JP2015140461A - 放電表面処理用の電極及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】放電表面処理用の電極において、生産性をより向上させることである。
【解決手段】電極とワークとの間に放電を発生させて、ワークの被処理表面に、電極材料または電極材料の反応物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用の電極11であって、電極11は、MoとSiとを含むラーベス相を有するCo合金からなる電極粉末を圧縮成形して焼結した焼結体で形成されており、電極粉末は、旋回流式ジェットミルで形成した平均粒径が2μm以上6μm以下の大粒径粉末と、旋回流式ジェットミルで形成した平均粒径が1μm以下の小粒径粉末と、を含む。
【選択図】図1
【解決手段】電極とワークとの間に放電を発生させて、ワークの被処理表面に、電極材料または電極材料の反応物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用の電極11であって、電極11は、MoとSiとを含むラーベス相を有するCo合金からなる電極粉末を圧縮成形して焼結した焼結体で形成されており、電極粉末は、旋回流式ジェットミルで形成した平均粒径が2μm以上6μm以下の大粒径粉末と、旋回流式ジェットミルで形成した平均粒径が1μm以下の小粒径粉末と、を含む。
【選択図】図1
Description
本発明は、放電表面処理用の電極及びその製造方法に係り、特に、電極とワークとの間に放電を発生させて、ワークの被処理表面に、電極材料または電極材料の反応物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用の電極及びその製造方法に関する。
放電表面処理は、金属やセラミックス等のコーティング成分を含む電極を用いて放電加工することによって、耐久性や耐摩耗性に優れた機能性被膜を安定的に形成する技術である。放電表面処理では、コーティング材料の微細粉末を焼固めて電極とし、電極とワークとに電圧を印加する。これによって、電極とワークとの間にパルス状の放電が始まり、電極材料が溶融または半溶融の状態でワークに移動し、ワークの被処理表面に、電極材料または電極材料の反応物質からなる被膜が形成される。
航空機エンジン部品等の高温部品には、一般的に、放電表面処理により、耐熱性、耐食性及び耐摩耗性に優れるCo(コバルト)合金からなる被膜が被覆されている。放電表面処理用の電極には、Co合金の微細粉末を圧縮成形して焼結した焼結体が用いられている。特許文献1には、Cr(クロム)と、Ni(ニッケル)と、W(タングステン)とを含有するCo合金の微細粉末を用いて放電表面処理用の電極を製造することが記載されている。
ところで、放電表面処理用の電極の電極粉末には、放電時に電極材料が溶融または半溶融の状態でワークに移動し易くするために、平均粒径の小さい細かい粉末(例えば、平均粒径が10μm以下の粉末)が用いられる。このような平均粒径の小さいCo合金の電極粉末をアトマイズ法により形成する場合には、アトマイズ後に分級する必要があるので、電極粉末の収率が下がり、電極の生産性が低下する可能性がある。
平均粒径の小さい粉末を形成する他の方法としては、ジェットミルによる粉砕方法がある。しかし、特許文献1に記載されているようなCrとNiとWとを含有するCo合金(例えば、ステライト(登録商標)31等)は、比較的硬度が低く柔らかいCo合金であるので、ジェットミルによる粉砕では、主に、原料粉末同士の摩耗により薄く削れながら少しずつ粉砕される。このため、粉砕時間が長くなり、電極の生産性が低下する場合がある。
そこで本発明の目的は、生産性をより向上させることが可能な放電表面処理用の電極及びその製造方法を提供することである。
本発明に係る放電表面処理用の電極は、電極とワークとの間に放電を発生させて、前記ワークの被処理表面に、電極材料または前記電極材料の反応物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用の電極であって、前記電極は、MoとSiとを含むラーベス相を有するCo合金からなる電極粉末を圧縮成形して焼結した焼結体で形成されており、前記電極粉末は、旋回流式ジェットミルで形成した平均粒径が2μm以上6μm以下の大粒径粉末と、旋回流式ジェットミルで形成した平均粒径が1μm以下の小粒径粉末と、を含むことを特徴とする。
本発明に係る放電表面処理用の電極において、前記Co合金は、20質量%以上30質量%以下のMoと、1.0質量%以上4.0質量%以下のSiと、を含むことを特徴とする。
本発明に係る放電表面処理用の電極は、前記大粒径粉末と前記小粒径粉末との合計を100質量%としたときに、前記大粒径粉末は、30質量%以上100質量%未満であることを特徴とする。
本発明に係る放電表面処理用の電極において、前記大粒径粉末は、70質量%以上100質量%未満であることを特徴とする。
本発明に係る放電表面処理用の電極において、前記大粒径粉末は、70質量%以上90質量%以下であることを特徴とする。
本発明に係る放電表面処理用の電極の製造方法は、電極とワークとの間に放電を発生させて、前記ワークの被処理表面に、電極材料または前記電極材料の反応物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用の電極の製造方法であって、MoとSiとを含むラーベス相を有するCo合金の原料粉末を旋回流式ジェットミルで粉砕して、平均粒径が2μm以上6μm以下の大粒径粉末と、平均粒径が1μm以下の小粒径粉末と、を形成する電極粉末形成工程と、前記大粒径粉末と前記小粒径粉末とを混合して造粒し、造粒粉末を形成する造粒工程と、前記造粒粉末を圧縮成形し、圧粉体を成形する圧縮成形工程と、前記圧粉体を加熱して焼成し、焼結体とする焼成工程と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る放電表面処理用の電極の製造方法において、前記Co合金は、20質量%以上30質量%以下のMoと、1.0質量%以上4.0質量%以下のSiと、を含むことを特徴とする。
