JP3763802B2 - 霧化器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遠心力により塗料、農薬等の液体の霧化やセラミックス粉末、金属粒子等の造粒又は、噴霧乾燥等を行う霧化器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車の外板塗装等の用途に用いられる静電塗装機やセラミック粉末の造粒を行うためのスプレードライヤ(粉末造粒装置)の先端部分にはベル型霧化器が使用されている。ベル型霧化器は、特公昭62−39016号公報、特開平6−210205号公報等に開示されているように、その基端部に設けられた円盤状の拡散板に向かって供給された塗料等を遠心力により霧化状態となすものである。また、ベル型霧化器の開口端部のリング状端面には、塗料を均一に霧化して放出するために放射状に複数本の溝が形成されている。
【0003】
これら従来の霧化器は、特開平8−150352に開示されているように、高抵抗の絶縁性樹脂(例えばピーク材)の外表面にカーボンをコートした構造や、金属材料(アルミニウム、チタン合金等)のベルヘッド表面に絶縁性のセラミックスをコートしたもの、カーボン繊維等の導電性繊維を配合した合成樹脂製のものが用いられている。
【0004】
また、特公昭62−39016号公報には、高電圧発生装置と商用電源との間に遮断スイッチを設け、過電流検出器により高電圧ケーブルを流れる電流値が所定の電流値以上になったときに遮断スイッチが作動するシステムが開示されている。このシステムによって、霧化器と被塗装物との間に過電流が流れたときには、遮断システムによって高電圧供給装置への電流供給を停止する。これによって、塗装機本体と被塗装物との異常接近時また、接触による短絡事故、高電圧ケーブル損傷による短絡事故を防止しょうとしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
高圧の静電気を印加するために高抵抗の絶縁性樹脂(ピーク材)の外表面にカーボンをコートした構造では、カーボンコートにより導電性を付与しているが、所望の体積抵抗率に制御することが困難であると共に、カーボンコート層の付着性が低いため洗浄時に剥離し易いという問題がある。また、合成樹脂製のベルヘッドは耐摩耗性に問題があり、耐久性に劣る。
【0006】
金属材料(アルミニウム、チタン合金等)のベルヘッド表面に絶縁性のセラミックスをコートする際には、コート層の形成不良が発生し易く、また、使用時にコート層が剥離するといった問題が生じている。更に、セラミックス層が多孔質であるため耐摩耗性にも問題が生じ易く、耐久性に劣る。
【0007】
また、霧化器外周部にコートされたカーボン層及び金属材料は体積抵抗率が低いため、この部分を通して局所的に火花放電が発生しやすいという問題がある。
【0008】
また、前記従来のベル型霧化器を形成する各素材は硬度が低いため、ベルヘッドの内周面や、その先端部に形成した複数の溝の内周面上を流動するスラリー等の液体に含まれる高硬度の粒子によりその内周面および溝が顕著に摩耗する。このため、内周面および溝部分の耐久性が乏しいという問題がある。
【0009】
さらには、回転霧化器と被塗装物とが異常接近したときあるいは接触したとき、これらの間に存在する空気が絶縁破壊し、電気抵抗値が小さくなる。この場合、過電流検出器に設定値以上の電流が流れることにより、遮断スイッチが作動する。この遮断スイッチが作動しなかったり、遅れが生じた場合には、霧化器と被塗装物との間に火花放電が発生する。このような火花放電は、霧化器の体積抵抗率が不均一で局所的に体積抵抗率が低いところが存在する場合にその部位から火花放電が発生しやすい。このため、霧化器を構成する素材としては、体積抵抗率が適度に高い上、均一性が重要となる。
【0010】
一方、霧化器先端およびその付近から発生する火花放電を防止するため、霧化器の電気体積抵抗率を高くした場合、霧化器先端で弱いコロナ放電が発生せず、これによって塗料が帯電しなくなる。この結果、静電塗装本来の機能が発揮できず塗着効率が低下してしまう問題がある。
