JP3763557B2 - 真空蒸発分離回収方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、処理物の表面に施されたメッキ品や混合物、化合物、付着物等を順次効率よく真空中で蒸発させて回収するようにした真空蒸発分離回収方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車ボディの表面、家電製品、コンピュ−タ関連機器、各種スラッジ等にメッキされた亜鉛、ニッケル、鉛、油あるいはそれらの酸化物を真空加熱して回収する場合、従来の真空昇温加熱方法では対流加熱がないため、低温期の0〜500℃位までの昇温速度が非常に遅く、このため、月産6000トン位ものスクラップの脱亜鉛をする場合は、どうしても設備仕様が大型となり、イニシャルコストも高くなるのでコストメリットがなくなり、実用性がない。また、上記問題を解決するため、低温期に酸化加熱して蒸発期に真空加熱することが考えられるが、その場合は金属酸化物ができてしまうので真空蒸発温度を上げざるを得ず、完全にメッキを除去するためには時間をかけて温度を上げなければならず、やはり上記の場合と同じくコストメリットがないという欠点がある。
【0003】
このような問題を解決するために本発明者は、真空蒸発させる処理物を加熱手段を有する炉内に投入し、酸化雰囲気にて所定温度(0〜180℃の酸化の起こらない温度)まで昇温させた後、その温度を維持し、その後前記炉内を指定蒸発温度の状態に維持しつつ減圧手段により真空にし、前記被処理物から蒸発してくる物質を前記炉に1又は複数連設された回収装置に導き、前記回収装置において凝縮させて回収することを特徴とする真空蒸発分離回収方法を提唱した(特公平8−16248号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
然るに、上記方法は処理物を炉内に投入した後炉内の真空度を一定にして回収物の各蒸発温度ごとに昇温させるものであり、やはり昇温のために少なからぬ時間がとられ、処理能力及び及びランニングコストの点で問題が残る。また、真空状態での加熱の場合は中心部の昇温が非常に遅く、温度分布も悪くなって回収純度も悪い。
【0005】
そこで本発明は、上記従来の改良された方法よりも更に処理に要する時間を短縮することができ、処理能力の向上とランニングコストの低廉化を図ることができ、しかも、蒸発物を高純度にて回収することができる真空蒸発分離回収方法及び装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、1又は複数配備される真空蒸発室内の温度をそれぞれ一定に保持しておいて、それぞれ室内の真空度を変化させていくことにより種々の蒸発物を順次分離回収する真空蒸発分離回収方法において、分離回収物として粉体を回収する場合に、還元ガス及びコ−クス等の粉体還元物を混入することを特徴とする真空蒸発分離回収方法、を以て上記課題を解決した。前記真空度の変化は、好ましくは真空ポンプの動作、並びに、不活性ガス及び/又は還元ガスの供給により行ない、通例800〜10-5Torrの範囲で変化させる。
【0007】
本発明においては、処理室内を予め昇温させるが、その昇温はプラス圧又は常圧下において行なうことができるために、対流加熱及び輻射による伝導加熱を利用することができるので、昇温に要する時間をかなり短縮することができる。従来の減圧度が高くて対流現象の起こらない状況下における加熱の場合、殊に200〜500℃の範囲での昇温が非常に遅くて温度分布が悪かったが、上記の通り本発明の場合は昇温に時間がかからず、温度分布もよい。
【0008】
また、従来の方法においては、目的温度まで昇温しても対流が起こらないため温度分布が悪く、蒸発回収物の純度も低いものであったが、本発明の場合は温度分布がよく、蒸発回収物の純度も高い。更に、処理品の目標とする温度までの昇温処理時間よりも、目標とする真空度までの減圧処理時間の方が短いため、本発明に係る方法の場合の方が従来の方法の場合よりも処理能力が高く、ランニングコストも安くなる。
