JP3763455B2 - ケミカルフィルタの交換時期判定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クリーンルームや半導体製造装置等で用いられる空気清浄用のケミカルフィルタの交換時期判定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体の集積度の向上に伴い、クリーンルーム内や半導体製造装置のチャンバ内でのケミカル汚染が問題になっている。ケミカル汚染に対処するために、ガス状の汚染物質(化学物質)を取り除くことのできる活性炭繊維タイプやイオン交換タイプのケミカルフィルタが用いられている。
【0003】
従来、このようなケミカルフィルタの寿命(交換時期)は、以下のように判断していた。
(1)ケミカルフィルタの前後(空気の吸い込み側とチャンバ側)において、それぞれ空気中に含まれる化学物質の量を測定し、その差に基づいてケミカルフィルタの化学物質の吸着能力の変化(活性化状態の変化)を管理していた。ケミカルフィルタ前後での化学物質量の差がある規定値以下になれば、フィルタの吸着能力がなくなった、すなわちフィルタの寿命と判断して交換していた。
(2)フィルタを外してフィルタの重量を測定し、ある規定値以上重量が変化していれば寿命と判断し、交換していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のフィルタ寿命の判断方法は、フィルタの状態を常時モニタできなく、フィルタの適切な交換時期を把握できないため、フィルタが寿命に至った後も気付かずに使用する虞れがある。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、通常の使用状態のまま継続的に化学物質の吸着状況を把握することができ、フィルタの寿命を見逃すことなくフィルタの交換を行なうことを可能とするケミカルフィルタの交換時期判定方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため本発明に係るケミカルフィルタの交換時期判定方法は、空気中の汚染物質を除去するために通気部に挿入される活性炭繊維タイプであるケミカルフィルタと同じ部材を用いてセンサを構成し、その部材のインピーダンスを測定することによって前記ケミカルフィルタの交換時期を判定する方法であって、汚染物質を含む空気が通気される吸着状況検出用センサと通気が遮断されたリファレンス用センサとを用い、吸着状況検出用センサによる測定結果をリファレンス用センサによる測定結果で補正し、補正した測定結果に基づいてケミカルフィルタの交換時期を判定すると共に、前記センサを発振条件の一部とする発振回路を構成して、その発振周波数または発振振幅に基づいて前記インピーダンスを測定する。
【0007】
ケミカルフィルタのインピーダンスは、汚染物質の吸着量以外に温度,湿度等によっても変化する。そこで、リファレンス用センサを用いて汚染物質の吸着量以外の要因によるインピーダンスの変化を検出して、吸着状況検出用センサの測定結果を補正することで、汚染物質の吸着量を精度良く求めることができる。これにより、ケミカルフィルタの交換時期をより正確に判定することができる。
【0009】
また、センサを発振条件の一部とする発振回路を構成し、その発振周波数又は発振振幅に基づいてインピーダンスの測定を行っていることで、インピーダンスの変化を的確に検出することができ、ケミカルフィルタの交換時期を的確に判定することができる。
【0016】
なお、本発明におけるケミカルフィルタは、活性炭繊維タイプの材料を用いていることにより、フィルタを通過する化学物質を含む汚染物質の吸着性を向上させる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るフィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)の第1実施例分解斜視図である。本発明に係るフィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)1は、センサ筺体2に吸着状況検知用センサ3とリファレンス用センサ4とを組み込んでなる。符号5はシールドケーブルである。リファレンス用センサ4の前面には、リファレンス用センサ4への通気を防ぐための通気遮断板(図示しない)を取り付けている。
【0018】
なお、通気遮断板は、リファレンス用センサ4の前面と後面の両方に設けるようにしてもよい。また、センサ筺体2側に通気遮断板を設けることで、リファレンス用センサ4への通気を遮断する構造としてもよい。
【0019】
センサ筺体2は、汚染物質の発生を防ぐためにテフロン等で構成している。各センサ3,4は、ケミカルフィルタと同じ活性炭繊維タイプのフィルタ部材3a,4aを使用し、その両側面を導電性の電極3b,4bで挟み込んでなる。各電極3b,4bは、通気方向と並行に配置している。フィルタ部材3a,4aと電極3b,4bとは、導電性の接着剤などを用いて接着してもよいし、単に電気的に接触させた状態でもかまわない。シールドケーブル5の各先端は、各電極3b,4bにそれぞれ接続される。