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題を鑑み、絶縁性セラミックス中に微細な伝導粒子/半導体粒子を分散した霧化器を用いることにより、耐久性がありかつ霧化器と被塗装物との間に発生する放電エネルギを小さく抑え、高い塗着効率を保持しながら、高い安全性を確保することが可能な回転霧化式静電塗装装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明の霧化器は、開口端に向かうに従い開口が拡がりその内周側の開口端部に放出端をもつ霧化器であって、放出端を形成する少なくとも開口端部は、絶縁性セラミックス中に導電性粒子および/または半導電性粒子を分散させ、少なくとも開口端部は導電性を有するものであり、開口端部に静電界を形成する電圧が印加され、開口端部で霧化された導電性塗料粒子を荷電する構成としたことを特徴とする。
【0013】
高絶縁性を有するセラミックス中に、該絶縁性セラミックスの粒径に比べて微細な導電性粒子および/または半導電性粒子を添加し導電性を持たせることで、粒子強化と導電性を同時に付与することが可能となる。この際、導電性粒子および/または半導電性粒子をネットワーク構造を形成するように分散させることにより、電気的な伝導パスが形成されやすくなり、少ない添加量で所望の体積抵抗率を付与することができる。導電性粒子および/または半導電性粒子は、微細な粒子を用いることにより、霧化器の開口端部を電気的により均一な体積抵抗率を有するセラミックス基複合材料で構成させることができる。これによって、体積抵抗率の不均一さに起因して発生しやすい局所的な火花放電の発生を抑止することができるようになる。
【0014】
本発明の霧化器では、霧化器全体を均一でかつ、所定の体積抵抗率のセラミック基複合材料で構成されていることから、該霧化器が被塗装物に異常接近しても、その間に発生する放電エネルギを小さく抑えることができる。
【0015】
一方、本材料は適度な体積抵抗率を有しており、霧化器放出端付近には、弱い所望のコロナ放電を発生することができるため、霧化器放出端付近で塗料に帯電することができ、その結果、噴霧された塗料粒子を静電引力によって被塗装物に搬送、塗着させることができ、静電安全性と高い塗着効率の相反する特性を同時に発現することができる。
【0016】
さらに、上記のように、該セラミックス基複合材料は、高硬度を有することから、耐摩耗性にも優れることから、上記特性を合わせて、高い耐久性をも付与することができる。
【0017】
本発明の霧化器は、放出端部が開口した形状、すなわちベル、円錐形状であることが好ましい。
【0018】
本発明の霧化器の開口端部は、体積抵抗率が106〜1011Ωcmであるのが好ましい。高絶縁性を有するセラミックス中に該セラミックス結晶粒サイズに比べて微細で、且つ適正量の微細な導電性および/または半導電性粒子を連続、または不連続なネットワーク状に分散させ、適度な導電性を持たせたことで、開口端部の体積抵抗率を静電安全性と高塗着効率(帯電効率)とを同時に発現可能な体積抵抗率に制御できる。これにより放出端付近で液体が帯電可能な程度のコロナ放電を発生できる一方、被塗装物との間に生じるスパーク(火花)放電の発生を抑制できる。
【0019】
絶縁性セラミックスとしては、窒化珪素、サイアロン、炭化珪素、ムライト、窒化アルミ、酸化マグネシウム、アルミナ、ジルコニア及びジルコンの少なくとも一種並びにSi、Mg、Al、Ca、Y、Ti、Zr、Hf、Zn、Sn、Bi、Ta、Yi及びMoの少なくとも一種の窒化物、炭化物または複合酸化物から選択される構造用セラミックスで構成されるのが好ましい。構造用セラミックスは、機械的強度、破壊靭性および硬度が高いため、耐摩耗性にも優れており、金属材料で問題となっている霧化器内周の液体流動面で生じる顕著な摩耗を抑制することが可能である。
【0020】
また、霧化器は、高速で回転すること、および耐摩耗性を発現するために、100MPa以上の強度を持つのが好ましい。
【0021】
導電性粒子としては金属粒子を用いることができる。
【0022】
半導電性粒子としては、導電性セラミックスおよび/または金属間化合物、半導体が好ましい。電子伝導におけるエネルギー帯において、金属は伝導体にある程度の電子を有し低い抵抗値を示す。一方、半導体は金属の伝導帯に電子を全く持たないが、禁止帯の幅を狭くすることにより、充満帯に存在する電子を伝導帯に移動しやすくした導電材料を意味する。このような材料においては、禁止帯の幅が異なる材料を選択することにより、導電性が異なる所望の体積抵抗率を有する材料を選定することが可能である。このことから、半導体粒子は、抵抗の小さいショートパスができにくく、材料全体で電気的に安定な体積抵抗率を持つ霧化器を形成できるために好ましい。特に、微細な半導体粒子を用いることにより、材料全体で均一な体積抵抗率を付与することが可能となる。またこのようなエネルギ帯の効果は導電性粒子及び/又は半導体粒子を不連続に分散することにより、より効果的に発現することができる。
