JP3763851B2 - 内燃機関用の液圧作動式排気弁 - Google Patents
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Description
デンマーク国特許第154165号には、一次的圧力チャンバに加えて、二次的圧力チャンバを有するかかる排気弁が記載されている。該アクチュエータピストンは、2つの部分から成り、それら2つの部分が弁の開放開始時、極めて制限された相互の動作を行うことのできるような設計とされている。排気弁の開き動作の間の大部分にて、2つのピストン部分は、共通の動作にて変位される。静止シリンダ内の遮断エッジが、ピストンの始動位置及び終了位置を制御する。開き動作中、ピストン部分の一方は、圧力チャンバの1つを高圧源から遮断し、高圧が他方のチャンバ内でのみ作用可能であるようにする。静止シリンダ内のピストンの長さ、及び遮断エッジ間の距離は、一定であり、このことは、アクチュエータが特定の長さの弁スピンドルにのみ適合することを意味する。
デンマーク国特許第2151331号には、可逆船舶用エンジンの排気弁のための電子制御式且つ液圧作動式の弁アクチュエータが教示されている。この電子式制御は、制御弁を作動させる電子式信号発生装置をカム作動させることに基づく。プッシュロッドを介して弁スピンドルの上面に当接する、1つのアクチュエータピストンのみが存在する。このプッシュロッドには、半径方向に突出しカラーが設けられている。該カラーは、開き動作及び閉じ動作の双方の終了時に、静止型のアクチュエータシリンダ内に配置された減衰チャンバ内に進む。プッシュロッドは、一定の長さを有し、このため、アクチュエータピストンは、特定の長さの弁スピンドルにのみ適合する。
米国特許第3 209 737号には、アクチュエータピストンが2つの部分から成り、大径の、その第一のピストン部分が弁スピンドルの一体の部分として製造された第二のピストン部分を取り囲む液圧作動式の排気弁が記載されている。第二のピストン部分は、閉じ動作の終了時に、減衰チャンバ内に進み、これにより、弁の閉じ動作を遅くする直立のピンを有している。最初の開き動作後、第一のピストン部分は、ストッパに出会い、その結果、アクチュエータの圧力チャンバ内の高圧は、第二のピストン部分しか動かすことができない。第二のピストンは、弁スピンドルと固体状態に接続されているため、アクチュエータは、特定の長さの弁スピンドルにのみ適合する。
その一方が最初の開き動作の後に停止する、2つのピストンを有するアクチュエータを使用することは、開き動作の、残りの部分の間、高圧の液圧流体の消費が少なくなるため、エネルギの観点から都合がよい。
エンジンの作動により、攻撃的な燃焼生成物に起因する腐食作用のために、弁の弁座面の一部が腐食する可能性がある。この腐食が弁座表面の大きい局部的な漏洩を生じさせるならば、弁座表面を研磨することが必要となり、その研磨の結果、2つの弁座表面は研磨後、より薄くなるため、弁が閉じられたとき、弁スピンドルの頂部は、より上方の位置となる。船舶の推進エンジンとして典型的に使用される大型の2行程ディーゼルエンジンにおいて、排気弁の寸法は極めて大きく、このため、低温始動状態から高温運転状態まで弁スピンドルの長さが顕著に変化する可能性がある。こうした不可避的な長さの変化は、特に、長時間に亙って運転した排気弁の場合、公知の弁アクチュエータは、弁が好ましくない程に固く閉じる虞れを生じさせることを意味する。
本発明の目的は、可能な限り、均一な程良好で且つ反復可能な弁の動きを可能にする、液圧作動式の排気弁を提供することである。
このことに鑑みて、本発明の排気弁は、静止型シリンダにおける第一のストッパが第一のピストン部分に対する始動位置を決定することと、位置決め装置内の位置決めピストン及び位置決めシリンダが、排気弁が開いたときに閉じられ、排気弁が閉じたときに開く、通路を介して一次的チャンバと連通する流体チャンバを画定することと、排気弁が閉じられたとき、位置決め装置が、排気弁のスピンドルを下方に押圧し、また第一のピストン部分を上方に第一のストッパに当接するまで押圧することを特徴とする。
位置決め装置内の流体チャンバは、排気弁が閉じられたときに、作用可能であり、通路は、開放して、一次的圧力チャンバ内の圧力が流体チャンバ内に拡がることを可能にする。流体チャンバ内の圧力、及び多分、流体チャンバ内の機械的な圧縮ばねのため、位置決め装置は、一次的圧力チャンバ内の流体圧力により発生されて、アクチュエータピストンに作用する下方への力よりも大きい上方への力を第一のピストン部分に作用させる。第一のピストン部分が第一のストッパに当接する迄、この上方への力は、第一のピストン部分を上方に押す。このことは、アクチュエータピストンに対して、十分に画定され且つ反復可能な始動位置を与える。この始動位置は、弁が閉じた位置にあるときの弁軸の位置と独立的である。
これと同時に、位置決め装置は、弁スピンドルに対して等しい下方への力を作用させ、このため、流体チャンバに、一次的圧力チャンバから液圧流体が供給される間に、位置決めピストンを位置決めシリンダの内側底部から僅かに離れる方向に押すことにより、弁スピンドルとアクチュエータピストンとの間の全ての遊びが解消される。
このように、位置決め装置は、排気弁の長さの変化を自動的に補償し、摩耗及び温度変化に起因する上記の問題点を完全に回避すると同時に、排気弁、そのハウジング内に含まれる全ての部品、及びアクチュエータの静止型シリンダを含んで、上方に隣接するハウジング部品は、従来、排気弁が正確に機能するようにするために必要とされたように、特に精密な許容公差にて製造する必要がないという顕著な製造上の利点をもたらす。
高圧源が制御弁により接続された後、一次的圧力チャンバ内の圧力が上昇し、弁が開き始めると、流体チャンバと一次的圧力チャンバとの間の接続部は、閉じられ、流体チャンバ内の流体容積は、拘束されて、排気弁の開き期間中、位置決め装置が特定の長さにて固定される。その後、制御弁が一次的圧力チャンバを戻り管に接続し、排気弁が閉じられると、通路は、再度、開放して、流体が一次的圧力チャンバから流体チャンバに流れる。
位置決め装置は、第一のピストン部分と弁スピンドルとの間の、負荷伝達通路内の任意の位置に配置することが可能であるが、該位置決め装置の一部分は、弁スピンドルの頂部に配置されて、アクチュエータピストンの設計を簡単にすることを可能にする。このように、位置決めシリンダは、上方に開くカップとして方向決めされるため、位置決めピストンをスピンドルの頂部に配置し且つ位置決めピストンをアクチュエータのピストン部分の1つに配置することが特に、都合がよい。位置決めシリンダは、スピンドルとアクチュエータシリンダとの間にて相互に半径方向に動くことを可能にし得るように配置することができる。別個の部品の数を少なくするため、位置決めピストンは、アクチュエータピストンと一体の部分として形成することができるが、これと代替的に、別個の装置がアクチュエータピストンに対して上方に押し付け且つ部分的に、半径方向に作用するガイド内に配置してもよいことが明らかである。