【0009】
図3はこのことを示すグラフで、大きさが500×810×700mm、重量が2367kgであって、深さ350mmを中心部の温度測定深さとした処理物(鋼材スクラップ)の常圧(760Torr)下における表面温度及び中心部温度と、真空(0.05Torr)下における表面温度及び中心部温度の時間約推移を示している(横軸が昇温に要する時間、縦軸が温度を表わしている。)。そこにおける線(A)が常圧下における表面温度、線(B)が常圧下における中心部温度、線(C)が真空下における表面温度、線(D)が真空下における中心部温度である。
【0010】
このグラフから明らかなように、常圧下における場合の方が真空下における場合よりも短時間の内に内部まで昇温し、且つ、表面温度と中心部温度との差が少ない(温度分布がよい)。例えば、中心部温度を500℃にまで昇温させるのに真空下では4時間かかっているのに、常圧下の場合は2時間半しかかからず、また、4時間経過後の表面温度と中心部温度の差は、真空下では約300℃であるのに対し、常圧下では約100℃である。これらのことから、真空下において昇温させる従来の方法よりも、常圧下又はプラス圧下で昇温させる本発明に係る方法の方が、有利であることは明らかである。
【0011】
また、下記表は従来の方法と本発明に係る方法における回収金属の純度を比較したものである。例えば、従来の方法において、真空度が65〜75Torrの範囲において300℃に昇温したときに蒸発回収されるカドミウムの純度は87.6であるのに対し、本発明に係る方法において、温度を650℃に維持しておいて真空度を65〜75Torrの範囲に変化させたときに蒸発回収されるカドミウムの純度は97.6で、従来の方法の場合よりも高い。他の温度の場合もそのような傾向にある。
【表1】
【0012】
本発明は、処理物を真空蒸発処理することにより、残留ガスからダイオキシンが再成されることを防止すると共に、ガスを無公害化処理して排出する方法を提唱する。そのためには、少なくとも最前段に配置される前記真空蒸発室において、塩化物を含む処理品を10-1〜10-5Torrの範囲で真空蒸発処理する。
【0013】
本発明においては、好ましくは真空ポンプによる減圧作用に加え、処理後室内に不活性ガス及び/又は還元ガスを供給する。これは、真空ポンプのみによる減圧コントロ−ルだと減圧値を一定にコントロ−ルしにくいので、そのコントロ−ル補助のために不活性ガスを供給するのである。
【0014】
また、圧力が760〜10-5Torr位の低減圧だと、処理物質から著しく酸化物が分解蒸発した場合に、処理室内酸化、処理物酸化、蒸発物酸化等が起こり、回収率の低下、回収純度の低下、残留処理品の酸化、処理室内の部品の酸化劣化等、非常に多くの問題が発生する。このような問題の発生を回避するため、本発明においては減圧程度が低い場合に還元性ガスを加えて減圧コントロ−ルするのである。
【0015】
更に、本発明においては、前記分離回収物として粉体を還元回収する場合において、還元ガス及びコ−クス等の粉体還元物を混入する。
バグフィルタ−やサイクロン装置等により回収される粉体物質は、非常に微細な酸化物であることが多い。この微細な酸化物質を還元して減圧蒸発回収する場合、還元ガスのみでは中心部にまでガスが回らず、蒸発回収率が悪く、残渣にも重金属が残留することになるため、一般の廃棄場所に廃棄することができない。本発明ではこの問題を解決するために、コ−クス等の粉体還元物を、粉体処理物に均一になるよう混合して処理することにより(処理品中心部のガス回りの悪い所を補助還元する。)、還元時間の短縮を計ると共に、還元物質の蒸発回収率を上げることを可能ならしめた。
【0016】