【0023】
また、導電性粒子および半導電性粒子は100Ωcm以下の体積抵抗率をもつのが好ましい。
【0024】
更に、金属および半導体粒子は平均粒径10μm以下であるのが好ましい。
【0025】
セラミックス粒子は炭化珪素、硼素、カーボン、周期律表のIIa4、5、6族、および13、14族の炭化物、窒化物、硼化物、珪化物の少なくとも1種類の化合物から成るのが好ましい。
【0026】
金属粒子は、W、Mo、Ta、Nb、Ni、Ir、Hf、Cr、Co、B、Zr、Y、V、Si、Ti、Re、Pt、Ph、Pd等の高融点金属が好ましい。また、金属間化合物としては、周期律表のIII−V族の化合物半導体が好ましい。
【0027】
本発明の霧化器で霧化される液体は、塗料であるのが望ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した霧化器の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1は、ベル形状の霧化器1を装着した霧化装置51を示す。霧化器1は、カバー54内に収納されているエアモータ(図示せず)により回転駆動される駆動軸52の先端に共に回転するように取り付けられている。駆動軸52の中心部には、霧化器1に固定された液体供給管53が挿通されている。
【0030】
ベル形状の霧化器1は、図1に示すように、開口端部2に向かうに従い開口が拡がるベル形状を呈す。開口端部2の内周側は、リング状端面2aとなっており、放出端21を持つ。また、開口端部2のリング状端面2aには、液体を均一に霧化して放出するために放射状に複数の溝が形成されていることが望ましい。
【0031】
霧化器の形状は、円板状であっても良い。図4は、円板状の霧化器41を装着した霧化装置81を示す。霧化器41は、カバー84内に収納されているエアモータ(図示せず)により回転駆動される駆動軸82の先端に共に回転するように取り付けられている。液体供給管83は、カバー84内より駆動軸82に近接して軸方向に延び、その先端には液体放出口87を持つ。
【0032】
円板状の霧化器41は、図4に示すように、開口端部42に向かうに従い開口が拡がる円皿型を呈すものが好ましい。開口端部42の内周側は、リング状端面42aとなっており、放出端421を持つ。また、開口端部42のリング状端面42aには、液体を均一に霧化して放出するために放射状に複数の溝が形成されていることが望ましい。
【0033】
開口端部2および42を形成する絶縁性セラミックスとしては、窒化珪素系セラミックス、サイアロン、炭化珪素、ムライト、窒化アルミ、酸化マグネシウム、アルミナ、ジルコニアの少なくとも一種の窒化物、炭化物および酸化物系化合物よりなる構造用セラミックスが挙げられ、その他、スピネル、ジルコン等を用いることができる。これらのセラミックス材料は、好ましくは、100MPa以上の強度を持つ。
【0034】
導電性を付与するために形成される絶縁性セラミックス中に分散する導電性および/または半導電性粒子は、高絶縁性を有するセラミックス中に適正量の微細な金属および/またはセラミックス粒子を連続または不連続で、かつネットワーク状に分散することにより少ない添加量で体積抵抗率を均一所望の値に制御することができる。
【0035】
各粒子の粒径は、高絶縁性セラミックス:導電性粒子および/または半導電性粒子=3:1〜50:1の範囲が望ましい。より具体的には5:1程度が良い。各粒子の平均粒径は10μm以下が好ましい。また、各粒子の体積抵抗率は、1000Ωcm以下が適する。導電性粒子は、金属が好ましく、カーボン等を用いても良い。半導電性粒子は、セラミックス粒子が好ましく、炭化珪素、硼素、カーボン、IIa4、5、6族、および13、14族の炭化物、窒化物、硼化物、珪化物の少なくとも1種類を主成分とする粒子や、それらの化合物が望ましく、ペロブスカイト系結晶構造の酸化物等も適する。
【0036】
霧化器1および41を製造の際には、絶縁性セラミックス材料粉末に、金属および/またはセラミックス粒子等を混合し成形体を形成後、ベル形状または円板状に加工するかもしくはベル形状または円板状に成形した後焼成する。この塗装用霧化器の体積抵抗率の範囲としては、106〜1011Ωcm、好ましくは107〜1010Ωcm、より好ましくは108〜109Ωcmとしたセラミック焼成体となるよう、絶縁性セラミックス粉末に添加する金属および/またはセラミックス粒子を調製する必要がある。ベル形状および円板形状では106〜1010Ωcmが好ましい。