1つの好適な実施の形態において、スピンドルは、好ましくは、傾斜した外面を有する直立の側壁の形態にて、該スピンドルに固定されたインジケータであって、少なくとも1つの関係した静止型のセンサを有するインジケータを備え、このセンサは、スピンドルが動くとき、電子式制御装置に信号を伝送し、この電子式制御装置は、液圧アクチュエータの制御弁を作動させる。上記の位置決め装置により得られる弁の動きの改良された均一さは、センサによって更に向上させることができる。このセンサは、弁を移動させ始める正確な時間を検出し且つそれを制御装置に知らせて、所望で且つ実際的な弁の開き時間の変化を連続的に補正することができるようにする。
スピンドルがその長手方向対称軸線の周りで回転するとき、少なくとも1つのセンサは、電子式制御装置に信号を伝送する。これらの信号に基づいて、制御装置は、弁の始動に問題があることを表わす、弁の移動パターンの変化及び反復可能性の低下を知らせることができ、また、開き時間中、排気弁の回転が停止したならば警報を発し、弁座の急速な腐食を防止する措置を採ることができるようにする。
1つの実施の形態において、位置決めピストンの有効面積、すなわち、流体チャンバ内の圧力に能動的に曝される面積は、一次的圧力チャンバ内の圧力の影響を受けるアクチュエータピストンの有効面積よりも大きく、通路は圧力制御の逆止め弁を含んでいる。この設計は、位置決め装置の流体チャンバ内に圧縮ばねを使用することを不要にする。一次的圧力チャンバの圧力が所定の圧力よりも高圧であるとき、逆止め弁は閉じられる。該逆止め弁は、ばね負荷式ボールを有する型式とする、すなわち弁スライダとすることができる。
2つのピストン部分は、相互に移動可能であり、また異なる移動長さを有し、それ自体、公知の利点、すなわち、第一のピストン部分のみが、弁ディスクの下面に加わる燃焼チャンバの上方への圧力に打ち勝つのに大きい開放力が必要とされるとき、排気弁の開き動作の、最初の部分の間、液圧流体を消費するという利点が得られることが望ましい。1つの好適な実施の形態において、第一のピストン部分が環状壁を有することと、該環状壁の外面が静止シリンダのシリンダ穴内にて長手方向に案内されることと、該第一のピストン部分の内面が少なくとも第二のピストン部分に対する案内面を構成することと、第一のピストン部分が環状チャンバ内に配置された半径方向に突き出すカラーを有することと、該突出しカラーの長さが、排気弁が閉じ位置から完全な開き位置まで移動する長さよりも短いことと、該環状チャンバのチャンバの天井部分が、第一のピストン部分の始動位置を決定する第一のストッパを構成することと、第二のピストン部分が、位置決め装置と接続されることと、第一のピストン部分の下端が位置決め装置の上面よりも上方に配置されることとにより、上記のことが実現される。多数の部品から成るピストンを備えるかかるアクチュエータの問題点は、排気弁の現在の作動状態及び摩耗状況に関係なく、ピストン部分が正確に同一の始動位置に復帰することを保証することである。この復帰が極めて正確でないならば、ピストン部分の1つが全くその頂部位置にないときに弁が開き始める場合、弁が完全に開くことを保証するためアクチュエータピストンを余剰な移動長さにて製造する必要がある。かかる余剰な移動長さの結果、ピストン部分が実際にその頂部位置から始動したとき、液圧流体の消費量が非効率的なほど増大し、排気弁への供給エネルギが過剰となる。これらの問題点は、位置決め装置により完全に防止されている。排気弁がその閉じ位置に復帰し、逆止め弁が開いたとき、流体チャンバ内の圧力は位置決め装置の上面を押圧し、第一のピストン部分の下端と当接させ、これにより、第二のピストン部分は正確にその始動位置に位置決めされ、第一のピストン部分の上方への力が該ピストン部分を押圧して第一のストッパと当接させ、これにより、第一のピストン部分もその始動位置に正確に位置決めされる。その結果、当該エンジンの排気弁に対し最適な開き順序を提供する移動長さにてピストン部分を正確に製造することができる。
この実施の形態の更なる展開例において、第二のピストン部分は、アクチュエータの中央に配置され、上方ピストン頂部と、位置決め装置をピストン頂部に接続する長手方向軸とを有している。この実施の形態は、製造の点にて都合良い程簡単であり、位置決め装置のピストン又はシリンダを第二のピストン部分の一体部品として形成し、これにより、第二のピストン部分が開き動作中、最後の作用可能なピストン段を構成するようにする。これと代替的に、第二のピストン部分を、第一のピストン部分と同様のリングピストンとして製造することも可能である。
軸が、第一のストッパを有するチャンバよりも長い軸方向長さと、軸部分の直径よりも小さい直径とを有する凹所部分を備え、該凹所部分が、第一のピストン部分の内面により案内されることと、環状の第三のピストン部分が凹所部分内に突き出し且つ第一のピストン部分の内面の円筒状凹所内に突き出すことと、排気弁が閉じられたとき、第三のピストン部分の上面が一次的圧力チャンバと接続されることとなるような設計とした更なる実施の形態において、排気弁を作動させためのエネルギ消費量は都合良い程に少ない。この第三のピストン部分は、他の2つのピストン部分における凹所部分により案内され且つその2つのピストン部分の間に受け入れられる。第三のピストン部分は、第一のピストン部分よりも移動長さが長く、また、第二のピストン部分よりも移動長さが短く、このため、第三の段の弁アクチュエータ内で第二の段を構成する。開き動作中、第三のピストン部分は、第一のピストン部分の内面の凹所部分の底部と当接することにより停止する。閉じ動作時、第三のピストン段の下面は軸の凹所部分の底部分により把持され且つ第二のピストン部分と同時にその十分に画定された始動位置に復帰する。
弁スピンドルの上方への閉じ動作の速度は、スピンドルの着座領域が静止型の弁部分の着座領域に着座する前に減速することが好ましい。アクチュエータの上面と突出しカラーとの間にて、第一のピストン部分が、環状チャンバの長さよりも短い軸方向長さの半径方向外方を向いたチャンバ壁を有することと、第一のピストン部分が第一のストッパに接近するとき、突出しカラー、環状チャンバの最上方壁部分、チャンバの天井部分と共に、チャンバ壁が、第一の減衰チャンバを形成することとが可能であるようにアクチュエータを形成することにより、このことを適宜に達成することができる。環状チャンバの軸方向長さよりも短い、第一のピストン部分の上面からのある距離に突出しカラーが位置していることにより、突出しカラーの上方の環状チャンバが一次的圧力チャンバに対して完全に開くことになるから、始動位置に向けた戻り動作の第一の部分の間、第一のピストン部分が移動自在であることを可能にする。最後のピストン動作の間、ピストンのチャンバ壁は環状チャンバ内の天井部分を通り、チャンバ壁と静止型シリンダの内面との間に環状空隙が現れ、減衰チャンバ内の流体をこの環状空隙を通じて押し出さなければならない。このことは、減衰チャンバ内の圧力を一次的圧力チャンバ内の圧力よりも実質的に上昇させ、弁スピンドルの速度を遅くする下方への力を突出しカラーの上面に付与する。