これらの処理に当っては、粉体処理と粉体還元剤との混合物を、減圧度を10-2〜10-5Torrとし、温度を500℃〜1300℃として処理することにより、良い結果が得られる。また、コ−クス等の粉体と粉体処理物の固体同志で混合処理することにより、爆発等の危険を回避することが可能となる。
【0017】
更に本発明は、真空度の異なる真空蒸発室を複数連設して構成される装置において、前記蒸発室間に通過室を介在させ且つ前記蒸発室と前記通過室とをL字形に配置したことを特徴とする真空蒸発分離回収装置、を提唱する。
【0018】
真空蒸発室を直線的に連設した場合には、ストロ−クの関係上処理品の搬送にシリンダ−を用いたプッシャ−機構を採用することが困難であるが、上記のようにL字形に配置した場合はその採用が可能となり、構成を簡易化できる。また、真空蒸発室を直接連結する場合は、両室間の圧力調整が難しいが、本発明では連結される蒸発室間に圧力調整室が配備されるので、蒸発室間の圧力調整が非常に容易となる。
【0019】
上記圧力調整室は更に、前段の蒸発室における蒸発物が次段の蒸発室に流入することを阻止する役目も果たす。即ち、この圧力調整室は昇温させないので、蒸発物は殆ど沈殿してしまい、次室に流入して蒸発物の回収純度を低下させることがない。また、蒸発物は沈殿してしまうため、室間の真空シ−ル性が阻害されず、シ−ルの老化が防止される。
【0020】
また、本発明に係る装置は、各蒸発室の排気口に気密性のドアを二重に配置した真空二重ドアを備えている(二重シ−ル二重ドア方式)。これにより真空シ−ル性が向上し、たとえ一方のドアのシ−ル性が不良となっても、他方のドアによってシ−ル性が保持される。この真空二重ドアがあることにより、昇温中に回収物を回収して連続運転することが可能となる(昇温中に回収すると、回収物が燃焼したり真空炉が酸化されたり、対流熱によって真空シ−ルが損傷したりするので、従来は必ず温度を下げてから回収していた。)。また、この真空二重ドアがあるために、各蒸発室は真空蒸発室としてだけでなく、一般雰囲気炉や蒸し焼室としての利用も可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態につき、添付図面に依拠して説明する。図1は本発明に係る方法を実施するための本発明に係る装置の概略構成図であり、図中1は本装置において真空蒸発処理する処理品2を本装置内に搬入する搬入装置で、第1搬送装置3に添設される。第1搬送装置3の途中には、攪拌装置(通例ファン)4を備えた予熱炉5が配置され、搬入装置1によって第1搬送装置3上に供給されて搬送される処理品2が、この予熱炉5を通過することによって予熱される。
【0022】
予熱炉5は、処理品2が酸化しない温度(通例0〜180℃)まで処理品2を加熱する。予熱炉5は、後述する真空蒸発室とは切り離してその前段に配置される。そうすることにより、予熱炉5は真空炉型とすることなく、常圧炉型にすることができ、製造コストを約3分の1に抑えることができる。また、常圧炉型とすることにより、真空炉型では設備できないメッシュベルト搬送等の設備が可能となる。
【0023】
第1搬送装置3の先端部には、これと直交方向に延びて真空パ−ジ室7に達する第2搬送装置8が添設される。第2搬送装置8はその後端部に第1シリンダ9(普通エアシリンダ)を備えており、その作用で第2搬送装置8上の処理品2が真空パ−ジ室7内に送り込まれる。真空パ−ジ室7は外側に真空扉10を備えると共に、内側に炉内真空扉11を備えており、処理品2の搬入に際しては炉内真空扉11が閉じて真空扉10が開き、処理品2の搬入後真空扉10も閉じる。
【0024】
12は真空パ−ジ室7内における蒸発物の回収装置で、これにブ−スタ−ポンプ13とロ−タリ−ホンプ14とが連設される。ブ−スタ−ポンプ13とロ−タリ−ホンプ14は、回収装置12を介して真空パ−ジ室7内を減圧するためのもので、その作用により真空パ−ジ室7内が、一旦10-2Torr台迄減圧された後、これに続く第1蒸発室15とほぼ同圧になるまで復圧される。真空パ−ジ室7と第1蒸発室15との境に断熱扉16が設置される。通例、真空パ−ジ室7と第1蒸発室15とでL字形を呈するように配置される。