本発明に係る放電表面処理用電極の製造方法において、前記電極粉末形成工程は、前記旋回流式ジェットミルの粉砕圧力を0.4MPa以上とすることを特徴とする。
本発明に係る放電表面処理用の電極の製造方法において、前記造粒工程は、前記大粒径粉末と前記小粒径粉末との合計を100質量%としたときに、前記大粒径粉末が30質量%以上100質量%未満であることを特徴とする。
本発明に係る放電表面処理用の電極の製造方法において、前記造粒工程は、前記大粒径粉末が70質量%以上90質量%以下であることを特徴とする。
本発明に係る放電表面処理用の電極の製造方法において、前記圧縮成形工程は、冷間静水圧加圧処理を含むことを特徴とする。
本発明に係る放電表面処理用の電極の製造方法において、前記焼成工程は、前記圧粉体を700℃から900℃で加熱することを特徴とする。
上記構成によれば、電極粉末には、Mo(モリブデン)とSi(珪素)とを含むラーベス(Laves)相を有するCo(コバルト)合金を用いている。このラーベス相は硬度が高い金属間化合物からなる硬質相であることから、このラーベス相を有するCo合金は高硬度となる。この高硬度なCo合金は脆性であるので、原料粉末を旋回流式ジェットミルで粉砕すると、主に、原料粉末同士の衝突による割れで容易に粉砕される。これにより、粉砕時間がより短縮されると共に電極粉末の収率が高くなり、放電表面処理用の電極の生産性が向上する。
以下に本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。まず、放電表面処理用の電極を用いた放電表面処理について説明する。図1は、放電表面処理に用いられる放電加工装置1の構成を示す模式図である。放電加工装置1は、ベッド3を備えており、このベッド3にはテーブル5が設けられている。テーブル5には、絶縁油等の電気絶縁性の液体Lを貯留する液槽7が設けられている。液槽7には、金属材料等で形成されたワークSをセット可能な治具9が設けられている。
テーブル5の上方には、放電表面処理用の電極11を保持する電極ホルダ13がX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向へ移動可能に設けられている。この電極ホルダ13は、Z軸を回転軸として回転可能に構成されている。電極11は、Mo(モリブデン)とSi(珪素)とを含むラーベス(Laves)相を有するCo合金の粉末を圧縮成形して焼結した焼結体で形成されている。
治具9及び電極ホルダ13には、放電電源装置15が電気的に接続されている。この放電電源装置15は、電源、コンデンサ、スイッチング素子、抵抗器等を備えている。放電電源装置15には、例えば特開2005−213554号公報に示すような公知の放電電源装置を用いることが可能である。
次に、放電表面処理方法について説明する。
ワークSを治具9にセットする。電極11を保持した電極ホルダ13をX軸方向やY軸方向に移動させることにより、電極11をワークSに対して位置決めする。次に、電極ホルダ13をZ軸方向へ往復移動させつつ、電気絶縁性の液体L中において、放電電源装置15により電極11とワークSとの間にパルス状の放電を発生させる。この放電のエネルギにより、電極材料または電極材料の反応物質をワークSの被処理表面に付着させてCo合金からなる被膜を形成する。
具体的には、電極11とワークSとの間に放電が発生すると、電極材料の一部は、放電による爆風や静電気力によって電極11から切り離されるとともに、放電プラズマの熱により溶融または半溶融の状態となる。切り離された電極材料の一部は、溶融または半溶融の状態でワークSに向かって移動し、ワークSの被処理表面に到達して再凝固する。パルス状の放電を継続して発生させれば、電極先端の電極材料が次々にワークSの被処理表面上に移動し、そこで再凝固しつつ堆積して、Co合金からなる被膜を形成する。また、電極11から切り離された電極材料が電気絶縁性の液体L中の成分と反応した反応物質が、ワークSの被処理表面に到達し、堆積して被膜となる場合もある。なお、上記構成では、電気絶縁性の液体L中での放電表面処理について説明したが、大気中等で放電表面処理を行ってもよい。
次に、放電表面処理用の電極11の製造方法について説明する。
図2は、放電表面処理用の電極11の製造方法を示すフローチャートである。放電表面処理用の電極11の製造方法は、電極粉末形成工程(S10)と、造粒工程(S12)と、圧縮成形工程(S14)と、焼成工程(S16)と、を備えている。
電極粉末形成工程(S10)は、MoとSiとを含むラーベス(Laves)相を有するCo合金の原料粉末を旋回流式ジェットミルで粉砕して、平均粒径が2μm以上6μm以下の大粒径粉末と、平均粒径が1μm以下の小粒径粉末と、を形成する工程である。
電極粉末である大粒径粉末及び小粒径粉末には、MoとSiとを含むラーベス相を有するCo合金の粉末が用いられる。このラーベス相は硬度が高いCo3Mo2Si等の金属間化合物からなる硬質相であるため、このラーベス相を有するCo合金は高硬度になる。この高硬度なCo合金の原料粉末を旋回流式ジェットミルで粉砕すると、主に、原料粉末同士が衝突したときに割れ易くなるので、容易に粉砕可能となる。また、このラーベス相にはMoが含まれており、高温環境でMo系酸化物を生成するため被膜の耐磨耗性を高めることができる。このラーベス相を含むCo合金の硬さは、例えば、ロックウェル硬度HRCで45から65である。
