伝達軸21が間欠的に回転し、伝達軸21の間欠回転がギヤ7b,21bを介して先引きローラ7に伝達される。この時、先引きローラ7は押え金1と共に針板6に押圧され、布地は先引きローラ7と針板6の溝より出没する送り歯(図示せず)とで布送り方向Fに搬送されることとなる。縫製終了後に所定の空環を形成してから、次の後続布地を押え金1と針板6との間に挿入するようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、後続の布地を挿入する時、押え上げ操作具の操作により押え金と先引きローラとは針板より離間されてしまうので、ミシン側に残った空環は先引きローラで支持されない状態だった。その時、後続の布地をセットすると空環がズレてしまい、布地の縫始め部分で縫い目が形成されなかったり団子状の塊が発生していた。その結果、縫製品としての見栄えが悪くなるという問題があった。また、このような問題を解決するために作業者が布地とともに空環を手で操作すると、作業の能率を向上させるのが困難となっていた。
従って、本発明の課題は、連続して布地を縫製する際に、それらの布地に形成された縫い目の見栄えを悪化させることなくスムースに作業を行うことができるミシンの押え上げ装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、垂直方向に延びる押え棒を有し第1弾性体により針板に押圧される押え金と、該押え金の近傍に配置され、主軸に連結されたワンウェイクラッチを介して間欠的に回転する先引きローラと、該先引きローラを回転可能に支持し針板に向かって押圧されるよう第2弾性体を付設したハウジングと、ミシン機枠に回転可能に支持され、押え棒とハウジングとに個別のリンク部材を介して連結される押え上げレバーと、押え上げレバーに連結される押え上げ操作具とを備え、押え上げ操作具の操作で両弾性体に抗して押え棒とハウジングとを上昇させ押え金と先引きローラとを針板より離間させるミシンの押え上げ装置において、ハウジングと押え上げレバーとの連結が、前記リンク部材に形成された孔及び略J字状の長孔と、押え上げレバー及びハウジングに夫々固定されたピンとで行われ、このリンク部材を押え上げレバーに対して位置変更することにより略J字状の長孔におけるピンの摺動箇所を変更させ、押え上げ操作具の操作時にハウジングの先引きローラを針板より離間させないようにしたことを特徴とする。
【0008】
なお、リンク部材の略J字状長孔を押え上げレバーのピンに嵌合させておくのが望ましく、また、押え棒と押え上げレバーとを連結するためのリンク部材をミシン機枠の内側に配置し、ハウジングと押え上げレバーとを連結するためのリンク部材をミシン機枠の外側に配置するとよい。
【0009】
【作用】
本発明によれば、ハウジングと押え上げレバーとを連結するためのリンク部材を押え上げレバーに対して位置変更できる。縫製作業を連続的に行う時は、このリンク部材の位置変更により略J字状の長孔におけるピンの摺動箇所を変更させ、押え上げ操作具の操作時にハウジングの先引きローラを針板より離間させないようにする。その結果、後続布地のセット時に空環が針板上で保持されることとなる。縫製途中で生地をミシンより取り除きたい時は、リンク部材の位置変更により略J字状の長孔におけるピンの摺動箇所を変更させ、押え上げ操作具の操作時にハウジングの先引きローラを押え金と共に針板より離間させるようにすればよい。また、押え上げレバーのピンにリンク部材の略J字状長孔を嵌合させる場合、該ピンを略J字状長孔の中間部に位置できるので、押え上げレバーに対するリンク部材の位置変更が行いやすくなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施の形態を図1に基づいて説明する。但し、図4ないし図6で述べた従来装置と共通する部分については、同じ符号を付してその説明を省略する。押え金1の一部は、図1に示すように、ハウジング9の溝部に嵌合され、押え金1が左右に回転しないように構成されている。ハウジングの支持棒13の上下部分はミシン機枠Aの突部A1,A2で支持され、コイルばね14は支持棒13の中間部に介装されている。コイルばね14の一端はミシン機枠Aの上側突部A1に当接され、その他端は支持棒13に固定されたストッパ片13aに当接されている。コイルばね14は支持棒13を下方へ付勢させることになり、コイルばね14の押圧力は押圧調節ネジ14aで調整できる。
【0011】
ハウジング9の支持棒13に固定されたストッパ片13aは、リンク部材22を介して押え上げレバー17に連結されている。リンク部材22にはJ字状の長孔22aと孔22bとが設けられている。J字状長孔22aは押え上レバー17に形成されたピン23にスライド可能に嵌合され、孔22bはストッパ片13aに固定されたピン24に嵌合されている。これによりリンク部材22と押え上げレバー17とは連結されている。なお、通常時においては押え上げレバー17のピン23をJ字状長孔22aのほぼ中間部に位置させるよう構成されている。
【0012】