第一のピストン部分におけるチャンバ壁の少なくとも最上方部分は下方に増大する直径を有することが好ましい。突出しカラーから真っ直ぐに立ち上がるチャンバ壁がこのように斜角状である結果、第一のピストン部分が始動位置に接近するに伴い、チャンバ壁とチャンバ天井部分の縁部との間の環状空隙の幅が、小さくなることになる。このように、減衰作用が発揮されるとき、第一のピストン部分に対する打撃作用が防止されると同時に、減衰作用が排気弁の速度及び質量に適合するようになる。
静止型シリンダが、チャンバ天井部分に配置された出口開口部に一次的圧力チャンバを接続する多数の通路を有することと、出口開口部の下方に配置された平坦なリングが、リングが出口開口部を覆う上方位置と、リングが出口開口部からある距離にある下方位置との間にて軸方向に移動し得ることとが可能であるように都合の良い更なる展開例が設計されている。上記の環状空隙に対し、弁が開くとき、液圧流体が減衰チャンバ内に適宜に迅速に流れ得るように十分に広い幅を付与することは可能であるが、このことは、弁が閉じるときの実現可能な減衰効果を著しく制限することになる。このため、通路及び平坦なリングにより、弁が開いたとき、流体が一次的圧力チャンバから自由に流れるのを許容するが、弁が閉じたとき減衰チャンバが作用可能である場合、一次的圧力チャンバへの接続を遮断する逆止め弁が提供されることが好ましい。これと同時に、弁スピンドルが作動されたとき、逆止め弁は、アクチュエータピストンに作用する作動圧力の全体が該弁スピンドルに継続的に伝達されるという有利な点も提供する。
排気弁は、アクチュエータピストンを上方に作動させることにより、その閉じた位置に液圧的に復帰させることができる。その代わり、排気弁は、例えば、空気ばねにより閉じ方向に向けてばね負荷を加えることができる。このばねは、排気弁に対し上方への閉じ力を継続的に作用させ、この上方への閉じ力の大きさは、弁の下降動作中、増加させることができる。この力は、排気弁の速度を遅くし、排気弁がその完全に開いた位置にて停止するようにする。最後の開き動作の部分の間、空気ばねとアクチュエータとを適宜に相互作用させるため、第二のストッパが第二のピストン部分の下降動作を制限することと、第二のピストン部分が第二のストッパに達する前に、そのピストン頂部付近にて、第二のピストン部分は、第一のピストン部分の減衰部分に伸長する環状の半径方向突出部を有することと、第一のピストン部分の内面における減衰部分の少なくとも上方部分が下方に縮小する直径を有することとすることが好ましい。その下方への動作中、ピストンの頂部における半径方向突出部が減衰部分に達すると、ピストン頂部と第一のピストン部分の下面との間に環状の空隙が現われ、第二のピストン部分が第二のストッパに着座する前に、ピストン頂部の下方の流体をこの空隙を通じて押し出されなければならない。この押し出しと同時に、ピストン頂部の下面に作用する流体圧力が上昇して、第二のピストン部分に上方への力を発生させ、このため、その速度が遅くなり、弁スピンドルに作用する下方への開き力が低下する。減衰部分の上方部分が湾曲した輪郭である結果、ピストン頂部の下方の流体圧力が漸進的に上昇し、このため、開き力を漸進的に低下させ、このことは、空気ばねに対して、開き力の低下に伴なって排気弁を段階的に遅くする時間を付与し、このため、スピンドル頂部は、位置決め装置の下面との接触を止めさせない。
弁が閉じたときに、第三のピストン部分に対して、絶対的に明確で且つ反復可能な移動経路を提供することを目的とする1つの実施の形態は、次のような設計とされている。すなわち、第二のピストン部分の凹所部分が軸方向を向いた面で上端が終端していることと、第二のピストン部分の上端が、一次的圧力チャンバを、軸方向を向いた面内に形成された出口開口部に接続する多数の通路を有することと、出口開口部の下方に配置された平坦なリングが、該リングが出口開口部を覆う上方位置と、該リングが出口開口部からある距離にある下方位置との間にて軸方向に変位可能であることとであるような設計とする。第二のピストン部分の凹所部分の頂部における逆止め弁の効果は、アクチュエータピストンが戻り動作するとき、第二のピストン部分における凹所部分の底部が第三のピストン部分の下面を保持し、該下面を始動位置に引っ張る迄、第三のピストン部分は、第一のピストン部分における凹所部分の底部に残る。
次に、添付図面を参照しつつ、本発明による実施の形態に関して、更に詳細に説明する。添付図面において、
図1は、シリンダカバーを有する2行程クロスヘッドエンジン内のシリンダの外形の断面図である。
図2は、図1のシリンダ内における排気弁用アクチュエータの第一の実施の形態を示す長手方向断面図である。
図3は、逆止め弁の第一の実施の形態を示す拡大縮尺図である。
図4は、図2のアクチュエータ内における第一及び第二のピストン部分の壁部分の拡大図である。
図5は、アクチュエータの第二の実施の形態の部分的な長手方向断面図である。
図6は、図5のアクチュエータ内における第二のピストン部分の最上方部分の拡大長手方向断面図である。
図7は、アクチュエータの第三の実施の形態の部分的な長手方向断面図である。
図8は、排気弁を開けるのに使用されるエネルギの消費量を示す線図である。
図1には、エアボックス3内に配置された、掃気ポート2を有するユニフロー型のシリンダ1が図示されている。該掃気ポート2には、図示しない掃気レシーバから、例えば、ターボ過給機により加圧された掃気が供給される。
排気弁4は、シリンダカバー24′内でシリンダの上部の中央に取り付けられている。膨張行程の終了時、エンジンピストン5が掃気ポートを経て下方に進む前に、排気弁が開いて、これにより、ピストンの上方の燃料チャンバ6内の燃焼ガスが排気レシーバ8内に開口する排気通路7を通じて流れ出る。その後の燃焼のため、所望の有効圧縮比に対応する調節可能な時点にてピストンが上方に動く間に、排気弁は、再度閉じる。この閉じ動作の間、排気弁は、空気ばね23により上方に駆動される。
弁の耐久性と、燃焼チャンバ内の状態、従ってエンジンの効率を都合良く正確に制御し得ることとを考慮すると、排気弁が極めて正確に制御可能なことは好都合である。