【0020】
なお、センサ筺体2側に各電極を設けておき、センサ筺体2にフィルタ部材3a,4aが装着された状態で、フィルタ部材3a,4aと各電極とが電気的に接触することで、各センサ3,4が構成されるようにしてもよい。
【0021】
さらに、センサ筐体2は必ずしも設ける必要がなく、センサの各電極とケミカルフィルタとの間に絶縁性が保たれる構造、例えば絶縁シートを挿入するような構造であれば、センサを直接ケミカルフィルタに組み込んでもよい。
【0022】
図2は本発明に係るケミカルフィルタユニットの斜視図である。本発明に係るケミカルフィルタユニット10は、フィルタユニット筺体11にケミカルフィルタ(フィルタ本体)12とフィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)1とを組み込んでなる。
【0023】
図2に示すように、フィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)1はケミカルフィルタ(フィルタ本体)12に組み込まれ、フィルタの一部として化学物質除去の役目を担いながら、ケミカルフィルタ(フィルタ本体)12の化学物質の吸着状態を検出する。フィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)1の吸着状況検知用センサ3は、このようにケミカルフィルタユニット10に組み込まれることによって、ケミカルフィルタ(フィルタ本体)12と同様に化学物質を吸着していく。よって、フィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)1によって化学物質の吸着状況を検出することで、ケミカルフィルタ(フィルタ本体)12の吸着状況(活性化状態)を検出して、ケミカルフィルタ(フィルタ本体)12の交換時期を判断することが可能となる。
【0024】
図3は図1に示したフィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)の縦断面図である。吸着状況検知用センサ3とリファレンス用センサ4とは、センサ筺体2の中に並列に配置されている。なお、図3では、各センサ3,4のフィルタ部材3a,4aと各電極3b,4bとを導電性接着剤6を用いてそれぞれ接着した場合を示している。
【0025】
リファレンス用センサ4は、吸着状況検知用センサ3と同じ構造であるが、前面に通気遮断板(図示しない)を取り付けリファレンス用センサ4への通気を遮断している点が異なる。このようにして、通気を遮断することによってフィルタ部材4aへの化学物質の吸着を防いでいる。よって、リファレンス用センサ4では、例えば温度や湿度などの化学物質の吸着以外の影響のみを検出することができる。
【0026】
吸着状況検知用センサ3の検出値をリファレンス用センサ4の検出値を用いて補正することで、化学物質の吸着以外の影響を取り除くことができ、これにより化学物質吸着の状況を高精度に検出することが可能となる。
【0027】
図4はチャンバ通気中における各センサの電極間のインピーダンス変化を計測したデータを示すグラフである。図4(a)は各センサのインピーダンスの実数分(抵抗値)の変化を示しており、図4(b)は虚数分(静電容量値)の変化を示したものである。
【0028】
これらのグラフから、リファレンス用センサ4は通気時間によらずインピーダンスは安定しているが、吸着状況検知用センサ3は通気時間の経過とともにインピーダンスが変化し、ある時間経過後、変化が飽和に達することが分かる。
【0029】
図5はフィルタ前後の空気中に含まれる化学物質の量を測定した結果を示すグラフである。図5(a)はチャンバ通気後500時間経過した時点で測定したデータを示している。図5(a)から、フィルタの前(上流側)に存在した化学物質が、フィルタの後(下流側)ではほとんどなくなっており、フィルタによって化学物質が吸着されたことが分かる。
【0030】
図5(b)は、1000時間経過後に測定したデータを示している。図5(b)では、フィルタの前(上流側)に存在した化学物質が、フィルタの後(下流側)でも除去されないまま存在している。これは、フィルタの汚染によって化学物質が吸着されずに、そのまま通過したことを表わしている。よって、フィルタが寿命に至っていることが分かる。
【0031】
また、図4と図5とから、フィルタの寿命とインピーダンス変化の飽和が相関を有していることが確認できる。よって、フィルタのインピーダンス変化を検出することで、化学物質の吸着状況が把握でき、フィルタの寿命の検出が可能となる。
【0032】