ワンウェイクラッチ8の出力軸20は継手20aを有し、この継手20aは伝達軸21の継手21aに嵌合される。伝達軸21下端に固定されたギヤ21bは、先引きローラ7の支持軸7aに固定されたギヤ7bに噛み合わされる。ハウジング9に取付けられたブラケット25は補助押え26を回転可能に支承しており、押え金1と補助押え26とは先引きローラ7を挟んで前後に配置されている。
【0013】
次に、この装置について、その作用を説明する。図2に示すように、押え上げレバー17のピン23がリンク部材22のJ字状長孔22a左部に位置していると、押え上げ操作具19の操作時に押え上げレバー17の旋回と共にリンク部材22がストッパ片13aを持ち上げる。この時、リンク部材15も押え棒2を持ち上げるので、押え金1と先引きローラ7は針板6より離間され、その結果、針板6上の布地を取り除くことができる。
【0014】
また、図3に示すように、リンク部材22を押え上げレバーに対して移動(位置変更)し、押え上げレバー17のピン23をリンク部材22のJ字状長孔22a右部に位置させる。この時、押え上げ操作具19の操作で押え上げレバー17を旋回しても押え上げレバー17のピン23がJ字状長孔22a中をスライドするだけでストッパ片13aは持ち上がらない。従って、リンク部材15が押え棒2を持ち上げることで押え金1は針板6より離間するが、先引きローラ7は針板6より離間しない。このような設定にしておくと、縫製後に後続布地をミシンの針板6上に挿入する際、ミシン側に残った空環が先引きローラ7によって挟持されることとなる。その結果、縫製作業の能率を落とすことがない。
【0015】
本実施の形態においては、ハウジングと押え上げレバーとを連結するリンク部材にJ字状の長孔を形成させたが、この文言の形状に限定されるわけでない。例えば、リンク部材に「し」字状等の略J字状長孔を形成すればよい。また、本実施の形態では、リンク部材の各孔にピンが嵌合されていたが、これに限定されるだけでなく、段付きネジを利用してもよい。
【0016】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、押え金の上昇時に先引きローラを針板より離間させないようにすることでミシン側に残った空環をずらすことなく後続布地をセットでき、連続して縫製する際の能率を上げることができる。また、押え上げレバーのピンにリンク部材の略J字状長孔を嵌合させる場合、該ピンを略J字状長孔の中間部に位置させ、押え上げレバーに対するリンク部材の位置変更を容易にすることができる。さらに、ハウジングと押え上げレバーとを連結するリンク部材がミシン機枠の外側に配置されることで操作上のミスを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るミシンの押え上げ装置の概要を示す斜視図である。
【図2】同上装置の作用状態を示す説明図である。
【図3】同上装置の作用状態を示す説明図である。
【図4】従来装置の概要を示す斜視図である。
【図5】従来装置の要部に関する部品展開図である。
【図6】同上装置の押え棒に付勢される弾性体を示す部品展開図である。
【符号の説明】
1 押え金
2 押え棒
5 アーチばね(第1弾性体)
6 針板
7 先引きローラ
8 ワンウェイクラッチ
9 ハウジング
14 コイルばね(第2弾性体)
15 リンク部材
17 押え上げレバー
19 押え上げ操作具
22 リンク部材
22a J字状長孔(略J字状長孔)
22b 孔
23,24 ピン
A ミシン機枠
S 主軸
Claims (3)
- 垂直方向に延びる押え棒を有し第1弾性体により針板に押圧される押え金と、該押え金の近傍に配置され、主軸に連結されたワンウェイクラッチを介して間欠的に回転する先引きローラと、該先引きローラを回転可能に支持し針板に向かって押圧されるよう第2弾性体を付設したハウジングと、ミシン機枠に回転可能に支持され、押え棒とハウジングとに個別のリンク部材を介して連結される押え上げレバーと、押え上げレバーに連結される押え上げ操作具とを備え、押え上げ操作具の操作で両弾性体に抗して押え棒とハウジングとを上昇させ押え金と先引きローラとを針板より離間させるミシンの押え上げ装置において、ハウジングと押え上げレバーとの連結が、前記リンク部材に形成された孔及び略J字状の長孔と、押え上げレバー及びハウジングに夫々固定されたピンとで行われ、このリンク部材を押え上げレバーに対して位置変更することにより略J字状の長孔におけるピンの摺動箇所を変更させ、押え上げ操作具の操作時にハウジングの先引きローラを針板より離間させないようにしたことを特徴とするミシンの押え上げ装置。
- リンク部材の略J字状長孔が押え上げレバーのピンに嵌合されている請求項1記載のミシンの押え上げ装置。
- 押え棒と押え上げレバーとを連結するリンク部材がミシン機枠の内側に配置され、ハウジングと押え上げレバーとを連結するリンク部材がミシン機枠の外側に配置された請求項1記載のミシンの押え上げ装置。
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