排気弁は、液圧被駆動アクチュエータ9によって開かれる。液圧流体は圧力導管10を通して供給される。該圧力導管10は、アクチュエータ上の流体供給分配器11を、コンソール13により支持された分配装置ブロック12の上面における制御ポートと接続させる。該コンソールは、例えば、125乃至325バールの範囲とすることのできる圧力にて、図示しないポンプステーションから液圧流体が供給される、液圧流体用の圧力導管14に接続される。この圧力は、一定とすることもできるが、エンジン負荷に応じて調節可能であることが好ましい。ポンプステーションには、貯蔵タンクから供給することができ、液圧流体は、例えば標準的な液圧オイルとすることができるが、エンジンの潤滑油が液圧流体として使用され、装置には、エンジンの油だめから供給されることが好ましい。
内燃機関は、中速度4行程エンジンとすることができるが、典型的に、船舶における推進エンジン又は発電所における据え置き型原動機とすることができる。該エンジンは、シリンダ当たりの出力が、400kW乃至5500kW以上の色々な寸法にて設計することができ、該エンジンは、全負荷時50乃至600rpmの範囲、典型的には最高200rpmの速度とすることができる。
エンジンのシリンダの各々は、電子式制御装置15と関係付けられ、該電子式制御装置は線16を通じて全体的な同期化信号及び制御信号を受け取り、電子的制御信号を線18を介して特に、制御弁17に伝送する。シリンダ当たり1つの制御装置15とすることができるが、同一の制御装置に幾つかの制御装置を関係付けることもできる。また、該制御装置は、全てのシリンダに共通する全体的な制御装置から信号を受け取るようにしてもよい。
コンソールにおいて、高圧導管から分岐する通路19は、加圧された液圧流体を制御弁17における高圧ポートに通す。該通路19には、多数の流体アキュムレータ20が設けられている。該流体アキュムレータ20は、制御弁が開くときの流体量の殆どを配送し、制御弁が閉じられている間、高圧導管から後供給される。制御弁の制御ポートが、分配装置ブロック内の通路21を介してブロックの上面の排出ポートに接続される。該制御弁は、また、通路形状の戻り導管22を介して使用済み液圧流体用の戻り導管に接続されたタンクポートを有している。これと代替的に、戻り導管は、例えば、エンジンのオイルサンプに達する排液導管のような、大気圧のドレーン管に接続してもよい。戻り導管内の圧力は、大気圧から数バールの過剰圧力の範囲とすることができる。空気がアクチュエータ内に浸透するのを防止するため、戻り管は、例えば、少なくとも1バールの過剰圧力といった過剰圧力を有し、液圧流体がアクチュエータから排出される間、圧力導管10内で過剰圧力が保たれるようにする。
排気弁を開けるべきとき、制御装置15からの制御信号が制御弁17を高圧ポートが制御装置に接続される位置まで作動させる。このため、高圧流体は、圧力導管10、従って、流体供給管11に自由にアクセス可能である。排気弁10を閉じるべきとき、制御弁は、戻り管に接続されたタンクポートが制御ポートに接続され、これにより、導管10内の高圧が排出される位置まで作動される。
制御弁17は、3つのポート及び2つの位置を有する電子作動式の単一の弁のような任意の通常の型式とすることができる。しかしながら、弁の調節を極めて迅速に且つ正確に行うため、制御弁17は、2つの弁、すなわち、電子式作動弁17aと、弁アクチュエータに対する主弁17bとから成るようにすることが好ましい。作動弁17aは、3つのポート及び2つの位置を有することができる。例えば、強磁性材料で出来た弁スライダのそれぞれの端部に配置された2つのコイルの一方を磁化することにより弁が作動される限界位置に磁力で係止される型式の作動弁17とすることができる。2つのコイルの磁化が中断した場合の安全策として、ばねは、弁スライダに予負荷を加えて、不作動位置となるようにすることができる。該位置では、戻り管22に対するタンクポートは活動供給ポートである。これと代替的に、該作動弁は、通常のソレノイド弁としてもよい。該作動弁の排出ポートは、主弁17bのスライダの一端のピストン面まで圧力を伝達する中間通路に接続される。スライダの他端は、高圧導管と恒久的に接続された小さい面積のピストン面を有する。作動弁の1つの位置において、戻り導管が戻り管22を介して主弁の排出ポートに接続される位置まで、より小さいピストン面積に加わる高圧が主スライダを押し付ける。この排出ポートは、圧力導管10に達している。中間通路が高圧導管14に接続されるその第二の位置に作動弁17aが作動されると、大きいピストン面に加わる高圧力が主弁のスライダをその第二の位置に押し付け、この第二の位置において、高圧が圧力導管10に伝達され、このため、アクチュエータが排気弁を開く。
次に、アクチュエータ9及び空気ばねに関して詳細に説明する。図面に図示した実施の形態の説明において、簡略化のため、実施の形態にて対応する動作を果たす要素は、同一の参照番号を使用する。
排気弁は、弁ディスクから真っ直ぐに立ち上がるスピンドル24を有し、スピンドルの上端は、スピンドルに確実に取り付けられたばねピストン25を支持し、空気シリンダ26内にて圧力を密封し且つ長手方向に移動可能とし、図示しない加圧空気源に接続されたばねチャンバ27がばねピストンの下方にあり、該加圧空気源は、例えば、4.5バールの過剰圧力の所定の最小圧力にて充填された状態にばねチャンバを保つ。3乃至10バールのような、その他の空気圧力を使用することもできる。空気ばねの所望のばね特性に従って最小圧力が選択される。幾つかの異なるシリンダにおけるばねチャンバを相互に接続することが可能であるが、ばねチャンバの各々は、加圧空気供給源にて逆止め弁により別個に遮断されるようにすることが好ましい。ばねチャンバ内の空気圧力がばねピストン25に対し継続的な上方への力を作用させる。ばねチャンバが遮断されると、ばねピストンが下方に移動されて、ばねチャンバ内の空気を圧縮するとき、この上方への力が増加する。
ハウジング28は、空気ばねの周りで且つ空気ばねの上方にキャビティ29を画定する。該キャビティは、開口部30にて図示しないドレーン口に接続され、このため、キャビティは大気圧を有する。
アクチュエータ9は、ハウジング28の上面により支持された静止型シリンダ31と、シリンダに取り付けられ且つカバースタッド33によりハウジング28に固定されたカバー32との形態をした、2つの固定部分から形成されている。該カバーは、流体供給源及び排出口11と連通する一次的圧力チャンバ34を画定する。通気通路35は、カバー内に取り付けられた排気弁36に達している。一次的圧力チャンバは、通路37を介して静止型シリンダ内の環状チャンバ38に接続される。遮断手段39が通路37の1つの端部を閉じる。