このように本発明では、化学物質の吸着によって電極間のインピーダンスが変化することに着目して、化学物質の吸着状態を把握し、フィルタの寿命(活性化状態)の検出を行なうものである。
【0033】
図6はフィルタの交換時期を判定する信号処理回路のブロック構成図である。図6に示す信号処理回路は、各センサ3,4をそれぞれ発振条件の一部とした発振回路21,22を構成し、各センサ3,4の静電容量の変化を発振周波数の変化に変換する。各発振回路21,22の発振周波数信号は各波形整形回路23,24でそれぞれ波形整形されて、F−V(周波数−電圧)変換回路25へ供給される。F−V(周波数−電圧)変換回路25は、リファレンス用センサ4の発振周波数を基準にした発振周波数の差を電圧値に変換して出力する。F−V(周波数−電圧)変換回路25から出力された電圧信号は、オフセット調整付きの増幅回路26で増幅されて、比較回路27の一方の入力端子に供給される。比較回路27の他方の入力端子には、フィルタ寿命の判定しきい値電圧E0が供給される。
【0034】
フィルタの使用に伴ってフィルタ部材に化学物質が吸着されていくと、それに伴ってフィルタ部材のインピーダンス(ここでは静電容量)が変化する。インピーダンス(ここでは静電容量)の変化は発振周波数の変化として検出され、F−V(周波数−電圧)変換回路25によって電圧の変化に変換される。そして、その電圧が予め設定したフィルタ寿命の判定しきい値電圧E0に達すると、比較回路27からフィルタ寿命に達したことを示す出力が発生する。なお、フィルタ寿命の判定しきい値電圧E0は、ケミカルフィルタが破過(吸着能力がなくなる)に至る前にフィルタ寿命に達したことを示す出力が発生するよう設定している。比較回路27の出力を図示しない表示装置等に供給することで、フィルタ交換時期に達したことを可視または可聴表示させることができる。
【0035】
なお、図6では信号処理回路をアナログ回路を主体として構成する例を示したが、発振回路の発振周波数をF−V変換回路で電圧に変換した後に、電圧を所定の時間間隔でA/D変換器で電圧データに変換して、マイクロコンピュータシステムに供給するようにしてもよい。マイクロコンピュータシステムは、サンプリングされた電圧データを時系列との対応を付けて不揮発性メモリ等に格納し、フィルタ部材のインピーダンスの変化特性を解析して、ケミカルフィルタが破過に至る前にフィルタ寿命に達したことを示す出力(フィルタ交換時期判定出力)を発生する。発振回路は1組みだけとし、発振回路に接続するセンサ3,4を所定の時間毎に切替えて、吸着状況検知用センサ3のインピーダンス及びリファレンス用センサ4のインピーダンスをそれぞれ検出するようにしてもよい。
【0036】
図7はフィルタの交換時期を判定する他の信号処理回路のブロック構成図である。図7に示す信号処理回路は、各センサ3,4のインピーダンスの変化を電圧の変化として取り出すようにしたものである。具体的には、所定の周波数で所定の電圧値の高周波信号を発生する各発振回路31,32の各出力信号を、インピーダンスが既知である各基準インピーダンス33,34を介して各センサ3,4へそれぞれ供給することで、電極間インピーダンス3Z,4Zを検出するようにしたものである。
【0037】
発振回路31,32の出力信号を基準インピーダンス33,34と各センサ3,4の電極間インピーダンス3Z,4Zとでそれぞれ分圧して得た各信号は、各オフセット・ゲイン調整回路35,36を介して減算回路(差動増幅回路)37に供給される。減算回路37は、吸着状況検知用センサ3のインピーダンスに対応した電圧からリファレンス用センサ4のインピーダンスに対応した電圧を減算することで、温度,湿度等の影響が除去された化学物質の吸着量に対応した電圧信号を出力する。この電圧信号は増幅回路38で増幅され、比較回路39でフィルタ寿命判定しきい値電圧と比較される。比較回路39の動作は図6に示した比較回路27と同じである。比較回路39の出力を図示しない表示装置等に供給することで、フィルタ交換時期に達したことを可視または可聴表示させることができる。
【0038】
図8は本発明に係るフィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)の第2実施例分解斜視図である。図8において、フィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)7Aは、リファレンス用センサ9の前に空気清浄用リファレンスフィルタ8を配置した点が図1のセンサユニット1と異なる。
【0039】
リファレンス用センサ9には、通気遮蔽板を設けず、空気清浄用リファレンスフィルタ8を通過した空気が供給される。この空気は、化学物質や汚染物質が空気清浄用リファレンスフィルタ8で吸収されたあとのきれいな通気風である。従って、リファレンス用センサ9は、化学物質によるインピーダンスの変化がなく、かつ、温度や湿度以外には、通気風の影響に起因するインピーダンスの変動も補正可能なリファレンスとして機能する。
【0040】