【0025】
上記作用により真空パ−ジ室7内と第1蒸発室15内とが同圧になると、炉内真空扉11と断熱扉16とが開かれ、処理品2が真空パ−ジ室7から第1蒸発室15内へと送られ、その後炉内真空扉11と断熱扉16が閉じられる。第1蒸発室15はその運転開始時において、予め設定温度並びに設定真空度にセットされ、温度は一定のまま真空度の調整がなされる(後出の各蒸発室においても同じ)。
【0026】
第1蒸発室15には、真空二重ドア17を介して金属回収装置18と粉体回収装置19とが設置される。また、粉体回収装置19に続けて、拡散ポンプ20、ホ−ルデングポンプ21、ブ−スタ−ポンプ22及びロ−タリ−ポンプ23が設置される。これらの拡散ポンプ20、ホ−ルデングポンプ21、ブ−スタ−ポンプ22及びロ−タリ−ポンプ23の作用で、処理品2の送入後第1蒸発室15内の真空度の制御が行われる。
【0027】
図2は真空二重ドア17の構成を示すもので(後出の真空二重ドアも同一の構成)、蒸発室15の排気口91と排気系配管92との間に真空ドア室93が配備され、真空ドア室93内に真空二重ドア17が設置される。真空二重ドア17は、真空ドア室93内上部に設置されたシリンダ94のロッド95に固定されて一体に上下動する2枚のドア96から成り、各ドア96の上部及び下部に、真空ドア室93の内壁面に摺接して気密シ−ルを達成するパッキン97を上下二段に備えている。
【0028】
真空二重ドア17はこのように簡易な構成であって、工事費、設備費等が低廉であり、たとえ2つのドア96の一方のシ−ル状態が蒸発室15内の対流熱等によって不良となっても、他方のドア96のシ−ルによって全体のシ−ル性が確保されるという利点がある。また、真空ドア室93は比較的狭いため、室内への析出汚れ量の絶対量も少なく、掃除等の設備管理が容易である。更に、この真空二重ドア17は排気口直近に設置されるため、真空ポンプ側を閉にし、排気口側を開にすることにより真空蒸発室15を雰囲気炉又は蒸し焼炉兼用とすることが可能となる。前述した通り、真空二重ドア17があるため、これを閉じることにより第1蒸発室15内の昇温中に蒸発物を回収することが可能となり、従来のように降温することによる時間的ロスがない。
【0029】
また、第1蒸発室15内には、ヒ−タ−24とガス攪拌装置25とが配備され、その作用で第1蒸発室15内の温度制御が行われる。第1蒸発室15内において真空加熱されて蒸発する金属蒸発物は金属回収装置18にて回収され、また、粉体蒸発物は粉体回収装置19にて回収される。
【0030】
真空パ−ジ室7内及び第1蒸発室15内の真空度を上記ポンプ類だけではコントロ−ルできない場合があるが、その場合は不活性ガス(通例チッ素ガス又はアルゴンガス)と還元性ガス(通例水素ガス、一酸化炭素又はNH3 分解ガス)とを真空パ−ジ室15内に供給する。26は不活性ガスボンベ、27は還元性ガスボンベであり、それらから伸びるガスライン28が、真空バルブを介して真空パ−ジ室7並びに第1蒸発室15に接続される。29は第1蒸発室15の外端部に配備された第2シリンダである。
【0031】
第1蒸発室15の出口側には炉内断熱扉30が設置され、これに対向させて第1圧力調整室31の入口側を開閉する真空扉32が設置される。上記第2シリンダ29は、炉内断熱扉30と真空扉32を開けた際に、第1蒸発室15内の処理品2を第1圧力調整室31内に押送する役目を果たす。第1圧力調整室31にも、室内の処理品2を送り出す第3シリンダ33が設置される。第1圧力調整室31内における処理品の移動はロ−ラ−駆動による。
【0032】