MoとSiとを含むラーベス相を有するCo合金は、20質量%以上30質量%以下のMoと、1.0質量%以上4.0質量%以下のSiと、を含有していることが好ましい。Moが20質量%より少ないとラーベス相が形成され難くなると共に耐食性が低下するからであり、Moが30質量%より多いと脆化し易くなるからである。Siが1.0質量%より少ないとラーベス相が形成され難くなると共に耐酸化性が低下するからであり、Siが4.0質量%より多いと脆化し易くなるからである。
また、このラーベス相を有するCo合金は、耐食性及び耐酸化性の向上や、高温で潤滑性を有するCr系酸化物を生成させて耐摩耗性を高めるために、7質量%以上20質量%以下のCrを含有していることが好ましい。
MoとSiとを含むラーベス相を有するCo合金には、例えば、トリバロイ(登録商標)T―400(28質量%のMoと、2.5質量%のSiと、8.5質量%のCrとを含有するCo合金)、トリバロイ(登録商標)T−400C(27質量%のMoと、2.6質量%のSiと、14質量%のCrとを含有するCo合金)、トリバロイ(登録商標)T−401(22質量%のMoと、1.3質量%のSiと、17質量%のCrとを含有するCo合金)、トリバロイ(登録商標)T−800(28質量%のMoと、3.4質量%のSiと、18質量%のCrとを含有するCo合金)、トリバロイ(登録商標)T−900(22質量%のMoと、2.7質量%のSiと、18質量%のCrとを含有するCo合金)等を用いることが可能である。
MoとSiとを含むラーベス相を有するCo合金の原料粉末には、例えば、アトマイズ法で形成したCo合金粉末を用いることができる。アトマイズ法とは、タンディッシュから流出させた金属溶湯に、不活性ガス等のジェットを衝突させることにより、金属溶湯を液滴に粉砕しつつ凝固させて粉末を作製する方法である。原料粉末の平均粒径は、例えば、12μmから25μmである。
MoとSiとを含むラーベス相を有するCo合金の原料粉末を旋回流式ジェットミルで粉砕して、平均粒径が2μm以上6μm以下の大粒径粉末と、平均粒径が1μm以下の小粒径粉末とを形成する。
電極粉末として大粒径粉末と小粒径粉末とを用いるのは、電極11としたときに、大粒径粉末と大粒径粉末との間に小粒径粉末を介在させることにより、電極11の密度が過度に大きくならないように適度に調整して、電極11の熱伝導率を低く抑えるためである。これにより、電極11とワークSとの間に放電を発生させたときに、放電プラズマの熱が電極11の先端部から逃げ難くなるので、電極11の先端部の温度が高くなり、電極材料が溶融または半溶融しやすくなる。
大粒径粉末または小粒径粉末のみで電極11を製造する場合には、電極11の密度が過度に大きくなりやすいので電極11の熱伝導率が高くなる。電極11の熱伝導率が高くなると、電極11とワークSとの間に放電を発生させたときに、放電プラズマの熱が電極11の先端部から逃げ易くなり、電極11の先端部の温度が上がらずに、電極材料が溶融または半溶融し難くなる可能性がある。このような理由から、電極粉末には、大粒径粉末と小粒径粉末とが用いられる。
大粒径粉末の平均粒径は、2μm以上6μm以下に調整される。大粒径粉末の平均粒径が2μmより小さくなると、電極11の密度が大きくなりやすく、大粒径粉末の平均粒径が6μmより大きいと、圧縮成形が難しくなるからである。小粒径粉末の平均粒径は、1μm以下に調整され、例えば、0μmより大きく1μm以下に調整される。小粒径粉末の平均粒径が1μmより大きくなると、電極11の密度が大きくなりやすいからである。
なお、平均粒径とは、例えば、レーザ回折・散乱法で測定した粒子の粒度分布を用いて、粒径の小さい方から粒度分布の結果を累積し、その累積した値が50%となる粒度(メディアン直径)である。
次に、旋回流式ジェットミルについて説明する。図3は、旋回流式ジェットミルシステム20の構成を示す図である。旋回流式ジェットミルシステム20は、原料粉末を粉砕する旋回流式ジェットミル22と、旋回流式ジェットミル22へ原料粉末を供給する原料粉末供給部24と、旋回流式ジェットミル22へ圧縮空気を供給するコンプレッサ26と、旋回流式ジェットミル22で粉砕された粉末を分級するサイクロン28と、サイクロン28を通過した粉末を捕集するバグフィルタ30と、を備えている。
旋回流式ジェットミル22では、粉砕室に、コンプレッサ26から供給される圧縮空気で高速旋回流を形成する。そして、原料粉末供給部24から原料粉末を粉砕室に供給し、高速旋回流により原料粉末同士を衝突させて粉砕する。旋回流式ジェットミル22の粉砕室で粉砕されて排出された粗粒粉末はサイクロン28で分級され、サイクロン28を通過した微小粉末はバグフィルタ30で捕集される。また、粉砕については1回だけでなく、サイクロン28で分級された粗粒粉末を、再度、原料粉末供給部24から旋回流式ジェットミル22へ投入して、複数回粉砕することも可能である。なお、原料粉末を投入する前に、原料粉末と同じ粉末を粉砕室に一定量滞留させておくと、原料粉末を粉砕室に投入したときに効率的に粉砕されやすくなる。旋回流式ジェットミル22については、例えば、特開2007−275849号公報等に記載されているような公知の旋回流式ジェットミルを用いることが可能である。
旋回流式ジェットミル22では、高速旋回流により原料粉末同士を衝突させて粉砕するために、コンプレッサ26から粉砕室に供給される圧縮空気の粉砕圧力(コンプレッサ圧力)が粉砕能力を決めるパラメータとなる。