アクチュエータピストンは、チャンバ38から静止型シリンダの下面に達する貫通シリンダボア41内にてその外面が長手方向に案内される、環状壁を有する第一のピストン部分40と、該第一のピストン部分の内面における円筒状の案内面により長手方向に移動可能に案内される第二の円筒状のピストン部分42とを備えている。このように、2つのピストン部分は、静止型シリンダ内にて入れ子式に移動可能に軸支されている。
位置決め装置は、スピンドル24の上面とルーズに当接する位置決めシリンダ45により画定された流体チャンバ44と、圧力を密封し且つ長手方向に移動可能な仕方にて位置決めシリンダ内に軸支され且つ第二のピストン部分42の下端の一体部分として形成された位置決めピストン46とを含んでいる。シリンダ45の上端にて内方に突き出す取り外し可能なストッパ47が、スピンドル24との当接を停止させるべき場合、ピストン46をシリンダ内の所定の位置に保持する。
第一のピストン部分は、環状壁の一体の部分として形成されたピストン頂部48により上方が閉じられている。ピストン頂部の内面は、第二の圧力チャンバ49の底端部であり、該第二の圧力チャンバは、図示したピストン部分に対する始動位置にあり、また、第二のピストン部分の中央穴50及び直交通路51を介して且つ第一のピストン部分の環状壁における垂直上方に開放する穴50及び直交の貫通穴53を通じて、一次的圧力チャンバに接続される。
第二のピストン部分における中央穴50は、貫通しており、その下端には、図3に関して以下に説明するように、圧力制御された逆止め弁54が設けられている。該逆止め弁は、弁ハウジング56内にて長手方向に移動可能な弁スライダ55を備えている。該弁スライダ55は、穴50から弁スライダの下面まで伸長する中央貫通穴57を有し、該弁スライダは、逆止め弁が開いたときに、弁ハウジングの下方部分における突出部59の頂部の閉じ面58から短い距離に配置される。該弁スライダは、圧縮ばね60に対するばねガイドとして機能し、弁スライダに対し上方へのばね力を付与する突出しカラーを有している。穴61は、下方に開口し、突出部59における直交穴62は、流体チャンバ44をばねの周りのキャビティと連通させる。
排気弁が閉じられると、一次的圧力チャンバ内の圧力は、流体チャンバ44内の圧力と略等しい程度となり、ばね60は、逆止め弁を開いた状態に保つことができる。位置決めピストンは、アクチュエータピストンの部品の上方の有効面積を決定する静止型シリンダの円筒状穴41よりも大径であり、このため、位置決めピストンが流体チャンバ内にて有する、圧力作用を受ける下方面積は、アクチュエータピストンの上方面積よりも大きくなる。2つのチャンバ内の圧力は略等しいため、位置決めシリンダは、スピンドル24に向けて下方に押し付けられ、位置決めピストンは、第一のピストンの下端と当接するように上方に押され、第一のピストンに対して形成される上方への力を作用させる。この上方への力は、排気弁が開く前に、アクチュエータピストンが図示した始動位置にあることを確実にする。
流体供給源11が高圧導管に接続されているため、一次的圧力チャンバ内の圧力が約1.5バールから例えば、250バールまで急激に上昇すると、高圧は、穴50を通じて下方に拡がり、弁スライダの上端に対して、下方への力を作用させ、この下方への力は、ばね60からの開き力に打ち勝ち、逆止め弁を閉じる。穴50内の圧力上昇は急激に生ずるため、逆止め弁は、圧力がばね60の周りのキャビティに拡がる前に閉じる。排気弁が再度、その閉じ位置にあるとき、ばね60は、逆止め弁を再度、開く。
その外面にて、第一のピストン部分は、環状チャンバ38内に突き出す、突出しカラー63を有している。第一のピストン部分に加わる上方への力は、カラーの上面をチャンバの天井部分に当接する平坦なリング64(図5参照)に押し付け、これと共に、第一のピストン部分の上方への動きを制限する、第一のストッパを画定する。これにより、第一のピストン部分は、十分に画定された始動位置を有することになる。位置決めピストンの上面は、第一のピストン部分の下端に対して押し付けられるため、第二のピストン部分の始動位置も同様に十分に画定されることになる。
排気弁を開けるべきとき、及び制御弁17が一次的チャンバ及び二次的チャンバに対し高圧を供給するとき、2つのピストン部分は、同時に、下方に押され、平坦なリングがチャンバの天井部分から僅かに動いて離れるとき、突出しカラーは、環状チャンバ38内にて下方に移動され、このため、一次的圧力チャンバをチャンバの天井部分の出口開口部と接続する幾つかの通路65を通じて流体は突出しカラーの上側部におけるチャンバ38内に下方に流れ込むことができる。
突出しカラーがチャンバの底部に接近すると、該カラーは、チャンバの内面に設けられた環状の突出部を通り越し、これにより、突出部と突出しカラー63の外面との間にて狭小な環状空隙が現われ、カラーの下方の流体はこの環状空隙を通じて押し出さなければならない。このことは、カラーの下面がチャンバの底部に当接する前に、第一のピストン部分を遅くする、アバットメントの減衰作用を生じさせる。
第一のピストン部分の下方へ動きが停止したとき、二次的な圧力チャンバ49には、通路51及び穴52を通じて高圧流体が供給され、第二のピストン部分にて作動圧力を保つ。次に、通路51は、貫通穴53の下方にて下方に移動するから、この第二のピストン部分は、二次的な圧力チャンバへの流体供給が遮断される迄、下方に移動する。
第二のピストン部分は、その下方限界位置に達する前に、減速され、このため、空気ばねは、排気弁を特に所望の完全に開いた位置にて停止させることができる。このことは、減速が開始する位置にある第二のピストン部分を示す、図4に関して以下に説明するように、二次的な圧力チャンバとの接続を漸進的に遮断することによって行われる。第一のピストン部分40は、静止しており、貫通穴53は、内面41によって外方から遮断され、このため、流体は、穴52を通じてのみ供給される。線aは、貫通穴53の下方縁部を示し、図面において、該貫通穴は、通路51の上方縁部と整合される。流体は、依然として、チャンバ49内に流れることができるが、通路51の上方の領域内にて第二のピストン部分の外面の斜角部分67を通じて生じた狭小な空隙66を通ってのみ流れる。このため、この領域は、上方にテーパーが付けられた凹所を有し、この凹所は、二次的な圧力チャンバ49が完全に遮断されたとき、斜角部分67の上端が線aに下降する迄、更なるピストンの下降動作時、空隙66が漸進的に狭小になるようにする。この減速距離sは、斜角部分をより深くし且つその傾斜を変化させることの双方により、特定の排気弁に対応するようにすることができる。チャンバ49内への流体の流れに抵抗する結果、チャンバ内の圧力が降下する。上方にテーパーが付けられた関係する凹所を有する単一の斜角部分が存在するようにすることができ、この斜角部分は、第二のピストン部分にて環状であるか、又は、関係した凹所を有する幾つかの斜角部分が存在するようにし、これらの斜角部分がその関係した通路51の上方に個々に配置されるようにすることができる。