第1圧力調整室31には、真空扉34及び断熱扉34aを介して第2蒸発室35がL字形を呈するように連設される。第1蒸発室15における処理終了後、拡散ポンプ20、ホ−ルデングポンプ21、ブ−スタ−ポンプ22及びロ−タリ−ポンプ23の作用で第1蒸発室15内及び第1圧力調整室31内の真空度の調整が行われることにより、あるいは、バイパス電磁弁を開にすることにより両室の真空度が同じようになったところで(後出の蒸発室、圧力調整室間においても同様)、炉内断熱扉30及び真空扉32が開かれると、第2シリンダ29の作用で第1蒸発室15内の処理品2が第1圧力調整室31内に押送される。この処理品2の押送後、炉内断熱扉30と真空扉32が閉じられる。
【0033】
第2蒸発室35は第1蒸発室15とほぼ同じ構成で、ヒ−タ−36、ガス攪拌装置37及び第4シリンダ38を備え、真空二重ドア39を介して金属回収装置40と粉体回収装置41とが設置される。また、粉体回収装置41に続けてホ−ルデングポンプ43を備えた拡散ポンプ42、ブ−スタ−ポンプ44、及びロ−タリ−ポンプ45が設置される。そして、炉内断熱扉46、真空扉47を介して第2圧力調整室48が連設される。
【0034】
第2圧力調整室48は第1圧力調整室31同様に第5シリンダ49を備えていて、これに真空扉50及び断熱扉50aを介して第3蒸発室51が、やはりL字形を呈するように連設される。第3蒸発室51も上記蒸発室とほぼ同じ構成で、ヒ−タ−52、ガス攪拌装置53及び第6シリンダ54を備え、真空二重ドア55を介して金属回収装置56と粉体回収装置57とが設置され、また、ホ−ルデングポンプ58を備えた拡散ポンプ59、ブ−スタ−ポンプ60、及びロ−タリ−ポンプ61が設置される。そして、炉内断熱扉62、真空扉63を介して冷却室が連設される。
【0035】
処理品2が第1圧力調整室31内に送られると、上記同様にして第2蒸発室35内の真空度と第1圧力調整室31内の真空度の調整が行われ、両室が大体同圧になると真空扉34と断熱扉34aが同時に開かれる。そして、処理品2は、第3シリンダ33の作用で第1圧力調整室31から第2蒸発室35内へと押送され、押送完了後断熱扉34が閉じられる。
【0036】
第2蒸発室35内においても第1蒸発室15と同様に、ロ−タリ−ポンプ45等の作用で真空度が制御され、また、ヒ−タ−36により温度制御が行われ、更に必要に応じ、不活性ガス、還元性ガス等による制御が行われる。そして、処理品2を真空加熱する結果蒸発する金属蒸発物は金属回収装置40で回収され、また、その際発生する粉末酸化物等は粉体回収装置41で回収される。なお、真空度が100Torr以上の場合は、ガス攪拌装置37によって攪拌することによって対流加熱する等の方法により、処理品2の昇温速度を早める。
【0037】
第2蒸発室35における処理終了後、バイパスの電磁弁の開操作、あるいは、ロ−タリ−ポンプ45、ブ−スタ−ポンプ44、拡散ポンプ42、ホ−ルデングポンプ43等の作用で第2蒸発室35と第2圧力調整室48の真空度制御がなされる。次いで、炉内断熱扉46及び真空扉47が開かれ、処理品2が第4シリンダ38によって第2圧力調整室48内に押送され、その後炉内断熱扉46と真空扉47が閉じられる。第2圧力調整室48内における処理品2の移動はシリンダ49によって行われる。
【0038】
このようにして処理品2が第2圧力調整室48内に送られると、上記同様にして第3蒸発室51内の真空度と第2圧力調整室48内の真空度の調整が行われ、両室が大体同圧になると真空扉50が開かれる。そして、処理品2は、第5シリンダ49の作用で第2圧力調整室48から第3蒸発室51内へと押送され、押送完了後真空扉50及び断熱扉50aが閉じられる。
【0039】
第3蒸発室51内においても上記第1及び第2蒸発室15、35と同様に、ロ−タリ−ポンプ61等の作用で真空度が制御され、また、ヒ−タ−52により温度制御が行われ、更に必要に応じ、不活性ガス、還元性ガス等による制御が行われる。そして、処理品2を真空加熱する結果蒸発する金属蒸発物は金属回収装置56で回収され、また、その際発生する粉末酸化物等は粉体回収装置57で回収される。
【0040】