MoとSiとを含むラーベス相を有するCo合金の原料粉末を旋回流式ジェットミル22で粉砕して、電極粉末である大粒径粉末及び小粒径粉末を形成するためには、0.4MPa以上の粉砕圧力で粉砕することが好ましい。0.4MPa未満の粉砕圧力で粉砕する場合には、原料粉末同士を衝突させたときの衝撃力が小さくなり、少ない粉砕回数では大粒径粉末の平均粒径を2μm以上6μm以下にすることが難しくなるからである。
このラーベス相を有する高硬度なCo合金は脆性であるために、主に、原料粉末同士の摩耗による粉砕ではなく、原料粉末同士の衝突による割れで粉砕が進行する。このため、0.4MPa以上のような低い粉砕圧力でも少ない粉砕回数で、大粒径粉末の平均粒径を2μm以上6μm以下にすることが可能となる。一方、CrとNiとWとを含有するCo合金(例えば、ステライト(登録商標)31等)は、比較的硬度が低く柔らかいCo合金であるので、旋回流式ジェットミル22による粉砕では、主に、原料粉末同士の摩耗により薄く削れて粉砕される。このような柔らかく延性なCo合金を旋回流式ジェットミル22で粉砕する場合には、平均粒径を2μm以上6μm以下粉末を形成することができないか、粉砕回数が多くなり粉砕時間が長くなる。
平均粒径が2μm以上6μm以下の大粒径粉末を形成するためには、より少ない粉砕回数で粉砕するために、粉砕圧力を0.4MPa以上2.6MPa以下とすることが好ましい。また、平均粒径が4μm以上6μm以下の大粒径粉末を形成する場合には、より少ない粉砕回数で粉砕するために、粉砕圧力を0.4MPa以上1.5MPa以下とすればよいので、コンプレッサ圧力がより低圧でも粉砕可能であり、電極11の生産コストを抑えることができる。
小粒径粉末については、原料粉末同士の衝突による割れにより大粒径粉末が形成されるときに生じる微小粉末や、原料粉末同士または大粒径粉末同士の摩耗により薄く削れて形成された微小粉末で構成される。小粒径粉末の平均粒径は、1μm以下であり、例えば、0μmより大きく1μm以下である。
大粒径粉末は、サイクロンで分級されて回収され、小粒径粉末は、バグフィルタで捕集されて回収される。大粒径粉末は、略球形状や多角形状に形成され、小粒径粉末は、鱗片状に形成される。
このように、電極粉末である大粒径粉末と小粒径粉末とは、いずれも旋回流式ジェットミル22で形成することができるので、電極11の生産性を向上させることができる。また、旋回流式ジェットミル22で粉砕された粉末の略全てを電極粉末として利用できるので、電極11の生産コストを低減することが可能となる。なお、大粒径粉末と小粒径粉末とは、同一バッチで形成してもよく、別バッチで形成してもよいが、生産性向上の点からは同一バッチで形成されることが好ましい。
造粒工程(S12)は、平均粒径が2μm以上6μm以下の大粒径粉末と、平均粒径が1μm以下の小粒径粉末とを混合して造粒し、造粒粉末を形成する工程である。
まず、大粒径粉末と小粒径粉末とを混合したスラリを作製する。大粒径粉末と小粒径粉末との混合比については、大粒径粉末と小粒径粉末との合計を100質量%としたとき、大粒径粉末は、30質量%以上100質量%未満であることが好ましい。大粒径粉末が30質量%より少ないと、電極11の密度が大きくなり、電極11の熱伝導率が高くなる可能性があるからである。
大粒径粉末と小粒径粉末との合計を100質量%としたとき、大粒径粉末は、70質量%以上100質量%未満であることがより好ましい。大粒径粉末が70質量%以上の場合には、放電表面処理で形成される被膜をより緻密な被膜にすることができるからである。また、大気中のような酸化雰囲気中で放電表面処理する場合や、放電表面処理されたワークSを酸化雰囲気中で使用する場合には、小粒径粉末は粒子が小さいために全体が酸化されて酸化物になりやすいが、小粒径粉末より大粒径粉末の比率を大きくすることで、酸化物の生成を抑えることができる。
大粒径粉末と小粒径粉末との合計を100質量%としたとき、大粒径粉末は、70質量%以上90質量%以下であることが更に好ましい。大粒径粉末が90質量%より多い場合には、小粒径粉末が少なくなるので、電極11の密度が大きくなり、電極11の熱伝導率が高くなる可能性があるからである。
スラリは、貯留槽内に貯留した溶剤に、大粒径粉末と、小粒径粉末と、バインダと、滑材とを入れて攪拌器等で攪拌混合して作製される。
バインダは、大粒径粉末と小粒径粉末との圧縮成形性を高めて、圧粉体の形状を保持しやすくするために添加される。バインダには、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルメタクリエート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)等の熱可塑性樹脂、寒天等の多糖類物質が用いられる。バインダには、汎用の高分子材料の中で揮発性が高く、残留成分が比較的少ないものを採用することが好ましい。
滑材は、大粒径粉末と小粒径粉末との流動性を高めて、圧縮成形時にプレスの圧力の伝わりを良くするために添加される。滑材は、例えば、スラリ中に1質量%から10質量%添加される。滑材には、ステアリン酸、パラフィンワックス、ステアリン酸亜鉛等を用いることができる。
スラリを作製した後、スプレードライア等を用いて造粒粉末を形成する。スプレードライアを用いて造粒する場合には、スラリをスプレードライアのノズルから、スプレードライア内の高温の窒素ガス雰囲気中に噴射する。これにより、スラリに含まれる溶剤が乾燥して除去され、造粒粉末が形成される。