一次的チャンバ内の高圧力は、排気弁をその完全に開いた位置に保つ。排気弁を閉じるべきとき、制御弁17は、一次的圧力チャンバ34を戻り管22に接続するように、制御装置15によって作動され、これにより、圧力チャンバを急激に減圧し、したがって、アクチュエータピストン上の力を、空気ばね23から上方に閉じ力が第二のピストン部分42を持ち上げると同時にスピンドル24を上方に移動させるように、維持し、第二のピストン部分は、第一のピストン部分内に上方に移動し、この第一のピストン部分は、燃料が突出部59における狭小な空隙を介して突出しカラー63の下方にて流れなければならないから、同時に、僅かに上方に移動する。位置決めピストン46の上面が第一のピストン部分の下端に合わされると、閉じ力の全体が第一のピストン部分に伝達され、この第一のピストン部分は、その始動位置に向けて上方に急速に加速される。始動位置付近にて、半径方向外方を向き且つ突出しカラーの上面とピストン部分の上面との間に配置された(図5参照)直立のチャンバ壁68は、チャンバの天井部分を経て上方に動かされて、これにより、環状の出口空隙を有する減衰チャンバが一次的圧力チャンバ内でチャンバ壁68と側壁69との間にて突出しカラーの上方に現れる。この出口空隙は、減衰チャンバの排出に反作用し、その内部の圧力は上昇し、リング64は、上方に押され且つ出口開口部を通路65から遮断する。チャンバ壁68の上方部分70は、円錐形面となるように斜角状とされ、このため、出口空隙の幅は、漸進的に縮小する。斜角部分の深さ及び勾配の双方は、特定の排気弁に対応し、排気弁は、閉じる瞬間に、その弁座面の間にて正確に且つ静かに接触するようにすることができる。
その上面にて、ばねピストン25は、肉厚が上方に薄くなる側壁71を有し、上方に開放し且つカップ形状の回転可能に対称の遮蔽体を支持している。ハウジング28内にて、2つのセンサ72が側壁の直径方向の両側部に取り付けられており、線73を介して制御装置15に信号を送る。これらの信号は、例えば、センサの端部と側壁71の外面との間の距離にその大きさが依存する電圧とすることができる。この壁は、傾斜しているため、ばねピストンが下方に動くとき、この距離は長くなり、このため、センサは、制御装置に対して、排気弁4の現下の位置を知らせる。弁の回転を考慮することなく、弁スピンドルの長手方向への変位を測定するためには、スピンドルの長手方向軸線と同軸状の側壁に接続された、円筒状の断面を有する単一のセンサ72を使用すれば十分である。また、例えば、スピンドルの長手方向軸線からある距離に対称軸線を有する円筒状の側壁によって、スピンドルの長手方向軸線に対して側壁を非対称に配置し、スピンドルが回転するとき、壁から一定の点までの距離が変化するようにすることも可能である。周方向に向けて互いにある距離に配置された2つのセンサを使用することは、側壁からセンサへの距離の変化がスピンドルの長手方向への移動又はスピンドルの回転に起因するかどうかを明確に決定することを可能にする。
以下の説明は、図5に図示したアクチュエータの第二の実施の形態に関するものであり、この図5において、図の右側及び左側半分は、始動位置、及び排気弁が完全に開いた位置にあるアクチュエータピストンをそれぞれ示す。第一の実施の形態と相違する特徴についてのみ説明する。図5のアクチュエータは、3段式のアクチュエータであることを特徴としており、このことは、以下に説明する有利な点をもたらす。第一のピストン部分が第一の段を構成し、第二のピストン部分がアクチュエータの第二の動き段階を構成する第一の実施の形態に関して、第二のピストン部分42は、3段式アクチュエータの第三の段を構成する。この第二段は、第一及び第二のピストン部分の間に配置された四半円の断面の簡単な環状本体である、第三のピストン部分74によって構成される。これら3つの段の結果として、環状チャンバ38は、第一の実施の形態におけるよりも短い長さである。第一の段における第一のピストン部分の作用可能な移動は、距離Aによって示し、第二の段における第三のピストン部分の作用可能な移動は、距離Bによって示し、また、第三の段における第二のピストン部分の作用可能な移動は、距離Cによって示してある。
一次的チャンバ34内の圧力は、3つのピストン部分がその作用可能な移動を行うとき、これらの3つのピストン部分の全てに影響を与える。このことは、関係する接続通路を有する二次的な圧力チャンバが省略される点にて簡略化をもたらす。始動位置において、環状チャンバは、第一のピストン部分の環状壁の直交通路75を介して一次的圧力チャンバに接続される。これらの直交通路は、突出しカラー63の下面から下方のある距離に配置されて、第一のピストン部分の下降作動を遅らせる減衰作用を提供する。
第二のピストン部分42は、一次的圧力チャンバ内の圧力に曝される上方ピストン部分76を有し且つ位置決めピストン46の一体部分として形成された軸にボルト止めされている。該軸は、第一のピストン部分の内面43によって案内される軸部分77を有している。該内面43は、案内面として機能し、ピストン部分の最下方部分内に配置されている。軸部分77の上方にて、軸は、チャンバ38よりも長い長さの凹所部分78を有しており、該凹状部分78は、軸方向に向いた面79によって上方が画定されており且つ底面80によって下方が画定されている。
第一のピストン部分40は、上方に開放し、また、円筒状の凹所81を有している。該凹所81は、底面82により下方が画定され且つ内面43よりも大きい内径を有している。第一のピストン部分の上端にて、凹所81は、第二のピストン部分に対する減衰部分を有している。該減衰部分の最上方部分38は、下方に縮小する直径を有する円錐体であり、このため、第二のピストン部分の下方への移動の終了時、ピストン頂部76の外縁部84と最上方部分83との間に、環状空隙が現われ、該環状空隙の幅は、小さくなり、このため、図4に関して上述したものに対応するピストン頂部の下方にて、流体を押し出すことにより、漸進的に増大する減衰効果が得られる。
第三のピストン部分74は、一部分が凹所部分78内に、また、一部分が凹所81内に挿入される。ピストン部分74の下面よりも下方のキャビティ85は、第一のピストン部分の環状壁を貫通して下方に伸長し且つキャビティ29内に開放する圧力逃がし通路86を介して第三のピストン部分の下方に大気圧を保つことを確実にする。開き動作中、第一のピストン部分は、環状チャンバの底部により停止され、第三のピストン部分は、底面82に合わさるときに停止され、第二のピストン部分は、軸方向を向いた面79が依然として静止している第三のピストン部分の上面87に座したときに停止される。このように、上面87は、排気弁の完全に開いた位置を画定する第二のストッパを構成する。閉じ動作のとき、第三のピストン部分は、第二のピストン部分の底面80に当接することにより、十分に画定された始動位置まで上方に引っ張られる。