上述したように本発明に係る装置においては、各蒸発室15、35、51と真空パ−ジ室7及び各圧力調整室31、48をL字形に配置するが、これにより、処理品搬送上のメリットが出てくる。即ち、処理品の蒸発室間の移動にエアシリンダを用いる場合、通例シリンダのストロ−クは1つの蒸発室分しかないため、蒸発室が直線的に連設される場合、当該シリンダを複数の蒸発室に亘って作用させることができない。しかるに、本発明に係る装置では上記のようにL字形に配置するため、各蒸発室15、35、51からの処理品2の搬出を、各蒸発室15、35、51に設置したシリンダ29、38、54によって達成でき、また、第1、第2圧力調整室31、48からの処理品2の搬出を、それぞれの室に設置したシリンダ33、49で達成することができ、装置全体を簡素化することができる。
【0041】
第3蒸発室51には冷却室が連設される。この冷却室は単室であってもよいが、多量処理等の場合には冷却処理区間が短か過ぎて十分に冷却できない事態が起こることを考慮し、複数室を直列に設けることが好ましい。図示した例では冷却室は、第1冷却室64、第2冷却室65及び第3冷却室66の3室に分れていて、各室間はそれぞれ真空扉67、68で区切られている。
【0042】
また、各冷却室64〜66は攪拌装置69を備えており、第1冷却室64は第7シリンダ70を備えている。各冷却室における71は冷却フィンチュ−ブを示している。更に、各冷却室64〜66には、それぞれ二重真空扉72を介して不活性ガスボンベ26と還元性ガスボンベ27からのラインが接続されると共に、回収装置73、ブ−スタ−ポンプ74及びロ−タリ−ポンプ75が接続される。
【0043】
第3蒸発室51における蒸発処理終了後、ロ−タリ−ポンプ75とブ−スタ−ポンプ74の作用、又はバイパスの電磁弁開操作によって第1冷却室64内の圧力が第3蒸発室51内の圧力と大体同じになると、炉内断熱扉62及び真空扉63が開く。そして、第7シリンダ54の作用で処理品2が第1冷却室64内に押送されると、炉内断熱扉62と真空扉63が閉じる。
【0044】
次いで、第1冷却室64内に不活性ガスボンベ26から不活性ガスを、室内が常圧前後になるまで供給し、攪拌装置69で攪拌して処理物2を急冷する。その際室内に伸びる冷却フィンチュ−ブ71内に冷却水を通流させ、冷却速度を加速する。かくして設定温度まで冷却した後、第2冷却室65内に第1冷却室64と同圧に不活性ガスを供給し、あるいは、ロ−タリ−ポンプ75及びブ−スタ−ポンプ74等の作用、又はバイパスの電磁弁開操作によって第2冷却室65内の圧力をコントロ−ルした後、真空扉67が開かれ、ロ−ラ−駆動によって処理品2が第2冷却室65内に搬送される。
【0045】
第2冷却室65内においても、上記第1冷却室64内におけると同様の動作がなされ、処理品2が急冷される。その際の不活性ガスの熱交換は、冷却フィンチュ−ブ71、二重真空扉72及び二重冷却室中の水との間で行われる。ここにおいて設定温度まで冷却された処理品2は、上記同様にして第3冷却室66に搬送され、上記同様にして更に急冷される。
【0046】
設定温度まで処理品2が冷却されると、炉外真空扉76が開き、処理品2は冷却室外へロ−ラ−駆動により搬出される。その後、炉外真空扉76が閉じ、冷却室66はロ−タリ−ポンプ75及びブ−スタ−ポンプ74により空気が吸引されて10-2Torr台にされた後、不活性ガスが投入される。処理が終了した処理品2は、炉外搬送装置77のロ−ラ−駆動により処理反転装置78に送られ、そこから炉外に搬出される。
【0047】
なお、金属を含有する又は含有しないプラスチック、木材を含む金属処理品の処理に当っては、二重真空扉17、39、55を閉じて二重真空扉80、88を開き(真空蒸発分離回収処理中は閉じている)、第1蒸発室15、第2蒸発室35及び第3蒸発室51は雰囲気炉又は蒸し焼室となし、金属を含むプラスチック及び木材を蒸し焼状態にする。
【0048】