圧縮成形工程(S14)は、造粒粉末を圧縮成形し、圧粉体を成形する工程である。図4は、圧縮成形方法を示す図である。圧縮成形のための成形金型32は、造粒粉末34が充填される筒状のダイ36と、ダイ36のダイ孔の上部に上下方向へ移動可能に設けられ、プレス装置の上ラム(図示せず)によって上方向から下方向へ押圧される上パンチ38と、ダイ36のダイ孔の下部に上下方向へ移動可能に設けられ、プレス装置の下ラム(図示せず)によって下方向から上方へ押圧される下パンチ40と、を備えている。ダイ36に造粒粉末34を充填し、この成形金型32をプレス装置の上ラム及び下ラムにより上下から加圧する。これによりダイ36に充填された造粒粉末34が圧縮成形されて、圧粉体が成形される。
ダイ36に充填された造粒粉末34をプレス装置で加圧するときの面圧は、例えば、10MPaから30MPaが好ましい。プレス後の圧粉体のタップ密度(嵩密度)については、3.5g/cm3から4.5g/cm3が好ましい。
圧粉体は、プレス後に冷間静水圧加圧(CIP:Coldisostatic Press)処理されることが好ましい。これにより圧粉体は等方加圧されるので、圧粉体により均一に圧縮力を負荷することが可能となる。冷間静水圧加圧の圧力については、例えば、25MPaから200MPaが好ましい。大粒径粉末の割合が小粒径粉末の割合より小さくなるほど冷間静水圧加圧の圧力を高くする必要があるので、冷間静水圧加圧の点からは、大粒径粉末の割合が小粒径粉末の割合より大きいことが好ましい。例えば、大粒径粉末と小粒径粉末との合計を100質量%としたとき、大粒径粉末が、70質量%以上100質量%未満である場合には、冷間静水圧加圧の圧力については、25MPaから35MPaが好ましい。冷間静水圧加圧後の圧粉体のタップ密度(嵩密度)については、3.80g/cm3から4.02g/cm3が好ましい。
焼成工程(S16)は、圧粉体を加熱して焼成し、焼結体とする工程である。図5は、圧粉体42の焼成方法を示す図である。圧粉体42は、真空加熱炉や雰囲気炉等の加熱炉44を用いて焼成される。まず、圧粉体42を加熱炉44にセットする。真空中、不活性雰囲気中または還元雰囲気中において、ヒータ46により圧粉体42に加熱処理を施して焼結させる。
電極11は、放電表面処理時に、パルス状の放電エネルギにより崩れて溶融し被膜となる。このため、焼成は、電極粉末がその形状を保持した状態で、粉末粒子同士接触する部分での結合が強くなる程度とすることが好ましい。このため、焼成温度については、700℃から900℃が好ましく、焼成温度での保持時間については、5時間から15時間が好ましい。これにより、圧粉体42に含まれるバインダ及び滑材を除去できると共に、圧粉体42の粉末粒子間の結合を適度な強さにすることが可能となる。以上により、放電表面処理用の電極11が製造される。
上記構成によれば、放電表面処理用の電極は、MoとSiとを含むラーベス相を有するCo合金からなる電極粉末を圧縮成形して焼結した焼結体で形成されている。このラーベス相を有するCo合金は高硬度で脆性であることから、旋回流式ジェットミルで平均粒径が2μm以上6μm以下の大粒径粉末と、平均粒径が1μm以下の小粒径粉末と、を容易に形成可能となり、電極の生産性が向上する。また、このラーベス相を有するCo合金は、CrとNiとWとを含有するCo合金(例えば、ステライト(登録商標)31等)よりも高硬度であるので、原料粉末同士の衝突による割れで粉砕が進行し、CrとNiとWとを含有するCo合金よりも平均粒径が2μm以上6μm以下の大粒径粉末を容易に形成することが可能となる。
上記構成によれば、電極粉末である大粒径粉末と小粒径粉末とを旋回流式ジェットミルで形成することができるので、複数の粉末形成方法で電極粉末を形成する場合よりも、電極の生産性が向上する。更に、旋回流式ジェットミルで粉砕した粉末の略全てを電極粉末として用いることができるので、電極の生産コストを低減することが可能となる。
(粉砕試験1)
トリバロイ(登録商標)T−800の原料粉末を用いて粉砕試験を行った。トリバロイ(登録商標)T−800は、MoとSiとを含むラーベス相を有するCo合金であり、ロックウェル硬度HRCが55から60である。原料粉末には、平均粒径が15μmのアトマイズ粉末を使用した。原料粉末を、旋回流式ジェットミルNJ−300型(株式会社エース技研)を使用して粉砕した。旋回流式ジェットミル装置については、8箇所のノズルから高圧の圧縮空気が粉砕室へ吹き込まれる構成になっており、8箇所のノズルの中の1箇所のノズルから原料粉末を圧縮空気と共に供給して粉砕を行った。
トリバロイ(登録商標)T−800の原料粉末を用いて粉砕試験を行った。トリバロイ(登録商標)T−800は、MoとSiとを含むラーベス相を有するCo合金であり、ロックウェル硬度HRCが55から60である。原料粉末には、平均粒径が15μmのアトマイズ粉末を使用した。原料粉末を、旋回流式ジェットミルNJ−300型(株式会社エース技研)を使用して粉砕した。旋回流式ジェットミル装置については、8箇所のノズルから高圧の圧縮空気が粉砕室へ吹き込まれる構成になっており、8箇所のノズルの中の1箇所のノズルから原料粉末を圧縮空気と共に供給して粉砕を行った。
原料粉末の投入速度については、6kg/hとした。コンプレッサ圧力(粉砕圧力)については、0.3MPaから1.5MPa(0.3MPa、0.4MPa、0.6MPa、0.8MPa、1.2MPa、1.5MPa)とした。粉砕された粉末については、サイクロンで大粒径粉末を回収し、バグフィルタで小粒径粉末を回収した。
図6は、トリバロイ(登録商標)T−800の原料粉末の粉砕試験結果を示すグラフである。図6のグラフでは、横軸にコンプレッサ圧力(MPa)を取り、縦軸にサイクロンで回収した大粒径粉末の平均粒径(μm)を取り、各コンプレッサ圧力で粉砕したときの大粒径粉末の平均粒径を黒菱形で表している。原料粉末の粉砕については、旋回流式ジェットミルを2回通過(粉砕回数が2回)させることで行った。また、コンプレッサ圧力が1.5MPaより高い場合については、コンプレッサ圧力が0.4MPaから1.5MPaのデータに基づいて外挿した。外挿した部分については、破線で表している。なお、大粒径粉末の平均粒径については、レーザ回折・散乱法で測定して求めた。