第二の実施の形態において、第二のピストン部分の頂部には、逆止め弁54が配置される。この逆止め弁は、上方円筒状穴90内に配置された上方円筒状部分89と、該上方部分よりも大径であり且つ下方円筒状穴92内に配置された下方円筒状部分91とを有する弁スライダ88を備えている。カラーの下方にて旋削することにより形成された、下方に隣接する環状スペース94を有する半径方向突出しカラー94がこれらの2つの部分の間に配置されている。下方直交通路を有する中央穴95が一次的圧力チャンバを環状スペースに接続する。圧縮ばね60が下方円筒状穴内に配置されており、該下方円筒状穴が、圧力逃がし通路96を介してキャビティ29に接続され、弁スライダ88の下面にて大気圧が維持されるようにする。流体チャンバ44は、貫通穴97を介してカラー93の周りの小さいチャンバ98に接続される。この圧力制御された弁スライダは次のようにして機能する。一次的圧力チャンバ内の圧力は穴95を介して環状スペース94内まで下方に送られ、下方部分91と上方部分89との直径の差により形成された上方の環状の相違領域に対し下方への力を継続的に作用させる。この圧縮ばね60は、弁スライダに対し上方への開き力を継続的に作用させる。一次的圧力チャンバ内の圧力が急激に上昇すると、下方への力が開き力を上廻り、弁スライダは、図示した閉じ位置に移動し、この閉じ位置にてカラー93は、位置決め装置内の環状スペース94と流体チャンバに対する穴97との流れ連通状態を遮断する。ばねからの開き力が流体圧力からの下方への力を上廻るのに十分な程に、一次的圧力チャンバ内の圧力が降下したとき、弁スライダは開き位置まで上方に移動する。
図7の第三の実施の形態は、図5に関して述べた基本的設計の2つのピストン部分40、42を有するアクチュエータピストンを備えている。該位置決めピストン46は、アクチュエータピストンよりも小径を有し、流体チャンバ44内の圧縮ばね100は、アクチュエータピストンに対し適度に大きい上方への力を付与し、このため、弁が閉じ位置にあるとき、アクチュエータピストンは、始動位置に向けて形成される上方への力による影響を受ける。空気ピストン25、位置決めシリンダ45及び側壁71は、スピンドル24の頂部にボルト止めされた一体のユニットである。一次的圧力チャンバ34と流体チャンバ44との間の通路は、第二のピストン部分の軸の頂部における中央穴101と、該軸の底部における中央穴102とを備えており、第一のピストン部分40を貫通する直交通路部分103、103′、104、104′及び通路105、106は、静止型ハウジング28内にて相互に接続されている。弁が開くと、ピストン部分40、42は、下方に移動し、通路部分104′は、通路部分106から離れる方向に移動して、これにより、圧力チャンバ34と流体チャンバ44との間の通路は、これらの通路部分が最早、相互に整合していないため、閉じられる。戻り動作の終了時、通路は、再度、開放する。通常の作動時、流体チャンバから多少の漏洩があるようにピストン46を設計することが可能である。次に、中央穴102は、チャンバに流体を供給しさえすればよく、このため、逆止め弁110を通路部分105、106に配置し、開放した通路を有する排出弁が閉じた位置にあるとき、流体が通路部分106から通路部分105まで後方に流れるのを防止する。逆止め弁は、小型のばね112によって供給開口部に向けて圧縮された小さい板111を有する簡単な設計のものである。また、逆止め弁は、排出弁がその完全に閉じた位置に達する直前に、弁スピンドルを減速している間、流体チャンバから押し出される流体の量を少なくし、このため、弁が閉じられている間に、流体を流体チャンバに補充的に供給する必要性も少なくなる。
図8の線図には、多段式アクチュエータの使用に伴なう有利な点も図示されている。斜線Eは、排気弁にて実際に測定された上方への力を示し、この力は、弁スピンドルの頂部と位置決めシリンダの底部との間の分割面にて実際に測定したものである。この力は、閉じた位置までの弁スピンドルの距離、すなわち、開き動作中の移動距離の関数として示してある。開放の瞬間、弁が動くときの上方への力は約53kNであり、このため、弁が始動位置から70mm離れた、完全な開き位置の直前にて、約15kNまで略直線状に降下する。排気弁を開くためには、アクチュエータは、水平線Fで示した、例えば、56kNのような、53kNの上方への力よりも大きい下方への力を発生させなければならない。アクチュエータが1段のみを有するならば、この力は、開き順序の全体の間、維持される。その代わり、アクチュエータが2つの段を有するならば、開き力は、例えば、選択された段の長さに応じて、破線で示した段のグラフGに従う。弁を開く仕事、従ってそのエネルギ消費量は、グラフの下方の面積で示してある。弁を作動させる毎に、2段式のアクチュエータを使用すれば、斜線で示した仕事量を約18%、節約することが直ちに理解できる。アクチュエータが3つの段を有するならば、開き力は、例えば、点線で示した段のグラフHに従う。このことは、1段式アクチュエータに関して約26%、仕事量を節約することになる。図示した実施の形態において、空気ばねからの上方への閉じ力は、線Iで示した、約14kNにて略一定である。
2つの実施の形態からの特徴を組み合わせて新規な実施の形態とすることができ、また、本発明の範囲内にて他の変形例も可能である。このため、エンジンが停止したとき、また、液圧圧力無しにて、流体チャンバ内の機能的な圧縮ばねをアクチュエータピストン及びスピンドルと当接状態に保つことが可能となる。また、第三のピストン部分及び軸の凹所部分を省略することにより、図5の実施の形態を改変して、2段式アクチュエータにすることも可能である。
Claims (14)
- 内燃機関用の液圧作動式排気弁(4)であって、
排気弁のスピンドルの伸長部分内に同軸状に配置され、制御弁(17)により高圧の液圧流体源に又は戻り管に選択的に接続することのできる少なくとも1つの一次的圧力チャンバ(34)を形成している静止シリンダ(31)及びカバー(32)と、前記静止シリンダ(31)内に長手方向に変位可能に設けられ且つ少なくとも第一のピストン部分(40)及び第二のピストン部分(42)を有する多段アクチュエータピストンとを備える液圧アクチュエータ(9)を有し、