処理品2がダイオキシンを含んでいるような場合は、その再成を防止すると共に無公害ガス化する処理がなされる。即ち、第1蒸発室15及び第2蒸発室35に、二重真空扉80を介してガス加熱装置81が設置され、そこにおいて第1蒸発室15及び第2蒸発室35から送られてくる蒸発ガスが1100℃程度に加熱される。
【0049】
ガス加熱装置81に続いて、中和剤層82を備えたガス中和層83及びガス燃焼室84が配備される。ガス中和層83は水蒸気冷却されていて、上記1100℃に加熱されたガスがここを通過することにより約10秒程で常温にまで冷却され、以てダイオキシンの再成が防止されると共に、中和剤層82による中和処理がなされる。次いでガスはガス燃焼室84に送られ、そこで燃焼処理された後、サイクロン85及びバグフィルタ−86を経て、送風機87により無公害ガスとして放出される。
【0050】
各蒸発室15、35、51には二重真空扉80、88を介して、液体回収槽89を備えたガス冷却室90が設置されていて、ダイオキシンが含まれていない場合ガスはガス冷却室90に送られ、そこを通過する際、その一部が冷却温度によって油化して液体回収槽89に回収される。油化しなかったガスは、ガス中和層83に送られて中和処理された後、上記と同じ工程にて放出される。
【0051】
表2及び表3は、本発明に係る方法及び装置において、ダイオキシン処理が有効になされることを示すためになされた試験、即ち、常圧下における蒸焼き方法と本発明に係る真空加熱方法とにより、廃車を600℃と800℃にて処理した場合(表2)と、シュレッダ−ダストを800℃で処理した場合(表3)における残渣組成分析値を示すものである。
【表2】
【表3】
【0052】
この分析値によると、廃車を600℃にて蒸焼きした場合におけるダイオキシン総量が0.404769ng/nであるのに対し、真空加熱の場合のそれは0.00017ng/nに過ぎず、また、廃車を800℃にて蒸焼きした場合におけるダイオキシン総量が0.3727ng/nであるのに対し、真空加熱の場合のそれは0.001521ng/nに過ぎず(表2最下欄)、更にシュレッダ−ダストを800℃にて蒸焼きした場合におけるダイオキシン総量が23.405ng/nであるのに対し、真空加熱の場合は0となっている(表3最下欄)。このことから、本発明におけるダイオキシン処理は十分満足のいくものであるということができる。
【0053】
また、次の表4及び表5は、毒性等価濃度(TEQ)、即ち、廃ガス中のダイオキシン含有量を示すもので、表5中右端の連続後残渣が本発明に係る方法において真空処理した場合の値で、最下欄に示されているダイオキシンガス総量が他の場合に比較して少ないことが分かる。このように本発明に係る方法の場合にダイオキシンの再成が有効に防止されるのは、真空蒸発処理の場合は、ダイオキシン生成のための分子間距離が広くなり過ぎ、反応する機会が非常に少なくなるためと推測される。
【表4】
【表5】
【0054】
なお、図1に示した装置は蒸発室15、35、51を3つ連設したものであるが、蒸発室35又は蒸発室35及び51を省略した構成も可能である。
【0055】
【発明の効果】
本発明は上述した通りであって、温度を一定に保持した状態で処理室内の真空度の制御を行うために処理に要する時間が短くて済み、処理能力の向上とランニングコストの低廉化が可能となるもので、更に蒸発物を高純度にて回収することが可能となる非常に有益なものである。
【0056】
請求項3及び請求項8に記載の発明においては、減圧値のコントロ−ルが容易となると共に、処理室内、処理物及び蒸発物の酸化を抑制し得る効果がある。
【0057】
請求項4に記載の発明においては、コ−クス等の粉体還元物を粉体処理物に均一に混合して処理することにより、還元ガスと還元個体とが共存することとなり、以て還元時間を短縮化し得ると共に、還元物質の蒸発回収率を上げることができる効果がある。
【0058】