図6のグラフから明らかなように、コンプレッサ圧力を0.4MPa以上とすることにより、原料粉末を平均粒径が6μm以下に粉砕可能であることがわかった。また、コンプレッサ圧力を0.4MPa以上2.6MPa以下とすることにより、原料粉末を平均粒径が2μm以上6μm以下に粉砕可能であることがわかった。更に、コンプレッサ圧力を0.4MPa以上1.5MPa以下とすることにより、原料粉末を平均粒径が4μm以上6μm以下に粉砕可能であることがわかった。
バグフィルタで回収した小粒径粉末についてレーザ回折・散乱法で測定した結果、いずれのコンプレッサ圧力で粉砕した場合でも、小粒径粉末の平均粒径については1μm以下であった。
(粉砕試験2)
次に、トリバロイ(登録商標)T―800とステライト(登録商標)31とについて粉砕試験を行って、各Co合金の粉砕特性を比較した。
次に、トリバロイ(登録商標)T―800とステライト(登録商標)31とについて粉砕試験を行って、各Co合金の粉砕特性を比較した。
ステライト(登録商標)31は、Niが10.5質量%、Cが0.5質量%、Crが25.5質量%、Mnが1質量%、Siが1質量%、Wが7.5質量%、Feが2質量%以下であり、残部がCoのCo合金である。ステライト(登録商標)31は、Cr系炭化物で硬化されており、ロックウェル硬度HRCが20から35である。ステライト(登録商標)31は、トリバロイ(登録商標)T−800より硬度が低く、比較的軟らかいCo合金である。
トリバロイ(登録商標)T−800及びステライト(登録商標)31の原料粉末には、平均粒径が15μmのアトマイズ粉末を使用した。原料粉末を、旋回流式ジェットミルNJ−300型(株式会社エース技研)を使用して粉砕した。粉砕条件については、原料粉末の投入速度を6kg/hから8kg/hとし、コンプレッサ圧力(粉砕圧力)を1.5MPaとした。また、風量については11m3/minとした。
図7は、トリバロイ(登録商標)T−800及びステライト(登録商標)31の粉砕試験結果を示すグラフであり、図7(a)は、ステライト(登録商標)31の粉砕試験結果を示すグラフであり、図7(b)は、トリバロイ(登録商標)T−800の粉砕試験結果を示すグラフである。図7のグラフでは、横軸に粉砕回数(回)を取り、縦軸にサイクロンで回収した大粒径粉末の平均粒径(μm)を取り、各粉砕回数後における大粒径粉末の平均粒径を黒四角形及び実線で表している。なお、大粒径粉末の平均粒径については、レーザ回折・散乱法で測定して求めた。
図7(a)のグラフから明らかなように、ステライト(登録商標)31の場合には、粉砕回数の増加に伴って、少しずつ平均粒径が小さくなり、平均粒径が10μmになると粉砕回数を増やしても平均粒径が殆ど低下しないことがわかった。ステライト(登録商標)31は比較的軟らかいCo合金のために、原料粉末の粉砕は、主に、原料粉末同士の衝突による割れではなく、原料粉末同士の摩耗により粉砕が進行していることによると考えられる。このため、ステライト(登録商標)31の場合には、平均粒径を小さくするためには粉砕回数を増やす必要があり、平均粒径を6μm以下とすることは難しく生産コストが高くなることがわかった。
図7(b)のグラフから明らかなように、トリバロイ(登録商標)T−800の場合には、粉砕回数が2回で粉砕後の粉末の平均粒径が4μm以下となった。トリバロイ(登録商標)T−800は硬度が高いCo合金のために、原料粉末の粉砕は、主に、原料粉末同士の摩耗ではなく、原料粉末同士の衝突による割れで粉砕が進行していると考えられる。このため、トリバロイ(登録商標)T−800の場合には、ステライト(登録商標)31の場合よりも粉砕回数を減らすことができるので、電極の生産コストの低減が可能となることがわかった。
トリバロイ(登録商標)T−800の粉砕後の粉末について、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)で観察した。図8は、トリバロイ(登録商標)T−800の2回粉砕後の粉末のSEM写真であり、図8(a)は、サイクロンで回収した大粒径粉末のSEM写真であり、図8(b)は、バグフィルタで回収した小粒径粉末のSEM写真である。図8(a)のSEM写真に示すように、サイクロンで回収した大粒径粉末の形状は、略球形状や多角形状であった。図8(b)のSEM写真に示すように、バグフィルタで回収した小粒径粉末の形状は、鱗片状であった。また、バグフィルタで回収した小粒径粉末についてレーザ回折・散乱法で測定した結果、平均粒径については1μm以下であった。
(放電表面処理用の電極の製造)
トリバロイ(登録商標)T−800で形成された電極粉末を用いて、放電表面処理用の電極を製造した。電極の製造については、電極粉末における大粒径粉末と小粒径粉末との混合比、冷間静水圧加圧の圧力及び焼成温度を変えて、実施例1から7の7種類の電極を製造した。
トリバロイ(登録商標)T−800で形成された電極粉末を用いて、放電表面処理用の電極を製造した。電極の製造については、電極粉末における大粒径粉末と小粒径粉末との混合比、冷間静水圧加圧の圧力及び焼成温度を変えて、実施例1から7の7種類の電極を製造した。
実施例1から7の電極の電極粉末には、上記の粉砕試験1におけるコンプレッサ圧力1.5MPaで粉砕したときのサイクロンで回収した大粒径粉末と、バグフィルタで回収した小粒径粉末を用いた。このため、大粒径粉末の平均粒径は4μmであり、小粒径粉末の平均粒径は1μm以下である。