前記静止シリンダに設けられた第一のストッパが第一のピストン部分に対する始動位置を決定するように配置されており、位置決め装置内の位置決めピストン(46)及び位置決めシリンダ(45)が、排気弁(4)が開いたときに閉じられ且つ排気弁(4)が閉じたときに開かれる通路を介して一次的圧力チャンバ(34)と連通する流体チャンバ(44)を画定しており、前記位置決め装置は、前記排気弁(4)が閉じられているときに前記排気弁のスピンドル(24)を下方に押圧し且つ第一のピストン部分(40)を第一のストッパに当接するまで上方に押圧するようにしたことを特徴とする、内燃機関用の液圧作動式排気弁。 - 請求項1に記載の液圧作動式排気弁において、スピンドル(24)が、好ましくは、傾斜した外面を有する直立の側壁(71)の形態にて、該スピンドルに固定されたインジケータであって、少なくとも1つの関係した静止型のセンサ(72)を有するインジケータを備え、該センサが、スピンドルが動くとき、電子式制御装置(15)に信号を伝送し、該電子式制御装置(15)が、液圧アクチュエータの制御弁(17)を作動させることを特徴とする、液圧作動式排気弁。
- 請求項2に記載の液圧作動式排気弁において、スピンドル(24)がその長手方向対称軸線の周りで回転するとき、少なくとも1つのセンサ(72)が、電子式制御装置(15)に信号を伝送することを特徴とする、液圧作動式排気弁。
- 請求項1乃至3の何れかに記載の液圧作動式排気弁において、位置決めシリンダ(45)がスピンドルの頂部に配置されることと、位置決めピストン(46)が、その一体の部分として形成されることが好ましい、アクチュエータのピストン部分(40、42)の1つに配置されることとを特徴とする、液圧作動式排気弁。
- 請求項1乃至4の何れかに記載の液圧作動式排気弁において、位置決めシリンダ(45)内の位置決めピストン(46)の有効面積が、一次的圧力チャンバ(34)内のアクチュエータピストンの有効面積よりも大きいことと、通路が、弁スライダの形態であることが好ましい、圧力制御の逆止め弁(54)を含むことを特徴とする、液圧作動式排気弁。
- 請求項1乃至5の何れかに記載の液圧作動式排気弁において、第一のピストン部分(40)が環状壁を有することと、該環状壁の外面が静止シリンダ(31)のシリンダ穴(41)内にて長手方向に案内されることと、該第一のピストン部分の内面が少なくとも第二のピストン部分(42)に対する案内面(43)を構成することと、第一のピストン部分が環状チャンバ(38)内に配置された半径方向に突き出すカラー(63)を有することと、該チャンバの長さが、排気弁が閉じ位置から完全な開き位置まで移動する長さよりも短いことと、該環状チャンバのチャンバ天井部分が、第一のピストン部分(40)の始動位置を決定する第一のストッパを構成することと、第二のピストン部分(42)が、位置決め装置と接続されることと、第一のピストン部分の下端が位置決め装置の上面よりも上方に配置されることを特徴とする、液圧作動式排気弁。
- 請求項6に記載の液圧作動式排気弁において、第二のピストン部分(42)が、アクチュエータの中央に配置され、上方ピストン頂部(76)と、位置決め装置をピストン頂部に接続する長手方向軸とを有することとを特徴とする、液圧作動式排気弁。
- 請求項7に記載の液圧作動式排気弁において、軸が、第一のストッパを有するチャンバ(38)よりも長い軸方向長さと、軸部分(77)の直径よりも小さい直径とを有する凹所部分(78)を備え、該凹所部分(78)が、第一のピストン部分の内面(43)により案内されることと、環状の第三のピストン部分(74)が凹所部分内に突き出し且つ第一のピストン部分の内面の円筒状凹所(85)内に突き出すことと、排気弁が閉じられたとき、第三のピストン部分の上面(87)が一次的圧力チャンバ(34)と接続されることとを特徴とする、液圧作動式排気弁。
- 請求項6乃至8の何れかに記載の液圧作動式排気弁において、その上面と突出しカラー(63)との間にて、第一のピストン部分(40)が、環状チャンバの長さよりも短い軸方向長さの半径方向外方を向いたチャンバ壁(68)を有することと、第一のピストン部分が第一のストッパに接近するとき、突出しカラー、環状チャンバの最上方壁部分、チャンバの天井部分と共に、チャンバ壁が、第一の減衰チャンバを形成することとを特徴とする、液圧作動式排気弁。
- 請求項9に記載の液圧作動式排気弁において、第一のピストン部分におけるチャンバ壁の少なくとも最上方部分(70)が、下方に増大する直径を有することを特徴とする、液圧作動式排気弁。
- 請求項9又は10に記載の液圧作動式排気弁において、静止シリンダ(31)が、チャンバ天井部分に配置された出口開口部に一次的圧力チャンバ(34)を接続する多数の通路(65)を有することと、出口開口部の下方に配置された平坦なリング(64)が、リングが出口開口部を覆う上方位置と、リングが出口開口部からある距離にある下方位置との間にて軸方向に移動し得ることとを特徴とする、液圧作動式排気弁。
- 請求項7乃至11の何れかに記載の液圧作動式排気弁において、第二のストッパが第二のピストン部分の下降動作を制限することと、そのピストン頂部(76)付近にて、第二のピストン部分は、該第二のピストン部分が第二のストッパに達する前に、第一のピストン部分の減衰部分内に入る、環状の半径方向突出部を有することと、第一のピストン部分(40)の内面における減衰部分の少なくとも最上方部分(83)が、下方に縮小する直径を有することとを特徴とする、液圧作動式排気弁。
- 請求項8乃至12の何れかに記載の液圧作動式排気弁において、第二のピストン部分の凹所部分(78)の上端が軸方向に面した面(79)によって形成されていることと、第二のピストン部分の上端(76)が、一次的圧力チャンバ(34)を前記凹所部分(78)の上端の前記軸方向を向いた面(79)内に形成された出口開口部に接続する多数の通路を有することと、前記出口開口部の下方に配置された平坦なリングが、前記出口開口部を覆う上方位置と、前記出口開口部からある距離のところにある下方位置との間で軸方向に変位可能であることとを特徴とする、液圧作動式排気弁。
- 請求項7乃至11の何れかに記載の液圧作動式排気弁において、第一のピストン部分の環状壁が、第二のピストン部分が内部に配置された上方に閉じた二次的圧力チャンバ(49)の底端部を構成するピストン頂部(48)に接続されることと、環状壁の多数の通路(52、53)が、一次的圧力チャンバを第二のピストン部分内に配置された多数の半径方向に伸長する供給通路(51)に接続することと、第二のピストン部分の外面には、供給通路(51)の真上の領域内にて上方にテーパーが付けられた少なくとも1つの凹所が形成されることとを特徴とする、液圧作動式排気弁。
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