【0037】
霧化器1および41の開口端部2および42の内周側のリング状端面2aおよび42aには、放射状に延び周方向に間隙を隔てた複数のV形状溝3および43が等間隔に形成されており、その本数は、開口端部2および42の外径が直径50mmのときには、400〜500本程度が好ましい。V形状溝3は、YAGレーザー加工や研削加工等により断面V字形状に形成された溝であるのが好ましい。溝の幅は約0.2mm、深さが外周側において0.25mm程度が最適である。溝の形状はその断面形状で内周側に向かってテーパ状に浅くなっているのが好ましい。
【0038】
ここで、前述したベル形状の霧化器1を適用した霧化装置51により液体の霧化を行う場合における霧化器1の作用について説明する。
【0039】
塗装装置本体に内蔵されたエアーモータの回転軸に該霧化器1を取り付け、該霧化器1には高電圧ケーブルおよびエアモータ回転軸を介して高電圧が印加される。このように高電圧を印加した霧化器1をエアモーターに取付けて高速回転させるとともに、霧化器1のハブ部55の内周面55aに塗料供給管53を介してスラリー状液体を供給する。該ハブ内周面55aに供給されたスラリー状の液体は、霧化器1の回転に伴う遠心力により拡散し、ノズル孔57を介して霧化器1の内周面4に沿って膜状に流動し略円錐状に拡散される。該スラリー状液体が膜状に流動して開口端部2内周側のリング状端面2aに達すると、各V形状溝3内に分流した後、開口部先端から霧化される。該スラリー状液体は、霧化器内周面およびコロナ放電を形成している開口部先端と接触している際に、静電電荷がスラリー状液体に印加される。このように帯電されたスラリー状液体粒子は、該霧化器1とアース電位であるワークピースとの間の静電引力によって塗着せしめる。
【0040】
次に、円板状の霧化器41を適用した霧化装置81により液体の霧化を行う場合における霧化器41の作用について説明する。
【0041】
まず、液体が液体供給管83を介して液体放出口87から霧化器41の上側表面44に向け噴出する。そして、上側表面44に供給された液体は、霧化器41の回転に伴う遠心力により上側表面44に沿って膜状に流動し、拡散される。液体が膜状に流動して開口端部42内周側のリング状端面42aに達すると、各V形状溝43内に分流する。
【0042】
分流されたスラリー状液体は、開口部先端から墳霧されるとともに、静電荷が印加される。霧化されたスラリー状粒子は、該霧化器1とアース電位であるワークピースとの間の静電引力によって塗着せしめる。
【0043】
また、本発明の霧化器に含まれる炭化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素などは導電性を有しており、所定量の導電性セラミックスを絶縁性セラミックス中に分散させることにより、所望の体積抵抗率を有するセラミック複合材料を得ることができることから、高い塗着効率が必要となる静電塗装等に適用可能である。
【0044】
一方、所定の高さの体積抵抗率を有するために、何らかの原因で被塗装物が霧化器に異常接近した場合においても、霧化器と被塗装物の間でスパーク放電が発生することがないので、本質的に安全な静電塗装を実施することができる。
【0045】
また、霧化器が構造用セラミックスで構成されているため、無機系顔料やセラミックス粒子等の高硬度の粒子を含むスラリー状液体等を霧化する場合においても、霧化器内周面を流動時に生ずる摩耗も抑止できることから、優れた耐久性を発現することができ、ランニングコストを低減することも可能である。
【0046】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【0047】
また、霧化器1および41は、塗装装置に適用する他にも、セラミック粉末を造粒するためのスプレードライヤ(粉末造粒装置)あるいは高温霧化装置に適用することも勿論可能である。この場合、塗料に代えて、セラミックスラリーが液糸化されて放出され、均一な微細セラミック粒子あるいは金属粒子を生成することができる。また、塗料、スラリー以外にも農薬等を用いることができる。
【0048】
【実施例】
次に、前記実施形態の霧化器の製造を行い、塗装装置として使用した実施例について説明する。
(実施例1)