請求項5及び請求項9に記載の発明においては、処理品がダイオキシンを含んでいるような場合に、真空処理することによりその再成を防止し得ると共に無公害化して排出し得る効果がある。
【0059】
請求項7に記載の発明においては、処理物の移送に一般的なシリンダ−を用いることが可能となるため、装置全体を簡素化し且つ低廉化し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る装置の全体構成図である。
【図2】 本発明に係る装置における真空二重ドアの構成を示す図である。
【図3】 本発明に係る方法と従来の方法における処理物の表面と中心部の昇温に要する時間を示すグラフである。
【符号の説明】
5 予熱炉
7 真空パ−ジ室
15 第1蒸発室
17 真空二重ドア
18 金属回収装置
19 粉体回収装置
20 拡散ポンプ
21 ホ−ルデングポンプ
22 ブ−スタ−ポンプ
23 ロ−タリ−ポンプ
24 ヒ−タ−
26 不活性ガスボンベ
27 還元性ガスボンベ
35 第2蒸発室
51 第3蒸発室
81 ガス加熱装置
83 ガス中和層
84 ガス燃焼室
Claims (11)
- 1又は複数配備される真空蒸発室内の温度をそれぞれ一定に保持しておいて、それぞれ室内の真空度を変化させていくことにより種々の蒸発物を順次分離回収する真空蒸発分離回収方法において、分離回収物として粉体を回収する場合に、還元ガス及びコ−クス等の粉体還元物を混入することを特徴とする真空蒸発分離回収方法。
- 温度を一定に保持したまま前記真空度を800〜10-5Torrの範囲で変化させる請求項1に記載の真空蒸発分離回収方法。
- 前記真空度の変化を真空ポンプの動作、並びに、不活性ガス及び/又は還元ガスの供給により行なう請求項1又は2に記載の真空蒸発分離回収方法。
- 少なくとも最前段に配置される前記真空蒸発室において、塩化物を含む処理品を10-1〜10-5Torrの範囲で真空蒸発処理することによりダイオキシンその他の毒性塩化物の発生を抑制することを可能にした請求項1乃至3のいずれかに記載の真空蒸発分離回収方法。
- 常圧下又はプラス圧下において室内を昇温させる手段と、設定温度を維持した状態において室内の真空度を制御する手段とを有する1又は複数の真空蒸発室を備え、前記真空蒸発室の排気口に、気密性のドアを二重に配置した真空二重ドアを設置したことを特徴とする真空蒸発分離回収装置。
- 常圧下又はプラス圧下において室内を昇温させる手段と、設定温度を維持した状態において室内の真空度を制御する手段とを有する真空蒸発室であって、真空度の異なるものを複数連設して構成され、前記真空蒸発室間に圧力調整室を介在させ且つ前記真空蒸発室と前記圧力調整室とをL字形に配置したことを特徴とする真空蒸発分離回収装置。
- 前記真空度制御手段が、真空ポンプ並びに不活性ガス及び/又は還元ガスの供給手段である請求項5又は6に記載の真空蒸発分離回収装置。
- 少なくとも最前段に配置される前記真空蒸発室に、その室内において発生する蒸発ガスを加熱する手段と、前記加熱手段によって加熱された蒸発ガスを中和しつつ冷却するガス中和手段と、前記ガス中和手段によって中和処理されたガスを燃焼する手段とを備えていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の真空蒸発分離回収装置。
- 前記最前段の蒸発室の前段に、前記蒸発室とは直結することなく距離を置いて、処理品を酸化しない程度に予熱する予熱炉を置いた請求項5乃至8のいずれかに記載の真空蒸発分離回収装置。
- 真空蒸発分離回収処理された処理物を時間をかけて冷却するための複数の冷却室を備えた請求項5乃至9のいずれかに記載の真空蒸発分離回収装置。
- 前記真空蒸発室に金属回収装置と共に粉体回収装置を設置した請求項5乃至10のいずれかに記載の真空蒸発分離回収装置。
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