大粒径粉末と小粒径粉末とを混合して造粒し、造粒粉末を形成した。まず、大粒径粉末と、小粒径粉末と、バインダと、滑材と、溶剤とを攪拌器で混合攪拌してスラリを作製した。
バインダには、メタクリル樹脂系バインダを使用した。滑材には、ステアリン酸を使用した。溶剤には、イソプロピルアルコール(IPA)を使用した。混合割合については、大粒径粉末と小粒径粉末との合計を2000g、メタクリル樹脂系バインダを9g、ステアリン酸を2.4g、イソプロピルアルコール(IPA)を3850gとした。
実施例1から3の電極については、大粒径粉末と小粒径粉末との混合比を、大粒径粉末と小粒径粉末と合計を100質量%としたとき、大粒径粉末を30質量%、小粒径粉末を70質量%とした。実施例4から7の電極については、大粒径粉末と小粒径粉末と合計を100質量%としたとき、大粒径粉末を70質量%、小粒径粉末を30質量%とした。そして、スラリ作製後、スプレードライアを用いて溶剤を乾燥させて、造粒粉末を形成した。
次に、この造粒粉末を圧縮成形して圧粉体を成形した。造粒粉末を成形金型内へ充填し、プレス装置でプレスして圧縮成形した。プレス圧については、3tとした。圧粉体のサイズについては、縦14mm×横110mm×高さ7mmの矩形状とした。
プレス装置でプレス成形した後、圧粉体を冷間静水圧加圧処理した。実施例1から3の電極では、冷間静水圧加圧の圧力を200MPaとした。実施例4から5の電極では、冷間静水圧加圧の圧力を25MPaとした。実施例6から7の電極では、冷間静水圧加圧の圧力を35MPaとした。
実施例1から3の電極では、冷間静水圧加圧後の圧粉体の密度は、3.80g/cm3であった。実施例4から5の電極では、冷間静水圧加圧後の圧粉体の密度は、3.94g/cm3であった。実施例6から7の電極では、冷間静水圧加圧後の圧粉体の密度は、4.02g/cm3であった。
冷間静水圧加圧後の圧粉体を加熱して焼成し焼結体とした。焼成方法については、アルゴンガスと水素ガスとの混合ガスを流すと共に、ロータリーポンプで真空に引きながら焼成した。混合ガスについては、95質量%Ar−5質量%H2とした。
焼成温度については、実施例1の電極では760℃、実施例2の電極では800℃、実施例3の電極では820℃、実施例4の電極では800℃、実施例5の電極では875℃、実施例6の電極では800℃、実施例7の電極では875℃とした。焼成時間については、いずれも各焼成温度で6時間保持した。このようにして、実施例1から7の電極を製造した。
(電気抵抗率の測定)
実施例1から7の電極について、拡散表面処理用の電極としての性能を評価するために、電気抵抗率を測定した。熱伝導率と電気抵抗率とは負の相関があり、熱伝導率が低いと電気伝導度が低くなるので、電気抵抗率が大きくなる。このため、測定が容易な電気抵抗率により評価を行った。拡散表面処理用の電極としては、電気抵抗率が1mΩ・cmから30mΩ・cmとなることが好ましい。電極の電気抵抗率がこの範囲にあれば、パルス放電の周期に十分追随でき、かつ、熱伝導性も適度に抑えられて、放電プラズマの熱が電極の先端部から逃げ難くなるので、電極の先端部の温度を高温に保つことができる。
実施例1から7の電極について、拡散表面処理用の電極としての性能を評価するために、電気抵抗率を測定した。熱伝導率と電気抵抗率とは負の相関があり、熱伝導率が低いと電気伝導度が低くなるので、電気抵抗率が大きくなる。このため、測定が容易な電気抵抗率により評価を行った。拡散表面処理用の電極としては、電気抵抗率が1mΩ・cmから30mΩ・cmとなることが好ましい。電極の電気抵抗率がこの範囲にあれば、パルス放電の周期に十分追随でき、かつ、熱伝導性も適度に抑えられて、放電プラズマの熱が電極の先端部から逃げ難くなるので、電極の先端部の温度を高温に保つことができる。
図9は、各電極の電気抵抗率測定結果を示すグラフである。図9のグラフでは、横軸に焼成温度を取り、縦軸に電気抵抗率を取り、実施例1から3の電極の電気抵抗率を白四角形で表し、実施例4から5の電極の電気抵抗率を白三角形で表し、実施例6から7の電極の電気抵抗率を黒菱形で表している。電気抵抗率の測定については、四端子法で行った。実施例1から7の電極の電気抵抗率は、5mΩ・cmから20mΩ・cmの範囲であった。このことから、実施例1から7の電極は、拡散表面処理用の電極として使用できることがわかった。
(放電表面処理)
図1に示す放電加工装置を用いてワークに対して絶縁油中で放電表面処理を行った。放電表面処理用の電極には、電気抵抗率が略同じ(約9mΩ・cm)である実施例3、5の電極を用いた。図10は、電極とワークとの間にパルス状の放電を発生させるときの放電パルス電流の波形を示す図である。放電条件については、電極とワークとの間に供給する放電パルス電流の波形の初期部分のピーク電流値Ipを30Aとし、中期以降部分のピーク電流値Ieを2Aとし、放電パルス電流のパルス幅teを8μsとした。また、休止時間については64μsとした。実施例3、5の電極を用いてワークの被処理表面に放電表面処理したところ、いずれの電極を用いた場合でもワークに被膜を形成可能であることがわかった。
図1に示す放電加工装置を用いてワークに対して絶縁油中で放電表面処理を行った。放電表面処理用の電極には、電気抵抗率が略同じ(約9mΩ・cm)である実施例3、5の電極を用いた。図10は、電極とワークとの間にパルス状の放電を発生させるときの放電パルス電流の波形を示す図である。放電条件については、電極とワークとの間に供給する放電パルス電流の波形の初期部分のピーク電流値Ipを30Aとし、中期以降部分のピーク電流値Ieを2Aとし、放電パルス電流のパルス幅teを8μsとした。また、休止時間については64μsとした。実施例3、5の電極を用いてワークの被処理表面に放電表面処理したところ、いずれの電極を用いた場合でもワークに被膜を形成可能であることがわかった。