平均粒径0.2μmの6wt%Si34粉末に、平均粒径0.03μmのSiC粉末を添加しこれら粉末を焼結助剤として6wt%MgAl24とともに、エタノール中でボールミルにより湿式混合を行った。混合比率は、Si34 を91重量%、SiCを9重量%とし、混合時間は72時間とした。
【0049】
次に、混合物を100℃程度に加熱してエタノールを蒸発させた。
【0050】
次に、会合して固まりとなった混合物を500μmアンダーの粒径に軽く解砕した後、冷間等方加工プレス(CIP)により圧縮し、混合物の圧密体を生成した。より詳細には、ポリエチレンの瓶中に混合物の粉末を密に入れてシールし、静水圧で圧縮することにより混合物の圧密体を形成する。
【0051】
この焼結前の圧密体を最終形状であるベル形状に粗く機械加工した後、9.5kg/cm2窒素ガス雰囲気中にて摂氏1800度で6時間焼成した。
【0052】
得られたセラミック焼成体の内外周を研削加工することにより、図1に示すようなベル形状でその開口端部2の外径が50mmの霧化器1を形成した。
【0053】
次に、ベル形状の霧化器1の開口端部2内周側のリング状端面2aにレーザビームを照射して、450本のV形状溝3を放射状に形成した。より詳細には、図3に示すように、まず、ベル形状の霧化器1中心軸をレーザ照射方向(上から下)に対して30度傾けて、ベル形状の霧化器1をYAGレーザー加工機61に設置された割り出し治具63に取り付ける。そして、図3に示すように、このような状態で取り付けられたベル形状の霧化器1の開口端部2に形成されたリング状端面2aに、切断寸法を0.25×0.3mm、アシストガスをO2、出力を8W、周期を333Hz、パルス幅を0.15msとしてレーザービームを照射することによりV形状溝3を形成した。
(実施例2)
平均粒径0.5μmのα-Si34粉末に、6wt%Y23、4wt%MgAl24および平均粒径0.03μmのβ−SiC粉末を10wt%添加し、湿式で72時間ボールミル混合を行いセラミックスラリーを得た。
【0054】
次に、該スラリーをスプレードライヤーを用いてスラリーより50〜70μmの造粒粉末を作製し、ゴム型を用いて静水圧3t/cm2で円柱状にCIP成形した。
【0055】
この円形状成形体を最終形状であるベル形状に機械加工した後、9.5kg/cm2窒素ガス雰囲気中で1800℃で6時間焼成した。
【0056】
このようにして得られたセラミックス焼成体の内外周を研削加工することにより、図1に示すようなベル形状で開口端部2の外径が77mmの霧化器1を形成した。
【0057】
次に、実施例1と同様な方法を用いて、ベル形状の霧化器1の開口端部2の内周側のリング状端面2aにレーザービームを照射して、640本のV形状溝3を放射状に形成した。
(比較例1)
実施例1の塗装用霧化器をアルミニウムで形成した。
(比較例2)
実施例1の塗装用霧化器をエンジニアリングプラスチックの一種であるピーク樹脂で形成した。
(比較例1)
実施例1の塗装用霧化器をアルミニウムで形成した。
(比較例2)
実施例1の塗装用霧化器をエンジニアリングプラスチックの一種であるピーク樹脂で形成した。
[評価1]
下図に示すように,電圧‐20kVを印加した霧化器1に、球状の電極棒を接近もしくは接触させたときの放電状態を目視で評価した。
【0058】
比較例1および2は、いずれも電極棒を約1cmまで接近させると強いスパーク放電の発生が認められたが、実施例1および2においては、電極棒を接触させてもわずかに鈍い放電(コロナ放電)が発生するのみであった。
[評価2]
上記実施例1、2および比較例1、2について、メタリック塗料(T13−516、関西ペイント製)を用いた場合の塗装性能、および静電気特性について評価を実施した。なお、メタリック塗料は、20μm程度の大きさを持つアルミ片が混在している。評価項目は、塗着効率、体積抵抗率、−60kV印加時の電流値(漏れ電流値)、塗装有効パターン幅、回転破壊性、−60kV印加時の放電状態(霧化器と被塗装物との距離を510mmから10mm間で接近させ、霧化器先端と被塗装物との間の放電状態を目視観察)の6項目である。尚、塗着効率は、メタリック塗料をアルミ箔に塗装し、霧化器からの塗料吐出量に対する塗着重量を計測することにより評価した。有効パターン幅は、板状の被塗装物を水平塗装し、その塗装パターン内半径方向の膜圧分布を膜圧計で測定した。また、回転破壊試験は、霧化器回転数を25000〜50000rpmの範囲で5000rpm間隔で回転、停止を繰り返しながら回転数を増加したときの霧化器の破壊の有無を目視で評価した。表1に、これらの試験結果を示す。
【0059】