ケミカルフィルタ12に寿命が訪れると、吸着状況検知用センサ3のインピーダンスが飽和し、同時に空気清浄用リファレンスフィルタ8も寿命に達してしまい、浄化作用もなくなるため、化学物質を含んだ通気風がリファレンス用センサ9を通過することにより、リファレンス用センサ9のインピーダンスが変化する。
【0041】
リファレンス用センサ9のインピーダンスと吸着状況検知用センサ3のインピーダンスとの偏差を取ることにより、温度や湿度以外に通気風の影響も受けずにケミカルフィルタの寿命を検出することができる。
【0042】
図9は本発明に係るフィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)の第3実施例分解斜視図である。図9において、フィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)7Bは、図8の空気清浄用リファレンスフィルタ8に代えて吸着状況検知用センサ3を配置し、センサ筐体2Aに収納するため、センサ筐体2を小型化してセンサユニット7Bの小型化ならびに軽量化が図れる。
【0043】
フィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)7Bは、図8に示すセンサユニット7Aと同様に、リファレンス用センサ9のインピーダンスと吸着状況検知用センサ3Aのインピーダンスとの偏差を取ることにより、温度や湿度以外に通気風の影響も受けずにケミカルフィルタの寿命を検出することができる。
【0044】
本発明に係るケミカルフィルタの交換時期判定方法は半導体製造装置やクリーンルーム等に採用することで、ケミカルフィルタの交換を適切に行なうことが可能となり、半導体製造装置内のチャンバ空間やクリーンルーム内等のケミカル汚染を確実に回避することができる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ケミカルフィルタの定期的なオフライン検査を行なうことなく、継続的に化学物質の吸着状況を把握することができるので、寿命に達する前にタイミングよくフィルタを交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るフィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)の第1実施例分解斜視図
【図2】本発明に係るケミカルフィルタユニットの斜視図
【図3】図1に示したフィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)の縦断面図
【図4】チャンバ通気中における各センサの電極間のインピーダンス変化を計測したデータを示すグラフ
【図5】フィルタ前後の空気中に含まれる化学物質の量を測定した結果を示すグラフ
【図6】フィルタの交換時期を判定する信号処理回路のブロック構成図
【図7】フィルタの交換時期を判定する他の信号処理回路のブロック構成図
【図8】本発明に係るフィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)の第2実施例分解斜視図
【図9】本発明に係るフィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)の第3実施例分解斜視図
【符号の説明】
1,7A,7B フィルタ寿命検出用センサ(センサユニット)
2,2A センサ筺体
3,3A 吸着状況検知用センサ
3C 吸着状況検知用センサ電極間容量
3Z 吸着状況検知用センサ電極間インピーダンス
4,9 リファレンス用センサ
4C リファレンス用センサ電極間容量
4Z リファレンス用センサ電極間インピーダンス
3a,4a フィルタ部材
3b,4b 電極
6 導電性接着剤
10 ケミカルフィルタユニット
11 フィルタユニット筺体
12 ケミカルフィルタ(フィルタ本体)
21,22 発振回路
25 F−V(周波数−電圧)変換回路
27,39 比較回路
E0 フィルタ寿命判定しきい値電圧
Claims (1)
- 空気中の汚染物質を除去するために通気部に挿入される活性炭繊維タイプであるケミカルフィルタと同じ部材を用いてセンサを構成し、その部材のインピーダンスを測定することによって前記ケミカルフィルタの交換時期を判定する方法であって、汚染物質を含む空気が通気される吸着状況検出用センサと通気が遮断されたリファレンス用センサとを用い、前記吸着状況検出用センサによる測定結果を前記リファレンス用センサによる測定結果で補正し、補正した測定結果に基づいてケミカルフィルタの交換時期を判定すると共に、前記センサを発振条件の一部とする発振回路を構成して、その発振周波数または発振振幅に基づいて前記インピーダンスを測定することを特徴とするケミカルフィルタの交換時期判定方法。
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