図11は、放電表面処理した被膜断面の光学顕微鏡写真であり、図11(a)は、実施例3の電極を用いて放電表面処理した被膜断面の光学顕微鏡写真であり、図11(b)は、実施例5の電極を用いて放電表面処理した被膜断面の光学顕微鏡写真である。また、図11(a)及び図11(b)の光学顕微鏡写真において、被膜中の黒い部分がボイドを表している。
実施例3の電極を用いて放電表面処理した被膜よりも、実施例5の電極を用いて放電表面処理した被膜のほうが緻密な被膜が得られた。すなわち、70質量%の大粒径粉末と、30質量%の小粒径粉末とを含む実施例5の電極を用いた場合には、30質量%の大粒径粉末と、70質量%の小粒径粉末とを含む実施例3の電極を用いた場合よりも、緻密な被膜を形成できることがわかった。
本発明に係る放電表面処理用の電極は、電極製造コストも低く、経済性にも優れることから、航空機用ガスタービンエンジンや車両用ターボチャージャまたはスーパーチャージャのタービンブレードの耐摩耗性被膜などを放電表面処理により形成する場合に有用である。
1 放電加工装置、3 ベッド、5 テーブル、7 液槽、9 治具、11 電極、13 電極ホルダ、15 放電電源装置、20 旋回流式ジェットミルシステム、22 旋回流式ジェットミル、24 原料粉末供給部、26 コンプレッサ、28 サイクロン、30 バグフィルタ、32 成形金型、34 造粒粉末、36 ダイ、38 上パンチ、40 下パンチ、42 圧粉体、44 加熱炉、46 ヒータ。
Claims (13)
- 電極とワークとの間に放電を発生させて、前記ワークの被処理表面に、電極材料または前記電極材料の反応物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用の電極であって、
前記電極は、MoとSiとを含むラーベス相を有するCo合金からなる電極粉末を圧縮成形して焼結した焼結体で形成されており、
前記電極粉末は、旋回流式ジェットミルで形成した平均粒径が2μm以上6μm以下の大粒径粉末と、旋回流式ジェットミルで形成した平均粒径が1μm以下の小粒径粉末と、を含むことを特徴とする放電表面処理用の電極。 - 請求項1に記載の放電表面処理用の電極であって、
前記Co合金は、20質量%以上30質量%以下のMoと、1.0質量%以上4.0質量%以下のSiと、を含むことを特徴とする放電表面処理用の電極。 - 請求項1または2に記載の放電表面処理用の電極であって、
前記大粒径粉末と、前記小粒径粉末との合計を100質量%としたときに、前記大粒径粉末は、30質量%以上100質量%未満であることを特徴とする放電表面処理用の電極。 - 請求項3に記載の放電表面処理用の電極であって、
前記大粒径粉末は、70質量%以上100質量%未満であることを特徴とする放電表面処理用の電極。 - 請求項4に記載の放電表面処理用の電極であって、
前記大粒径粉末は、70質量%以上90質量%以下であることを特徴とする放電表面処理用の電極。 - 電極とワークとの間に放電を発生させて、前記ワークの被処理表面に、電極材料または前記電極材料の反応物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用の電極の製造方法であって、
MoとSiとを含むラーベス相を有するCo合金の原料粉末を旋回流式ジェットミルで粉砕して、平均粒径が2μm以上6μm以下の大粒径粉末と、平均粒径が1μm以下の小粒径粉末と、を形成する電極粉末形成工程と、
前記大粒径粉末と、前記小粒径粉末とを混合して造粒し、造粒粉末を形成する造粒工程と、
前記造粒粉末を圧縮成形し、圧粉体を成形する圧縮成形工程と、
前記圧粉体を加熱して焼成し、焼結体とする焼成工程と、
を備えることを特徴とする放電表面処理用の電極の製造方法。 - 請求項6に記載の放電表面処理用の電極の製造方法であって、
前記Co合金は、20質量%以上30質量%以下のMoと、1.0質量%以上4.0質量%以下のSiと、を含むことを特徴とする放電表面処理用の電極の製造方法。 - 請求項6または7に記載の放電表面処理用の電極の製造方法であって、
前記電極粉末形成工程は、前記旋回流式ジェットミルの粉砕圧力を0.4MPa以上とすることを特徴とする放電表面処理用の電極の製造方法。 - 請求項6から8のいずれか1つに記載の放電表面処理用の電極の製造方法であって、
前記造粒工程は、前記大粒径粉末と前記小粒径粉末との合計を100質量%としたときに、前記大粒径粉末が30質量%以上100質量%未満であることを特徴とする放電表面処理用の電極の製造方法。 - 請求項9に記載の放電表面処理用の電極の製造方法であって、
前記造粒工程は、前記大粒径粉末が70質量%以上100質量%未満であることを特徴とする放電表面処理用の電極の製造方法。 - 請求項10に記載の放電表面処理用の電極の製造方法であって、
前記造粒工程は、前記大粒径粉末が70質量%以上90質量%以下であることを特徴とする放電表面処理用の電極の製造方法。 - 請求項6から11のいずれか1つに記載の放電表面処理用の電極の製造方法であって、
前記圧縮成形工程は、冷間静水圧加圧処理を含むことを特徴とする放電表面処理用の電極の製造方法。 - 請求項6から12のいずれか1つに記載の放電表面処理用の電極の製造方法であって、
前記焼成工程は、前記圧粉体を700℃から900℃で加熱することを特徴とする放電表面処理用の電極の製造方法。
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