【表1】
Figure 0003763802
【0060】
表1より、本実施例で得られた塗装用霧化器では、その体積抵抗率を1.8×107Ωに制御できたため、−60kV印加時に、全周で均一なコロナ放電が見られ、また、比較例2の体積抵抗率に比べて低いにも関わらず、比較例1および2の塗装用霧化器で見られるようなスパーク放電を抑制することができた。これにより適度なコロナ放電を発生させながら高い静電安全性を有していることが解る。また、実施例1では、漏れ電流を1μAに抑制でき、電流効率に優れていると言える。さらに、実施例1の塗装用霧化器は、比較例1および2を上回る塗着効率が得られ、回転破壊試験にも耐え得るものである。
【0061】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の霧化器では、高い絶縁性と機械的特性を有する構造用セラミック中に微細な導電性粒子および/または半導体粒子を不連続にかつネットワーク状に分散させることによって所定の電気体積抵抗率に制御した複合材料を用いている。少なくとも放出端を形成する開口端部にこの複合材料を設けることにより導電性を付与させていることから、液体状スラリーの流動による霧化器内周面の摩耗を招くことなく、霧化器放出端部近傍のみに弱いコロナ放電を発生させることができる。これによって、その放出端で霧化する液体を均一に帯電させることができることから、高い塗着効率を発現できると共に、被塗装物間に霧化器が被塗装物に異常接近または接触した場合においても電荷が瞬間的に放電されるのを抑止して火花放電の発生を防止でき、本質的に安全性な作業を行うことができる。
【0062】
さらに、高硬度の粒子が混合しスラリー状液体を用いても、摩耗することなく、放電電極を兼ねた霧化器として安定した抵抗率を維持でき、長期的に安定した静電塗装を実施することが可能である。
【0063】
また、本発明の霧化器はセラミックスで形成され、機械的強度、破壊靭性および硬度が高いことから、耐摩耗性に優れ、塗料流動面の顕著な摩耗を抑止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ベル形状の霧化器を装着した回転霧化式静電装置の断面図である。
【図2】 霧化器から液体が液糸状に放出されて粒子が生成される様子を表す模式図である。
【図3】 レーザー加工機に霧化器を装着した状態を示す図である。
【図4】 円板状の霧化器を装着した霧化装置の断面図である。
【符号の説明】
1,41:霧化器 2,42:開口端部 21,421:放出端

Claims (10)

  1. 開口端に向かうに従い開口が拡がりその内周側の開口端部に放出端をもつ霧化器であって、
    前記放出端を形成する少なくとも前記開口端部は、絶縁性セラミックス中に導電性粒子および/または半導電性粒子を分散させ、少なくとも前記開口端部は導電性を有するものであり、
    前記開口端部に静電界を形成する電圧が印加され、前記開口端部で霧化された導電性塗料粒子を荷電する構成としたことを特徴とする霧化器。
  2. 前記霧化器は、ベル形状または円板状である請求項1記載の霧化器。
  3. 前記開口端部は、その体積抵抗率が106〜1011Ωcmである請求項1記載の霧化器。
  4. 前記絶縁性セラミックスは、窒化珪素、サイアロン、炭化珪素、ムライト、窒化アルミ、酸化マグネシウム、アルミナ、ジルコニア、ジルコン並びにSi、Mg、Al、Ca、Y、Ti、Zr、Hf、Zn、Sn、Bi、Ta、Yi及びMoの少なくとも一種の窒化物、炭化物または複合酸化物から選択される構造用セラミックスで構成されている請求項1記載の霧化器。
  5. 前記開口端部は100MPa以上の強度を持つ請求項1記載の霧化器。
  6. 前記導電性粒子は金属、前記半導電性粒子はセラミックス粒子から成る請求項1記載の霧化器。
  7. 前記金属および前記セラミックス粒子は100Ωcm以下の体積抵抗率をもつ、請求項6記載の霧化器。
  8. 前記金属および前記セラミックス粒子は平均粒径10μm以下である、請求項6記載の霧化器。
  9. 前記セラミックス粒子は炭化珪素、硼素、カーボン並びに周期律表のII
    a4、5、6族、10、11族および13、14族の炭化物、窒化物、硼化物、珪化物の少なくとも1種類からなる請求項6記載の霧化器。
  10. 霧化される液体は塗料である請求項1記載の霧化器。
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